週末にやっと撮影できましたが、まだ手持ちの画像でもう少し確かめたいことがあります。今回は、高波長分解能の分光器でエタロンで見たHα画像を再現してみます。
今回の比較は、SHG700を手に入れる前からやってみたいと思っていたことの一つです。エタロンの透過波長幅(FWHM)の性能差によってどう見え方が変わるのかを、きちんと比較してみたかったのです。これは、今後新たなエタロンを選ぶ際の、重要な指標になっていくのかと考えています。
これまでにHα線での太陽はPSTが2台と、今年に入ってPhoenixを少しの期間触って撮影してきました。PSTのエタロンの波長透過特性はFWHM (Full Width Half Maxmum、半値全幅)で1Å、Phoenixのエタロンは0.6Å以下というのが公称値です。さらに、CP+での講演の時にも比較したのですが、京都大学飛騨天文台SMARTはFWHM0.25ÅでHαの中心波長と+/-0.5Åずらして撮影した画像を公開してくれています。
手元にあるPSTエタロンの透過特性はいずれ直接測ってみたいのですが、SHG700で撮影したもっと細かい波長分解の画像がすでにあるので、これだけでも何かできそうです。そこで今回は、これまで撮影したPSTの全景画像とPhoenixの画像、飛騨天文台SMARTの画像を、それらのFWHMの値の情報と共に、今回のSHG700で撮影した画像を同波長幅相当にした画像を生成し比較してみたいと思います。
見たいのは、波長透過幅によってどんな画像になるかの比較検証です。これまで撮影したもののうち、中心波長を比較してみます。波長分解能がいい順です。
SMART: 2025/1/18 (Phonenixで撮影したものと同じ日)のHαで波長幅は0.25Åです。
ポイントは、波長分解能が市販エタロンよりも数倍いいこと、そのため太陽表面に淡い白いモヤモヤした筋のようなものが随所に見えていることです。
これをSHG700で再現してみます。SHG700の波長分解能は分光された光を撮影する際の1ピクセル幅で考えて0.091Åとします。中心波長とその前後の画像で上の画像に迫れるかを見ます。下は中心画像に+/-1枚の計3枚を平均化したものです。単純計算で、波長幅は3枚の間の2つ分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の3ピクセル分と考え、0.091 x 3 = 0.273Åになります。上の画像と比べると、白いモヤモヤも含めて、そこそこ再現できているのではないでしょうか?
少し条件だけ書いておきます。SMARTにアップロードされている画像は、jpgファイルの場合は輝度などの多少の画像処理はされているようです。でも解像度が低く細部比較にあまり適していないと思われたので、fitsファイルを落として自分で画像処理をしました。fitsファイルはRAWに近いようで、ストレッチも含めて何も画像処理をしていないようでした。ただしノイズがかなり多かったので、ノイズ処理が影響して空間分解能が犠牲になってしまっったかもしれません。また、画像処理の度合いによってはコントラストを変えることなどで見栄えが大幅に変わることもあるのですが、SHG700の画像をJSol'Exでっ標準的に処理したものに合わせました。画像処理の影響は少なくないのですが、面白いのは表面の淡い白いモヤモヤだけは出方が画像処理とはかなり独立に波長に依存しているようなので、この見え方が似ているということは、そこそこうまく再現できているのではと考えています。
次はPhoenixで1月18日に撮影した画像です。Hαで波長幅0.6Å以下というのが公称値です。
SMART画像に比べて、太陽表面の白い淡いモヤモヤは明らかに薄くなっています。これは明らかに波長透過幅の違いによるものと考えていいでしょう。そうは言っても、市販エタロンでHαでこの白いモヤモヤが出ること自体がすごいことなのかと思います。
上の画像をSHG700での再現してみます。Hα中心画像に+/-3枚の計7枚を平均化したものです。波長幅は7枚の間の6つ分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の7ピクセル分と考え、0.091 x 7 = 0.637Åになります。分光の1枚画像なのと、JSol'Ex標準のストレッチだけでその後の加工はしていないので、空間分解能はPhoenixの方が上になりますが、白いモヤモヤはそこそこ再現できているのかと思います。
