ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:SHG700

分光撮影で、太陽のコロナの構造を一部見ることができます。これはすごい!


コロナは簡単には見えない

太陽のコロナは非常に淡いため、通常の観測では見ることができません。そのため皆既日食で暗くなった時に、周りの放射状に広がっていくコロナが観測されるのはよく知られています。

コロナは太陽の周りだけでなく、光球面にもその複雑な構造が存在しています。コロナは100万度以上の高温で、可視光よりもX線での放射が大きく、その構造はX線で観測することで見ることができます。X線を見るカメラは、研究レベルでは民生品(浜フォトなど)が手に入ります。ですが、太陽からのX線は地球の大気で吸収されてしまうため、たとえX線のカメラを使ったとしても、地上から観測することはできません。そのため、通常は衛星からの撮影に限られてしまうので、どうしてもアマチュュア天文では手が出ない、研究ベースのものになってしまいます。

ですが、可視光の範囲にもコロナの情報を含む波長が存在するのです!今回利用したのは、以前撮影したHe D3線です。



といっても普通にHe D3線を撮影しただけだとノイズに埋もれがちなので、He D3画像を50枚とか100枚とか、枚数を稼いで統計的にノイズを減らして、より淡い構造を見ることでやっと出てくるくらいのもののようです。


なぜHe D3にコロナの情報が含まれるのか?

例えば1975年のこの論文に、太陽表面ではなく縁(へり)についてですが、比較的わかりやすく議論されています。PDF版が右のアイコンをクリックすると無料で読めるので、興味がある方は読んでみてください。

ごく簡単に説明すると、ヘリウムがコロナのXUV 放射(X 線および極端紫外線放射)で励起されるならうまく説明できるだろうと書かれています。その励起のアイデアはなんと1939年に提唱されていて、さらに1971年このアイデアが支持されたということで日本人の論文が参照されています。

論文ではコロナの放射がHe I及びHe IIにどれくらい影響するかを定量的に見積もり、最終的にD3線の輝度で見えるレベルになるのかどうかの評価を数値的に確認し、D3線で十分なコントラストで見えることが示されています。議論は主に縁についてですが、最終的にはコロナホールなどの構造でもうまく適用できるとして、実際にうまく撮影ができている例があると結論づけています。

50年以上も前からこんな議論がされていたことに驚くのですが、それでも研究レベルのことがアマチュア天文の機材で簡単に楽しめる時代になったということは、やはり機材や画像処理のものすごい進歩を感じざるを得ません。


撮影

撮影ですが、以前のHe D3の撮影の記事でも説明した通り、D3線は輝線のみなので基本的に明るく、そのまま見ても構造は全く見えません。撮影した画像から、少し波長をずらした連続光を、画像処理においてさっ引く必要があるため、D3線を含みながら近くにある暗線を含めて、多少広い波長範囲で撮影してやる必要があります。

さらに今回は枚数を稼ぐ必要があります。分光での撮影は早くても1回につき30秒から1分程度かかります。50枚とか100枚撮影しようとすると1時間オーダーのそれなりに長時間撮影になるので、太陽方向からずれていかないように赤道儀の極軸合わせの精度が重要になります。昼間の撮影になるため当然北極星は見えず、赤道儀の極軸の精度があまり出ないので、最初のうちは数枚連続撮影するだけで、徐々に見えている太陽が東西方向にずれていってしまいました。

前回の撮影時の経験から、太陽が画面で見ていて左側にずれていった場合、赤道儀を水平方向に(モーターでなく、赤道儀の根本のネジで)東方向(上から見て時計回り)に回転させることで補正できることが分かっていました。今回は画面で見て右にずれていったので赤道儀を西方向に回転させ調整します。でも何故かどんどんズレが大きくなっていく気がするんですよね。何度か回転させた後やっと気づきました。あ、昼ですでに天頂越えして赤道儀が反転してるから、画面で動く方向が逆になっているんだと。単純なことですが、最初からはなかなか気づかないものです。極軸調整後は10枚以上撮影しても全くずれなくなりました。

撮影時間は2025年11月4日の昼前11時から40分くらいです。11時の時点で赤道儀はすでに反転していたので、その後も画像を反転などする必要がなく一定方向で撮影できました。今回は52枚撮影し、その中の51枚を使用しました。もう少し枚数を稼ぎたかったのですが、最後は雲が出てきて終了となりました。


