ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:RGB

一連のBXTによる再画像処理の4例目です。これまで以下のように3つの再処理例を記事にしてきました。





元々BXTで言われていた星雲部分の分解能、あまり話題になってなくて遥かに期待以上だった恒星の収差補正など、劇的な効果があります。

その一方、最近のM106の画像処理で分かったのは

  • BXTで銀河中心部の飽和が起きることがある。
  • BXTの恒星認識に引っかからない微恒星が小さくならなくて、恒星の明るさ位に対する大きさの逆転現象が起きる。
  • 光軸調整が不十分なことから起きる恒星の歪みはBXTで補正できなくてむしろ変な形を強調してしまうことがある。
  • BXTはリニア段階(ストレッチする前)で処理すべき(とBXTのマニュアルにも書いてあります)だが、LRGB合成はノンリニア(ストレッチしてから)処理すべきなので、リニアでできるRGB合成した後の段階ではBXTを使うことができるが、(額面通りに理解すると)LRGB合成した段階でBXTを使うことはできないということになる。
など、弊害や制限も少なからずあるということです。

M106も2度処理しているのである意味再処理なのですが、BXTを使っての「過去画像の」再処理という意味では、銀河を扱うのは今回初めてになります。これまで手をつけなかったことには実は明確な理由がありますが、そこらへんも記事に書いておきました。

そう言ったことも踏まえて、今回のBXTを使った処理では何が分かったのでしょうか?


子持ち銀河

ターゲットのM51: 子持ち銀河ですが、昨年4月に自宅でSCA260を使い、ASI294MM ProのRGB撮影で総露光時間4時間半で撮影したものです。

実はM51の再処理、かなり初期の頃に手掛けています。時期的は最初のBXTでの再処理の最初の記事の三日月星雲よりも前に試しています。銀河はBXTで分解能が上がることをかなり期待していました。でも改善がほとんど見られなかったのです。

BTX導入直後くらいに一度M51の再処理を試み、その後三日月星雲とかを処理してある程度技術的にも確立してきた後に、さらに再処理してみたM51です。
Image199_ABE_ABE_ABE_DBE_NTX_HT_CT_CT_NXT_CT2_cut1

同じ画角の元の画像を下に載せます。
64da897b_cut

再処理ではHαを載せていないので、派手さはないのは無視してください。2つを比較してみると、確かに少し分解能は上がったかもしれません。でも思ったほどの改善ではありませんし、むしろノイジーになるなど、悪くなっているところも見受けられます。なんでか色々考えたのですが、恐らくですが以前の処理はDeNoise AIを利用するなどかなり頑張っていて、すでにそこそこの解像度が出ていたということです。言い換えると、(今のところの結論ですが)いくらAIと言えど、画像に含まれていない情報を引き出すことは(例え処理エンジンは違っても)できないのではということです。逆に情報として含まれていないものを飛び抜けて出したとしたら、それは流石にフェイクということになります。

BTXとDeNoise AIを比べてみると、DeNoise AIの方が(天体に特化していないせいか)大きくパラメータを変えることができるので、おかしくなるように見えると思われがちですが、おかしくならない程度に適用する分には、BXTもDeNoise AIもそこまで差がないように思いました。DeNoise AIはノイズ除去と共にSharpen効果もあるのですが、BXTはノイズについてはいじることはないので、DeNoise AI = NoiseXTerminator + BlurXTerminatorという感じです。

それでは、DeNoise AIではなくBlurXTerminatorを使う利点はどこにあるのでしょうか?最も違うところは、恒星の扱いでしょう。DeNoise AIは恒星ありの画像は確実に恒星を劣化させるので、背景のみにしか適用できないと思っていいでしょう。その一方、BlurXTerminatorはAIと言っても流石にdeconvolutioinがベースなだけあります。星像を小さくする効果、歪みをかなりのレベルで補正してくれる効果は、BlurXTerminatorの独壇場です。恒星を分離した背景のみ、もしくは恒星をマスクした背景のみの構造出しならDeNosie AIでもよく、むしろノイズも同時に除去してくれるので時には便利ですが、やはり恒星をそのままに背景の処理をできるBXTとNXTの方が手間が少なく恒星のダメージも全然少ないため、天体写真の処理に関して言えばもうDeNoise AIを使うことはほとんどなくなるのかと思います。


L画像を追加してLRGBに

さて、上の結果を見るとこのままの状態でBXTを使ってもあまり旨味がありません。根本的なところでは、そもそもの元画像の解像度がをなんとかしない限り何をやってもそれほど結果は変わらないでしょう。

というわけで、RGBでの撮影だったものに、L画像を新たに撮影して、LRGB合成にしてみたいと思います。当時はまだ5枚用のフィルターホイールを使っていて、Lで撮影する準備もできていくてLRGBに挑戦する前でした。この後のまゆ星雲ではじめて8枚用のフィルターホイールを導入し、LRGB合成に挑戦しています。

撮影日はM106の撮影が終わった3月29日。この日は前半に月が出ているのでその間はナローでHα撮影です。月が沈む0時半頃からL画像の撮影に入ります。L画像だけで合計47枚、約4時間分を撮影することができました。

ポイントはASI294MM Proで普段とは違うbin1で撮影したことでしょうか。RGBの時もbin1で撮影していますが、これはM51本体が小さいために高解像度で撮影したいからです。bin2で2倍バローを用いた時と、bin1でバローなど無しで用いた時の比較は以前M104を撮影した時に議論しています。


解像度としてはどちらも差はあまりなかったが、バローをつける時にカメラを外すことで埃が入る可能性があるので、それならばbin1の方がマシというような結論でした。

以前RGBを撮影した時は1枚あたり10分露光でしたが、今回は5分露光なので、ダーク、フラット、フラットダークは全て撮り直しになります。


画像処理

画像処理は結構時間がかかってしまいました。問題はやはりLとRGBの合成です。前回のM106の撮影とその後の議論で、理屈上は何が正しいかはわかってきましたが、実際上は何が一番いいかはまだわかっていないので、今回も試行錯誤です。今回下記の6つの手順を試しました。Niwaさん蒼月城さんが指摘されているように、LinearでのLRGB合成で恒星の色がおかしくなる可能性があるのですが、今回は際立って明るい恒星がなかったので、LinearでのLRGB合成がダメかどうかきちんと判断することができなかったのが心残りです。
  1. RGBもL画像もLinear状態で、LRGB合成してからBXT
  2. RGBもL画像もLinear状態で、BXTをしてからLRGB合成
  3. RGBもL画像もLinear状態で、だいこもんさんがみつけたLinLRGBを使い、HSI変換のうちIとL画像を交換
  4. RGBとL画像とLinear状態でBXTまでしてから、フルストレッチしてNon Linear状態にしてからLRGB合成。
  5. RGBとL画像とLinear状態でBXTまでしてから、フルストレッチしてNon Linear状態にしてからLab変換して、aとbをconvolutionでStdDev=5でぼかしてからLab合成。
  6. RGBとL画像とLinear状態でBXTまでしてから、少しだけストレッチしてLinearに近いNon Linear状態にしてからLab変換して、aとbをconvolutionでStdDev=5でぼかしてからLab合成。
と試しました。赤は間違ったやり方、紫はまだ検証しきれていないやり方です。

ちなみに
  • BXTはリニアで使うべし。
  • LRGBはノンリニアで使うべし。
というルールがあるので、最も正しいと思われる順番は
  • WBPP -> ABE or DBE -> RGB合成 -> RGB画像にSPCC -> RGB画像、L画像それぞれにBXT -> ストレッチ -> LRGB合成
かと思われます。この手順は4番に相当します。RGBがノイジーな場合には5番もありでしょうか。

