今回はPixInsight上で動く、太陽画像処理用のSolar Toolboxを紹介します。すでに使っている人も多いかと思いますが、日本語の解説はいまだにどこにも見当たらないようです。
PixInsight上で動作するSolar Toolboxというスクリプトが、今から1年ほど前の2024年2月にリリースされました。当初から使ってみたいとは思っていたのですが、今のImPPGからPhotshopという流れでそこまで不満ではなかったので、そのままになっていました。
転機になったのは、Astrobinの2025年4月1日のImage of the dayです。恐ろしく精細なプロミネンスのタイムラプスにびっくりしました。とてもじゃないですが、自分ではここまで出せる自信はありません。使っているツールの中にSolar Toolboxという名前を見つけたので、「あ、やっぱりいいんだ」と思ったのがきっかけです。
Solar Toolboxのインストールは
https://www.cosmicphotons.com/pi-modules/solartoolbox/
をPixInsightのレポジトリーに追加し、アップデートをチェックし、その後PIを再起動します。すると、メニューの「Process」の中に「Solar」という項目が作られていて、その中に「SolarToolbox」が追加されています。
Solar Toolboxは、機能的にはストレッチ、プロミネンスの切り分け、プロミネンスのブースト、コントラスト調整、カラー化と、カラー化に際しての色バランスとコントラスト調整、細部出し、デノイズなどがあります。カラーかと細部出しについては、マスク処理もできるようです。これだけ高機能なところをみると、一見他のツールが必要ないようにも思えるかもしれません。一通り試したのですが、決して万能のツールというわけではなく、得意、不得意があるようです。
モードは3つあり、「太陽表面のみ」と「プロミネンスのみ」と「太陽表面とプロミネンス」になります。自分が撮影した画像に応じて選びます。
これ以降はできるだけ機能を説明するために「太陽表面とプロミネンス」を前提に話します。他のモードだと、いくつかの機能が使えなくなります。
ダイアログの右下のDonumentationボタンを押すと、ヘルプファイルが出てきますが、あまり大した説明はないようです。作者によるインストラクション的な動画がアップロードされていて、それを見るのがいいのかもしれませんが、私はあまり動画を見るのが好きでないので、自分で一通り試してみてから、わかりにくいところだけを動画で見てみました。動画は英語なので、英語が苦手な場合は説明を聞くより実際自分でパラメータをいじって何が変わるかを見た方が早いと思います。その上で、今回は私が試した限りで、どの機能が有益で、どの機能はもう少しとかの説明や感想を書いておきます。
そもそも撮影後の、どこまで処理が進んだファイルを読み込ませるかですが、
Solar Toolboxでは、何をするにしてもリアルタイムプレビュー画面を見ながら各機能のパラメータの値をいじるのですが、一つパラメータを変えるたびに結構な時間をかけてプレビュー画面を更新します。全然リアルタイムではないので、できるだけ速いPCを使った方がいいです。
まず、一番上のプロミネンスの切り分け機能です。パラメータの微調整がシビアですが、うまく設定すると太陽表面と周辺のプロミネンスを綺麗に分けることができます。デフォルトの0.5を一度大きく変えると何が変わるか見えるので、どんな機能かがわかるかと思います。わかりにくい場合はすぐ下の「Invert」オプションをオンにしてみてください。傾向がわかったら、0.05単位くらいで微調整していけば、好みの切り分けにできるでしょう。
これに相当する機能は、ImPPGでヒストグラムの曲線をいじって、プロミネンス部分と太陽表面部分を切り分けて輝度調整するとかですが、それよりもSolar Toolboxの方がうまく分離できるようです。普通は輝度の違いだけで判断するとあまりうまく分離できないのですが、Solar Toolboxではかなりうまく分離できるので、見ているのは輝度だけはないのかもしれません。一般的には、うまく分離しようとしたらマスク処理が必須となるのですが、マスク無しでうまく分離できるのでかなり便利です。
