ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:M31

気づいたらもう2024年も年の瀬です。最近なかなか忙しかったのですが、やっと年末の休暇に入って少し時間が取れそうなので、ずっとほったらかしていた画像処理を少し進めます。まずはM31の続きです。


目的

今回の目的は、少し前の記事で書いたM31: アンドロメダ銀河加えて、ε130D+ASI6200MM Pro+CGEM IIでHα画像を撮影することで、前回のカラー画像に赤ポチを加えることと、できるならM31周りの背景の構造を出せればと思います。

カラー画像が焦点距離250mmに19x13mmのフォーサーズセンサー、今回のHα画像が焦点距離430mmに36x24mmのフルサイズセンサーなので、そこそこ似たような画角になります。違う鏡筒とカメラを使った場合に、画像をうまく合成できるのか?これまであまりやったことがないので、うまくいくかのテストも兼ねています。



そもそもなのですが、銀河の赤ポチ自体あまりやったことがなく、これまでは2021年11月撮影のM33と、2023年3月撮影のM106



あと、申し訳程度で2022年4月に撮影して、2023年4月に再処理したM51くらいでしょうか。


Hα画像をどうやって赤っぽい色に持っていくか、銀河のRGB画像に対して赤ポチをどうやって自然に合成するかなど、まだまだ試行錯誤の段階です。今回は背景の淡い所も出そうと思っているので、明るい赤ポチと淡い背景の輝度バランスを崩さないようにマスク処理も必要になるのかと思います。

Hαで撮影できる背景の淡い構造は、M31で近年撮影され始めたもので、例えば100時間越えの撮影などで詳細な構造が出てきています。OIIIにも構造があることもわかってきていて、例えばこちらはFSQ106で3nmのフィルターで、OIII単体で45時間越えの撮影でOIIIの放射を新たに発見したとあります。こういった比較的広視野での背景の構造は、機器を個人で占有しての長時間露光ができるアマチュア天文で、今後も成果が出てくる分野なのかと思います。

今回は自宅でのHαの、高々5時間程度の撮影なのですが、それでも何か構造が見えるかどうかという挑戦になります。


撮影

カラー画像の撮影についてはすでに前の記事で書いているので、ここではε130Dでのナローの方のセットアップを少し書いておきます。

最初のHα画像の撮影日は10月12日の夜です。前日までの勾玉星雲からM31に切り替えるにあたり、横幅でちょうど銀河が収まるように、鏡筒とカメラを最初にセットして以来今回初めてカメラの回転角を90度変えました。カメラの回転については、ε130Dの接眼部に回転機構が標準で組み込まれているので、それを利用しました。スケアリングとか少し心配ですが、今回は恒星に関してはカラーで撮ったものを使うので、背景のみならあまり目立たないでしょう。今後L画像とか撮影したら問題になるかもしれませんが、BXTがあるのでまあなんとかなるでしょう。

赤道儀は前日からセットしてあったので、架台側をいじる必要はなかったのですが、上記のように鏡筒の方を色々いじっていたら結構時間が経っていて、月が沈む0時過ぎをとっくに超えてしまい、撮影開始は午前1時過ぎになってしまいました。

撮影後の朝になって気づいたのですが、ミスってASI620MM Proのbin1で撮影していたことに気づきました。ダーク画像は以前同設定で撮影したものを持っていたのですが、フラット画像は当然撮り直しになります。bin1だとすごいHDD喰いになるので枚数は50枚と控えて撮影、その後画像処理を進めます。

出来上がった画像を見ると何かおかしいです。撮影されたRAW画像を1枚1枚よく見ると、なんと中心が結露していることが判明しました。40枚撮影したのに、使えそうなのは最初の1-2枚だけでした。どうやらカメラのヒーターを入れ忘れていて、撮影後すぐに結露したみたいです。この結露に気づいたのが11月17日に画像処理をした時で(すでにこの時点で1ヶ月以上経っているのでずいぶんのんびりなのですが)、1-2枚だと全く意味がないので結局全部ボツにして、改めてHα画像を撮影することにしました。

2回目の撮影は11月25日で、今回は忘れないようにいつものbin2に設定します。もう冬に近くなってくるので、アンドロメダも早い時間からそこそこの高度に昇っています。夕方から撮影を開始し、月が出てくる午前2時くらいまで撮影を続けましたが、朝確認してみると天気予報の通り午前0時を回ったくらいで雲が出てきて、それ位この画像は全てボツとなりました。使えたのは5時間分の画像で、もちろん本当はもっと長時間撮影して淡いところを攻めたいのですが、北陸の冬は天気は全く期待できないので、この日撮影できただけでも貴重でした。これ以降撮影できたのは前回記事のM45の12月2日のみで、その後も年末まで全く撮影できていません。


Hα画像が淡すぎ

RedCat51でのカラー画像の画像処理があらかた終わっていたのが11月27日で、その後Hαも交えて画像処理をしたのが11月30日。この時点でカラー画像は決定として、カラー画像完成のブログ記事を書いたのが12月5日です。Hαと合わせた画像処理は主に12月1日に終えていたのですが、まだ出来上がりに迷いがあり、少し置いておいたら結局今回の記事になってしまいました。

その間にPixInsightが1.8.9から1.9.0になり、Multiscale Gradient Correction (MGC)でとうとうMARSデータを一部ですが使うことができるようになりました。うまく使えればカブリ除去に劇的な効果があると思われます。

特に今回のHα画像の背景の淡さには辟易していて、高々5時間の露光では背景の構造があることはわかるのですが、それと同じくらいの輝度でε130Dのリング状の残差光が目立ってしまい、このMGCが使って上手く補正できたらとか思っていました。でも残念ながらどうやらMGCはカラー画像にしか使えないようで、今回はとりあえずHα画像で使うことはあきらめました。

4784x3194_EXPOSURE_300_00s_FILTER_A_ABE_HT_center

それでもこのリングを取り除かないことには背景はほとんど出てこないので、MGCの代わりにフラット画像を利用してリングを手作業で丁寧に除きました。具体的にはPhotoshopに移り、かなり輝度を落としたフラット画像を別レイヤーで表示し、差の絶対値で重ね合わせています。フラット画像の輝度を微調整することで、リング状の模様をできる限り消しています。

カラー画像とHα画像は鏡筒もカメラも違うので、画角が違うのですが、合成するためには画角を一致させなければいけません。実際にはカラー画像の方が画角が小さく、Hα画像の方が少し画角が広いので、Hα画像をカラー画像に合わせることになります。これはPixInsightの StarAlignmentを使うことで特に問題なく解決しました。PixInsightの1.9.0からImage Synchronizationという新機能ができたらしいので、今後はそれを使ってもいいかのかもしれません。

下の画像は、RedCat51のカラー画像と合わせる直前のHα画像に相当します。リングを補正したHαから、さらにカラー画像の銀河をモノクロにしたものを引いています。その後、赤ポチ部分にマスクをかけ、背景をさらに炙り出しています。上の画像と比べると相当マシになり、背景の構造が見えてきているかと思います。まだリング構造は少し残っているように見えるのですが、元のカラー画像に対してこの画像を比較(明)で重ねるため、相対的に暗いリング構造は、最終画像にはほとんど出てこなくなるくらいになります。
4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_HA


結果

最終画像です。

「M31: アンドロメダ銀河」
4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_red_cut
  • 撮影日: 2024年10月13日0時46分-4時33分 (カラー)、2024年11月25日18時24分-23時39分 (Hα)
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)  (カラー) 、ε130D (430mm、F3.3)  (Hα)
  • フィルター: UV/IR cut  (カラー)、Baader 6.5nm  (Hα)
  • 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)  (カラー)、CGEM II  (Hα)
  • カメラ: ZWO ASI294MC Pro (-10℃) 、ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)  (Hα)
  • ガイド: なし (カラー)、f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング (Hα)
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分 x 64枚 = 192分 = 3時間12分 (カラー)、Gain 100、露光時間5分 x 60枚 = 300分 = 5時間00分 (Hα) 
  • Dark, Flat: なし (カラー)、Gain 100、露光時間5分 x 117枚 = 585分 = 9時間45分 (Hα)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

