ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:RedCat51

StellaVitaの続きの記事になります。前回は撮影前にしておくべき準備についてでしたが、今回は実際に撮影に撮影までしてみます。



前回記事の終了時の、赤道儀とカメラとガイドカメラが使えるようになった状態から始めることにします。カメラとガイドカメラのピントも取れているとします。

赤道儀は電源がオンになっていて、初期アラインメントはすんでいて、赤経が追尾を始めていると仮定します。鏡筒の向きはホームポジション付近になっていても構いません。その場合、赤道儀によるかと思いますが、極軸方向付近か、真東付近を向いているものかと思います。


テスト撮影とプレートソルブによる赤道儀の同期

まずは、カメラで撮影できるかどうか、試してみましょう。StellaVitaアプリの画面の左にある撮影用カメラのアイコンをクリックします。さらにもう一度同じボタンを押して、撮影モード選択の画面を出し、「シングルフレーム」を選びます。
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もし星が見えている方向に鏡筒が向いていないなら、自動導入やコントローラーで向きを変えて、星がある方向に鏡筒を向けてください。

右の真ん中の撮影開始ボタンを押して、まずは1枚撮影してみます。カメラの露光時間は短くしておいた方がいいでしょう。数秒でいいかと思います。右の撮影アイコン周りに円形のバーがぐるっと進む様子がわかると思います。最後までたどり着いたら撮影終了で、撮影した画面が映し出されます。

実際に星は見えていますでしょうか?もしここで星が見えていなければ、鏡筒にカバーが付いたままになっている、鏡筒のピントが大幅にずれているなどの原因がありますので、今一度チェックしてみてください。うまく撮影できると、下のように画面内に星が見えるはずです。
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撮影画面が見えたら、早速プレートソルブを試して、取得画像からいま鏡筒がどの方向を見ているかを特定してみましょう。画面の右アイコンの撮影ボタンの下の「地球のようなマーク」を押し、プレートソルブでの解析を開始します。試した限り、StellaVitaではかなり安定にプレートソルブができるようです。

解析が始まるので、10秒ほど待ちます。結果には今見ている方向が赤径と赤緯で表示されます。

ここで、赤道儀と「同期」するかどうかの選択肢がでてくるので、一旦赤道儀と同期しておくのがいいでしょう。これで近傍の天体導入なら、そこそこの精度でできるはずです。ただし、遠くの天体の導入と、撮影時の追尾はまだ精度がありません。これまでにまだ極軸調整をしていないからです。

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極軸調整

StellaVitaにはカメラを使った極軸合わせがサポートされているので、是非使ってみましょう。目で見て合わせる極軸望遠鏡に比べて一桁くらい精度が出るはずです。極軸を精度良く合わせることで、撮影時のガイドの負担が減り、星像の歪みが小さくなる可能性が高くなり、成功画像の歩留まりが上がるはずです。

StellaVitaでは極軸調整にメインの撮影カメラを使います。すでに上記のテスト撮影は終わっているとします。極軸調整にはメインカメラで星を写してその画像を解析する必要があるので、まだテスト撮影をしていない場合は、極軸調整の前に実際一度試してみてください。

極軸調整のため、赤経を15度と30度回して撮影するので、赤経が30度進んでも星が入るような方向にあらかじめ鏡筒を向けておきます。この状態で、左の赤道儀アイコンを押して赤道儀の調整画面に入り、下の真ん中らあたりの極軸調整ボタンを押します。

下のような説明が出ますが、1番と2番はすでにできているので薄字になっているはずです。3番も今回は実際にはできているでしょうから、実質4番からになります。この画面内の右真ん中の撮影開始ボタンを押してそのまま進めるだけです。
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1枚撮影した後に、自動的に鏡筒を赤径方向に+15度回転して一旦撮影、更に+30度回転して撮影と、メインの鏡筒のカメラで撮影が進みます。合計3枚撮影して、それらの画像解析から赤道儀の極軸がどの方向を向いているのかを計算します。うまく解析が完了すると、下の画像のように極軸がどれだけずれていうるかが円になって出てきます。赤道儀の極軸の向いている方向が、真の北極からどれくらいずれているかが、円の中の青い点で表されます。

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もしこの青い点が中央から上にずれているとしたら、赤道儀の下部についている物理的な上下方向の調整ネジを回して、赤道儀の極軸が下方向に進むようにします。その際、画面の縁の横の「更新」をオンにしておくと、リアルタイムに近い状態で常に今の方向を見ているかがわかります。横方向にずれている場合も、赤道儀下部についているネジを回して水平方向に調整してください。

青い点が中心に近くなってくると、円が拡大され、よりいい精度で見ることができるようになります。鏡筒の焦点距離にもよりますが、1秒角(下の画面の1'')程度に合わせれば十分過ぎるくらいでしょう。(補足1)
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撮影プラン

撮影に際しては、容量に余裕をもって撮影できるようにSDカードを用意しておくといいでしょう。SDカードは横の穴に差し込みます。

撮影は「プラン」モードを使いますが、その前にプランを立てる必要があります。左上のTodoリストアイコンを押し、「目標管理」の左下の「+」ボタンを押し目標を追加します。検索などして、撮影したい天体を選びます。今回はバラ星雲「NGC2239」をターゲットにしました。「撮影時にガイドを起動」をオンにするのを忘れないでください。ここがオンになっていないと撮影時ガイドが起動されないので、星像が流れてしまいます。
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その後、右下の「タスク管理」ボタンを押してタスクを追加します。「Light」をえらび、撮影枚数などを設定します。

タスク、目標が保存されたことを確認して、左のメインカメラボタンを2度押しして「プラン」撮影を選びます。右の撮影開始ボタンを押せば撮影が開始されます。ガイドはちょっと面倒なことがあるので、次に少し詳しく説明します。


ガイド

ガイドは「目標管理」のところで、あからさまに「オン」にしてやらないとガイドなしで撮影が開始されてしまいます。

ところが、ガイドをオンにしたはずなのに、ガイドが入らないことが2度ありました。判別方法としては、ガイドカメラの画面に切り替えた時に星が何も写っていなくて真っ暗のままの場合はガイドが開始されません。どうもガイドカメラがアプリ上では接続はされているにも関わらず、うまく動いていないことがあるようです。この場合、ガイドカメラをアプリ上で一旦接続をオフにして、もう一度オンにすると画面に星が写って、その後撮影開始後にキャリブレーションが始まりました。

キャリブレーションは思ったより長くかかりました。5分近くかかったでしょうか。途中、「時間がかかりすぎるのでガイドをオフにして撮影を開始しますか?」とかいうメッセージが出たのですが、「いいえ
」を選択して、キャリブレーションを続けました。これでさらに待つと、やっとキャリブレーションを完了させることができました。

ガイドカメラの設定を見ると「キャリブレーションのステップ」という項目があり、デフォルトでは「750」でした。でも単位がわからないので、とりあえずいじっていません。これをもっと大きくすると一度に進む距離が長くなり、時間が短縮されそうな気がしますが、今回は試せていません。(補足2)


撮影開始

キャリブレーションが終わるとガイドが開始されそのまま撮影が開始されます。ところが、キャリブレーション直後はターゲットのガイド星からずれているため、ガイドがターゲット星に合わせようとして方向を変えてしまいます。その過程中も撮影は続いているので、最初の1枚目はどうしても下の画像のように星像がずれていく画像が撮影されてしまうようです。これはソフト的に回避できる問題のはずなので、改善してほしいかと思います。

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撮影が可視視されてからガイドがターゲット星をセンターに移動してしまっています。

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結果として、1枚目だけはどうしても星像が流れた画像になってしまいます。

うまくいくと、ガイドも安定し、星像も丸くなります。その後はずっと安定した画像を撮影することができました。

その際のガイドカメラの画面です。ディザーの設定をしておけば、いつディザーされているかなどもわかります。
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撮影時のメインカメラの画像に、同時にガイド画面とヒストグラムを表示するとができます。ガイド画面では安定度を見ることができ、ヒストグラムでは「自動」にチェックが入っていればオートストレッチされた画像が表示されるので、ある程度の写り具合を見ることができます。
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実際にファイルとして保存されているかどうかは、左アイコンの下から二つ目のフォルダアイコンを押します。保存先は指定した場所になりますが、ファイルの移動などを考えるとSDカードが便利かと思います。撮影中もSDカードにはアクセスできますが、チェックはプレビューのみで、jpgフォーマットでローカルのタブレット端末にダウンロードされます。プレビューの段階ではユーザーはjpgの存在しかわかりませんが、きちんとfitsファイルもSDカード内に保存されています。アプリにフォーマットの指定はなさそうなので、RAWファイルはfits固定で、変更はできないみたいです。

RAW形式のfitsファイルは、ファイル容量が大きいので、撮影後SDカードを抜き出してから、PCなどにファイルを移動するのがいいでしょう。


フラット、フラットダーク画像の撮影

撮影後、StellaVitaを使って昼間にフラット画像とフラットダーク画像を撮影してみます。私は鏡筒を部屋の中の白い壁に向けてフラット画像を撮影しています。光源は太陽ですが、晴れ又は曇りの日の昼間に窓のカーテンを開けて、直射日光が当たらない壁に向かって鏡筒を向けます。鏡筒や鏡筒を置いてある机が影を作る場合があるので、ともに壁から少し離して設置します。

StellaVitaの電源投入後、アプリ接続して、今回はメインカメラのみをオンにします。ライト画像と同じように、左上のTodoリストアイコンを押し、「タスク管理」で作ったNGC2239の「目標管理」にタスクを追加します。ただし、ライト画像のタスクが残ったままだと撮影時にライト画像から再び撮影してしまうので、まずはライトの「Light」のタスクを消して、改めて「Flat」を選択して、ライト画像と同じゲインにして、露光時間を調整します。
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露光時間の調整は、メインカメラボタンを押してメインカメラの画面を出し、さらにもう一度メインカメラボタンを押して、シングルショット撮影を選んびます。ゲインはからなずライト撮影時と同じにしてください。明るさの調整は露光時間で行います。露光時間は右の上から2つ目のアイコンを押して調整します。その後、右真ん中のボタンを押して実際に撮影してみます。左の櫛形のアイコンを押してヒストグラムを出し、山が真ん中か少し左くらいにある状態になるように何度か露光時間を調整と撮影を繰り返します。今回は曇りの時の部屋の中で0.05秒でちょうどいいくらいの明るさになりました。
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再び左上のTodoリストアイコンを押して「タスク管理」->「目標管理」に入って、今調整した露光時間を入力します。これで準備は完了です。

