ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:M104

M104の画像処理も終わり、補足も含めてブログ記事も書き終えたと思って安心していました。


次に撮影したヘルクレス座銀河団の画像をチェックしていたら、なんとM104をさらにもう1日ぶん追加で撮影していたことに気づきました。その日のシンチレーションが悪ければ無視していいのですが、こういう時に限ってなぜか有意にいいのが撮れてしまっているんですよね。


まずは画像のチェック

SubframeSelectorで個々の画像のFWHMを見てみます。L画像を3日間撮影しているので、それぞれL1、L2、L3とします。前回までで、L1がFWHM = 13pixelくらい、L2は20pixelくらいで、L1にL2から特に悪いものを除いたものを画像処理に回しました。L2の内、特に悪いものは20pixelよりもさらに悪く、残ったいいものでも20pixel程度だったので、L1とは明らかに差があるものを混ぜて処理してしまいました。それでも、実際インテグレートした画像のFWHMを測っても、そこまで有意な落ちがなかったので良しと判断しました。

FWHMを順に見ていきます。まずはL1です。133枚あって、前回までの画像処理では全て使いました。ここでは後に見たL3の基準に合わせた判断をしてみていて、FWHMが12以上、もしくは星の数が35以下なら弾くと判断しています。赤のx印はダメだという判断で、撮影したL1の133枚のうち40枚が残るという判断です。この判断は後で使います。_
SS_L1

L2は酷いもので、上の判断に従えば全滅です。これでも前回はBlinkで見た目判断でダメなものはすでに捨てていて、その残りの56枚でこの結果です。
SS_L2

最後はL3です。新たに発掘された4月12日に撮影したものですが、FWHMだけ見ても9以下のものもあり、L1と比べても全然いいのがわかります。途中時間が経つと悪くなってしまっているので、FWHMが12以上、もしくは、星の数が35以下は使わないという判断をここでしました。FWHMが12という理由は、前回の主にL1のFWHMが13程度だったので、それよりもいいものを使おうということ、星の数は、飛び抜けて数が少ないものを捨てようという意図です。L1にも同様の判断をしたものが、上の図の結果というわけです。L3は全部で139枚撮影して、そのうち24枚除いた115枚を採用しています。
SS


L1とL3の画像で比較

L2は論外なので使わないとして、まずはL1を全て(赤のxは無視して)使った場合と、L3を基準内で使った場合を比較します。それぞれWBPPでインテグレートしてできたL画像に、ABEの4次とDBEをかけて、BXTのCorrect onlyをかけ、その後BXTの星の縮小を0.5、ハロは0、PSFはオートで、背景は1.0をかけます。2枚ともインテグレート後も全て同じ条件で処理しています。

できた2枚の画像を前回締めしたハッブルの画像とほぼ同じ位置で切り取り、重ねてGIF画像で切り替えて見えるようにしてみました。
L1

違いがわかりますでしょうか?ぱっと見どこが違うかわかりにくいかもしれませんが、じっと見てるとモヤっとしてるか、星になっているかなど、違いが見えてくると思います。恒星が大きく見えるのがL1、小さく見えるのがL3です。BXTを同様にかけても、出来上がりの恒星の大きさは元の恒星の大きさに依るということがまずわかります。

上の画像だとちょっとわかりにくかもしれないので、L1でBXTに拾われなくて、L3でBXTに拾われたと思われる恒星を拾ってみました。
L3_marked
もしかしたら取りこぼしているものもあるかもしれませんし、判断が難しいものもありましたが、とりあえず24個と少なくとも無視できないくらいの数の違いがあります。

これらは最終処理で見える星として生き残るものです。一方、モヤモヤしていてまだBXTで取りこぼしてしまっているものも多数あることもわかります。これらは最終処理では背景に埋もれてしまい、星として見えることはないですし、モヤモヤも背景をある程度明るくしないとわからないので、実質的には表には出てこないでしょう。それでも、どれだけシンチレーションがいい日に撮影したとしても、BXTを使う限り、その閾値の上下で星として生き残るか無視されてしまうかが決まってしまうのかという問題は、今のところ避けることはできないようです。かといって、BXTを使わなければ、さらに多くの星が星として成り立たずに背景に埋もれてしまうので、今の所BXTを使う方向でいくほうが有利なのかと思います。

いずれにせよシンチレーションでBXTの有効範囲が大きく変わり、シンチレーションがいいほどより多くの恒星を救えることがわかりました。

一方、銀河本体はというと、あまり目に見えては改善しているように見えませんが、それでも細かいところを見てみると少なくとも何か改善はあるように見えます。


L3画像に同基準のL1画像を加えてみる

次に興味があるのが、L1にL3と同じ採用基準でいいと判断した画像を、L3画像に加えてインテグレートしたものを考えてみます。せっかく撮影した画像をできるだけ使いたいというもったいない精神です。

枚数は元のL3が115枚で、同条件で採用されたL1が40枚です。枚数が(115 + 40) /  115 = 1.38倍に増えたので、S/Nは√1.38 = 1.16倍くらいよくなるはずです。

インテグレーション直後の画像でPIのScript -> Image Analysis -> SNRView (PI上にロードしてある画像のS/Nを一度に評価してくれる)比較してみると、L3のみのS/Nが41.24dB、L3+L1のS/Nが42.65dBでその差は1.41dB = 1.176倍になり、ほぼ枚数増加で期待されるS/Nの増加となっていることがわかります。

これで気を良くしたので、恒星の数も増えると期待して、改めてL3だけの画像と、L3+L1の画像を同様にGIFで比較してみます。
L3_vs_L1L3

こちらはさらに変化がわかりにくいですね。なのでこれも同様に、変化のあった恒星を丸で囲みました。非常に面白い結果です。まず、青丸がL3+L1でBXTに恒星として認識されずL3のみのときにBXTで認識されたと思われる恒星です。数を数えると12個もあります。黄色の丸は逆にL3+L1の方がBXTで救い取られている恒星ですが、こちらの方が数が圧倒的に少ないです。撮影枚数の少ないL3だけの方が、恒星に関してはより分解能が出ているということで、S/Nとは逆転現象が起きてしまっています。
L3_vs_L1L3_marked

ちなみに紫色の丸はL3とL3+L1で位置がずれてしまっているものです。BXTで何らかの認識はされたのですが、補正が必ずしもうまくいっていないということでしょうか。どちらの位置があっているかはわからないですが、そもそもたまたま両画像で星の一致しているからといって、必ずしもその位置が正しいかどうかはわかりません。元々相当暗くて淡くて広がってしまっている星です。シンチレーションで星の位置がぶれていたり、インテグレートする時に画像を歪ませていることもありするので、この結果だけでBXTに問題があるというのは早計でしょう。これらのことについては、別途きちんと定量的な評価をすべきかと思います。


S/Nと分解能の関係は?