前回のカラー画像ではあまり色を出さなかったのですが、これは今回のHαの赤とのコントラストを出すことを見越してです。モノクロに近い銀河に、Hαの赤という組み合わせを狙ってみました。赤ポチは十分明るく撮影できているので、まあ問題ないでしょう。そこそこ派手にしましたが、海外の例を見ているともっと派手なものもあるので、まあこれくらいしておきます。

さて肝心の背景の構造ですが、そもそも正しいのか?他の画像と比較しても、そこまで間違っているわけではなさそうで、かなり明るい部分だけですが何か撮れているのは間違いなさそうです。だからと言って十分とはとても言い難く、ε130Dの比較的明るい鏡筒だとしても撮影時間が絶対的に足りていないでしょう。これ以上の本当に淡いところは全く見えませんでした。自宅での撮影なので光害が問題の可能性もあり、ここら辺は暗いところでの撮影と比較して今後定量的に検証していきたいと思います。改善点としては、一つは暗い場所に行くことですが、もう一つはHαフィルターを3nmのものに変更する手があるかと思います。

なかなか遠征で時間を稼ぐのは今の体力では現実的に難しそうなので、ナローバンドフィルターですでにスカイノイズが無視できて、ダークノイズかリードノイズに支配されているなら、本格的に3nmフィルター導入というのは、アリかもしれません。本当に得するかどうか、こちらも定量的に検討してみたいと思います。


まとめ

秋の代表アンドロメダ銀河も、のんびり処理していたらいつの間にか年末の冬です。残りの未処理画像は夏の網状星雲と、勾玉星雲です。相変わらず天気は悪いので、まだしばらく撮影はお預けになりそうなことを考えると、焦って処理を進めても勿体無いので、ゆっくり進めようと思います。

今年の記事は多分これでおしまいです。すでに実家の名古屋に帰省してこの記事を書いています。みなさん、どうか良いお年を。

前回までの紫金山アトラス彗星もやっと落ち着きましたが、その後は天気がずっと悪かったり、忙しかったり、イマイチ盛り上がらなかったりで、ブログ記事はしばらく休んでいて、少しのんびり画像処理を進めていました。今回は10月にSWAgTiで撮影したM31アンドロメダ銀河についてです。


自宅に着いてから、さらに撮影

10月12日、昨日の馬頭星雲の撮影に引き続き、まだ天気が良さそうだったのでそのままのセットアップで撮影続行です。昼間は置きっぱなましだったので、極軸を取り直さなくていいので楽でした。

この日はアンドロメダ銀河狙いです。実はこの日は2セット出していて、RedCat51+ASI294MC Pro+SWAgTiでカラー、ε130D+ASI6200MM Pro+CGEM IIでHαで、後で合成する予定ですが、まずは今回は簡単なカラー画像のみの処理までです。

アンドロメダ銀河は結構大きいので、SWAgTi撮影の方の画角を少し広げたくて、カメラをこれまでの1/1.2インチのUranus-C Proからフォーサーズの上記ASI294MC Proに変更しました。あと、銀河なので、これまで入っていた2インチのDBPを外して、同じく2インチのUV/IRカットに変更しました。

SWAgTiを含む架台側のセットアップはそのままでよかったのですが、鏡筒の方を色々いじっていたら結構時間が経っていて、月が沈む0時過ぎをとっくに超えてしまい、撮影開始は午前1時過ぎになってしまいました。

IMG_0177
朝、片付け前の様子。

撮影ソフトはNINAで、ガイドなしでディザーありのSWAgTi特有の「お気楽、でも縞ノイズは出ないよ」撮影になります。撮影時のミスを避けるなどを考えると、SharpCapよりもNINAの方が圧倒的に気を遣わなくて楽で、SWAgTiではこの「NINA、ガイドなし、ディザーあり」がほぼデフォルトになってきました。

RedCat51にASI294MC Proを付けての初撮影だったので露光時間を少し迷いましたが、とりあえず1枚あたり3分としました。3分露光だと、250mmくらいの焦点距離でも、普通の赤道儀ではピリオディックモーションが避けきれなくて採択率が下がってしまうおそれがあります。ここはSWAT350 V-SPEC Premiumの高精度追尾のおかげで普通に100%の採択率を目指すことができます。

ゲインはHCGがオンになる120一択です。HCGのおかげで13stopsくらいのダイナミックレンジを取ることができます。stopsはbitと同じで、2の13乗 = 8192階調で輝度を表すことができるということです。

ゲイン120一択と言いましたが、選択できるゲインは露光時間と密接な関係があります。もし高精度追尾が無ければ、露光時間を十分に伸ばすことができないので、対象天体の淡いところを出そうとすると、その分ゲインを上げなくてはいけません。ゲインを上げることで淡いところの輝度を読み出しノイズより大きくして撮影する必要があるからです。ゲインというのは、「露光時間を延ばせない環境下において、淡い部分を読み出しノイズ以上に持ち上げてダイナミックレンジ内に入れる」という、非常に便利な機能であると考えることもできます。その一方、ゲインを高くすると、当然「ダイナミックレンジを犠牲にしてしまう」ので、恒星などが飽和する可能性が高くなってしまいます。

このように考えると、SWAT350 V-SPEC Premiumの高精度追尾は単にガイド無しで1枚あたりの露光時間が延ばせるだけでなく、「最適なゲインを選ぶ選択肢を持てる」ということが利点の一つになるのかと思います。ただし単に1枚あたりの露光時間だけ伸ばすことができても、トータルで長時間露光を目指すと縞ノイズがどうしてもついて回るので、SWAgTi特有のガイド無しディザーで縞ノイズを避けるというわけです。改めて考えてみても、SWAgTiはかなり理にかなっているのかと思います。

さて、こんなSWAgTiですが、撮影が一旦始まってえば、あとは基本放置で楽なものです。今回の撮影は0時46分スタートで、午前5時1分終了でした。といっても、自宅なので寝ていただけで、後でチェックしたら天文薄明開始の午前4時半頃からあきらかに明るくなっているのでカット。それ以外で省いたものは合計7枚で、7枚のうち4枚は人工衛星がかなり明るく写っていたので、Integration時のsigma clippingなどで綺麗に取り除けない可能性を考えて除きました。残り3枚は連続していて、どれも赤径方向の星像のジャンプで、特にそのうちの1枚はかなり大きなジャンプでした。原因は不明ですが、機材トラブル、風、地震、周りに車や人がいたなどの可能性が考えられます。結局使えたのは全80枚のうち64枚で合計3時間12分です。あえて除いた天文薄明と人工衛星を無視すると67枚のうち64枚なので、96%程度の採択率が今回のSWAgTiの実力と言っていいでしょうか。


画像処理

下は、3時間12分の画像をPixInsightでスタックまでしてオートストレッチだけの画像です。色などは何もいじっていません。例の如く、お気軽撮影を目指しているので、ダーク補正もフラット補正もバイアス補正も無しです。

masterLight_BIN-1_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

まず心配だったのは、ダーク補正をしないことによるIMX294センサー特有のアンプグローです。実際に右上に少しだけ明るい部分が見えていますが、高々この程度です。これを消すためにダークフレームを撮影して、ダーク補正するという手間をかけて、かつダークカレント起因のダークノイズを増やしてしまうことを考えると、ASI294MC Proでもダーク補正をあえてする必要もないかと思います。

1/1.2インチのUranus-C ProよりもフォーサーズのASI294MC Proの方がセンサー面積が大きくなったので、周辺減光も少し心配でした。フラットフレームを撮影していないので、かなり大雑把な見積もりですが、ABEの2次と4次で補正した時のbackground画像の輝度から推測するに、最大でも4%程でした。この程度なら、ホコリなどの局所的な欠損さえ無ければ、光学的なフラット補正はなくても十分なのかと思います。