メインカメラのアイコンを二度押して「プラン」モードに入り、右真ん中の撮影ボタンを押して撮影開始です。すぐに撮影が開始され、ダウンロードも始まりますが、ダウンロードができているかどうかに関わらず撮影枚数はどんどん進みます。露光時間の短い明るい撮影なので、全枚数の撮影もすぐに終わるはずです。撮影が完了してもダウンロードは続きますが、撮影ボタンがXマークになっていて、それを押すとダウンロードも途中で終了できます。

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短時間撮影なので、どんどん枚数が進むでしょう。

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撮影終了後は、ダウンロード中でもXボタンを押すことでダウンロードを中断できます。

フラットダークは全く同じ設定で暗くするだけです。まずカーテンを閉め切り部屋を暗くし、鏡筒にキャップを被せます。でも昼間の撮影なのでおそらくそれでは不十分で、鏡筒、フォーかサーブ、カメラ自身に光の漏れがあることが普通です。私はダークやフラットダークの撮影では、念の為に毛布などを全体に被せて光ができる限り入らないようにします。ただし、カメラの通風口を塞いでしまうと熱の逃げ場がなくなってカメラが故障する可能性があるので、そこだけは開けておきます。

アプリでは、タスク管理で作ったフラットのところを再選択して、タブのところで「Dark」に変更します。こうすることで後で画像処理ソフトがどの種類の画像かを分別する手がかりをつけます。こちらも撮影を開始し、完了したらこれで終了です。

他にダーク画像の撮影もありますが、私は手持ちのダーク画像があったので、ここでは撮影は割愛しました。ダーク撮影のポイントは、露光時間とゲインオフセットとカメラの温度をライト画像撮影時と全く同じにすること、フラットダークの撮影時のように毛布をかけるなどしてできる限り漏れ光を少なくすること、ライト画像と同程度の十分な枚数を撮影することでしょうか。ダーク画像は一度撮影してしまえば、ライト画像の設定を変えない限り使い回しできるので、時間のある時に必要な設定分だけ撮影しておくと楽になります。あと、バイアス画像を撮影する機能もありますが、ダーク画像をライト画像と同じ設定で撮影した場合は、バイアス画像は不要です。

以上が、夜のライト画像撮影後に、別途昼間など時間のある時に追加して撮影する画像になります。今回はライト以外の画像もStellaVitaで撮影しましたが、他のアプリを使って撮影してもそれらを画像処理で使うことはできます。

画像処理

結局、3分露光で48枚のfits画像が得られました。画像の保存フォルダ名に日付が入らないなど、ファイル名の細かな指定のようなことはできませんが、画像処理ソフトで読み出す際に普通に読み込めるので、贅沢を言わなければ特に問題ではないかと思います。

ダークファイルは以前NINAで撮ったものの使い回し、フラット画像とフラットダーク画像は今回StellaVitaで64枚づつ撮ったものを使って、画像を最後まで仕上げてみました。画像処理はPixInsightとPhotoshopを使いましたが、StellaVitaで撮影したfitsファイルは特に問題なくPixInsightで読み込んで処理することができました。

画像処理自体はStellaVitaとは独立なので、詳細は割愛しますが、結果だけ載せておきます。自宅でガイドを含めて2時間の安定な撮影程度は問題なくでき、天体画像として最後まで処理できたので、実用という点から考えた時、StellaVitaは十分な撮影プラットフォームとして使えると言えるでしょう。

180.00s_FILTER-NoFilter_RGB_drizzle_2x_BXTC_SPCC_BXT_MSA_NXT6_s3
  • 撮影日: 2025年12月29日2時13分-4時43分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
  • フィルター: サイトロン CBP
  • 赤道儀: Celestrn Advanced VX
  • カメラ: Player One Uranus-C Pro (-10℃)
  • ガイド:   f50mmガイド鏡 + ASI290MM、StellaVitaでガイド
  • 撮影: StellaVita、Gain 220、露光時間3分 x 48枚 = 144分 = 2時間24分
  • Dark: Gain 100,  露光時間180秒x30枚、Flat, Flatdark: Gain 220,  露光時間0.05秒x64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


まとめ

今回はStellaVitaを使って、実際の星雲を撮影してみました。多少戸惑うところもありましたが、システムとしては必要十分な機能があり、無事にライト画像、フラット画像、フラットダーク画像を撮影でき、それらの画像を使っての処理も滞りなく進むことができました。

まだ日本での販売はあまり時間が経っていないこと、アップデートも毎週のように更新されているなど、今現在も非常にアクティブに進化している最中なのかと思います。まだこなれていないところもあるは事実ですが、今後のシェアの広がりとサポートに期待したいと思います。

次回の記事では、今回思った改善点などの要望をまとめたいと思います。


(補足1)
私は普段はSharpCapを使って極軸調整をします。SharpCapの場合、ガイドカメラ、メイン鏡筒のどちらでも使えるのですが、基本的には北方向の空を見ていないと使うことができません。StellaVitaは北方向の空が開けていなくても、十分な精度で極軸調整ができます。これはかなりの利点でしょう。その一方、リアルタイム画面の表示と更新速度にはSharpCapの方が一日の長があります。実際の星を写して、その星がどちらに動けばいいか矢印まで出るので、ここら辺はSharpCapの方が親切です。でも、StellaVitaは鏡筒を赤道儀の回転も自動でやってくれて、操作性もSharpCapには及ばないものの、十分わかりやすくストレスなくできます。

StellaVitaの極軸調整の「北方向を見なくていい」という圧倒的な利点(たとえ北方向が開けていても、北だけ曇っていることなどよくあることなので)を考えると、極軸調整に関してはStellaVitaに軍配をあげてもいいかと思います。これまでいくつもの極軸調整がありましたが、SharpCapを超えるものはありませんでした。今回、初めてまともに使えると思いました。StellaVitaが赤道儀の操作も自動でできることが前提なのですが、これはかなりすごいことです。


(補足2)
ガイド鏡をRedCat51に取り付ける際、固定リングのネジ穴を利用したのですが、これが斜めに面が切られているので、ガイド鏡も鏡筒の斜め上につけることになり、カメラの水平垂直が崩れました。そのため、キャリブレーション時にガイド星が斜めに動いていきました。これでもきちんとキャリブレーションできるので特に問題はないのですが、カメラだけガイド鏡に対して45度程度回転させて水平、垂直を合わせておけばよかったかもしれません。








今回サイトロンさんのご好意で、ToupTekのStellaVitaを使う機会を得ました。StellaVitaはPCレスで天体写真撮影を実現するオールインワンのコントローラーです。

同類の機器にASIAirがありますが、こちらはZWO社のCMOSカメラと一眼レフカメラを使うことができます。一方、StellaVitaはZWO社以外のCMOSカメラも広くサポートしているのが特徴です。一眼レフカメラは最近サポートが始まり使えるようになってきたようです。せっかくのStellaVitaなので、今回はPlayerOne社のCMOSカメラを使ってみることにします。

あと、ASIAirと比べて大きな違いが、操作が全て日本語化されていることです。私はASIAirは使ったことがないのですが、意外なことに英語のままということです。日本語化されているのは、特に初心者にとっては敷居を下げるという意味で、いいことなのかと思います。

StellaVitaが日本で正式に販売され始めたのはまだ昨年9月のことで、ユーザーのレビューなども少なく、初めて使う場合に情報が少なくて戸惑うこともあるかもしれません。このブログではStellaVitaを初めて使う際に戸惑いそうな点、実際に使ってみた上での感想などを中心に情報を書いていこうと思います。

特に、今回の記事では撮影前までの、準備段階を中心に取り上げます。ここに書いてあるほとんどのことは昼間の明るいうちにできることです。もしStallVitaを手に入れて試してみる場合は、夜になって慌ててセットアップするよりは、まずは事前に十分時間をかけて準備をするのをお勧めします。その際の参考になればと思います。


ネット上の情報

SteallVitaはまだユーザー数もあまり多くないと思われ、基本的にあまり情報がないのですが、いくつかマニュアルや解説ページを見つけたので、リストにしておきます。

マニュアル類:

シュミットでStellaVitaを購入すると、紙に印刷された「クイックガイド」が付属されてきます。このマニュアル自身は簡易的な説明なのですが、最後のページにさらに詳しいマニュアルへのリンクとアクセス方法が書かれています。サイトロン独自のマニュアルで、日本語で書かれていて、今の所StellaVitaの使い方について一番詳しく分かりやすく説明してあるかと思います。私はこのことに気づかずに、このマニュアルを読まずに今回の記事を書いてしまったので、一部重なる情報もあることにご了承ください。シュミットで購入された方は、是非とも忘れずにこのマニュアルにアクセスしてみてください。


機材の用意

天体写真撮影に必要な機材を用意します。今回、一例として用意した機器は
  • 鏡筒: RedCat51
  • 撮影用CMOSカメラ: Uranus-C Pro
  • ガイド鏡: f=50mmのCマウントレンズ
  • ガイド用CMOSカメラ: ASI290MM
  • 赤道儀: Advanced VX
となります。撮影用のメインカメラですが、せっかくのStellaVitaということなので、ZWOのカメラ以外を使ってみることにします。今回は手持ちのPlayer Oneの「Uranus-C PRO」を使うことにします。

他にもStellaVitaではオートフォーカサーやフィルターホイールなどをサポートしていますが、今回は使わないこととします。


機材の組み立て

用意した機材を組み立てます。鏡筒に撮影用CMOSカメラを取り付け、ガイド鏡にガイド用CMOSカメラを取り付け、さらにガイド鏡を鏡筒に載せるなどして組み合わせます。赤道儀を外にセットして、鏡筒を赤道儀に載せます。

StellaVita本体は鏡筒に載せてしまうのが楽なのかと思います。StellaVita本体には、35mm幅のファインダー台座用のアリガタが付いています。鏡筒に取り外し可能なファインダーが付いているなら、ファインダーを外してStallVita本体をつけてしまってもいいかもしれません。今回使ったRedCat51のように、ファインダーをつける場所がない場合は、StallVita本体に付いているファインダー台座を外して、出てきた1/4インチ用ネジ穴か、M4用のネジ穴を使うといいかと思います。私はここに、Amazonなどで安価に購入したアルカスイス互換のクイックリリースクランプを取り付け、鏡筒側の方にプレートを取り付けることでStellaVita本体と鏡筒を固定しました。

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私は手持ちのほとんどの鏡筒にアルカスイス互換の長めのプレートを持ち手の代わりにつけてあり、ファインダーやガイド鏡など、取り付ける側にクランプをつけるようにしています。こうすることで安価で、シンプルに、取っ手にもなりつつ、鏡筒のいろんな場所に、任意の組み合わせで取り付けられるようになり、応用範囲が広がります。

