ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:SynScanPro

10月の初めに少し晴れ間があったので、少し前に新しく実装されたというSynScan Proのプレートソルブ機能をテストしてみました。

個人的な狙いとしては、SWAgTiで使えるかどうかです。今の所SharpCapでプレートソルブしてから長時間撮影をすると、SynScan Proとの接続が不安定になってしまい、途中のディザリングができなくなってしまいます。前回のSWgTiの記事ではプレートソルブをした後に、一旦SynScan Proを落としたり、アラインメント情報をリセットするなど、少しトリッキーなことをして、プレートソルブを使いつつ問題を回避しています。SynScan Proの新機能のプレートソルブでこのSharpCapのプレートソルブを置き換えられないかと思ったのが直接の動機です。

この記事自身はSynScan Proのプレートソルブ単体の使い方の説明にもなっていると思います。単独でもかなり強力なツールですので、興味がある方はぜひお試しください。


ソフト的な準備

今回のプレートソルブを使ったSynScan Proの「SynMatrix AutoAlign」ですが、2024年8月10日アップデートのバージョン2.5.2から搭載された新機能です。この機能を使う場合は、2.5.2以降のできるだけ最新版をダウンロードしてインストールしてください。2024年10月7日現在はまだ2.5.2が最新版です。


ダウンロードページによると、このアラインメントの新機能を使うためには

index-4108.fits

をダウンロードして、SynScan Proの「fits」フォルダにコピーしてくださいとあります。ただし、これらのファイルはgoolgeドライブにアップロードされているので、アクセするにためにはgoogleアカウントが必要なようですのでご注意ください。

この新しいプレートソルブアラインメント機能はSynScan Proにカメラを接続することが大前提です。そのためiOSでは使用できないとのことです。私はWindowsにUSBでカメラを繋いで、Windows上でSynScan Proを走らせました。iOS以外では動くということなのですが、Androidもカメラを繋げばこの新機能を使えるということなのでしょうか?私はAndroidを持っていないので確認できていませんが、カメラの接続が可能ならおそらく動くのではないかと思われます。


テストで使用した機材

今回試した機材と接続について改めて説明します。
  1. 三脚にAZ-GTiを載せ、そこに鏡筒(RedCat51)を載せます。
  2. 鏡筒には撮影用カメラとしてPlayerOne社の冷却CMOSカメラのUranus-C Proを取り付けます。
  3. WindowsノートからType-CのUSBケーブルでUranus-C Proに接続します。
  4. SynScan Proの2.5.2をWindows上で走らせます。
  5. AZ-GTiの電源を入れ、WindowsからWi-FiでAZ-GTiに接続します。
今回は(AZ-GTiをSWAgTiに載せてあるため)AZ-GTiを赤道儀モードで動かしましたが、経緯台モードでも同様に動くはずです。

次に実際に動作させて新機能のSynMatrix AutoAlignを使うための準備をします。
  1. 初期状態では、鏡筒は北向きにセットします。
  2. カメラの画面を見るためにSharpCapを立ち上げ、SharpCapからカメラを選択/接続し、(赤道儀状態で北極星方向を見ているはずなので)星が画面内に見えていることを確認します。
  3. もし何も見えなかったら、鏡筒に蓋がされていないか、ピントが合っているか、SharpCapの露光時間は1秒程度以上になっているか、ゲインは十分に高いか、ストレッチはされているかなどを確認してください。経緯台モードの時には鏡筒が水平方向なので、星は見えないはずですが、いずれ星が入る用になった時に、ピントをきちんと合わせることを忘れないでください。
  4. まずは普通の初期アラインメントです。私は通常ワンスターアラインメントを使っています。
  5. 例えばターゲット天体にベガを選びますが、最初の初期導入ではほとんどの場合ターゲット天体は画面内に入ってきません。
  6. とりあえずターゲット天体が入っていなくても、何か星が映っていることを確認したら、星形マークがある横長のボタンを押して、ワンスターアラインメントを完了します。
  7. 最後に、SharpCapでカメラ画像を見ていると思いますが、一旦SharpCapでのカメラの接続を切ります。「カメラ」のところで接続さているカメラを再度選択すると接続が切断されます。面倒なら、SharpCapを終了させてしまってください。

これでSynMatrix AutoAlign使用の準備が完了です。


新機能を使用してみる

SynMatrix AutoAlignを開始します。まずSynScan Proのトップ画面から「アラインメント」を押します。次の画面で「SynMatrix AutoAlign」を押します。

51_11_synscan

すると、SynMatrix AutoAlignに移りますので、以下のようにカメラを選択します。
52_14_cameraall

ここでは手持ちのカメラがPlayerOneなので、「Player One Camara 1」を選びましたが、自分の手持ちのカメラに合わせて選択してください。ここで重要なのは、最大手のZWO以外のカメラもかなりサポートされていることで、少なくとも今回はPlayerOneカメラを動かすことができました。

カメラが接続されると、以下のように背景が赤っぽい色になります。星が見えているようには思えないのですが、これで大丈夫です。この画面でピント合わせをするのは至難の業だと思うので、あらかじめSharpCapでのピンと確認があった方がいいのかと思います。ここで注意ですが、SharpCapにカメラが接続されたままだと、SynScan Pro側でカメラが接続されません。もし画面が以下のように赤くならなかったら、SharpCapのカメラ接続がきちんと外れているか、今一度確認してみてください。
53_13_POcamera

ここではカメラの設定のために、上記画面にある「Properties」 ボタンを押します。すると以下のような画面になるので、カメラの設定をします。

54_01
私はPresettingをHighest Analog Gainにしました。露光時間がデフォルトで0.5秒程度と短いので、高いゲインの方が有利だと思ったからです。これで「OK」ボタンを押します。

次に設定するのが、背景の色です。左側の「Histgram Stretch」ボタンを押すと、以下のような画面になります。
55_15_red
デフォルトでは「Red tint」がチェックされています。これを外すと、上のように背景が通常の黒っぽい色になります。これは好みだと思うのですが、私は赤っぽいのが落ち着かなくて、背景を上のように変えました。

次に、同じ画面で「Expornential stretch」を選びます。画面が暗すぎたり明るすぎたりする場合は、すぐ下のバーを左右に動かして調整してください。不思議なのは「Bright」側に動かすと背景が暗くなることです。バグなのか、仕様で何か意図があるのか、今の所不明です。

56_17_exposure

問題は、これでも星が見えているようにはあまり思えないことです。ストレッチがあまりうまくいっていないのか、RedCat51の星像が鋭すぎて点にしか見えないのか、いずれにせよ一見星が見えていないようでもプレートソル分ではきちんと星を認識するようなので、心配しないでください。

これでだいたい準備完了なので、オートアラインメントを走らせます。左側の「Run」を押します。以下のような画面になるので、何回アラインメントを繰り返すかを選びます。私は最小の2回の「2points」を選びましたが、(極軸がある程度程度よく設定されていたからかと思いますが)これでも十分な精度でした。
57_18_points

ここで「Run AutoAlign」を押すとアラインメントが始まります。その際、なぜか背景が再び赤くなりますが、今のところ仕様のようなので驚かないでください。

2回のアラインメントのうちまずは1回目ですが、これは今の画角位置を動かさずに、画面をそのままキャプチャーして、プレートソルブで位置を計算します。この時に
  • カメラが接続されていないと全く進まなくなること
  • カメラが接続されていても星が入っていない状態だとエラーになること
は確認しましたが、他にもトラブルになる原因はいろいろ考えられると思いますので、各自で試してみてください。最初のプレートソルブがうまくいくと、鏡筒が動いて見ている方向が変わり、再び画面をキャプチャーして、プレートソルブを繰り返します。全てうまくいくと以下のような画面になり完了です。

60_24_done

これで「Close」を押し、左上の「<」ボタンを押すと元の画面に戻ります。

再びSharpCapなどでカメラに接続して、カメラの画像を見てみます。アランメント情報が更新され
、精度が上がっているはずなので、この状態でSynScan Proから天体を自動導入すると、画面内に目的の天体が入ってくると思います。ちなみに、最初のワンスターアラインメントでベガを選んで、そこからAutoAlignを実行した後に、再びベガを自動導入すると以下くらいの精度になりました。
62_vega

かなり真ん中に入っていると思います。

続いてM27も導入してみましたが、ベガの時よりは少し真ん中からズレていますが、そこそこの精度だと思います。少なくとも画面内には入ってくるので、あとは方向ボタンを押してマニュアルで微調整すればいいのかと思います。
61_28


まとめと今後

一通り試しましたが、プレートソルブもかなり安定していて、全く問題なくうまく動きます。何度か試しましたが、少なくともソフトが問題で失敗するようなことはありませんでした。無料のアップデートでこれだけ使えるようになるのなら、とてもありがたいです。

あえて注文をつけるとしたら、
  • 背景の色はどうあれ、恒星をもう少し見えるようにストレッチを工夫してほしい。
  • 恒星が認識できたら、マーキングするなど、うまくいっているかどうかをユーザーにわかるようにしてほしい。
  • SynScan Proを通常使う時のアプリの面積に比べて、AutoAlignで使うときの画面の面積をかなり広げる必要があるので、自動で大きさが切り替わるとか、うまくデザインして欲しい。
  • 他のソフトでカメラが接続されていても、SynScan Pro側でカメラを認識できるようにして欲しい。
とかでしょうか。特に最後のカメラの認識ですが、ドライバー絡みなので難しいと思いますが、カメラを1台で運用する場合にはカメラの切り替えは(特に低温にしている時などは)大変で、使い勝手に大きく差が出るかと思いますので、もし実現できるなら検討していただければと思います。


SWAgTiで使えるか?