Solar Toolboxのストレッチは、ブラックポイントとホワイトポイントの切り詰めだけです。この切り詰めはあらかじめImPPGでやっておいた方が、デフォルトのブラックが「0.000」とホワイトが「1.000」をそのまま使えるので楽です。プロミネンスの背景が明るすぎる場合、ブラックポイントを0.01とか、0.02とかに上げて微調整します。プラージュとかの白いところの階調があまり取れていな場合は、ホワイトの値を1.1とか1.2まで上げると、多少階調を改善すことができます。
ImPPGならヒストグラムを見ながら、ガンマ補正や、曲線そのものを任意にいじることができるので、あらかじめいじっておいてもいいですが、今のところSolar Toolboxの使用が前提なら、事前にあまりいじらない方が楽っぽいです。ImPPGでいじって、さらmにSolar Toolboxでいじると、パラメータが多すぎてよくわからなくなることが多いので、私はImPPGでは細部出しと、ブラックとホワイトのと切り詰めをするだけにしています。
プロミネンスのブーストは必要十分な機能です。ImPPGの方がヒストグラムで調整できるので、一見高機能に思えますが、再現性や安定度という意味ではSolar Toolboxのシンプルな操作の方が上かと思います。ImPPGでプロミネンスをあぶり出ししていなければ、0.7とか0.8とかの大きな値にしてもいいかと思います。
3D機能は開発者の動画解説によると、周辺のブーストと太陽表面の球のような輝度分布を重ねるような効果だそうです。3D機能を使わないと、太陽全体が見えている時なんかは太陽表面の輝度がフラット化されて、ノペーっとして、3D機能の値を上げると、立体感が増します。太陽表面の印象が印象が変わるので、いろんな値を試して好みを探るといいでしょう。
コントラスト設定はかなりわかりにくいです。まずは左タブの「Histgram equalizatin」で説明します。「Contrast limit」の数字を上げると明るくなって、下げると暗くなるのが基本操作です。「Kernel radius」でどれくらいの粗さかを決めますが、値が100とか小さ過ぎると輝度が大きな範囲で凸凹するようです。私は普段は200以上の大きな値を使っています。
マスク処理は、チェックボックスをオンにしてマスクを表示させながら調整するといいでしょう。「Surface Only」で基本的に太陽表面のみにするか、「None」で全体にするかを分けるものです。「Surface and prom」で好きなところを選べますが、こちらはマスクの状態をよく見ながら、輝度を「Shadow」で合わせる必要があるので、ちょっと面倒です。
結局、「Histgram equalizatin」はかなり扱いにくかったので、隣の「Local contrast」を使った方が楽かと思います。左の「Histgram equalizatin」と右の「Local contrast」は完全に独立な設定で、どちらかを選ぶと、もう一方の設定は全部無視されます。「Local contrast」は数値を大きくすると、特に太陽表面の模様の明るいところと暗いところの差がうまく強調されます。
次のカラー化のところのコントラスト調整と合わせて、この「うまく」コントラストを出すというのが今回のSolar Toolboxを使うことの一番のメリットなのかと思っています。というのも、例えばHα画像をPhotoshopに持っていって、ありとあらゆる調整を試しても、コントラストを素直にうまく改善する機能がほとんど見当たりません。私は普段はImPPGでコントラストを強調してから、Photoshopではほんの微調整くらいしかしませんが、もっと簡単にコントラストを調整できたらとずっと思っていました。そういったい意味で、このSolar Toolboxは非常に優れていると思います。
もう一つのSolar Toolboxの利点は、カラー化です。カラー化自身はPhotoshopのレベル補正でなどでもできますが、なかなかいいパラメーターが決まらず、毎回違った設定になって結果も安定な色になりません。
Solar Toolboxのデフォルトの色バランスの設定はかなりうまく選んであって、少し変えてみて結局元のデフォルトの色方が良かったりしたので、ほとんどの場合はデフォルトで処理してしまっています。デフォルトを使うと決めてしまうと、たとえ他の画像を処理しても、かなり安定な色になることが期待できます。もちろんコントラストなどの設定が色味を変えることがあるので、色の微調整はするかもしれませんが、今後画像によって大きくブレるかとは無くなるのかと思っています。