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本体組み立て

StellaVIta本体の組み立ては、
  1. W-Fi用のアンテナを取り付ける。
  2. 付属のWi-Fiドングルを4つあるUSB端子の左上に差し込む。
この2つだけです。

あとはStellaVIta本体に12Vの電源を接続し、本体スイッチを入れます。12V電源は、電力に余裕があるものを選んだ方がいいとのことです。私はノーブランドのポータブルバッテリーを選びましたが、10Aまで出るそうなので、十分でしょう。最低2Aは必要とのことです。

電源を入れると、30秒から1分くらいの間に何度がビープ音が鳴りますが、「数秒で3回のビープ音が聞こえます。最初の「ピッピッ」はホットスポットの起動を示し、2回目の「ピッピッ」で本体の起動完了、最後の短いビープ音でWi‑Fiへの接続準備完了を示します。」とのことです。ホットスポットの意味がここではまだわかりませんが、とりあえず最後の短いビープ音までなったので、起動完了でしょう。

冷却カメラなどを使っている場合は、ここでStellaVita本体のDC電源端子から付属の短いDC電源用のケーブルを使って接続しておくといいでしょう。


アプリ

本体はWi-FIで接続して操作します。操作のためのアプリはPC用はなく、基本的にタブレットになるようです。私はiPad使いなので、App Storeでstellavitaと検索するとアプリが見つかりました。早速インストールします。

タブレットとStellaVita本体を接続します。タブレットのWi-Fiの設定で、StellaVita_XXXXXXとかいうSSIDが見えると思うので、それを選びます。
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パスワードは本体裏の上の方に書いてあります。デフォルトは順番の数字で8桁です。その後、タブレット上でStellaVitaアプリを立ち上げると、左下に選択したSSIDが表示されて、接続が完了しているはずです。

立ち上げた後は、まずは設定です。左下の「ギヤ」の形をしたアイコンを押し、設定画面に移ります。
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カメラ設定

設定画面ではさらにアイコンがいくつか表示されます。上から赤道儀、メインカメラ、ガイドカメラ...と続いていますが、まずは「メインカメラ」アイコンを押し、撮影用のメインカメラの設定から始めてみます。

カメラを接続すると、通常は「接続可能なデバイス」にカメラ名が出てきます。サポートされているはずのカメラで名前が出てこない場合は、接続がうまくいっていない可能性があります。Uranus-C PROはType-C接続なので、最初StellaVita本体のType-C端子にケーブルをつないでも全然認識されずに困ってしまいました。このType-C端子はアップデートなどのみに使うとのことで、結局、Type-CをUSB-AにかえるアダプターでUSB-Aの方に繋いでStellaVitaに接続された、無事にカメラが認識されました。

カメラを選択した後は、その右のスイッチを右にして青い「オン」にします。これをやらないと何も設定できません。
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  • 「ゲイン」はUranus-C PROの場合、HGCモードになる220一択かと思います。他のカメラもHGCになるゲインを調べてその値に設定すればいいでしょう。「変換ゲイン」というところは特に何も変化もしないし、押すこともできないようです。その下の低ノイズモードも押すことができません。
  • 「露光」は画面では180sになってしまっていますが、今の段階では0.5sとかの短い時間でいいでしょう。これはピント合わせなどのテストが今後しばらく続くからです。実際の撮影時に数分とかの長い時間にすればいいと思います。
  • 「冷却」をオンにすると、下の「FAN」も自動的にオンになります。ただし、FANだけ独立にオフにできてしうので、冷却時の排熱ができなくて熱がこもって故障する可能性があります。くれぐれも、FANだけオフにすることはしない方がいいでしょう。
  • 「加熱」の意味がいまいちわかりません。このカメラはヒーターは持っていないので、冷却をやめたときにどれくらいの時間をかけるとかでしょうか?単位とかがないので、今の所不明です。
  • 上の画面はもう少し設定が残っています。右側をスクロースさせてみてください。ブラックレベルは最大が500でした。ADCのカウントだとしたら、私はいつもどのカメラでも40としているので、とりあえずここでは40としておきます。

カメラを使っての鏡筒のピント合わせ

CMOSカメラはすでに鏡筒に付けられていると仮定します。

今回オートフォーカサーは使っていないので、マニュアルでのピント合わせになります。ピントを合わせるには、まずはカメラに写っている画面を見ることから始めます。
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  1. 左のメインカメラのアイコンを押します。
  2. さらにもう一度メインカメラのアイコンを押すと、撮影モードを3種類の中から選ぶことができます。
  3. ピント合わせはビデオモードを選びます。
  4. 右の上に2つアイコンがあって、上からそれぞれゲインと露光の調整になります。でもこの調整、単位がないので今どれくらいの設定値なのか、よくわかりません。例えばゲインは0から850までありました。露光は0から5000です。露光の5000は5000秒かとも思ったのですが、5000にしても1秒間に5回くらいは画面を更新しているように見えます。0にしても1秒間に5回くらい更新しているように見えます。
  5. とりあえず、空を写して星が見えればいいのですが、最初は夜に遠くの地上の景色などを写して、画面に何か見えるようなゲインと露光時間を適当にいじってみて、何か見えたらまずはラフにピントを合わせて、その後空で同じことをした方がわかりやすいかと思います。
  6. 画面に星が写ったら、その星が最も小さくなるところを探してピントを合わせます。

もしこの時点で画面に何も映らないようなら、鏡筒先端にキャップがついていないかなどを確認し、鏡筒前にLEDライトなどの光源を持ってきて、カメラ画面に反応があるかなどをみるといいかと思います。

どうしても画面に何も映らないなら、別途PCなどで別のアプリ、例えばSharpCapなどを利用して、カメラがきちんと接続されて画像情報が送られる状態になっているかなどしてみるといいでしょう。もしPCで見えるならStellaVitaの問題ですが、PCでも見えない場合はStellaVita以外に問題がある可能性が高いです。例えば冷却カメラなのに冷却用のDC電源ケーブルが繋がれていなくて、一見カメラ本体は動いているように見えるのに、画面情報は送られない状態になっているなどです。


ガイドカメラの設定

ガイドカメラも設定してしまいましょう。左下の「設定」アイコンを押して、その右にあるアイコン群の3つ目の「ガイドカメラ」を選択します。ガイドカメラも、ハード的にうまく接続されていれば「接続可能なデバイス」にカメラ名が出てくるはずです。何も出なければ、まずはケーブルなどの接続を疑ってみてください。
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更新時間はガイドに使うカメラということを考えると、0.1秒程度が適切かと思います。それ以上長くしてしまうと、ガイドのレスポンスが遅くなってしまい、発振してしまう可能性が出てきます。その分、ゲインはある程度上げてください。具体的な確認は、ガイドカメラで写している画面を見ながらした方がいいでしょう。
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  1. 画面左の縦に並んでいるアイコン群の中から、上から3つ目にある、ガイドカメラアイコンを押します。
  2. ガイドカメラが見ている画像が出てきます。ここで、右アイコンの露光時間とゲインを調整して、画面に何か見える状態を作ります。
  3. その際、画面がデジタルのマダラ模様に支配されている時があります。私はStellaVita本体とガイドカメラの接続に短いUSB2ケーブルを使っているので、転送速度の問題かと思いました。でも結局は1秒程度の更新では転送速度は十分で、じゃあ何が問題だったかというと、明るさでした。この場合、カメラからの信号が明るすぎる可能性が高いので、ゲインを下げるか露光時間を短くするとマダラ模様が消えます。
  4. 何か見えてきたら、ガイド鏡のピントを合わせてみてください。

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ネットワークの状態によってはせいぜいこれくらい見えるだけです。
星が目でみてわかればいいでしょう。

うまくいくと星がきちんと点になって見えるはずですが、最初は星空を見ながらだとわかりにくいので、地面近くの遠くの景色を映して確かめた方が楽かもしれません。


赤道儀の設定

次に赤道儀を設定してみます。カメラの接続のように自動的に認識されないので、ちょっと癖があります。

まず、StellaVitaと赤道儀をケーブルやWi-Fiで接続します。今回私はCelestronのAdvanced-VXを使いました。(補足1) ケーブルの接続ができたら、赤道儀の電源を入れてください。電源投入後は赤道儀のコントローラーで、適当な初期アラインメントをします。ここは通常の天体撮影と同じです。ただし、Celestronの赤道儀は初期アラインメントを「クイックアラインメント」にしないとダメという情報があります。私はCelestronのAVXを使ったので、この指示に従いました。(補足2)

赤道儀の動作開始後、StellaVitaアプリの赤道儀設定画面の上部のすぐ横のボタンの「検索」をするのが手順らしいですが、上手く赤道儀が見つからないことや、違う種類の赤道儀として認識されることが多いです。その場合は「None」と出ているところを押して、出てくる「接続可能なデバイス」をさらに下にスクロールさせて、赤道儀のドライバを自分で選びます。問題はこのドライバーがわかりにくいことです。ここで選ぶべきドライバーは「Celestron Advanced-VX HC」です。紛らわしいことに「Celestron Advanced-VX Wired」というのがあります。最初、こちらを選んでいて、全然うまくいかないので相当迷ってしまいました。(補足3)
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赤道儀との接続がうまくいくと、やっと横のスイッチを右の「ON」にできます。その際、ボーレートには気をつけた方がいいかもしれません。赤道儀には決まった通信速度があり、StellaVitaではマニュアルで設定する必要がある場合があります。ボーレートはマニュアルなどには書いてあるかと思いますが、わからなければネットで、「ボーレート」もしくは英語で「Baudrate」と、赤道儀名で検索すれば出てくるかと思います。AVXは9600ボーでした。間違ったボーレートだと、接続できなかったり、誤動作をする可能性があります。
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撮影前の準備は以上になります。次回の記事で実際の撮影に際して書きたいと思います。でもその前に、少し独立した話として、ネットワーク関連とStellaVitaのアップデート、ステーションモードについて最後に書いておきたいと思います。特にステーションモードの解説は英語も含めてほとんど見当たらないので、自宅でStellaVitaを使用している方はかなり便利になるかと思います。


アップデート

設定の「その他」に行って、バージョンを確認すると、Appがv1.0.17、Coreがv1.1.51、SDKがv59.29397.20250831、INDIがv2.1.5と表示されます。このバージョンが古いのか新しいのかよくわからないのですが、とりあえずアップデートを試みます。