繰り返しになりますが、上の画像はスタック直後にオートストレッチだけしたもので、彩度アップなどの色調も何もいじっていないです。それでも星の色も分かりますし、M31本体の色もある程度出ています。簡単セットアップで、3時間放っておくだけで、スタック以外特に画像処理もせずにこれだけの画像が撮れるなら、SWAgTiでのこのセットアップはかなりすごいのかと思います。

次が、PixInsightでABEの4次、SPCC、BXT、MaskedStrerch、NXTをかけたものです。次のPhotoshopでの処理のために、輝度は少し抑えています。

4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT_AS_MS_NXT

こちらも色調整はSPCCのみで、あえて彩度はいじっていませんが、更に色がはっきりしてきています。


仕上げの色使い

もう上の画像でも十分かと思いますが、最後にPhotoshopに持っていって、少しだけ仕上げします。

仕上げはかなり迷いました。アンドロメダ銀河の色って、人によって本当に千差万別ですね。AstrobinのM31で検索した結果を見ると何が標準か全くわからなくなります。派手なものは真ん中が金色に輝いていて、端の方はかなり青に寄っています。地味なのは全体に緑色っぽいものでしょうか。上の画像だとかなり地味な色居合いになります。緑の代わりに黒と白でモノクロっぽくして、あえて赤ポチを目出させているようなカッコイイものもあります。

前回のM31の撮影は4年前の2020年でFC-76とEOS 6Dを使っています。


4年前の時も4年ぶりの撮影とか言っているので、4年枚にメジャー天体を撮影し直すようなペースになっているということでしょうか。6Dのカラー撮影で赤ポチを少しでも表現しようとするような無理をしている感じで、かなり派手目な色使いになっています。今回はHαは別撮りのものがあるので、ここでは比較的シンプルな銀河っぽい感じにしてみました。

「M31: アンドロメダ銀河」
4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_cut
  • 撮影日: 2024年10月13日0時46分-4時33分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
  • フィルター: UV/IR cut
  • 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)
  • カメラ: ZWO ASI294MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  なし
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分 x 64枚 = 192分 = 3時間12分
  • Dark, Flat: なし
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

銀河のシンプルさに比べて、恒星の色をある程度出しました。上にある明るい青い恒星と、散りばめられたオレンジの恒星のおかげで、寂しさはあまり感じられないと思います。

銀河中心が飽和しないように、また腕の構造がある程度はっきり出るようにしてみました。色は私の中ではかなりおとなしめですが、これはのちの赤ポチで派手になることも見越して少し抑えています。


恒例のアノテーションです。周りにすごい数の銀河があることがわかります。
_4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_cut_Annotated

PGCを無くしたこっちの方がシンプルでいいでしょうか?でもちょっと寂しぎですかね?
_4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_cut_Annotated1


過去画像との比較

ちなみに4年前の画像を再掲載しておきます。
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4

今回のものと比較してみると、やはり見た目が全然派手です。あと、私はもともと恒星の処理が苦手で、この頃はまだStarNetで恒星分離ができ始めた頃で試行錯誤をしている最中で、今見るとかなり酷いです。さらに今回はBXTも使えるので、恒星に関しては進歩があったのかと思います。

機材でいうと、口径は76mmから51mmに減っていますが、F値では8から4.9になっているので、単位面積あたりの光子数が多くなっていて、今回の方が有利になります。画角はほぼ同じ(微妙に今回の方が広角)なので、その分センサー全体の大きさは違いますが、S/Nは単位面積あたりの光子数で決まるので、S/N比較ではあまり関係ないです。S/Nはピクセルサイズと密接に関係があり、6Dの6.5μmとASI294MCの4.6μmなので、信号が1ピクセルの面積に比例し、1ピクセルあたりの読み出しノイズは同じと仮定して、その他ノイズを無視してS/Nを考えると、計算上では(8/4.9) / (6.5/4.6) = 1.15とほとんど差は無くなってしまいます。

仮にトータル露光時間が同じとすると、信号Sが1.15^2倍前回の方が今回大きく、ノイズNが1.15倍だけ今回増えるので、S/Nは前回よりも今回の方が1.15倍いいことになるということで、機材としては今回の方が有利ということです。その代わりに分解能が前回の5472×3648から、今回は4144×2822と悪くなっています。S/Nをとるか、分解能を取るかですが、それぞれ別個のパラメータで、このように数値的に比較ができるものなので、画像と合わせてどちらをとるか考えればいいのかと思います。

実際には前回の露光時間が4時間35分で、今回が3時間12分なので、Sqrt(275/192)=1.20となり前回の方が有利なので、先の1.15倍と相殺してS/Nはほぼ同じと思っていいでしょう。分解能は6Dの方がいいので、機材と撮影条件では前回の方が良かったということになります。

それでも見かけでは今回の方がかなり良く見えるのかと思いますが、この違いは鏡筒自身の性能の差、さらにはカメラ自身の性能の差、あとは主に画像処理によるものかと思います。画像処理はBXTなどの分解能をソフト的に上げる効果もあるので、そこら辺も効いているのかと思います。


まとめ

4年ぶりのアンドロメダ銀河の撮影でしたが、機材はSWAgTiのおかげもあり鏡筒と合わせて軽くシンプルになり、撮影もガイドなしでかなり楽でした。ある意味、ここが一番大きな進化だと思います。実際の仕上がりの差はすでに出ていますが、L画像を別途撮影してさらに分解能を増すという手もあるかと思います。

SWAgTiは私の環境ではサブの標準機材としての位置を完全に確立しました。手軽だけれど信頼度は十分です。最近はずっと天気が悪いのですが、冬の星座も出てきているので、天気がいい機会があればパッと出して貪欲に狙っていきたいと思います。



日記: 金沢星の会70周年記念展示会@21世紀美術館

昨日の土曜日、午前中に金沢で用事があったので、午後から21世紀美術館に行って、金沢星の会の70周年記念の展示会に顔を出してきました。

IMG_0521

たまたま私の顔に気づいたNさんが声をかけてきてくださって、いろいろ案内してもらえました。今回70枚展示したとのことですが、70周年で70枚で、狙っていたわけではないですが圧巻でした。というのも、21世紀美術館は北陸では随一の規模を誇る美術館で、集客量もすごくて、今回訪れている間もひっきりなしにお客さんが訪れています。来ている方は星好きというよりは、ごく一般の方がほとんどのような印象でした。このような大きな場所での展示会はかなりインパクトがあり、参考にできるところが数多くありました。準備などもかなり大変だったと想像しますが、それだけの価値があるものだと思います。

展示は星景、季節ごとのDSO、太陽、月、惑星、彗星など多岐に渡り、奥の部屋ではタイムラプス映像を常時流していました。その部屋にも壁に写真が飾られていて、テーマは「能登の天体写真」ということです。今年初めの能登半島地震からの復興を意識しているのかと思います。これも全国から観光に訪れる金沢で、代表的な観光スポットにもなっている21世紀美術館で展示会を開くことが、意義に繋がっているのだと思いました。

天体写真は会員の方達の個性がとても出ていて、撮影者の名前を見ていると、この人はこんな傾向だとか、この人はこんな色使いが好きなんだなとか、いろいろ楽しむことができました。今回の記事と同じアンドロメダ銀河も大きなパネルに引き伸ばして飾ってあり、とても綺麗でした。ちょうど会場にアンドロメダ銀河を撮影した方が来ていたので、話をすることができましたが、ε160と6Dで撮影したとのことで、自分の環境と比較できるので面白かったです。

自分が所属する富山県天文学会も長い歴史があるので、今後何十周年とかなる時には、今回の展示会を参考にできればと思いました。

最初の予報だと28日の水曜に富山かとか言っていた台風10号ですが、ずっとノロノロで進んでいるのか止まっているのか、予報でもどちらに行こうとしているのかわからないのですが、結局富山に来るのは週明けの月曜とか火曜とかになりそうです。そんな土曜の夕方、家族は外で食べてくるとのことなので、自分は近くのかつ家でカツ丼を食べ、外に出てみると意外に晴れています。ちょうど科学博物館の観望会が始まりそうな時間だったので、ちらっと寄ってみることにしました。

それでも台風前なので、何か少しでも見えたらいいやくらいの気持ちで科学館に到着して広場に出てみると、何と一面の晴れです!

