ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:QBP

ゴールデンウィークの最後の方、5月3日の夜中(実際には0時を回っているので5月4日)、Askar  FMA135で白鳥座の辺りを撮影してみました。 QBPをつけての自宅の庭撮りです。


FMA135の一連のテスト

この日は本当はM57を狙おうと思っていて、VISACで色々やっていたのですが、シーイングがあまりに悪くて断念。その時点で午前2時過ぎです。 貴重な晴れの日なので、あと少しなにかできないかと思いつつ、ちょうど白鳥座がもう上がってきているので、FMA135を試してみようと考えました。

FMA135は先日星像がどの程度なのか見るために、ファーストライトで試し撮りています。


APS-Cだとほぼ完璧に点像でしたが、フルサイズだと周辺減光もあり星像も4方向に流れてしまいます。でも星像も周辺減光も、そこまで酷いことはなかったので、やはりここはフルサイズのEOS 6Dでの撮影としました。

その後、FMA135で電視観望も試していますので、興味がある方はこちらもご覧ください。


今回の撮影のターゲットは白鳥座のデネブからサドルにかけて。135mmの焦点距離は結構な広角になるので、広い範囲でHα領域が広がる白鳥座付近は絶好のターゲットです。


セットアップ

撮影の準備でフィルターをどうしようか考えているときに、面白いことに気づきました。FMA135はアメリカンサイズのフィルターなら先端に直接取り付けることができるのです。FMA135には金属のキャップが付いているのですが、これが2段の蓋のような変な形をしているのです。試しに出っ張っている蓋を回して外し、その代わりにアメリカンサイズのフィルターをはめてみると、ぴったりハマります。今回はHα領域なので、QBP(Quad BandPass)フィルターのアメリカンサイズを取り付けることにしました。

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赤道儀からVISACを外し、6Dをそのまま載せます。ところが、いくつか問題が出てきました。カメラを赤道儀に縦長に固定したかったのですが、BackYardEOSを使うために6DにUSBケーブルを繋ぐと、コネクタが どうしても下のクランプに当たってしまうのです。結局カメラの固定はクランプの一部だけを利用してもう仮止め状態です。ちょっとぐらぐらしますが、風があまり吹いてないのでなんとかなるでしょう。

こんなことをしていたら、もう午前3時前。このときかなり焦っていてピントを合わせ損いました。画角を決めて「から」ピントをデネブで合わせてしまったのです。デネブが画面中央にあればよかったのですが、結構端の方にあります。星像が全面で点像ならそれでもよかったのですが、フルサイズだと収差で星が流れてしまうために、そこでピントを合わせたら当然中央ではズレてしまいます。デネブを中央に持ってきて、ピントを合わせてから画角を決めなければならなかったのです。このことは撮影後のチェッックで気づいたので、もう諦めてそのまま仕上げるしかありませんでした。

ISO3200で3分露光に設定し、撮影を始めたのは午前3時。薄明が4時前なので、もう1時間もありません。撮影を始めてから家の中で少しうとうとしてしまい、目が覚めた午前4時過ぎに外に出たらもう明るくなりはじめていました。そのまま片付けて、4時20分にはもうベッドの中。自宅撮影はここが楽なところです。

後で見たらやはり撮影途中から明るくなっていて、実際に使えたのは19枚でトータル57分、1時間に満たないくらいでした。撮って出しJPEGを載せておきます。周辺減光の様子とかが分かるかと思います。
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フラットは後日昼間の障子越しの光を写して64枚撮影、フラットダークはそのままキャップを閉じて64枚撮影、ダークは以前撮影したものを9枚だけ使い回しです。ただしダークはライトフレームと同じ180秒ではなく90秒のものを使い、PIで最適化オプションをつけています。6Dのダークノイズはあまり変な振る舞いをしないので、多分大丈夫でしょう。

ちょっと話がそれますが、ここら辺がいまだに6Dをメインで使い続けている理由です。とにかくいろんな面において素直だと思います。しかもフルサイズで、素子サイズが6.3μmもあり高感度で、かつ天体改造済みで十数万と安価。唯一の不満は冷却でないことですが、手軽さを考えたら冷却なしで全然構いません。

さてこれで画像処理を進めます。スタックとストレッチ処理はPixInsight (PI)を主に使いますが、露光時間が短いのでどうしても荒れてしまいます。

途中、一つ大きな欠点が見つかりました。日の丸よりもう少し大きな位の明るさの段差が見えるのです。
masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180.1

わかりますでしょうか?

この画像は、フラットやダークの補正後、スタックした直後にオートストレッチしただけのものです。このリング、多分リアルだと思いますがいまいち確証がありません。というのも、右側は中心が暗く、外が明るいのに、左側は外側が暗く、中が明るいのです。しかもここで見えるなら、フラット画像とか出ていてもおかしくありませんが、フラット画像をABEなどで平らにしてよく見てもそのような段差は見えません。これがFMA135本体のせいなのか、QBPフィルターを取り付けたせいなのか、もしくは処理の過程で出てきたのかは不明なので、今後確認する必要があります。いずれにせよ、この程度なら画像処理でなんとかなるレベルです。

あと、センサー面のゴミがやっぱりまだ残っています。前回クリーニングしたのですが、それとは別の位置にさらにゴミがついたようです。しかも撮影中に移動しています。なんとかしなくてはダメですね。

気づいたことはこれくらいです。PIでストレッチまで終わっているので、あとはいつものようにPhotoshopに渡します。結果は以下のようになりました。

FMA135_2
  • 撮影日: 2021年日5月4日2時35分-3時48分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒: FMA135
  • フィルター: QBP
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  Canon EOS 6D HKIR改造
  • ガイド: なし
  • 撮影: BackYard EOS, ISO3200, 露光時間: 180秒 x 19枚 = 57分、dark: ISO3200, 90秒x9枚、flat: ISO3200, 1/1250秒x64枚、flatdark: ISO3200, 1/1250秒x64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

まあ、なんとか見えるくらいにはなりましたでしょうか。4隅の流れは確かにありますが、周辺減光は画像処理で気にならないくらいにはなります。今回ピントの合わせ方がまずかったので、中心より少し上くらいでピントがでしまっています。それを除けば、拡大してみない限りフルサイズでも十分に絵になると思います。

135mmの短焦点が実売4万でここまで実用なら、十分に面白いと思います。忘れてるかもしれませんが、これ口径わずか3cmの鏡筒です。焦点距離が短いためにF4.5とそこまで暗くはないので、撮影しても淡い天体も十分に出るのかと思います。今回の出来上がりを見ると、さすがにもう少し露光時間が欲しいところです。


まとめ

FMA135で写したデネブ からサドルにかけて、私の腕が未熟なために色々見苦しいところがありましたが、それらも含めて今一度リベンジしたいと思っています。触ってみるとわかりますが、かなり楽しい鏡筒です。色々試したくなってしまいます。

次回フィルターをつけるかどうか迷っていますが、もしQBPかCBPをつけるとしたら、手持ちの大きいM48サイズのQBPかCBPにするつもりです。Twitter上の情報ですが、hiroooo000さんによると、M36からM48に変換する変換するリングがあれば、M48サイズのフィルターを取り付けられるみたいです。



さらに、その後ブラックパンダさんから、専用のリングを設計中との報告が!