アップデートファイルを持っていれば、SDカードを使う方法もあるみたいのですが、肝心なアップデートファイルがネット上に見つかりません。もっと簡単な方法は、設定の「その他」から「無線ブリッジ」をオンにして自宅のWi-FIにつなぐことです。無線ブリッジをオンにするとアクセスできるSSIDが見えるはずですので、パスワードを入力するなどして接続してみてください。これで自宅のWi-Fiを通してインターネットにも繋がるので、直接アップデートができます。「更新を確認」ボタンを押すと、今回はv1.1.58が見つかったので、そのまま更新をしてみました。
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自動的にダウンロード始まり、再起動してアップデートが完了しました。Coreがv1.1.58に代わり、SDKのバージョンもv59.29904.20251102に上がりました。その他AppとINDIのバージョンは変わらないようです。

ちなみに、本体にある謎のType-C端子ですが、これはStellaVita本体のファームウェアのアップグレードに使うとありますが、探した限り具体的な方法はどこにも情報が無いようです。ファームウェアというのが上記のCoreやSDKと同じものなのかもよくわかりません。今のところはこの端子は使用することできないようですが、将来に期待しましょう。


ステーションモード

上記のように無線ブリッジでStellaVita本体を自宅ネットに繋いでしまうと、さらに便利なことができるようになります。一般的にはステーションモードか言うやつです。

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  1. まず、タブレットのネットワークを自宅W-Fiに繋ぎ変えます。
  2. その状態で、StellaVitaアプリを立ち上げます。上の画面のように、左下のネットワークがStellaVita_XXXXXXだったのが自宅のものに変わっているはずですが、まだこの時点ではインジケーターが赤色で接続がうまくいっていないことがわかります。
  3. 当然StellaVita本体には接続できないのですが、設定の「その他」を見ると「IPアドレスで接続を試みる」というボタンが出ているので、これを押して、IPアドレスを入力し、「ネットワークに接続」を押します。問題はIPアドレスを確かめる方法がものすごくわかりにくいことです。
  4. 比較的簡単なのが、自宅LANのルーターの管理画面のDHCPの接続情報などを見て、StellaVItaのIPアドレスを特定し、入力します。これだけでもある程度のネットワークの知識を必要とします。さらに接続一覧まで辿り着いても、複数の機器が接続されているとどれがStellaVitaのものかわからないかもしれないので、その場合は一覧に出てくるIPアドレスを片っ端から入れていきます。(StellaVItaの付属のWi-FiドングルのMACアドレスがわかればもっと簡単に接続時のIPがわかるかと思います。PCにWi-Fiドングルを接続するなどして確かめることもできるかと思います。)
  5. 上手く接続されると左下のSSIDのところの赤いインジケーターが緑にかわります。
  6. あとは通常通りの操作になります。
  7. 一度接続が確定したら、ルーターのDHCPの接続情報でStellaVitaのMACアドレスを確認して、固定DHCPを割り当てるように設定しておくと便利です。これ以降は同じIPアドレスで接続することができるようになります。
IPアドレスの特定が一番大変かと思いますが、こうすることで自宅の庭撮りなどの場合は、家の中でヌクヌクしながら操作できるようになります。

私の場合一つ問題が見つかりました。自宅が広いので、複数のWi-Fiルーターを中継機として使っているのですが、StellaVita本体とタブレットが別々のW-Fiルーター機につながった場合、StellaVitaに接続されても読み込みを繰り返すような状態になってしまうようです。StellaVitaとタブレットが同じWi-Fiルーター機に接続するとそういった問題はなくなりました。


今回のまとめ

StellaVitaの撮影のための準備として、機材との接続と、カメラの画面を使ってのピントの合わせ方、ネットワーク関連の接続について解説しました。

星を見てのピント合わせ以外は全て明るい昼間のうちにできるはずです。ピント合わせも、明るいうちに遠くの景色を写して試しておいた方がいいと思います。夜になると撮影時間の制限もあるので、あせってなかなかうまくいかないかもしれません。事前できることをできるだけあらかじめ準備しておけば、実際の撮影時に余裕を持つことができるのかと思います。

次回は実際の撮影する際の解説をしたいと思います。お楽しみに。



(補足1)
Advanced VXとStellaVitaとの接続は、ハンドコントローラーのお尻の4pinモジュラー端子を使います。StellaVitaに機器を繋ぐ場合はUSB接続なので、USB-RS232C変換ケーブルなどを購入します。さらにRS232C端子とコントローラーは、赤道儀を買った時についてくる付属のRS232C-4pinモジュラー変換ケーブルで接続します。私はこのケーブルの存在を完全に忘れていて、過去に改めて買おうと思ったことがあるので注意が必要です。持っていないという方は箱の中を探してみてください。最初から付属しています。

(補足2)
Celeste on製赤道儀の「クイックアラインメント」とは、要するに初期アラインメントを何もしないというのと同義です。鏡筒の向きもホームポジションと同じです。これは全てのアラインメントをStellaVitaのプレートソルブに丸投げするということに他なりませんが、これで十分ということがわかりました。ただ、普通にワンスターアラインメントやスリースターアラインメントなどをしても、StellaVitaでそのまま使えることも確認しました。なので、あまり気にすることはないのですが、赤道儀での初期アラインメントを省くことができるのは、ユーザーにとっての負担を減らすことにつながるので、クイックアラインメントを選ぶというのは案外いい方法かと思います。さらに、この「赤道儀固有の初期アラインメントを省く」という簡単な方法は、実は他のSharpCapなどでも使える気がします。今度試してみます。

(補足3)
どうやって「Celestron Advanced-VX HC」にたどり着いたか書いておきます。トラブルシューティングの常套手段の一例と思ってください。
  1. まず、もっと簡単でユーザー数も多いと思われるAZ-GTiで試してみました。ユーザー数が多い機器は(StellaVitaに限らず一般的に)接続方法も確立されているはずですし、StellaVitaだとしてもバグが少ないはずです。
  2. 本来最も確実に動くはずのAZ-GTiの経緯台モードで試しましたが、その際、経緯台モード用のドライバーでは全く動作しなかったので、何かドライバーに問題があると判断しました。
  3. そこで試しにStellaVitaでAZ-GTiの赤道儀モード用のドライバーを使うことで、初めて反応があり、AZ-GTiを動かすことができました。要するに、正しいドライバーを選ばない限りうまく動かないということがここで初めてわかりました。
  4. Advanced-VXの接続は、別途SharpCapなどで動くことは確認できていたので、ハード的な接続は問題ないはずです。ということはドライバーがまだ何かおかしくて、あらためてAdvanced-VXのところを見てみると、「Wired」のほかに「HC」があることに気づきました。
  5. もしやと思って「HC」にしたらあっさり動いたというわけです。






最近ずっと太陽の記事ばかりですが、夜の撮影も多少進めています。試したのは3月21日と23日で、SWAgTiでモンキー星雲を撮影してみました。


春霞がひどい

3月21日はひどい春霞でした。黄砂も来ていたらしいです。雲は見えないのに星も見えないという、訳のわからない日でした。明るい星がかろうじて数個見えるくらいです。しかも家の中にいても風がビュービュー吹く音が聞こえるほど強くて、決して撮影に適した日とはは言えませんでした。でも久しぶりの晴れだったので、とにかく何か撮ってみようと試してみたというわけです。

IMG_1076


機材は簡単に、RedCat51 + Uranus-C Pro + CBP+ SWAgTiです。CBPはあまり強くないフィルターですが、モンキー星雲なら電視観望で数秒露光でも普通は何か見えます。でもこの日はPCの画面で見ても限りなく淡です。結局この日は3分露光で66枚撮影しましたが、後から見たら風のせいでブレブレで、使えそうなものは約半分の32枚でした。しかも、過去が画像のモンキー星雲のRAWファイルと比べても淡いです。

気を取り直して2日後の3月23日、撮り増しすることにしました。というか、21日の画像が淡すぎたので、できれば一から撮り直したいと思っていました。でもこの日も霞がすごかったです。黄砂予報は少し緩和されたので多少マシかと思っていましたが、後で比べたら結局同じくらいの淡さでした。もしかしたら何か機器の方に問題があるかと思ったくらいです。ちなみに、23日にはε130Dでばら星雲も撮影していますが、こちらはまだ明るい機材のせいか、多少マシなようです。それでも普通から考えたらかなり淡かったです。2つの機器で淡いので、やはりこれは機材のせいではなく、単に春霞がひどいのでしょう。

天体撮影では天気だけはどうしようもないので、この23日もそのまま撮影を続行し、71枚撮って56枚を使うことにしました。21日の画像を比べてもほとんど変わりないくらい淡かったのと、すでに7時間撮影していて、使わないファイルを除いても4時間半分くらいあること、その後の天気があまり良くなかったので、もう諦めて画像処理に進むことにしました。


画像処理

撮影後の画像処理はすぐに始めたのですが、MGCでストップしてしまいました。フィルターにCBPを使っているのである意味ナローバンド撮影といっていいのでしょうか、MGCを適用すると補正画像がこんなふうになってしまいます。

integration_ABE_MGC_gradient_model

これだと肝心のモンキー星雲本体が大きく補正されて、かなり暗くなってしまいます。この時はSPCCやSPFCのフィルターをありあわせのもので適当に済ませてしまっていたので、これを直せばなんとかなるかと思い、この時点でしばらくお蔵入りになってしまっていました。

先週末までで太陽のブログ記事を書くのもすこし落ち着いたので、モンキー星雲の画像処理を再開しました。やったことはSPCC用のCBPと、Uranuns-Cのフィルターを作ることです。CBPはだいこもんさんが作ってくれたものを使い、Uranus-C用のIMX585のカラーレスポンスは以前作っていたので、グラフを読み取るとかの手間はなく、ただ単にCBPとIMX585のフィルター情報をFilterManager上で重ね合わせるだけでした。


MGCのバージョンアップ

でも結局フィルターを正しくしてもMGCの補正はほとんど変わりませんでした。MGCはちょうど3月21日ににバージョンアップしていて、MARS DR1 Database Version 1.1が使えるようになっています。


このバージョンアップはかなりの進化で、オリオン領域の露光時間を10倍くらいにしたとか、これまでのHαに加えてOIIIに対応したというアナウンスがされていてAOO画像に対応、さらにSIIもRを代用すればなんとかなるかもということです。

それならばCBPでも対応できるのかと思っていたのですが、フィルターをCBP+IMX585にしても、MGCでナローバンドを設定しても、結局はだめでした。ナローバンドの設定は、例えばBをOIIIにすると青の補正が全くされないとかです。補正するのところをナローに変えると補正されなくなるようなので、例えばRをHα、GをOIII、BをOIIIとかにすると、補正画像側の星雲本体部分が真っ暗で、暗い黒で補正するので星雲本体が明るくボケボケになってしまうような状況でした。