その上で、このSynScan Proのプレートソルブが、元々の目的のSWAgTiで使えるかどうかの議論をしてみたいと思います。

まず、SharpCapのプレートソルブを一度でも使うと、その後の長時間撮影の時にSynScan Proとの接続が不安定になることが問題です。でもプレートソルブ自体は相当便利で、これまで単機能に近かったSWATにAZ-GTiの機能を足すことで目玉のプレートソルブを使えるようになるのなら、かなりの進化になります。

では今回のSynScan ProのプレートソルブがSharpCapのプレートソルブの代わりになるかというと、結論としては十分代わりになるのではというのが、今の所の私の見解です。これをきちんと判断するためには、いくつか確認しておきべきことがあります、

まず、カメラを一つしか使っていないことです。SWAgTiの特徴の一つに、SWATの高精度追尾を利用したノータッチガイドを実現するというのがあります。すなわち、ガイド用のカメラを省いているので、カメラは撮影用一つしかないのです。

今回は焦点距離250mmの鏡筒に取り付けた1/1.2インチの撮影用カメラでSynScan Proでもプレートソルブができました。まず、この撮影カメラでプレーとソルブが問題なくできたということは特筆すべき事柄として認識すべきだと思います。その上で、上の本文中にも書きましたが、カメラが一台なので、ソフト間をまたぐ時にカメラの接続をオンオフする必要があります。特に、撮影用に低温にしている場合には、これは大きな手間となるでしょう。

SWAgTiの場合、実質的には
  1. 最初は常温でSharpCapでピントなどを合わせて、
  2. SynScan Proに切り替えてプレートソルブ
  3. 再びSharpCapにカメラを切り替えて、SynScan Proで自動導入
  4. 画面内に天体が入っていることを確認して、マニュアルで位置を微調整
  5. カメラを低温にして、撮影する
というような手順になると思います。長時間露光を目指しているので、天体をコロコロ変えるようなことをすることはないと考えると、最初に一度プレートソルブができればいいという考えです。

天体を変えるとき、例えば一晩に複数の天体を撮影する場合は、カメラ温度を一旦上昇させてカメラを切り替えて、プレートソルブを含めて(SWATで追尾しているため、いずれにせよAZ-GTiの位置情報は役に立たないので)一からアラインメントをする必要があります。プレートソルブをするためだけに一旦カメラの温度を上昇、撮影時に再び温度を下げるというのが余分な手間となります。温度の変化は結露などのトラブルになることもあるので、本来ならこれは避けたいところです。

一晩で一天体しか撮影しない、もしくは天体の切り替え際アランメントの際に温度の切り替えを許容するのなら、今回のプレートソルブは十分実用になるでしょう。SharpCapでのプレートソルブがSynScanとの接続を不安定にするので実質使えないことを考えると、大きな進歩です。

さて、今回のテストは少し雲があったときに試していて、テスト終了間際にさらに雲が厚くなってきたので、撮影までには至りませんでした。これ以上のSWAgTiでの使い勝手は、実際に撮影した時にまたレポートしたいと思います。


前回の記事で、SWAgTiのディザーがうまくいくかもと書きましたが、まだ確証がありませんでした。


少し晴れ間があった日の夜、改めてディザー撮影ができるかどうか試してみました。長時間露光が効く天体ということで、M27亜鈴状星雲の羽を狙うことにしました。 

最初に結果だけ書いてしまいます。3分露光で40枚、2時間分の撮影ができましたが、
見事にディザーで画面を揺らすことができました!

動画で示します。ピョコピョコずれているのがわかるかと思います。
Blink

これで縞ノイズが解決されるのか、画像処理までしてみます。


設定

今回のSWAgTiのディザーをソフト的にどう設定したのか、詳しく書いておきます。

ディザーですが、通常の場合はオートガイド撮影が前提で、オートガイドによってソフト側から撮影中に信号を出して架台を制御できる状態にしているわけです。ディザーはそれに加えて1枚1枚の撮影の合間に、架台に信号を出して少しだけ(数〜数十ピクセル)画角をずらし、ホットピクセルが重ならないようにして、また撮影に入ります。

通常のディザー撮影から考えると、SharpCapのディザー撮影はかなり特殊です。まずガイド撮影やディザーは基本的にライブモードを使います。なぜこう設計したのかは少し疑問もあるのですが、とにかくライブモードでしかガイド撮影もディザーも出来ません。さらに特殊なことは、SharpCapでは、オートガイドなしでディザーすることができます。要するに、ガイド鏡がなくても、PHD2などのガイドソフトを使わなくても、それらとは独立にディザーができてしまうということです。もちろん、ディザーで架台に信号を送る必要はあるので、その制御のためのセットアップは必要です。それでもこの「オートガイドが必要ない」ということは、SWAgTiのお気楽撮影の目的にかなり合致していて、今のところSharpCap以外にガイド無しでディザー出来るソフトは、少なくとも私が探した限りでは見つかりませんでした。今回SWAgTiの撮影ソフトにSharpCapを選んだのは、ガイドと独立してディザーができるというのが1番の理由です。だって、SWATの追尾性能が飛び抜けていいのに、あえてガイド鏡とか用意するのはなんか負けた気がするからです。

そのディザーの設定です。まずはSharpCapの設定のガイドタブから。
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  • 「ガイディングアプリケーションは」3つ目の「ガイディング無し」を選びます。これでガイドは無しでディザーのみできるようになります。
「ディザリング」のパラメーターは状況に応じて適当に設定しますが、重要なのはどれだけずらすか、収まるまでにどれくらいかかるかでしょうか。
  • 今回はディザーでの揺れ幅を見るために「最大ディザステップ」をかなり大きくしています。これはもっと小さくてもいいでしょう。
  • 「最小整定時間」はある程度長めの方がいいかと思います。ディザー時にAZ-GTiを動かすのですが、モーターの精度がSWATと比べて劣るので、キックしてしばらく揺れる可能性があります。一年前のテストではそんな兆候が見られたのですが、今回撮影した画像を見ている限りではキックのようなものは確認できなかったので、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。

次に、ライブスタックモードでのガイドタブの設定です。
14_cut
  • 最初の「Monitor Guiding Applicaton」にチェックを入れると、実際にディザーされます。
  • 「Only stack when guiding is active」はチェックしましたが、ちょっと確かめきれていません。これがないとディザーしている最中もライブスタックするかもしれません。
  • 私は3枚撮影するごとにディザーするようにしています。1枚ごとにディザーをかけると撮影終了までの時間が増えてしまからです。
  • 「Reduce Exposure While Dithering」はオンにしておいてください。長時間露光に設定してあっても、ディザーの最中は短時間露光に勝手に切り替えてくれます。揺れが収まったかどうか見るのに、短時間露光で比較することが必要になります。
  • 右に、ディザーやドリフトなどで中心からずれていくと、プレートソルブを使って元に戻すという機能もあります。今回は使っていませんが、M27のような中心が決まりやすい天体はオンにしておいたがいいかもしれません。

もう一つ重要な設定があります。ライブスタック画面左の「Raw Frames」のところです。
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  • ここを「Save except for when Paused/Dithering」にしておきます。こうしないと、ディザリング中の短時間露光の画像が何枚も保存されてしまいます。
今回は露光時間を180秒、ゲインを200でHGCモードにしてライブスタクを始めると、3分ごとにRAW画像が保存され、3枚ごとにディザーが適用されます。ディザーが動いているかどうかは、ライブスタックパネルの「Log」タグを見ると、実行時に色々メッセージが出てくるので、それを読むとうまくいっているかなど詳細が分かります。

あとは通常のライブスタックと同じでしょうか。あ、一つ忘れそうなことがあります。毎回のことなのですが、AZ-GTiで追尾をオフにしても、SharpCapでライブスタックを立ち上げた瞬間になぜか強制的にAZ-GTiの追尾がオンになります。ライブスタックをオンにしたときに、毎回必ずAZ-GTiの追尾を改めてオフにするようにしてください。そうしないと2重で追尾することになり、星が画面内を流れていきます。


プレートソルブがトラブルの種

撮影中は少し雲がかかっていましたが、基本的に安定していて順調でした。前回書きましたが、プレートソルブが安定性に関係するのは確実みたいです。

まだ一回しか試せてませんが、最初にプレートソルブをしてから長時間露光を開始すると、やはり1枚目の途中でSharpCapの「望遠鏡制御」のところの「赤経」の更新頻度が徐々に広がり、程なくして更新が止まります。その後、ディザーをするときにSharpCapからSynSan Proに信号を出しても反応がないので、エラーダイアログが出てきます。

一旦、AZ-GTiの電源を落とし、PCも再起動し、次はプレートソルブなしでマニュアルで再度初期アラインメントから試すと、不安定なところは微塵も出ずに、まるまる2時間連続で撮影ができました。プレートソルブの具体的などの操作が原因なのかまでは特定できていません。できればプレートソルブはつかいたいので、何か回避策がないか今後探っていきたと思います。


ライブモードでの実際のディザー撮影

さて、撮影ですがディザーはライブスタックモードですることになるので、必然的に常時仕上がり具合を見ることができます。これが結構楽しかったです。なんと、総露光時間わずか30分ですでに羽が確認できます。
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鏡筒のせい?カメラのせい?ちなみに鏡筒は最近手に入れたRedCat51で、カメラがUranus-C Proです。フィルターはサイトロンのDBP(Dual Band Pass)の48mmをRedCatに取り付けて使いました。機材については次回記事で詳しく書きます。

約2時間経ったのちのライブスタック画像です。羽もさらに濃くなっています。
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うれしいことに、少なくともこれを見る限り縞ノイズは全く発生していないようです!

2時間少し撮影しましたが、最後の数枚は雲が出てきたので、ちょうど2時間分を画像処理に回すことにします。上のライブスタック画像は最後の雲の画像も入ってしまっていますが、長時間露光から考えたら影響は少ないようです。


ライブスタックとWBPPでのスタック

ライブスタック画像をfits形式で保存したRAWファイルと、PixInsightでスタックした画像にどれくらい違いがあるか比較してみましょう。一見したところではクオリティーは同じかと思いました。

これがライブスタック画像をオートストレッチした画像です。
Stack_16bits_41frames_7380s_22_23_34_cut


次がPixInsight上でスタックした画像をオートストレッチした画像です。
180.00s_RGB_cut

ほとんど同じに見えるかもしれませんが、よく見るとライブスタック画像の左上の真ん中よりに明るい緑の輝点群が、右下に軽く青の輝点群があるのがわかります。ホットピクセルが残っていて、ディザーで散らされたものの残りと思われます。PixInsightではWBPPの際に、Cosmetic CorrectionをAutomaticでhigh sigma = 10でかけたので、そこでホットピクセルが除去されたのかと思われます。ライブスタックでもSharpCapで簡易ホットピクセル除去をするだけでも、ライブスタック画像もそのまま処理できるくらいにホットピクセルが消えるかもしれませんが、今回は試していません。

今回、WBPPではフラット補正もダーク補正もしていません。RedCat51と1/1.2インチのUramus-Cではフラット補正は必要がないほど周辺減光はないです。あ、CMOSセンサー面に埃がついているとダメですよ。フラット補正が必須になります。フラット補正をサボるためには、少なくともセンサー面はきれいにしておきましょう。ダーク補正もしていないので、ホットピクセルとコールドピクセルはCosmetic Correctionで除去しているだけですが、これで十分なようです。ダーク補正をしない場合は大きなメリットが一つあります。ダーク補正によってダークカレント起因のダークノイズが余分に加算されないということです。今回のような強い光害補正フィルターを使った「暗くて」、さらに「長時間露光」での撮影では、背景などの淡い部分がダークノイズで制限されている可能性があり、画像処理でダークノイズを増やさないことはかなり有利になります。具体的には、ダーク補正をするとダークノイズは√2倍になり、信号は増えなくて1倍のままなので、仕上がり画像のSN比の違いは最大で1/√2 = 0.71倍となり、損をします。ダーク補正についてのもっと詳しい計算を知りたい方はここをご覧ください。