まだ時間はかかるみたいですが、なんかFMA135盛り上がるような気がします。

ちょうど新月期ですが、天気がいまいちっぽいです。できればアンタレス 付近を狙いたいのですが、今晩晴れてくれるかどうか?


すごい雪

もう天気があまりに悪くて、全くネタがありません。たまに昼間晴れるときや、たまに雲間から星が見える時もありますが、長くは続かず、撮影も電視観望も厳しいような状況です。それにまして雪が酷すぎます。今日あたりやっと少し溶けてきましたが、庭に望遠鏡を出すのを躊躇してしまうような雪の量でした。先週末はずっと降り続いていました。自宅周りでの積雪は1mを優に超えました。

IMG_1430


日曜、久しぶりに青空を見ました。太陽望遠鏡を出そうとも思いましたが、庭も犬走りも雪で埋まって断念。それよりも車の雪かきの方が優先です。

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際画像処理

何もネタがないので、昔の画像の再処理をしてみました。約2年前に撮影したIC443くらげ星雲です。自宅庭撮りの一環で、QBPを手に入れて結構すぐのものです。FS-60QとEOS 6Dで、ISO3200で300秒露光、約2時間半の露光時間になります。

これがBeforeで
light_DBE1_PCC_stretched_sat_ps_denose_ps2a

これがAfter

masterLight_cut_ABE_PCC_AS_MS_STF_star_Saturation2_cut


QBPを手に入れて初期の頃の上の画像と、いろいろクセなど分かった上での画像処理を施した下の画像を比較すると、随分変わっていることがわかります。細部が出ているのはもちろん、恒星の色の再現がかなりマシになりました。恒星の肥大も防げています。Hαも赤一辺倒から、青成分、緑成分も入り階調豊かになっています。


相違点

画像処理において前回と違うところがいくつかあります。
  • 同温度のダークフレームのストックがあったので枚数を増やしたこと。
  • バイアスを枚数の多いものに変えたこと。
  • PixInsightでの処理もBPPからWBPPになったこと。
などありますが、ここら辺はあまり影響ないです。大きく違うところの一つは、ストレッチ方法が柔軟になったこと。以前はおそらくArcsinhStretchで恒星が真っ赤になって、STFだけで済ませてたのが、今回は
  • ArcsinhStretchとMaskedStretchを併用したこと、その結果恒星の色がかなり豊かになっています。
多分一番影響が大きかったのがStarNetの存在です。
  • StarNetで背景と恒星部分に分けることで、背景を思う存分いじることができます。
背景の炙り出しに集中できる状態にして、どこまで炙り出せるか限界を知ることができます。いちばんの問題は、どうやって恒星を合わせるか。Photoshopで背景と恒星を合成できますが、やはりどうしても不自然さが残ってしまいます。なので最近は恒星部分をマスクとして保存し、StarNetで分ける前の画像にPhotoshop上で適用しています。それでも星マスクをうまく適用しないと、不自然さが出てしまうので大変さは残ります。Before画像の2年前はマスクを使ったりしていなかったので、背景を炙り出し切ることができていませんでしたし、逆に恒星は肥大化してしまっています。


QBPの色について

恒星に関してですが、QBPの欠点でオレンジの恒星はやはり出にくいのは補正し切れなくて、赤い星のようになってしまっています。これはUV/IRカットフィルターを併用すると解決するかもしれません。もしくはCBPだと星のオレンジ色は出ているので、再度撮影からするときはQBPよりもCBPの方がより自然になるかもしれません。

あと、星雲の色に関しての処理も初期のQBPの時の扱いから大きく変わっています。QBPはその名の通り4つの輝線スペクトルを取り出すようなフィルターのため、カラーバランスがどうしても崩れてしまいます。PCCで恒星の色は合わせますが、そのことが星雲部の色を合わせている保証は何もないはずです。しかも、そもそも恒星の色も限られた波長から、既存のデータベースとできるだけ一致するように合わせたというだけなので、一見合っているように見えても元のスペクトルが全然違い、正しいとは限りません。とりあえずは見た目で合っている恒星の色のバランスは崩さないように、星雲の方の色バランスは結構ずらしています。具体的には
  • トーンカーブで星雲の青と緑の成分を増やすことで、階調よく見えるようにしている。正しい色はわからないので、これは自分の好みに。
と言ったところでしょうか。この方法が正しいかどうかは全くわかりませんが、少なくとも赤一辺倒の、のっぺりした色よりは(見た目だけでも)良くなるのではと思っています。


ノイズ

あと、ノイズに関しはそもそも露光時間がそこまで長いわけではないので、素材としてまだノイジーなのは否めません。
  • 今回DeNoiseを使っているので、ノイズに関してはかなり軽減できています。
それでも拡大すると分かる通り背景のノイズが取り切れてなくて、多少星雲部も不自然なところが残っています。DeNoiseは細かいノイズは得意なのですが、大きなノイズがどうも苦手みたいです。もやもやのカラーノイズのようなものがどうして残ってしまいます。Nik CollectionのDfine2を掛けてからDeNoiseを施すと比較的カラーノイズが出にくくなることもあるのですが、今回は細部が出にくくなってしまったのでDfine2は使ってません。


今後の課題

この背景のモコモコカラーノイズは課題の一つです。露光時間を伸ばすのが一番の解だと思うのですが、露光時間が稼げない時もあり、画像処理でもっとうまくなんとかならないかといつも思っています。

いまだにPixInsightでのノイズ除去や、細部出しの処理を実戦投入できていません。かと言って、使ったことがないわけではなく、毎回いろんな方法を試しています。でも今のところPhotoshopとDeNoiseなどのツールとの組み合わせに結果として勝つことができていないような気がして、結局元に戻ってやり直してしまっています。DeNoiseを使うのは少し悔しい気もするのですが、今のところまだ他の手法を確立し切れていません。


 

昨晩とても晴れていたので、SharpCapを使った一眼レフカメラでの電視観望テストの第2段です。


SharpCap3.3β接続確認状況

まずはこれまで私が聞いた可動情報を書いておきます。情報は全てTwitterや本ブログのコメント、個別のやりとりなどです。

(11月21日午後23時55分現在)

Canon

  • EOS 6D (Sam): 動作確認済、LiveStack可能、ミラーアップモードでは動作せず
  • EOS 6D (RAINYさん): 動作確認済、ASCOMドライバーでのLive ViewオプションでCapture Areaがデフォルトでは960X640なることを確認
  • EOS X7i (ぺんぱるさん): 動作確認済、LiveStack可能
  • EOS 6D Mark II (steorraさん): 動作確認済、LiveStack可能
  • EOS R (steorraさん): 動作確認済、LiveStack可能、ミラーレスで初確認
  • EOS Ra (steorraさん): さすがに試すのを躊躇
  • EOS X2 (ソルトさん): 接続してミラーアップはするが、シャッター切れずエラー
  • EOS RP (リュウさん): 動作確認済
  • EOS 7D (kumbenさん): 動作確認済
  • EOS 60D (Sam): 動作確認済、LiveStack可能、ミラーアップモードでは動作せず
  • EOS X5 (Sam): 動作確認済、LiveStack可能、ミラーアップモードでは動作せず
  • EOS M  (薜さん): 動作せず
  • 5D mark II (donchanさん): 動作確認済、LiveStack可能
  • EOS X7 (donchanさん): 動作確認済、LiveStack可能
  • EOS  kiss M  (MASAさん): 動作せず