実はほとんど何も準備してこなかったので、車にある機材で最低限の電視観望です。いつものFMA135とトラバースとUranus-Cは積んであったのでラッキーでした。PCはカバンの中に入っていたM1 MacのVMware上のエミュレータ上のArm Windowsです。机は車に積んであったのですが、いつもの天文椅子は玄関に置きっぱなしだったので、キャンプ用の椅子で代用です。機材は何とかなったので早速セットアップを始めますが、流石に全く準備をしてこなかっただけあって、トラバースは電池切れ、Arm Windowsのディスプレイの解像度は全然安定せず。土壇場での観望会はやはりなかなか厳しいです。

IMG_9922

それでもリクエストされた北アメリカ星雲を入れてみると、透明度がかなり良いのか、富山の中心街に近いのによく見えます。悲しいのは、流石にこんな台風前に星を見ようとは思わないようで、お客さんがすごく少なかったことです。せいぜい3−4組でしょうか。このひはカターレ富山の試合があり、24時間テレビもあり、台風前なので皆さん自宅でおとなしくテレビでも見ているのではとのことでした。

最初北アメリカ星雲を見ていたのですが、バラフライ星雲を見たいというリクエストが小さな女の子からありました。さそり座方向ですが、低いのと何より小さいんですよね。焦点距離135mmでは如何ともしがたく、代わりにM8: 干潟星雲とM20: 三裂星雲を見てもらいました。あまり高い空ではないのですが、雲も少なく、よく見えていました。
スクリーンショット 2024-08-31 200631

そんな中もう一人、すごい女の子がいました。北アメリカ星雲を見せたら北アメリカ大陸の地質とかを話し出すし、アンドロメダ銀河を見せたら30億年後に天の川銀河と合体するんだとか、なんか異常に詳しいです。年齢を聞いたらなんと5歳。「将来は天文学者かな?」と聞いたらキッパリと否定して「違う、古生物学者!」と一言。お母さんによると、恐竜も大好きだなんだそうです。宇宙も大好きらしくて、この富山市科学博物館の観望会もここ半年くらいほぼ毎週来ているとのことです。多分これまでも会っているはずですが、話したのは今回が初めてだと思います。帰る時に「また来週」と言っていたので、これからも会えるかと思います。将来どうなるか、今から楽しみです。

今回の電視観望は眼視との比較が多かったです。M13: ヘルクレス座球状星団とM31: アンドロメダ銀河は眼視でも見えたようです。
スクリーンショット 2024-08-31 202432

電視のほうではM31の渦もなんとかわかり、M32とM101もわかったので面白かったみたいです。
スクリーンショット 2024-08-31 203948


M27は眼視では厳しかったようです。M57は輝度が高く見えるのですが、M27はそれに比べると大きけれども淡いんですよね。
スクリーンショット 2024-08-31 210422



眼視では土星やアルビレオも見せていたようです。C11が出ていて、終了間際に海王星を入れてくれていました。私も見せてもらいましたが、きちんと面積があり、青っぽく見えていました。

お客さんが少なかったので、アットホームな観望会の雰囲気でした。来ていた子供は小さい子ばかりだったので、21時には終了して撤収です。撤収後、スタッフさんとボラティアさんの何人かで室内に入りお茶を飲みながら話していたのですが、ボランティアさんの一人がSORA-Qという月探査の小型ロボットを持ってきて、机の上で動かしていました。JAXAとタカラトミーの共同開発で発売しているロボットらしくて、昨年発売開始ですぐに完売してしまい、一年経ってやっと次の配布が始まったそうです。この方は春に予約して、やっと購入できたそうです。金属製で、カメラもついていて、値段もそこそこ。スマホで操作できます。おもちゃメーカーが作っていると言っても、おもちゃというよりロボットです。でも、本物の月探査機のように、砂の上を走らせようとするとギヤに砂が噛んでしまうので「あくまでホビーだ」と、オーナーの方は言っていました。

IMG_9928

帰り際に空を見上げたら、もうすでに全面曇り。自宅についてからもずっと曇りなので、本当に観望会の時だけ晴れてくれていたようです。

台風で全く期待していなかった観望会ですが、透明度もかなり良く、多分科学博物館で見せた電視観望ではこれまでで一番綺麗に見えた口ではないでしょうか。せっかくの好条件だったので、もっとお客さんが来てくれればよかったのに...。

小海の「星と自然のフェスタ」のレポート、2日目後半までの途中ですが、今回は番外編です。星フェスで出会った、富山の近くに住むご家族が二組、自宅に遊びに来てくれました。

IMG_7156a


なぜ集まることになったのか

元々の経緯は書き出すとものすごく長くなりそうなので、できるだけ簡潔に書きます。

そもそもの発端は、富山市天文台が2018年の長雨による遊歩道陥没の後に長期休暇となり、2021年3月に正式に閉館となったことにあります。 教育県を標榜する富山に、天文教育に有用な施設がなくなるということは非常に寂しいことです。私が所属する富山県天文学会は、富山市に天文台の早期再設置を願い、活動を続けています。その一環として、天文台候補地の地元の方に星の魅力を伝える説明会を開きました。その際、明るい街中でも星雲、星団、銀河などを観察する手段の一つとして電視観望を紹介させて頂きました。その時に取材に来ていた富山テレビの方から、ちょうど小海の星フェスの前くらいに一度電視観望を実演してもらえないかという依頼があり、その日をいつにするか模索していました。星フェスに来てもらうことも提案したのですが富山県外でさすがに遠いということで、では自宅でではということになったのですが、天気が不安定でなかなか日程が決まりません。

そんな折、小海の星フェスで電視観望講演に参加してくれた方のうちお二方が、富山の近くに住んでいることがわかり、電視観望会のお声掛けしたのですが、ちょうど取材もあるのでその際に一緒に見ていただくのはどうでしょうという話になりました。

何度かの日程調整の後、次週は全く天気がダメそうなので、週末金曜にもしかしたら夜半から曇るかもしれないという覚悟の上で、前日の木曜に日にちを11月18日の金曜と決定し、集まる予定の皆さんに連絡しました。局の撮影の都合や、ご家族の都合もある中、急な決定にも対応して頂いてどうもありがとうございました。


富山テレビの方に電視観望を見せる

さて当日の夕方、18時頃に玄関チャイムが鳴り富山テレビのスタッフの方がいらっしゃいました。取材の方は放送を見てもらうとしてここでは詳しく書きませんが、電視観望を一通りデモして見てもらいました。カメラマンの方は小さい頃ミザールの赤道儀まで持っていたということで、かつては天文少年だったようです。久しく星には関わっていなかったとのことですが、今は映像関係の仕事ということもあり、CMOSカメラとかにもかなり興味津々で、富山の田舎とはいえこの明るい住宅街の中で口径わずか3cmの望遠鏡と言えるかどうかもわからないくらいの小さな機材で、星雲などが見えてくる様子には相当驚いているようでした。多分同世代くらいの方で銀河鉄道999のこともあると思いますが、「アンドロメダ『星雲』も見えますか?」といっていたのが印象的で、ちょうど小海で撮った画像と、実際その場で電視観望で見たアンドロメダ『銀河』にかなりインパクトを受けたようです。

もっと面白かったのがスタッフとして一緒に来ていた若い女性の方で、そもそも望遠鏡を覗いたこともないそうです。それではと、いつものSCORPTECHの二つ穴ファインダーの屈折を出して「あの明るいのが木星です。自分で操作して入れてみてください。」と試してもらいました。実際には木星は少しずれていて入らなくて、最後私が導入して見てもらったのですが、何度か見たのちに衛星や縞もわかったようでもう大騒ぎです。