一つ心配だったのは、バイアス補正でした。今回、バイアス補正もしていません。なのでバイアスファイルに含まれる決まった模様などのコヒーレントなノイズは除去されていないことになります。バイアスファイルに含まれるノイズは読み出しノイズと考えていいかと思いますが、長時間露光で相対的に読み出しノイズは効きが弱くなるはずなので、みている限り今回は影響がないように思われます。

と、今のところこのセットアップだとフラット補正もダーク補正もバイアス補正も、あえてしなくても問題はなさそうです。仮に多少画質に影響はあったとしても、フラットファイルとダークファイルとバイアスファイルを撮影する手間を省くのは、相当気楽です。


画像処理

画像処理はSWAgTiのコンセプトを崩さないように、できるだけシンプルにしたいと思います。WBPPでも、上で書いたようにライトフレームだけを処理しています。

上で書いたように、このRedCat51とIMX585の1/1.2インチ程度の範囲だと、光学的なフラット補正無しでも周辺減光がほぼありません。一度ABEの4次をかけましたがほとんど補正しなかったので、簡単のためPixInsightでのソフト的なフラット補正も無しとしました。 
masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB
スタック直後の画像の強あぶり出し。周辺減光はほとんど見られません。
左にカブリが少しあるように見えますが、これは実際に何か構造があるようです。
この構造はかなり淡く、今回の露光時間ではまだノイジーで
うまく出すことは諦めました。

結局PixInsightで使ったのは、スタックでWBPP、色調整でSPCC、恒星出しにBXT、ストレッチにiHDR、最後にNoiseXTerminatorで背景のノイズを緩和して、StarNet++で恒星と背景を分離までで、あとはPhotoshopに渡します。今回iHDRがうまくいって、自動的にうまく羽根まで炙り出してくれたので、Photoshopでは背景と恒星を重ねること以外には、ホントに最後微調整したくらいです。


結果

まずは全体像です。
180.00s_RGB_SPCC_BXT05_02_10_iHDRx3_NXT05_015_back2

少し画角が広いので、クロップしてみます。わずか2時間の露光ですが、既に羽もはっきりとわかります。

180.00s_RGB_SPCC_BXT05_02_10_iHDRx3_NXT05_015_back2_cut

肝心な縞ノイズですが、拡大した画像でも全く見えていません。

SWAgTiのディザー撮影大成功です。

これでSWAgTiが一気に実用的になりました。今後デフォルト機器として、使う頻度が増えてくると思います。


まとめ

SWAgTiのアイデアが出てから苦節1年。縞ノイズがどうしても気になって、どうやって解決しようかずっと悩んでいました。

一時はSharpCapとSynScan Proの間に何かソフト的に割り込ませようとも思いましたが、プログラミングはあまり得意でないので時間がかかりそうでした。でもそこにSharpCapが大幅改善されていて、(プレートソルブで不安定になる以外は)ほぼ目的通りのことができました。正直言って、わざわざガイド無しディザーを実用レベルに持ってくるためのアップデートだったとしか思えません。でもそもそもガイドも無しでディザーをやりたい人が実際どれくらいいるのでしょうか?たまたま開発がこの方向で進んだのか、もしくは誰かが開発者に助言してくれたのか、最近SharpCapフォーラムなどあまりフォローしていないので状況がわかっていませんが、とにかく感謝でしかありません。

ここまで使えるようになると、このSWAgTiで色々試したいことが出てきます。軽くて、コンパクトで、設置も楽。精度も出るし、機能的にも十分。5kg以下の機材は全てSWAgTiまかせにしてよさそうです。CGX-LもしくはCGEM IIとSWAgTiの2台体制でも、時間的にも精神的にも十分余裕が出そうです。使用頻度が大幅に増える予感しかありません。


久しぶりのSWAgTi ネタです。

1年ほど前から試していた
SWAT+AZ-GTi = SWAgTi (gは発音せず、スワッティ)。


SWATの追尾精度とAZ-GTiの柔軟性を合わせて、単機能に近いSWATに自動導入やプレートソルブなどの現代的な便利な機能を追加して使うことができるようになります。かつ追尾精度はSWATそのままと、互いの弱点を補い、いいとこ取りの機能となります。


SWAgTiの弱点

SWAgTiで目指していたところは「気軽な撮影」です。元々SWAT自身は1自由度の追尾精度がものすごくいい赤道儀で、ガイドなしでもそこそこの焦点距離で星を点像にすることができます。以前の SWAT350のテストでは、370mmの焦点距離で3分露光の場合、ガイドなしで歩留まり率は100%だったので、実用的にも十分だと思います。ガイドなしで気軽なSWATの撮影に、AZ-GTiの2自由度の便利な機能を追加して、さらに気軽にしようというのがアイデアです。

これまでのテストの過程で出てきた唯一の欠点が、長時間撮影時にディザーができないことです。


ディザーができないと、長時間撮影のドリフトなどでホットピクセルやクールピクセルが縞ノイズを作ることがあります。


実際に、SWAgTiの長時間撮影ででてきた縞ノイズの例がここにあります。


上のページでも挑戦していますが、縞ノイズは画像処理で改善しようとしても、緩和することはあっても完全に消すことはかなり困難です。できることなら撮影時に縞ノイズが出ないようにしたほうがはるかに楽で、ディザーはその解決策としては最も有効な方法です。

ところが、SWAgTi動作時にはSWAT側で恒星を追尾して、AZ-GTi側の恒星追尾を切る必要があり、AZ-GTiの恒星追尾がオフになるとSharpCapで出すディザー信号がAZ-GTiのモーター側伝わらずに、ディザーができないという結果になってしまったのです。

もちろんSWAT単体ではディザーすることはできないので、SWAgTiがSWATに比べて不利になったということではありません。ドリフトは数時間以上の長時間撮影で問題になってくるので、短時間撮影だと縞ノイズはそこまで目立ちません。SWAT単体で長時間撮影する際にどうするかですが、SWAT開発者が去年の胎内の星まつりで示してくれたように「撮影中に何度かわざと三脚をずらしてドリフトする方向を変える」とか、今年の福島の星まつりで見せてもらった10時間以上かけて撮影したというオリオン大星雲では「日を変えて何度も撮影することでドリフトの方向を一定にしない」などの対策をしているようです。ある意味余計な機材を使わないシンプルな解決策で、開発者の方が「そんな複雑なことはしてないですよ」とおっしゃられていたことが印象的でした。

なので、少し手間をかければ縞ノイズを避ける方法はあるということですが、私的にはやっぱりなんとかしたいので、再度ディザーに挑戦です。


ソフト的に何か間に割り込ませるか?

では具体的にどうするかですが、最初はSharpCapとAZ-GTiの間に何かソフト的に挟んで、命令を無理やり出せるようにしようと考えていました。Uedaさんがトラバースの赤道儀化でSynScan Appとトラバースの間に赤道儀のふりをするような別ソフトを間に入れて上手くいっているので、同じような手法が使えないかと思いました。幸いなことにソースコードを公開してくださっていて、C#で書かれているようです。初めての言語だったのですが、コードは規模的にも大きくなく、自分でビルドまでできて、とてもいい勉強になりました。SWAgTi用にどうハックすればいいのか、ある程度の目安が立ってきたので、とりあえず取り組んでみようと思っていた矢先でした。


SharpCapが変わった?

まずは状況の確認で、以前のSWAgTiの設定を再現します。再現といっても、プログラミングのための準備なので昼間の明るいうちでの確認になります。SWATとAZ-GTiを組み合わせて、SynScan ProからAZ-GTiに接続し、SharpCapからSynScan Proを操作できるように接続します。

ところがです、いつぞやのSharpCapのプレートソルブ関連の大幅アップデートらへんのことだと思うのですが、AZ-GTi側の恒星追尾をオフにしてもどうもディザー信号がきちんとモータまで届いているようなのです。

具体的にはSharpCapの右パネルの「望遠鏡制御」のところを見るのですが、AZ-GTiが恒星を追尾していると「方位」「高度」「赤経」が動き続けます。AZ-GTiが恒星を追尾を止めると「方位」「高度」は止まり、「赤経」のみ数値が動き続けるようになります。ここで SWATに恒星追尾を引き渡すと、ここまでのAZ-GTiの代わりにSWATが動き出し実際に星を追尾してくれるようになります。この状態でも、SharpCapの「望遠鏡制御」のところの矢印ボタンを押すと、信号はきちんとモーターまで行き、見ている方向を変えることができます。その際「方位」「高度」の数値もモーターへの信号に連動して動きます。ここまでは以前にも試した結果と同じでした。

ここでSharpCap上でライブスタックを立ち上げてディーザーをオンにします。以前はディザーをしようとしても実際にはモーターまで信号がいかなくて、画面は全く揺らされないことは確認していました。でも今回「望遠鏡制御」の数値を見ている限り、ディーザーのたびに「方位」「高度」の数値が動いているのです。以前この数値が動いていた記憶は全くない(動いていれば必ず気づいていたはず)ので、勘違いでなければ何か状況がわかっているはずです。少なくとも、現段階でこれらの動いている数値を信じるならば、ディザーはきちんと作動していることになります。


夜のテストは全くうまくいかず

昼間に試しただけでは、PC上に出てくる数値は動いていても実際の撮影画面が動くかどうかは見ていないので、まだ本当にディザーが動いているかどうかの確証は持てませんでした。なので夜になって実際に試してみました。ところがディザーを試す以前に、かなりひどい状況にぶち当たってしまいました。

IMG_9758

具体的には、一眼レフカメラ(EOS 6D)をSharpCapに繋ぎ、AZ-GTiで操作しました。CMOSカメラでなくてもSharpCapに繋ぎさえすれば、一眼レフカメラで極軸調整もプレートソルブも、全然問題なくできます。


今回も極軸調整をFS-60CBと6Dの画面で直接やり、初期アラインメントも6Dでプレートソルブを使うことで簡単に済ますことができました。
スクリーンショット 2024-08-03 215020_cut