ここまでの結果を見るに、実写の場合にはエタロンの透過波長幅によって表面の白いモヤモヤの見え方には違いがあって、分光でシミュレーション的に透過波長幅を再現した時にも同様の傾向が見られるので、やはりこの白いモヤモヤの出方が透過波長幅に影響を受けていることは明らかであると言えそうです。言い換えると、この白いモヤモヤの出方を見ることで、エタロンの性能をかなり直感的に判断することができるのかもしれません。
さらに透過波長幅が広いPSTで2025年5月18日に撮影した画像です。Hαで波長幅1Åが公称値ですが、エタロンの個体差でかなり見え方が違うと言われているので、この値がどこまで正しいかは別途検証する必要があるかと思います。
再現のためのSHG700の画像に合わせて、リンク先のページの実写PST画像から輝度などを少しいじっていることに注意です。
パッと見でPSTが、SMARTやPhoenixとは見え方が大きく違うのがわかるかと思います。白いモヤモヤは全く見えなくなり、代わりに表面の模様というか、ガタガタが多くなり、SMARTやPhoenixでのちょっとのっぺりとした印象とは変わって、いい意味で賑やかになっている気がします。これらの違いは画像処理で差が埋まるレベルではなく、エタロンの透過波長幅の影響が大きく出ているのかと思われます。
また、同一画像内の違う場所でエタロンの性能の違いが出てしまってるようです。中心部分は明るいためFWHMが大きくなってしまい性能が悪く見えてしまっているようで、模様もより大きな構造になっていて、荒々しく見えます。
これをSHG700で再現してみます。中心画像に+/-5枚の計11枚を平均化したものです。波長幅は11枚の間の10個分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の11ピクセル分と考え、0.091 x 11 = 1.001Åになります。白いモヤモヤはほぼ何も見えず、ガタガタの模様もよく再現されていると思います。その一方、SHG700では画面内の波長透過幅の差はないので、PSTでの上の実写のような中心だけが明るくなるような画像は再現できません。
最後に、SHG700で撮影した中心波長のみの、0.091Åの透過波長幅の画像を載せておきます。
SMART画像ともやはり違いがあります。これはHα吸収線の底の暗い部分で見ることができることが効いていると思われ、白いモヤモヤは太陽面全体に存在しますし、ダークフィラメントがより色濃く出ることがわかります。ダークフィラメントのコントラストについては、撮影では画像処理で誤魔化すことはできますが、眼視ではこのエタロンの性能差はより明確な違いとなって見えるのかと思います。よく「半値幅の小さいエタロンは模様がよりハッキリ見える」とかというのは、このダークフィラメントだけとっても正しいのかと思います。
透過半値幅が小さいと淡いダークフィラメントまでよりコントラストよく見えるようになるので、1年ほど前の太陽活動が最も活発だった頃には、分光撮影でダークフィラメントが太陽全体をぶった斬っているような画像を得ることができていたようです。SHG700をもう少し早く始めたかったです。これは次回の太陽最活動期の10年後くらいの目標でしょうか。
3つの比較で分かったことをまとめます。
さらに、SHG700の中心画像と比べると
そもそもなぜこんなことをしたかですが、SHG700を手に入れる前に、次の太陽機材をPhoenixとSHG700のどちらにするか迷っていました。Phoenixはすでに触った経験もあり様子もわかっていたので、最初は単純にPhoenixにしようと思っていました。Phoenixのエタロンは、透過波長幅においても、面内の均一性においても、製品のばらつきにおいても、世代が完全に代わったと思わせるほど素晴らしいものになっています。
でもここで一つ疑問がありました。太陽光のHα周りのスペクトルをみると吸収線になっていて、Hαの中心波長のところが一番暗くなっています。周りの波長の明るさに邪魔されないために、Hα吸収線の底にある太陽そのものの模様が見えると解釈することができます。もしこの解釈が正しいなら、周りの邪魔な明るさだけが問題なので、例えば光害で埋もれる淡い星雲を炙り出すように、DC的な光のオフセットを除いてやれば太陽本来の模様がもっと見えてくるはずです。明るさだけの問題なら、本当にそれだけのことで、PSLエタロンの画面の不均一性の問題は残りますが、透過波長幅の問題はもしかしたらなんとかなるのではという淡い期待がありました。