Nikon
  • D750 (智さん): 動作確認、ミラーアップモードでは動作せず
  • D5000 (あぷらなーとさん): ニコンレガシー使用、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能
  • D810 (あぷらなーとさん): 「ニコン」使用、一度本体動作しなくなった、復帰後に動作確認済、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能、重い
  • D810a (あぷらなーとさん): さすがに試すのを躊躇
  • D5300 (ソルトさん): 動作せず
  • D50 (智さん): 動作せず
  • D7000 (あぷらなーとさん):  ニコンレガシー使用、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能
  • CooLPix B700 (ソルトさん): 動作せず
  • D3300 (あぷらなーとさん):  ニコンレガシー使用、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能(SDカード必須)
  • D3100 (あぷらなーとさん):  ニコンレガシー使用、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能(SDカード未確認)
  • Z6 (OSAさん): 動作確認済、LiveStack可能、サイレント撮影モード(シャッター動作による振動とシャッター音を出さずに撮影できる)は動かなかった
  • D3 (あぷらなーとさん): ニコンレガシー使用、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能
  • D300 (あぷらなーとさん): ニコンレガシー使用、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能
  • D90 (あぷらなーとさん): ニコンレガシー使用、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能
  • D610 (あぷらなーとさん): 「ニコン」使用、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能
  • D810a (あぷらなーとさん): 「ニコン」使用、FITS書き出し・ライブビュー・ライブスタック・ROIが可能、重い

PENTAX
  • K-30 (ソルトさん): 動作確認済
  • K-S2 (ソルトさん): 動作せず
  • K-50 (ソルトさん): 動作確認済
  • KP (薜さん): 動作せず
  • ist D (ソルトさん): 動作確認済
  • K100D (ソルトさん): 動作確認済
  • K-70 (Shinjiさん): 動作確認済、LiveStack可能
  • K-01 (ソルトさん): 動作確認済
  • Pentax K-5IIs (donchanさん) 動作せず
  • Pentax Q-S1 (donchanさん): 動作せず 

SONY
  • α7S or α7SII?(HUQさん): 動作せず
  • yα6000(amayama_54): 動作確認済、LiveStack可能

もし上記リストの訂正や、漏れている方で載せておきたい方がいましたら、Twitterかコメントに書いておいてください。上のリストをアップデートしておきます。また公開したくないという方がいましたら、TwitterのDMかコメントに書いてください。後でコメント自身も消しておきます。


さあ、6D電視観望の2回目のテストだ!

一昨晩は台風のせいか風も強かったのですが、昨晩は晴れて、風が吹いた後のこともあり透明度がそこそこ良かったです。でも21時半頃から月が出るので、長時間撮影も気が引けます。なので、まずは21時半まで少し暗いところに行って天の川撮影。これはまた記事にします。結局22時過ぎに自宅に戻って、眼視、惑星、電視観望と選択肢がありましたが、この日はやっぱりまだホットな一眼レフ電視観望です。

今回の目的はとにかく実践で使ってみること。できる限りいろんなところに向けて、これくらいまで見え、これくらいの使用にまで耐えうるとかいうことを示したいと思います。

前回のテストと少し変更したところがあります。まずはレンズですが、前回はNikonの135mm F2.8でしたが、今回はPENTAX 6x7の中判レンズの165mm F2.8です。理由は、周辺減光が顕著で、しかも色によって反応が多少違うようで、結果四隅に行くに従ってひどくなるカブリのようになってしまい、炙り出しが制限されるからです。フラット補正をリアルタイムでやってもいいのですが、いまだにうまく行ったことがなくて、今回も躊躇してしまいました。

もう一つの変更点は、今回Stick PCを使ったことです。前回はSurface PCなので、そこそこ速いですが少し大きいです。普段撮影用に使うStick PCが使えれば、さらにコンパクトにできます。


準備とトラブル

さて、まずは前回の状態の復帰です。機材はシンプルでポン置きでいいので、楽なもんです。レンズを水平にそこそこ北向きになるようにセットして、AZ-GTiでアラインメントを始めます。広角なので1スターアラインメントでもう十分です。計算によると3.65°x2.45°だそうです。これくらいの精度で最初置くだけでターゲットが視野に入ってくるので、まず取りこぼすことがありません。さすがフルサイズセンサーです。

すぐに網状星雲まで入って、画像が取り込めるようになったので、一つ新しいことを試しました。前回の一番大きな問題が、LiveViewモードの間シャッターをずっと「カシャン、カシャン」と切り続けること。6D本体のモニターをオンにすることでシャッターを開けっぱなしにしてかどうできないかです。

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一枚撮りではリモートでカラーバランスを調整できないです。
必要なら本体の方で色を合わせる必要があります。

まずSharpCapのStillモードで撮影開始してないときに、カメラ本体のモニター開始ボタンを押したらシャッターが開いて、SharpCapも落ちたりしないので、このまま行けるか!と期待しました。さらにSharpCapでLiveViewモードにして撮影開始しても音も鳴らずOKかと一瞬思いました。ところが、一枚撮影が終わったらわざわざシャッターを一度閉じて!?またすぐ開いて次の撮影にいくのです。結局各枚各枚の撮影終了時に必ずシャッターを閉じるという機能が働くらしくて、モニターオフにしている時と同じことでした。

さて、次にLiveViewへの移行です。途中SharpCapが落ちることが何度かありました。しかも一度落ちると、SharpCapを立ち上げ直してもASCMOの設定画面に行ってしまい、その後それを繰り返しカメラとの接続ができなくなってしまいました。SharpCapの立ち上げでも、カメラ本体の再起動でも解決しなくて、しばらくはPCの再起動で解決していたのですが、途中からタスクマネージャーで見てみるとSharpCapのゴミプロセスが残っていて、それを消すと再度SharpCapが問題なく立ち上がることに気づきました。

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こんなエラーが出て、これ以降接続できなくなりました。
でも実は反応がものすごく遅くなってるだけで、
分単位で待つと反応したりする時もあります。
SharpCapのゴミプロセスが残っているために起こる現象です。 

何度かやっているうちに、LiveStackに行こうとすると必ずSharpCapが落ちることに気づきました。前回とSharpCapのバージョンが違うのではとかも疑ったのですが、それも同じ。違うのはPCだけだということに気付いて、Stick PCから前回のSurface PCに戻しました。すると全く問題なくLiveStackに移行します。というより改めてSurfaceに戻ると、いかにStick PCでのSharpCapの反応が遅かったかに気づきました。少なくとも3.2の普通のCMOSカメラを繋いでいる時まではそんなことは気にならなかったので、今の3.3βと6Dは相当重いことになります。CPUが非力なためなのか、もしくはUSBの接続が遅い可能性もあります。でもUSB2.0って流石に転送速度に差が出るとは思えないので、やはりCPUの違いかなと思ってます。