さて、このS/Nと恒星の分解能について少し考えてみます。私は最初単純に枚数が多いL3+L1の方がS/Nもよくなり、分解能も良くなると思い込んでいました。S/Nは数値的にもほぼ理論に従いましたが、分解能に関してはL1を加えた枚数が多い方が悪くなってしまっているようです。

このことについては、ラッキーイメージ的な解釈である程度納得することができました。L3に加えたL1画像は、基準が同じといってもL3と比べたら、L3の中でもかなり悪い画像に相当するものなのかと思います。ここでいう悪いというのは、FWHMが12に近い大きなもので、星の数も少ない方という意味です。たとえ枚数が少なくても、いい画像のみを集めて使うラッキーイメージと似たことが起こったと思うと、S/N(明るい信号部分と暗いノイズ部分の比)は悪くても、明るいところの分解能は得をするということでしょうか。

こう考えると、S/Nと分解能は結構独立で、別個のパラメータと考えた方が良さそうです。今回はL3をFWHMが12以下で区切って使っていますが、銀河部分をメインに考えるとS/Nは十分取れているので、もっと枚数を減らしても良いのではと考えることもできます。FWHMの基準を厳しくしたほうが、元々の目的のM104の内部の構造を出すという目的からは、正しいのではないかと推測できるわけです。

でもこれをどこまで攻めてもいいのか?S/Nをどこまで落としてもいいのかの基準がよくわからないので、判断が難しいです。例えばL3画像でFWHMを10以下として、枚数は半分程度に減ってしまうかもしれませんが、実際に試して画像処理までしてみるのは価値があるかもしれません。

と、ここまで記事を書いて疑問に思ったので、焦らずに疑問はできるだけ解決するということで、実際に試してみました。条件はSubframeSelectorでL3画像のうちをFWHM10以下、かつ星の数が50以上のものを採用するとしました。枚数的にはFWHM12以下、かつ星の数が35以上だったときに115/139枚だったのが、44/139枚と、3分の1強くらいになりました。これで全く同じ条件でWBPPをかけインテグレーション直後でまずはS/Nを測定してみると、115枚だった時が上でも示しましたが41.24dBで、さらに条件を厳しくした44枚の方が37.57dBでした。115枚と44枚から計算したS/Nの改善比はsqrt(115/44) = 1.62です。一方インテグレーションした画像の実測値での比は41.24 - 37.57 [dB] = 3.67 [dB] = 10 ^ (3.67 / 20) = 1.53となるので、1.62から少しだけずれますが、まあ誤差の範囲内で一致してるといっていいでしょう。

では同様にL3で115枚使った時と、44枚使った時を、GIFアニメで比較してみます。
L3_115_L3_44
S/Nで高々1.5倍程度の違いなのに、大きく違って見えます。違いを挙げてみると、
  1. 115枚の方が、恒星が大きく見えて、44枚の方は恒星が小さく見える。
  2. 44枚の方が背景がノイジーで荒れている。
  3. 44枚の方はBXTで救いきれていない、取りこぼしている恒星が多い。
  4. 銀河本体の評価は難しく、一見44枚の方が細かいところまで出ている気もするが、ノイジーなだけの気もする。
1. 恒星の肥大に関しては、FWHMが小さい44枚の方が(同じパラメータの)BXTをかけた後でも小さくでるので、FWHMだけで判断してしまっていいでしょう。やはりラッキーイメージ的なFWHMが小さいものを選ぶのは、恒星の鋭さでは結果的にも有利です。

2. 見かけの背景の荒れ具合はどこまで炙り出したかだけの問題なので、背景が荒れ荒れに見えるのは気にしないでください。同じS/Nの画像でも強炙り出しすれば荒れて「見えて」しまいます。

3. それよりもここで重要なのは、暗くて淡い恒星の出具合が全く違ってしまっていることです。明るい恒星は元々S/Nが高いので、2枚の画像であまり差はないですが、暗い恒星はS/Nが低いのでNの影響をより大きく受けます。

例えば、115枚インテグレーションした画像の中で、BXTでギリギリ生き残った星のS/Nをインテグレーション直後の画像で測定すると (実際は淡い星の範囲を決めるのが難しいので測定もなかなか難しいのですが)、少なくとも2から3くらいはあります。一方、115枚画像で生き残った同じ星と同じ位置の、44枚の画像で生き残らなかった星のS/Nを測定すると1から1.5程度で、有意に差があります。115枚の時に2とか3あったS/Nが、枚数が44枚と少なくなりノイズが1.5倍ほど上がり、S/Nも1.5分の1ほどになり、恒星として認識されなくなったということかと思います。

このように、高々1.5倍程度のわずかなノイズの増加が、淡い部分には決定的に効いてしまうわけです。

4. 恒星のFWHMが小さいと背景の分解能もより出ているはずですが、いかんせんノイズのNが悪くて判断がつきにくく、全体としては44枚の方が不利と言っていいでしょう。


こうなるともう、ラッキーイメージで枚数を制限するか、S/Nを稼ぐために多少FWMHは悪くても枚数を増やすかは、完全にトレードオフですね。恒星の鋭さを取るか、淡い恒星が残るのを取るかです。銀河本体も同様にトレードオフかと思います。要するにその場その場に置いて、どちらを取る方が有利か判断して決めるべきなのかと思います。しかもインテグレーションまでしての判断なので、手間も時間もかかり、きちんとやろうとするとかなり大変になりそうです。

それよりも、これ以上の劇的な改善を考えるとすると、
  • 同等のシンチレーションのいい日に、より多くの枚数を撮影するか
  • 同等のシンチレーションのいい日に、より暗い空で撮影するか
だと思います。今のノイズは光害によるスカイノイズが支配的なので、このスカイノイズを改善する方法を考えるべきだということです。言い換えると、ここまで来てやっと自宅の光害が問題になるレベルに辿り着き、やっと暗い場所で撮影するべきかどうかの議論する価値が出てきたということなのかと思います。これまでは基本自宅撮影が多くて、今回のM104は系外銀河で背景を気にしなければ銀河本体はそこそこ明るいので、自宅でも十分だと思っていました。今のところ自宅だと厳しいと思ったのが、
  • M81を撮影した時のIFN
  • Sh2-240やダイオウイカなどのものすごく淡い天体を撮影した時
ですが、今回の
  • 系外銀河周りの恒星を出したい時
が新たに加わり、3つになりました。