画像処理

撮影した51枚のスタックですが、まずImPPGで位置合わせして、その後PixInsightのFFTRegisgtrationでさらに位置合わせをします。その際は「拡大縮小」に加え、「回転」と「大きな変換」オプションもオンにしましたが、ログでずれを見ている限りImPPGだけでもほとんど位置は合うのかと思います。FFTRegisgtrationはスタックも同時にやってくれるので、今回はそのままこちらのスタック機能を使用しました。まずはスタック直後の画像です。この時点ではコロナの構造などはまだほとんどわかりません。JSol'ExではP角の補正を自動でしてくれるので、一般の画像と比べるためにこの時点でその日の傾きの約24度ぶんを時計回りに回転させています。
0000_10_55_47_helium_color_aligned_mono_rotate_cut


コロナ構造の比較

JSol'Exの出力の時点で十分明るい画像になっているので、極端なストレッチは必要ありません。それよりも、どの程度の輝度の変化を見やすくするかという観点でのストレッチが重要になります。あと、輝度を反転させると構造がわかりやすくなります。He D3線の結果です。波長は5875.62Åになります。

Integration_of_53_clone_filled_3_cut

下は、同日11月4日のX線の比較画像です。残念ながら、いつも見ているSDOが機器の故障で9月13日を最後に更新が止まってしまっています。それでもこれもいつも見ている宇宙天気ニュースが日別に更新てしてくれていますし、SOHOが動画になってしまいますが、各波長で公開してくれています。今回は宇宙天気ニュースの画像を使用しました。元はGOES衛星のSUVI 195カメラとのことなので、195Åになります。X線なので、上のHe D3線の30分の1程度のかなり短い波長になります。

2511040958_goes_suvi195

どうでしょうか?全然波長が違うにもかかわらず、X線で見えるコロナホールと呼ばれる暗い大きな面積部分と、その周りにある黒い筋のような線が、He D3線でもかなりかなり再現されていることがわかります。上下に暗い部分が出てしまうのは機材によるわずかなムラで、どうしても上下が明るく写ってしまいます。それが反転して、ここまであぶり出した結果暗くなってしまいます。白い明るい部分はこの日の活動領域で、コロナではないですがこの部分の形も同じようなものが再現できています。


まとめ

He D3を使ったコロナ構造の観測は古くから行われていますが、Solexの広がりきっかけで、アマチュアレベルでここまで見えるようになってきました。今回、私もやっとSHG700を使って自分で確かめることができました。

今後も機器の発達や、新しいアイデアで日食でなくてもコロナを観測する方法が出てくるのかと思います。例えば、「コロナグラフ」と呼ばれる、円盤などで光球面を覆う遮蔽を使って人工日食を作りコロナを観測するというアイデアは昔からあって、最近ではProba-3が本当の日食で撮影したかのようなコロナ画像を出しています。アマチュア天文の範囲コロナグラフがうまくいったという例は探した限り見つかりませんでしたが、分光を使った方法やさらに全く新しい手法が出てくるかもしれません。将来どこまで見えるようになるのか、とても楽しみです。


3連休ですが、富山は3日とも天気は駄目の予報。初日の今日、朝起きても雨が降っていて太陽は駄目そうでした。でも昼近くになってきて徐々に青空の範囲が広がってきました。北と東の方はかなり曇っているのに、南側から天頂向けてかなり晴れてきています。ガストでモーニングを食べてのんびりしていたのですが、天気を見て急遽帰宅して、機材の準備を始めました。


2時間くらいの昼間の晴れ

IMG_2147

前回の撮影が10月12日だったので、3週間ぶりくらいになり、結構久しぶりです。Hαでまずは調子を見ます。コリメーターレンズもカメラレンズも少しずれていたので調整します。鏡筒の焦点はかなりズレていました。SharpCapのバージョンを上げたら、起動時に立ち上がるはずの連続撮影のためのSHGスクリプトが認識されなくなってしまいました。SHGスクリプトの新バージョンも出ていたのでそれも試したのですがダメ、SharpCapのバージョンを戻してもダメで、結局SharpCapもSHGスクリプトも旧バージョンに戻してやっと認識されました。時間が惜しいのでとりあえず撮影を開始しました。スクリプトが認識されない問題は後から検証します。

