ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:SCA260

お蔵入り?になりかけ

実を言うと、この記事書くのをあきらめてました。今回の彗星の核の撮影画像を見てみると、星像がかなり甘いのです。しかも星の数がかなり少なく、うまく画像処理できるか?と初めから疑問でした。実際途中まで全然うまく行かなくて、半ばお蔵入りするところでした。

というのも、ちょっと前に今回使ったSCA260のバッフル交換のアップグレードがあって、ちょうど販売店から返ってきたばかりでした。光軸調整はしてくれたとのことなのですが、その後、強度を保っているはずのアルミの長さ40cmトッププレーを自分で付け替えたため、鏡筒に歪みが残ったままになっている可能性が高いです。改めて光軸調整せずにそのまま持ち出してしまったためでしょうか、とにかく今回の撮影時にピントを合わせても星像が小さくならないのです。もしかしたら単に低空だったからかもしれません。いずれにせよ、普通だったら画像処理をする気にもならないくらいの画質でしか撮影できなかったのです。

とまあ、前置きはこれくらいにして、紫金山アトラス彗星の記事も今回で最後になるかと思います。10月20日に撮った、3セットの機材のうちの3つ目、焦点距離1300mmのSCA260にASI294MC Proを取り付けています。カメラは冷却可能ですが、今回は冷却せずに常温で稼働させています。

前回の記事で、焦点距離250mmのRedCat51とフルサイズの一眼レフカメラ6Dで撮影した画像の核の部分を拡大し、練習がてらLarson-Sekaninaフィルターで角度方向の輝度変化を強調して見てみましたが、広角画像の核の部分をかなり拡大しているため、粗いながらも回転している様子がわかりました。



今回は焦点距離が長く、それよりも遥かに解像度が良いはずなので、どこまで見えるかが楽しみです。


画像処理

とにかく、撮影した画像の処理をPIのWBPPで始めましたが、まずスタックが全然うまくいきません。各画像の位置特定でおそらく星の認識数が全然足りてないのでしょう、RANSACエラーが出まくりで、registeredにたどり着いたのが64枚のうちわずか20枚でした。Debayerまで普通に全部処理されているようなので、その後は自動のWBPPでなく、マニュアルで一ステップづつ処理することにします。

まずはStarAlignmentです。Star Detectionの基準をデフォルトの0.5から0.75にしたら、WBPPでは20枚しか認識されていなかったものが、30枚ほど位置合わせされていました。この方向で良さそうなので、さらに基準を相当甘くします。いろいろ試して、まず元々位置が大幅にズレていた15枚を省き、残り49枚で剃りを進めることにしました。さらにSensitivityとPeak responseを共に0.9程度にしたら、49枚全部を認識し、49枚分のImageIntegrationまでできました。その後、StarAlignmentした画像を、さらにCometAlignmentし、ImageIntegrationすることで無事に彗星核基準のスタック画像になりました。

今回は核の周りの構造を見たいために、基本的にスタックのみで他の処理はほぼ何もしません。ABEなどのソフト的なフラット化さえもしません。当然、恒星の分離もしませんが、核の周りだけ見るには恒星が流れていても基本的にはお構い無しのはずです。ただし、SPCCやPCCなどの恒星を使った色合わせができないことは認識しておくべきでしょう。なので最終画像はグレースケールに落として、モノクロとしました。


Larson-Sekanina フィルター

さて、核基準でスタックだけした画像に、早速Larson-Sekanina フィルターを適用してみます。パラメータを注意深く探りながら色々試して、最終的に距離2ピクセル、回転2度、量0.2であとはデフォルトと決まりました。

角度はあまり敏感ではなく、今回は2度から5度くらいまであまり変化はありませんでした。今回の画像では5度以上ずらすと根本的に違った構造が出てくるようです。そもそもズレを使って淡い輝度の違いを見やすくするものなので、ズレた時にある程度相関を持って重なる必要があるはずです。なので、今回の場合5度以上のズレになってくるとおそらくズレすぎで、全然相関がないところとのフェイク構造が出てしまうのかと思われます。前回、例え話で出した古文書などのズラしを考えてみても、一文字の中の狭い範囲内でズラすことに意味があるのであって、文字を超えて例えば上とか横の別の文字とのズレを見出い出してしまうのは、Larson-Sekanina フィルターでは距離や角度を大きくズラしすぎることに相当するでしょう。全く違う文字と重ね合わせてそのズレを見るのだと、たまたまそれぞれの文字の一部が重なるなどの偶然の相関が検出されるだけで、出てきた構造はフェイクで、結果に意味がないことは容易に想像ができるかと思います。

一方、今回入れた距離ズレの2はそこそこ敏感で、1とか3だと全然違う結果になります。前回の粗い画像でも2.5にしているのですが、これだけ分解能が違うのに、なぜ同じような値なるのかまだ謎です。彗星の核周りの構造の大きさ自身によるのでしょうか?焦点距離が前回250mmと今回1300mm、ピクセルサイズが前回6.3umと今回4.3umなので、焦点距離もピクセルサイズもより細かく見ていることになります。比を計算してみると、1300/250 x 6.3/4.3 =7.62となり、前回と今回の距離のズラしはピクセル単位で8倍くらいあっても良さそうです。前回2.5なら今回は20くらい、今回2なら、前回0.25くらいになっていいはずです。前回の画像でも、今回の画像でも、この比くらい大きくズラしてもみましたが、少なくとも有意な画像に見えることはありませんでした。もしかしたら、まだ私自身が大きな勘違いをしている可能性もあるので、今後の課題とします。

今回のLarson-Sekanina フィルターの適用結果ですが、回転のように見える構造がかなりはっきりと出ました。以下の画像は核まわりを見やすくするために、すでに縦横半分ほどにクロップしています。また、比較しやすいように良画像ともモノクロにしてあります。

フィルター適用前の画像と、
integration2_49files_normal_cut_mono

フィルター適用後の結果です。
integration2_49files_LS_cut_mono

核回りに明らかに時計回りの回転構造と、テイルに縞がはっきりと出ているのがわかります。ただ、Larson-Sekanina フィルターで出てきたテイルの縞は、フェイクの可能性もあるという情報をどこかで見たので、判断は慎重になるべきかと思います。


仕上がり画像

上記画像を、北向きを上にして、クロップして、核の周りをより詳しく見てみます。大きさを示す矢印も入れたので、スケール感もわかるかと思います。
integration2_49files_LS_cut_mono_middle_rot_cut_arrow

拡大してみると、更にはっきりと時計回りに回っていることがわかります。核の大きさがわからないのですが、調べたところによると直径20-40kmとのことです。ほとんどの彗星は直径10マイル(16km)を超えることはないとのことなので、この大きさが本当なら、やはりかなり大きな彗星ということになります。

撮影をした日の地球から核までの距離は、この日は0.595 [au] = 8.9e7 [km]とのことなので、核の直径30kmとすると、核の視野角は0.069秒角程度になります。クロップ前の画像の横幅が50分角程度でそれをCMOSセンサーの横幅の4144ピクセルで見ているので、1ピクセル辺り0.72秒程度です。すなわち、1ピクセルで核の10倍程度の幅があるということです。核は相当小さいことがわかりますし、核がガスを出すことでここまで大きく見えることも実感できます。

パッと見える回転の構造は10ピクセル程度あるので、核が回転しながら、核のすぐ周辺に核の100倍程度のくらいの太さでガスを出していると推測されます。

まだ全然大したことは引き出せていないですが、このはっきりとした回転が見えただけで、もう興奮モノの面白さです。Larson-Sekanina フィルター偉大です。数学的には単純と言いましたが、相当強力で、相当の汎用性を持っていると思います。逆に言うと、汎用性を持っているからこそ単純な数式で表すことができるといってもいいのかもしれません。

汎用的なLarson-Sekanina フィルターをもっと応用できないのかと思いましたが、もしかしたらステライメージに搭載されている「回転アンシャープマスク」は応用例にあたるのかもしれません。ステライメージの回転アンシャープマスクの解説ページを見ると、Larson-Sekanina フィルターにあたるローテーショナル・グラディエントより、微細構造の抽出と滑らかさを両立し、結果を確認しながら仕上げられると言うようなことが書いてあります。惜しむらくは、この回転アンシャープマスクの使用例がほとんど皆既日食で、彗星に使った例は極々わずかなことです。もしこれを彗星核にうまく使えたら、面白い結果が出るのかもしれないと思いました。


まとめ

回転らしきものが見えるのはわかってきたので、次回の大彗星では日を変えて連続で撮影して回転がどう変化していくのかなどに興味があります。日々の変化で、核の回転速度などもう少し何か意味が引き出せるかもしれません。次回の大彗星でどこまでできるかかなり楽しみです。

今回の大彗星の一大騒動、自分的にはやっと終局を迎えました。1ヶ月以上楽しめたので、かなり満足です。特に最後に辿り着いたLarson-Sekanina フィルターでの核の回転画像は、普段の画像処理とはまた違った方向性だったからでしょうか、自分の中でかなりインパクトがありました。その一方、今回の紫金山アトラス彗星では弧を描くようなテイルは見えなかったので、私の中ではそれでもネオワイズ彗星の方が印象が大きいです。これは最初に見た大彗星だったと言うこともあるのかもしれません。

次に大彗星が来るのはいつのことか?8年で2回見たペースの通り、4年後なのか?もっと先なのか?意外にすぐ来るのか?今から楽しみに待ちたいと思います。


2024年10月20日、おそらくこの日が紫金山アトラス彗星の、最後の最大のチャンスです。


好条件で天気も良さそう!