さらに次はかなり低くなっている土星を導入してもらいました。今度は自分で入れることができ、土星と認識できた時の騒ぎ様のすごいこと。もう「キャー」とか言いながら大はしゃぎです。やっぱり自分で操作する望遠鏡って楽しいんですよね。自分で導入して、初めて土星の輪が見えた日には、叫びたくなるのもわかる気がします。これって子供も大人も同じなんだと思います。なんか取材のことはもう忘れていて、その姿を見てるだけで来てもらった甲斐があったなーと思ってしまいました。


Oさん一家

ちょうど土星を見ていた19時半頃でしょうか、一組目のご家族が到着です。お隣の石川県の内灘からやってきたOさん一家。小学5年生の男の子と、そのご両親です。この子、会場で会った時からかなりの天文っ子ということは薄々わかっていましたが、いろいろ話してみるとかなりの子です。興味も知識もハンパではありません。私の星友の一人、中1のMちゃんと会わせてみたいです。どんな会話になるのか興味津々です。

話を聞いていると、どうもお父さんとお母さんのほうが子供に刺激されたようで、星を家族で初めて2年になるそうですが、すでにAP赤道儀はあるし、VixenのED鏡筒はあるし、FMA180とNeptune II-CをAZ-GTiに載せているしで、もう立派な沼の住人です。この日も機材をどんどんセットアップしていきます。北陸唯一の天文ショップUCトレードが近いので、機材はそこでいろいろ相談しているとのことです。

お父さんは電視観望に興味があり、これまでなかなかうまくいかなくて、星ナビを見て小海星フェスのことを知り、講演を聞きに来てくれたとのことです。そこでカメラのゲインを相当高くしていいこと、ヒストグラムを見てのあぶり出が大切なことを理解し、小海から帰ってから自分で試してみたら見事にうまくいったとのことです。Twitterには早速月曜にカリフォルニア星雲、前日の木曜には馬頭星雲と燃える木の電視観望がうまくいっている投稿がされていました。この日もオリオン大星雲や馬頭星雲などうまく出せていました。ここまで出るのなら、もう一人でどんどん試しいけば大丈夫なくらいかと思います。

7EFE8145-E38A-45C0-8FD7-7703B7906FCE
O一家のお父さんがFMA180とNeptune II-Cで見事に馬頭星雲ゲットです。


Eさん一家

滑川からEさん一家が程なく到着。小学3年生の男の子と、お父さん、お母さんです。でも3年生には夜は少し厳しいかもしれません。到着するちょっと前に車で寝てしまったみたいで、外に出てきはしましたが、キャンプ用の椅子ですぐに寝てしまいました。寒そうだったので寝袋を出したのですが、寝袋の中は心地良かったのか、そのままぐっすり寝ていました。

Eさんのところはお父さんの方が星に夢中なようです。持っているのは入門用の池田レンズ工業のリゲル60Dなのですが、実際に持ってきてもらってそこにカメラをつけてもらおうと思っていました。惜しむらくは接岸部が1インチの25.4mmなので、今のアメリカンサイズが取り付けられないのです。これは私も確認ミスでした。アメリカンサイズから1インチの変換アダプターは自宅にあるのですが、逆は残念ながら持っていません。ネットなどで調べて次の機材を考えているとのことですが、お母さんの方からなかなか許可が出ないようで、やりとりを見てると楽しかったです。

話しているとお母さんは、そこまで星には興味がないごくごく一般の感覚の方のようです。せっかくなのでいつものクイズを出してみました。太陽はどちらから昇るかというやつです。これはすぐに東からと答えられたのですが、月がどちらから昇ってくるのかというのにはさすがにパッと答えることができません。あ、でもOさんのところの5年生の子はすぐにボソッと「東から」と出てくるので、この子はさすがです。お母さんに太陽が昇る理由(地球が自転しているから)を考えてもらい、月も同様に回っていることを理解してもらおうとしました。でも月がそもそも夜空を動いていることを知らなかったようなのです。そういえば観望会に来るような人はそもそも星が好きな人が多いのです。本当に一般の感覚に近い方はなかなか手強いです。ここからは私も本気になります。

まずやはり月も空を動いていくことから理解してもらわなくてはいけません。
  • 太陽と月はちょうど反対の位置にいると仮定して、
  • 太陽が昇って昼になるので、
  • 月が昇ると夜になるということ
からゆっくり理解してもらいました。すると
  • 月が動くこと、
  • 動くのは地球が回っているから、
  • そうすると東から昇るということ
を理解してくれました。ここからは早くて、
  • 星が東から昇ること、
  • 中には昇ったりしなくて動かない星があること、
  • それが北極星で、
  • さらに地球の回転軸の延長上に北極星が、
  • しかも南側にも動かない星があるはずのこと
までトントン拍子で理解していきました。お母さん十分センスがあります。

知識として覚えただけのことはすぐに忘れてしまいますが、自分でしっかり考えたことはなかなか忘れることがありません。たとえ忘れてしまっても、最初から考え直すこともできます。お母さん、少し自信がついたようで「子供にも教えることができる」とのことでした。他の人に説明することで、どこがあまりわかっていないのかとか自覚できるので、さらに理解が進むんですよね。

後日メールをいただきましたが、今回お母さんの方がすごく勉強になったとのことでした。私も本気モードの説明で、実はこのやりとりが一番楽しかったりしました。

お父さんの方はというと、単身赴任での引っ越しが決まっているそうです。行き先は三重とのこと。三重といえばアイベルです。いい機材が見つかることと思います。


電視観望

元々の目的は、Oさんも、Eさんも小海の講演を聞きにきてくれていて、せっかくなのでもう少し自宅でいろいろ試してみましょうということでした。せっかくなので、講演の内容がうまく伝わったかも聞いてみました。実際話もよくわかって、かなりいろいろ参考になったとのこと。サイトロンブースでの実演を見ることで、さらに理解が深まったとのことでした。やはり話だけでなく、その日の天気にもよってしまうのですが、実際に操作しているところも見てもらうのがいいと改めて実感しました。

さて、この日の電視観望はというと、実はそんなに種類は見ていません。M57、M27、M31、北アメリカ星雲、網状星雲、三日月星雲くらいだったでしょうか。むしろみんな話に夢中だった感じでした。楽しかったですよ〜。

01_NAmerica

Stack_87frames_278s_WithDisplayStretch_small

2022-11-18-1031_7-Capture_00001_WithDisplayStretch

Oさんの所が「メシエ天体&NGC天体ビジュアルガイド」を持ってきていて、画面で見えている天体と本に載っている天体をみんなで比べて見てました。本に載っているのがそのまま見えるのが楽しいのと、カメラの回転角が違うので本を傾けて見たりと、本当に楽しかったです。

OさんのところはSuper Widebino36を持ってきていて、私も星座ビノをいくつか出して、見比べてもらいました。すばるが高く上がっていて、星座ビノでみると「星がいくつも見えるー!」と誰かが叫んでいました。アンドロメダ銀河は私はちょっと探してわかりましたが、実はこの日は透明度があまり良くなく、ほとんどの人が見つけられなかったようです。夏の大三角はみえますが、白鳥の形はほとんどわからないか、形を知っていればかろうじてわかるくらいでした。


曇ってきた...