カラー化する場合、その中で2種のコントラスト設定をいじることができます。これらもとてもうまくコントラストを上げてくれるので、下手にPhotoshopなどで自分でやるよりも、簡単に安定して処理してくれるでしょう。ハイライトの方は効果がすぐにわかります。高くすると見栄えが良くなります。通常のコントラストブーストは効果がわかりにくいです。ものすごく大きくしてやるとやっと違いがわかると思います。
ストレッチは0.5から下げると明るくなり、上げると暗くなります。全体の明るさをいじるのはここがメインになります。カラー化する場合はこのストレッチ機能が使えるからいいのですが、モノクロのままだと全体の輝度調整をするのが結構面倒だったりします。モノクロの場合は素直にHistgramTransformationとか使った方が楽かもしれません。
Solar Toolboxダイアログの一番上の「Image type」で「Prominence only」を選ぶと、プロミネンスのマスクが使えるようですが、ここでいうProminence only用の画像とは開発者の解説動画によると、太陽表面が完全に飽和したような画像のことのようです。今回そんな画像は試していないので、ここのマスク機能はまだ使えていません。
最後のSharpningは結構微妙です。もちろんシャープにしてくるのですが、こちらはそこまで強力ではなく、ImPPGなどの方がはるかに簡単に強力に処理してくれます。
私が思うImPPGの唯一の欠点は、デノイズ機能がないことです。そのため、ちょっと強力な炙り出し処理をすると、途端に背景とかにツブツブが載ることです。これは月をImPPGで処理すると良くわかります。太陽だとモジャモジャしているところも多いので、背景以外はあまり目立たないのですが、月は表面で滑らかなところがありツブツブが目立ちます。なので、月にはImPPGを使うのを諦めた過去があります。
例えばRegistaxのWaveletや、PIのMultiscaleLinearTransformなどは、細部出しと共にデノイズ機能があるので、ツブツブ感が軽減できるのですが、細部出しそのものについては手軽さまで考えるとImPPGの方が上だと思っています。なので、ImPPGでストレッチと細部出し、少しのプロミネンス強調までして、PIに持っていきMultiscaleLinearTransformでデノイズ処理、その後Solar Toolboxでプロミネンス強調、コントラスト調整、必要ならカラー化とカラー化に伴うコントラスト調整、さらに必要なら細部出しとデノイズを僅かにといったところでしょうか。
Solar ToolboxがPixInsightをベースにして動くことで便利なのは、コンテナを使って複数ファイルに自動で同じ処理を適用できることです。今のSolar Toolboxは細部出しが苦手っぽいので、ImPPGを使わざるをえない状況かと思いますが、ImPPGもバッチ処理機能があるので、複数画像に同じ処理を適用できます。連続処理できるツールのみを使うことで、タイムラプスで多数の画像を楽に扱うことができるようになります。
Solar Toolboxを一通り試してみましたが、かなり使えます。特にカラー化の安定性と、コントラストを出しやすい点は気に入りました。ただ、Solar Toolbox単体で十分かというと、そういうわけでもないので、他ツールとの併用がいいのかと思います。もう少し使い込んでみようと思います。
PixInsightの太陽画像処理ツール
PixInsight上で動作するSolar Toolboxというスクリプトが、今から1年ほど前の2024年2月にリリースされました。当初から使ってみたいとは思っていたのですが、今のImPPGからPhotshopという流れでそこまで不満ではなかったので、そのままになっていました。
転機になったのは、Astrobinの2025年4月1日のImage of the dayです。恐ろしく精細なプロミネンスのタイムラプスにびっくりしました。とてもじゃないですが、自分ではここまで出せる自信はありません。使っているツールの中にSolar Toolboxという名前を見つけたので、「あ、やっぱりいいんだ」と思ったのがきっかけです。