まだ探りきれていないのかもしれませんが、ナローバンド、特に今回のようなワンショットナローバンド画像は、もう少しこなれるのを待っていた方がいいのかと思います。

MGCでの補正はあきらめ、あとは普通通り処理しました。

(2025/4.29: 追記) MGCで星雲本体が補正される問題は、結局Gradient Scaleが小さすぎたことでした。以前勾玉星雲の時にGradient Scaleの値を探っています。ε130Dの迷光の跡を消そうとしてGradient Scaleを小さくして、そのときは256が一番結果が良かったので、そのまま鵜呑みをしてモンキー星雲にも256を使っていました。今回のような大きな星雲が真ん中にドンとあるときは、Gradient Scaleを小さくするのは過補正になる可能性があるということです。実際、Gradient Scaleを1024にすると補正画像からモンキー星雲本体の形が完全に消え、1段階小さい768だともう星雲本体が補正されてしまいます。元々のMGCの目的から考えると、大きな構造を補正する目的なので、細かすぎる補正は目的にそぐわないといっても良いのかと思います。臨機応変に対応しなければと、改めて反省しました。(追記終り)

あ、そういえば今回はセンサー面の埃が目立っていて、星雲本体の上に大きな丸が乗っかってしまっていました。
IMG_1075

なのでお気楽撮影という方針には反するのですが、フラット撮影して補正するという手間をかけてしまいました。といっても、自宅で明るい昼間に部屋の中の白い壁を写すだけなので、まあ大した手間ではありません。フラットはフラットダークを撮らないと色々面倒なことが起こる可能性が高いので、フラットダークも撮影しています。フラットもフラットダークも1枚あたり30ミリ秒秒とかなので、大した時間はかかりません。その一方、ダークファイルは撮影に時間がかかるので、今回もダーク補正は無しです。ここら辺はSWAgTiのお気楽撮影を守りたいと思っています。


結果は...

さて、結果です。

「NGC2174:モンキー星雲」
Image15_DBE_cut
  • 撮影日: 2025321203分-225620253231946分-2324
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)
  • カメラ: Player One Uranus-C Pro(-10℃)
  • ガイド: なし
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分 x 88枚 = 264分 = 4時間24
  • Dark: なし、Flat, Flatdark: Gain 220, 露光時間0.03秒x128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

星雲本体の色は出ていますが、まわりの分子雲みたいなのは皆無です。と思って調べたのですが、モンキー星雲の周りってあまり分子運ないみたいなんですよね。その代わりに、モンキーの右下に青い丸ポチがある画像をいくつか見つけました。この青丸、出てる画像と出てないな画像に分かれるみたいです。出ている画像はRGBで、出ていない画像はナローでした。そう言った目で見てみると、ごくわずかですが青っぽい色が出ています。これは比較的弱いCBPを使ったからかと思います。特にCBPは青色領域を結構通すので、色が自然に近くなり処理がしやすく、私は結構好んで使っています。でもいつか、本当のBで撮影したいと思ったのですが、もう季節は過ぎてしまったので、来シーズンの課題とします。

恒例のアノテーションです。結構斜めになってしまっています。玄関に置いてあるのを出してそのまま撮影するので、あまり真面目にセットしていないのがこんなところからもわかってしまいます。
Image01_Annotated


過去画像との比較

比較のために、
以前撮影したモンキー星雲を再掲載します。6年前の2019年1月にFS-60QにEOS 6Dで撮影しています。約2年後の2020年12月にDeNoise AIが出た頃に、一度再処理しています。

light_BINNING_1_integration_DBE_PCC_HSVRepair_AS_all4_cut

色に関しては星雲も恒星も含めて今回の方が階調も出ているのでまだいいのですが、恒星の分解能はそれほど変わらず、星雲の分解能は以前よりも劣っていると言っていいでしょうか。これではベスト更新と言っていいのかどうか?

原因ははっきりとしていて、春霞で暗くてボケボケ、むしろよくここまで出たと言ってもいいくらいです。この撮影を通して思ったことは、やはり条件の悪い時は無理してももうどうしようもないと。その一方、機材や技術の進化で、昔の条件のいい時に撮ったものと、今の条件の悪い時に時に撮ったものが、まあ同じくらいの土俵に上がるので、実際にいろいろ進歩はしているはずです。


まとめ

北陸の晴れは貴重なので、春霞の中で無理をしてモンキー星雲を撮影しました。やっぱり晴れというだけではダメですね。私は機材とか画像処理とかに進歩があって、その結果を撮影して確認したいクチなので、ベスト更新ができないとかなり凹むこともわかりました。これからもう少し条件が良くなっていくと思うので、また別天体で今後梅雨までの期間を期待したいと思います。

でも、昼間の太陽撮影と夜の天体撮影はかなりきついです。まず、睡眠時間がとれません。撮影の日はやはり遅くまで起きてますし、太陽は朝の方が条件が良さそうなので早く起きます。昼寝とかすればいいのですが、太陽の画像処理は早めにやりたいし、その合間で夜の撮影の方の画像処理も進めます。さらにブログ記事まで書きたいので、流石にちょっと大変です。

性格的にやりたいことがあると延々と作業してしまうので、意識的に他のことをしないとダメみたいです。まだバラ星雲、M101、猫の手星雲、獅子座の銀河あたりの画像処理が残ってます。太陽も土日で大量に撮影とテストをしたので、まとめが全然追いついてません。ちょっとペースを落とした方がいいのかもしれません。


2024年12月2日、前回のM31 アンドロメダ銀河に続いて、同じくSWAgTiを使ってM45 プレアデス星団 (すばる) を自宅で撮影しました。画像処理もサクサク進んだので、早速記事にしておきます。

これまでM45に関しては二度撮影しています。前回は4年前の2020年で、TSA120での撮影になります。


masterLight_integration_DBE1_PCC_HSV_AS_PIP_all6_cut

この時は2週に続けて撮影しましたが、1週目はFC-76で、多分結露か何かでおかしな画像になり、2週目にリベンジしたのですが、今思い出すと画像処理に疲れて途中で投げ出したような気がします。これは今の技術ならもっとよく出るのかと思います。

一度目は更に4年前の2016年11月に、牛岳での撮影です。前回の記事でM31も4年周期で撮影と書きましたが、M45も全く同じく4年周期ということになります。特に狙っていたわけではないのですが、それもそのはずで、2016年11月はM31もM45も同じ日に2対象で撮影しています。この時初めてオートガイド撮影が成功して喜んでいた覚えがありますが、回り回って今回はSWAgTiでガイド無し撮影になったので、進化なんだか退化なんだか...。まあ、研ぎ澄まされた退化とでもしておきましょうか。

と思って過去記事を調べていたら実は更に前に一度、これも2016年11月ですが、上の撮影より一週前にM31とM45を同じ日に2対象で撮影しています。


M45up

まだノータッチガイド(死語)で露光時間も伸ばせなかったことですが、画像処理に初めて有料ソフトしてステライメージを使ったので、私の中では本格DSO撮影の最も初期にあたります。

M31とM45は今後の撮影技術の進化の指標ともなるいい選択なのかと思います。前回までは私としては珍しく牛岳、数河高原と、自宅でない暗い環境での撮影です。今回は自宅なのではるかに光害の多いはずです。しかも前回のM31の撮影では使っていたUV/IRカットフィルターも外して、完全ノーフィルターです。すばるの青い淡いところが、この厳しい環境でどこまで出るのか?挑戦のしがいがあります。

といっても、以前半分遊びで企画したSCA260の拡大撮影で、自宅でM45を撮影しています。F5でそこそこ青も出ることは確証を得ているので、同じF5鏡筒のRedCat51でも同じくらいは出るのではないかと期待しています。



Image06_PCC3_cut


SWAgTiでの撮影

長い振り返りになってしまいました。とにかくポイントは、自宅で青い星雲がどこまで出るかの挑戦です。

北陸の天気はもう冬型になっていて、晴れの日はとても貴重です。月曜でしたが、天気予報ではほぼ一晩中晴れ。このチャンスを逃す手はないのですが、問題はかなりの強風だったことです。撮影開始時はまだましでしたが、夜中寝ている頃に風の音で何度が起きるくらいだったので、相当な強風だったと思います。撮影後の画像を見ても、基本的に星像は小さくなく、一方向にぶれている画像もたくさんあり、あからさまな雲を除くと、143枚中16枚撮影をブレで落としています。その16枚も結構甘く見積ったので、もう少し落とすべきだったかもしれませんが、今回星像はあきらめてBXTの力に期待することにしました。

機材は
  • SWAT350 V-Spec Premium + AZ-ZTiのSWAgTi。
  • 三脚はGitzo GT3840Cをシステマティック化したもの。
  • 鏡筒はRedCat51。
  • カメラはM45がちょうど入る画角ということで前回交換したASI204MC Proから今回はUranus-C Proにまた戻しています。ゲインはHCGがオンになる220としました。オフセットは定番の40です。露光時間は3分としました。
  • 極軸調整用にUnitecの極軸微動ユニット2を三脚とSWAgTiの間に挟んでいます。SharpCapの極軸調整機能とこの極軸微動ユニット2で簡単に極軸を取ることができます。
  • ハロなどを避けるために、今回はUV/IRカットも含めて、フィルター無しです。

撮影ソフトと手順は、
  1. 極軸調整とピント合わせ、カメラ回転角調整にSharpCapを使います。極軸調整はガイド鏡がないので、主鏡とメインカメラをそのまま使ってしまいますが、特に問題はありません。
  2. AZ-GTiの操作としてPCにインストールしたSynScan ProをWi-FiでAZ-GTi接続。初期アラインメントと、SynScan ProのSynMatrix AutoAlign機能を使いプレートソルブまでしてしまいます。プレードソルブが終われば、SynScan Proで初期導入まで済ませます。
  3. ここでSharpCapからNINAに切り替えて、カメラを接続し冷却開始。オートガイド無しでディザーのみ使うために、ガイドソフトとして「Direct Guider」を選択します。
  4. NINAのシーケンサーで露光時間や枚数などを設定後、撮影開始とともに、自動追尾をSynScan Pro (恒星追尾をオフにする) からSWAT (追尾モードを「DEC」から「STAR」に切り替える) に移し替えます。
  5. 最終的な画角をSynScan ProやNINAの望遠鏡の矢印ボタンなどで微調整します。
  6. 露光を開始します。

12月で新月期なので夜が長いです。天文薄明終了から開始までの撮影は11時間7分も取れるとのことでしたが、カメラ交換などで戸惑って撮影開始は19時56分だったので、2時間くらいロスしています。終わりも途中から雲が出てきて、午前3時38分までの画像が使えました。雲を除くと、合計で143枚撮影し、127枚使ったので、採択率は89.9%でした。除いた16枚は全て強風でのブレです。