22時頃でしょうか、雲がだんだん出てきました。家に入ってもらい、少し機材を見てもらいました。まずは玄関に出しっぱなしにしてあるセレストロン赤道儀3兄弟(Acvanced VX、CGEM II、CGX-L)を見て、Oさん息子が大興奮。私の部屋では鏡筒とかカメラとか、二階に上がって雑誌コレクションとかみて盛り上がりました。

22時半頃でしょうか、外に出ると空はすっかり雲に覆われています。子供たちもさすがに眠そうです。後片付けをしてここで解散、お別れです。楽しかったのでまた遊びにきて欲しいです。おみやげにEさんからシャトレーゼの濃厚たまごプリン、Oさんからサツマイモとお菓子、ジャムを頂きました。プリンとおお菓子は早速いただきましたが、とても美味しかったです。でも次回からは、このブログでもよく書いているのですが、本当の本当に(こう書かないと、富山では逆にもってきてという意味になるらしいです)お土産とかなしでお願いします。私としては、気楽に何度も来てもらってみんなで楽しい時間を共有できることが一番で、毎回気を使っていただくことは本末転倒になってしまいます。

新しい星友達(と勝手に思ってます)ですが、近場なので集まれるからいいですね。また他の家族も招いて何かやりたいと思います。懲りずに次回以降も気軽に来てもらえるとうれしいです。


 

今年も長野県の小海町で開催された「星と自然のフェスタ」に参加してきました。昨年はこんな感じでした。



今年は11月11日(金)から13日(日)までの3日間ですが、金曜は昼間は会場設営で、夕方から「古スコ懇親会」と呼ばれる古い望遠鏡を持ち込んでの参加者と関係者の懇親会があります。なのでメインは土日、特に土曜の夜が星を見ながらのフェスとなります。


今回の星フェスの目的

前回はコロナ明けでの久しぶりの星まつりということで、人に会うことが大きな目的でした。今回の目的は、少し前の記事でお知らせした通り、やはり電視観望の講演が大きいのかと思います。

 

今回の講演は昨年の星フェスの時から頼まれていて、夏くらいに正式に依頼されました。何の話をするか色々考えていたのですが、やはり電視観望が広まりつつあり、まだまだやり方を聞きたい人もたくさんいるだろうということで、電視観望をターゲットにしました。

当日の講演の準備のこともあるので、今回はリエックスホテルの部屋をとってもらいました。ホテル泊で、しかも大好きなシャトレーゼ系列のホテルとなると妻も興味が湧いたようで、ツインルームとのことなので、今回は妻も一緒に参加することになりました。


出発

金曜日は休暇を取り、昼前に出発することにしました。

B68AF242-AAED-4FE3-AB11-3837680A175C

土曜からでもよかったのですが、土曜午後に電視観望の講演があり、土曜午前の移動だと何かあったら時間的に厳しいそうなので、準備などに無理がないように金曜から泊まることにしました。星歴があまり長くない私としては、古スコ懇親会はせっかくなので参加させてもらおうというくらいの動機です。

富山インターから上越JCTで上信越道に入ります。途中小布施SAで昼食。小海会場には16時前くらいに到着し、すぐにホテルにチェックインしました。

35B8E38A-F602-4FDE-9A7E-3AB411C476CB

外のメイン会場では準備が着々と進んでいました。

1C4A7A91-E1B1-429E-80C2-5CB3F5C44CC3


古スコ懇親会

古スコ懇親会開始予定の17時前くらいに、ホテル内の会場にいきます。久しぶりに会う星仲間との会話がはずみますが、懇親会が全然始まりません。聞くところによると、東京方面からの高速の佐久IC手前くらいで事故があり、通行止めで一部到着していない人がいて、18時開始に変更されたとのことです。

18時になり懇親会の開始ですが、やはりまだ到着していない方もいるようです。それでも何人かの方からの挨拶があり、立食形式で懇親会が始まりました。途中、Vixenの方達がかなり遅れて到着していました。後で少し話したのですが、遅く到着てもきちんと食べることが出来たのとことです。懇親会では軽食のみと聞いていたのですが、食事がとても美味しくて余るほど量がありました。どうもホテルのブッフェのメニューと重ねているようで、そのため様子を見ながら量が調節できていたようです。

食事をしながら、参加者のうちの30人くらいに機材自慢を順にしてもらっていました。例えばutoさんは2.5cmの手作りの反射望遠鏡で、モデルのパロマー天文台のヘール望遠鏡のスケールに合わせて人間の模型が置いてあったりします。
B1BBEA2C-4779-4874-B9E5-8B076D802F43

ピンクのVixenの望遠鏡が可愛いくて、オーナー様によると知り合いの小学生の女の子に大人気だそうです。すごくきれいに塗れているなと思ったら、ラッピングだそうです。この方法はいいかもしれません。
IMG_7077

銀河鉄道の夜に出てきた(と思われる)望遠鏡が紹介されたり、
8AF0F1FD-A153-4807-9C26-1A0797C3C38F

ダウエル社の復活?記念グッズと、なんと当時の看板が披露されました。
E172BC2E-6DB4-4223-8953-7C12A9AD58F3

私はというと、スーパーチビテレと当時の物議を醸した天文ガイド1980年6月号と8月号を展示し、一部の人の強烈な興味を惹いていたようです。
9674C726-24AA-4F6E-A1EA-BB02A49BA12D


夜のメイン会場

懇親会の最後に記念写真を撮り、そのまま流れ解散で一部の人は外のメイン会場へ星見に。私も一旦部屋に戻り妻に「遅くなる」と断って、その後メイン会場に行ってみると、中央にいくつもの望遠鏡が並んでいて、多くの人が集まっていました。この日は昨年よりも全然寒くなく、かなり快適でした。ドブソニアンをいくつか覗かせてもらいましたが、木製の縞がかなりの本数見えるなど、シンチレーションが非常に良かったのが印象的でした。Nickさんのナイトスコープは相変わらず強烈です。月夜で三日月星雲がごくごく普通に見えていました。

そんな中、八王子からいらしている方が、電視観望をしていました。1分露光でライブスタックして、天体写真に仕上げるとのことです。月がかなり明るく出ていましたが、アンドロメダ銀河がきれいに出ていました。同じ場所でもう一人話している方で、長野の上田市から来ていると言っていましたが、電視観望に興味があるとのことなので、私も電視観望セットを出すことにしました。ただ、時間的に温泉に入れなくなりそうなので、「一旦温泉に行ってから始めるので、少し時間がかかるかもしれません」と伝えておきました。

部屋に戻ってそのままお風呂セットも用意して、すぐに温泉に向かいます。私は熱いお風呂が苦手なので、温泉に行ってもいつも短時間ででしまいます。この日も15分くらいのカラスの行水で、(楽しみの一つの)恒例のアイスを2本食べてます。その後部屋に戻り、すぐに機材を持って再びメイン会場に行きます。

先ほど話した方もまだ残っていて再会できたので、早速説明しながらの電視観望セットアップです。機材は最近定番のFMA135とUranus-CをAZ-GTiに載せたもの。フィルターはCBPを使いました。この日見たのは4つです。最初はM31アンドロメダ銀河。
03_M31

次はもう十分登ってきているM42: オリオン大星雲です。
05_M42

ここら辺まではまだ明るい天体なのですが、次の馬頭星雲は、口径3cmの鏡筒でこの月明かりでここまで出るのはかなり驚いていたようです。しかも月がかなり明るく、オリオン座のかなり近くにあります。
06_horse

話してみると、「ほしぞloveログ」をよく読んでいてくれているようなのですが、電視観望といってもいいところだけを見せていると思っていたようでした。「いえいえ、いつもよく見えますよ」と話して、ここまで見えるのなら「今後カメラをどうするか」とか色々話し込みました。星歴は私なんかより遥かに長く、持っている鏡筒がPentaxの75SDFHで、アイピース口をアメリカンサイズにするのが大変なようです。カメラもPentaxらしく、それが使えないかとも話していました。

最後、どこまで見えるかということでM33に挑戦してみました。流石に淡く、ライブスタックでかなり露光してやっと腕の構造がわかるくらいです。月明かりだと口径3cmの限界がここら辺なのかもしれません。あ、でもCBPはつけっぱなしだったので、外すともう少しマシになるかもしれません。
07_M33

0時近くなって、明日の講演のこともあるのでそろそろ退散することにしました。でも電視観望について色々納得できたみたいで、満足してもらえたようです。この日しかチャンスがないということでしたが、結局次の土曜の夜も来てくれて、また色々話すことになるのでした。

この日はこれでホテルの部屋で就寝です。続きは次の記事で。



 

この記事は、星と自然のフェスタの1日目の続きの記事となります。



今回の「星と自然のフェスタ」の目的の一つが、電視観望のデモをすることでした。最初は個人的に披露すること考えていたのですが、ちょっと前にシュミットさんの方から提案があり、店頭で解説と実演をしてもらえないかということでした。CP+で講演の機会を与えてくれたこともあるので、二つ返事でOKしました。