Solar Toolboxのインストールは
https://www.cosmicphotons.com/pi-modules/solartoolbox/
をPixInsightのレポジトリーに追加し、アップデートをチェックし、その後PIを再起動します。すると、メニューの「Process」の中に「Solar」という項目が作られていて、その中に「SolarToolbox」が追加されています。
Solar Toolboxは、機能的にはストレッチ、プロミネンスの切り分け、プロミネンスのブースト、コントラスト調整、カラー化と、カラー化に際しての色バランスとコントラスト調整、細部出し、デノイズなどがあります。カラーかと細部出しについては、マスク処理もできるようです。これだけ高機能なところをみると、一見他のツールが必要ないようにも思えるかもしれません。一通り試したのですが、決して万能のツールというわけではなく、得意、不得意があるようです。
モードは3つあり、「太陽表面のみ」と「プロミネンスのみ」と「太陽表面とプロミネンス」になります。自分が撮影した画像に応じて選びます。
事前理解と準備
これ以降はできるだけ機能を説明するために「太陽表面とプロミネンス」を前提に話します。他のモードだと、いくつかの機能が使えなくなります。
ダイアログの右下のDonumentationボタンを押すと、ヘルプファイルが出てきますが、あまり大した説明はないようです。作者によるインストラクション的な動画がアップロードされていて、それを見るのがいいのかもしれませんが、私はあまり動画を見るのが好きでないので、自分で一通り試してみてから、わかりにくいところだけを動画で見てみました。動画は英語なので、英語が苦手な場合は説明を聞くより実際自分でパラメータをいじって何が変わるかを見た方が早いと思います。その上で、今回は私が試した限りで、どの機能が有益で、どの機能はもう少しとかの説明や感想を書いておきます。
そもそも撮影後の、どこまで処理が進んだファイルを読み込ませるかですが、
- 少なくともAutoStakkert4!などでスタックした後のファイルを使うことになるでしょう。
- 細部を事前にどこまで出しておくか、プロミネンスの強調やコントラストをどこまでやっておくかは、Solar Toolboxでどれだけ処理をするかに依ります。このSolar Toolboxですが、特に細部出しはあまり強力ではないようなので、少なくとも細部出しはImPPGなどである程度あらかじめすませておいた方がいいのかと思います。
- プロミネンスとコントラストはSolar Toolboxが結構得意なので、事前に何も弄らなくてもいいでしょう。
- また、ImPPGなどでヒストグラムの形をいじって暗いところをあらかじめ炙り出しておくのは、やめておいた方が良さそうです。下で説明するプロミネンスのブーストが、事前に炙り出されていないことを前提にしているみたいで、あらかじめ炙り出してあると、明るくなり過ぎたり、特にImPPGで処理するとドット状のノイズが目立ってしまいます。
- その一方、ヒストグラムの左右を切り詰めておくことは、あらかじめやっておくと楽です。例えばImPPGだとヒストグラムを「見ながら」切り詰めができる一方、Solar Toolbox上だと、切り詰めパラメータを一回入れる毎に、画像の変化をいちいち時間をかけて見なければならないです。効果としては全く同じですが、時間がかかる上に、見通しがとても悪いです。
Solar Toolboxでは、何をするにしてもリアルタイムプレビュー画面を見ながら各機能のパラメータの値をいじるのですが、一つパラメータを変えるたびに結構な時間をかけてプレビュー画面を更新します。全然リアルタイムではないので、できるだけ速いPCを使った方がいいです。
プロミネンスの切り分け機能
まず、一番上のプロミネンスの切り分け機能です。パラメータの微調整がシビアですが、うまく設定すると太陽表面と周辺のプロミネンスを綺麗に分けることができます。デフォルトの0.5を一度大きく変えると何が変わるか見えるので、どんな機能かがわかるかと思います。わかりにくい場合はすぐ下の「Invert」オプションをオンにしてみてください。傾向がわかったら、0.05単位くらいで微調整していけば、好みの切り分けにできるでしょう。