薄明終了が18時34分、月が昇ってくるのが18時52分なので、わずか17分ですがやっと暗い時間が訪れます。高度も月が出るくらいまで20度以上を保ち、かなりの好条件です。しかも富山の天気予報は快晴ということです。

その一方、彗星自身はだいぶ暗くなってしまっているようで、最新の光度データによると、この日は5等級以下くらいになっているようです。テイルも短くなっていると思われるので、今回はとりあえず核を狙うことにしました。核が回転している様子が撮影されているようで、上手く見えたらこれは面白そうです。他は、前回取れなかったタイムラプスでしょうか。あとは暗い空なので、イオンテイル狙いでしょうか?


結局同じ場所に

午前は天リフのピックアップの様子を聞ききながら、画像処理やブログ書きです。午後一で大型赤道儀を含む大量の機材を車に積み込んで、準備万端にしておきます。

ところが、天気予報では一日中快晴クラスのはずなのに、昼くらいからどんどん曇り始めて、15時を回ってもまだ全面かなり厚い雲で、その時はもう半分諦めモードだったのでした。16時になって再び外を見ると、一応日が差していて西の方も青空が出始めているので、とりあえず車を出すことにします。

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まだどこに行くか迷っていたのですが、出発が遅くなったのであまり時間がないこと、どうも南の空の雲が多いように見えたので、結局前回撮影した同じ場所で、近くの川沿いに陣取ることにしました。

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というのも、富山は北の海側に街があるので、北側が明るく南側が暗いのです。早くから晴れていたらもっと南の暗い空を狙う予定でした。結局は雲を見て、いつものそこそこ明るい場所で妥協したのですが、この判断は正しかったようです。

撮影している途中に以前会ったことがある人が来て、「南がダメだったのでここまで来た」と言っていました。「結局時間がなくて簡単なセットアップにした」とのことなので、欲張らずに時間に余裕をもつことが大事なのかと思いました。というのも、今回撮影機材を3セットも出したのですが、トラブル続きでかなり焦ってしまって、全然時間が足りなかったのです。


3つの機材

現場に着いたらすぐに機材を出しますが、今回は3セットと多いことと、一つはSCA260とCGX-Lという大型機材の部類なので、そこそこ時間がかかります。大雑把に機材を設置して、少し余裕が出た時に撮った写真がこちらです。

IMG_0291

ここから実際の撮影に入っていきます。


1セット目はタイムラプス

1セット目はタイムラプス目的で、シグマの50mmのレンズにEOS 6Dで17時くらいから20秒に1枚のペースで撮影を開始します。

できるだけ手間をかけたくなかったので、最初からISO1600で固定します。露光時間は1/4000秒、F11から始めて、暗くなるごとにまずはF値を小さくしてF2.8まで行きます。あとは露光時間を暗くなるごとに伸ばして、最後は2秒まで行きます。2秒で止めたのは、前回の撮影から105mmで3秒で流れ始めたからです。今回は50mmだったので、4秒くらいまでは大丈夫だったかもしれませんが、もうその頃には余裕がなくなってきていたので、2秒までいってあとは完全放置です。

あ、連続撮影はMagic Lanternを適用した6Dを使っています。レリーズいらずで、連続撮影の際の細かい設定もできます。例えば今回は、20秒ごとに1枚シャッターを切って、500枚でストップするなどです。20秒間隔なので、撮影の途中は少し余裕があり、露光時間とかを任意に変えるなどができます。とても重宝しているのですが、ファーム書き換え作業とかがあり、失敗するとダメージが大きく、万人向けではないのであまりお勧めではありません。

実際の露光時間の変更はかなり頻繁で、明るさを見ながらマニュアルでダイヤルを回していきます。他の準備に夢中で暗くなりすぎしまったりとかで、結構大変でした。


2セット目は彗星全景

とにかく、1セット目のタイムラプスをセットしてから、やっと次に取り掛かれます。もうそこそこ暗くなってきているので星が見え始め、極軸調整ができるはずです。2セット目はSWAgTiにRedCat51を載せて2台目のEOS 6Dで、彗星全景とイオンテイル狙いです。ところが、よく考えたら一眼レフカメラなのでCMOSカメラと違い、SharpCapに繋いでの極軸調整がちょっと面倒です。しかもこの6Dは最近手に入れたものなので、まだSharpCapに繋いでテストしていません。結局、電視観望用のFMA135+Uranus-Cがあったので、RedCatを一旦取り外して、こちらで極軸調整をしました。

SWAgTiの極軸微動の記事でも書いたように、極軸調整は必ず往復で2度試すのですが、どうも2度目の誤差が3−5分角くらい出てしまいます。どこか緩んでいると思われるのですが、パッと見つからないので、このままRedCatに戻して、初期アラインメントに進みました。西の低い空の星があまり明るいのがなかったので、少し天頂に近いですがベガにしました。ところが、これまた一眼レフカメラなのSynScan Proのプレートソルブが使えないのにここで気づきました。

ここら辺からかなり焦ってきます。

次にピント合わせをしていると、なんと鏡筒が動くことに気づきました。どうやら三脚と極軸微動アダプターの間のネジが緩んでいたようです。往復の極軸調整で大きくズレたはずです。

ネジは締め直しましたが、ここら辺からヤケになりました。

RedCatから6Dを外して、SCA260につけてあったASI294MC Proを外してRedCatの方に付け替えます。よく考えたら、Celestron赤道儀で彗星を自動導入する方法を考えてなかったので、1300mmの焦点距離ということもあり、うまく入れられる自信が全く無くて、もう核は諦めようと判断したのです。

でもこの判断は良かったようです。RedCatとASI294MCの極軸調整は一瞬でおわりました。緩んでいたネジはしっかり締め込んだので、今度は誤差も1分角程度で許容範囲です。初期アラインメント(ベガ)もSharpCapのプレートソルブが使えるので、すぐに導入できます。

次が痛かったのですが、なぜかPCで繋いでいるSynScan Proのアランメントで彗星を選んでも何も出てこないのです。かわりにiPhoneの SynSan Proに接続しようとするとなぜか接続エラー。もうここら辺で暗い時間帯に入ってきているので、泣く泣くマニュアル導入にしました。

まず金星をプレートソルブで視野に入れ、そこから矢印ボタンで右上に行き、とりあえずM5と思われるものが入り、さらに右上に行きます。なんとか入ってくれないかと思っていたら、明らかに明るい太い線が見えました。こんな明るく写るのはテイルしかないはずです。これを根元まで辿ることで核まで辿り着くことができました。でもASI294MCの範囲ではテイルの全景まで入りきらないようです。

ここでまた判断です。このアラインメント状態で、再び6Dに変更することにしました。鏡筒をずらさないようにカメラを入れ替え、今度はBackYardEOSで画面を確認し、ピントを合わせます。そこそこピントもあったので、とりあえず30秒で10枚撮影します。ここでやっと余裕が少し出ました。

まだ暗い時間帯は続いているので、もう10枚の撮影に入ります。でもその前に、今度は余裕を持ってきちんとピントを合わせて、核の位置ももう少しいいところに持ってきます。これ以降は10枚セットの撮影を時間の許すまで続けることで、こちらも放置できるようになりました。

とりあえず1枚撮りの全景画像の画像を載せておきます。これと同じような画像を50枚くらい撮影したので、スタックしてどこまで淡いところが出るのか楽しみです。

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3セット目のセットアップは核

やっと最後のSCA260のセットアップです。先ほどRedCatから外したASI294MC Proを、再びSCA260に取り付けます。

実はちょっと前にSCA260のアップグレードがあったのですが、つい最近帰ってきたばかりで、この日段ボール箱から出してそのまま持ってきました。まだいろんな準備がいろいろできていなくて、特にいつもつけてあるガイド鏡を取り付けるプレートをまだ付いていなかったのです。手持ちの適当なプレートを使って工夫してガイド鏡をつけるような時間的な余裕がなく、結局極軸を取るのをあきらめました。

CGX-Lの電源を入れ、極軸適当のままベガを導入します。ベガはSharpCapでプレートソルブして、なんとか画面内に導入できました。でもその後は、例えば彗星の近くのM5を自動導入しても全然入ってきません。