その後、ターゲット天体を導入し、SharpCap右パネルの「望遠鏡制御」の矢印ボタンを使って位置決めをします。ここら辺までは問題ないです。

次に追尾をSynScan ProからSWATに渡して撮影に入る準備をします。ところが長時間露光を開始すると程なくしてSynScanとの接続がダメになります。ディザーをするためにはライブスタックモードにしなくてはいけません。 この接続トラブルはライブスタックに関係なく、ライブスタックをする以前に露光時間を分のオーダーとかに長くした時に発生するようです。SharpCapの「望遠鏡制御」のところでAZ-GTiからの位置情報が数値で見えるのですが、SWATで追尾しているので「赤経」の数値だけが増えていきます。最初はスムーズに数値が変わるが見えるのですが、徐々に数値が飛び飛びになり、最後は止まってしまって、それ以降は接続は切れているような状態になります。処理に時間がかかっているような印象で、何度やっても同じ状況になります。最初はCPUの負荷か何かと思って、SynScanの再起動、SharpCapの再起動、最後はPCまで再起動でもダメでした。

実はSharpCapとSynScan Proとの接続不安定な時は、SynScan Proを管理者権限で立ち上げると安定になるという情報があります。知り合いが試してみて、管理者権限での起動がものすごく効いて、実際にかなり安定になったという例を聞いています。ですが、今回の場合は管理者権限も効果がなく、状況は変わりませんでした。

次に一眼レフカメラが原因かと思って、ASI294MC Proに変えたり、さらにはPCが何か原因の可能性があるとも思い、別PCを持ってきて試しましたが、いずれの場合も最初はプレートソルブまで含めて順調なのに、長時間露光(180秒)の撮影の途中でSynScanとの接続がダメになり、その後はPCを再起動するまでは何をやってもダメです。ダメというのは、SharpCapからSynScan Proになんらかの信号を送った時に接続エラーが表示されるということです。PC再起動後はまたプレートソルブもできるようになりますが、長時間撮影開始でダメになると言うのを何度か繰り返しました。というわけでこの晩はここで諦めましたが、これまで電視観望で同じような状況にはしていたので、もしかしたら長時間露光がダメったのかもしれません。電視観望ではせいぜい10秒露光が最長ですが、今回は撮影ということで3分露光にまで伸ばしています。長時間露光が何か負担になっているのかもしれません。

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長時間露光を開始すると毎回こんなエラーが出てしまします。 


昼間に原因究明

次の日、昼間に今一度、全く同じ設定で試しましたが、なぜか今度は何をやっても安定します。カメラを変えようが、PCを変えようが、昨晩のトラブルは何だったんだというくらい、どうやっても不安定な状況を再現できません。3分の長時間露光でも全く問題がないです。一体何が問題なのでしょうか?

違うことといえば、昼間で実際に星が見えないので、プレートソルブはしていませんし、ライブスタックも星の位置合わせをせずに単に重ねていっているだけす。


再び夜に試して光明が!

その晩、昼間の状態を再現すべく、試しにプレートソルブなしでマニュアルアラインメントしてから長時間撮影してみたら、何と完全安定です。その後すぐに曇ってしまったので、プレートソルブありで不安定になるかどうかのテストができませんでしたが、長時間露光そのものは大丈夫ということはわかりました。ディザーも実際一回動かすことができて「望遠鏡制御」のところの「方位」も「高度」も数値が変わったのですが、肝心のディザー前後の撮影画像比較での動きがあったのかなかったのか、あったとしても移動量の設定値が小さ過ぎたようで、確証が得られるほどの揺れは確認できませんでした。

雲でこれ以上試せないので、この日はこれで撤収ました。今の段階でディザーが出来ているかどうかの判断はできていません。でも見込みはありそうです。今後もテストを続けたいと思います。

(2024/8/17追記: ディザー撮影成功しました!)



日記

あまりブログ記事にならない細かいネタも多いので、久しぶりに日記としてまとめて書いておきます。

お盆の季節になりました。8月7日の富山環水公園の観望会に引き続き、8月10日も高岡市のおとぎの森で観望会がありました。2週連続になります。初参加の観望会で、これまでは他の予定と重なることも多く参加できてませんでしたが、今年はお盆の休暇の初日で少し余裕もあるので参加することに決めました。機材は先週とと同じく電視観望で、20時20分頃に月によるスピカ食があるとのことで、外部モニターも用意して大勢で見ることができればと思っていました。夕方のまだ明るい頃は月もが見えていたのですが、暗くなり始めて機材も準備もできたころには空一面が曇ってしまい、それ以降は星も明るい月さえも、カメラを通した電視観望でも全く見えないくらいの雲になってしまいました。お客さんは100人以上と、かなりたくさん来てくれていたので、とても残念でした。もうこうなるとどうしようもないので、天文の話やクイズをずっとしていました。一番受けたのはASI294MCで暗闇が見えるかどうかで、カメラの周りには子供達が群がっていて画面に映る自分の姿を見て大騒ぎでした。

次の日の8月11日は自分の出身高校の天文部の合宿に参加させてもらいました。場所は奥飛騨で、富山からだとそう遠くない距離なので気軽に参加できました。昨年の12月にも豊田市元気村の合宿にも参加させてもらったのですが、それに引き続きとなります。年末の合宿もそうでしたが、残念ながら今回も天気には全く恵まれず、星一つ見ることもできませんでした。なんでもコロナ後にやっと復活した1年前の同じ場所での合宿の時は台風で、ここ最近の合宿は天文部としては非常に厳しいとのことでした。私は日を跨ぐ前くらいに帰路につきましたが、次の日は神岡の道の駅にある「カミオカラボ」まで行くそうです。でも夜の天気予報はあまり良くありません。ペルセウス座流星群なので、少しでも見えることができればいいのですが。

実は私も奥飛騨まで行く途中にカミオカラボに寄っていきました。
IMG_9803

IMG_9810
こんな面白い写真が撮れます。


とにかく最近は天気が全然ダメです。昼間はまだ比較的晴れているのですが、夜になるとドン曇りというパターンです。ペルセウス座流星群も自宅から雲の薄いところで1個だけ見ましたが、とても撮影とかするレベルの天気ではないです。せっかくの休暇でまだ月が昇っている時間もかぎられているので、なんとかお盆中に長時間撮影をしたいのですが、天気予報を見る限りまだしばらくは難しそうでうす。


「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回までに機材の準備はある程度整いました。今回は、実際に動作させて、画面に天体を映してみます。




ここで準備するもの

今回必要なものは主に電気関連で、
  • ノート型などのWidows10以上が走るパソコン (PC)
  • PCとメインカメラUranus-C Proを繋ぐUSB3.0以上の、Type-Cケーブル
  • PCとガイドカメラNeptune C-IIを繋ぐUSB3.0以上の、Type-Bケーブル
  • PCと赤道儀を繋ぐ付属のUSB2.0、Type-Bケーブル
  • PCに複数のUSB端子がない場合は、USB増設アダプターなど
  • DC12V出力があるバッテリー
  • バッテリーと赤道儀を繋ぐDC電源用ケーブル(単3電池駆動なら必要ありません)
  • バッテリーとメインの冷却カメラを繋ぐDC電源用ケーブル
  • バッテリーに12V端子が1つしかないなら、二股ケーブルなど
などでしょうか。これだけでも結構大変ですね。

その他、あると便利なものですが、
  • テーブルなど、PCやその他のものを置いたりできる台
  • 椅子
などです。

IMG_8985


テーブルはホームセンターなどで適当なものを見つければいいでしょうか。コンパクトなものをさがせばいいでしょう。

椅子も適当なのでもいいですが、私は座面の高さを変えることができる作業用の椅子を使っています。具体的にはルネセイコウの作業用の椅子です。
 

少し高価ですが、望遠鏡で星を見るときに高さ調整できるのでとても使い勝手が良く、自宅でも玄関にいつも置いてあり、遠征には車に積んで使っています。


ソフトウェア

PCはWindows10以降が動くものなら問題ないでしょう。ソフトウェアは
などが必要になります。それぞれダウンロードしてインストールしておきます。ASCOMプラットフォームはインストール時に、各種ランタイムライブラリーなどのインストールを要求されるかもしれませんので、指示にに違ってください。

SharpCapは無料でも使えますが、有用な機能の多くの部分が制限されています。年間2000円なので、できれば有料版にアップグレーとしておいた方が有利です。しらはいはPayPalが楽でいいです。

カメラのドライバーがないと、SharpCapからカメラが認識されません。忘れないようにインストールしておいてください。同様に、PHD2からPlayerOneのカメラを使うときは、ASCOM経由で使うことになるので、PlayerOneカメラ用のASCOMドライバーをインストールすることも忘れないでください。詳しくはここを参照してください。



機材の設置

機材を夜に外に設置します。空が十分に開けた場所を探しましょう。周りに明るい光があると、撮影時に映り込むこともあるので、できるだけ暗い場所を探しましょう。街の大きさにもよりますが、住宅街程度でも、近くに街灯などがなければおそらく大丈夫でしょう。

まず最初に、すべてのケーブルを接続しましょう。できれば機材の設置も、ケーブルの接続も、できれば暗くなる前の明るいうちに済ませておいた方がいいかと思います。ただ暗くならないと、周りの街頭の明るさなど、わからないこともあるので、事前にロケハンで暗くなる時も合わせて見ておいたほうがいいかもしれません。

今回ケーブルは5本あります。USBが3本で、DC12Vが2本です。PCの電源ケーブルも必要なら6本でしょうか。それぞれ絡んだりしないように接続します。特にカメラに繋ぐUSBケーブルと、冷却カメラに繋ぐ電源ケーブルは、撮影中は時間と共に赤経体が動いていくので、引っ張られたり、噛んだりしないように注意が必要です。ケーブルタイやスパイラルチューブなどを使い、あらかじめまとめておくと良いかもしれません。

赤経体は鏡筒部が上になるような回転方向に、赤緯体は鏡筒先端が一番上になるような「ホームポジション」にして、鏡筒先端が北向きになるような方向で設置します。その際、方角はスマホなどのコンパスアプリを使うのが便利です。アプリによっては「磁北」ではなく「真北」を選べるものがあります。「磁北」は天体観測に必要な「真北」から7度程度ずれているので、もし「真北」が選べるならそちらを選んでください。スマホを赤道儀本体に真っ直ぐになるような面でくっつけて調整するといいでしょう。正確な方向はのちに「極軸合わせ」でするので、ここでは数度の範囲で設置できれば十分です。

三脚は赤道儀がざっくりでいいので水平になるように、足の長さを調整します。足の長さはできるだけ短くしておいた方が、安定になりますので、むやみに伸ばさないようにしましょう。