まだ暗黒帯とかにあまり手を出していないので、ここら辺もいずれ暗いところを求めることになるかと思いますが、徐々に自宅撮影の限界が見えてきたということだと思います。今のところ頻繁に遠征に行くのは時間的に厳しいので、貴重な遠征の機会を逃さないように、あらかじめ遠征時のターゲットをはっきり決めて置くことがこれからの課題でしょうか。


画像処理

FWHMを12ピクセルで切ったL3のみ44枚でインテグレートしたL画像と、前回までの画像処理で使ったRGB画像を使って、画像処理をしてみます。

比較しやすくするため、ハッブル、今回、前回の順で並べます。
STScI-01EVT8YHAGM2WGQTV3DGKRFZ7Q

Image07_rot_Hubble_mod_cut

Image07_rot5_Hubble

恒星のシャープさは上がりました。救い上げた星の数は増えましたが、一部以前残っていた星が新たに消えてしまっているものもあります。でも、ハッブルの画像みたいに微恒星が一面に星が散らばっている様子からは程遠いので、ここら辺が次の課題でしょうか。

銀河本体は一部前回のほうが良かったところもあるように見えますが、基本的には今回の方が細部も出ていて、明らかに良くなっています。ハッブルの画像に多少なりとも近づいているのかと思います。どうやら改めて全画像処理工程をほぼやり直した甲斐はあったようです。

全体像も更新です。
Image07_middle

Image07_ABE1_crop_ABE4_DBE_BXTc_SPCC_BXT_LRGB_BXT_back_GHSx3_low
  • 撮影日: 2024年4月10日20時27分-4月11日3時18分、4月12日21時49分-4月13日0時46分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 115枚、R: 59枚、G: 51枚、B: 64枚、総露光時間289分 =4時間49分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が204枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120で露光時間 LRGB: 0.01秒でそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop


まとめ

今回いろいろ試したことで、FWHMで分解能を評価できる手法はある程度確立できたのかと思います。やはりシンチレーションの影響は大きく、まずはいい日を選ぶことかと思います。その一方、淡い部分はS/Nの、特にノイズが大きく関係するので、全体の仕上がりとしてはFWFMだけでなく、枚数をある程度確保するか、スカイノイズを回避する必要があるのかと思います。

長かったですが、M104はとりあえずこれで完了とします。次回M104に挑戦するときは、暗い場所に行って撮影し、恒星がどこまで出るのか挑戦してみたいと思います。



M104の画像処理の最中に、BXTの恒星の認識で気付いたことがありました。これも補足がてら書いておきます。



BXTの適用限界の一例

BXTについてはある程度一定の評価が定着したのかと思います。私もお世話になっていますし、今回のM104本体の内部構造を出すのにも大きな効果がありました。焦点距離1300mmのSCA260に対してM104は少し小さくて、拡大して細部を見ながら処理をすることも多いです。その拡大しながらの処理の最中で改めて気になったのは、BXTでどこまで微恒星を補正できるのか?ということです。

下の画像を見てください。左から順に1. BXT無し、2. BXTのCollect only、3. BXTで恒星を小さくし背景(銀河本体)の解像度の上げたたものになります。
名称未設定 1

星像を改善しているのはすぐにわかると思いますが、その中で目で見て明らかに微恒星とわかるものをいくつか取りこぼしてしまっているものがあります。次の画像は、仕上げ前にStarNet V2で恒星を分離し取り除いた画像になります。

Image07_ABE1_crop_ABE4_DBE_BXTc_SPCC_BXT_LRGB_GHS_GHS_Preview01

BXTで救いきれなかったものは(BXTとは別ソフトのStarNetでも)背景として認識されるようです。でもそれらは、人の目には微恒星側に認識できるものも明らかにあるのかと思います。

シンチレーションなどでブレてしまい星の鋭さが出ていないのが原因かと思われますが、問題はBXTで星と「認識される」か「認識されてない」かで、その切り替わりを境に本来の明るさや大きさが大きく変わり、差が出てしまうことです。以前、BXT2にバージョンアップする前にも同じようなことを書いていま。


その後BXT2にアップデートした時に、微恒星をより拾うようになっていると解説されています。

そのためかなりマシになっているはずなのですが、今のところは今回程度の認識が限界になるようです。

この程度のことは強拡大しない限りほとんど気になることはないでしょう。さらに今回の最終結果としては背景をそこまで明るくすることはないので、微恒星と思われるシミのようなものは実際には見えなくなってしまい、実用上はなんら問題はないと思います。ただ、強拡大したり、淡い背景を強炙り出しする場合は、この問題が露呈する可能性があることは、頭の隅に置いておいた方がいいのかもしれません。

もう少し突っ込みます。微恒星をできる限り拾うって、色々価値があると思うんですよ。上の背景だけの画像を見てたら、微恒星と思われるところは輝度としては明らかに盛り上がっているので、その部分だけうまく集光できないかなと思ってしまうわけです。FWHMが星の明るさによらずに一定なように、恒星の広がり具合は本来明るい星でも暗い星でも同じはずです。でも暗い星は背景のノイズに埋もれてしまうために鋭さが出ないのかと思います。この鋭さを仮想的に補助してやればいいのかと思います。手動だと銀河本体はマスクをかけて、背景の中の輝度差で微恒星部を分離して、その盛り上がり部を背景に対して増強してやることでしょうか。もしくはここからBXTのcorrect onlyでまともな星像にしてもらうとかできればいいのかもしれません。あ、でもこれだと本来の輝度から変わってしまうかもしれません。まあ何か方法はありそうなので、じっくり考えてみると面白いかもしれません。


bin1にdrizzle x2に、さらにBXT

今出せる解像度の限界は、bin1にdrizzleを2倍以上かけて、さらにBXTでしょうか?PowerMATEなどのバローでも分解能は増す可能性はありますが、ここでは考えないことにします。