充実の電視観望フルツアー

さて、これ以降は極めて順調。シャッター回数を節約したいので、15秒露光にしました。ISOは6400です。回った順番に示していきます。

状況はというと、月齢21日の半月以上の大きい月が出ていて、富山の中心の街から少し離れた住宅地です。普通なら決して星雲を見るようないい状況ではないです。そのため、QBPを入れてます。

  • 網状星雲です。赤と緑の色の違いもはっきり見えてます。
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LiveStackになると色バランスをリモートで調整することができるようになります。

  • 小さなM27亜鈴状星雲
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左端にかわいいM27が見えてます(笑)。
面倒だったので真ん中に持ってくのをサボりました。
この前にM57を見ましたが、流石に小さすぎました。
これくらいの大きさの天体だとレンズの焦点距離を伸ばす必要があります。


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拡大するともう少し形もわかりますが、恒星のハロが目立ちます。
レンズのせいです。
赤外起因だとしたらもしかしたらCBPにすると消えるかも。

  • M31アンドロメダ銀河、QBPは銀が苦手かもと思ってましたが、意外にいいかも
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構造も少しわかります。


  • らせん星雲
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  • 北アメリカ星雲一帯、ここまではっきり見えると迫力あります
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  • 白鳥座のサドル付近
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左下に小さく三日月星雲も見えます。

  • M33さんかく座銀河
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かろうじて腕らしきものが見えるくらいでしょうか。


  • カリフォルニア星雲
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月が近くにあるので、かなりカブってます。それでもこれくらい見えました。

  • ハート星雲と胎児星雲
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ここまで見えるとは。
でもかなり炙り出してるので周辺減光が目立ちます。

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でもセンサーの解像度はあるので、
多少拡大してしまえば周辺減光も気にならなくなってきます。

  • エンゼルフィシュ星雲?
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ここらへんはもうネタです。
まだ光度が低いのでほとんど見えません。
かろうじて右上を向く頭がわかるか?

  • のぼり掛けのM42オリオン大星雲と馬頭星雲、バーナードループ?
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これもネタです。黒い影は木の葉っぱです。
左端のカブリの中にバーナードループが淡く見えてます。
昇り立てで高度が低いのでこれくらい。
冬に向かって持って見やすくなるはずです。


M45プレアデス星団も導入したのですが、月が真横にあり、流石にダメでした。


まとめ

午前0時20分くらいから2時くらいまでの1時間40分。夏から冬までの星雲と銀河、もうフルコースです。ここまで見えれば大満足です。

一言で言うと、さすが撮影でも十分な実績がある6Dです。電視観望でも遺憾無く実力を発揮しています。センサーのピクセルサイズがASI294MC Proが4.6μm、6Dが6.3μmなので、一辺で1.4倍くらい大きいのです。1ピクセルの面積が大きければより多くの光子を取り込めるので、根本的に有利です。

かつ同じ焦点距離ならより広い面積を見ることができます。逆に同じ面積を見るならより焦点距離の長いレンズを使うことができるので、より暗い恒星を見ることができるはずです。実際に使ってみての感想は、確実にASI294MC Proよりも迫力があるということです。

その一方、シャッター回数の制限から一枚一枚の露光時間を長くせざるを得ないので、動きは少なくリアルタイム性には欠けます。ただ、移動する時は星の軌跡は写るので、それはみている人にとっては動きを感じるところで、全く動きがないというわけではないです。

さて、最後の画像の記録を見たら2時間近くで365回のシャッターを切っていました。15秒で一回なので、連続なら1分で4枚、1時間で240枚計算です。途中LiveViewモードからStillモードにしたりもしてたので、数的にはまあこんなもんでしょう。メカニカルシャッターの寿命が10万回だとすると、300回位観望回避r区と壊れる計算です。実際タイムラプスでは平気でこれくらいのシャッター回数になるので、15秒露光でのシャッター回数ならまあ許容範囲でしょうか。


今後やりたいこと

まだまだ試すべきことがたくさんあります。ソフト自身はアップデートを待つとして、手持ちでEOS X5があるので、これで電視観望できるかどうか。天体改造なしなので、赤は出にくいはずです。

X5の中古の値段が1万円台中くらいでしょうか。キットレンズ付きで2万ちょいです。これで本格的な電視観望が簡単にできるなら、裾野が広がりそうです。

あと、SharpCapからのプレートソルブを試してみたいです。これで導入が簡単になるかも。うまくいったらAZ-GTiなしで、StarSense ExplorerみたいなことがPCを使って実現しないかと思っています。そうするとハードは三脚と雲台とカメラとレンズ(とPC)だけで、ほぼ一般的な一眼レフカメラセットになるので、さらに敷居が下がるかもしれません。







みなさんこんにちは、ほしぞloveログのSamです。最近「ほしぞloveさん」とか呼ばれたりしますが、ハンドルネームは「Sam」です。「ほしぞloveログ」と書いて星空ブログ(ほしぞらぶろぐ)と読みます。

前回
前々々回の記事で、先週金曜日にペルセウス座流星群と天の川の撮影をしてたと書きましたが、本当は今回書く記事が一番試したいことでした。少し時間がかかってしまいましたが、やっと画像処理も終わったのでまとめておきます。

QBPのこれまでのまとめ

これまで好んで使っていた、サイトロンのQBP(Quad Band Pass)はHα、SII、Hβ、OIIIの4つ(Quad)の基線を通すためこの名前がついています。このフィルターかなり便利で、自宅のような光害地でも、多少の月明かりがあっても、星雲を相当炙り出すことができます。

QBPの作例については以下をご覧ください。

















さらになんと、私がTwitterで電視観望でも使いたいと呟いたリクエストで、QBPのアメリカンサイズまで作ってくれ、もうサイトロンさんには感謝しても仕切れないくらいです。



私にとって、QBPは撮影にも電視観望にも、すでに無くてはならないフィルターになっています。


QBPの不満

このQBP、ものすごく便利なのですが、実は2つ不満があります。
  1. 一つは、最初の方の作例を見てもらうとわかるのですが、普通に赤を出そうとするとどうしても朱色がかった赤になってしまうのです。他の方の作例を見ても同様の傾向が多いので、これはQBPの特徴の一つなのかと思います。でもこれは何度か画像処理をしていて、青を少し強調してやると赤の色バランスがよくなることに気づきました。QBPの特性として、どうも相対的に青色が弱く写ってしまうようです。最後の方のバラ星雲なんかは適度に補正してあるので、初期の頃とだいぶ色合いが違うのがわかるかと思います。
  2. もう一つは記事の中で時々書いているのですが、恒星の色、特にオレンジとか緑とかが出ないのです。これは結局解決に至らず、適当に色が抜けたような状態でごまかしています。なので、どうしても色を出したい場合はQBPをあえて使わない時もありました。
そもそもQBPは青が強いM45プレアデス星団や、恒星の色に近い銀河はあまりきちんとした色が出ないようで、今のところ主にHαを出したい時にQBPをよく使っています。