それぞれの場合にどうなったか、結果だけ書きます。赤はダメだったこと、青は良かったことです。
  1. 星雲の明るい部分に青飛びが見られた。(極端に明るい恒星はなかったので)恒星などの飛びは見られなかった。LRGB合成した後でBXTをかけるので、本来恒星が小さくなると期待したが、うまく小さくならず、変な形のものが残った
  2. 星雲の明るい部分に青飛びが見られた。(極端に明るい恒星はなかったので)恒星などの飛びは見られなかった。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。
  3. 星雲の明るい部分に青飛びが見られた。(極端に明るい恒星はなかったので)恒星などの飛びは見られなかった。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。ちなみに、LinLRGBはPixInsightに標準で組み込まれているものではなく、Hartmut Bornemann氏が作ったもので、ここにインストールの仕方の説明があります。
  4. 青飛びが少し改善した。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。ただし最初にストレッチしすぎたせいか、解像度があまり出なかった。
  5. 青飛びが無くなった。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。ただし最初にストレッチしすぎたせいか、解像度があまり出なかった。
  6. 青飛びが無くなった。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。ストレッチしすぎてなかったせいか、一番解像度が出た

というわけで、正しいと思われる4番は悪くないですが、青飛びを完全に解決できなかったことと、ストレッチの度合いがRGBとLが別だとどこまでやっていいかの判断がつきにくく、結局6番を採用しました。でもストレッチをあまりかけずにLを合成することが正しい方法なのかどうか、いまだによくわかっていません。その一方、Lab変換でabをボカしたことが青飛びを完全に回避しているので、手段としては持っておいてもいいのかもしれません。


仕上げ

その後、Photoshopに渡して仕上げます。分解能を出すのにものすごく苦労しました。AstrtoBinでM51を検索するとわかりますが、形の豪華さの割に、大きさとしては小さい部類のM51の分解能を出すのはなかなか大変そうなのがわかります。物凄く分解能が出ている画像が何枚かあったので「おっ!」と思ったのですが、実際にはほとんどがHubble画像の再処理でした。1枚だけHubble以外でものすごい解像度のものがありましたが、望遠鏡の情報を見たら口径1メートルのものだったのでさすがに納得です。それよりもタカsiさんが最近出したM51の解像度が尋常でないです。口径17インチなので約43cm、これでAstroBinにあった口径1メートルの画像に勝るとも劣りません。43cmでここまででるのなら、自分の口径26cmでももう少し出てもおかしくないのかと思ってしまいます。今回私の拙い技術で出せたのはこれくらいです。クロップしてあります。

「M51:子持ち銀河」
masterLight_ABE_crop_BXT_BXT_Lab_conv5_Lab_CT_bg2_cut_tw

  • 撮影日: RGB: 2022年4月2日20時32分-4月3日3時50分、LとHa: 2023年3月29日20時17分-3月30日4時34分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB、Hα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240で露光時間10分がR: 7枚、G: 7枚、B: 10枚、Gain 240で露光時間5分がL: 47枚、Hα: 21枚の計27枚で総露光時間240+340 =580分 =9時間40分
  • Dark: Gain 240で露光時間10分が64枚、Gain 240で露光時間5分が128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 RGB: 0.03秒、L: 0.01秒、Hα: 0.2秒、 RGBがそれぞれ64枚、LとHαがそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

元の大きさではこうなります。ただしbin1のままだと画素数が多すぎてブログにアップロードできないので、解像度を縦横半分のbin2相当にしてあります。

masterLight_ABE_crop_BXT_BXT_Lab_conv5_Lab_CT_bg2_lowreso

中心部を比較してみます。左が昨年のRGBだけのもの、右がL画像とHα画像を撮り増ししたものです。
comp

見比べると、明らかに今回のL画像が入った方が分解能が増していることがわかります。ただすでに画像処理がキツすぎる気もしています。今の機材でこれ以上の分解能を求めるにはどうしたらいいのでしょうか?

考えられる改良点は、
  • シーイングのいい時に撮影する。
  • Lがフィルター無しなので、UV/IRカットフィルターを入れて赤外のハロなどをなくす。
  • 振動が問題になる可能性があるので、三脚の足に防震シートなどを入れる。
  • 読み出しノイズに制限されているわけではなさそうなので、揺れ対策で1枚あたりの露光時間を3分ほどにしてみる。
  • Lの総露光時間をもっと増やす。
  • 暗い空で撮影する。
  • バローを入れて焦点距離を伸ばし、かつbin1で撮影する。
などでしょうか。小さな天体を撮影する際の今後の課題としたいと思います。


まとめ

BXTという観点からはあまり大したことは言えていません。分解能という観点からはDeNoise AIとそこまで能力は差がなさそうなことがわかりますが、恒星の収差補正などに利点があり、今後DeNoise AIを使うことはほぼなくなるでしょう。リニアなステージで使うことが正しそうで、RGBとLで別々に処理して合成しても問題なさそうなことがわかりました。BXTなしとありでは分解能に圧倒的に差が出て、今回もM51としてはそこそこの分解能になっていますが、まだ鏡筒の性能を引き出し切っているとは言い難いのかと思います。

RGBだけの場合と、Lがある場合では分解能にあからさまに差が出ることが改めてわかりました。でもなぜそこまで差が出るのか、自分自身本質的にはあまりよくわかっていません。単にLの露光時間が長いからなのか? R、G、Bとフィルターで光量が減るので、それに比べて全部の光子を拾うLが得なのか? それとも他に何か理由があるのか? 一度、R、G、B、Lを全て同じ時間撮影して、RGB合成したものからLを引き出して比較してみるのがいいのかもしれません。

とまあ色々議論したいことはありますが、庭撮りで着実に進歩はしてきていて、M51がここまで出たこと自身はある程度満足しています。でももう少し出るかと淡い期待を抱いていたことも事実です(笑)。


前回のM45に引き続き、SCA260でのお気楽拡大撮影の第2弾、今回はC49: ばら星雲の中心部です。

 


2度目の拡大撮影

2022/10/20の木曜、実は前日の水曜から天気が良かったのですが水曜は疲れ果てていて泣く泣く寝てしまいました。反省して、この日は早めにセッティングです。今回のターゲットのバラ星雲中心部ですが、前回の拡大撮影同様に、通常撮影の後の余り時間で撮影しています。今回は月が出るまでメインでアイリス星雲を撮影していて、その後に撮影を開始しています。

実際の撮影を始めたのは午前1時過ぎ。5分露光で月の影響があまり無いうちにBGRの順で、その後ナローでOASの順で撮影します。撮影枚数は各フィルターにつき4-6枚、6種類なので合計約3時間です。天文薄明開始前の午前4時過ぎ頃に撮影終了予定ですが、平日ということもあり、撮影が始まると1枚だけ確認しあとはベッドに入って寝てしまったので、結果がどうなったかはわかりません。

画像処理のために確認すると、風のせいでしょうか何枚かはぶれたりしていますが、ほとんどはよく撮れています。20日ほど前に撮影したフラット画像にホコリの跡があり使えないことがわかったので、休日の土曜日にフラットとフラットダークを撮り直します。今回は外が雨になりそうだったので、部屋の中の白い壁を使って、外の光と蛍光灯の光を壁に当てて撮影しました。


画像処理

土日を使って画像処理です。RGBの他にAOOを試したのですが、OIIIが暗くてイマイチでした。SAOも試しましたが、こちらもOIIIとSIIが暗いせいで採用する気になれませんでした。結局、RGBのLをHαで置き換えて細部を出すことにしました。もう月が出ている時間でしたが、Hαは流石にコントラスよく撮れています。