これに相当する機能は、ImPPGでヒストグラムの曲線をいじって、プロミネンス部分と太陽表面部分を切り分けて輝度調整するとかですが、それよりもSolar Toolboxの方がうまく分離できるようです。普通は輝度の違いだけで判断するとあまりうまく分離できないのですが、Solar Toolboxではかなりうまく分離できるので、見ているのは輝度だけはないのかもしれません。一般的には、うまく分離しようとしたらマスク処理が必須となるのですが、マスク無しでうまく分離できるのでかなり便利です。
Solar Toolboxのストレッチは、ブラックポイントとホワイトポイントの切り詰めだけです。この切り詰めはあらかじめImPPGでやっておいた方が、デフォルトのブラックが「0.000」とホワイトが「1.000」をそのまま使えるので楽です。プロミネンスの背景が明るすぎる場合、ブラックポイントを0.01とか、0.02とかに上げて微調整します。プラージュとかの白いところの階調があまり取れていな場合は、ホワイトの値を1.1とか1.2まで上げると、多少階調を改善すことができます。
ImPPGならヒストグラムを見ながら、ガンマ補正や、曲線そのものを任意にいじることができるので、あらかじめいじっておいてもいいですが、今のところSolar Toolboxの使用が前提なら、事前にあまりいじらない方が楽っぽいです。ImPPGでいじって、さらmにSolar Toolboxでいじると、パラメータが多すぎてよくわからなくなることが多いので、私はImPPGでは細部出しと、ブラックとホワイトのと切り詰めをするだけにしています。
プロミネンスのブースト
プロミネンスのブーストは必要十分な機能です。ImPPGの方がヒストグラムで調整できるので、一見高機能に思えますが、再現性や安定度という意味ではSolar Toolboxのシンプルな操作の方が上かと思います。ImPPGでプロミネンスをあぶり出ししていなければ、0.7とか0.8とかの大きな値にしてもいいかと思います。
3D機能は開発者の動画解説によると、周辺のブーストと太陽表面の球のような輝度分布を重ねるような効果だそうです。3D機能を使わないと、太陽全体が見えている時なんかは太陽表面の輝度がフラット化されて、ノペーっとして、3D機能の値を上げると、立体感が増します。太陽表面の印象が印象が変わるので、いろんな値を試して好みを探るといいでしょう。
コントラスト
コントラスト設定はかなりわかりにくいです。まずは左タブの「Histgram equalizatin」で説明します。「Contrast limit」の数字を上げると明るくなって、下げると暗くなるのが基本操作です。「Kernel radius」でどれくらいの粗さかを決めますが、値が100とか小さ過ぎると輝度が大きな範囲で凸凹するようです。私は普段は200以上の大きな値を使っています。
マスク処理は、チェックボックスをオンにしてマスクを表示させながら調整するといいでしょう。「Surface Only」で基本的に太陽表面のみにするか、「None」で全体にするかを分けるものです。「Surface and prom」で好きなところを選べますが、こちらはマスクの状態をよく見ながら、輝度を「Shadow」で合わせる必要があるので、ちょっと面倒です。
結局、「Histgram equalizatin」はかなり扱いにくかったので、隣の「Local contrast」を使った方が楽かと思います。左の「Histgram equalizatin」と右の「Local contrast」は完全に独立な設定で、どちらかを選ぶと、もう一方の設定は全部無視されます。「Local contrast」は数値を大きくすると、特に太陽表面の模様の明るいところと暗いところの差がうまく強調されます。
次のカラー化のところのコントラスト調整と合わせて、この「うまく」コントラストを出すというのが今回のSolar Toolboxを使うことの一番のメリットなのかと思っています。というのも、例えばHα画像をPhotoshopに持っていって、ありとあらゆる調整を試しても、コントラストを素直にうまく改善する機能がほとんど見当たりません。私は普段はImPPGでコントラストを強調してから、Photoshopではほんの微調整くらいしかしませんが、もっと簡単にコントラストを調整できたらとずっと思っていました。そういったい意味で、このSolar Toolboxは非常に優れていると思います。