SWAgTiでの子午線反転

今回の撮影は長時間に渡ったので、SWAgTiにとってはある特殊なことが必要でした。そうです、子午線反転です。なぜこれが特殊になるかというと、SWAgTiでは恒星追尾を精度の良いSWATに任せるために、AZ-GTiでの追尾を止めて撮影します。そのため、AZ-GTは自分ではもう追尾をしていないと思い込んでいるわけです。

この状態でもNINAとは「望遠鏡」として接続されていて、NINAからAZ-GTiに信号を送り赤経、赤緯とも動かすことはできます。でも天体が子午線近くになり、そのまま子午線反転してしまうと、AZ-GTiは撮影開始位置に留まっていると勘違いしているので、全然明後日の方向に向かって導入してしまうというわけです。

実際に試してみました。
  1. M45が子午線近くに達したので、撮影のための露光をストップします。その後、試しにSynScan ProでM45を導入してみました。
  2. AZ-GTiで自動導入すると、対象まであとどれくらいの角度があるかが表示されます。子午線反転にあたるので、自動導入直後は本来180度くらいずれていると表示されるはずです。でも表示されたずれは50度くらい。これは20時頃に撮影を開始した位置からAZ-GTiが動いていないと思っているため、正しい値と思われます。(実際にはさらに180度ズレるはずですが、どうも180度以上になると180度を引いた値が表示されていると思われますが、ちょっと不明です。)
  3. その結果、鏡筒は明後日の方向を向きます。同時に、SynScan Proの恒星追尾が自動的にオンになってしまいますが、これは仕様のようです。その結果、SWATの自動追尾と二重で追尾することになるので、星がずれていきます。ここで一旦SWATの自動追尾モードを「DEC」に戻して切ります。
  4. ここでおもむろに、再度SynScan ProのSynMatrix AutoAlign機能を使い、アラインメントし直します。これがかなり強力みたいで、数10度とかのオーダーで全然ずれていても、強制的にきちんとしたアラインメントに戻してくれます。しかも、今回2ポイントでアラインメントして、そのうち2ポイント目が建物の方を指してしまい星が何も写らなかったのですが、1枚目のプレートソルブだけで「完了した」と表示されました。
  5. その後、再びSynScan ProでM45を自動導入すると、かなり真ん中に近いところに導入されました。
  6. ふたたび、AZ-GTiの恒星追尾をオフにして、SWATの追尾モードを「STAR」に切り替えオンにします。
  7. 最終的な画角をSynScan ProやNINAの望遠鏡の矢印ボタンなどで微調整します。
  8. 露光を再開します。

これは大きな収穫でした。AZ-GTiから自動追尾をSWATに受け渡しているのは、SWAgTiで天体を再導入する時に原理的な弱点になります。今回のような子午線反転や、一晩に複数の天体を撮影する場合は、どうしても撮影中断時にアラインメント情報を失ってしまっているのです。これまでは一旦ホームポジションに戻して一から初期アラインメントをするなどして、対処療法的に回避していましたが、このSynMatrix AutoAlign機能を使うことで、いつでもSWAgTiとしてののアラインメント情報を再取得できることになります。


画像処理と結果

風は仕方ないのですが、子午線反転を含めて撮影は極めて安定でした。ShapCapを使い極軸をかなり正確に合わせてあるので、8時間程度の撮影でもドリフト(画像の一方向のずれ)も全く許容範囲内です。NINAでのガイド無しディザーも問題なく適用されています。

画像処理は、これもお気軽SWAgTi定番の、ダーク補正無し、フラット補正無し、バイアス補正無しです。今回、センサー面にホコリが付いてしまっていて、少しリング状の模様が出ましたが、そこまで深刻ではなかったので、淡いところを出しすぎない目立たない範囲での画像処理に抑えました。センサーを綺麗に保つことは、画像処理を楽する上でかなり重要だと再認識しました。センサー面を綺麗に保てないなら、お気軽画像処理は諦めてフラット補正は必須になります。

さて、お楽しみの結果ですが、どうでしょうか?

「M45: プレアデス星団 (和名: すばる)」
3856x2180_180.00s_RGB_GC_SPCC_BXT_AS_MS_NXT5_cut
  • 撮影日: 2024年12月2日19時56分-3時38分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)
  • カメラ: Player One Uranus-C Pro(-10℃)
  • ガイド:  なし
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分 x 127枚 = 381分 = 6時間21分
  • Dark, Flat: なし
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

自宅で光害防止フィルター無しでここまで青が出たことに、まずは驚きです。これまで牛岳、数河高原と暗いところに行って撮影したものより、はるかに淡いところまで出ています。刷毛ではいたような模様もよく見えていて、背景の淡いところもそこそこ出ています。

アノテーションです。
_3856x2180_180_00s_RGB_GC_SPCC_BXT_AS_MS_NXT5_cut_Annotated1


自宅撮影は不利ではないのか?

今回の方が光害は酷いはずなのに、なぜここまで出たのか?少し冷静になって考えてみました。
  • 鏡筒は4年前のTSA120がF7.5で、今回のRedCat51がF4.9なので、今回の方が有利です。でも明るさで高々(7.5/4.9)^2 = 2.3倍です。
  • S/Nは口径もセンサーサイズも関係無いのは前回のアンドロメダの時にも書きましたが、それよりも1ピクセルのサイズが重要で、6Dが1辺6.5μmでUranus-C Proが2.9μmなので明るさ比較で(6.5/2.9)^2 = 5.0倍前回の方が有利。
  • 露光時間は前回4時間15分で、今回6時間21分で、(381/255) = 1.5倍今回の方が有利。
機材としては明るさ比較で5/2.3/1.5 = 1.4倍なので、S/Nだと更にルートで高々1.2倍前回の方が有利なだけで、あまり差がありません。

空の明るさを考えると、
  • 数河高原は天の川が普通に見えるので、6等星は見えるとしましょう。
  • 一方自宅は、北極星はたまに見えない時もありますが、大抵見えます。こと座の形やはくちょう座の形はたまに見えるときがあり、年に1-2回ものすごく透明度のいい日に天の川がうっすら見えるくらいです。普通の日は3等星が見えるくらいと思っていいでしょう。
ざっくり3等分の差があるとすると、1等ぶんで2.5倍明るさが違うので、2.5^3で16倍くらい前回の方が有利になるはずです。スカイノイズの差と考えるとS/Nはやはりルートで効いてきて、√16 = 4倍くらい差が出ます。これは無視できない有意な差で、前回の方が有利で、今回の方が不利ということです。

こう考えると圧倒的に前回の方が有利なのです。この差を覆るものが何かと考えると、画像処理と考えることもできますが、今は私としてはカメラの違いだと考えています。前回まで使っていたEOS 6Dは低ノイズの一眼レフカメラで長らく天体写真に適したカメラとして使われていますが、発売開始が2012年でもう12年も前のことになります。ここを見ると分かりますが、撮影時のISO1600だとダイナミックレンジは11bitを切っています。


一方、最新のCMOSカメラに近いUranus-C Proはここにある通り、HCGでダイナミックレンジは12bit近くになります。


ホットピクセルやアンプグローなど、新しいセンサーではグラフに出てこない有利な点がかなりあるのかと推測できます。というのも、最新カメラに近いASI2400MC Proで青い馬星雲を撮影したときも、ノイズ処理が楽で、データだけでは説明しきれないような有利さがあったと感じました。

分かりやすい例はEOS 6Dで自宅で撮影した青い馬星雲です。光害地の自宅で6Dだと、どうしようもない限界を感じましたが、


牛岳でASI2400MC Proで撮影した青い馬星雲はもう雲泥の差で、もちろん牛岳の空が暗いのはありますが、カメラの根本的な性能差を実感して、この時にはじめてフルサイズ6DをフルサイズCMOSカメラに代えてもいいかと思いました、


結局フルサイズのカラーCMOSカメラはまだ手に入れていないのですが、サイズこそ違えど最新のCMOSカメラはさすがに10年以上前の一眼レフカメラとは一線を画す性能と思って良さそうです。

というか、これくらいしか今回自宅でM45がここまで出る理由が思いつきません。その一方、もちろんセンサーサイズが小さいので解像度は出ないのですが、すばるの大きな模様の変化を見るにはこれでも十分な気がします。drizzleなどを使う手もあるかと思いますが、お気軽撮影とお気軽画像処理も捨て難いので、ここまで出るならもう十分なのかと思っています。


まとめ

自宅で綺麗な青を出すのは、ある意味一つの目標でした。

SCA260のM45のRGBでの拡大撮影である程度出ていたのですが、今回こんなシンプルな機材で、ここまで青がきれいに出るとはあまり予想していませんでした。出にくい青と言っても、M45くらい明るくて、撮影時間さえ十分に確保できてS/Nが取れるなら、無理してあまり暗いところに行かなくてもいいのかもしれません。星を始めた時の「自宅でそこそこ写せたらいいなあ」というのが、やっと実現できてきた気がします。

「そこそこ」の中には、あまり無理をしないでという意味も入っていて、今回のSWAgTiはガイドやダーク、フラット補正を省いたりして簡略化できているので、その意味でも「そこそこ」がやっと本当に実現できてきたのかなと思っています。


前回までの紫金山アトラス彗星もやっと落ち着きましたが、その後は天気がずっと悪かったり、忙しかったり、イマイチ盛り上がらなかったりで、ブログ記事はしばらく休んでいて、少しのんびり画像処理を進めていました。今回は10月にSWAgTiで撮影したM31アンドロメダ銀河についてです。


自宅に着いてから、さらに撮影

10月12日、昨日の馬頭星雲の撮影に引き続き、まだ天気が良さそうだったのでそのままのセットアップで撮影続行です。昼間は置きっぱなましだったので、極軸を取り直さなくていいので楽でした。

この日はアンドロメダ銀河狙いです。実はこの日は2セット出していて、RedCat51+ASI294MC Pro+SWAgTiでカラー、ε130D+ASI6200MM Pro+CGEM IIでHαで、後で合成する予定ですが、まずは今回は簡単なカラー画像のみの処理までです。

アンドロメダ銀河は結構大きいので、SWAgTi撮影の方の画角を少し広げたくて、カメラをこれまでの1/1.2インチのUranus-C Proからフォーサーズの上記ASI294MC Proに変更しました。あと、銀河なので、これまで入っていた2インチのDBPを外して、同じく2インチのUV/IRカットに変更しました。

SWAgTiを含む架台側のセットアップはそのままでよかったのですが、鏡筒の方を色々いじっていたら結構時間が経っていて、月が沈む0時過ぎをとっくに超えてしまい、撮影開始は午前1時過ぎになってしまいました。