今回少し工夫した(インチキした?)のはRGB合成をした時点でStarNetで背景と恒星を分離し、Hαも同様に単独でStarNetで背景と恒星を分離し、背景だけでRGBのLをHαで置き換え、恒星はRGBのみのものを使い、後で背景と恒星を合成しました。理由はHαの恒星が小さすぎて、恒星込みでLを置き換えると恒星の形も色も全然バランスが取れないからです。まあお気楽撮影なので、画像処理もあまりこだわらずに好きなようにやってみるかという方針です。

結果は以下のようになります。

「C49: ばら星雲中心部」
Image97_RGB_ABE_ABE_PCC_bg_ARGB3 _cut
  • 撮影日: 2022年10月21日1時26分-4時00分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB、Hα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、RGBHαそれぞれ4枚の計16枚で総露光時間1時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 RGB:0.05秒、Hα:1秒で、それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
Hαが効いているせいもあり、ものすごい構造が出ています。恒星に関してはまだシャープさが十分でないと思います。鏡筒の性能なのか、シンチレーションなのか、画像処理が不十分なのか、

月が出ている自宅での撮影で、各色20分
、合計露光時間わずか1時間20分。口径26cmの大口径ということもあるかとは思いますが、メイン撮影の後のお気楽撮影でここまででるわけです。明るい天体ならもうこれで十分いい気がしてきました。

ちなみに下が画像処理5分で仕上げたSAOです。SIIがどうしようもなく、ノイズ処理をかなりきつめにしてもこれくらいです。Sの淡いところはほとんど階調が飛んでしまっています。
Image07



まとめ

お気楽拡大撮影、あくまでついでの撮影なので労力に対するパフォーマンスがめっちゃいいです。メインの撮影画像より気軽に処理できるので、仕上がるまでも速いです。

次は燃える木を狙おうと思ってます。アルニタクが画面内に入ってくるので、新しくしたBaaderのSIIフィルターでゴーストが出なくなるかどうか検証する予定です。


ゴールデンウィーク中に遠征(30-40分くらいなので近征?)してSCA260とASI294MM Proで撮影したカラス座にあるアンテナ銀河の画像処理についてです。CGX-Lを持ち出したのでかなり大変でしたが、ここで大型赤道儀で外でも撮影できる目処が立ちました。

撮影時の詳しいことはすでに記事にしていて、近場のいつもの場所、


それと、牛岳で2日分です。




画像処理

撮影は計3日間ですが、初日の撮影分は風が強すぎて使い物にならなく、結局牛岳の2日分だけを画像処理に回しました。

露光時間は10分でBaaderフィルターでのRGB撮影です。確かこの撮影の頃にフィルターホイールを1.25インチの8枚のものにしたはずなのですが、まだLは撮ってないです。処理に使った枚数はRGBそれぞれ15枚、9枚、9枚の計5時間30分です。

フラットは撮影から帰った日の5月6日に、夕方の自宅の外で鏡筒に白い袋を被せて撮影したのですが、これは結局うまく合わずに、以前馬頭星雲の時に撮影したフラットを使い回しました。袋を被せたフラット撮影はFS-60CBの頃にやっていて、うまくいってたのですが、大口径ではまだうまくいったことがありません。普段フラットは晴れ、もしくは曇りの日の部屋の中の白い壁で撮影しています。これまで撮影のたびに毎回撮影していましたが、今回の結果を見るとどうも使い回しができそうな雰囲気です。使いまわすためには大きなホコリが入るとおそらくダメになるので、接眼部に着いているカメラなどの機器の取り外しは出来る限り避けたいです。

画像処理はWBPPまでは5月のうちに終わっていて、3ヶ月も放っておいたことになります。その間何度か仕上までトライしたのですがいまいち気に入らなくて、結局前回のM104の決着がつくまで落ち着いて進めることができませんでした。昨日からやっと仕上げにはいりました。

これまでに何度かに分けてPixInsightでストレッチやマスク作りまで終わっていたので、昨日からの作業はほとんどPhotoshopです。何度かやり直してもアンテナ部分がかなり淡く、マスク処理は多少複雑になりました。そのためマスクを作り直すなどの作業は少しありましたが、なんとか炙り出すことはできたかと思います。

「NGC4038: アンテナ銀河」
Image196_pink_deconv4
  • 撮影日: 2022年5月4日21時14分-5日0時5分、5月5日21時14分-6日0時51分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間10分、R: 15枚、G: 9枚、B: 9枚の計33枚で総露光時間5時間30分
  • Dark: Gain 120、露光時間10分、29枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 RGB: 0.07秒、RGBそれぞれ64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

出来上がった画像を見ると、まだ恒星サイズが大きいのではと思いました。露光時間が長くて揺れが出たのかと。やはり10分露光でなく、5分露光位に抑えておいた方がいいかもしれません。

下のアンテナ部は先っぽの巻き巻きも含めてそこそこ出たと思います。それでも上のアンテナの先端の広がりがあるはずなのですが、そこまでははっきりとは写りませんでした。

あと銀河の細部がもう少し出てくれてもよかったかと思います。銀河の下部にアンテナ部との境があるように見えて、最初画像処理のせいかと思いましたが、どうもリアルにあるようです。

いつものAnnotationです。

Image196_pink_deconv4_Annotated

少し斜めになってしまっています。もうなにも記憶はありませんが、あまり真面目に回転角を合わせていなかったようです。


まとめ

牛岳という、少なくとも普段撮影する自宅よりは十分暗い場所で、結局2日にわたって5時間半のアンテナ銀河の撮影でしたが、それでもアンテナ部分はかなり淡かったです。マスクを駆使してやっと出ましたが、結構大変でした。特に銀河もう少し解像度が出るかと期待していましたが、シンチレーションと露光時間によるのかと思います。またいつか機会を見て撮影してみたいと思います。

さて、さらに溜まっている画像処理を進めることにします。

3月3日にSCA260で撮影した馬頭星雲。



作例として仕上げるために、合計6晩も撮影を続けました。 


目的

今回の目的は、
  1. ある程度振動対策を施したSCA260で、3分露光で多数枚スタックしてどこまで恒星が点像に迫れるか見る。
  2. 馬頭星雲の、特に本体の暗黒帯部分で、細部がどこまで出るか見る。
  3. 近くのアルニタクのゴーストを抑えることができるか?
  4. 馬頭星雲のすぐ下のNGC2023の青がどこまで出るのか見る。
などです。


長期間撮影

さて6日に渡って撮影を続けた理由ですが、この時期のオリオン座は早い時間に西の低い空に傾き、高い位置で撮るには時間が限られてしまうからです。実際、6晩のうち前半3晩は、曇っていたりでセットアップに時間がかかり、撮影開始時刻が21時とか22時以降になってしまい、かなり低空での撮影からになってしまいました。後から見返すと低空の霞や雲のせいか、背景が明るすぎて星雲本体が淡くしか出ていなかったり、画面にムラがあったりしたため、3晩分の画像はほぼ全て処理には使えませんでした。


アルニタクとの攻防

特に不思議だったのが、最初の2晩にだけアルニタクのゴーストが顕著に出てしまったことです。というより、最初にゴーストを見たときに、これをどうやって除去したらいいのか真剣に悩んだのですが、フィルターなど設定を全く変えることなく後半の撮影ではゴーストが消えていました。やはりかすみのせいなのでしょうか?これはいまだに理由がわかっていません。

Image101
上部に大きな輪っかのようなゴーストが出てしまっています。

さらに、アルニタクの周りに青い光芒が見えますが、これは高度が高い場合には出ることがなくなりました。こちらは低空の霞で散乱されて出てきていたのかと推測します。

光条線は最後まで残ってしまいました。だいこもんさんが光条線を短くする方法を提案してくれてましたが、これくらい輝度差がある恒星が画角近くに入ってくる場合は試す価値がありそうです。