赤道儀の極軸があまり合っていなかったようで、繰り返し撮影の間に結構な速さで太陽位置が左にずれていきます。確かに赤道儀が少し西向きになっている様子なので、赤道儀の水平回転ねじで合計3回転ほど回して東方向に回転し、その後は10ショット撮るくらいではズレがわからなくなるくらいになりました。

Hαを18ショット撮って安定に撮影できることを確認してから、次の波長に移ったのですが、その後すぐに曇ってきてしまい、機材を片付けた直後に雨が降り出しました。正午を中心に2時間くらい晴れていましたが、撮影にかけることができた時間は1時間弱位だったでしょうか。


Hα画像

今日の撮影結果はHαだけです。いつも通りモノクロ画像から順に、ドップラーシフト画像まで載せておきます。

撮影時間に間が空いてしまうと表面の模様が変わってしまい平均化されて分解能が出にくくなるののは分かっているのですが、今回は短時間のうちに枚数を撮ったので、スタックした方が解像度が出ました。撮影した18枚のうち、雲が流れていないなど使い物になる9枚をスタックしてみました。

今回、画像処理は
  1. JSol'ex1の1枚撮りのオートストレッチ
  2. AS!4でスタック、Registax6で解像度出し
  3. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度と炙り出し
  4. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度出し、PixInsightのSolarToolsで炙り出し、
の4つを比較してみました。1枚撮りよりは、スタックした方がいずれも分解能が出ます。2のRegistaxは分解能は出るのですが、ダークフィラメントの階調が消えてしまうようなので諦めました。3と4はどちらも良かったですが、カラー化することも考えるとSolarToolsのカラー化機能が使える4の方が良さそうです。その後、4をPixInsightのMultiscale Linear Transformでノイズを少し落として、今回のモノクロ画像の仕上げとしました。結局カラー画像は使わなかったので、3を使っても良かったのかもしれません。

1枚目のモノクロのみスタックしたものを示します。

IP_aligned_lapl2_ap5296_IP_PI_MLT_LHE2_cut

2枚目以降はスタックなしの1枚画像です。
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12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_autostretch_15_00

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今回ちょっとだけ面白かったのは、P角が25度近くとかなり大きく、軸が相当傾いていたことです。一般的な太陽観測サイトは、例えばよく参照する「宇宙天気ニュース」でもP角補正をしていないので、黒点の位置がかなりズレて見てしまい、最初間違えて上下フリップをしてしまったのではないかと勘違いしたくらいでした。黒点位置があっているかどうかはJSol’Exの「active regeon」画像を見るとわかります。普段出さない画像ですが、向きなど間違えて撮影していないかの確認に使っています。

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_activeregions_15_00

他にも普段出していない画像があって、プロミネンス画像と、そのドップラーシフトというのがあります。いい機会なので、今回載せておきます。
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12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_doppler-eclipse

毎回示すカラー画像は、JSol'Exでモノクロ画像を単にカラー化した「colorized」というものではなく、実は「mix」という出力ファイルで、カラー化された太陽表面に、上のあぶりだされたプロミネンスも合成して疑似カラー化したものを載せるようにしています。なので、ブログに載せてあるカラー画像だけはプロミネンスがよく見えています。他の画像はプロミネンスがほとんど見えていません。ただし、今回のようにモノクロをスタックした場合は、その過程でプロミネンスもあぶりだしているので、その場合はプロミネンスもよく見えるようになっています。

うーん、記録の記事だとあまり書くことがないですね。もう少し天気がいい時間が確保できれば、また劇的に進む予定です。それまではおとなしくいい天気になるのをゆっくり待つことにします。


何日か前の記事で少しだけ書きましたが、分光器のSHG700を使って、太陽望遠鏡のHαエタロンの性能を表すFWHM(Full Width Half Maximum, 半値全幅)を実測してみました。これは太陽望遠鏡のフィルターがFabry-Perot cavityを利用したものだと知った2017年頃からやってみたかったことで、一時は中古の研究用の分光測定器を買うことを本気で考えていました。長年の夢の一つが叶ったことになります。