IMG_0177
朝、片付け前の様子。

撮影ソフトはNINAで、ガイドなしでディザーありのSWAgTi特有の「お気楽、でも縞ノイズは出ないよ」撮影になります。撮影時のミスを避けるなどを考えると、SharpCapよりもNINAの方が圧倒的に気を遣わなくて楽で、SWAgTiではこの「NINA、ガイドなし、ディザーあり」がほぼデフォルトになってきました。

RedCat51にASI294MC Proを付けての初撮影だったので露光時間を少し迷いましたが、とりあえず1枚あたり3分としました。3分露光だと、250mmくらいの焦点距離でも、普通の赤道儀ではピリオディックモーションが避けきれなくて採択率が下がってしまうおそれがあります。ここはSWAT350 V-SPEC Premiumの高精度追尾のおかげで普通に100%の採択率を目指すことができます。

ゲインはHCGがオンになる120一択です。HCGのおかげで13stopsくらいのダイナミックレンジを取ることができます。stopsはbitと同じで、2の13乗 = 8192階調で輝度を表すことができるということです。

ゲイン120一択と言いましたが、選択できるゲインは露光時間と密接な関係があります。もし高精度追尾が無ければ、露光時間を十分に伸ばすことができないので、対象天体の淡いところを出そうとすると、その分ゲインを上げなくてはいけません。ゲインを上げることで淡いところの輝度を読み出しノイズより大きくして撮影する必要があるからです。ゲインというのは、「露光時間を延ばせない環境下において、淡い部分を読み出しノイズ以上に持ち上げてダイナミックレンジ内に入れる」という、非常に便利な機能であると考えることもできます。その一方、ゲインを高くすると、当然「ダイナミックレンジを犠牲にしてしまう」ので、恒星などが飽和する可能性が高くなってしまいます。

このように考えると、SWAT350 V-SPEC Premiumの高精度追尾は単にガイド無しで1枚あたりの露光時間が延ばせるだけでなく、「最適なゲインを選ぶ選択肢を持てる」ということが利点の一つになるのかと思います。ただし単に1枚あたりの露光時間だけ伸ばすことができても、トータルで長時間露光を目指すと縞ノイズがどうしてもついて回るので、SWAgTi特有のガイド無しディザーで縞ノイズを避けるというわけです。改めて考えてみても、SWAgTiはかなり理にかなっているのかと思います。

さて、こんなSWAgTiですが、撮影が一旦始まってえば、あとは基本放置で楽なものです。今回の撮影は0時46分スタートで、午前5時1分終了でした。といっても、自宅なので寝ていただけで、後でチェックしたら天文薄明開始の午前4時半頃からあきらかに明るくなっているのでカット。それ以外で省いたものは合計7枚で、7枚のうち4枚は人工衛星がかなり明るく写っていたので、Integration時のsigma clippingなどで綺麗に取り除けない可能性を考えて除きました。残り3枚は連続していて、どれも赤径方向の星像のジャンプで、特にそのうちの1枚はかなり大きなジャンプでした。原因は不明ですが、機材トラブル、風、地震、周りに車や人がいたなどの可能性が考えられます。結局使えたのは全80枚のうち64枚で合計3時間12分です。あえて除いた天文薄明と人工衛星を無視すると67枚のうち64枚なので、96%程度の採択率が今回のSWAgTiの実力と言っていいでしょうか。


画像処理

下は、3時間12分の画像をPixInsightでスタックまでしてオートストレッチだけの画像です。色などは何もいじっていません。例の如く、お気軽撮影を目指しているので、ダーク補正もフラット補正もバイアス補正も無しです。

masterLight_BIN-1_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

まず心配だったのは、ダーク補正をしないことによるIMX294センサー特有のアンプグローです。実際に右上に少しだけ明るい部分が見えていますが、高々この程度です。これを消すためにダークフレームを撮影して、ダーク補正するという手間をかけて、かつダークカレント起因のダークノイズを増やしてしまうことを考えると、ASI294MC Proでもダーク補正をあえてする必要もないかと思います。

1/1.2インチのUranus-C ProよりもフォーサーズのASI294MC Proの方がセンサー面積が大きくなったので、周辺減光も少し心配でした。フラットフレームを撮影していないので、かなり大雑把な見積もりですが、ABEの2次と4次で補正した時のbackground画像の輝度から推測するに、最大でも4%程でした。この程度なら、ホコリなどの局所的な欠損さえ無ければ、光学的なフラット補正はなくても十分なのかと思います。

繰り返しになりますが、上の画像はスタック直後にオートストレッチだけしたもので、彩度アップなどの色調も何もいじっていないです。それでも星の色も分かりますし、M31本体の色もある程度出ています。簡単セットアップで、3時間放っておくだけで、スタック以外特に画像処理もせずにこれだけの画像が撮れるなら、SWAgTiでのこのセットアップはかなりすごいのかと思います。

次が、PixInsightでABEの4次、SPCC、BXT、MaskedStrerch、NXTをかけたものです。次のPhotoshopでの処理のために、輝度は少し抑えています。

4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT_AS_MS_NXT

こちらも色調整はSPCCのみで、あえて彩度はいじっていませんが、更に色がはっきりしてきています。


仕上げの色使い

もう上の画像でも十分かと思いますが、最後にPhotoshopに持っていって、少しだけ仕上げします。

仕上げはかなり迷いました。アンドロメダ銀河の色って、人によって本当に千差万別ですね。AstrobinのM31で検索した結果を見ると何が標準か全くわからなくなります。派手なものは真ん中が金色に輝いていて、端の方はかなり青に寄っています。地味なのは全体に緑色っぽいものでしょうか。上の画像だとかなり地味な色居合いになります。緑の代わりに黒と白でモノクロっぽくして、あえて赤ポチを目出させているようなカッコイイものもあります。

前回のM31の撮影は4年前の2020年でFC-76とEOS 6Dを使っています。


4年前の時も4年ぶりの撮影とか言っているので、4年枚にメジャー天体を撮影し直すようなペースになっているということでしょうか。6Dのカラー撮影で赤ポチを少しでも表現しようとするような無理をしている感じで、かなり派手目な色使いになっています。今回はHαは別撮りのものがあるので、ここでは比較的シンプルな銀河っぽい感じにしてみました。

「M31: アンドロメダ銀河」
4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_cut
  • 撮影日: 2024年10月13日0時46分-4時33分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
  • フィルター: UV/IR cut
  • 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)
  • カメラ: ZWO ASI294MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  なし
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分 x 64枚 = 192分 = 3時間12分
  • Dark, Flat: なし
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

銀河のシンプルさに比べて、恒星の色をある程度出しました。上にある明るい青い恒星と、散りばめられたオレンジの恒星のおかげで、寂しさはあまり感じられないと思います。

銀河中心が飽和しないように、また腕の構造がある程度はっきり出るようにしてみました。色は私の中ではかなりおとなしめですが、これはのちの赤ポチで派手になることも見越して少し抑えています。


恒例のアノテーションです。周りにすごい数の銀河があることがわかります。
_4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_cut_Annotated

PGCを無くしたこっちの方がシンプルでいいでしょうか?でもちょっと寂しぎですかね?
_4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_cut_Annotated1


過去画像との比較

ちなみに4年前の画像を再掲載しておきます。
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4

今回のものと比較してみると、やはり見た目が全然派手です。あと、私はもともと恒星の処理が苦手で、この頃はまだStarNetで恒星分離ができ始めた頃で試行錯誤をしている最中で、今見るとかなり酷いです。さらに今回はBXTも使えるので、恒星に関しては進歩があったのかと思います。

機材でいうと、口径は76mmから51mmに減っていますが、F値では8から4.9になっているので、単位面積あたりの光子数が多くなっていて、今回の方が有利になります。画角はほぼ同じ(微妙に今回の方が広角)なので、その分センサー全体の大きさは違いますが、S/Nは単位面積あたりの光子数で決まるので、S/N比較ではあまり関係ないです。S/Nはピクセルサイズと密接に関係があり、6Dの6.5μmとASI294MCの4.6μmなので、信号が1ピクセルの面積に比例し、1ピクセルあたりの読み出しノイズは同じと仮定して、その他ノイズを無視してS/Nを考えると、計算上では(8/4.9) / (6.5/4.6) = 1.15とほとんど差は無くなってしまいます。

仮にトータル露光時間が同じとすると、信号Sが1.15^2倍前回の方が今回大きく、ノイズNが1.15倍だけ今回増えるので、S/Nは前回よりも今回の方が1.15倍いいことになるということで、機材としては今回の方が有利ということです。その代わりに分解能が前回の5472×3648から、今回は4144×2822と悪くなっています。S/Nをとるか、分解能を取るかですが、それぞれ別個のパラメータで、このように数値的に比較ができるものなので、画像と合わせてどちらをとるか考えればいいのかと思います。

実際には前回の露光時間が4時間35分で、今回が3時間12分なので、Sqrt(275/192)=1.20となり前回の方が有利なので、先の1.15倍と相殺してS/Nはほぼ同じと思っていいでしょう。分解能は6Dの方がいいので、機材と撮影条件では前回の方が良かったということになります。

それでも見かけでは今回の方がかなり良く見えるのかと思いますが、この違いは鏡筒自身の性能の差、さらにはカメラ自身の性能の差、あとは主に画像処理によるものかと思います。画像処理はBXTなどの分解能をソフト的に上げる効果もあるので、そこら辺も効いているのかと思います。


まとめ

4年ぶりのアンドロメダ銀河の撮影でしたが、機材はSWAgTiのおかげもあり鏡筒と合わせて軽くシンプルになり、撮影もガイドなしでかなり楽でした。ある意味、ここが一番大きな進化だと思います。実際の仕上がりの差はすでに出ていますが、L画像を別途撮影してさらに分解能を増すという手もあるかと思います。

SWAgTiは私の環境ではサブの標準機材としての位置を完全に確立しました。手軽だけれど信頼度は十分です。最近はずっと天気が悪いのですが、冬の星座も出てきているので、天気がいい機会があればパッと出して貪欲に狙っていきたいと思います。



日記: 金沢星の会70周年記念展示会@21世紀美術館

昨日の土曜日、午前中に金沢で用事があったので、午後から21世紀美術館に行って、金沢星の会の70周年記念の展示会に顔を出してきました。

IMG_0521

たまたま私の顔に気づいたNさんが声をかけてきてくださって、いろいろ案内してもらえました。今回70枚展示したとのことですが、70周年で70枚で、狙っていたわけではないですが圧巻でした。というのも、21世紀美術館は北陸では随一の規模を誇る美術館で、集客量もすごくて、今回訪れている間もひっきりなしにお客さんが訪れています。来ている方は星好きというよりは、ごく一般の方がほとんどのような印象でした。このような大きな場所での展示会はかなりインパクトがあり、参考にできるところが数多くありました。準備などもかなり大変だったと想像しますが、それだけの価値があるものだと思います。