SharpCapの立ち上げと極軸合わせ

まずはPCとガイドカメラ、PCと撮影用の冷却カメラがUSBケーブルで接続されていることを確認し、PCの電源を入れ、SharpCapを立ち上げます。

SharpCapから最初はガイド用のカメラを接続します。SharpCapの上部のメニューの「カメラ」から今回はガイドカメラとして使っているNeptune II-Cを選択します。
01_SharpCap_Neptune2

画面がカメラ画面に切り替わったことを確認します。明るいライトなどをカメラ前にかざしてみると、画面に何か見えるはずです。何も反応がなく真っ暗な場合は、レンズキャップを外し忘れていないか確認してみてください。

SharpCapの右側のパネルの「カメラコントロール」から、「露出時間」を800ミリ秒とか、1000ミリ秒程度にして、「アナログゲイン」を400程度の高めにして、ガイドレンズのピントを合わせてみます。すでに鏡筒が北の空を向き、北極星の近くを見ていると思うので、うまくピントが合ってくると星が見えてくると思いますが、その星の一つ一つが一番小さくなるようにピントを調節してください。

もし星が暗くてみにくい場合は、アナログゲインをもっと上げるか、右側パネルの「ヒストグラムストレッチ」で雷マークのボタンを押してオートストレッチしてみてください。暗い星も一気に見やすくなると思います。ただし、このオートストレッチ機能はSharpCapの有料版のみで使える機能なので、無料版を使っている場合は、手でこのオートストレッチ相当のことをしてやる必要があります。具体的には、ヒストグラムストレッチ画面に3本の黄色の縦の点線があるのですが、そのうち左側と真ん中の線を移動して、ヒストグラムの山を挟むようにしてやります。

ピントが合ったら、そのままの状態にして、次の極軸合わせに移ります。


極軸合わせ

まず前提条件として、この極軸調整機能も先ほどのオートストレッチと同じで、SharpCapの有料版のみで使える機能です。無料版では使うことができないので、別途SA-GTi付属の極軸望遠鏡などで極軸を合わせる必要があります。でも、極軸望遠鏡で合わせた精度は、SharpCapで合わせることができる精度に遥か及ばないので、SharpCapの有料版を購入することを強くお勧めします。2024年2月現在、年間2000円です。極軸調整だけのためこれだけ払っても十分お釣りが来るくらい、SharpCapはとても強力です。

というより、電視観望で撮影をするためにSharpCapをフルで使うので、あらかじめ有料版にしておく必要があります。そうでないと、便利な機能のかなりの部分が使えなかったり、撮影画像に透かし文字が入ったりすることがあります。

さて、実際の極軸調整を始めましょう。鏡筒はホームポジションに戻してあるので、ある程度北極星の方向をむいているはずです。SharpCapが立ち上がり、ガイドカメラはつながっていますね。この時点ではまだ赤道儀の電源を入れる必要はありません。

まずは準備です。
  • SharpCapのメニューの設定から「極軸合わせ」タブを選んでください。「大気差を補正する」を選択し、インターネットに繋いだ環境で「タイムゾーンから自動的に推測する」を選びます。これがうまくいかない時は「以下の位置情報を使用」を選び、マニュアルで入力する必要があるのですが、経度緯度が何度何分何秒の形式になっていなくて、何点何々度形式なので、正確な値を入れるのに苦労します。まあ、そこそこ合っていれば多少ずれていてもたいしたずれにはならないので、必要なら適当に何点何度くらいまでは入れておきましょう。

実際の曲軸合わせです。

1. 「ツール」「極軸あわせ」から「極軸調整」を選択します。
2. その時のカメラの露光時間は800ミリ秒とか1.6秒くらにしてください。ゲインは高めの400くらいでいいと思います。この時点で、右画面のヒストグラムで雷ボタンを押してオートストレッチをしておくと、星が画面に明るく見えるようになります。
3. 下の「Next」ボタンを押します。
02_polar1

4. 星の位置の認識がうまくいき、位置認識の計算が終わると、下の「Next」ボタンが緑色になるので、押します。
02_polar2

5. 赤経体のネジを緩めて、赤経体が動く状態にして、手で大まかに90度くらい回転させ、鏡筒が赤道儀の横側にくるようにして、ネジを固定します。
IMG_8963

6. 再び星の認識がうまくいき、位置認識の計算が終わると、下の「Next」ボタンが緑色になるので、押します。
02_polar6

7. ある星から長い黄色の線が出ているのでl、赤道儀の上下(ピッチ)方向調節ネジと、横(ヨー方向)方向調整ネジを使って、その線が短くなっていくように、調整します。
02_polar7

8. 線が短くなると同時に、画面右下の「Polar Align Error」の数値が小さくなっていくので、画面を見ながら線の長さが最短近くになるまで合わせ込みます。数値が1分角以下になっていれば十分です。
02_polar8

これ以降は、赤道儀を蹴飛ばしたりしないでください。万が一赤道儀に何か当たって位置がずれてしまったら、この極軸合わせからやり直します。


メインカメラの接続と、ピント出し

いよいよ、メインのカメラの画像を見てみます。SharpCapのメニューの「カメラ」からUranus-C Proを選びます。
01_SharpCap_Uranus

方角的には真北を向いているので、星は入っているはずですが、ピントがずれていて星はほとんど見えていないと思います。

鏡筒のフォーカサーの上についているピント固定ネジが緩んでいることを確認して、フォーカサー左右についているピント調節ネジを、SharpCapの画面を見ながら回してみます。SharpCapの設定は、露光時間は800ミリ秒とか、1000ミリ秒くらいでいいでしょう。アナログゲインは400程度の高めの値にします。

画面が真っ暗のままで全然見えない場合は、鏡筒の先のキャップを撮り忘れていないか確認してみてください。

最初は左側のピント調節ネジで粗動でざっくり合わせてみて、画面に出る星が小さくなってきたら、SharpCapのメニューと同じ段の右の方にある「ズーム」を100%とか200%にして星を拡大してピントを合わせやすくしてから、右側のピント調節ネジの微調整ネジで調節するといいでしょう。

ピントが合ったら、フォーカサーの上部のピント固定ネジを締めておくと、これ以上ピントがずれなくなります。でも次回ピント調整する時は必ずこのネジが緩んでいることを確認してから調整するようにしてください。ネジを締めたまま調整しようとすると、最悪壊してしまいます。

さて、実際にピント合わせをやってみるとわかるのですが、うーん、かなり揺れますね。三脚の頭を手で回転方向に捻ってやると結構動きます。やはり評判通り三脚が少し弱いようです。これだとピント調整する時に鏡筒に触れるだけで揺れ過ぎてしまい、かなり合わせにくいです。少しでも揺れを抑えるために、とりあえず赤道儀と三脚の間に入っているハーフピラーを外すことにしました。

IMG_8984

さらにですが、三脚の足の赤道儀に近い根本のネジを一本につき両側から2箇所、合計6箇所増し締めします。実際、いくつかのネジはかなり緩かったです。

これだけでも多少揺れは収まるので、ピント調整の際も、撮影の際も有利になると思います。


SynScan Proとの接続と初期アラインメント

赤道儀SA-GTiのコントロールパネルの赤いスイッチを入れて、電源をオンにします。

次に、アプリとの接続です。接続は、WiFi、bluetooth、シリアルと3種ありますが、長時間の撮影なので安定性を考えて、USBケーブルを使ったシリアル接続とします。

03_Synscan_net

ちなみにですが、iPhoneのSynScan Proを最新版にしたら、iPhoneからのWiFi接続では、「赤道儀モードか経緯台モードかの判断がつかない」とというエラーが出て、接続できませんでした。旧バージョン(1.19)のSynScan Proだと大丈夫なので、iPhone版の最新版にアップデートする際は注意してください。PCからUSBケーブルで接続した場合は、最新版のSynScan Proでも問題なく接続できました。

接続ができたら、いくつか設定です。
  • 高度制限が入っていると、高いところの天体を導入などできなくなります。「設定」「高度制限」から「Upper Go To Limit」を90度まで上げてください。
  • 緯度経度情報を忘れずに入れてください。PCと接続する場合は、自動的に情報が取れない場合が多いです。私はiPhoneのコンパスアプリを開いて、緯度経度情報を得て、それを手入力しています。

最初にやるべきことはこれくらいでしょうか。これらは最初に一度やればいいことで、大きく撮影場所を移動しなければ、緯度経度情報もいじる必要はありません。逆に、場所を移動して、最初の導入でうまくいかない場倍は、この緯度経度情報が間違っていないか疑ってみてください。


初期アラインメント

最初にやることは、SynScan Proでの初期アラインメントです。初期画面から「アラインメント」で「1スターアラインメント」を選びます。他にも何種類かのアラインメント方法がありますが、赤道儀の極軸がしっかり合わせてあること、次にプレートソルブで導入の補助をするので、1スターアラインメントで十分です。
10_synscanpro_alignment

星はターゲットのオリオン大星雲の近くの「リゲル」を選択しましょうか。
11_synscanpro_alignment_rigel

アラインメントを開始すると、赤道儀がターゲットの方向に向かって動き出します。SharpCapの画面で見ていても、星が動いていく様子が見えると思います。赤道儀が止まったら、SynScan Proは下のような画面になります。
03_Synscan_done


SharpCapの画面を見てみましょう。リゲルは画面の中に入っていますでしょうか?一つだけ明るい星ですので、入っていればすぐにわかるのですが、大抵の場合は画面の中に入ってこないと思います。でもここで落ち込む必要はありません。解決策はきちんとあります。


プレートソルブによる導入補助

次にSharpCapに最近標準で搭載されるようになったプレートソルブ機能を使って、リゲルを自動で画面中央まで持って来ることにしましょう。

まず下準備です。SharpCapのメニューの「ファイル」からSharpCapの設定画面を開き、「プレートソルブ」タブを選びます。

04_SharpCap_setting_platesolve

  1. 「プレート解析エンジン」のところで「SharpSolve(SharpCap's built in plate solver)」を選びます。もしこの選択肢が出てこない場合は、SharpCapのバージョンが古いことが考えられますので、最新版のSharpCapをダウンロードしてインストールしてください。
  2. 焦点距離は自分が使っている望遠鏡の値を正しく入れてください。
  3. 最後に一番下の「適用」もしくは「OK」を押します。

次に、同じくSharpCapのメニューから設定に行き、「ハードウェア」タブのところに行きます。
03_SharpCap_setting_hardware
  1. 「マウント」の「ハードウェアの選択」のところで、接続したい赤道儀を選びます。今回はSA-GTiをSynScan Proで操作するので「SynScan App Driver」を選びます。
  2. 一番下の「OK」を押します。
  3. SharpCap画面の右パネルの「望遠鏡制御」の「接続済み」のところの四角を押します。ASCOMを介して接続するのですが、10秒くらい待ってうまく接続されると数字などが出てきて、赤道儀がどちらを向いているかSharpCapで認識できるようになります。
01_SharpCap_ok_cut