振動について

今の赤道儀CGEM IIに重いSCA260を載せると振動はどうしても残ってしまいます。これまで鏡筒の軽量化を中心にいろいろ振動対策はしてきましたが、やはり露光時間1分程度が実用範囲、今回のように3分露光だと採用率がかなり下がってしまいます。風がほとんどない場合でも揺れは残るので、風が強い日はほぼ全滅です。ただ、揺れの方向はある程度ランダムになっているので、多少星像が歪んでしまっても多数枚のスタックで平均化され、仕上がりはマシになると思います。


画像処理処理に使った枚数

撮影枚数は、使わなかったものを含めると
  • R: 48枚、G: 66枚、B: 61枚、Hα: 58枚
となります。3分露光なので、
  • R: 144分、G: 198分、B: 183分、Hα: 174分で、合計11時間39分
とかなりの長時間になります。そのうち、ある程度まともで使おうとしたものが
  • R: 22枚、G: 31枚、B: 31枚、Hα: 35枚
となります。落とした画像のほとんどは6晩のうちの前半3晩のもので、撮影開始時間が遅くて低空の霞などのためです。前半3晩は撮影枚数、採択率も散々で、わずか
  • R: 0/12枚、G: 3/10枚、B: 3/10枚、Hα: 4/22枚
というものでした。後半の3晩は、前半の反省から早い時間に準備したため、一気に撮影枚数と採択率があがり、
  • R: 22/36枚、G: 28/56枚、B: 28/51枚、Hα: 31/36枚
となりました。後半使わなかった画像の多くは、やはり時間が遅くなり低空になってしまったものです。それとは別に、揺れてしまって使えないものがありましたが、それらの率はそこまで多くありません。

さらにですが、使おうとした枚数とPixInsightで実際に使われた枚数は少し違って、
  • R: 22枚、G: 30枚、B: 22枚、Hα: 23枚
枚でした。registeredフォルダを見ると実際にスタックされた枚数が判明します。BとHαがかなり落とされてしまいました。今まで気づいたことがなかったのですが、スタック時など特に位置合わせがうまくいかない時に弾かれるようです。なので今回は合計時間は思ったより少なくて、合計291分で4時間51分でした。パラメータをいじることでもう救い上げることができそうなのですが、もしかしたらこれまでの作例でもPIに登録した枚数より実際にスタックされた枚数のほうが少なかったケースがあるのかもしれません。


西の低空の影響

少し西の低空の影響がどれくらいあるのか見てみます。

1. まず、3月9日の19時13分と22時41分をB画像で比べてみます。19時のをオートストレッチにかけて、同じパラメータを22時のものに適用しました。

19時13分のB画像。
2022-03-09_19-13-08_IC 432_LIGHT_B_-10.00C_180.00s_G120_0005

22時41分のB画像
2022-03-09_22-41-21_IC 432_LIGHT_B_-10.00C_180.00s_G120_0004
明らかに22時台のほうが明るくなり、馬頭星雲が薄くなります。一番のポイントはNGC2023の写る範囲がせまくなっていること。

2. 続いて、3月10日のRを20時16分と22時53分で比較します。

20時16分のR。Bより馬頭星雲がクリアに出ているのはわかりますが、星の数が全然増えています。
2022-03-10_20-16-58_IC 432_LIGHT_R_-10.00C_180.00s_G120_0000

22時53分のR。この日は西が相当明るかったようです。
2022-03-10_22-53-37_IC 432_LIGHT_R_-10.00C_180.00s_G120_0009

これをオートストレッチしただけだと同じような明るさで比べることができます。
2022-03-10_22-53-37_IC 432_LIGHT_R_-10.00C_180.00s_G120_0009_STF
明らかに淡いのとともに、画面にムラがあるのが分かります。薄い雲のせいでしょうか?

3. その一方、同じ3月10日のHαだと背景に差があまり出ません。

19時45分と
2022-03-10_19-45-11_IC 432_LIGHT_A_-10.00C_180.00s_G120_0000

22時21分です。
2022-03-10_19-45-11_IC 432_LIGHT_A_-10.00C_180.00s_G120_0000

あまりに背景の明るさが変わらないので、最初ミスかと思って再確認しましたが、やはりきちんと19時のパラメータで22時のもストレッチされてました。背景光の影響があまり出ないのはやはりナローバンドの威力と言っていいのでしょうか。背景光の明るさに差はなくても、細部ので方はきっちりと差が出ていて、やはり高度のある19時台の方が細かいです。あと、恒星の数がRに比べてかなり少なく、GやBと同程度です。波長から考えたらRに近い数が出ると思ったのですが、Hα以外の赤い領域でも多く光っているためRと差が出たということなのかと思います。

赤に比べて波長の短い青は低空でより散乱しやすいので、やはり青を出したいときはできるだけ高度が高いところで撮影するのが良さそうです。また、RでもHαでも細部の出方は結構違うので、こうやってみるといずれにせよ高度のあるところで撮るのが有利なのがわかります。


7nm Hαフィルターの効果

実はナローバンドフィルターをRGBと混ぜたのはまだほとんど経験がなくて、M33の赤ポチで混ぜたくらいです。そこで、ちょっと蛇足ですが今回使った7nmのHαフィルターを使うとどれくらい得するか、簡単に見積もってみたいと思います。

可視光が400-750nmと仮定して、光量が波長によらずに平均的に広がっていると仮定します。Hαが7nmなので、波長だけで単純にフィルターなしの場合と比較すると7/350 = 1/50と背景光は50分の1程度になるわけです。フィルターなしで撮影する場合に同程度のクオリティーにしようと思うと、50倍の時間をかける必要があります。

これは次のように考えることができます。シグナルに当たるHαはフィルター有り無しで変わらないとして、背景光が50倍だとしたらスカイノイズはルート50~7倍程度増えます。Hαフィルターをつけた場合に比べて、フィルターなしの時は、背景光ノイズに関してはルート50倍ノイジーだと言うことです。ルート50倍ノイジーなものを、同程度にするためには50倍の露光時間にする必要があり、そうすると信号は50倍ノイズはルート50倍になるので、S/N(Signal to Noise ratio)では50/ルート50 となり、ルート50倍得するというわけです。

Redフィルターの透過範囲が600nmから700nm程度なので、それとHαと比べても100/7で15倍程度となり、背景光に関してはRフィルターで15倍程度の時間をかけて、今回のHαと同程度となります。うーん、これはかなり大きな差ですね。この明らかにS/NのいいHα画像をどうやって混ぜ込んでいくかがキーになるのかと思います。


画像処理

RGBの画像処理はこれまでと特に変わりはありません。PixInsightのWBPPです。

初日の画像だけで処理した低い空のものはこのページの一番上の画像なんですが、強度のすとれっちをかけてあるので、普通のオートストレッチで見てみます。
Image101_STF
赤が弱く、アルニタクのゴーストと青い光芒が目立ちます。その一方、NGC2023の青が不十分です。

次はここまで使ったRGBをほぼ捨てて、オリオン座が高い空の時にRGBをほぼ全部を撮り直した場合です。NGC2023がかなりはっきりしてきました。アルニタクのゴーストが(なぜか)消え、青の光芒もなくなりました。赤もはっきりしてきました。結構いい感じですが、左下辺りにどうも緑のムラがあります。

Image17_PCC

ちょうどこの時期にPixInsightの1.8.9へのアップデートがあり、WeightedBatchPreprocessing Scriptにlocal normalizationが加えられたとのこと。local normalizationはこれまで使ったことはありませんでしたが、薄雲越しのムラができやすい撮影や、複数の日にまたがり条件が変わる撮影などの場合に、状態を合わせてくれる処理のようです。WBPPの中で自動で行われるとのことなので、実際にオプションをオンにして試してみました。