そうは言っても、QBPはこの手のフィルターにしては比較的波長帯の制限をゆるくしてあるために、色バランスが崩れにくいというのが大方の評判で、私もその意見に賛成です。ただ、上記のような不満もあるのも事実なので、これをなんとか改善できないかとずっと思っていました。


CBPの検証開始

今回やったことはサイトロンから少し前に発売されたCBP(Comet Band Pass)フィルターの検証です。

 

一方、今回使ってみたCBPは彗星用に開発されたフィルターということもあり、青や緑の波長帯を通すとのことで、QBPの弱点であった、赤以外の色が意外にバランスよくでるのではという期待があります。ただ、星雲用に開発されたわけではないので、これは自分で試してみないとよくわからないでしょう。

というわけで、毎度のこと前置きが長かったですが、やっと検証の開始です。

今回のターゲット天体は青色を適度に含むM20、三裂星雲です。機材はTSA-120に35フラットナーをつけ、ASI294MC Proで撮影をします。もう8月後半なので、M20は宵のうちから高い位置にあり、しかもこの日はちょうど下弦の月のころなので、M20が沈むくらいまでは月は出てきません。さらに前回の記事でも書いたとおり、この場所は天の川が結構はっきり見える(2つに分かれているのは十分に分かります)場所なので、光害の影響があまりないところです。条件としてはいいのですが、光害のカットという意味での検証にはならないということは注意が必要です。

今回はM20を
  1. フィルター無し
  2. 48mmのCBPを取り付ける
  3. 48mmのQBPを取り付ける
という3つのケースで撮影して比較したいと思います。時間的にはこの順番で、それぞれ上から17枚、9枚、6枚撮影しました。枚数が違うのは、だんだん時間が無くなってきて焦ってきたからです。同じ日で撮った方が公平になると思ったので時間が限られてしまいました。ここら辺はご容赦ください。

高度から考えると、時間と共に位置が下がってくるので、1のフィルター無しが一番有利で、順にCBP、QBPとなるはずで、QBPの7枚目以降はまだそこそこ高度はあったのですが、背の高い木が少し入ってしまったので、そういったうまく撮れていないのは省いた枚数になります。


結果の比較

今回非常に面白い結果が得られたので、早速撮影された画像を見て見てみましょう。画像はどの場合も、1枚のRAWファイル(fits形式)をPixInsightでDebayerして、STFでオートストレッチをかけただけです。画角が同じなので、オートストレッチが公平に働いて、画像の質によって星雲などのコントラストがそのまま表されてきます。

1. フィルター無し

まずはフィルター無しのノーマルです。
masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180
フィルターなしの場合。

特に色をあぶり出したりしているわけではないので、のっぺりした色合いになっています。それでも暗いところなのでM20の赤と青はそこそこ出ています。


2. QBP

先にQBPを見せます。
masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180
QBPフィルターを適用。

QBPの実力通り、フィルター無しに比べて赤が相当強調されています。実際に画像をスタックして画像処理までして比較してもみたのですが、一枚でこれだけ差が出ていると、スタックしても結果に大きな違いが出ます。フィルターなしの方が枚数が多いので当然ノイズは少ないですが、淡いところの赤を出そうと思っても最初から色が出ていないものは後から処理してもなかなか出てきません。枚数が少ないQBPの方が遥かに簡単に色が出ます。


3. CBP

ではお待ちかね、最後はCBPです。

masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180
CBPフィルターを適用。

明らかに青がノーマルの時よりはもちろん、QBPの時よりも強調されています。赤はフィルターなしの場合より濃くなっていますが、QBPよりは若干薄いでしょうか。


分かりやすいように並べてみます。

com1

左から、フィルターなし、QBP、CBPの順です。CBPで青が明らかによく出ているのがわかるかと思います。赤い三裂(4裂?)の周り、特に上部や下部の青なんかは違いが顕著です。

赤はやはりQBPが一番出ていますが、ノーマルと比べるとすでに朱色がかっているのがわかるかと思います。CBPは赤に関してはある意味ノーマルとQBPの中間で、まだそこまで朱色がかっていないです。

これは期待通りというか、期待以上の結果です。


光害に対する効果

QBPよりもCBPの方が波長の透過域が増えるので、光害に対しての効果は減ると推測されます。今回は光害の影響があまりない場所での撮影だったので効果が分かりにくいため、あくまで暫定的ですが少しだけ評価してみます。

PixInsightのSTFのオートストレッチは、画像の持っている明るさによってストレッチ(あぶり出し)のパラメータを決めます。撮影したRAWファイルを何倍くらい明るくするかは、(同じ画角で撮った場合)光害に依るという意味です。光外の少ない暗い画像ほど大きな倍率をとって明るくするはずですし、光害が多く明るく写った画像ほど倍率は小さくなるはずです。出来上がった画像の(背景の)明るさはあまり変わらなくなります。

そのため、撮影した画像の背景の明るさと天体(淡い星雲)の明るさに差があるほど、背景を同じ明るさにした場合には天体がよりコントラスト良く浮き上がってくるはずです。この時のオートストレッチの倍率を比較することで、光害がどれだけ軽減されるか、言い換えると光害防止フィルターがどれくらい働いているか推測することができるはずです。

オートストレッチの値から、フィルターなしを1としたときにQBP、CBPでそれぞれ何倍明るくしたかを表にしました。色によって倍率が違うのでRed、Green、Blueで別々に計算しています。具体的にはSTFのスパナマークを押すと表が出ます。最初なかなか意味がわからなかったのですが、いろいろ試して、結局真ん中の列の逆数が元の画像から何倍ストレッチしたかに相当することがわかりました。結果は以下のようになります。

 RGB
No filer111
QBP3.983566944.486127173.40584795
CBP3.537339063.440159572.7432878

さて、結果をじっくりみていきましょう。


QBP:


この結果を見ると、まずQBPはフィルターなしに比べて4倍くらい明るくできるので、言い換えると余分な光を4分の1くらいにしているということがわかります。以前、波長帯の広がりからざっくり4倍くらい得すると推測していましたが、実測もかなりこの推測に従っているようです。




CBP:

次にCBPです。まず第一に、結果の数値だけを見るとそこまでQBPとは大きく違わないというのが印象です。CBPの方がかなり(下手したら何倍も)明るく出るのではと思っていたのですが、平均だと1.2倍程度です。

R関しては除去比は少しQBP劣りますが、ほとんど違いがありません。GとBに関してはCBPの方が光害を除去しないことになります。と言っても高々1.3倍とか1.2倍です。これはCBPが彗星の核や尾のCN, C2, C3らの基線を透過させるように、主に紫外から青を新たに通すように設計してあるため、この波長での光害に対する除去効果は軽減されるので納得です。ただ、青よりも緑の方が違いが大きいというのが少し疑問ですが、Gセンサーも青の帯域に感度はあるので、これはあり得るのかもしれません。

ここでパッと疑問に思ったのは、青に対する明るさの倍率が低いCBPがなぜQBPよりもより青色を出すか?です。これは当然、これまでカットしてしまっていた青い光をより通すようになったからと考えることができます。倍率が低くても、捨てていた青い光を拾った方が得だったということです。


結論

というわけで、ここでの結論は「CBPはQBPよりも光害に対する効果は多少低いが、違いは全然大きくはなく、むしろ青を通すことでより強調する効果がある。これは青い成分を持つ星雲に有効である。」と言っていいのかと思います。もちろんこの値は光源に依ります。繰り返しになりますが、今回は光外の影響があまりないところで試したので、街明かりの場合や月明かりの場合は結果が違ってくる可能性もあるかと思います。

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さらなるCBPの効果

でもでも、実は面白いのはここからだったのです。この検証の過程で3つの画面を見比べていて、一つ気付いたことがあります。もしかしたら勘のいい人はもう気付いているかもしれません。

上で出した3つの比較画像のそれぞれの左上の明るい星に注目してください。その左横に2つの星があると思います。これを3つで見比べてみてください。わかりやすいように拡大して並べて比較します。左からフィルターなし、QBP、CBPです。

com2


わかりますでしょうか?