これでだいたい準備は完了です。

実際にプレートソルブを走らせてみましょう。

1. 露光時間を3秒程度にしておくといいでしょう。短すぎると星の数が少なくて、長すぎると星が流れてしまってうまくいかないことがあります。
2. SharpCapメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。
04_platesolve

3. 今見ている画面から実際に見ている方向を計算して、赤道儀が認識している方向とどれだけ違うかの差を認識して、その差を赤道儀にフィードバックして、赤道儀が見ていると思っている方向に向きを変えて合わせてくれます。
4. うまく行くと、下の画面のようにリゲルが真ん中に来て、上部の緑色のところにプレートソルブが成功したことが表示されます。今回の場合2.72度ずれていたそうです。
06_platesolve

うまくいったら、PC上で走っているSynScan Proのアラインメント完了の意味で、星マークのボタンを押します。

その後は、SynScan Proを使って、自由に目標の天体を導入してみましょう。例えば今回の目標はオリオン大星雲なので、SynScan Proの初期画面から「ディープスカイ」を選びます。
09_synscanpro

オリオン大星雲はメシエ天体の42番目なので、「メシエ」を選び、「042」と入力し、「導入」を押します。うまく行くと、オリオン大星雲が画面に入ってくるのが見えるでしょう。

05_intro

もし画面内に入らなかったりした場合は、再びプレートソルブを走らせることで画面に入れることもできます。

今回は導入完了のここまでとします。次回は実際に撮影してみます。










プレートソルブトラブル解決集の続報です。今回はある意味決定版になっています。前回あやふやにし解決できなかったことが、かなり確実に解決できるようになりました。




SynScan Proの最新版

2023/9/2にSynScan Proの最新版(v2.4.5)がリリースされました。リリースノートによると、今回のバージョンアップでプレートソルブ関連で以下のような改善をしています。
  • Re-enabled PAE, where were disabled from 2.3.4 to 2.3.9
  • Replaced "Align with Sync" page with "Sync samples" page.
  • Multi-star alignment, where performing any of the following adds a sync sample:
  • Using one of the alignment methods from the Alignment page
  • Centering on a celestial object at the prompt after any catalog object GOTO
  • Receiving a `SyncTo` command from ASCOM with a plate-solving software
これは2022年9月にバージョン1台からバージョン2台になって以来、初めてのプレートソルブ関連の大きな改善です。バージョン2以降では、上に書いてある2.3.4でPAE(調べるとPointing Accuracy Enhancementとのことです)をオフにしたことが唯一の変更で、それも今回戻してあるということなので、それを含めて初の大きな改善となるということです。

現実に、バージョン1台でそこそこ安定だったプレートソルブ関連は、バージョン2台で不安定になりがちでした。そのため、プレートソルブを試す際は、まずは手持ちのSynScan Proを現段階で最新のv2.4.5以降にすることをお勧めします。実際に、今回かなり安定な状況を実現できています。

また、最新のSynScan ProではPCに接続されたゲームコントローラーでAZ-GTiが動かせるそうです。私はまだ試していませんが、Xbox互換、PS3互換のものが使えるそうなので、興味がある方は一緒に試してみるのもいいかもしれません。

あと、SynScan Proではなく、ただのSynScanもアップデートされていますが、こちらはProを単に機能制限しただけのようなものです。その機能制限の中にはワンスターアラインメントなどあって然るべき機能も含まれて制限されてしまっているので、私は今はProの方しか使っていません。SNS上には、Proでない方でどうしても解決しなかったトラブルが、ショップの方の助言でProにしただけで一発で解決したという例もあるみたいなので、何か理由がない限りPro版を使う方がいいのかと思います。


接続の確認

今回の動作条件は、AZ-GTiを使ったプレートソルブをするために、PCにSynScan ProとSharpCapがインストールされていて、それぞれをASCOM環境で接続するためにASCOMプラットフォームがインストールされていることとします。プレートソルブはASTAPもしくはASPSを使います。最新のSharpCapではPlatesolve3もサポートしているので使えるかもしれません(私はまだ未検証)。

1. SynScan ProとAZ-ZTiの接続

まずはSynScan ProとAZ-ZTiの接続がきちんと確立されているか確認します。接続方法はデフォルトのWiFiを使っても、オプションのケーブルを使った有線でも、どちらでも構いません。プレートソルブをするためには「PC上の」SynScan ProとAZ-GTiを接続することが必要で、最初はスマホやタブレットのSynScan Proでの接続でも構いませんが、プレートソルブ時、より正確にいうとSharpCapと接続する時にはPC上で動いているSynScan Proとの接続が必要になります。

経緯台モードか赤道儀モードかはどちらでも構いません。自分が設置している状態に合わせてください、どちらのモードでも正しくプレートソルブができます。

一つ重要なことが、緯度経度情報が正しく入っているかです。SynScan Pro上で「設定」から「位置情報」を見て、きちんと緯度経度が入力されている確認します。

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PCはGPSを持っていないので、位置情報を自動的には取得できないことが多いです。GPSを持っていなくてもインターネットから位置情報を獲得することもできますが、正しい位置にならない場合もありますので、自分で数値で確認するのが確実です。ここが大きく間違っていると、プレートソルブも初期アラインメントも全然違った方向に行ってしまいます。関連した注意ですが、最初スマホやタブレットのSynScan Proに接続して正しい位置情報が入っていると思っても、PCに切り替えた時にはその情報は引き継がれません。なので、PC上のSynScan Proで位置情報を確かめるようにしてください。


2. SharpCapとSynScan Proの接続

次にSharpCapとSynScan ProをASCOM経由で接続します。ASCOMプラットフォームはASCOMのページから、SynScanアプリ用のASCOMドライバー(2023/9/11現在、2023/9/3のv1.4.0が最新)はSkyWatcherのページからダウンロードしてインストールしてあるとします。

SharpCapの「設定」の「ハードウェア」から「SynScan App driver」を選び、メイン画面右の「望遠鏡制御」の「接続済み」をオンにします。正しく接続されると、AZ-GTiが向いている方向などの数値が出てきます。一つ確認しておくといいのは、その数値が時間と共に動いているか、PC上のSynScan  Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、その数値と合っているかを見ることで、きちんと接続されているかがわかります。実際、以前のバージョンでは数値が動かなかったり、全部0だったりして、接続できたように見えてもうまく接続できていないことが何度かありました。今のところ、最新バージョンのSynScan Proでは接続に失敗したことはありません。


SharpCapのプレートソルブの設定

接続がきちんとできていたら、次はプレートソルブの設定の確認です。まず、SharpCapの「設定」「プレートソルブ」画面を見ます。

14_ps_gauss

ASTAPもしくはASPS、もしくはその両方がインストールされているでしょうか?インストールされている場倍は、上の画面のように下の方にFoundとかでますが、まだインストールされていない場合は、どちらか、もしくは両方ともインストールしてください。「プレートソルブアプリケーションの選択」で選択することも忘れないでください。お勧めはASTAPですが、たまにASTAPだと解決できなくて、ASPSだと解決できることがあります。でもASPSは遅いので私は普段使いはASTAP、どうしてもダメな時はASPSとしています。

重要なことの一つ目は、焦点距離がきちんとあっているかです。これが実際の鏡筒と大きく間違っていると、どうやってもプレートソルブで位置解決ができません。

重要なことの二つ目は、下の画像のようにSynScanとの同期方法を4つ目の「マウント位置をオフセットして、天体位置を中央に配置する」を選ぶことです。これまでは2つ目の「マウントを同期し、天体を中央に再配置する」にしてたのですが、SysScan Proが反応せずAZ-GTiが動かないことがありました。4つ目のオプションは今のところほとんどの場合AZ-GTiをきちんと動かせています。

01_platesolve_gauss


初期アラインメント

準備ができたら、初期アランメントの最中にプレートソルブを試してみましょう。まずはSynScan Proから「アラインメント」を選びます。1スターアラインメントで十分でしょう。出てきたリストの中から、今見えているわかりやすい星を選び、そのまま導入します。今回は木星を選びました。

03

SynScan Proがターゲット天体に向くまでに、ターゲットまでの差が角度で表示され、数字がどんどん小さくなっていきます。SynScan Proがターゲットの方向に向いたと思い込んだ時に下のような画面になります。

04

ここで、SharpCapの画面にターゲットの星が出て来ればいいですが、出てこない場合はプレートソルブの出番です。上の画面で書いてある「マニュアルで中心に」というのの代わりに、「プレートソルブで中心に」持って行ってやるという意味です。なのでこの時点ではまだ、完了をSynScan Proに知らせる真ん中の「星印の横長ボタン」を押してはいけません


プレートソルブの実行

プレートソルブはSharpCapのメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。

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うまくプレートソルブが下位を見つけると、どれだけずれていたかの表示が角度で緑色のバーのところに表示され、自動的にターゲット天体が真ん中に来るようにAZ-GTi下に信号が送られて、下の画面のように実際にターゲット天体が導入されます。

07

問題はこうならない時です。いろんなケースがあります。まず、以下のようにNo solution foundと出る場合です。2つの原因が考えられます。もし下の画面のように望遠鏡接続のところの数値が明らかにおかしい場合は、SharpCapとSynScan Proとの接続がうまくいっていません。再度接続しなおしてください。再接続でエラーなど出る場合は、SynScan Proをいったん閉じて再度開いてから、SharpCapから接続してみてください。

スクリーンショット 2023-06-21 204001

接続がうまくいっているはずなのにこのエラー場出る場合は、あまり追求せずにターゲット天体を変えてみてください。一度この状態でできる限りのことをやったことがあるのですが、結局どの試みも失敗し、最後あきらめがてらターゲット天体を変えたら、今までの苦労は何だったのかというくらい、一発でプレートソルブが成功しました。なので最近はこのエラーが出たら無駄なことはせずに、素直にターゲット天体を変えるようにしています。

上の問題が解決した時に、次によく出るエラーが、下の画面のような星が「多すぎる」とか「少なすぎる」とかいうものです。でもこのエラー、SynScan Proを最新版にしてから「多すぎる」というのは見なくなりました。今のところだけかもしれませんが、改善されたのかもしれません。星が「少なすぎる」というのは、プレートソルブをうまくやろうとしているが、取得した画像のクオリティが悪い場合に出てきます。雲が多い、空が明るすぎて星がよく見えないなどです。この場合は露光時間を延ばすとうまくいくケースが多いです。