でも今回の比較結果から見てみると、透過波長幅が大きくなると、もっと言い換えると、Hαの中心波長から0.5Åも上下にズレてしまうと、明るさの変化だけでは全く説明できないレベルで見かけの模様が変わってしまうことがわかりました。このことを考えると、Hα吸収線の底でHαで別途輝線として輝いている別の明るさがあると考えたほうが自然です。
実はこのことは、以前太陽のジェットを見た際に調べた時に答えは出ていて、その時の言葉では「採光面からの水素に照らされて吸収と放射を繰り返し、Hαで輝く輝線となる」と書いています。要するに、Hαで見える模様は、吸収線であり輝線である結果出てくるものということがわかります。輝線でもあると考えると、Hαの中心線からズレることによって見える模様が変わってくることは納得できます。今回はそれを改めて確かめてみたということになります。
以上のことから、結論としてはエタロンの透過波長幅が狭いもので見えてくる輝線の模様は、透過波長幅の広いものでは決して見ることができないと言えるのかと思います。性能のいいエタロンは何者にも代え難いということです。
でもですね、まだ少し疑問が残っているのです。C8とPSTエタロンでものすごくシーイングがいい時に見た黒点周りなどの模様と、シーイングが悪い時に見た黒点周りの模様は、前者がまるで透過波長幅の狭いエタロンで見たような感じで、後者はまるで透過波長幅の悪いエタロンで見たような模様に酷似しています。シーシングの良さ悪さでボケ具合が変わるのだけで説明するのはちょっと無理があるくらいの違いになります。この違いを、いまだにうまく説明することができません。
もうちょっとだけあがいてみます。上のPST相当のSHG700の再現画像を、画像処理だけで無理やり明るいところを抑えて、さらに大きな構造を抑えることで、どこまで中心波長近辺の画像に迫れるかやってみました。等価透過波長幅は同じ1.001ÅでPST相当の広いままです。
どうでしょうか?大分印象が変わったかと思います。白い淡いところも少し見えるようになるし、太陽表面も似たような感じにすることはできます。ただしこれ、PSTの実撮影画像でやろうとしたら全然できませんでした。PSTの実写画像ではこのようになってしまいます。
理由は、画面内でエタロンの不均一性が出てしまっていて、特に中心が明るすぎるなど、画面内輝度差が目立ってしまい、うまくいかないのです。フラット化とかまでやってみましたが、それでもいまいちでした。なのでFWHMだけならなんとか誤魔化せるが、画像内の透過波長の平坦性は如何ともしがたく、むしろそちらの方が重要な気がしています。
でもまあいずれにせよ、「良いエタロンは良い」というのは代え難い事実っぽいので、次はPhoenixに走るのかもしれません。
今回はSHG700で分光撮影したHα周りの画像を元に、これまで触ったエタロンで得た画像などで、いろいろ比較検討してみました。波長分解能が細かいと、それより粗い波長分解能で撮影した画像はそこそこ再現できるようです。今後のエタロン選択の指標になりそうです。
撮影用途に限るならまだしばらくは手持ちのPSTで誤魔化して使えないかなとも思ってましたが、やはりいいエタロンが欲しくなってしまいました。ただ、シーイングのいい時のC8のPST画像はそこまで不満ではないので、もう少し様子見です。だって新しいエタロンを手に入れたら、どうせすぐに改造の餌食になることは目に見えてるからです。
次回は、週末に撮影した画像を処理してみます。
太陽分光撮影でHαエタロンのFWHMの差を再現してみる
今回の比較は、SHG700を手に入れる前からやってみたいと思っていたことの一つです。エタロンの透過波長幅(FWHM)の性能差によってどう見え方が変わるのかを、きちんと比較してみたかったのです。これは、今後新たなエタロンを選ぶ際の、重要な指標になっていくのかと考えています。
これまでにHα線での太陽はPSTが2台と、今年に入ってPhoenixを少しの期間触って撮影してきました。PSTのエタロンの波長透過特性はFWHM (Full Width Half Maxmum、半値全幅)で1Å、Phoenixのエタロンは0.6Å以下というのが公称値です。さらに、CP+での講演の時にも比較したのですが、京都大学飛騨天文台SMARTはFWHM0.25ÅでHαの中心波長と+/-0.5Åずらして撮影した画像を公開してくれています。