どこまで細かいのが出せるのか、果たしたそれに意味があるのかを試してみました。使ったのは2023年5月に撮影した5分露光のL画像を36枚、WBPPでインテグレートしたものです。その際、drizzle無しと、drizzle x2で出力しました。bin1なのでdrizzle x2の方は解像度は16576x11288で、ファイルサイズは1枚だけで1.5GBになります。全ての処理が重く、簡単な操作さえ非常にもっさりしています。画像処理もものすごいディスク食いで、はっきり言ってこの時点でもう実用的でもなんでもありません。

このdrizzle無しとx2それぞれにBXTをかけてみました。

まずはdrizzle無し。左から順にBXT無し、BXTのCollect only、BXTで恒星を小さくし背景(銀河本体)の解像度の上げたたものになります。
comp1

次にdrizzle x2の場合。BXTに関しては上と同じです。
comp2

この結果は面白いです。drizzle x2のほうがBXTが適用されない微恒星が多いのです。理由は今のところよくわかりませんが、niwaさんのブログのこの記事がヒントになるでしょうか。どうもBXTには適用範囲というものがあり、FWHMで言うと最大8ピクセルまでだとのことです。

でも今回、そもそもdrizzle無しでもFWHMが12とか13で、すでにこの時点で大きすぎます。drizzle x2だとするとさらに2倍で、はるかに範囲外です。でも不思議なのは、FWHMが12とか13でも、たとえそのれの2倍でも、一部の恒星にはBXTが適用できているんですよね。なので少なくとも私はまだこの適用範囲の意味はよくわかっていません。

あと、niwaさんのブログの同じ記事内にあった、明るい星に寄生する星が出てくることが私も今回M104でありました。
fakestars
真ん中の明るい星の下と左上に偽の星ができてしまっています。

niwaさんはdrizzle x2だと出て、drizzle x1だと緩和されると書いてありましたが、私の場合はdrizzle x1でした。恒星を小さくすることと、ハロを小さくすることが関係しているようで、両パラメータの効きを弱くしたら目立たないくらいになりました。そのため今回の画像では恒星を小さくしきれていないため、さらに星雲本体を拡大してあるため、恒星が多少大きい印象となってしまっているかもしれません。

いずれにせよ、ここでわかった重要なことは、むやみやたらに元画像の解像度を上げてもよくならないどころか、不利になることさえあるということです。BXTの効かせすぎも寄生星を生む可能性があります。ファイルサイズのこともあるのでbin1とdrizzle x2はそもそも実用的ではないし、さらにこれにBXTを使うなんてことは今後もうないでしょう。今のところbin2でdrizzle x2にBXT、bin1にdrizzle無しでBXTくらいが実用的なのかと思います。小さい銀河みたいに拡大すること前提で分解能を求めるとかでなければ、bin2にdrizzle無しでBXTでも十分なのかと思います。

久しぶりのブログ更新になります。皆様いかがお過ごしでしでしょうか?ゴールデンウィークは天気も良く、特に後半は新月期に入り絶好の星見日和だったのかと思います?

私はというと、あいにくGW中に体調を壊してしまい、前回の小ネタ記事を書いて以降ほぼ何もできない日が続きました。やっと体力も少し回復してきて、今もこの記事は病院の中で書いています。と言っても今回のM104の撮影はずっと前に終わらせていましたし、画像処理もブログ記事ある程度まで終えていたので、少し仕上げたくらいであまり無理はしないようにしています。

せっかくの長期休暇の新月期、暑くもなく寒くもなく、大きな太陽黒点と低緯度オーロラを横目にと、数々の絶好のチャンスを逃してしまい残念でなりません。その不満を払拭すべく、少しづつですが再開していきたいと思います。


三たびM104、でも本当は4度目

M104は分解能ベンチマークのような役割もあり、これまで何度か撮影しています。最初は2021年4月にVISACで。中心部を拡大すると、まだまだ無理やり解像度を出している感があります。


次は2022年8月、SCA260を手に入れてからより大きな口径で違いを見ました。


ただ、SCA260は焦点距離が1300mmとそこまで長くないので、M104は小ぢんまりと写ります。そのためこの時は
  1. バローなどなしでbin1の場合
  2. 2倍のPowerMATEを使ってbin2の場合
で比較しました。1素子あたりの明るさと画角は同じになるようにして比較したということです。違いはFOV(全体の視野角)と、bit depthになります。結果としては、恒星は2の2倍でbin2方が良かったですが、銀河本体は1の方がビミョーに良かったです。でも有意な差はほとんどなくて、結局1のほうがバローの挿入などの余分な操作がなく埃などが入る余地が少ないので、今後は1でいくという結論になりました。あと、この時はまだRGB合成のみで、L画像は撮っていませんでした。

その後、2023年5月にL画像だけ撮影していて、明らかに解像度が上がっていることまで確認したのですが、同時期にRGBを撮影する機会がなかったのでそのままお蔵入りにしてしまいました。2022年のRGB画像と合成しても良かったのですが、いまいち盛り上がらずに2024年を迎えてしまって、このままではさすがにダメだと思い、今回やっとLもRGBも一緒に撮影するに至りました。


NINAが重い

今回の撮影の少し前、3月18日にNINAの3.0が正式に公開されました。ただしちょっと重いみたいです。3.0にしてから撮影画像の保存にすごく時間がかかるようになりました。1枚撮影すると保存だけで毎回1分以上かかり、保存中は撮影は進まないので、かなりの時間ロスになります。

現在はStick PCで撮影し、micro SDに保存しているのです結構非力です。最初ディスクの書き込み速度を疑いました。でも撮影したファイル単体のコピペとかだと全然速く終わります。そこで、タスクマネージャーで撮影中の様子を見てみたら、NINAがものすごくCPUパワーを食っていて、かなりの時間100%になるようです。仕方ないので、以前の2.2に戻したら、ほぼタイムロス無しで連続で撮影できるようになりました。単にソフトが肥大したのか、それとも何か負荷が増えるようなバグっぽいものなのか、3.0がさらにアップデートされたらちょくちょくチェックしてみたいと思います。


今回の撮影

今回の撮影での大きな違いは、
  • 前回まではRGB撮影だけだが、今回はL画像を撮っているところ
  • 露光時間をこれまでの5分から1分にしたこと
です。L画像は実際の解像度向上に大きく貢献することになるかと思います。露光時間に関しては、SCA260+ASI294MM Proの場合gain120で露光時間5分だと、かなりの恒星がサチってしまうことに気づきました。特に、明るいL画像は深刻です。