アップデート前(上)と後(下)でG画像を比較してみます。
masterLight_BIN-2_EXPOSURE-180.00s_FILTER-G_Mono

masterLight_BIN-2_EXPOSURE-180.00s_FILTER-G_Mono_1
他は特に何もしていませんが、明らかに違いますね。ムラがかなりきちんと撮れてストレッチに伴い細部がかなり出ています。このG画像を使ってRGB合成した結果は以下のようになり、かなりまともになってきました。

Image34_PCC

まだBに少しムラがある気がしますが、B画像はアップデート前後でほとんど違いが出ませんでした。とりあえずまだ不明な点も多いのですが、今後理解していきたいと思います。

RGB画像はPixInsightでストレッチまでして、Starnet++ Ver.2で恒星と背景を分離して、Photoshopに引き渡します。Hα画像もストレッチまでして、同様に恒星と背景を分離します。

恒星に関してはPCCを施したRGBの色が正しいと仮定して、Hαの恒星は捨てることにしました。Photoshop上でHαg像をレベル補正を使いRに変換し、それを「比較(明)」でレイヤーとして重ねます。元のRをを調整することで重なり具合を調整できますが、Hαの細部の暗い部分が鈍ってしまう可能性があるので、もう少しいい方法を見つける必要がありそうです。もちろんPixInsightの段階で重ねてもいいのですが、後に微調整をしたくなることを考えると、現段階ではPhotoshop上で処理してしまった方が楽そうです。


結果

最終的にできた画像が以下になります。

「IC434: 馬頭星雲」
Image34_PCC_AS_HT5a_cut
  • 撮影日: 2022年3月3日22時46分-23時7分、3月4日22時4分-22時14分、3月8日21時58分-23時06分、3月9日19時13分-22時25分、3月10日19時45分-22時2分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB, Hα:7nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、R: 22枚、G: 30枚、B: 22枚、Hα: 23枚の計97枚で総露光時間4時間51分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 RGB: 0.08秒、Hα: 1秒、それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

まだHαからの赤が強い気がします。もう少し落としてもいいかも。馬の頭の中を含めて、細かい模様はそこそこ出たと思います。NGC2023は青色は出ましたが、もう少し細部が出てもいい気がします。画像処理の腕がまだまだなのかと思います。恒星の星像はスタックするとかなり真円に近くなりますが、少し同一方向に延びています。これは赤道儀特有の揺れが残ってしまった部分かと思います。

それでもそこそこ撮れたので、まあ満足かと思います。


まとめ

かなり長い期間かかって、やっと画像処理までたどり着けました。最初に撮影した分だけで処理したときは、ゴーストもあれば、色は全然出ないで、どうしようかと思いました。低空での撮影が問題だとわかってやっと目処が立ってきました。

SCA260での撮影は、今の赤道儀ではどうしても振動が取り切れません。同じ日の夜半過ぎからM100とM101を撮影してあり、まだその処理が残っています。今回のような画面全体で見るような星雲とかはまだいいのですが、小さい系外銀河などでは揺れによる星像の悪化がどうしても目立ってしまうことがわかってきました。撮影した銀河の処理を見てからの判断ですが、赤道儀をもっと頑丈なものにしていく必要がありそうです。

あ、今回の馬頭星雲、暗黒帯の中の模様も出てきたので結構満足して妻に見せました。でも中の模様のせいか馬の頭とは全く認識できないみたいで、首のない進撃の巨人にしか見えないとのことです。あーぁ、画像処理は奥が深いです...。


久しぶりのSCA260の記事です。M33のLを撮影したところまで書いたのでしょうか。

 

そのあとに小海の星フェスがあったり、月食があったりで、SCA260のことはほっぽらかしでした。でも何もしていなかったわけではなくて、上のように11月初めにM33のLを撮影した後、星フェスの前にはRGBをそれぞれ撮影していたりしました。その後、ダークやらフラットやらも星フェス前には撮影し終えていたのですが、その後の画像処理に時間がかかってしまい、今の記事になってしまいました。

あと、ちょうこくしつ座のNGC253も撮影してあるのですが、こちらはまだ全然未処理で、まとまったら記事にするつもりです。


RGBの撮影

さてRGBの撮影ですが、記録を見ると11月5日で、もうかなり前のことなので色々思い出さなくてはいけません。撮影は一番出にくいBが天頂の頃にと思い、0時ころまではRGBの順で、0時頃にLを撮り増しして、さらにBGRの順で撮影しようとしました。でもやはり揺れと、さらには途中ピントを変えたことによるピンボケで大量に無駄にし、時間も押して最後のGRは撮影できませんでした。

結局使えたのがR: 11/64枚、G: 24/70枚、B: 58/117枚と、相当な率の低さです。ただし、ピンボケを除くとR: 11/31枚、G: 24/30枚、B: 58/60枚となり、R以外はそれなりに好調です。Rは風が少し強かったのだと思います。それでもGBも実はかなり妥協して残して、今の赤道儀では1分でもどうしてもある程度は揺れてしまうようです。今のところ3分露光だとほぼ全滅なので、露光時間を伸ばすためにもなんとか解決策を考えなくてはいけません。

おっきな赤道儀を購入できれば一発解決なのですが、鏡筒を買ってすぐなのでまだしばらくは予算がありません。ここは今後少し考えます。


画像処理

まずはLを処理します。スタックされた画像を見るともう明らかに分解能が出まくりです。以前撮影したTSA-120よりもかなり分解しています。今回は星像がまだ揺れている段階での結果でこれなので、SCA260のポテンシャルはまだまだありそうです。

次にRGBを個別に処理します。特に今回Rの枚数が極端に少ないので心配だったのですが、ほとんど問題なさそうでした。それよりもBが枚数は多いのですが、おそらく雲のせいかと思いますが、RとGに比べてムラが多いのです。これは後の画像処理でかなり苦労することとなりました。このムラ少し不思議で、M33の腕の後に沿ってある様も見えますし、たまたまなのか四隅のうち左上と左下がまるで周辺減光があるかの様にも見えます。元の個別の画像に行ってもある程度の枚数にその様に見えているので、もしかしたらそのムラが正しくて、ムラのなさそうに見えているのが雲なのかもしれません。

RGB合成後はPCCをかけて、一旦恒星の色を合わせておきます。この時点で先のBのムラで全体にバランスがズレた部分が見えたので、DBEをかけて(ABEではM33自身も補正しようとしてしまい太刀打ちできませんでした)ある程度補正します。


初のLRGB合成

一応RGBとLが用意できたので、今回初のLRGB合成に挑戦しましたが、これがまた結構難しいです。

まず、RGBをストレッチや色バランスまで含めてある程度の画像処理を進めてからLを合成すればいいとのこと。Lもストレッチまである程度進めておきます。

LRGB合成はPixInsightのLRGBCombinationを使いました。問題は、LとRGBのストレッチの度合いです。両方ともオートストレッチでフルに炙り出してから合成すればほとんど問題ないのですが、私はストレッチし切る前にPhotoshopに渡したいので、それだとうまく合成できないのです。具体的にはLが明るいと、色がほとんどなくなりモノクロに近くなります。Lが暗いと、(おそらく出来上がった画像の暗部が切られてしまって)カラーバランスがおかしくなります。

なのでもうLを捨てて、RGBだけで処理を進めようかとも思いましたが、せっかくのLの撮影時間が勿体無いのと、やはりLの方が細部まで出ている様に見えるので、今回は出来上がりを見ながらLのストレッチ具合を何度も調整して合成しました。これ他に何かスマートな方法はないのでしょうか?