カラー化
もう一つのSolar Toolboxの利点は、カラー化です。カラー化自身はPhotoshopのレベル補正でなどでもできますが、なかなかいいパラメーターが決まらず、毎回違った設定になって結果も安定な色になりません。
Solar Toolboxのデフォルトの色バランスの設定はかなりうまく選んであって、少し変えてみて結局元のデフォルトの色方が良かったりしたので、ほとんどの場合はデフォルトで処理してしまっています。デフォルトを使うと決めてしまうと、たとえ他の画像を処理しても、かなり安定な色になることが期待できます。もちろんコントラストなどの設定が色味を変えることがあるので、色の微調整はするかもしれませんが、今後画像によって大きくブレるかとは無くなるのかと思っています。
カラー化する場合、その中で2種のコントラスト設定をいじることができます。これらもとてもうまくコントラストを上げてくれるので、下手にPhotoshopなどで自分でやるよりも、簡単に安定して処理してくれるでしょう。ハイライトの方は効果がすぐにわかります。高くすると見栄えが良くなります。通常のコントラストブーストは効果がわかりにくいです。ものすごく大きくしてやるとやっと違いがわかると思います。
ストレッチは0.5から下げると明るくなり、上げると暗くなります。全体の明るさをいじるのはここがメインになります。カラー化する場合はこのストレッチ機能が使えるからいいのですが、モノクロのままだと全体の輝度調整をするのが結構面倒だったりします。モノクロの場合は素直にHistgramTransformationとか使った方が楽かもしれません。
Solar Toolboxダイアログの一番上の「Image type」で「Prominence only」を選ぶと、プロミネンスのマスクが使えるようですが、ここでいうProminence only用の画像とは開発者の解説動画によると、太陽表面が完全に飽和したような画像のことのようです。今回そんな画像は試していないので、ここのマスク機能はまだ使えていません。
細部出し
最後のSharpningは結構微妙です。もちろんシャープにしてくるのですが、こちらはそこまで強力ではなく、ImPPGなどの方がはるかに簡単に強力に処理してくれます。
私が思うImPPGの唯一の欠点は、デノイズ機能がないことです。そのため、ちょっと強力な炙り出し処理をすると、途端に背景とかにツブツブが載ることです。これは月をImPPGで処理すると良くわかります。太陽だとモジャモジャしているところも多いので、背景以外はあまり目立たないのですが、月は表面で滑らかなところがありツブツブが目立ちます。なので、月にはImPPGを使うのを諦めた過去があります。
例えばRegistaxのWaveletや、PIのMultiscaleLinearTransformなどは、細部出しと共にデノイズ機能があるので、ツブツブ感が軽減できるのですが、細部出しそのものについては手軽さまで考えるとImPPGの方が上だと思っています。なので、ImPPGでストレッチと細部出し、少しのプロミネンス強調までして、PIに持っていきMultiscaleLinearTransformでデノイズ処理、その後Solar Toolboxでプロミネンス強調、コントラスト調整、必要ならカラー化とカラー化に伴うコントラスト調整、さらに必要なら細部出しとデノイズを僅かにといったところでしょうか。
タイムラプスへの応用
Solar ToolboxがPixInsightをベースにして動くことで便利なのは、コンテナを使って複数ファイルに自動で同じ処理を適用できることです。今のSolar Toolboxは細部出しが苦手っぽいので、ImPPGを使わざるをえない状況かと思いますが、ImPPGもバッチ処理機能があるので、複数画像に同じ処理を適用できます。連続処理できるツールのみを使うことで、タイムラプスで多数の画像を楽に扱うことができるようになります。
まとめ
Solar Toolboxを一通り試してみましたが、かなり使えます。特にカラー化の安定性と、コントラストを出しやすい点は気に入りました。ただ、Solar Toolbox単体で十分かというと、そういうわけでもないので、他ツールとの併用がいいのかと思います。もう少し使い込んでみようと思います。