測定方法

今回SHG700で測定したものは、
  1. 太陽光の散乱光
  2. エタロンの透過光
の2種類です。ここからFWHMまで持っていきます。

1の散乱光は、SHG700を鏡筒から外して単体にして。部屋の中の(直射日光ではない)白い壁に向けます。白く明るい壁ですが、所詮背景光なので光量は大したことはなくて、露光時間を12.8秒でG3M678Mのゲインを400とし、さらにライブスタックで10枚重ねて、十分フラウンホーファー線の構造が見えるようにしました。

2のエタロンの透過光ですが、最初1と同様に太陽の散乱光を使って測定しようと思いました。でも光量が十分でなく、エタロンが共振しない暗いところは十分に見ることができません。太陽光を直接入れて測定するのがいいのですが、あいにくこの日は曇りです。というか、晴れないので痺れを切らしてこの測定を開始したので、太陽が出てないです。代わりに下の写真のようにLEDの小さなライトを使いました。
G1ghTC8aoAAOVvC

PCの画面にも出ていますが、うまくエタロンのComb (櫛形) 構造が見えるようになりました。

ただし測定は結構難しくて、ライトの光の絞り具合とか、ライトと分光器の間の距離だとか、ライトの位置や角度など、うまく合わせないとなかなか綺麗な線が出ません。とりあえず今回は机の上に適当に置いてやりましたが、できるなら光学定盤などを使い安定した測定にしたいです。特に、エタロンは入射光に角度依存性があって、いつかそれも含めて測定したいので、光の角度をきちんと調整できる機構が欲しくなります。


撮影画像

測定した画像は以下のようになります。

まず1の背景光です。
Capture_00001_WithDisplayStretch
太陽光のスペクトルが綺麗に出ているので、この画像から波長のキャリブレーションをすることができそうです。でもこれだけだと、Hα線は目立つのでまだしも、どの線がどの波長なのかよくわかりません。JSol'Exの「Spectrum browser」で見る参照スペクトルと比べてみても、なんか違うように見えます。

下の画像を見るとわかると思いますが、左が今回撮った散乱光、真ん中の細長いSharpCapの画像が以前撮った太陽を直接見たもの、右がJSol'Exの参照画面です。
Fraun_comp_cut

左と真ん中は同じような構造になっているので、まずは背景光がきちんと取れていると判断します。でも右の参照画面の線はかなり実測と違うことがわかります。なので下の画像のように、Hα線と目立って一致しているもう一本の線の波長を調べて、それを基準として他は波長が線形に変化していると仮定して、縦方向の波長を1次の直線でフィットすることにしました。

wavelength_select_cut


2のエタロンですが、本当は透過「率」を知りたいのですが、これは結構難しいとわかりました。まず、エタロンがある場合とない場合の画像を2枚撮影します。まずはエタロンありの画像をLEDライトの位置や角度を変えうまく撮れる状況を作ります。
Capture_00001

その撮影したままの状態をキープしながら、エタロンだけを動かして取り除きます。こうすることで同じ状況で基準光を撮影することができます。
Capture_00001

基準光は一見一定に見えますが、画像の上から下までで緩やかに暗くなっていくことがわかりました。エタロンの透過光のピーク位置もやはり同様に緩やかに暗くなっていくので、基準光で割ることにより、エタロンの透過光のピーク位置が平らに近くなります。

それでも、エタロンがないときにはSHG700の入射口径全体から光が入り、エタロンがあるときにはエタロン前後のレンズ径などに制限された光しか入らないので、透過率が低く出過ぎてしまいます。そのため透過「率」とすることは諦めて、ピーク位置を1とするようように規格化しました。

波長は画像の縦方向で変化しますが、スリットに長さがあるために画像の横方向にもフラウンホーファー線は広がっていて、しかも線が直線にはならずに曲線になっています。(どういった仕組みで曲線になるのか、どう調整したら直線にできるのかの方法は私はまだわかっていないので、こちらもいずれ解決したいです。おそらくスリット位置と回折格子の相対位置で決まるのではと推測しています。)しかも、エタロンの透過光の明るいところと暗いところの幅は横位置によって多少変わります。

今回は1の画像も2の画像も、真ん中あたりの斜めになっていない場所の10ライン程度の縦線を抜き出して、横方向に平均値をとりました。エタロンについては真ん中ら辺が明るい線が一番細いようなので、こちらも真ん中ら辺を選ぶのが一番良さそうです。