もうここからはSharpCapの画面を見ながら、マニュアルで矢印ボタンを押していくことにしました。RedCatでも入ったので、なんとかなるかもしれないと思ったのですが、焦点距離が250mmと1300mmでは全然違い、そう簡単に導入はできません。

ここでのヘルプは、隣のRedCatでした。少なくともRedCatは撮影中の彗星の方向を見ています。なので、その方向に近くなるようにSCA260も向きを合わせて、画面に入ってこないか見るのです。5分くらい探していたでしょうか、先ほどと同じように明るい領域が見えました。間違いなくテイルです。これでやっと核まで入れることができました。この時点で暗い時間帯は過ぎていましたが、核は明るいので多少の月明かりは大丈夫でしょう。

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1枚撮りです。こちらも50枚くらい撮影できていました。


忙しくて、大変で、焦ってた

核を何枚も撮影して、RedCatの画像を見ると、少し雲がかかっています。これ以上はRedCatは意味がないと考え、片付けを始めました。ちょうどRedCatセットが片付け終わる頃、核の方もかなり低空になってきているので、ここで片付け開始です。大型機材なので少し時間がかかりますが、片付け終わることにはタイムラプスも最初にセットした500枚に近付いていたので、500枚になるまで少しだけ待って、こちらも片付けです。

とにかく3セットは私にとって多過ぎで、ずっと焦っていた気がします。下手をしたらRedCatもSCA260も導入さえできなくて、メインの成果が全くなくなっていたかもしれません。かなり綱渡り的状態で、偶然に近かったかもしれませんが、画面で見たテイルの明るさには助けられました。全て終わってから、全景も核もタイムラプスも撮れたということで、やっとホッとしましたが、疲れ果てていました。

自宅に着いたら20時過ぎで、温かいシャワーを浴びて夕食を食べて、やっと落ち着くことができました。これから画像処理ですが、明日からまた平日で仕事なので、あまり無理をせずに一つづつじっくりと取り組もうと思っています。


前回の記事で今年5月に撮影した南天の天体を処理しましたが、今回はさらに前の4月の撮影結果になります。


春の銀河

私は春の銀河はあまり得意ではありません。SCA260の1300mmの焦点距離と、ASI294MM Proの画角だと、少し広くて銀河の細かい構造に迫力があまり出ないからです。それでも今回は、一度撮影してみたかったヘルクレス座銀河団に挑戦してみました。

銀河団といえばおとめ座銀河団が有名で、以前撮影しています。範囲もヘルクレス座銀河団よりも遥かに広く、焦点距離420mmのε130Dとフルサイズのカメラでもまだ収まりきりません



今回のヘルクレス銀河団の場合、もっと小さい領域に小さい銀河が集まっていて、一部を拡大して細かい銀河を見ることになるので、分解能が勝負となり、きちんと撮影しようとするとかなり手強いです。

撮影はもうかなり前で記憶の彼方なのですが、その時の様子は当時文章にして残してあったので、ほぼそのままの形でブログ記事として使いました。その時のことを読んでて、赤道儀の反転を失敗したのも思い出しました。ことなきを得たのですが、冷や汗ものでした。

時期的には4月初めに撮影したM104の次で、4月中頃になります。LRGB合成の予定で、3晩にわたって撮影し、Lだけで6時間以上、RGBがそれぞれ約1時間と、合計9時間以上になっています。画像処理の途中で思ったのが、思ったより色が出ないので、もう少しRGBをの枚数を増やしても良かったのかもしれません。

M104のときには画像処理にかなり時間をかけてしまったのも、今回のヘルクレス座銀河団の画像処理が遅れてしまった理由の一つです。実は画像処理は4月の時点で一度パッとやっていたのですが、気に入らなかったので改めて一からやり直しでした。それから約半年後になりますが、今回新たに書いた記事は主に画像処理についての部分です。


撮影時のトラブル1: 赤道儀の反転失敗

今回の撮影ですが、夜中の2時半頃に子午線反転があります。この時間夜中に起きているときついこともあり、NINAの自動反転機能で乗り切ろうとしました。ただし、自動反転は以前痛い思いをしたことがある



ので、ある程度の対策をしてました。

数十cm程度の短いUSBケーブルとDC電源ケーブルをカメラ側に取り付け、カメラの周りにケーブルタイで固定して、引っ張られた時に必ずケーブルの長手方向にのみ力がかかるようにして、引っ張って抜けるようにしておいたのです。

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青いUSBケーブルとDCジャックケーブルが宙ぶらりんになっています。
引っ張られて抜けてしまっていましたが、
このおかげで機材の破損はありませんでした。

今回はこれが功を奏しました。朝起きて撮影結果を見ると、PHD2が途中で止まっていて、カメラが認識されないと出ています。撮影画像のタイムスタンプもちょうど反転時刻くらいまでで、その後は撮影されていません。これはまずい!と直ぐに外に出てみてみると、どうやら赤緯体がクルッと一回転しているような状態で、ケーブルが首に巻かれているような状態になっていました。

それでも想定通り、短いケーブルのところでUSBもDC電源も共に抜けていて、ことなきを得ました。こんな風に首を巻いた状態は初めてでしたが、赤緯体が初期位置からほぼ真反対に向いた状態での撮影になるのでこんなことが起きたのかもしれません。南天の高いところの天体は少し注意が必要かもしれません。今のところはっきりとした原因は不明ですが、とにかく機材が壊れなくて何よりでした。


撮影時のトラブル2: バッテリー

手持ちのバッテリーの一つが、気温が低いと変な振る舞いを見せることが確実となってきました。以前開田高原に行ったときには低温警告が出たのですが、警告は出なくても、温度が低いと電圧降下が激しいようです。

まず、気温が低い時は最初は使えるのですが、途中で電池の消耗が早いと自ら誤認識してしまうようです。一晩持つことはなく、夜中気温が低くなってくると止まってしまいます。こうなると、電源を入れようとボタンを押しても何も反応がないのですが、充電しようとしてACアダプターに繋ぐと何故か一瞬(秒単位)で100%になります。温度がまだ低いうちにACアダプターを外すとまた直ぐにダウンしてしまうのですが、しばらく待って温度が少し上がってからACアダプターを抜いても100%を保ったままになります。充電し切れているとはとても思えない短時間で100%になるので、何か表示がおかしいかです。

季節が進み気温が上がってくると、一晩持つようになってきます。撮影が終わって朝チェックすると、気温によって0%と出る時と、数十%残る時があります。0%となっているときにACアダプターに繋ぐと、これもなぜか一瞬で100%に戻りますが、一晩使っているので明らかに電力が多く残っているとは思えず、充電時の表示が何かおかしいと思われます。一方、数十%とか残っている時は、すぐに100%にはならずに、数十%が徐々に増えて、でも直ぐに(1分くらい?)で99%とかになります。温度が上がってきて徐々に振る舞いがまともなものに近づいてくる印象ですが、まだ春くらいの温度だと信用できません。一応100%充電されていると表示されていようが、そのまま充電を続けて半日くらい放っておきますが、次回使うときは今のところ問題なく使えています。

他のバッテリーを5台ほど使ってきましたが、同じような状況で同時に使っても、今のところこの一台のみがこのような変な振る舞いをします。たまたまこの個体だけなのか、興味がありますが、Amazonのレビューとかみても低温関連のことはあまり書いてないので、よくわかりません。Amazonの同機種のレビューを見ると、低温以外でもよく似たトラブルはたくさん報告されていて、途中から充電できなくなったとか、保証期間を過ぎると修理もできないとかの投稿がたくさんあります。大手のものだから数が出ているからというのもあるのかもしれません。

今回のようなことがあると改めて思うのですが、大型のバッテリーを買って1台で運用するようなことは、撮影失敗のリスクを考えるとちょっと怖いと思ってしまいます。私は1万円からせいぜい2万円までの機種で抑えていて、そのクラスの数を揃えるという戦略です。トラブルの時はすぐに交換して、冗長性で回避できることと、不具合時の1台あたりの金額的なダメージを防ぐのが目的です。低温時には問題があるこのバッテリーも、その後暑い夏には普通に使うことができたので、冬場は他のバッテリーを使えば良く、長い目で見たらそこまでダメージはないです。


画像処理

撮影直後の画像処理では銀河がのっぺりと絵のようになってしまい、やる気を無くしてしまいました。反省して、今回はRAW画像の選択からやり直しです。

まず、前回画像処理した自分の画像と、Astrobinのヘラクレス銀河団でよく写っているものを見比べてみました。のっぺりは仕方ないとして、パッとわかる決定的な違いは微恒星の数です。例えばAstrobinのImage of the day (IOD) に選ばれた画像と自分の画像で、同じ領域を切り出してPixInsightのSubframeSelectorで認識できる星の数を比べてみると、IODの方が約1.5倍の星の数になりました。実際の画像を見ても、細かい星があるかないかでかなり違って見えて、1.5倍というのはちょうど納得できるくらいの数字です。