スクリーンショット 2023-06-21 204001

ただし逆に、露光時間を延ばしすぎてうまくいかないこともあります。例えば星が流れてしまう場合です。私は5秒程度が最もうまくいっています。どれだけ星が流れるかは、AZ-GTiの水平出しの精度、見ている方向などによりますので、取得した画面で星が明らかに流れていないか確認してみてください。星が流れない限りは、露光時間は長いほうが有利です。

このエラーが回避されれば、あとはうまくいくでしょう。自動的にAZ-GTiが動き出し、ターゲット天体が画面真ん中近くに来るはずです。


初期アラインメントの完了と、次の天体の自動導入

プレートソルブがうまくいったら、初期アラインメントのマニュアルで中心へもっていくことが完了したことになります。SynScan Proに残っていた初期アラインメント画面の真ん中の星印バーを押すのを忘れないでください。これでプレートソルブを利用した初期アラインメントは完了です。実際に見てみたい天体をSynScan Proから自動導入してみてください。

さて、初期アラインメントで導入したターゲット天体の近くの天体を自動導入する場合は、特に問題なく画面真ん中らへんに来るかと思います。

ところが、遠くの天体を自動導入する場合は画面内に入らないこともあるかと思いますが、その場合もプレートソルブをしてみてください。設定などはうまくいっているはずなので、今度は特に問題なく真ん中に導入されるはずです。ただし自動導入でプレートソルブをしたとしても、AZ-GTiが認識している(遠くに移動した誤差のために間違って認識されている)位置がアップデートされるわけではないです。そのため、次の天体がもし今導入したものの近くにあったとしても、同じような誤差のために画面内に入ってこなくて、再度プレートソルブをする必要があるかと思います。そんな場合はSynScan Proでアラインメントを選んで、今見ている方向の近くにある星でアラインメントを取り直してみてください。同じように「マニュアルで中心に」と出たところで再びプレートソルブをして、うまく導入されたら初期アランメントを完了して、SynScan Proが認識している位置をアップデートしてみてください。こうすることで、その付近の天体の自動導入できちんと画面内に入るようになるはずです。


トラバースの場合

今回AZ-GTiだけでなく、少し前に発表されたSynScan仲間のトラバースもじっくり試してみました。



上の記事でも少し書いていますが、この記事で試した次の日の観望会でも接続やプレートソルブにトラブルがありました。その後自宅などでも何度か試していたのですが、うまくいく時とうまくいかない時の差がかなりあり、観望会本番で使うのは少し怖いという印象でした。少なくともAZ-GTiと比べると安定度の差はあったかと思います。

ところが、今回SynScan Proのバージョンを最新のものにアップデートしてからは、トラバースで以前経験したようなトラブルは今のところ一切なくなっています。少なくとも、もうAZ-GTiとの差は感じられないレベルの安定度です。

まだ何度か検証する必要はあるかと思いますが、観望会での実戦投入も含めて、実際に使っていけるレベルかと思いますので、今後どんどん活用していきたいと思います。


これ以降は、古いバージョンのSynScan Proで試したことも含めた補足記事です。ほとんど役に立たないと思いますが、参考がてら載せておきます。

Device Hubは関係なさそう

(古いSynScan Proで)AZ-GTiとトラバースを交互に使用するなど、複数台からの接続がうまくいかない場合、ASCOMのDevice Hubを使うといいという情報を得ました。Device Hubは複数の各機器のASCOMドライバーを管理し、接続を制御するという中間的なハブの役割をするものです。ダウンロード場所が分かりにくかったのですがここになります。



前回不安定だった状況を再現し、それがDevice Hubで解決するか試しましたが、残念ながらSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appに直接つなぐ方法と、Device Hubを通してSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appにつなぐ場合では、明確な違いを見ることはできませんでした。


SynScan Proのバージョン

PC上のSynScan Proですが、最新より少し前の2.3.9と(私が持っている古い)1.9.20では明確な違いがありました。今回のSynScan Proの最新版で再びオンにしたというちょっと謎のPAEに関連するかもしれません。 SharpCapから接続してAZ-GTiを動かすことまでは両方とも問題なくできます。ですが、プレートソルブになると2.3.9でAZ-GTiにフィードバックしようとするところまでは行きますが、どうやってもAZ-GTiが反応しないことがありました。それを1.9.20にしたところ、何の問題もなく動くことが何度かありました。1.9.20の方がどうも安定に動くのは確かなようです。

このことは、私だけでなくほかの方も同様の指摘をされていたので、偶然とかではないと思います。最新のSynScan Proのリリースノートにあったように、PAEをバージョン2台のどこかでオフにして再び最新版でオンにしているというので、もしかしたらこれがバージョン1台とバージョン2台の安定性の違いに関係していたのかもしれません


プレートソルブトラブルの振る舞い

もう一つ気づいたことがあります。プレートソルブの最初の段階ですぐに「星が多すぎるのでは」とかのエラーが出て全く動かないときですが、どうも探索範囲が毎回15度程度で止まってしまいこのエラーが出ます。うまくいかない時は、SharpCap上で認識されている鏡筒の向きと、撮影した画像が実際に向いている向きとで大きな違いがあるときに、このエラーが出るようです。問題は、実際にはSynScan Pro上では目標天体の近くを向いていると認識されていても、SharpCapがSynScan Proとうまく接続できていなくて、SharpCap上では全然違う方向を向いていると認識された場合は、このエラーが出るようです。

このエラー、SharpCapのメニューからプレートソルブ実行時に選択できる2つのうちの2つめの「同期までしようとする」とすぐに出るのに、一つ目の「同期せずにプレートソルブだけ試す」と出ないこともあるので、どうも同期までしようとすると15度までの探索とかの制限がかかっているからのかもしれません。

その時やらかしたのですが、SynScan Proの緯度軽度情報を間違っていたり、前回の情報が残っていたりで鏡筒のホームポジションがずれていた場合など、そもそもSynScan Proの方が実際の向きと大きく乖離していると、同じ状況に陥ります。色々触っていると、意外に何度かSynScan Proの段階で間違っていることがありました。この場合、SharpCapといくらうまく接続できていてもダメみたいです。このことの自戒も含めて、今回の記事では注意事項にそのようなことを入れています。


まとめ

今回のSynScan Proのアップデートは、AZ-GTiのプレートソルブに関してかなりの改善がなされたように思います。実際、セレストロン系の赤道儀でこれまでプレートソルブで不安定だったことは一度もなかったので、やはりこれはSynScan系のソフト的な問題だった可能性が高いと思っています。

あと、ASCOMドライバーに関してはアップデートに気づかなくて一つ前の1.3.1を使い続けていましたが、特に不具合は感じませんでした。更新日がSynScan Proとも近いので、もしかしたらアップデートした方がより安定になる可能性もあるかと思います。

あと、これまでのプレートソルブに関するトラブルは、SkyWatcherの代理店であるシュミットさんの方にも何度か報告させていただいていて、今回SynScanおよびSynScan Proがアップデートされた際には、いち早くプレートソルブ関連が改善された可能性があるので試してみて欲しいとの連絡を受けました。私からの報告が実際にフィードバックされたかどうかはわからないのですが、現実にアプリが改善され、連絡までしてもらえたのはとてもうれしく、ショップとしての真摯な対応に感謝したいと思います。また、実際に最新バージョンを試してから記事にするまでに、少し時間がかかってしまったことをお詫びします。

さて、これでAZ-GTiだけでなく、トラバースでのプレートソルブまで実用レベルに達したようなので、カバンの中に余裕で入るミニマムセットでの電視観望をどんどんやっていきたいと思います。

先週末の観望会の電視観望でプレートソルブがうまくいかずに大敗を喫したのですが、その原因を調べました。




機材など

一例ですが、私が使っている機材を今回の検証の前提条件として書いておきます。必ずしも同じ状況にしなくても、同様のトラブルはありえると思いますので、参考にしてください。

  • ハードウェア: 鏡筒(FMA135)、CMOSカメラ(Uranus-C)、AZ-GTi or TRAVERSE、三脚、PC(Surface 8, Surface 9, StickPC)
  • ソフトウェア: OSはWindows 10 or 11、SharpCap 4.1、SynScan Pro 231 or older、ASCOMプラットフォーム 6.1、SynScanアプリ用ASCOMドライバー 1.31 or 1.30、カメラドライバーなど

状態:
  1. AZ-GTiをスマホなどのSynScan Proを使って操作する準備ができている。
  2. PC上にSharpCapがインストールされていて、電視観望などができる準備ができている。
  3. PC上にSynScan Proがインストールされ、AZ-GTiに接続して操作する準備ができている。
  4. PC上にASTAPやASPSなどのプレートソルブ環境がインストールされている。
  5. SharpCapからASCOMを介して、SynScan Proに接続する。
  6. SharpCapを使ってプレートソルブをする。
今回は特に1、3、5、6がトラブル箇所で、中でも3と5、特に5が不安定な箇所です。


最初に確認しておきたいこと

まず最初は基本的なところで、PC上のSynScan ProとAZ-GTiがWi-Fi経由できちんと接続されているかです。接続ができているかと思っていても失敗している、もしくは接続していても知らない間に接続が切れていることなどもよくあります。チェックすべきことは
  • PC上のSynScan  Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、きちんと数字が動いているか?スマホやタブレットだけで繋がっていることがあります。
  • スマホとPCの両方から同時にAZ-GTiに接続していないか?
  • PC上で二つ以上のSynScan  Proが立ち上がっていて、重なってAZ-GTiに接続していないか?
  • 観望会などで間違えて他人のAZ-GTiに接続していないか?SynScan  Proの矢印ボタンを押して、きちんと自分のAZ-GTiが回転するか見ます。
などです。ここまではバグとかの可能性はほとんどないので、自分の設定ミスの可能性が高いです。でもこれ以降は自分の設定ミスというより、バグに近いものがたくさんあることがわかりました。ここまでで、きちんとPC上のSynScan ProとAZ-GTiが接続されていることが、ここからのトラブルシューティングの前提条件となります。


トラブル1: SharpCapとSynScan Pro接続の不安定性

ここからはさらにややこしい状況で、この不安定性はバグの一つかと思われます。

現象
  • SharpCapからASCOM経由でAZ-GTi(実際にはSynScan Pro)に接続しようとするとエラーメッセージが出て接続できない。
  • もしくは一旦SharpCapから接続できても、SharpCap上の矢印ボタンからAZ-GTiが反応しない。
  • もしくはSharpCapから接続できていたものを一旦外して、再度接続しようとするとエラーメッセージが出て接続できなくなる。