背景光のフラウンホーファー線を見ている限り、SHG700の回折格子を触りさえしなければ、撮影ごとの波長のズレのようなものはなさそうなこともわかりました。


波長のキャリブレーション

1の背景光画像のフラウンホーファー線では、波長がリニアに変化すると仮定して、上で決めた基準の2点Hαの6562.81Åと6643.63Åを元に1次の直線でフィットします。この時のあるところの数値と次の数値との差が、1ピクセルあたりに変化する波長となり、今回は0.089Å/pixelとなりました。しかしながら、SIMSPEC SHGで求めた0.091Å/pixelや普段撮影動画をJSol'Exで再構築した際にはこれまで0.091Å/pixelと出ていて、2%ほど結果が異なることがわかりました。

この違いの原因は2点だけを基準として波長が1次的に変化すると仮定したことかと思いますが、今のところはっきりとした原因は不明です。まあ今回は基準点のHα周りのFWHMを求めるのが最大の目的で、そこまで影響はないはずなので、とりあえずこのズレは無視することにします。


エタロンフィッティング

エタロンの透過光ですが、透過光を数値化したものを、基準光で割ったものをグラフにします。
etalon_ok

ここからHα周りのピークを抜き出して、フィッティングします。ピークの高さは右に行くに従って上がっていくようですが、基準光でのノーマライズがうまくいっていないのか、それともこうなるのが正しいのかよくわかりませんでした。Hα周りだけに絞ってしまえば、局所的にはほぼ同じ高さとしてしまっていいでしょう。

フィッティングはFitykというソフトでローレンツ関数やVoigtを使う例がいくつか示されているので、私も同様に試してみましたが、いくつか問題がありそうです。

下の画像は実際にFitykでフィットしてみたものです。
Voigt_cut

一つ目の問題は、これらの関数は基本的にピークの両側は0になることを想定していることです。ところが、エタロンの応答を表す関数は繰り返し構造になるため、ピークとピークの間の透過率が0になりません。ピークとピークの真ん中のちょうど反共振の位置では、エタロンの透過率は、同じ特性の鏡を2枚使うと仮定して、鏡の強度反射率Rと強度透過率Tを使って

(T/(1+R))^2

のような形に書けます。例えばここで、強度透過率T=0.3、強度反射率R=0.7とすると、ピークの真ん中でも(0.3/1.7)^2=0.0311と、3%ほど光を通してしまいます。

Fitykでは、別途定数を用いてフィッティングさせるような手法が取られているようですが、これだと個別の赤い2本の線のうち曲線の方を見てもらえばわかりますが、明らかに実測のピークより細い線でフィッティングされてしまっています。これは結果として、FWHMが小さく出過ぎてしまい、実際よりも性能がいいという間違った結果を出してしまいます。

今回の上の結果では、グラフ右にあるFWHMの数値を見ると、0.65ÅとPSTとしてはにわかに信じられないくらいのいい値が出てしまっています。例えばこのページでも同様の間違いをしていて、HeliostarのエタロンのFWHMがなんと0.3Åと、これも良すぎる値を出してしまっています。ピークの高さの半分のところの幅を見るだけでも、少なくとも0.4Åはあることがパッと見るだけでわかるので、明らかな間違いです。このグラフが出た時に何でこんな良すぎる値になるのかおかしいと思ったのですが、実際に自分でFitykを使ってみることでなぜこんな間違いに陥ったのかがよくわかりました。

二つ目の問題点は、ローレンツ関数やVoigt関数だと、一つのピークのみしかフィットすることができないことです。原理的に、エタロンの透過光の応答のような周期的なものを表すことはできません。このため、周期構造から求めることができる、FSR(Free Spectral Range)をきちんとフィッティングして求めることができません。

FSRはFinesse、FWHMとともにとても重要なパラメーターで、

Finesse = FSR / FWHM

というとてもシンプルな関係があります。Finesseはπで割って2をかけると、エタロン内での光の折り返し回数をすぐに計算できる、非常に重要な指標となります。FSRはエタロンの2枚の鏡の間の距離と反比例関係にあるので、FSRがわかるとエタロン間の距離を直接求めることができます。このように、複数のピークを含めてフィッティングしてFSRを求めることはかなり意義があると言えます。

では、なぜこれまであまり周期的な関数でフィットされてこなかったのでしょうか?これは推測なんですが、単に関数が結構複雑になるためにあまり挑戦してこなかっただけなのかと思います。少なくともFItykのような既存のソフトでフィットするのはかなり大変になりそうです。