いずれにせよ、ここまでできてしまえばあとはいつものように炙り出すだけです。


結果

今回は1枚撮りだけみても、そもそも分解能がかなり出ています。撮影時間は3時間ほどですが、大口径のこともありノイズもあまり大したことがありません。なので伸び伸びと気軽にあぶり出しをすすめることができました。以前ほど青紫に寄せることもしなくてよく、真ん中の飽和も適度に抑える方向で進めました。結果は以下のようになります。

「M33:さんかく座銀河」
Image111_DBE_PCC_ASx2_PCC3_bright
  • 撮影日: L: 2021年11月2日23時51分-11月3日1時6分、11月6日0時58分-2時10分、R: 2021年11月5日23時43分-23時59分、G: 2021年11月6日0時1分-0時43分、B: 2021年11月6日2時21分-3時33分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 200、露光時間1分、64枚、R:11枚、G:24枚、B:58枚で総露光時間3時間1分dark: Gain 200、露光時間1分、L:88枚、flat: Gain 200、露光時間0.2秒(L)、0.5秒(RGB)、L:256枚、RGB各:128枚、flatdarkはLRGB共通: Gain 200、露光時間0.2秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

今回Hαは撮っていないので、俗にいう赤ポチはそれほど目立っていませんが、多少わかる範囲で既に出ています。あと、銀河の様子をシアンを目立たせる形で入れています。青ポチですかね。

SCA260ですが、はっきり言って非常に満足です。TSA-120と比べても、ここまであからさまに分解能が出るとは思っていませんでした。シンチレーションがいいかというと、間を空けた日での撮影なので特別いいというわけではなく、ごくごく普通の日だと思います。今のところ1分露光だと明らかに揺れていて、かなり妥協して画像を使っているので、もう少し改善する余地があるはずです。今回の撮影ではまだまだSCA260ポテンシャルを引き出せたとは全然言い難いです。それでもここまで出せるのなら、今後大いに期待できそうです。

おまけのAnnotationです。

Image111_DBE_PCC_ASx2_PCC3_bright_Annotated

広角だと縦横の線が歪むのですが、ここまで拡大するとほぼ直角になるようです。


TSA-120との比較

M33に関しては今年の10月と、かなり最近TSA-120で撮影しています。



というか、TSA-120での結果があったので直接比較できるかと思い、今回M33にしたというわけです。

その時の結果を同画角にして改めて示しておきます。
TSA120

今回よりもかなり派手ですね。これも嫌いではありませんが、細部を出したいこともあって今回はかなり控えめにしています。


揺れに対して

最後に、揺れに関して今後の方針を書いておきます。まだ変更になる可能性もあります。

指で赤道儀を弾いた時の様子を見ると、赤緯体の揺れはまだ許容範囲で、赤経体の揺れが目立ちます。よく揺れると言うことは共振周波数が低くなってしまっているということです。共振周波数は慣性モーメントで決まり、慣性モーメントは距離の2乗で効きます。

赤緯軸では鏡筒の前後の真ん中を中心に回るのでまだ慣性モーメントはそこまで大きくありませんが、赤経では鏡筒全体とウェイトも合わせて軸から離れているために、慣性モーメントはかなり大きくなっているので、共振周波数が低くなりよく揺れるのはある意味当たり前の結果です。

今一つ考えているのは、赤経軸から最も離れている鏡筒のトッププレートを外すこと。測ってみるとこれだけで900グラム以上あります。さらにガイド鏡も700グラム程度あり、トッププレートの上に置いていたため、赤経軸から離れています。軸から遠いものを合計1.6kgを外してしまえば、慣性モーメントとしてはかなり得することになります。

例えば、赤経軸から見て下部プレートと上部プレートの位置は距離にして3倍近くあります。仮に2.5倍だとしても、慣性モーメントで考えると上部プレート1枚外すことは下部プレート6枚外すことと同義です。実際にはウェイト位置も内側に来るので、その分も得するはずです。ガイド鏡の代わりはオフアキを使おうと思っているので、軽く、赤経軸からの距離は少し短くなり、有利になるはずです。

今回の画像に、さらにHαを撮り増しして足したいと思っているので、トッププレートを外してから同じ1分という露光時間で撮影して、どれだけ生き残るか比べれば、ある程度効果はわかるのではと思っています。


まとめ

今回のM33は、SCA260としての初作品になります。揺れにかなり悩まされましたが、結果には大満足です。TSA-120からここまで変わるとは、正直思っていませんでした。揺れに対しては、上にアイデアを挙げたようにまだ改善すると思います。赤道儀も欲しくなってきましたが、もう少し足掻いてみます。

SCA260を購入して1ヶ月、徐々にですが使えるようになってきました。また未処理画像も残っています。今回LRGBはなんとかなったので、今後はSAO撮影とかにも挑戦していきたいと思います。


ASI294MM Proで試したかった高解像度撮影です。対象はM57です。


とうとうモノクロ撮影に

実は今回が初のまともなモノクロセンサーを使った撮影になります。一応ASI290MMは持っていて、太陽とかはもちろん本当のモノクロ撮影なのですが、モノクロセンサーにフィルターというので最後のカラー化まで仕上げたのは今回が初めてです。

ASI294MMProを使いたかった理由の一つが、ピクセルサイズの小ささです。Bin1モードのピクセルサイズ2.3μmは、これまで持っていた最小のASI178MCの2.4μmよりも小さく、しかもモノクロなので単純にはさらに半分のピクセルサイズと同等。ASI294MC Proから見たらBin1モードとモノクロで一辺4分の1、面積にしたら16分の1のピクセルサイズと同等です。手持ちのASI290MMのピクセルサイズ2.9μmと比べてもまだ有利になりそうです。

その一方、今回はM57と小さい惑星上星雲なので、広視野はあまり得をしませんが、それでもASI290MMのセンサーサイズの1/2.8インチと比べると、一辺で約4倍、面積で約16倍(実際は13.9倍)です。これくらいあると比較的大きな天体まで狙えることになります。小さな天体はROIで撮影時にカットしてしまえばいいので、こちらは大は小を兼ねるになっています。

その代わりBin1モードはダイナミックレンジと感度は落ちるので、そこをどううまく回避していくか、適材適所で使う必要があります。


小さなM57を綺麗に出したい

実はM57ですが、随分以前から分解のベンチマークとも言える挑戦を続けています。今までの最高がVISACとASI178MCでの撮影で、もう2年ほど前のことになります。

 

ブログの記事にはしてませんが、その後もちょくちょく、2020年にはTSA120やVISAC、ASI178MCやASI290MM+RGBフィルターなどを色々組み合わせて撮影を続けてました。2021年の今年に入ってからも5月と6月にVISACとNeptune-CIIやASI294MM Pro+RGBフィルターで撮影していたのですが、いずれもシンチレーション が悪かったり、雲が途中から出てRGB全部撮れなかったりで、すべてボツになっていました。たとえ仕上げたとしても2年前のものを全く超えられそうになかったのです。

梅雨が明けてからしばらく、かなりシンチレーションがいい日が続いていて、これは分解能をためすまたとないチャンスです。鏡筒はVISAC。ただしやはりこの鏡筒はじゃじゃ馬の呼び声高く、星像がどうしても落ち着きません。


撮影

撮影の様子は7月17日の記事に書いてあります。重なるところもありますが、改めて書いておきます。

今回は初のモノクロ撮影ということで、RGBフィルターで試してみることにしました。もう何年も前にKYOEI Tokyoで特価で売っていたBarderのRGBフィルターをずっと持っていたのですが、やっと日の目を見ることができました。あと、ZWOの1.25インチフィルターが5枚入る電動ホイールもかなり前にKYOEI Tokyoの店舗で買ったものです。もう東京にしばらく行っていなくて最近はネットでの注文ばかりですが、たまにはやはり店舗で色々話ながら購入したくて、懐かしくなってしまいます。