エラー
  • エラーメッセージはASCOMドライバーからで、下のように接続先が存在しないとか言われる。
スクリーンショット 2023-06-21 204049


状況確認
  • PC上のSynScan Proの「ユーティリティー」「情報」から、方位などの数字が動いているかどうか見る。止まっていたら(Wi-Fiなどの問題で)すでにPC上のSynScan ProとAZ-GTiの接続が切れているので、特に前項を見ながら接続をきちんと確認する。
スクリーンショット 2023-06-21 204520
  • SharpCapからまだ接続されいるなら、SharpCapのタブの望遠鏡パネルの数字が動いているかどうか見てみる。止まっていたらすでにSharpCapとPC上のSynScan Proの接続は確立されていない。次の解決策を試す。
  • SharpCapとの接続が確立されていないなら、次の解決策を試す。

解決策
  • PC上のSynScan Proを立ち上げ直す。わざわざ画面上部をクリックして「接続を切る」とかをする必要はありません。そのまま右上のxボタンを押してバチッと閉じてしまっていいです。


トラブル2: プレートソルブした時に解がない

トラブル1までで、ShaprCapとSynScan Proとの接続はうまくいっているはずです。その後プレートソルブをしようとして、以下画面のように「プレートソルブに解がない」とか言われる場合は、それでも前提のSynScan ProとAZ-GTiの接続がうまくいっていないことが多いです。再度前項目をチェックするなどして、SynScan ProとAZ-GTiの接続を確立、チェックしてください。

次にチェックするのが、ShaprCapとSynScan Proとの接続です。普通は右パネルの「望遠鏡制御」のチェックボックスを押すて5秒くらい待つとチェックボックスが出て接続が確立されます。この時点でチェックマークがつかない場合はトラブル1などを見直します。問題はチェックマークがつくのに、実際には接続されていない場合です。

スクリーンショット 2023-06-21 204001
その証拠の一つが、上の画面の右下の接続状況を示すパネルです。接続のチェックマークがきちんと出ていますが、AZ-GTiからの数値の多くが0になっていて明らかにおかしいです。接続されたと見えて実は接続できていないケースで、バグの一つです。

最初接続されても、途中で接続が切れて、右下の接続状況を示すパネルの数値が止まってしまっている場合などもこのケースですが、これはバグというよりは例えばAZ-GTiの電池がなくなったとか、Wi-Fiがなんらかの原因で切れたとかの、ミスの部類になります。

解決方法ですが、とにかく右下の接続状況を示すパネルの数値がきちんと動き出すまで、PC上のSynScan Proを立ち上げ成すなどして接続を繰り返してください。どうしても上手くいかない時は、ASCMOMドライバーのバージョンを落とすなどして入れ替えたり、SynScan Pro のバージョンを落とすなどして入れ替えたりしたら途端に直るということを何度か経験しました。ただし、どのバージョンだと動くとか(3種のPCで試しましたが)法則は無いようで、どうも入れ替えたこと自体が何か書き換えて回避するような感じです。


トラブル3: プレートソルブが全く進まない

現象
  • プレートソルブすると「星が多すぎるので、露光時間を減らすとかしろ」とエラーが出て全く進まない。実際の画面の星の数はそんなに多くはない。
キャプチャ_02


状況
  • PC上のSynScan Proの緯度経度情報が大きく間違っている。
  • AZ-GTiが向いていると思っている方向と、実際の方向があまりに違う。

解決策
  • PC上のSynScan Proの緯度経度情報を確認します。「設定」の「観測位置」から確認できます。PCは普通GPSユニットはもっていないことが多いので、マニュアルで数値を入れる必要があります。スマホなどのコンパスアプリでその場の緯度経度の値を取得できるかと思います。
  • 緯度経度を合わせ直したら、再度一からアラインメントをやり直します。
  • 星が多いというのはおそらくノイズをカウントしてしまっています。エラーメッセージとは逆ですが、まずは露光時間を伸ばしてみてください。

トラブル4: 同期なしプレートソルブはできるが、同期ありだと何も進まない

これはかなりたちの悪いバグです。

現象
  • 同期なしのプレートソルブはうまくいくのに、同期ありだとプレートソルブすることなく「星が多すぎる」とエラーが出る。
  • ASTAPだと上記の状況だが、ASPSだと同期ありもとりあえずプレートソルブには進むが、次のトラブル5のように実際には同期できない。

原因
  • トラブル2のところでチェックしたように、右下の接続パネルの数値が動いていて一見うまく接続できているように見えても、実はまだ内部で接続がうまくいっていない。
  • PC上のSynScan用のASCOM driverが悪い。

解決策
  • トラブル2でやったように、ShaprCapとSynScan Proの接続を何度かやり直す。
  • ASCOM  driverのバージョンを変える。最新版(1.31)は明らかに挙動がおかしかった。1.30戻したらエラーは出なくなり、プレートソルブを継続するようになった

ハマってしまうと、一番時間がかかるところだと思います。不思議なことに、全くトラブルなしで行く場合もあれば、接続をし直して一度うまくいくとそれ以降は問題が一切出なくなったり、何度接続し直してもうまくいかずに、ASCOMドライバーのバージョンを一つ(1.31から1.30)に落としたら途端に上手くいったとか、とにかく現象も解決策も不安定なバグです。

あと、ドライバーなどの以前のバージョンを落とすには

https://inter-static.skywatcher.com/downloads/setup_synscan_app_ascom_driver_131.exe



https://inter-static.skywatcher.com/downloads/setup_synscan_app_ascom_driver_130.exe

などとウェブブラウザーのアドレスのところを書き換えてアクセスすると、そのファイルが存在すれば落とすことができます。

SynScan Proの場合は

https://inter-static.skywatcher.com/downloads/synscanpro_windows_238.zip



https://inter-static.skywatcher.com/downloads/synscanpro_windows_220.zip

などと書き換えます。


トラブル4: 同期しようとするが、実際には同期されない

これもかなり解決しにくいバグです。

現象
  • 同期なしのプレートソルブはうまくいって、同期ありだと何度ずれているという計算結果まで出てこれから同期すると表示されるのに、実際にはAZ-GTiが反応せずに同期されない。
  • ASTAPでもASPSでも同じ状況。
スクリーンショット 2023-06-21 211349
ここまで行くのに、なぜが経緯台側が動いてくれない。

原因
  • ASTAPでもASPSでも同じ状況なので、プレートソルブソフトの問題ではないと推測。SharpCapの信号を出す部分か、その信号を受け取る部分が悪いと推測。結局PC上のSynScan Proが悪かった。 

解決策
  • トラブル2でやったように、ShaprCapとSynScan Proの接続を再度やり直す。
  • SynScan Proのバージョンを最新版から戻したら解決した。

はっきりした解決策は、いまだに分かっていません。再接続を何度かやったり、PC上のSynScan Proを入れ替えると突然直ったりしました。

一つ言えることは、どうも全体的にSharpCapのバグというよりは、ASCMOドライバー、SynScan Pro側のトラブルという感触です。SharpCapのバージョンもいくつかえて試したりしましたが、何ら改善も悪化もしませんでした。なので疑うとしたら ASCMOドライバー、SynScan Proかと思います。あとAZ-GTiのファームウェアを赤道儀化をかなり昔にして以来アップデートしていないので、それが問題の可能性もありますが、今回は少なくともAZ-GTiの方はいじらずに、また、TRAVERSEのファームは最新に近いはずなので、あまり関係ないと思っています。


ASTAPは動かずASPSだと動く

うまくいくならASTAPのほうが速いので、私は普段ASTAPを使うのですが、ASTAPだと解まで辿り着かなくて、ASPSだと解決して同期までできるるということが何度かありました。でも不思議なことに、一度ASPSで同期までできると次はASTAPでも同期までできたりします。まだ感覚的な範囲なのですが、どうもAZ-GTiで認識している方向と、実際の方向に大きな差があったりするとASTAPだとうまくいかないことがあるような気がしています。でも気のせいかもしれません。とにかくASTAPでうまくいかない時はASPSも試してみてください。ちなみに、ASPSがうまくいかなくてASTAPだけ上手くいったことは今のところありません。なので普段使いでASPSでもいいのかと思います。ただし遅いです。


まとめ

もちろん、今回のトラブル回避が全てではなく、環境によっては再現できなかったり、違った振る舞いになることもあるかと思います。この情報を鵜呑みにするのではなく、トラブルに出会った場合は、こんなところが怪しい可能性があるという程度で参考にするのがいいのかと思います。基本的にトラブルさえなければ必ずプレートソルブは動きます。

今回は3台のPCで試したところ、とりあえず飛騨コスモス観望会で発生したトラブルを全て再現できて、無事にどのPCでも解決しました。解決する手段は必ずあるということです。でもその解決策もまだまだ不安定で、ソフトやドライバーのバージョンを変えるとしても最新版が必ずしもいいわけでもなさそうです。さらに古いものも、どのバージョンがいいかまでは検証できませんでした。途中でも書いたのですが、入れ替えること自体がどこかの値を書き直して、それで解決している可能性もあります。

今回の経験から、まずはSynScan ProとAZ-GTiの接続をきちんと確立すること、緯度経度情報が重要なことなどがわかりましたし、さらにはShapCapとSynScan Proの接続の確立が一番大切なこと。むやみやたらに最新版にバージョンアップしないことが重要なようです。もし安定に動いているならそれを保つこと。アップデートする場合は、必ず時間のあるきに行い、実際の星空でテストすることが大事かと思います。安定に動いていても、何かの拍子に不安定になることもあります。

今思うと、AZ-GTiだけなら安定だったのが、2台目としてTRAVERSEもつないだことが突然のトラブル発生の気もしています。最初TRAVERSEで発生したので、一度はTRAVERSEを疑いましたが、同じことがAZ-GTiで起ったのでTRAVERSEのせいというわけでも、かと言ってAZ-GTiのせいというわけでもなく、複数台を運用したことが問題の可能性が高いのかと思われます。おそらくですが、複数台でどこかのアドレスの値を共有しているのが原因かなと思います。

今回、一応全部解決はしましたが、明らかにバグと思われる部分もあるので、できればメーカーの方で複数台のテストも十分にしていただけると、ユーザーは助かるかなと思います。特に、SynScan Pro単体では問題には見えなくても、ASCOM経由で接続すると不安定さが露呈します。3台のPCで同様のトラブルが確認できたので、偶然とかではないはずです。AZ-GTiはかなりの数が出ているので、複数台を使っている方も少なくないかと思います。ちなみに、Celestronの赤道儀を3種をこれまで3台程度のPCで入れ替えて使っていますが、同様のASCOM経由の接続でのプレートソルブで、このようなトラブルは一度も遭遇したことはありません。


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