1回目の画像処理ではFWHMが5以下、星の数が250以上という閾値を設けてRAWのL画像を振り分けました。その場合、376枚中、147枚が採用されました。できるだけ小さな星を救おうとしたために、悪い画像を切り捨てたつもりですが、かなりの枚数を捨てていることになります。今回、2回目の画像処理はFWHMが7以下、星の数が150以上と条件を緩め、採用枚数を376枚中、274枚としました。

まずこれで微恒星の数が変わるかです。ここでいう微恒星の数というのは、M104の時に散々議論したBXTで認識される小さな星の数ということです。


結果はというと、M104の時とほぼ同じで、
  • 1回目の、枚数を絞ったFWHMが小さい方が、出来上がりの恒星の大きさは小さい。
  • この場合、背景ノイズが大きい。
  • ノイズに埋もれた淡い微恒星を救いきれない。
でも、落としてしまう微恒星の数は大したことはなく、IODの画像で見えている微恒星からみたらまだ全然少ないままなので、誤差の範囲です。

一方2回目では、
  • FWHMは大きくても枚数が多い方が背景のノイズは明らかに小さくなる。
  • S/N測定でもいい結果出ている。
  • かつ残る恒星の数も多少増える。
  • 恒星の大きさが少し大きくなる。
といいことが多いのので、今回は枚数を増やしたもので処理することにしました。不利な点として、恒星が少し大きくなるのはBXTでどうにでもなると考え、今回は重要視しなかったです。もしBXT無の場合は、判断が変わるかもしれません。


次に今回の画像処理でやり直したことは、drizzleの有無です。今回は最初drizzle無しで処理しましたが、小さい銀河が多数あるので、改めて比較するとdrizzle x2の方が有利そうです。
comp1
左がdrizzle x2で、右がdrizzle無し。
わかりにくい場合はクリックして拡大してみてください。

そのため、2度目の処理はdrizzle x2を使いました。

本当はM104の時のように、撮影時からASI294MMのbin1にしてもよかったのですが、撮影時から画像サイズが大きくなり、画像処理の負担も大きくなり、かなりきついです。フラットなども合わせると、ディスク容量も平気で数100GBを使用してしまいます。bin2のdrizzleのx2なら、最後のインテグレーションで増えるだけなので、全然許容範囲です。drizzle x2にBXTをかけるとかなり解像度が出ることがわかっているので、これでbin1に迫れるといいのですが。

ただし今回は、露光時間をこれまでの自分の標準の5分から1分に短くしました。恒星が飽和するのをできるだけ避けるためです。そのため撮影枚数はこれまでの5倍と多くなるので、その分ディスク容量を食います。

4月の最初の画像処理でのっぺりとしてしまった原因もわかりました。ストレッチ時のGHSの使い方が原因でした。GHSは最初にSP (Symmetric Point)を選ぶのですが、SPに0以外の値を入れてしまうと銀河の中の淡い部分が明るくなりがちで、どうも階調が取れません。今回だけなのかもしれませんが、SPは0にして、当然LP保護も0になりますが、HPの保護は明るいところをあまり明るくしないように適当に0.5とかにしました。あとの残りのパラメータはStretch FactorとLocal Intensityだけなので、これで銀河の暗いところから明るいところまで階調ができるだけ残るようにストレッチとLPを調整しました。どちらも大きくしすぎないことがコツみたいですが、まだあまりよくわかっていない部分もあるので、もう少し経験が必要みたいです。

さらにその後、GHS以外にもいくつか試したのですが、今回は背景の淡い構造を出す必要はないこと、飽和しないことという条件で、結局もっとシンプルなMaskedStretchとしました。結果を見ると、もう少し彩度を出しても良かったので、ArcsinhStretchでもよかったのかもしれません。

そこからの最後の仕上げはかなり苦労して、結局5回くらいやり直しました。Astrobinを見ていると、銀河も恒星も色彩豊かで、一つの銀河内でオレンジから青白まで出ているものもあるのですが、自分の画像だとなかなかそこまで出ないです。RGBの撮影時間が短いので色情報がノイジーなこともあるのかと思います。もう少し手はあるのかもしれませんが、キリがないのでできる範囲でまとめました。まだ少し不満が残っているので、微恒星の写りも含めていつかリベンジしたいです。


結果

今回画像処理した結果を示します。drizzle x2だと画像が大きくなりすぎてアップロードできなかったので、ブログ用に少しだけ(75%くらい)解像度を落としています。

「ヘルクレス座銀河団」
Image15_cut_low
  • 撮影日: 2024年4月13日1時35分-4時8分、4月13日22時17分-14日2時32分、4月14日22時26分-15日3時27分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: ZWO社のLRGBフィルター
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 274枚、R: 57枚、G: 54枚、B: 60枚、総露光時間445分 =7時間25分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120でLRGB: それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop

画角が少し広いので、一部銀河団の中心部を切り取った画像も載せておきます。銀河をできるだけ取り込むために、縦型に切り出した後、90度回転させています。これぞ「銀河団」という感じです。
Image15_cut_small_rot

特に拡大図の方をみると、4月ののっぺり画像処理から比べたら、輝度の階調を残し、色調もある程度確保することができたと思います。BXTの効果も絶大で、drizzle x2と合わさって、銀河の細部もよく出ていますし、恒星の肥大も抑えられています。

見る距離や拡大率にもよると思いますが、小さな銀河なので離れた時見てもある程度はっきり見えるように、もう少し輝度や彩度を出してもいい気もします。その一方、あまり派手でないこのくらいがいいのかとも思えます。まだ自分の中で銀河にあまりはっきりとした基準がないので、今後しばらく試行錯誤かと思います。

上で議論したように、M104の時と同じでBXTで認識できない微恒星を取りこぼしてしまっているので、あるところより暗い恒星が全く見えなくなるという、あからさまな閾値ができてしまっています。BXTで小さな銀河と恒星の見分けが本当にできているか、StarNetで恒星と背景を分離するときに、銀河をうまく背景に分離できているかどうかは、まだ多少疑問が残ります。私は趣味と割り切っているのであまり気にしていませんが、気にする人は気になるかもしれません。ただし、同じクオリティーをBXTなどなしで出そうとすると、鏡筒の大口径化、赤道儀の大型化、シンチレーションのいい撮影地の選択、更なる長時間撮影など、敷居がはるかにはるかに上がります。簡単に同程度の効果をソフト的に実現するBXTやStarNetは、やはりすごいと言わざるを得ません。

最後に、恒例のアノテーションです。

Image15_cut_Annotated

確かにそこそこ銀河の数はありますが、おとめ座銀河団の時アノテーション画像ほどではなく、面積も数もやはりもう少し小ぢんまりとした印象です。


まとめ

長く処理されずに残っていたヘルクレス座銀河団も、やっとブログ記事にたどりつきました。細部をいかに出すかで、おとめ座銀河団の時はε130Dで最初から焦点距離が短かったのであまり気にしなかったのですが、今回は焦点距離1300mmなので、かなり細かい描写でシンチレーションとかも効いてくるはずです。処理してみると、思ったよりはるかに手強かったです。

HDDの中身を見ても未処理画像も、だいぶん底が尽きてきました。残っているのは中途半端に撮影したものとかで、今後処理する気になるかどうかもよくわからないものばかりです。なんとか救ってやりたいものもあるのですが、もう2年前に撮影したものとかもあるので、撮り直したほうが早いかもしれません。

撮影にも画像処理にも時間がかかるようになっています。もっと気楽に済ませたいという思いもあります。この場合はSWAgTiとかを活用すればいいのでしょうか。でも大口径のものと比べてしまい、満足できるのかどうかはまた別問題になるのかと思います。

さて、次はここしばらく何日か撮影している網状星雲です。もう諦めて画像処理を進めるか、さらに撮影枚数を増やすか。いや、全然気楽な方向に行ってないですね...。


久しぶりのブログ更新になります。皆様いかがお過ごしでしでしょうか?ゴールデンウィークは天気も良く、特に後半は新月期に入り絶好の星見日和だったのかと思います?