手元にあるPSTエタロンの透過特性はいずれ直接測ってみたいのですが、SHG700で撮影したもっと細かい波長分解の画像がすでにあるので、これだけでも何かできそうです。そこで今回は、これまで撮影したPSTの全景画像とPhoenixの画像、飛騨天文台SMARTの画像を、それらのFWHMの値の情報と共に、今回のSHG700で撮影した画像を同波長幅相当にした画像を生成し比較してみたいと思います。
見たいのは、波長透過幅によってどんな画像になるかの比較検証です。これまで撮影したもののうち、中心波長を比較してみます。波長分解能がいい順です。
1. SMART
SMART: 2025/1/18 (Phonenixで撮影したものと同じ日)のHαで波長幅は0.25Åです。
ポイントは、波長分解能が市販エタロンよりも数倍いいこと、そのため太陽表面に淡い白いモヤモヤした筋のようなものが随所に見えていることです。
これをSHG700で再現してみます。SHG700の波長分解能は分光された光を撮影する際の1ピクセル幅で考えて0.091Åとします。中心波長とその前後の画像で上の画像に迫れるかを見ます。下は中心画像に+/-1枚の計3枚を平均化したものです。単純計算で、波長幅は3枚の間の2つ分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の3ピクセル分と考え、0.091 x 3 = 0.273Åになります。上の画像と比べると、白いモヤモヤも含めて、そこそこ再現できているのではないでしょうか?
少し条件だけ書いておきます。SMARTにアップロードされている画像は、jpgファイルの場合は輝度などの多少の画像処理はされているようです。でも解像度が低く細部比較にあまり適していないと思われたので、fitsファイルを落として自分で画像処理をしました。fitsファイルはRAWに近いようで、ストレッチも含めて何も画像処理をしていないようでした。ただしノイズがかなり多かったので、ノイズ処理が影響して空間分解能が犠牲になってしまっったかもしれません。また、画像処理の度合いによってはコントラストを変えることなどで見栄えが大幅に変わることもあるのですが、SHG700の画像をJSol'Exでっ標準的に処理したものに合わせました。画像処理の影響は少なくないのですが、面白いのは表面の淡い白いモヤモヤだけは出方が画像処理とはかなり独立に波長に依存しているようなので、この見え方が似ているということは、そこそこうまく再現できているのではと考えています。
2. Phoenix
次はPhoenixで1月18日に撮影した画像です。Hαで波長幅0.6Å以下というのが公称値です。
SMART画像に比べて、太陽表面の白い淡いモヤモヤは明らかに薄くなっています。これは明らかに波長透過幅の違いによるものと考えていいでしょう。そうは言っても、市販エタロンでHαでこの白いモヤモヤが出ること自体がすごいことなのかと思います。
上の画像をSHG700での再現してみます。Hα中心画像に+/-3枚の計7枚を平均化したものです。波長幅は7枚の間の6つ分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の7ピクセル分と考え、0.091 x 7 = 0.637Åになります。分光の1枚画像なのと、JSol'Ex標準のストレッチだけでその後の加工はしていないので、空間分解能はPhoenixの方が上になりますが、白いモヤモヤはそこそこ再現できているのかと思います。
ここまでの結果を見るに、実写の場合にはエタロンの透過波長幅によって表面の白いモヤモヤの見え方には違いがあって、分光でシミュレーション的に透過波長幅を再現した時にも同様の傾向が見られるので、やはりこの白いモヤモヤの出方が透過波長幅に影響を受けていることは明らかであると言えそうです。言い換えると、この白いモヤモヤの出方を見ることで、エタロンの性能をかなり直感的に判断することができるのかもしれません。
PST
さらに透過波長幅が広いPSTで2025年5月18日に撮影した画像です。Hαで波長幅1Åが公称値ですが、エタロンの個体差でかなり見え方が違うと言われているので、この値がどこまで正しいかは別途検証する必要があるかと思います。