当初は電視観望の「解説」と、晴れれば「実演」、あとは「質問コーナー」など、結構きっちり考えていたのですが、実際はもうめちゃくちゃでした。解説でどんなことを話すかとかも考えていたのですが、全部吹っ飛んでしまったのです。


実際の準備

「星と自然のフェスタ」の初日、午後3時頃からでしょうか、駐車場とシュミットブースをちょくちょく行き来し、機材などを持ち込み、一緒に実演をするスタッフのWさんと夜の電視観望実演の準備を始めました。大雑把な担当として、WさんがSCA260、私SamがFMA135です。カメラは最近注目のCeres-CとNeptune-C II。しかも面積の狭い1/3インチのCeresをSCA260に使い、1/1.8インチの広い方のNeptuneをFMA135に使います。より狭い範囲を見ること、より広い範囲を見ることに特化します。

この設定は共に両極端ですよね。片や口径260mmの大望遠鏡、片や口径わずか30mmの赤ちゃんのような望遠鏡です。元々は大口径長焦点は惑星とか月を見て、小口径単焦点は星雲を見ようとか言っていたのですが、実際には同じ星雲や銀河を極端なセットアップで見たときの比較が、思ったより楽しかったのです。両極端は元々Wさんのアイデアなのですが、こう言った比較ができるのもリアル星まつりの魅力の一つかと思います。


テスト?本番?

私はFMA135を担当なので、まずは自分の使い慣れたFMA135とノートPCを用意します。カメラと架台のAZ-GTiはシュミットさんのものをお借りしました。接続しようとしていた大型モニターにHDMI端子が無かったなど、色々トラブルはありましたが、結局2台のノートPCをテーブルの上の大きな箱の上に乗せることで高さを確保し、見やすくしようということになりました。

カメラもAZ-GTiも自分のではないので、かなり明るいうちからテストを始めます。16時過ぎくらいだったと思います。月は見えていますが、まだ木星も見えていないくらいの明るさでした。

地面が土なので水平の安定性があまりよくありません。月の導入でさえうまくいかないので、三脚を少し地面に押し込むようにして固定し、水平をきちんと出します。何度か導入を試すと、やっと月も一発で入り、その頃には木星も目ではまだ見えませんが、カメラでは確認できるようになってきました。この頃から少しづつお客さんが集まってきました。

木星が目で辛うじて見えるようになってくると、続いて土星も入れてみますが、なんとか視野に入ってきます。もう一度、一から月、木星、土星とアラインメントを取り直し、だいたい準備完了です。空を見上げると、1等星が少しづつ見え始めていました。西の空はまだ明るく、オレンジから青のコントラストがとても綺麗でした。

少し遠くの天体を試したくて、見えたらラッキーくらいでM31アンドロメダ銀河を導入します。まだ空は一部明るくて、月も煌々と出ているのに、淡いながらも、なんとアンドロメダ銀河が見えてしまったのです!しかも口径わずか30mm。目では数えるほどしか見えない星も、カメラ上では散りばめるように写っています!誰かが「うぉ!こんなに明るいのにアンドロメダが見える」とか叫んだからでしょうか、一気に空気が変わり、ここからどっと人が集まってきます。

この時点では光害防止としてCBP(Comet BandPass)フィルターを付けていたのですが、銀河の場合は白色光に近いのでかなりの情報を欠落してしまいます。そのため銀河を見るときはCBPを外すようにしました。するとまだ明るい中でもさらにM31の形がハッキリします。これ以降、星雲を見るときはCBPと取り付け、銀河を見るときはCBPを外すということをしました。

この日の小海の空は透明度が良かったのかもしれません。時間とともに徐々に暗くなってくると、アンドロメダもどんどんはっきりしてきて、腕の構造までかなりはっきり見えてきます。電視観望で口径わずか30mmでここまで見えるというのは、初めて見た人には相当なインパクトなのかと思います。機材の実物も目の前にあるわけで、そのコンパクトさにさぞ驚かれたことでしょう。

6ACCD9BD-8D43-4C25-AD6A-721F14A55E16
PCの画面が飽和してますが、FMA135でアンドロメダを映している時です。
写真はあまり撮れなくてこれくらいしか残っていませんでした。 

「19時まではテストです。19時から本番です。」と何度言ったことか。ごめんなさい、全く守れませんでした。そのまま本番の時間になだれ込んでしまって、テストと本番の境なんて全くなかったです。考えておいた「解説」は全て吹っ飛びました。実際のものを見せる「実演」の方が遥かに説得力が大きかったのです。「質問コーナー」も計画していましたが、準備している最初の時からほぼ質問攻めで、ずーっと質問コーナーが続いているような状態でした。

結果として、設置から初期アラインメント、導入、SharpCapでどう炙り出すかを一連で繰り返し示していたことになります。細かい操作も、一連の実演の中でごくごく自然に見せることができたのかと思います。


数多くの質問

実演している間じゅう、質問がひっきりなしに飛んできました。
  • 「なにで見てるの?」という質問には、機材を指差し「高性能カメラと小さいけれども高性能な望遠鏡で見ています。」、皆さんコンパクトさにビックリします。
  • 「どこを見てるの?」では、「この望遠鏡が差している方向で、カシオペアとペガスス座の間くらいです。」
  • 「初期アラインメントで天体が全然入らない」 -> 「北の方向はある程度適当でもいいが、水平をとるのが大事。AZ-GTiの水準器はあまり精度がないので、付属三脚の水準器を見るのがいい。あと鏡筒の水平を水準器を使って撮るのも忘れないように。こうすると、少なくとも最初に入れた天体の『高度』はかなりあっているはずなので、あとは左右に振ってやれば画面に入ってくるはず。」
  • 「自動導入がうまくいかない」-> 「まずは目的の天体の近くの明るい恒星を入れて『ポイント&トラック』すると、精度が上がる。」
  • SharpCapの使い方では「自分でやったけどあまり綺麗に見えない」というので、「まずはライブスタックよりもヒストグラムでのあぶり出しが重要です。」と見えない最初の設定と、あぶり出して見やすくなった設定を実際に見せて、比較しました。
  • 「ライブスタックでうまくスタックされていかない」という方もいて、「検出した星を四角でマークして見えるので、まずはその機能をオンにしてうまく星が検出できているか確認するといいですよ」とアドバイス。
などなど、星が少し好きな一般の人から、電視観望に興味を持っている初心者、果ては明らかにベテランと思われるような方まで、ほぼずーっと質問攻めでした。できる限りわかりやすく答えたつもりでしが、どうでしたでしょうか?


実演で見たもの

実演の際、その場で見たものを列挙しておきます。
  • 月、木星、土星、M31、M27、M57、M45、M33、M15(球状星団)、網状星雲、北アメリカ星雲、ステファンの5つ子、エッジオン銀河
などです。

操作と話すのに必死で写真がほとんど残ってないのですが、長時間LiveStackしていたためにSharpCapのフォルダに自動保存されていたものを簡易的に画像処理をして載せておきます。

Stack_17_38_56_16bits_150frames_600s_cut
M31 アンドロメダ銀河

Stack_19_52_05_16bits_75frames_600s_cut
M33 さんかく座銀河

M31は露光時間4秒でゲイン350。M33は少し淡いので8秒露光でゲイン350。このときは共にCBPは外しています。LiveStackでのトータル露光時間は両方とも10分になります。もっと短くてもそれほど出来上がりに差はないのですが、自動保存の設定が10分だったというだけです。これで少し画像処理をすると、上のようになります。電視観望の途中で記録的に残したファイルから処理したものとしては、そこそこ見えるのではないでしょうか?