なんと、CBPの星像が一番小さくて、しかも色がきちんと出ているのです。ピントの違いの可能性もありますが、他の星の大きさが大きくは変わっていないので、おそらくピントは関係なく、フィルターの違いから来ていると思われます。これは最初の方で書いた2つ目の不満「恒星の色が出ない」を解決する可能性があります。特にオレンジに近い色が出なかったので、期待できます。


なぜこんなことが起きるかというと、ここからはまだ推測なのではっきりとは言えませんが、QBPは実は赤外を通すのではという推測があります。シベットさんがここらへんの話に詳しくて



に記述があります。また、あぷらなーとさんの最近の実験でもその推測を推す結果となったようです。

QBPは赤外を素通しで、赤外の方では収差を補正しきれていない鏡筒ではハロとなって出るが、それに比べて、CBPはきちんと赤外の波長が透過しないように処理もしてあるのではという推測です。このハロを除去したい場合、QBPでは別途フィルターを入れる必要があるが、CBPでは1枚で済んで、恒星の色の再現性も高いということが考えられます。

これまでQBPで恒星の色が出なかったという方は試してみてもいいかもしれません。


まとめ

というわけで長かったですが、CBPの検証はこれで終わりです。赤はもちろん青も出て、色バランスも良く、恒星の色もきちんと出て、光害にも効果がありそうというので、私的にはある意味理想的なフィルターになりそうです。CBPはQBPであった不満をほとんど解決してくれそうです。かなり期待できそうなので、今後CBPの作例を増やしてもう少し検証していきたいと思います。


次の記事で今回撮影した三裂星雲を画像処理して仕上げています。



 

M13でのTSA-120とVISACの比較から、どうやら単純にはVISACの方が分解能が上のようです。以前、TSA-120とASI178MCで全く分解能のでなかったM51を、連休中にVISACで再度撮影してみました。




今年初稼働のVISAC

そもそも、TSA-120での撮影の時は透明度も全然よくなくて、風がかなり強く鏡筒が揺れていたので、出来上がりはボケボケ状態で、無理矢理炙り出したような状況でした。焦点距離が900mmと短いので、M51は結構小さく出てしまいます。そこでセンサーサイズが小さく、分解能を出す意味でピクセルサイズが小さいASI178MCを使ったのですが、感度がASI294MCとかに比べると4分の1くらいなので、淡い星雲には不利に働いたのかと思います。

さて、今回は焦点距離が2000mmと倍以上になりASI294MCで感度もいいので、前回よりも少なくとも有利なはずです。口径も120mmから200mmになり光量も2.7倍くらいになるので、それも有利に効くはずです。その一方、これまでの経験からシリウスBトラペジウムではTSA-120の方が有利だったように、星像のシャープさという点ではもしかしたら不利な点が出てくるかもしれません。

さて、この時の撮影用のソフトはまだN.I.N.A.ではなく、APTを使っています。実際にはM13より以前に撮影しています。この日は透明度もそれほど悪くなく、風もたいしたことありません。


やっと画像処理

M13の方を先に処理し出してしまったので、M51の画像処理は後回しになってしまってました。週末の日曜になってやっとやる気が出てきました。

まず撮影した結果をそのままRAWで見てみます。おーっ!一枚でも解像度はすでに前回よりはるかに上っぽいです。

L_2020_05_11_21_28_11_Bin1x1_300s__15C_RGB_VNG

でも少し拡大してみると、

L_2020_05_11_21_28_11_Bin1x1_300s__15C_RGB_VNG_cut

あれ?おにぎり星像、また出たか!? 
M13の時は大丈夫だったのに〜!?
夏になると出るのでしょうか?

しかたないので、三角星像は画像処理で何とかすることにして、とりあえず進めます。

スタックまではいつものPixInsightです。今回もダークは以前の使い回し、フラット補正はサボってなしです。あ、一つトラブルがありました。最初、BatchPreprocessingが途中でスターアラインメントのところで止まってしまったのです。探ってみると、Debayerで色がおかしく出てしまています。よくわからないので、マニュアルで最初から探っていくと、どうやら一番最初のCalibrationのダーク補正のところでおかしくなっているようです。

心当たりを探ってみると、今回StickPCではなく、もっとパワーのあるSurfaceマシンで撮影して、その際APTを新規に入れたものを使ったのです。その際、オフセットの値をきちんと確認しなくて、小さな値を入れてしまっていたことが原因です。ダークファイルは使い回しで、そのオフセットはライトフレームよりも大きかったのです。ダーク補正をする際に、大きくオフセットを引きすぎてRGBのうちRとBの背景が0より小さくなってしまって、完全に緑がかった色になってしまっていました。

ここでどうするすればいいか、困ってしまいました。結局やったことは、PixInsightのHistgramTransformationの「shadow」を上げてmaster dark frameのオフセットを小さくしてみたことです。

dark_offset_cut

画面はわかりやすいようにDebayerしてカラー化してオフセットを取っていますが、実際にはBayer配列のままやっています。でもこの方法で本当に正しいのかよくわかりません。いずれにせよ、これで作ったmaster dark frameでダーク補正をすることで、背景が真っ暗になるようなことはなくなりました。そのままBatchPreprocessingでも最後まで処理できるようになりました。

その後、ABEとPCCで処理し、ArcsinhStretchで途中までストレッチして、最後はHistgramTransformationでストレッチしてPIはおしまいです。

次のトラブルは、StarNet++があまりうまくいかないことでした。大きな星は分離できてますが、細かい星がほとんど分離できません。

light_BINNING_1_integration_ABE_PCC_AS_SNP

light_BINNING_1_integration_ABE_PCC_AS_SNP_cut

何が原因か知りたかったので、とりあえず今回は2つ試して見ました。
  1. 一つはもう少しストレッチして明るくしてからStarNet++をかけて見ましたが、こちらはほとんど影響なしで分離できる星は変わりませんでした。
  2. 次にやったのが、MorphologicalTrasnformationで三角を丸に直してからStarNet++をかけて見ました。そうすると、もう少し分離でき流ようです。どうやら星の形(真円に近いという意味)を見分けて判断していることが分かります。
でも結局はかなりMorphologicalTrasnformationをかけなくてはならず、星雲部分や背景まで崩れてくるので、こちらも適用は諦めました。結局StarNet++で大きな星だけが分離できた状態で画像処理を進めました。その代わりに、分離できた分だけの恒星部の画像を作って、それをMorphologicalTrasnformationで三角になったのを少し緩和しました。