今回は周期的な関数を書き下して、自分でpythonでコードを書いて、いくつかのピークをまとめてフィッティングしてみました。結果は以下のようになります。
fit_result_ok

フィッティング曲線がきちんと周期的に出ること、ピークとピークの間が0にならないことがわかるかと思います。ただし、ピークとピークの間の暗い部分が実測とフィッティング曲線でずれてしまっています。これは鏡のロスを考えないで、R+T=1という理想的な鏡を考えてしまったことに由来します。ロスを考えるとさらに複雑になるので、今回は諦めました。それでもFWHMの推定は、ピークの高さをきちんと0を基準に考えているので現実により近い値になっているはずです。


パラメータなど

実際の計算手順としては、フィッティングパラメータとして使った鏡の反射率と透過率、鏡間の距離がまずわかります。鏡の反射率からFinesseが計算でき、鏡間の距離からFSRがけいさんできます。FinesseとFSRがわかると、FWHMがわかるというわけです。下に少しだけ式を書いておきました。

代表的なパラメータはグラフの中に書き込んでおきましたが、今回分かったエタロンの特性を表すパラメーターは以下の通りです。
  • 鏡の振幅反射率、振幅透過率: r, t
  • 鏡の強度反射率、強度透過率: R = r^2 = 0.70, T = t^2 = 0.30
  • キャビティーの鋭さを表すFinesse = π r/(1-R) = 8.75
  • エタロンを構成する鏡と鏡の間の距離 = 0.313 [mm]
  • 周期の幅を表すFSR (Free Spectrul Range) = 6.88 [Å]
  • エタロンの性能を表すFWHM = FSR/Finesse=0.787 [Å]
  • 光の折り返し回数: Finesse *2/π = 5.6 [回 (片道)]
目的のFWHMは0.787 [Å] と出ましたが、公称1 [Å] 以下という値と比べてもそこそこ信頼性のある数字になったのかと思います。FWHMだけでなく、他の重要なパラメータもかなりの精度でわかり、PSTエタロンの特性がかなり特定できたと言っていいかと思います。長年の疑問にやっと答えが出たと言えそうで、かなり嬉しいです。
逆に、今回の測定でまだわからないことは
  • 光の入射角度の依存性
  • Hαからのピークの中心波長のずれ (入射光の角度と、エタロン回転調整をいじっていないため)
  • 個々の鏡の反射率と透過率がどれくらい違うか (2枚の鏡の反射率と透過率を同じと仮定したため)
  • 鏡のロス
などになります。今後の課題としたいと思います。


まとめと今後

手に入れたSHG700で、手持ちのPSTエタロンの透過特性を、うまく測定することができました。角度依存性などの課題はまだ残されていますが、目的のFWHMが測定でき、これまでわからなかった鏡の反射率、ミラー間の距離やFSR、フィネスまで確定できたのはかなり満足感が高いです。

今後やりたいことが、エタロン以外にも太陽望遠鏡でに必須の、BFの測定とかERFの測定です。他にも、ナローバンドフィルターやワンショットナローバンドフィルターも、メーカーが謳っている半値幅が本当に出ているのか、実測してみたいと思っています。




昨日の撮影に引き続いて、日曜の今日も朝から晴れていたので記録撮影です。

IMG_1986

でも、特に新しいことをするわけでもないので、だんだん飽きてきています。この日は、昨日のセッティングが残っていたCaKを最初に撮影し、その後Hαで撮影しました。午前8時半くらいから始めたのですが、Hα撮影の途中で雲が徐々に濃くなってきたので、午前9時15分くらいには早々と撤収しました。暑くないので晴れたらまた再開しようと思いますが、どうなるでしょうか?