私はというと、あいにくGW中に体調を壊してしまい、前回の小ネタ記事を書いて以降ほぼ何もできない日が続きました。やっと体力も少し回復してきて、今もこの記事は病院の中で書いています。と言っても今回のM104の撮影はずっと前に終わらせていましたし、画像処理もブログ記事ある程度まで終えていたので、少し仕上げたくらいであまり無理はしないようにしています。

せっかくの長期休暇の新月期、暑くもなく寒くもなく、大きな太陽黒点と低緯度オーロラを横目にと、数々の絶好のチャンスを逃してしまい残念でなりません。その不満を払拭すべく、少しづつですが再開していきたいと思います。


三たびM104、でも本当は4度目

M104は分解能ベンチマークのような役割もあり、これまで何度か撮影しています。最初は2021年4月にVISACで。中心部を拡大すると、まだまだ無理やり解像度を出している感があります。


次は2022年8月、SCA260を手に入れてからより大きな口径で違いを見ました。


ただ、SCA260は焦点距離が1300mmとそこまで長くないので、M104は小ぢんまりと写ります。そのためこの時は
  1. バローなどなしでbin1の場合
  2. 2倍のPowerMATEを使ってbin2の場合
で比較しました。1素子あたりの明るさと画角は同じになるようにして比較したということです。違いはFOV(全体の視野角)と、bit depthになります。結果としては、恒星は2の2倍でbin2方が良かったですが、銀河本体は1の方がビミョーに良かったです。でも有意な差はほとんどなくて、結局1のほうがバローの挿入などの余分な操作がなく埃などが入る余地が少ないので、今後は1でいくという結論になりました。あと、この時はまだRGB合成のみで、L画像は撮っていませんでした。

その後、2023年5月にL画像だけ撮影していて、明らかに解像度が上がっていることまで確認したのですが、同時期にRGBを撮影する機会がなかったのでそのままお蔵入りにしてしまいました。2022年のRGB画像と合成しても良かったのですが、いまいち盛り上がらずに2024年を迎えてしまって、このままではさすがにダメだと思い、今回やっとLもRGBも一緒に撮影するに至りました。


NINAが重い

今回の撮影の少し前、3月18日にNINAの3.0が正式に公開されました。ただしちょっと重いみたいです。3.0にしてから撮影画像の保存にすごく時間がかかるようになりました。1枚撮影すると保存だけで毎回1分以上かかり、保存中は撮影は進まないので、かなりの時間ロスになります。

現在はStick PCで撮影し、micro SDに保存しているのです結構非力です。最初ディスクの書き込み速度を疑いました。でも撮影したファイル単体のコピペとかだと全然速く終わります。そこで、タスクマネージャーで撮影中の様子を見てみたら、NINAがものすごくCPUパワーを食っていて、かなりの時間100%になるようです。仕方ないので、以前の2.2に戻したら、ほぼタイムロス無しで連続で撮影できるようになりました。単にソフトが肥大したのか、それとも何か負荷が増えるようなバグっぽいものなのか、3.0がさらにアップデートされたらちょくちょくチェックしてみたいと思います。


今回の撮影

今回の撮影での大きな違いは、
  • 前回まではRGB撮影だけだが、今回はL画像を撮っているところ
  • 露光時間をこれまでの5分から1分にしたこと
です。L画像は実際の解像度向上に大きく貢献することになるかと思います。露光時間に関しては、SCA260+ASI294MM Proの場合gain120で露光時間5分だと、かなりの恒星がサチってしまうことに気づきました。特に、明るいL画像は深刻です。

下の画像は昨年5分で撮影したL画像を反転させています。bin1での撮影なのでそもそも12bit = 4096階調しかありません。ここでは階調の99%以上(4055/4096)になってしまっているところを黒くしています。

2023-05-11_20-58-14_M 104_LIGHT_L_-10.00C_300.00s_G120_0004
結構な数の星と、なんと画面真ん中の銀河中心までサチってしまっています。これはいけませんね。

下は今回露光時間を1分にしたもので、他の条件はほぼ同じです。だいぶマシになっていますが、それでもまだ飽和を避けることはできていません。少なくとも銀河中心は問題ないです。
2024-04-01_22-25-41_M 104_L_-10.00C_60.00s_0013

さらに露光時間を変えるにあたり、以下の2つのことを考えましたが、処理後の画像を見比べた限り違いはわからなかったです。
  1. 自宅撮影に限っていうとスカイノイズが圧倒的に支配的になります。露光時間を短くすると、読み出しノイズの効きが大きくなってくるのですが、露光時間を1分にしたくらいではまだまだ読み出しノイズは全然効かないくらいです。
  2. 淡い部分の階調がADCの暗い側にシフトするので、階調が出にくくなる心配もありましたが、まだ全然余裕があるようです。
LRGB画像は今後1分でいいと思います。ナローに関しては輝度が10分の1以下になるので、露光時間5分をキープするか、ダイナミックレンジがそこまで必要なければgainを上げてもいいかと思います。


画像処理 

WBPPでLRGBそれぞれインテグレートまでします。その後、すぐにRGBを合成して、カラーにしてからABEとDBEでフラット化をかけました。それぞれの色でフラット化してもいいのですが、カラーでやっても独立して働くので効果は同じはずで、1度で済むので手間を省いているだけです。

銀河で自宅撮影なので、背景のIFNなどは気する必要はなく、RGB画像もL画像も、気軽に簡単にフラット化してしまいます。だいこもんさんのブログ記事(元情報はUTOさんだそうです)によると、M104の周りにも相当淡い構造(更に大元がここ)があるようなので、試しに去年撮った5分露光画像も含めてL画像をかなり頑張って炙り出しましたが、私のところではその片鱗さえ全く見えませんでした。大顧問さんはチリで30時間露光して見えたとのことなので、自宅のような光害環境ではここまで淡いのは全然無理なのかと思います。なので、今回は背景は気にしないで、とにかく目的のM104本体の内部の細部構造がどこまで見えるかに全力を傾けます。

この内部構造、シンチレーションに強度に依存するようです。L画像は二日にわたって撮影していますが、二日目の画像は全然ダメで使うかどうか迷いました。1日目だけのもの133枚と、1日目133枚+2日目の中でもマシなもの56/103枚を使ったものを比較しましたが、見た目では違いがわからなかったので2日目のも入れたもので処理を進めました。

L画像はABEの2次、DBE、BXTをかけていますが、この時点でかなりの解像度が出ていて期待が持てそうです。
Light_BIN_1_8288x5644_60s_L_drizzle_1x_ABE4_DBE_BXTc_BXT_BXT03


LRGB合成

RGBとLをどう合成するかはいまだに迷います。過去に何度が議論しています。LRGB合成を初めて試したのは2022年10月のまゆ星雲です。この時わかったのは、L画像を合成したときに色がかなり出なくなるのですが、見えなくなっているだけで色情報としては十分残っているということでした。でもLとRGBをどのタイミングで合成すべきか、どういった比率で合成すべきかなどはまだまだ謎のままでした。


その後、この2つの過程でLRGB合成の経験的な方法はある程度確立したのかと思います。



そしてこのページである程度の理屈も含めて結論が出ています。


久しぶりのLRGB合成になるのでかなり忘れていることもあり、今回改めて読み直しましたが、今見てもかなり有用な議論です。当時のniwaさん、botchさん、だいこもんさんに感謝です。

今回まずは様子見で、PIのLRGBCombinationを使ってL画像を指定してRGB画像放り込んでみると、カラーノイズが結構目立ちました。RGBの撮影時間が短いので当然なのかもしれません。そこでLab分解してaとb画像にぼかしをかけてみました。以前うまくいった方法なのですが、今回はカラーノイズに対してほとんど効果が見られませんでした。カラーノイズ対策ができないのならa、b画像で何かする価値はほとんどなくなってしまいます。カラーノイズは後で対策できることと、奇をてらう方法はできるだけ避けたいこともあり、今回は素直にLRGBCombinationを使う方法を探ります。

未だ残っている一番の疑問は、LとRGBの混合比率です。これまでわかっていることは、
  • LRGBCombination処理はリニアでやらずにノンリニアでやること。ノンリニアとはフルストレッチしてからということ。
  • でもフルストレッチは厳しすぎる制限で、多少のストレッチでも大丈夫そうなこと。
  • リニアで処理すると、恒星内部に明るい飽和の飛びができ、後からどうしようもなくなること。
  • 飽和の飛びはL画像がRGB画像より暗い場合にできたが、L画像を明るくすると無くなること。

まず思っている疑問は、リニア段階での処理では本当にダメなのかということです。リニアはノンリニアの特別な場合と考えることができ、ノンリニアでいいのならリニアでも当然大丈夫だと思うからです。今のところ確認できている弊害は、
  • 恒星の飛び
だけです。

結論だけ言うと、今回リニア段階でLRGBCombinationを試しましたが、いずれも恒星の飛びは確認できませんでした。ただしこの結果は、LとRGBの明るさの違い(混ぜる比率)に依存しそうなので、その比率を変えて幾つか試しました。試したのはLRGBCombinationのCannel Weightsを変えることです。これらは相対的な比だけで決まり、例え全部を0.1とかにしても、処理後の画像の全体の明るさは変わらないことは以前確認しています。試したのは以下の4種類です。
  1. L : R : G : B = 0.1 : 1 : 1 : 1
  2. L : R : G : B = 1 : 1 : 1 : 1
  3. L : R : G : B = 1 : 0.1 : 0.1 : 0.1
  4. L : R : G : B = 1 : 0.01 : 0.01 : 0.01
いずれの場合も上で書いたように飛びは出なかったので、とりあえず今回は少なくともリニア段階でLRGB合成したとしても確認できるような問題は起きなかったと言えます。