展示は星景、季節ごとのDSO、太陽、月、惑星、彗星など多岐に渡り、奥の部屋ではタイムラプス映像を常時流していました。その部屋にも壁に写真が飾られていて、テーマは「能登の天体写真」ということです。今年初めの能登半島地震からの復興を意識しているのかと思います。これも全国から観光に訪れる金沢で、代表的な観光スポットにもなっている21世紀美術館で展示会を開くことが、意義に繋がっているのだと思いました。

天体写真は会員の方達の個性がとても出ていて、撮影者の名前を見ていると、この人はこんな傾向だとか、この人はこんな色使いが好きなんだなとか、いろいろ楽しむことができました。今回の記事と同じアンドロメダ銀河も大きなパネルに引き伸ばして飾ってあり、とても綺麗でした。ちょうど会場にアンドロメダ銀河を撮影した方が来ていたので、話をすることができましたが、ε160と6Dで撮影したとのことで、自分の環境と比較できるので面白かったです。

自分が所属する富山県天文学会も長い歴史があるので、今後何十周年とかなる時には、今回の展示会を参考にできればと思いました。

先週から体調がかなり悪くて、週末の小海の星フェスは泣く泣く諦めました。2日とも天気が良かったようで、Xの投稿を見ながら楽しそうでいいなあと思いつつ、体力が持ちそうにないことはわかっていたので、自宅で大人しくしていました。自宅の富山でも天気は良くて、月が出ていない時間も長く透明度も良かったのですが、夜に撮影どころか起きている元気もなくて、かなり悔しい思いをしていました。

時間だけはあったので、やっと彗星画像の処理に取り掛かれました。撮影日はもうだいぶ前の10月20日になります。


3つも機材を展開してパニックに近かったのですが、タイムラプス映像はすでに処理済みです。


彗星画像処理

今回は、3つの機材のうちの2つ目、RedCat51に、最近手に入れた2台目の6Dを取り付けて撮影した画像の処理になります。30秒露光で使えるものは47枚ありました。総露光時間は23分半になって、ネオワイズ彗星の時が80秒8分だったので、そこから見ても長くなっています。

その一方、撮影時間が長い分だけあって、恒星に対する彗星の移動が無視できないため、これまでのように恒星合わせでスタックすると、どうしても彗星がずれてしまいます。試しにWBPPしてみます。画像処理には、ダーク、フラット、フラットダークと後日別途撮影ファイルも使います。

5496x3670_EXPOSURE-30.00s_RGB_cut
核の部分の拡大。星の位置に合わせてスタックすると、彗星はずれていきます。

核を見てみると、彗星が25分程度の間に移動していく様子がよくわかります。でもこれだと彗星の正確な形がわからないので、彗星のみ別途処理する必要があります。でもその前に、とりあえずここで作った画像をStarNetで、恒星画像を分離して保存しておきます。後で彗星画像と合成するために使うことになります。

彗星核の位置を合わせるようにスタックするのは、PixInsightのCometAlignmentで簡単にできます。その代わりに当然ですが、恒星が流れてしまいます。
comet_alignment_integration
こうやってみると、30分クラスの撮影になるとかなりずれるのがよくわかります。

恒星をここから消すのは、ちょっとめんどくさくて、少なくとも上記の星が流れている画像でStarNetは全くうまくいきませんでした。しかたないので、一枚一枚のRAW画像にImageContainerを使ってStarNetを適用します。StarNetは1枚処理するのにもそこそこ時間がかかるので、47枚だと2時間くらいを要しました。

その後は再びCometAlignmentで核の位置を認識して重ね合わせますが、ここからが大変でした。星消し画像を彗星基準で重ねると、星を消した跡が軌跡となって残ってしまうのです。言うなれば一方向に流れた時に出る縞ノイズのようなものなので、途中ディザリングをすればよかったのかもしれません。
integration_ABE4_ABE4_ABE4

その後、ダーク補正なしとか、フラット補正なしとか、フラットダーク補正なしのフラット補正だけとか、色々試しましたがどれも残った軌跡をうまく消すことはできませんでした。少しネットで調べると、niwaさんの記事にIntegration時にCombinationをAverageからMedianに変更するといいとありました。そうするとrejectionで明るいところを弾けるとのことで、いくつかパラメータを試して、今回はhigh側を0.5σまで落としました。

この原理は、以前PixInsightを使い始めた頃にM33を処理して、縞ノイズを回避しようと試みたことに似ています。あの時はクールピクセルをCombinationをMaximumにすることで回避できました。当時は理由がはっきりわからなかったのですが、今ならはっきりと理由がわかります。縞ノイズは一旦発生すると相当厄介なので、Integrataionのオプションで多少は改善できることは、覚えておいてもいいのかと思います。

ただ、今回の0.5σというかなりきついhighリジェクションでも、まだ星の軌跡は少し残るのですが、テイルを除去しないためにはここら辺がもう限界でしょう。

ここでできた背景画像をPhotoshopに渡して、先に作った恒星画像を合成し、画像処理を進めたものが以下になります。淡い尾の構造を見たかったので、背景はABEを使いかなり平坦化しています。淡いところを強調したので、まだ星の軌跡は少し出てきてしまうのですが、上の画像から見たらかなりマシなので、まあよしとします。

integration_ABE4_ABE4_ABE4_comet_star_SPCC_MS_HT3
  • 撮影日: 2024年10月20日18時49分-19時21分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
  • フィルター: UV/IRカット
  • 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)
  • カメラ: Canon EOS 6D(天体改造)
  • ガイド:  なし
  • 撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間30秒 x 47枚 = 23分30秒
  • Dark: ISO1600、露光時間30秒 x 32枚、Flat, FlatDark: ISO1600、1/50秒 x 32枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

淡い尾が画面いっぱいまで広がってます。この画像の画角は横幅約8度に相当します。それ以上には余裕でありそうなので、まだこの時期だと少なくとも10度程度には広がっていたことがわかります。

10月14日の彗星にはかなり鋭い中心線となっていたネックライン構造ですが、20日のこの画像では鋭さはだいぶなくなっていて、明るいところも中心からずれています。視野方向が軌道面から少しずれてきたということなのでしょうか。

テイル部分は濃いところと薄い所で段になっているのがわかります。濃いところがイオインテイルに相当するのでしょうか?今回は軌道にかなり平行になっているからでしょうか、テイルもまっすぐで、前回見たネオワイズ彗星のように弧を描くようなテイルにはならないみたいです。

この画像は、これまでのネオワイズ彗星の画像に変わって、スマホの背景にしようと思っています。


核の回転

後半の処理は、同じ画像から核の部分を拡大して、ここにLarson-Sekanina フィルターを適用してみました。

これは、3つ目のセットアップのSCA260とASI29MCでの核の部分の拡大撮影の練習になります。ただし、このSCA260の画像、改造でシュミットに送り返してから何も調整せずに、しかも天板のプレートを自分で少し付け替えてしまっていて、現場で見ていると星像がかなり肥大化してしまっていました。もしかしたら解像度があまり出なくて、核の拡大画像としては使い物にならないかもしれません。

さて、上で作った恒星と背景画像をPixInsightの PixelMathで合成し、ここにPixInsightに標準で搭載されているLarson-Sekanina フィルターを適用してみます。Larson-SekaninaフィルターはRotation Gradientという名前でSirilにも搭載されているようなので、無料ソフト環境でも使うことができるようです。興味がある方は試してみるといいかもしれません。今回の画像のように、拡大するとかなり粗い画像でも結構面白い結果が得られます。

Larson-Sekaninaフィルターは彗星の核の周りの角度方向の輝度の違いなどを見やすくするために、以前からよく使われているとのことですが、数学的には特に難しいことをしているわけではありません。簡単にいうと、古文書の画像解析で文字をずらして見やすくするようなイメージでしょうか?ちょうどこの間の探偵ナイトスクープの西田局長の追悼回で、古いハガキのかすれた文書を読むのに使われれたので、見た方も多いかと思いますが、あの文字ずらしを極座標系でやっているようなものです。

具体的には、例えばPixInsightの場合には、中心を核の座標に指定し、距離と回転角でどれだけずらすかを、ピクセル単位と度単位で指定するだけです。Larson-Sekaninaフィルターの元の式を見るとわかりますが、距離はマイナス方向だけに、角度はプラスとマイナスの両方向に変化させています。距離がマイナスだけなのはプラスに動かすと、中心に空いたところに何を埋めればいいのかわからないからでしょう。このフィルターは1984年のかなり昔に提唱されたものなので、今ならアイデア次第でもっと複雑な変換を試してもいいのかもしれません。PythonやMatlabなどで画像を直接解析できるなら、実装もそれほど難しくはないでしょう。

PixInsightに搭載されているLarson-Sekaninaフィルターには、距離と角度の他に、もう一つamountというパラメータがあります。これが何を意味するのかよくわからないのですが、結果にはかなり大きく効きました。今回は距離: 2.5pixel、角度: 5度、amount: 0.05で、意味のありそうな構造が出てきました。

下が結果になります。見えやすいように輝度を反転しています。くるっと回っているような模様が見えると思います。

comet_star_SPCC_MS_25_5_004_035_inv_cut_L_cut

ですが、ここから何か意味を引き出そうとすると、とたんに難しくなります。そもそもLarson-Sekaninaフィルターの意義は「見やすくする」というものなので、そこから意味を引き出すのは別の話になります。意味を引き出すには、彗星がどういうものなのか、もっと知る必要がありそうです。今後の課題とします。


まとめ

彗星の画像処理はあまり慣れていないので、なかなか思うように進みませんが、やっとゴールが見え始めてきました。今回の紫金山アトラス彗星は、ネオワイズ彗星以来の大彗星で、そもそもやっと長時間での撮影ができたくらいです。Larson-Sekaninaフィルターもやっと試すことができたくらいです。

星を始めて8年半になりますが、これまで大彗星と呼ぶにふさわしいものはネオワイズを含めて2つだけです。ということはざっくり4年に1回というペースなのでしょうか。Wikipediaで大彗星で調べてみると、ネオワイズ彗星も紫金山アトラス彗星も大彗星に含めて、ここ50年ではわずか7つなので、実際には4年に1回よりは長そうで、むしろ4年に1度見えているのはラッキーなのかもしれません。

ネオワイズ彗星の時から考えてみても、今回は色々な進化がありました。次の大彗星ではどんな手法で撮影や画像処理を進めることができるのか、かなり楽しみです。


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