IMG_1987


Hα線

いつものようにHα線です。15ショット撮影して、その中で一番きれいなものを選びました。

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height

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CaK線

CaKですが、少し色を変えました。ちょっと見やすくなったと思います。こちらは12ショット撮影して、午前8時40分の1ショットを選んでいます。

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土曜日の朝からそこそこ晴れていたので、太陽分光撮影です。今日の目的は、前回動画撮影で速度が一定でなかったのか、おかしな太陽画像になってしまったことの検証です。

IMG_1977
これは午後一で撮った撮影風景です。赤道儀が反転した後です。

この日気を付けたことが、赤道儀の赤経の左右バランスでした。定説通り、回転方向に多少荷重がかかるようにします。そうするとテスト撮影でも全く問題なく、きれいな太陽画像が再構築できました。途中曇ったりしたので、晴れ間を狙いながらHαを26ショット、テストも入れたら30ショットくらい撮影しました。

その後、12時を回って、CaK線を撮影します。赤道儀を反転したのですがウェイト位置は触らなかったので、今度は回転方向と逆に荷重が少しかかった状態になってしまっています。この状態で撮影すると、前回見たような、一部スピードが変わったような画像が再現できました。その後、ウェイト位置を少し外側に移動し、回転方向に荷重をかけると、今度はきちんと撮影きます。どうやら赤道儀の赤経体の回転方向と逆に荷重をかけてしまったことで起こったバックラッシュで原因は確定のようです。CaKの時も曇りが多く、晴れ間待ちで何度かに分けての撮影でしたが、13ショットを撮影しました。

いつものように撮影結果です。Hα線からです。今回は15ピクセル (0.13Å) 離れた画像を連続光として載せておきます。

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続いてCaK線です。モノクロとカラーを載せておきます。カラーはJSol’Exの色遣いはちょっとどぎついかもしれません。

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この日は午後から某天文台のリモート講習会に参加しました。再来週に試験があります。受かると晴れてリモートで望遠鏡を操作して撮影することができるようになります。


夕方からですが、久しぶりに休日晴れたので、太陽分光撮影です。しかもやっと少し秋らしくなってきて、全然暑くないのです!

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新兵器で、日が当たらないようにパラソルを装備しました。


今日の太陽像

記録なので順に載せていきます。まずはモノクロです。スタックなどしていない一枚撮りですが、拡大しても十分な解像度が出ています。結構満足です。

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モノクロ反転画像です。
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カラー画像です。こちらはプロミネンスも強調してあります。
16_26_13-trimmed_0000_16_26_13-trimmed_mix_0_00

緯度経度と、黒点の番号付き画像です。自転軸 (P軸) がかなり傾いているのがわかります。こういった変化を見ることができるのもJSol’Exの利点です。
16_26_13-trimmed_0000_16_26_13-trimmed_card_0_00

ドップラー画像です。面白いのは、青と赤の境界が傾いていて、太陽自転軸の傾きの影響も見えているようです。
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今日の失敗

実は結構たくさん撮影したのですが、ことごとく失敗でした。HαとCaKと合わせて54ショット撮影したのですが、ほとんどが下の画像のように途中が伸びたりしてしまいました。上に挙げたものは、その中でたまたま唯一生き残ったものです。

0009_16_30_06_autostretch_0_00

伸びている位置はどの画像を見ても大体同じでした。再構築した画像がこのようになる原因は、動画撮影時の赤道儀のスイープのスピードが途中で変わってしまうからです。なぜそうなるのか?まだはっきりとはしていませんが、おそらくバックラッシュが関係しているのではと推測しています。

普段の撮影はほとんど午前の早いうちに済ませてしまいます。でもこの日は午後のしかも夕方近くから日没までのかなり遅い時間です。鏡筒とウェイトの左右バランスに気を使わなかったので、スクリプトでの繰り返しの撮影時に、反転してから録画開始して少ししてちょうどスピードが変わるような状況になってしまっているのかと考えています。次回撮影時に、少し時間を撮って検証してみようと思います。


フィルター特性測定プロジェクト開始

あと、ここしばらく休日で安定に晴れる日が無くて、この日も夕方晴れるのを期待していなくて、とうとう次のステージに進むことにしました。やりたいことはエタロンなどのナローバンドのフィルターの特性を実測することです。とりあえず出だしなので、セットアップの写真だけ載せておきます。

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普通は太陽を光源にすることが多いようなのですが、写真にあるように試しに光源にLEDを使ってみました。LEDは白色光と言われているように、ローカルには波長特性もほとんどなく、かなり平坦でほぼ直接透過光の輝度が測定できそうです。画像にはエタロンフィルター特有のComb (櫛形) 構造がきれいに見えています。別途、太陽の散乱光を使ってフラウンホーファー線を撮影してあるので、回折格子を動かさなければ波長のキャリブレーションができるはずです。今後解析までして、また記事にします。

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