再現のためのSHG700の画像に合わせて、リンク先のページの実写PST画像から輝度などを少しいじっていることに注意です。
パッと見でPSTが、SMARTやPhoenixとは見え方が大きく違うのがわかるかと思います。白いモヤモヤは全く見えなくなり、代わりに表面の模様というか、ガタガタが多くなり、SMARTやPhoenixでのちょっとのっぺりとした印象とは変わって、いい意味で賑やかになっている気がします。これらの違いは画像処理で差が埋まるレベルではなく、エタロンの透過波長幅の影響が大きく出ているのかと思われます。
また、同一画像内の違う場所でエタロンの性能の違いが出てしまってるようです。中心部分は明るいためFWHMが大きくなってしまい性能が悪く見えてしまっているようで、模様もより大きな構造になっていて、荒々しく見えます。
これをSHG700で再現してみます。中心画像に+/-5枚の計11枚を平均化したものです。波長幅は11枚の間の10個分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の11ピクセル分と考え、0.091 x 11 = 1.001Åになります。白いモヤモヤはほぼ何も見えず、ガタガタの模様もよく再現されていると思います。その一方、SHG700では画面内の波長透過幅の差はないので、PSTでの上の実写のような中心だけが明るくなるような画像は再現できません。
SHG700単体での中心波長からのズレの比較
最後に、SHG700で撮影した中心波長のみの、0.091Åの透過波長幅の画像を載せておきます。
SMART画像ともやはり違いがあります。これはHα吸収線の底の暗い部分で見ることができることが効いていると思われ、白いモヤモヤは太陽面全体に存在しますし、ダークフィラメントがより色濃く出ることがわかります。ダークフィラメントのコントラストについては、撮影では画像処理で誤魔化すことはできますが、眼視ではこのエタロンの性能差はより明確な違いとなって見えるのかと思います。よく「半値幅の小さいエタロンは模様がよりハッキリ見える」とかというのは、このダークフィラメントだけとっても正しいのかと思います。
透過半値幅が小さいと淡いダークフィラメントまでよりコントラストよく見えるようになるので、1年ほど前の太陽活動が最も活発だった頃には、分光撮影でダークフィラメントが太陽全体をぶった斬っているような画像を得ることができていたようです。SHG700をもう少し早く始めたかったです。これは次回の太陽最活動期の10年後くらいの目標でしょうか。
比較のまとめ
3つの比較で分かったことをまとめます。
- SMARTの画像は太陽表面内に白い淡いモヤモヤが一番多いです。
- PhoenixでもSMARTほどではないですが、白いモヤが多少見えています。透過波長幅が狭くなるほどこの白いモヤが見えてくるので、このモヤがどれくらい出るのかがエタロンの性能の指標の一つになるとも言えます。
- 白いモヤモヤが一体何なのか?少なくとも私はまだ特定できていません。
- 日付が違うので、細かい違いについては大したことは言えませんが、それを差し引いてもPSTの見え方は全然違っています。まず、白いモヤは全く見えません。波長透過幅が大きいからだと思われます。その代わりにもっと粗いガタガタの構造の模様が全面に見えます。
- PSTと比べると、SMARTもPhoenixも、ガタガタが全然見えなくて、むしろ印象としてはのっぺりしています。
- 以前は、PSTで見えているようなガタガタが見えるのがいいと思っていました。これはむしろ中心波長から少しズレたところに出てくる模様のようです。ただ、このガタガタがあった方が賑やかで逆に見栄え良く見えるのではという印象も捨てることができません。実際、JSol’Exのスクリプトを見ていると、あえて中心波長回りの複数枚を平均化している例があります。あまりに狭すぎる透過波長幅だと見栄えがいまいちというのは、太陽分光関連の方たちの共通の認識なのかもしれません。
さらに、SHG700の中心画像と比べると
- SHG700単体の透過波長幅が0.091ÅとSMARTに比べても2.5分の1程度まで行くので、白いモヤモヤはより表れるし、ダークフィラメントがよりハッキリ見える。
なぜこんな比較をしてみたか?