下の画像は昨年5分で撮影したL画像を反転させています。bin1での撮影なのでそもそも12bit = 4096階調しかありません。ここでは階調の99%以上(4055/4096)になってしまっているところを黒くしています。

2023-05-11_20-58-14_M 104_LIGHT_L_-10.00C_300.00s_G120_0004
結構な数の星と、なんと画面真ん中の銀河中心までサチってしまっています。これはいけませんね。

下は今回露光時間を1分にしたもので、他の条件はほぼ同じです。だいぶマシになっていますが、それでもまだ飽和を避けることはできていません。少なくとも銀河中心は問題ないです。
2024-04-01_22-25-41_M 104_L_-10.00C_60.00s_0013

さらに露光時間を変えるにあたり、以下の2つのことを考えましたが、処理後の画像を見比べた限り違いはわからなかったです。
  1. 自宅撮影に限っていうとスカイノイズが圧倒的に支配的になります。露光時間を短くすると、読み出しノイズの効きが大きくなってくるのですが、露光時間を1分にしたくらいではまだまだ読み出しノイズは全然効かないくらいです。
  2. 淡い部分の階調がADCの暗い側にシフトするので、階調が出にくくなる心配もありましたが、まだ全然余裕があるようです。
LRGB画像は今後1分でいいと思います。ナローに関しては輝度が10分の1以下になるので、露光時間5分をキープするか、ダイナミックレンジがそこまで必要なければgainを上げてもいいかと思います。


画像処理 

WBPPでLRGBそれぞれインテグレートまでします。その後、すぐにRGBを合成して、カラーにしてからABEとDBEでフラット化をかけました。それぞれの色でフラット化してもいいのですが、カラーでやっても独立して働くので効果は同じはずで、1度で済むので手間を省いているだけです。

銀河で自宅撮影なので、背景のIFNなどは気する必要はなく、RGB画像もL画像も、気軽に簡単にフラット化してしまいます。だいこもんさんのブログ記事(元情報はUTOさんだそうです)によると、M104の周りにも相当淡い構造(更に大元がここ)があるようなので、試しに去年撮った5分露光画像も含めてL画像をかなり頑張って炙り出しましたが、私のところではその片鱗さえ全く見えませんでした。大顧問さんはチリで30時間露光して見えたとのことなので、自宅のような光害環境ではここまで淡いのは全然無理なのかと思います。なので、今回は背景は気にしないで、とにかく目的のM104本体の内部の細部構造がどこまで見えるかに全力を傾けます。

この内部構造、シンチレーションに強度に依存するようです。L画像は二日にわたって撮影していますが、二日目の画像は全然ダメで使うかどうか迷いました。1日目だけのもの133枚と、1日目133枚+2日目の中でもマシなもの56/103枚を使ったものを比較しましたが、見た目では違いがわからなかったので2日目のも入れたもので処理を進めました。

L画像はABEの2次、DBE、BXTをかけていますが、この時点でかなりの解像度が出ていて期待が持てそうです。
Light_BIN_1_8288x5644_60s_L_drizzle_1x_ABE4_DBE_BXTc_BXT_BXT03


LRGB合成

RGBとLをどう合成するかはいまだに迷います。過去に何度が議論しています。LRGB合成を初めて試したのは2022年10月のまゆ星雲です。この時わかったのは、L画像を合成したときに色がかなり出なくなるのですが、見えなくなっているだけで色情報としては十分残っているということでした。でもLとRGBをどのタイミングで合成すべきか、どういった比率で合成すべきかなどはまだまだ謎のままでした。


その後、この2つの過程でLRGB合成の経験的な方法はある程度確立したのかと思います。



そしてこのページである程度の理屈も含めて結論が出ています。


久しぶりのLRGB合成になるのでかなり忘れていることもあり、今回改めて読み直しましたが、今見てもかなり有用な議論です。当時のniwaさん、botchさん、だいこもんさんに感謝です。

今回まずは様子見で、PIのLRGBCombinationを使ってL画像を指定してRGB画像放り込んでみると、カラーノイズが結構目立ちました。RGBの撮影時間が短いので当然なのかもしれません。そこでLab分解してaとb画像にぼかしをかけてみました。以前うまくいった方法なのですが、今回はカラーノイズに対してほとんど効果が見られませんでした。カラーノイズ対策ができないのならa、b画像で何かする価値はほとんどなくなってしまいます。カラーノイズは後で対策できることと、奇をてらう方法はできるだけ避けたいこともあり、今回は素直にLRGBCombinationを使う方法を探ります。

未だ残っている一番の疑問は、LとRGBの混合比率です。これまでわかっていることは、
  • LRGBCombination処理はリニアでやらずにノンリニアでやること。ノンリニアとはフルストレッチしてからということ。
  • でもフルストレッチは厳しすぎる制限で、多少のストレッチでも大丈夫そうなこと。
  • リニアで処理すると、恒星内部に明るい飽和の飛びができ、後からどうしようもなくなること。
  • 飽和の飛びはL画像がRGB画像より暗い場合にできたが、L画像を明るくすると無くなること。

まず思っている疑問は、リニア段階での処理では本当にダメなのかということです。リニアはノンリニアの特別な場合と考えることができ、ノンリニアでいいのならリニアでも当然大丈夫だと思うからです。今のところ確認できている弊害は、
  • 恒星の飛び
だけです。

結論だけ言うと、今回リニア段階でLRGBCombinationを試しましたが、いずれも恒星の飛びは確認できませんでした。ただしこの結果は、LとRGBの明るさの違い(混ぜる比率)に依存しそうなので、その比率を変えて幾つか試しました。試したのはLRGBCombinationのCannel Weightsを変えることです。これらは相対的な比だけで決まり、例え全部を0.1とかにしても、処理後の画像の全体の明るさは変わらないことは以前確認しています。試したのは以下の4種類です。
  1. L : R : G : B = 0.1 : 1 : 1 : 1
  2. L : R : G : B = 1 : 1 : 1 : 1
  3. L : R : G : B = 1 : 0.1 : 0.1 : 0.1
  4. L : R : G : B = 1 : 0.01 : 0.01 : 0.01
いずれの場合も上で書いたように飛びは出なかったので、とりあえず今回は少なくともリニア段階でLRGB合成したとしても確認できるような問題は起きなかったと言えます。