その一方、電視観望特有の問題もあって、例えばよく見るとホットピクセルと呼ばれる明るい点がミミズのように這いずり回ってしまっています。これはリアルタイムダーク補正をしてやるか、もしくはSCA260で使っていたCeres-Cなどに搭載されているDPSテクノロジーと呼ばれるホットピクセルやコールドピクセルをハードレベルで取り除くような技術があると目立たなくなります。


カメラごとの比較

FMA135:
こんな小さいのに、アンドロメダ銀河の腕まで見えるのは流石にインパクトがあったようです。また、M33の形がわかるのも、みなさん驚いていました。比較的大きなアンドロメダの全景や、北アメリカ星雲の全景を見えるためには、これくらいの短い焦点距離と広いセンサー面積が必要です。

今回見た中で、FMA135で見やすいもの、見にくいものを揚げておきます。
  • FMA135が適しているもの: 月の全景、M31、M27、M45、M33、北アメリカ星雲
  • FMA135でなんとか楽しめるもの: M57、M15(球状星団)、網状星雲の全景(もう少し広く見たい)
  • FMA135だと厳しいもの: 月の詳細、木星、土星、ステファンの5つ子、エッジオン銀河

SCA260:
大口径と長焦点(カメラのセンサー面積が小さいことも含め)を生かして、小さいものを分解能よくみることができます。M57やM27もかなり細かいところまで炙り出せます。また、M33などは中心部に近いところのみ見えますが、中心付近の腕の細かい構造や、赤ポチと呼ばれるHα領域も電視観望で見えてしまいます。
  • SCA260が適しているもの: 月の詳細、木星、土星、M57、M27、M15(球状星団)、ステファンの5つ子、エッジオン銀河
  • SCA260でなんとか楽しめるもの: M33
  • SCA260だと厳しいもの: 月の全景、M31、M45、網状星雲、北アメリカ星雲

二つを比較すると、まず口径差が約10倍、値段差も約10倍と、圧倒的な違いがあるにもかかわらず、インパクトではFMA135が全然負けていなくて、意外なほど見える対象が多いことがわかります。口径の小ささが逆にインパクトを増しているような状態です。その一方、SCA260の細かい分解能を見ていると、FMA135では絶対に辿り着けない大きな壁があることもわかります。結局は見たい天体に対して適材適所というわけですが、見える天体がかなりオーバーラップしているということも特筆すべきかと思います。この二つの極端な比較は、リアル星まつりならではと思います。

108D4638-A716-4E4F-BA75-27F4BAFFCDF5
数少ない写真の一つで、比較で撮っていたものです。
M15を見てるときです。上がSCA260で、下がFMA135。
ともに球状星団として見えていますが、
この画面で見てもSCA260の分解能がすごいことがわかります。 

実際の操作を見ながらの解説で、お客さんもかなり楽しんでくれていたようです。あるお客さんが帰り際に「今日は本当にここに来てよかったー。」としみじみとつぶやいて去っていったのが聞こえてきました。ここまで喜んでくれたのなら、実演を引き受けた甲斐が本当にあったというものです。


知らなかったお客さんの多さ

説明をしていて、そこそこお客さんが来ているのはわかっていました。でも後ろの方の様子はあまりわからないので、実際どれくらいの人が来てくれていたのか実はよくわかっていませんでした。後で知り合いのTwitter投稿写真を見てちょっとびっくりしました。





なんかすごいことになっていたみたいです。後ろの人がきちんと画面など見えていたかちょっと心配になってしまいました。

終了予定時間の20時をすぎて、やっと少し周りを見渡す余裕が出ました。この頃、WさんがSCA260でエッジオン銀河を見せていたのですが、私の方は実は寒くて寒くて凍えてました。指先も冷えていて、だんだんPCの操作もやりにくくなってきていました。さすがに疲れてきたのかと思います。時間的にもちょうどいいころなので、ここで終了となりました。


疲れ果ててしまって...

その後、片付けをWさんと、その場にいたM87JETさんに手伝っていただき、車に機材を戻しました。そこで少し服を重ねて、靴下も厚いものにしたのですが、それでも寒くてホテルに移動してずっと行けなかったトイレに行き、ロビーで暖をとっていました。食事を取ろうと思ったのですが、すでに全てのキッチンカーは閉まっていて、ホテルのカレーもちょうど片付けているとこでした。

後から考えると、ここら辺の判断が色々間違ってたんですよね。まず終わったら機材を片付けずに、そのまましばらく待っていて個人で電視観望を始めたりすれば良かったのです。ですが実際には前日の睡眠不足もあったのでしょう、一仕事やり切った感じで、そんなことを考える余裕もないくらい疲れてしまっていました。

ホテルで暖をとっていると、かんたろうさんから呼び出しの電話が。天リフ編集長とか、皆さんキャンプ場のところで集まっているとのことです。暖かくなってやっと少し落ち着いていたので、重い腰を上げホテルから移動。

キャンプ場では、先日出版された「星空撮影塾」を送っていただいた成澤さんや、星景写真で有名な塚原さんなど、主に星景関係の方々が集まっていました。嬉しいことにspitzchuさんが電視観望用にNeptune-C IIを買ってくれたとのことでした。でもお腹も空いていて皆さんとあまり話す余裕もなく、朝に買ってポケットに入れていたおにぎりを食べても全然足りずに、申し訳なかったのですが私は早々と退散。

9F74DE7A-FA41-46E1-BF96-A6E184F2624C

車に戻ってから、夕ご飯の調達にコンビニまで買い出しに行くことにしました。コンビニで少し多めに食事と飲み物を買って、そのままコンビニの駐車場の車の中で食べます。よほどお腹が空いていたのか、ぺろっと平らげてしまいました。この時点で22時頃だったでしょうか、そのまま会場へ戻るのですが、お腹も膨れたせいか耐えられないほど眠くなってしまい、途中の道の脇のスペースに車を止め寝てしまいました。

目が覚めたらなんともう0時半頃。あせって会場へ戻って、歩いて一回りしてみるのですが、少し雲も出ていたせいかほとんど人もまばらです。キャンプ場のあたりに何人か話している人がいるので声をかけたら、たまたま成澤さんでした。この頃には私もやっと元気になっていて、初めて成澤さんと少しまともに話すことができました。同じ場所にいた成澤さんの友人で最近撮影とか始めたIさんも交えて、一緒にしばらくのんびり話しました。

その頃にはそこそこ曇っていたのですが、成澤さんは曇りを利用して朝焼けを撮影しに行くというのです。もうほとんどの人が撮影は諦めているような状態なのに、さすがプロのカメラマンです。プロ根性と言っていいのかわかりませんが、もう考え方から全然違います。一番いい時間帯に寝落ちしてしまって完全にあきらめモードの私とは雲泥の差です。

午前2時頃だったでしょうか、成澤さんが出発し、残ったIさんと話していました。聞いたら元々成澤さんのファンだということで、色々コンタクトを取っているうちに一緒に行動などするようになったとのことです。まだ若い方で結婚したばかりとのこと、奥様を連れてきているらしいのですが、既に車の中でお休みだそうです。ついてきてくれるのがそもそも素晴らしいです。今回うちの奥さんもかなり誘ったのですが、車中泊ということを言った途端全く相手にされなくなりました。Iさんは本格的な撮影機材を揃え出したのもまだ最近で、家族が増える前の買えるうちに機材を揃えておいた方がいいとかいう話で盛り上がりました。

朝は目標のホテルのビュッフェに行くと決めていたので、2時半頃でしょうか、私も退散して寝ることに。寝る前のトイレに行く途中で、ちょうどオリオン方面だけ晴れていて空を見ていたら、いのさんと、朝にお会いした金沢のドブソニアンを出している方と会って少しだけ会話しました。その後戻って駐車場を一回りしたのですが、もうほとんど誰も外に出ていなかったです。

後から聞いたら、最初の頃は空も快晴で、駐車場ではヒロノさんはじめ、ドブソニアンで見ている人も結構いたらしく、またメイン会場ではXRAYさんや智志君らが電視観望していたらしいです。ちょっと羨ましかったですが、今回はシュミットさんに実演でとてもいい経験をさせてもらったので、十分満足でした。

車で戻ってすぐにまたぐっすり寝てしまったのですが、明け方はかなり寒くなり、さらに服を着込んだりしました。7時に起きる予定が、目が覚めたら既に8時。2日目の様子は次の記事で書くことにします。



このページのトップヘ