そもそもなぜこんなことをしたかですが、SHG700を手に入れる前に、次の太陽機材をPhoenixとSHG700のどちらにするか迷っていました。Phoenixはすでに触った経験もあり様子もわかっていたので、最初は単純にPhoenixにしようと思っていました。Phoenixのエタロンは、透過波長幅においても、面内の均一性においても、製品のばらつきにおいても、世代が完全に代わったと思わせるほど素晴らしいものになっています。
でもここで一つ疑問がありました。太陽光のHα周りのスペクトルをみると吸収線になっていて、Hαの中心波長のところが一番暗くなっています。周りの波長の明るさに邪魔されないために、Hα吸収線の底にある太陽そのものの模様が見えると解釈することができます。もしこの解釈が正しいなら、周りの邪魔な明るさだけが問題なので、例えば光害で埋もれる淡い星雲を炙り出すように、DC的な光のオフセットを除いてやれば太陽本来の模様がもっと見えてくるはずです。明るさだけの問題なら、本当にそれだけのことで、PSLエタロンの画面の不均一性の問題は残りますが、透過波長幅の問題はもしかしたらなんとかなるのではという淡い期待がありました。
でも今回の比較結果から見てみると、透過波長幅が大きくなると、もっと言い換えると、Hαの中心波長から0.5Åも上下にズレてしまうと、明るさの変化だけでは全く説明できないレベルで見かけの模様が変わってしまうことがわかりました。このことを考えると、Hα吸収線の底でHαで別途輝線として輝いている別の明るさがあると考えたほうが自然です。
実はこのことは、以前太陽のジェットを見た際に調べた時に答えは出ていて、その時の言葉では「採光面からの水素に照らされて吸収と放射を繰り返し、Hαで輝く輝線となる」と書いています。要するに、Hαで見える模様は、吸収線であり輝線である結果出てくるものということがわかります。輝線でもあると考えると、Hαの中心線からズレることによって見える模様が変わってくることは納得できます。今回はそれを改めて確かめてみたということになります。
以上のことから、結論としてはエタロンの透過波長幅が狭いもので見えてくる輝線の模様は、透過波長幅の広いものでは決して見ることができないと言えるのかと思います。性能のいいエタロンは何者にも代え難いということです。
でもですね、まだ少し疑問が残っているのです。C8とPSTエタロンでものすごくシーイングがいい時に見た黒点周りなどの模様と、シーイングが悪い時に見た黒点周りの模様は、前者がまるで透過波長幅の狭いエタロンで見たような感じで、後者はまるで透過波長幅の悪いエタロンで見たような模様に酷似しています。シーシングの良さ悪さでボケ具合が変わるのだけで説明するのはちょっと無理があるくらいの違いになります。この違いを、いまだにうまく説明することができません。
もうちょっとだけあがいてみます。上のPST相当のSHG700の再現画像を、画像処理だけで無理やり明るいところを抑えて、さらに大きな構造を抑えることで、どこまで中心波長近辺の画像に迫れるかやってみました。等価透過波長幅は同じ1.001ÅでPST相当の広いままです。
どうでしょうか?大分印象が変わったかと思います。白い淡いところも少し見えるようになるし、太陽表面も似たような感じにすることはできます。ただしこれ、PSTの実撮影画像でやろうとしたら全然できませんでした。PSTの実写画像ではこのようになってしまいます。
理由は、画面内でエタロンの不均一性が出てしまっていて、特に中心が明るすぎるなど、画面内輝度差が目立ってしまい、うまくいかないのです。フラット化とかまでやってみましたが、それでもいまいちでした。なのでFWHMだけならなんとか誤魔化せるが、画像内の透過波長の平坦性は如何ともしがたく、むしろそちらの方が重要な気がしています。
でもまあいずれにせよ、「良いエタロンは良い」というのは代え難い事実っぽいので、次はPhoenixに走るのかもしれません。
まとめ
今回はSHG700で分光撮影したHα周りの画像を元に、これまで触ったエタロンで得た画像などで、いろいろ比較検討してみました。波長分解能が細かいと、それより粗い波長分解能で撮影した画像はそこそこ再現できるようです。今後のエタロン選択の指標になりそうです。
撮影用途に限るならまだしばらくは手持ちのPSTで誤魔化して使えないかなとも思ってましたが、やはりいいエタロンが欲しくなってしまいました。ただ、シーイングのいい時のC8のPST画像はそこまで不満ではないので、もう少し様子見です。だって新しいエタロンを手に入れたら、どうせすぐに改造の餌食になることは目に見えてるからです。
次回は、週末に撮影した画像を処理してみます。