結果

画像処理の結果です。

「子持ち銀河M51」
light_BINNING_1_integration_ABE_PCC_AS_all_PS3_cut
  • 撮影日: 2020年5月13日21時22分-23時27分
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 鏡筒: Vixen VC200L
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro + サイトロン QBP (37.5mm)
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: APT、ゲイン220、温度-15℃、露光時間300秒x26枚 = 2時間10分 
  • PixInsight、Photoshop CC、StarNet++、DeNoiseで画像処理

今回はかなり分解能も出ています。M101に続いて、焦点距離の長い口径の大きい鏡筒を使えば、光害地でQBPを使って、もう少し小さい系外銀河の撮影もそこそこ可能だということが分かりました。

画像処理でVISAC特有の三角星像もそこまで目立たないくらいにはなりました。でも、前回のM13で三角になることはなくて、なんでM51は三角になったのでしょうか?赤道儀の向きにも依存しているのかもしれません。もしそうだとすると、光学的な問題というよりは、メカ的な振動の可能性もあり得ます。こちらはもう少し調べてみます。


まとめ

富山の明るい北の空で、何とか系外銀河を狙う目処がやっとついてきました。おにぎり星像はまだ問題ですが、四隅で流れるようなことはないので画像処理の範囲である程度補正することはできます。それでももう少し、根本的に何が原因か探りたいと思います。


回転花火銀河M101を撮影してみました。この天体は電視観望では何度か観たことがありますが、撮影は初めてです。自宅からですが、富山特有の北の明るい空です。さて、どうなることやら。


light_BINNING_1_integration_ABE_DBE_STR_DBE_STR_SNP_all_PS4_cuts
銀河部分を大きくみるために最終結果を切り出したものです。


撮影

今回はもう少し北側のM101に挑戦です。挑戦と言う意味ですが、富山は日本海側のため基本的に北が市街地になっているので、北の空はどうしても明るくなってしまい、これまでも撮影は避けてきました。

前回、三つ子銀河の自宅からの撮影がQBPを入れたまま知らずに撮影してしまうというアクシデントのおかげか、思いの外うまくいったので味をしめてしまいました。これならもう少し明るい領域でもなんとかなるのではと思い、この季節北東から真北に動いていくM101にしました。

機材セットアップは三つ子銀河の時と全く同じで、TSA-120にQPDでASI294MCProです。撮影自身は順調。ガイドもほとんどズレなしです。透明度はというと、三つ子銀河の時よりは悪かったと思います。見た目でもわかるくらい三つ子さんの時は細かい星まで散りばめられていましたが、M101のこの日の空は、悪くはないですが、まあそこそこと言ったくらいでしょうか。普通に星は見えますが、細かい星まではあまり見えません。

撮影はStickPCを利用したリモート撮影です。いったんセットして撮影が始まってしまえば、あとは部屋からヌクヌク状態でモニターすることができます。予定では3時間以上の露光時間を狙います。ところが、天頂越えまでまだ少し時間がある頃、部屋からリモート接続のでダウンロードされる画像を見ていると、星が流れて出していることに気づきました。おかしいと思い、外に出てチェックしてみると、天頂越え直前でカメラが三脚の当たって止まってしまっていました。これまでこんなことあまりなかったのですが、鏡筒が長いと天頂近くになるとカメラ側が脚に当たってしまうこともあるのがわかりました。こんなことならAPTで赤道儀の反転テストを試せばよかったです。赤道儀が明らかにずれてしまったのと、もうしばらくすると月も出てくるので、この日はこれで終了としました。5分露光で30枚なので2時間半分の撮影です。


全体の流れ

ガイドのズレを見るためにいつものように2時間半分の画像を動画にしてみます。

Blink

今回は1方向に動いているわけではなく、一度左に行って、右に戻ってきているような感じです。APTのDithering Distanceで4としてあるのですが、このランダムな動きがその4というので動いているのかもよくわかりません。1方向のドリフトではないのですが、まだたわみか何かが原因で動きすぎている気がします。

上の動画は明るさを規格化してしまっていますが、一番最初と一番最後ではヒストグラムで見ると明るさが1.5倍くらい違います。なぜかだんだん暗くなっていきます。最初北東にあったM101が高度を上げながら真北へ向かっていくくらいまでを撮影したのですが、普通に目で見ても北の方が明るいのは確かです。高度が上がっていくから暗くなるのか、夜中になり町の明かりが減っていったから暗くなっていったのかはわかりませんが、(QBP有り無しで高々3倍の明るさの違いなので)1.5倍は無視できないくらいの違いです。2時間半分あるのですが、淡いところだけを出すのなら後半のみ使うくらいの方がいいのかもしれません。今回は、結局画像処理をやっている過程で、最初の30分を使うのをやめました。そのため淡い部分がもう少し出るようになった気がします。


画像処理

今回結構色々学びました。特にAPTはまだまだ経験不足で慣れていないことも多いので、癖を知っておく必要がありそうです。


1. light frame

撮影した画像を見てみると、どうもホワイトバランスが根本的に取れてません。QBPのせいでしょうか?赤がどうしても強くなってしまいます。でも、後のフラットで逆に赤が暗くなったことを考えると、QBPのせいでもない気がします。

ight_redshift
rawファイルをカラーバランス補正なしでオートストレッチした画面。
ヒストグラムを見ても赤が支配的です。

SharpCapの場合はカラーバランスをソフト側でとることができて、fitsファイルにもそれが反映されてます。APTの場合にはカラーバランスを調整できる場所がありません。いや正確には見かけのカラーバランスは調整する場所はあるのですが、画面だけに反映され、fitsファイルにはそれは反映されないようです。


2. dark補正

今回はdarkの補正の時にアンプグローをうまく差っ引くために、前回のUTOさんのアドバイスを元にOptimizeオプションをオフにして処理しました。  オンとオフで比べてみます。

light-BINNING_1
デフォルトのOptimizeがオンのまま。右上にひどいアンプグローが残っています。

light-BINNING_1
ダーク補正の際のOptimizeをオフにした場合。
アンプグローは相当マシになります。

最初BatchPreProcessで設定場所が見つからなかったので、ImageCalibrationの中でOptimizeをオフにしてバッチ処理でなくその後もマニュアルでやったのですが、後にBatchPreProcessの右側のグローバルオプションのところに設定できる場所があることを見つけました。これでバッチ処理で手間をかけずに進めることができるようになりました。

ちなみに、ダークだけをものすごく炙り出してみるとこんな風になります。

Capture 00_12_39_00001 00_17_12_c_d

右上が目立ちますが、左上にもそこそこのアンプグローがあり、よく見ると右下にも少しあります。3箇所もあるので大変そうですが、ダーク補正でOptimizeをオフにすることで解決できるので、もうそれほど大きな問題ではないのかと思います。