その一方、できた画像の解像度には明確な差が出ました。下の画像になりますが、左から順に上の1,2,3,4となります。
comp

注意すべきは2, 3, 4で、Lの比率が高いとLRGBCombination直後はほとんど色がなく、一見モノクロのように見えることです。でも色情報はきちんとのこっているので、ここで心配する必要はありません。CurveTranformationで右のSの彩度を選んで曲線をΓの字になるくらいにして彩度を上げてやると確認できます。上の画像はそのように彩度を上げたもので比較しています。

4つの画像を見る限り、カラーノイズ、彩度に関しては明確な有利不利は確認できませんでした。最も大きな違いは分解能で、Lが一定以上の明るさがないとRGBが持つ低い分解能のままで制限されてしまうということです。わかりにくい場合は上の画像をクリックして拡大して比べて見てください。明確に違いがわかります。LとRGBの比が0.1:1や1:1ならばL分解能が十分生きてこなくて、1:0.1ならば十分、1:0.01にしてももう変化がないことがわかります。以前M106で試した時は1:0.25とかにして分解能が出たので、今回も再現性があり、ある程度L画像の明るさを保たないとダメだという結果を改めて確認できたことになります。

というわけで、今後もLRGBCombinationでシンプルに、Cannel WeightsだけLをある程度大きくしてLRGB合成をすればいいということにします。


結果

結果です。とりあえずはクロップして本体をある程度の大きさにしたものを完成とします。

「M104: ソンブレロ銀河」
Image07_middle
  • 撮影日: 2024年4月1日22時3分-4月2日2時41分、4月10日20時27分-4月11日3時18分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 189枚、R: 59枚、G: 51枚、B: 64枚、総露光時間363分 =6時間3分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が204枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120で露光時間 LRGB: 0.01秒でそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop

まず目的の銀河本体内部の構造ですが、結構出たといっていいかと思います。これはひとえにシンチレーションが良かったからと言うのが今回の結論です。BXTの効果も大きいかもしれませんが、シンチレーション自身が良かったのがまず第一だと思います。色は下に載せたハッブル画像に近くしました。

クロップ前の全体像になります。
Image07_low

恒例のAnnotationです。
Image07_low_Annotated

銀河っぽいシミがいくつかあると思ったのですが、候補に入らないものがいくつかあります。単に画像処理でなにか失敗してるのか、はたまたまだカタログ不足なのでしょうか?


ハッブルとの比較

恐れ多くもハッブルと比べてみます。

まず今回撮影し画像を5度時計回りに回転させ、次のハッブル画像と同じような画角に切り出したものです。
Image07_rot5_Hubble

次がハッブル望遠鏡が2003年に発表したM104です。
STScI-01EVT8YHAGM2WGQTV3DGKRFZ7Q

もちろん分解能には全然差はあって追いつけっこないですし、恒星に至っては大きさも微恒星の写りも全く違います。でもなんかちょっと比べてみようと思うくらいにはなったのかなと思って、自己満足しています。


まとめ

足掛け2年にわたって悶々としていたM104にやっと決着がつきました。2022年の結果がこれなので、大きな進歩だと思います。
final

ソフトは変わりましたが機材は同じです。今回L画像を撮影したのは大きな違いですが、やはりそのL画像のシンチレーションの影響が一番大きいと思います。撮影時のHFRを見るとシンチレーションの評価になりそうなので、いい日かどうかを定量的に評価しながらL画像を撮影すべきなのかカラー画像を撮影すべきなのかを決めることなどができそうです。そこらへんの補足記事を次に書こうと思っています。

今回健康を害すると何もできなくなってしまうことを実感しました。まだ今後も長年続けていきたい趣味なので、少し体に気をつけて、無理をせずに楽しみながらやっていけたらと思います。

画像処理も溜まっています。ダイオウイカは昨年10月くらいから残ってますし、ヘラクレス銀河団、さらに南天がいくつか残っています。これらも焦らずに進めていきたいと思います。


溜まっていたSCA260の画像処理をやっと再開します。

そもそも、なんで画像処理が全然進まなかったのかというと、ここ数ヶ月ひとえに忙しかったのはあります。でも一番の原因は、今回のM104の処理を全くやる気にならなかったからです。欲張って、
  • ASI294MMのbin1
  • PowerMATE2倍+ASI294MMのbin2
を一度に比較しようとしたのがダメでした。2つの処理をいっぺんに公平に比較というのはものすごく気を使うので、いまいちやる気になりません。でもこれを終えないと、まだゴールデンウィーク前後に撮った画像の処理も進まないので、とにかく処理してみます。


まずはM51の時と同じbin1で

撮影はもう3ヶ月以上前のことになります。メモを元に記事を書きます。

2022年4月23日、月も下弦の時期になり、夜の前半は月のない空になります。休日の土曜の夜なので気兼ねなく夜更かしできます。

夕方くらいから準備を始めます。場所はいつものように自宅の庭。重いCGX-Lをえっちらおっちら運びますが、揺れのない撮影ができると思えば全然苦になりません。暗くなり始めくらいで極軸調整も早々と済ませて、あとは暗くなるのを待ちます。

対象は迷ったのですが、M104ソンブレロ銀河に決定。南の低空で撮れる時期がある程度限られるからです。目標は上と下の間にあるモジャモジャ。前回VISACで撮影した時は心眼で見ると何か見えるような気がするくらいのものです。



三つ子銀河の撮影で分かったように、CGX-Lも威力は凄まじく、それ以前から使っていたCGEM IIに比べて劇的に揺れを抑えてくれます。

ただし、SCA260の1300mmの焦点距離がちょっと短いです。一つ前に撮影したM51は、まずはバローなど入れる前にASI294MM Proのbin設定を1x1にあえてして、高解像度で撮影し、中心部をクロップしました。今回の撮影の時点ではまだM51の画像処理まで進んでいなかったので、これが正しい判断なのかまだできていませんでした。なので、バイアスやダーク、フラットダークなどが使い回して楽なこともあり、とりあえず設定を変えずにこのまま撮影することにしました。当然露光時間とゲインも使い回しのために変えずに10分と240のままにします。RGB撮影なのですが、本当はLが欲しいところ。でもまだフィルターホイールをこのときは新調していないので(その後、8枚のものに交換しています)5枚のままで、全部埋まっているので今回は諦めます。