その一方、できた画像の解像度には明確な差が出ました。下の画像になりますが、左から順に上の1,2,3,4となります。
comp

注意すべきは2, 3, 4で、Lの比率が高いとLRGBCombination直後はほとんど色がなく、一見モノクロのように見えることです。でも色情報はきちんとのこっているので、ここで心配する必要はありません。CurveTranformationで右のSの彩度を選んで曲線をΓの字になるくらいにして彩度を上げてやると確認できます。上の画像はそのように彩度を上げたもので比較しています。

4つの画像を見る限り、カラーノイズ、彩度に関しては明確な有利不利は確認できませんでした。最も大きな違いは分解能で、Lが一定以上の明るさがないとRGBが持つ低い分解能のままで制限されてしまうということです。わかりにくい場合は上の画像をクリックして拡大して比べて見てください。明確に違いがわかります。LとRGBの比が0.1:1や1:1ならばL分解能が十分生きてこなくて、1:0.1ならば十分、1:0.01にしてももう変化がないことがわかります。以前M106で試した時は1:0.25とかにして分解能が出たので、今回も再現性があり、ある程度L画像の明るさを保たないとダメだという結果を改めて確認できたことになります。

というわけで、今後もLRGBCombinationでシンプルに、Cannel WeightsだけLをある程度大きくしてLRGB合成をすればいいということにします。


結果

結果です。とりあえずはクロップして本体をある程度の大きさにしたものを完成とします。

「M104: ソンブレロ銀河」
Image07_middle
  • 撮影日: 2024年4月1日22時3分-4月2日2時41分、4月10日20時27分-4月11日3時18分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 189枚、R: 59枚、G: 51枚、B: 64枚、総露光時間363分 =6時間3分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が204枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120で露光時間 LRGB: 0.01秒でそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop

まず目的の銀河本体内部の構造ですが、結構出たといっていいかと思います。これはひとえにシンチレーションが良かったからと言うのが今回の結論です。BXTの効果も大きいかもしれませんが、シンチレーション自身が良かったのがまず第一だと思います。色は下に載せたハッブル画像に近くしました。

クロップ前の全体像になります。
Image07_low

恒例のAnnotationです。
Image07_low_Annotated

銀河っぽいシミがいくつかあると思ったのですが、候補に入らないものがいくつかあります。単に画像処理でなにか失敗してるのか、はたまたまだカタログ不足なのでしょうか?


ハッブルとの比較

恐れ多くもハッブルと比べてみます。

まず今回撮影し画像を5度時計回りに回転させ、次のハッブル画像と同じような画角に切り出したものです。
Image07_rot5_Hubble

次がハッブル望遠鏡が2003年に発表したM104です。
STScI-01EVT8YHAGM2WGQTV3DGKRFZ7Q

もちろん分解能には全然差はあって追いつけっこないですし、恒星に至っては大きさも微恒星の写りも全く違います。でもなんかちょっと比べてみようと思うくらいにはなったのかなと思って、自己満足しています。


まとめ

足掛け2年にわたって悶々としていたM104にやっと決着がつきました。2022年の結果がこれなので、大きな進歩だと思います。
final

ソフトは変わりましたが機材は同じです。今回L画像を撮影したのは大きな違いですが、やはりそのL画像のシンチレーションの影響が一番大きいと思います。撮影時のHFRを見るとシンチレーションの評価になりそうなので、いい日かどうかを定量的に評価しながらL画像を撮影すべきなのかカラー画像を撮影すべきなのかを決めることなどができそうです。そこらへんの補足記事を次に書こうと思っています。

今回健康を害すると何もできなくなってしまうことを実感しました。まだ今後も長年続けていきたい趣味なので、少し体に気をつけて、無理をせずに楽しみながらやっていけたらと思います。

画像処理も溜まっています。ダイオウイカは昨年10月くらいから残ってますし、ヘラクレス銀河団、さらに南天がいくつか残っています。これらも焦らずに進めていきたいと思います。


2023年に撮影した天体写真のまとめです。2022年のまとめはこちらにあります。

2023-12-30 - miyakawa


SCA260

「M106」
Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT_bg4_cut
  • 撮影日: 2023年3月19日20時48分-20日4時9分、20日19時25分-23時19分、28日19時51分-29日4時38分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGBHα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L:80枚、R:10枚、G:10枚、B:14枚、Hα:44枚の計158枚で総露光時間13時間10分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L:0.001秒、128枚、RGB:0.01秒、128枚、Hα:20秒、17枚(dark flatは32枚)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M27: 亜鈴状星雲」
masterLight_BIN_2_300_AOO_SPCC_BXT_DBE_MS_MS_BG2_cut_X3
  • 撮影日: 2023年10月12日20時59分-22時52分、10月17日20時34分-23時29分、10月18日18時18分-22時35分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260 (f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα, OIII
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα:44枚、OIII:44枚の計88枚で総露光時間7時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、42枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα, OIII:10秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M101での超新星爆発」
masterLight_BIN_1_8288x5644_300_00s_L_integration_ABE1_DBEcrop2
  • 撮影日: 2023年5月17日22時21分-5月18日3時8分(JST)、5月17日13時21分-18時13分(UTC)、2023年5月24日21時58分-23時1分(JST)、5月24日12時58分-14時1分(UTC)
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (0℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間5分x47=235分 =3時間55分(爆発前)、5分x10=50分(爆発後)
  • Dark: 0度、Gain 120で、露光時間5分x44枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 0.01秒x128
  • 画像処理: PixInsight


ε130D

「北アメリカ星雲とペリカン星雲」
Image14_SXT_for_O_AOO_SPCC_ABE1_BXT_NXT_ABE4_MS3_s_cut
  • 撮影日: 2023年5月3日1時22分-2時9分、5月3日23時44分-5月4日3時48分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240、露光時間5分、Hα: 30枚、OIII: 22枚の計28枚で総露光時間4時間50分
  • Dark: Gain 240、露光時間5分、温度-10℃、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain240、露光時間 Hα: 0.2秒、64枚、OIII: 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


 NGC6960, 6979, 6992, 6995: 網状星雲
AOO_crop_SPCC_BXT_HT_HT_NXT_bg_more_s
  • 撮影日: 2023年5月16日2時14分-3時32分、5月17日2時1分-2時42分、5月17日0時12分-1時49分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 21枚、OIII: 19枚の計40枚で総露光時間3時間20分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、118枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、64枚、OIII: 0.2秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「おとめ座銀河団」
final_50

「マルカリアンの鎖」
Markarian_large

「M99とNGC 4298、4302」
M99

「M88とM91
M88_M91
  • 撮影日: 2023年5月15日21時1分-16日0時7分、5月16日21時2分-23時23分、5月17日21時0分-23時6分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: ZWO LRGB
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin1、Gain 100、露光時間5分、L: 55枚、R: 11枚、G: 8枚、B: 11枚の計85枚で総露光時間7時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、37枚
  • Flat, Gain100、L: 0.01秒、128枚、RGB: 0.01秒、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、0.01秒、256枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「Sh2-240: スパゲティ星雲」
Image22_DBE_SPCC_back_BXT_HT1_HT2_NXT_SCNRG6_cut
  • 撮影日: 2023年11月21日0時8分-5時23分、11月21日22時48分-22日2時25分、11月22日22時14分-23日3時14分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 48枚、OIII: 70枚、R: 9枚、G: 9枚、B: 9枚、の計145枚で総露光時間12時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、OIII: 0.2秒、R: 0.01秒、G: 0.01秒、B: 0.01秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「Sh2-157: クワガタ星雲」
Image13_rot_cut

「バブル星雲」
Image13_bubble_cut_small
  • 撮影日: 2023年11月21日19時5分-21時22分、11月22日18時27分-22時5分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm、SII6.5nm、
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 28枚、OIII: 24枚、SII: 23枚の計75枚で総露光時間6時間15分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 1秒、OIII: 1秒、SII: 1秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


再処理

「NGC6888: 三日月星雲」
Image11_SPCC_BXT_HT_HT_CT_SCNR_NXT_maskB_CT_CT_CT_ok2
  • 撮影日: 2022年5月25日1時8分-2時59分、26日0時33分-2時56分、30日0時37分-3時0分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間10分、Hα: 12枚、OIII: 13枚、SII: 13枚の計38枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間10分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「IC4592: 青い馬星雲」
masterLight_180_00s_RGB_integration_ABE_SPCC_ABE3_cut
  • 撮影日: 2022年5月6日0時10分-2時57分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: SharpCap、Gain 150、露光時間3分x55枚で総露光時間2時間45分
  • Dark: Gain 150、露光時間3分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「NGC2359: トールの兜星雲」
Image07_ABE1_DBE_SPCC_BXTbad_NXT_stretch2_cut
  • 撮影日: 2022年1月22日22時2分-23日2時5分、1月27日18時57分-21時00分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα:7nm、OIII:7nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド: オフアクシスガイダー + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、Hα27枚、OIII36枚の計63枚で総露光時間3時間9分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間0.2秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