3. bias補正

最初bias補正をすると画面が暗くなりすぎてしまいました。これはbais frameの撮影時のbiasの値(オフセット)が大きすぎたことと、次に書くフラット補正がうまく行っていなかったことが原因かと思われます。

badbias
カラーバランス補正をしてオートストレッチすると青と緑が暗すぎてしまう。
バイアス補正でオフセットが引かれ過ぎていると考えられる。

ligh frameの撮影時、APTでのbias設定が40でした。そのためbias frameの(オフセットの意味での)bais値は撮影時に40以下にしています。最初オフセットを30にしてSharpCapdで0.0032msで撮影したのですがまだ十分下げ切れていませんでした。それに合わせてflat frameのカラーバランスも合っていなかったせいで、赤が過補正のため青と緑が相対的にオフセットを引かれすぎた状態になってしまって、出来上がり画像の青と緑が暗すぎてしまったのかと思います。

そのため改めてbiasを撮影して、その際オフセットを20に下げ、今度は念のためAPTで撮影しました。一応これでうまく行きましたが、実際にはbias値を下げたからよくなったのか、後述のフラットのバランスが取るように対策したからなのかは不明です。


4. flat補正

その中でも、今回の撮影では特にflat補正で学ぶことが多かったです。TSA-120の口径が大きすぎて、いつもやっているようなiPadでのフラット撮影は出来ませんでした。手持ちのiPadでは画面が小さすぎてはみ出てしまうのです。その代わりにMacbook Proのモニターをフラットパネル代わりに使ってやりました。使ったツールは天リフさんのこのページです。



このページはカラーバランスを整えることができるので、非常に便利です。

短時間露光のflat frameなので、最初はディスクへの画像取り込み時間が速いのでSharpCapで撮影していたのですが、条件をそろえる意味で途中からAPTでの撮影に切り替えました。ゲインはlight frameと同じ220、露光時間は以前の検証から100msです。枚数は50枚程度ですが、これも以前の検証からこれくらいの枚数で十分だと思われます。

ここから色々不思議なことがあり、まだ完全に解決できていません。あいからわらずフラットは謎が多いです。

上の「1. light frame」のところでも述べましたが、APTでlight frameを撮影すると赤色が一番強調して撮影されます。上のスナップショットでヒストグラムのところを見ると、赤が青や緑に比べて1.5倍くらい明るいのがわかります。

これは有意なずれで画像処理に影響を与えるくらいかなり大きな差です。最初QBPのせいで赤くなっているのかなと思っていたのですが、不思議なことに鏡筒とカメラの設定を全く状態を変えないでMacのモニターでホワイトバランスをとったものをflat frameとして撮影すると、今度は赤が一番暗くなるのです。青や緑に比べて2分の1以下くらいの明るさです。

flat-BINNING_1

このflat frameを使いフラット処理をすると、もともと1.5倍明るい赤が、2分の1位の暗さの赤で割られるので、その結果赤が3倍くらい明るいlight frameが出来上がることがわかりました。そのため少なくともPIでは、light framとflat frameのカラーバランスは、そこそこ同じようにする必要があることがわかります。実際にはMacの画面のカラーバランスを、あらかじめ赤が3倍くらい明るいものにして、それを撮影することで、そこそこlight flameと同じカラーバランスの取れたflat frameを作ることできるようになりました。

もう一つ問題がありました。撮影したflatの画面のうち赤色だけ様子がおかしいのです。RGBに分解してみてやると、青や緑はいたって普通に見えますが、赤色だけはセンサーの長手方向に蝶形になるような、形が現れてきて、変に見えます。

flat_BINNING_1_integration_RGB_VNG
赤だけ変な形が現れる。

とりあえず軽減する方法は見つけました。どうもフラットパネル(今回はMacbook Proのモニター)で撮影することが悪さをしているようです。まず、フラットパネルを使わずに、昼間にスーパーの袋を二重に重ねてflatを撮影してみると、この変な形は随分とマシになります。カラーバランスはその時に入る光に依るので、少し赤っぽい、実際には電球色の光を入れています。

flat_BINNING_1_integration1_RGB_VNG
蝶のような形はなくなったようにみえます。 

画像を見ても少しマシになっていることがわかると思います。でもマシになっただけで、やはり同じような形は残っています。

で、結局最終的にやったことはというと、flat補正をしないという選択肢を取りました。どう見てもこれが一番マシなのです。そもそもカメラがフォーサーズ相当で周辺減光があまりないので、それほどフラット補正にこだわる必要はないのかもしれまん。

でもここで不思議なのは、同じ鏡筒で同じ条件で撮影しているのに、なんで普通のlight frameの撮影の方では、こんな変な模様が見えてこないかです。まだflat frameの撮影方法に問題があるような気がしています。ここらへんは時間があったらもう少し試してみます。


5. 仕上げ

フラット補正なしにしてスタックした画像がまともになるとやっと、その後の仕上げの画像処理に困ることはなくなりました。ちなみにこれ以前のフラットが合っていない時の画像処理は熾烈を極め、時間も相当かけてしまいました。ちなみに最後のフラット無しの結論に至るまでに、PixInsightでのフルスタックの画像処理の回数は11回。そのうちPhotoshopに移って最後まで処理を進めたのが4回。下処理がきちんとしていればいるほど、画像処理にかける時間も少なくなりますし、出来上がった画像もいいものになります。


結果

画像処理の段階で色々紆余曲折はしましたが、そこそこ満足のいく仕上がりになりました。透明度の差もあるのでしょうか、三つ子銀河の時ほどくっきり出すのは難しかったですが、アンプグローが軽減できたのと、フラットがマシになったぶんもあり、淡い部分をより炙り出すことができていると思います。

light_BINNING_1_integration_ABE_DBE_STR_DBE_STR_SNP_all_PS4_cut
  • 撮影日: 2020年4月16日21時29分-4月17日0時20分
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro
  • 撮影条件: ゲイン220、温度-15℃、露光時間300秒x24枚 = 2時間0分 
  • フィルター: サイトロン QBP (48mm)
  • PixInsight、StarNet++、Photoshop CC、DeNoise AIで画像処理

自宅でこれなら、まあ十分ではないでしょうか。これも一度暗いところへ行って撮影してみたい対象です。一体どれくらい変わるのか、真ん中のしわしわの部分をもっときれいに出せたらと思います。

その一方、富山の北の空でこれだけ出るのなら、もう少し自宅で時間をかけていろんな銀河を探っていきたくなりました。自宅からなら、天気さえ良ければ平日でも比較的気楽に試すことができます。


Annotation

天体の名前入りの画像です。こちらも定番になりそうです。

light__integration_ABE_DBE_STR_DBE_STR_SNP_all_PS4_cut_Ann


前回の三つ子銀河は全面縦横ズレなしだったのですが、今回は右はあっていても左側が斜めになっています。北の空だからでしょうか。座標に対しては画面が歪んで写るんですね。


まとめ

TSA-120の自宅での撮影第2段。QBPのおかげもあり、北の空の銀河でもそこそこ写ることがわかりました。銀河の撮影も楽しくなってきました。TSA-120での撮影を今しばらく続けていきたいと思います。

その一方、まだ画像処理では理解不足なところがあります。特にflatはいまだにミステリーです。きちんとしたflat撮影方法をもう少しきちんと考える必要がありそうです。
 

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