撮影開始

撮影開始は天文薄明が終わる20時頃。撮影ソフトはNINAです。実際に10分露光で撮影を始めて何枚か結果を見ますが、どうもイマイチです。一枚一枚を見ている限り真ん中のモジャモジャさんは全く見えていません。これはスタックすれば見える可能性もあるので、まあよしとします。でも恒星が小さくならないのです。最初ピントズレかと思いNINAのAF(オートフォーカス)機能で何度か確かめましたが、HFT8程度が限界。PHD2のグラフを見てみると揺れ幅が+/-数秒とかなり大きいです。一度カメラをNINAから切断して、SharpCapの100ms位の短時間露光で見たのですが、揺れがかなり大きいです。最初シンチレーションかと思いましたが、外に出てみると、風が強い!設定時はそれほどでもなかったのですが、徐々に強くなってきたみたいです。

こんな状態なので結果はダメかもしれませんが、せっかくの月のない休日の夜なので、そのまま撮影を実行します。

撮影終了は、月が出てくる午前1時ころ。本当はもう少し予備で撮っておこうとしたのですが、あまりに風が強くてPHD2の信号で見ると時折10秒以上の幅で激しく揺れるようになってきたので、ここで撤収です。といっても、昼間に太陽を撮りたいので、赤道儀はそのまま片付けずに、万が一の雨に備えてカバーのみかけておきます。(といっても、次の日は結局晴れずに、太陽を見ることなく昼に片付けてしまいました。)

画像処理

撮影フォルダを見てみるとR: 8枚、G: 9枚、B: 10枚が撮れていました。そのうちR: 5枚、G: 7枚、B: 7枚を画像処理にまわします。
  • WBPPですが、なぜか格子状のノイズができます。いろいろ探ったのですが、どうもImage Integrationのところが問題なようです。枚数が少なくて、Percentile Clippingを推奨されるのですが、これにするとダメでいつものWinsorized Sigma Clippingにしたら消えました。
  • また、Image Registrationのところで、RGBどれも2枚ほど弾かれうまくいきません。Image RegistrationのNoise reductionを2に増やし、この問題を回避しました。
  • Local Nomarizationで失敗してしまいます。Interactive modeで色々試して、「Scale evaluation method」を「Multisale analysis」とすると回避できることがわかりました。
  • あと、PCCでどうも色が安定しません。この時は青っぽくなってしまいました。

PI、Photoshopともに、できるだけ素直な画像処理を心がけました。特殊なことは星マスクと銀河部分のマスクを作ったくらいでしょうか。細部出しもPhotoshopの範囲内で済ませています。

結果です。bin1だと画像サイズが大き過ぎでこのブログだとアップロードできないので、解像度を半分に落としてます。

Image10_RGB_crop_ABE_ABE_PCC_DBE_AS_HT_SR2_s


PowerMATEとbin2設定で

次の撮影は4月24日。今度はTeleVueの2倍のPowerMateを入れてやり、ASI294MM Proの設定でbinを2x2にして撮影してみます。対象は同じくM104です。

IMG_5305

IMG_5308

こちらも10分露光は変わらず、Gainは120にしています。PowerMATEで拡大してるので実質F10と暗くなっているため、Gainは4倍のもう120だけ上げ、240にした方が良かったかもしれません。

フラットフレームですが、夕方のほうの薄明で白色のごみ袋をかぶせて撮ってみることにしました。ただし、刻一刻と暗くなり時間変化が大きいので、枚数を限ってRGBそれぞれ32枚とします。条件を同じにしたいので、RGBすべて10秒露光とします。BGRの順にとったのですが、Gが少し暗すぎるかもしれません。Rは比較的明るくなるので、まあ大丈夫かと思います。

ただし、周辺減光がかなり大きかったせいか、どうもこのフラット補正はうまくいかなくて、4隅に大きな補正失敗部分ができてしまいました。たまたまなのか、この鏡筒+PowerMATEのせいなのかわわかりませんが、もし今後もこの組み合わせを続けるなら、トリミング前提で使う必要があるかもしれません。

後で画像で示しますが、フラットフレームを見ると、ホコリがセンサー面とフィルター面の両方にいくつか付いてしまっているようです。やはりカメラ周りをいじると必ずホコリが混入します。入れ替えをなくすという点からは、バロー無しでbin1x1のなしで固定してしまった方がいいのかもしれません。


画像処理は比較しやすいように、bin1の時と同様にできるだけ素直にすませました。あと、PCCでどうも色が安定しません。この時は赤っぽくなってしまいました。

結果です。周辺減光が残っていますが、とりあえず残しておきます。

Image39_RGB_PCC_DBE_ASx3_HT_SR


比較

さて、ここまできてやっと比較です。

原理的には分解能は同じです。
  • bin1を使ったものはより広角に撮影できますが、12bitのダイナミックレンジしか使えません。ピクセルサイズが小さくなり暗くなるので、その分ゲインを240にしていて、実効的なダイナミックレンジはさらに不利になります。
  • 2倍のPowerMATEとbin2を使ったものは、撮影範囲は各辺2分の1、面積で言うと4分の1ですが、14bitのダイナミックレンジを使えます。ゲインはbin2の時のデフォルトの120としましたが、この時も実質F値がノーマルの5から10になり、明るさでいうと4分の1と暗くなるので、ゲインは4倍明るい240のほうがよかったかもしれません。

銀河部を拡大して比較します。上がbin1で、下がPowerMATEにbin2
final

final

微恒星はPowerMATEで拡大した方がシャープに見えます。でもこの差はbin1の時は風が強かったことで説明できそうです。銀河部はむしろほぼ同じか、bin1のほうが心持ち細部が見えている気がしますが、それでもそこまで大きな差ではありません。画像処理にも微妙な違いがあるので、そこで説明がつくと思った方が良さそうです。

もしかしたらもっと差が出るのではと思っていたのですが、結論だけ言うと、このくらいの差ならば個人的にはこれは拡大せずにbin1で撮影した方がメリットが大きいと感じました。ダイナミックレンジは確かに損しますが、そこまで大きな差になるようには見えないのと、広角でも撮れるので後からトリミングなどできて楽しいこと、トリミング前提なら縦横を気にしなくもていいので、撮影時のカメラの回転も省けるかもということ、そして何よりM51の時にも書きましたが、カメラをわざわざ付け直したりしなくていいのでホコリが入らないことです。


PowerMATEの入れかえによるホコリの混入

今回、PowerMATEを入れ替えたためのホコリの影響はかなりのものです。まずは入れ替える前のフラット画像がこれくらいです。
masterFlat_BIN-1_FILTER-R_Mono
PixInsightで強度にオートストレッチしたものにABEの1次をかけているので、相当あぶり出したような状態です。よくよく見ると無数の淡いリングが見えるような気がしますが、この程度では画像処理には全く影響がないと言っていいかいと思います。