「M51:子持ち銀河」
masterLight_ABE_crop_BXT_BXT_Lab_conv5_Lab_CT_bg2_cut_tw
  • 撮影日: RGB: 2022年4月2日20時32分-4月3日3時50分、LとHa: 2023年3月29日20時17分-3月30日4時34分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB、Hα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240で露光時間10分がR: 7枚、G: 7枚、B: 10枚、Gain 240で露光時間5分がL: 47枚、Hα: 21枚の計27枚で総露光時間240+340 =580分 =9時間40分
  • Dark: Gain 240で露光時間10分が64枚、Gain 240で露光時間5分が128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 RGB: 0.03秒、L: 0.01秒、Hα: 0.2秒、 RGBがそれぞれ64枚、LとHαがそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


まとめと反省

今年は枚数がそれほど多くなく、再処理も合わせて12枚でした。撮影だけして未処理のものもまだ4枚ほどあるので、実際にはもう少し多いですが、処理に時間がより長くかかったりしていたり、忙しく処理せずに放っておいたらそのままというのもあるので、その意味でも少し反省しています。

これまで撮ったことのない新規天体が「M106」と「クワガタ星雲」2つ、今継続撮影中でまだ未処理の「ダイオウイカ星雲」と「ドルフィン星雲」を入れても4つです。クワガタ星雲ついでの「バブル星雲」を入れても5つです。やはり少ないですね。

過去に撮ったことのある天体のリベンジは「M27亜鈴状星雲」「北アメリカ、ペリカン星雲」「網状星雲」「おとめ座銀河団」「スパゲティ星雲」の5つです。だんだん新規天体より既存天体の取り直しの割合が増えています。もしかしたらこれはダメな方向かもしれません。でもどれも再撮影の甲斐は十分にあって、あからさまに進化しているのがほとんどなので、それはそれで満足です。

「M101」は超新星爆発があったので楽しめましたが、もともとLだけ撮って既存のRGBと合わせての再処理のつもりだったので、もし何も起こらなかったらお蔵入りだったかもしれません。同様の再処理が「M51子持ち銀河」で、こちらも元々RGBのみの撮影で、さらにL画像だけ新たに撮ってLRGB合成しています。

画像処理側での再処理が「三日月星雲」「青い馬星雲」「トールの兜星雲」の3つです。主にBXTでの改善です。三日月とトールの兜は見た目にもあからさまに解像度が増しました。青い馬は収差の改善なので、拡大しないと分かりませんが、BXTの収差補正の可能性を示すことができました。BXTは最近バージョン2のAIバージョン4というアップデートがあり、さらに格段に進化しているので、再々処理をしてもいいのかもしれません。もしくは、BXT1では補正しきれなかったもっと過去の画像を再処理しても、さらに格段に改善されるかもしれません。2023年はBXTで始まり、さらに年末もBXT2で盛り上がったと言えるでしょう。

枚数はそれほど多くはありませんでしたが、それでも十分に楽しめた天体撮影でした。その一方、太陽や月はあまり盛り上がりませんでした。太陽は休日と晴れの日が中々合わないのと、粒状斑が今のところうまく出ていなくて動機がだだ下がり気味です。月も2022年末に皆既月食があり盛り上がりすぎたので、その反動か2023年はほぼ活動ゼロです。

そもそも今年は晴れの日が少なかったのですが、新鏡筒のε130Dはちょうど今かなり楽しめています。とにかく最初から分解能がものすごくて、出だしこそ星像流れでのんびりでしたが、バックフォーカスがきちんとあってからは、今現在も撮影していることを含めてかなりの稼働率です。その分、重いSCA260の稼働率が減ってきていますが、実は焦点距離430mmのε130D+フルサイズくらいの広角の対象はそれほど多いわけではないので、いずれまた1300mmのSCA260+フォーサーズに帰っていくでしょう。

ε130DとSCA260の比較で、取り付けてあるカメラも考えると、画角が一辺で6倍くらい面積だと36倍くらい違うので、その中間くらいがあるといいなと思い始めています。しかも自宅でスカイノイズが大きいので、効率のいいできるだけ明るい鏡筒がいいです。今ある手持ちだと焦点距離800mmでF4のBKP200とかでしょうか。これにあまり大きくない、例えば今と同じASI294MMとか取り付けるか、いっそのこと使っていないカラー冷却のASI294MC Proでもいいかもしれません。コマコレクターは持っているのですが、ε130DやSCA260に比べるとそれでも多少星像は伸びるので、BXT2が前提になると思います。

こんなふうに、来年もまた夢が広がりそうです。

いつも長いブログ記事を読んでいただいてありがとうございます。ネットでの付き合いの方、直接お会いした方、この一年たくさんの方々と関わることができました。一年間本当にお世話になりました。

2024年も、良い年でありますように。また今後とも、よろしくお願いいたします。


2023/10/12、久しぶりに新月期で晴れです。平日なのであまり無理をしたくないのですが、せっかくなので撮影を敢行しました。


久しぶりの撮影

実は前日の10月11日も晴れていたのですが、ε130Dの光軸調整で時間を潰してしまい、何の成果もありませんでした。実際光軸調整も大したことはできず、せっかくの晴れでもったいないです。なんとか撮影の成果だけは残そうと思い、SCA260+ASI294MM Proで簡単な撮影をしました。この日の撮影は、前半がM27、後半がM45です。でも結局撮影が忙しくて、せっかくε130Dを出してセットアップまでしたのに、光軸調整はやっぱりできないんですよね。平日に二つのことは厳しいです。

今回M27にした理由ですが、5月にHα画像を写していました。その後続けてOIIIも撮ったはずなんです。でも撮影後に確認したら、実際に撮影していたのはB...。AOO撮影のはずなのに、Aの次はBと思い込んでしまったようです。今回はそのリベンジで、OIIIの撮影です。でもここでも痛恨のミス。縦横を合わせ損なって90度ずれてしまい、使えるのは重なる正方形の部分だけとなってしまいました。

前回M27を撮影したのは2年前のTSA120を使ってです。2021年9月になります。この時が、そこそこセンサー面積があるモノクロカメラを使った初のナローバンド撮影で、まだフィルターホイールも持っていなかったので、手でフィルターを付け替えてのAOO撮影でした。本体周りの羽の部分を出したくてOを重点的に出そうとしました。羽はそこそこ写ったのですが、意外にAが出なくて、Aのリベンジが課題だったことを覚えています。



それでもこの時のM27には結構満足していて、もうしばらく撮ることはないなと思っていましたが、2年経つとアラも見えてきますし、SCA260でさらに光量が稼げるとか、BXTが台頭してきたとかで、状況も大分変わってきています。高度も高く、夏を中心に一年のうちのかなりの期間撮影が可能なので、ベンチマークがわりに再びM27を撮影しようとここしばらく思っていて、やっと実現できたというわけです。


撮影

SCA260での撮影は久しぶりです。少しづつ思い出しながらのセットアップになりますが、それでもほとんどトラブルもなく、比較的順調に撮影開始となりました。一つだけミスがあって、StickPCを使っているのですが、SCA260+ASI294MM Proで使っているStickPCと、ε130D+ASI6200MM Proで使っているStickPCが入れ替わっていて、気づかずにカメラの設定やフィルターごとのEAFのピント位置とかの設定でファイルを上書きしてしまいました。気づいたのはプレートソルブがどうしてもできなくて、ε130Dの焦点距離の400mmが入っていた時でした。でも面倒なのでそのままStickPC交換せずに使い続けたのですが、色々不具合が出てきて、すぐに交換すればいいと後から後悔しました。
M27
撮影中のNINAの画面。ガイドも順調です。

撮影は順調に続き、OIII画像が溜まっていきます。23時位になるとM27が隣の家の屋根にかかってしまい、次に考えたのが、ずっとやってみたかったモザイク撮影です。以前拡大撮影したM45: プレアデス星団が次のターゲットですが、これは別の記事で書きたいと思います。


追加撮影

OIIIの撮影直後は5月に撮影したHαと合わせて仕上げてしまおうと思っていましたが、縦横の間違いが悔しかったので、結局10月17日にHαを、OIIIと同じ方向にして撮影し直してしまいました。こうなってくるとOIIIもHαももう少し追加したくなり、18日にも追加撮影して、5分露光でHαが44枚、OIIIも44枚で、合計88枚、総露光時間440分で7時間20分となりました。17日から18日にかけては庭に望遠鏡を出しっぱなしにしていたので、すぐに撮影に入ることができ、18時台から撮影を開始できています。