IMG_2825

写真にはオフアキ用にASI178MCが付いていますが、これはまだ試していなくてとりあえず付けてあるだけです。

今回はL画像は撮影せずにRGBだけにしてみました。Lは全波長入ってくるので、この解像度だと色収差と大気収差が気になる可能性があるからです。



このように収差に関してもモノクロセンサーは有利になるはずです。これもASI294MM Proを試したかった理由の一つです。

今回は分解能狙いなので、露光時間10秒のラッキーイメージライクにしてみます。実際に撮影時の画像を何枚も見ていると、10秒露光でさえもいい時と悪い時が相当変わるので、シンチレーションの影響が効いているのでしょう。この中から比較的星像が小さくキリッとしているものを後で選ぶことになります。

これまでの結果から、短時間露光では星像が多少は小さくなること、その代わり長時間露光に比べて微光星の写りが悪くなり暗い星が写りにくくなることがわかっています。



なので今回は分解能は出ても、淡いところは長時間露光にかなわないため、M57のさらに周りの淡い部分や、近くにあるIC1296は難しいと思います。

露光時間はR、G、Bそれぞれ30分。その中からいいものを選ぶのでトータルでは1時間半を切ることになり、そこまで長い撮影とはならないです。それでも10秒と短いので各色180枚、トータル480枚となってそこそこの枚数と容量になります。その代わり、ASI294MM Proのフルサイズで撮影するのではなく、ROIで一辺を2分の1にしたので、画像サイズとしては4分の1になります。

撮影にテストで見てみると、Rはキリッと出ても、Gは結構ぼやける、Bはさらにぼてっとするようです。ピント位置のせいかと思い合わせ直したりもしましたが、劇的な改善はしなかったので、今回はRでピントを合わせて、GとBのピント位置はそのままいじらずに撮影しました。そもそもフィルターが同じ厚さなのでピント位置はそのままでいいのか、鏡筒に色収差が多少なりともあるはずなので、やはり合わせ直した方がいいのか、今後もう少し検証する必要があるかと思います。

IMG_2823


後日、 flatやdarkの撮影

撮影後、日を置いてflat、flatdark、darkの各フレームを撮影しました。

flatはフィルターがRGBとそれぞれ違うので、それぞれに128枚撮影しました。ただ、少し失敗してしまい、ゲインを220で撮影時と同じにして、露光時間を明るさによってRが20ms、GとBが50msとしたのですが、GとBの露光時間がflatdarkの露光時間と違ってしまい、PixInsightで最初flatdarkが当たらないというトラブルがありました。一応あらわにflatdarkを指定してやることでことなきを得ていますが、もしかしたらflatdarkも別個に撮った方がいいのかもしれません。

そんなこともありflatdarkはゲイン220、(気づかずに)20msで共通で128枚です。さらにですが、もしかしたらflatdarkの枚数が少なかったかもしれません。flatのトータルが384枚なので、せめて倍の256枚か、512枚の方が良かったかもです。

darkはlightと同じ設定、ゲイン220、露光時間10秒、温度-10度で256枚です。最初少しでも暗いところと思い、箱の中に突っ込んでおいたら熱くなったので、再度もう1セット取り直しました。256枚でも1時間弱なので、楽勝です。


初めてのRGB画像処理

RGBの画像処理も初めてです。実際には去年ASI290MMでM57を撮影した時に少しだけ試したのですが、その時はまだテスト撮影みたいなもので、なぜか色バランスが無茶苦茶になったなど仕上げる価値なしと判断しました。なので、まともなRGBでの画像処理は今回が初めてになります。

各lightフレームはPixInsightのBlinkで読み込んで、見た目でだめそうなものを弾きました。SubFrameSelectorもかけたのですが、ある程度は見た目と結果が一致するのですが、明らかに目で見てだめなのに、数値で見るとよく見えてしまうものなどがあったからです。でもこれからするWeighted Batch Preprocessing(WBPP)ですが、処理中に内部でSubFrameSelectorを呼び出してウェイトをつけて判断しているみたいです。もしかしたらきちんと注意してみてやらないとダメなのかもしれません。

実際のWeighted Batch Preprocessing(WBPP)ですが、RGBをいっぺんに放り込んでも処理してくれるものなのでしょうか?まあわからなかったので最初はR、G、Bをそれぞれ処理することにしました。


スタック時の位置決めがうまくいかない!?

まず困ったのが、しょっぱなのRの処理の時から位置合わせがうまくいきません。3枚くらいしか位置合わせできないとエラーを吐かれました。

原因はおそらく星の数が少ないことと、星像が丸ではないことです。過去のVISACの撮影の時も同様なことがありました。今後もこのままだと使い物にならないので、別途StarAlingmentを走らせて、回避する方法を探りました。

この問題2つに分かれます。

1. まずは星を星として認識にない場合。
IMG_3066
のようなエラーが出ます。この場合はStarAlingmentの中の「Log(sensitivity)」を-2.00とかまで下げます。もしくは「Peak response」を0.9とか1.0まで上げると効果的です。

2. 次にうまく位置が認識されない場合は
IMG_3069
のようなエラーが出ます。ここは「Star Matching」の「RANSAC tolerance」の歪許容量を上げることが効果的です。

でも難しいのはここからで、位置が認識されないエラーがでる場合でも、どうも星自身が認識されていないことが原因の場合がある時です。こんな時は「Star Detection」の「Noise reduction」が劇的に効くことがあります。ここを1または2くらいまであげてください。また、「Detection scale」が効くこともあります。こうやって考えると、位置決めの時も星がきちんと星として認識されているかどうかが重要であるのがわかります。むしろ、位置決めがうまくいかないと最初から出た場合、RANSAC toleranceをいじるよりもNoise reductionを増やした方が解決になることも多いです。まずはこちらを試すのがいいのではと思います。

その他のパラメータは色々試しましたが、ほとんど効かないか、効いてもごく僅かでした。

これらのStarAlignmentでの経験をWBPPに反映させます。いじるのは「Lights」タブの「Image Registration」です。StarAlignmentとよく似たパラメータがありますが、StarAlingmentほど細かくありません。とりあえずは一番効果のあるNoise reductionを増やします。これで一応Rは全て位置合わせができてスタックまで完了しました。

ところがです、G(緑)がまだダメなんですよね。Gでは結局WBPPのNoise reductionを2、Detection scaleを6、Log(sensitivity)を-2.00、Peak responseを0.9までして、やっと全枚数スタックされました。

さらにところがです、B(青)はWBPPでは全然ダメなんです。どうパラメータをいじっても数枚しかスタックされませんでした。ところが、StarAlignmentではRANSAC toleranceをあげることができ、そうするとうまく位置決めができます。今回は結局WBPPでは諦めました。WBPPでどうしてもダメでもStarAlignmentの方がもう少し足掻くことができるということは覚えておいてもいいのかもしれません。


縞ノイズ(縮緬ノイズ)が出てる!? 

出来上がったR画像を見てやると、縦方向に縞ノイズが入っています。縮緬ノイズとも言われているやつです。

integration

よくよく調べると、WBPPの振る舞いが少し変わったようで、そのままだとbiasが使われない設定になっていました。理由はdark frameにflat frameにもbiasが含まれてるので撮影したbias frameは使わなくてもいいということのようです。

私はこれが気に入らなくて、master flatを作る際にbiasを使うようにしました。これはイコールflatdarkを使わないということになります。これが問題だったようです。以前flat補正をする際に縞ノイズが乗っかるのはフラットが何かしらで汚くなる(その時は撮影時間が短くてノイズが載るという理由だった)というのを示したことがありますが、flat frameのダーク補正をしないと、残ったダークノイズが縞ノイズを作るということが今回改めて示されました。こたろうさんが以前この件について言及されていたと思います。

というわけで、biasの代わりにflatdarkを使うと次の写真のように縞ノイズは無くなりました。


RGBの合成前の画像

RGB合成前の画像を示しておきます。

まずはR。かなり鋭い星像となっています。縮緬ノイズも消えているのがわかります。
masterLight_BIN-1_EXPOSURE-10.00s_FILTER-Red_Mono

Greenは以下のようになりますが、Rに比べると明らかに暗い星が少なく、星像も甘いです。
masterLight_BIN-1_EXPOSURE-10.00s_FILTER-Green_Mono

Bはさらにその傾向が強く、星像もかなり大きくなっていて、明らかに星の数も少ないです。
integration

このような傾向は普通のことなのでしょうか?それともピントがずれているのでしょうか?でもテストで画面を見ていた限り、ピントをどう合わせてもRがいつも鋭くてBは散々でした。

また、これらのズレは画像処理に影響がないのでしょうか?