フラットでトラブル

久しぶりの撮影なので、フラットを撮り直しています。フラット撮影は、昼間に明るい部屋で白い壁を映しています。ところが、今回条件を一緒にしようとして「冷却して」撮影したのは失敗でした。結露が起こってしまったことに後から気づき、結局常温で全て撮影し直しです。DARKFLATも温度を合わせるため、こちらも全部取り直しです。
2023-10-14_14-00-20_M 27_2x2_FLAT_R_-10.00C_0.01s_G120_0000
フラット撮影中にオートストレッチして、こんな風に真ん中にシミのような大きな模様ができていたら、結露しています。拡大すると、おかしな黒い点々が見えたりします。

普段はフラットは昼間に部屋が明るい時に撮っていましたが、雲があると明るさがバラバラになるのでダメですね。今回は早く画像処理を始めたかったため、暗くなってから部屋のライトをつけて撮影しました。でもこれ、もしかしたらダメなのかもしれません。特にHαですが、微妙にフラット補正が合わずにムラになってしまいました。

以前記事に書いたことがあるのですが、ナローバンド系はフラットファイルそのものがどうしてもムラムラになってしまいます。



当時、センサー自身のムラではないかと予測したのですが、その後ZWO自身がこのムラはセンサーの特徴だと言及しているページを見つけました。



当時このページの存在は知らなかったのですが、後からやはり推測は正しかったと分かりました。でもいずれにせよ、このムラはフラット補正で解決できましたし、ZWOの説明でも同様のことが書いてあります。

でも今回は、フラット補正をしてもどうしても、ムラの形が残ってしまいました。まず、今回撮影したフラット画像のうちの1枚です。ナローバンド特有の大きなムラ構造が出ています。
masterFlat_BIN-2_4144x2822_FILTER-A_mono

次に、AOO合成した直後の画像です。上のフラット画像と比べてみると、ムラの形がよく似ていて、暗いところが赤くなってしまっているのがわかると思います。
Image11_ABE

まだ未検証ですが、部屋の明かりを使ったのが悪かった気がしています。明かりとしては、蛍光灯と電球を合わせたのですが、それぞれ波長が違っていて、違った種類の光源が複数方向から来ているので、複雑な形の輝度勾配ができてしまっていた可能性があります。もし時間が取れるなら、再度晴れた日の明るい部屋の中で自然光を光源に、再度撮影してみたいと思います。あ、多分ですが、晴れた日にの薄明時に鏡筒を空に向けるのが一番いいのかとは思いますが、時間が限られるので、壁での方法を確立しておきたいということです。

今回問題だったフラットのムラはHα、OIIIともにDBEを細かくかけることで、なんとか見える程度にすることができました。


ダークの撮影

あと、今回ついでにダークも久しぶりに撮影しました。ダーク系を撮るのも昼間は注意が必要です。カーテンを閉めてできるだけ部屋を暗くするのはもちろんですが、鏡筒や特にフォーカサー部などにきちんと暗幕(タオルとか、服とか)をかけて撮影しないと、完全にダークになりません。今回は二度に分けてダークを撮りましたが、最初の暗幕が甘くて、十分暗くなりませんでした。
IMG_8668
こんな風に望遠鏡をくるんで、さらに部屋を暗くしてダークを撮影してます。


最新版PixInsightと、Mac M1でのStarNet

私は画像処理にMacのM1を使っているのですが、最近PixInsightを1.8.9-2にアップデートしたら、StarNet V2が使えなくなりました。その後StarNet V2もアップデートされ、最新バージョンのPIでも使えるようになったということでしたが、再インストールの方法を忘れてしまい少し手間取りました。Niwaさんのページやその参照元のCloudy Nithtsに解説があるのですが、自分の環境とは微妙に違っていて、そのままではうまく動きません。うまく動いた方法を書いておきます。

まず、ダウンロードページに行って、



をダウンロードします。その後、ファイルを解凍します。
  1. StarNet2_weights.pbとStarNet2-pxm.dylibは/Applications/PixInsight/bin/にコピーします。
  2. libtensorflow.2.dylibとlibtensorflow_framework.2.dylibはApplications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/にコピーします。PixInsight.appの中身は、PixInsight.appを右クリックして「パッケージの中身を表示」を選ぶとアクセスすることができます。
  3. 以下のコマンドを、一つ一つコピペしてターミナルから実行します。
  • sudo chown root:admin           /Applications/PixInsight/bin/StarNet2_weights.pb
  • sudo chmod 644                  /Applications/PixInsight/bin/StarNet2_weights.pb

  • sudo chown root:admin      /Applications/PixInsight/bin/StarNet2-pxm.dylib
  • sudo chmod 755             /Applications/PixInsight/bin/StarNet2-pxm.dylib

  • sudo rm -f             /Applications/PixInsight/bin/libtensorflow*
  • sudo chown root:admin  /Applications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/libtensorflow*
  • sudo chmod 755         /Applications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/libtensorflow*

あとはREADME.txtに書いてある通りに、
  • PI上でPROCESSES=>Modules=>Install Modulesで'Search'を押すと、StarNetが出てきます。
  • その後他のボタンは何も押さずに'Install'を押します。
  • うまくいくとStarNet2がPROCESSES-><Etc>もしくはPRECESSES-><All Processes>に出てくるはずです。
怖かったのは、マニュアルに「ちゃんと手順を踏んでやってもサーチでStarNetが出てこない場合は、AVXに対応してないから仕方ないとか、心を折るような記述があることです。でもM1のMacでPIの最新版で、確実にStarNet V2をインストールできたので、諦めずに正しい手順でやってみてください。


結果

画像処理に関しては、あとはほとんど問題はありませんでした。ナローなので、色決めに一意の解はなく、SPCCも恒星の色を合わせるように設定したので、星雲の色は自由度があります。他の画像を見ていてもM27の色は様々で迷いますが、前回TSA120で出した色が比較的好みなので、今回も近い色としました。

画像処理の結果が下のようになります。
masterLight_BIN_2_300_AOO_SPCC_BXT_DBE_MS_MS_BG2_cut_X3
  • 撮影日: 2023年10月12日20時59分-22時52分、10月17日20時34分-23時29分、10月18日18時18分-22時35分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260 (f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα, OIII
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα:44枚、OIII:44枚の計88枚で総露光時間7時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、42枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα, OIII:10秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

ちなみに、2年前に撮ったTSA120の画像が以下になります。
Image09_DBE2_stretched7_cut_crop_b


比較と評価

2年前と今回を比較してみます。
  • 最初のスタック画像を見ていると、微恒星に関してはどうも前回のTSA120の方がより出ている気がしました。これまで同じ対象でTSA120とSCA260を比べて、SCA260が負けたことはないので、意外な結果でした。原因はシンチレーションくらいしか考えらないです。もう夏の気候は終わってしまったので、揺れは大きくなっているのかもしれません。それでもBXTをかけて改善する余地があったので、結果としては今回の方が微恒星は数も鋭さも出ています。
  • 狙いの本体外側の蝶の羽の部分は、今回の方が明るい鏡筒で露光時間も倍以上と長いため、明らかに綺麗に出ています。羽の部分はOIIIの青よりも、Hαの赤の方がやはり淡いようで、前回よりも出てはいますが、フラットムラのこともあり、まだ露光時間を伸ばすか、このレベルの淡さになってくると自宅よりはさらに暗いところに行ったほうが効率がいいのかと思います。ここ最近の記事で、明るいところと暗い所のスカイノイズの影響が数値で定量的に出るようになってきたので、いずれこの淡さならこの場所に行くべきというようなことが言えるようになるのかと思います。
  • 中心部の微細構造は、口径とBXTの効果で圧倒的に今回の方がいいです。ただし、淡い羽部分の分解能との差がありすぎるので、多少なりともバランスを取るために、あえて少し分解能を落としてあります。
今回のM27、羽の部分、中心部分の分解能、微恒星の鋭さ、背景のノイズなど、ほぼ全てを2年前の結果を上回っていて、自己記録更新です。あえていうなら、透明度みたいなのだけは以前の方が良かったように思いますが、これは画像処理に依っていて、まだ私も確信を持って(少なくとも見かけの透明度さえも)透明度をコントロールできていないので、偶然によってしまっています。それ以外はトータルとしてはかなり満足しています。


まとめ

久しぶりのSCA260での本気撮影でしたが、かなり満足な結果でした。自宅庭撮りで、M27の羽がここまで出るのなら、十分なのかと思います。その一方、これ以上出すのは撮影時間がかかりすぎることなどから難しく、暗いところに行く必要があると思います。次のシーズンに飛騨コスモスでしょうか?

ε130Dの光軸調整がなかなかはかどっていないので、しばらくはSCA260での撮影も継続していこうと思います。


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