Linear Pattern Subtraction

さて、上の画像をみると、横縞が結構多く残っているので、WBPPの新機能のLinear Pattern Subtractionを試しました。結果だけ言うと、あまりうまくいきませんでした。いくつかの横縞は目だたなくなるのですが、下のようによりハッキリした横縞となぜか縦縞が余分に加えられてしまうようです。

masterLight_BIN-1_EXPOSURE-10.00s_FILTER-Red_Mono_c3

今回はまだあまり試していないですが、一旦ここではLinear Pattern Subtractionを使わないで、次に進みます。


RGB合成とBanding noise除去

これでやっとR,G,Bのスタックしたものが出来上がりました。ただ、これらをそのままChannelCombinationなのでRGB合成しても星の位置がずれてしまいます。そのため、StarAlignmentで改めてこの3枚を位置合わせしました。これでやっとカラー画像が出来上がりました。

Image04_clipped

でもR画像で見たときのように、やはり横の線が気になります。なので今回はRGB合成後、ScriptのUtilitiesからCanonBabdingReductionを使いました。これはかなりよかったです。いくつかパラメータを試しましたが、Active Previewはほとんど役に立ちませんでした。値を変えて何度か試した方が良さそうです。デフォルトの1でもほとんど大丈夫でした。0.2だとノイズが消しきれません。また、2だとノイズが加えられるような感じです。0.5と比べると1の場合は少し黒い部分が残っている感じがしました。結局最後0.7としました。要するに大きすぎても小さすぎてもダメなので、いくつか試すといいということです。結果は以下のようになります。

Image04_clipped_banding

かなり良くなりました。


ここからはカラーでの画像処理

ここまで来れば、あとはこれまでのカラーの画像処理と同じです。

まずカラーバランスが滅茶苦茶なので、念のためDBEで少しカブリをとってからPCCでカラーバランスを整えます。PCCで恒星の色はそこそこまともになりました。ただ、鋭さがR>G>Bの順でかなり差があるので、鋭いRとボケたBの差で、赤が強いところは赤ハロが、青が広がってしまっているところは青ハロがあるようにも見えます。逆に言えば恒星の色がよく出ているようにも見えます。

その一方、PCCをかけてもどうしても背景が青く見えます。これはヒストグラムを見て理由がわかりました。背景のノイズが青が一番多いのです。おそらくRGBの感度に差があり、Rが一番感度がいいためノイズが少なく、次がG、Bは感度が低いためノイズが大きくなるのかなと推測していますが、実際のところはよくわかりません。もう少し検証が必要かと思います。

いずれにせよ今回はPhotoshopに持っていった際に、背景のRGBのヒストグラムを合わせる事でカラーバランスを整えることにします。


星像に苦労

あとは、ArcsineStretchなどでストレッチしてPhotoshopに渡すのですが、よく見ると星像がガタガタです。

特に短時間露光の場合に多いのですが、VISACの星像にはいつも苦労します。今回はなぜか4方向に尖って見えます。しかもスパイダーの方向ではなくて、なぜか45度傾いた方向です。MophologicalTransformationで少し整えますが、星マスクが必要です。

この星マスクも苦労しました。ストレッチ後、StarNetで恒星と背景を分離しようとしても、星の3割ほどしか分離できません。分離できない理由は、星像が汚い、中心のピークが出ていない、明るすぎる、暗すぎるなどです。きちんと丸になっていて、中心がサチり気味の方がうまく分離できるようです。そのため、今回は
  1. ストレッチ前のカラー画像をL画像にしてから
  2. いったんSTFでオートストレッチして
  3. HistgramTansformationで適用、
  4. その後ExpornentialTransformationでPIPのOrderを1.5にして適用、
  5. STFで真ん中の三角をを右に移動して暗くする
とい過程を取りました。4、5は2回繰り返しました。これにStarNetをかけることでM57の中にある以外の恒星は全て救い上げることができました。M57の内部にあるいくつかの恒星は分離できませんでしたが、こちらは別途RangeSelectionでうまく分離します。

こうしてできた星マスクを適用して、MophologicalTransformationで十字型にDilationで伸ばし、X字型にErosionで縮めることで円に近づけていきます。これでやっとPhotoshopに引き渡しです。


Photoshopでの仕上げと結果

今回はPhotoshopではほとんどたいしたことはしていません。ノイズ処理もなしです。ノイズ処理をすると背景がボテボテになり、星像の鋭さと合わなくなってしまうからです。

Image04_clipped_banding_DBE_PCC_AS_HT2_MT_PCC_ok
  • 撮影日: 2021年日7月17日1時16分-2時51分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Vixen VC200L
  • フィルター: Bardar RGBP
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO AIR294MM Pro -10℃
  • ガイド: なし
  • Light: SharpCap、Gain220、 露光時間: 10秒 x 461枚(R:163、G129、B169 x 19枚) = 1時間16分50秒
  • Dark: Gain220、10秒 x 256枚
  • Flat: Gain220、R:20ms x 128枚、G:50ms x 128枚、B:50ms x 128枚
  • Flat Dark: 20ms x 128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

2年前のVISACとASI178MCで撮ったものと比べます。左が以前のもの、右が今回のものです。

comp

今回は自己ベストかと思ったのですが、分解能だけ見たらもしかしたら以前の方がいいかもしれません。いやこれは画像処理のやりかたのせいで、見栄えをよくしようとした前の方が一見よく見えているだけかも。

もし以前の方がいいというなら、機材は今回の方が圧倒的に有利なので、これは完全にシンチレーション勝負になると思います。2年前の時はよほどシンチレーションがよかったのを覚えています。その他星の色、星雲の自然さ、背景の素直さなどは今回の方が格段に上でしょうか。

そういえば、この撮影の後になってVISACの光軸調整をしたのでした。その結果は反映されてないので、今一度シンチレーション のいい日を狙うとかでしょうか。


まとめ

初のRGBフィルターでの撮影と画像処理。いろんな新しいことがあってブログ記事が長くなってしまいまた。次回はもう少し早く処理できそうです。

分解能に関しては、やっぱり最後はシンチレーション なのでしょうか。リアルタイムで露光時間を1秒以下にして見てても、明らかに揺らいでいて、10秒ではこれくらいになってしまいます。次は揺れない日を狙うことになるのかと思います。

どうやらM57はAOOでもそこそこ色が出るみたいなので、次はナローのもしかしたら逆に長時間露光で、淡いところに挑戦するかもしれません。


おまけ

もう一つ、PixInsightの細かいテクです。projectファイルを保存して、ファイルのフォルダ名を変えたり、ファイルの場所を変えたりした時に、WBPPのインスタンスを右クリックして「Excecute in the global context」から再度開こうとすると、以下のようなエラーが出ることがあります。

IMG_2922

この場合、WBPのインスタンスををダブルクリックして出てきたMD5 checksumを消してやって、再びインスタンスをPI内で保存。それを右クリックのExcecute in the global contextで開くと普通に開けるようになります。

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