次が、今回PowerMATEに入れ替えてから撮影した後、何も状態を変えずにフラットフレームを別撮りした時です。
masterFlat_BIN-2_FILTER-R_Mono
少なくとも濃い小さなリング多数と、少し淡めの大きなリングが多数、はっきりと写っています。小さなリングはセンサーの保護ガラス面についたホコリ、大きなものはフィルター面に付いたホコリです。今回はPowerMATEをどう取り付けたらいいかで何度か入れ替えをしたので、部屋の中ですが30分程度はカメラ、フィルターを暴露していたと思います。入れ替え方法は確立したので、今後はもっと短時間になりもう少しマシにはなるはずですが、(特に、外で入れ替える場合は)ホコリの混入を0にするのは難しいと思います。

一応補足しておくと、これくらい埃があっても、個々のライトフレームではリングは多少見えますが、きちんとフラット補正した場合は仕上がりにはほとんど影響がなくなります。

それでもここのライトフレームに影響があるのが嫌なので、この後この埃を掃除したのですが、再び元のレベルまで戻すのにかなりの苦労をしました。掃除してチェックしての繰り返しなので、1時間以上の作業になります。できることならこの作業は避けたいです。


結果

その後、bin1で撮ったものとbin2+PowerMATEで撮ったものをまとめてPixInsightで処理しようとしたのですが、画像サイズも解像度も違っているものをまとめて処理する方法がわかりませんでした。calibratedまでされたものをうまくregistratioinできません。5枚の1binと5枚の2binファイルをStarAlignmentで一合わせしようとした時、デフォルトだとどちらか5枚のみ、Star DetectionのAllow clusterd sourceをチェックすると少しマシで最高7枚の位置合わせに成功したましたが、それでもStar pairを見つけるのがうまくいかないです。何かうまい方法があるのでしょうか?

というわけで、今回は結果としては、周辺減光が少なく、広い範囲で選択でき、銀河部が多少細かく出ているように見えるbin1を採用します。恒星はbin2+PowerMATEのほうがシャープですが、周辺減光が激しく不採用とします。

Image10_RGB_crop_ABE_ABE_PCC_DBE_AS_HT_SR2_cut
  • 撮影日: 2022年4月22日20時1分-4月23日1時18分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃), bin1
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240、露光時間10分、R: 6枚、G: 7枚、B: 6枚の計19枚で総露光時間3時間10分
  • Dark: Gain 240、露光時間10分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240、露光時間 RGB: 0.03秒、RGBそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

前回を更新したと言えるレベルではないので、また来シーズンリベンジしてみます。


まとめ

やはりフラットフレームのホコリを見ると、できる限り状態は変えない方が得策な気がします。本当に解像度がもっと必要になる時、例えばシンチレーションで制限されず、口径とピクセルサイズで制限されるようなことがある場合に、bin1とPowerMATEで試すことは将来あるかもしれません。

とにかくやっと3ヶ月前の画像処理が終わりました。まだ溜まっているので、順次進めていきたいと思います。
 

前々回前回とVISACで試した、10秒露光の30枚ライブスタック


 

を普通の300秒露光で以前撮影したM104ソンブレロ銀河で再び試してみました。でも今回は結果が出なかったので、単なる記録記事です。


撮影と結果

今回の撮影時間は 10秒露光x30枚ライブスタックx32枚 = 2時間40分です。スタックした直後の画像をオートストレッチして見てみます。

masterLight_ABE_ABE_PCC

前のM104と比べてみます。左が前回の連続300秒露光、右が今回10秒露光の30回ライブスタックです。

comp

違いは
  1. ○ 今回の方が星像はほんの少しだけ締まっています。
  2. × ノイズは今回の方が圧倒的に多いです。
  3. × 微恒星も今回は完敗です。
これはNGC4216で見た傾向と全く同じです。というか、トータル露光時間のさは前より小さくなっている(前は7時間と1時間、今回は4時間と2時間半)のに、ノイズに関しては差がさらに大きく出ています。ノイズに関しては2つ理由が考えられます。

まず一つは読み出しノイズです。そもそも読み出しノイズは一回露光したら必ず読み出されるノイズなため、一回の露光時間を伸ばすのが唯一の改善策です。もちろん撮影枚数を増やすことでもへらすことができますが、その効果は小さいです。実際、300秒から10秒にしたので、√30で5.5倍くらいになります。トータル撮影時間が前回が4時間10分で、今回が2時間40分なので、250分/150分 = 5/3のルートで1.3倍。読み出しノイズがゲイン120のところと420のところでまあ1.3倍くらいよくなるので、これでトータル露光時間での悪化と相殺とすると、やはり5倍強程度悪くなっていることになります。

もう一つは、リアルタイムのダーク補正をしているのですが、このダークファイルのノイズがコヒーレントに重なってしまっていることが考えられます。ダークファイルは10秒露光で8枚撮影して平均したものです。ライトフレームのトータル露光時間減るべきノイズよりも、ダークファイルのノイズの方が遥かに大きい状況かと思います。ディザーが十分なら、適当にちらされるはずなのですが、どうもディザーの振幅が小さかった可能性があります。ホットピクセルやクールピクセルは後で検出して画像処理で除去できるので、もしかしたらダーク補正はしないほうがいいのかもしれません

一応最後まで仕上げましたが、やはりノイズが大きいことが災いしてか、全くダメです。

masterLight_cut_ABE_ABE_PCC_ASx3_ET3

どうも露光時間を30分の1にしているのに、星像の改善があまりにも少ないです。また、ノイズと微恒星に関してもちょっと厳しい結果になっています。もう少しやり方を変えた方がいいのかもしれません。

星像の改善に関しては少し計算して見ました。結構面白い結果が出たので、これについてはまた記事にします。


最近の撮影時のトラブル

VISACでの銀河撮影を始めて、ASCOM経由で接続している赤道儀が動かないことが2−3度ありました。一度はケーブルを赤道儀のコントローラーに繋いでいないという間抜けなミスでした。あとはちょっといやなトラブルで、接続されていると表示されるのに信号を送っても赤道儀が反応しないというものです。接続しているソフトやセレストロンドライバーを落とした後に発生するみたいで、これが起きるとPCを再起動する以外は解決策がなかったです。

銀河撮影の後に、FS-60CB(青い馬星雲を撮影しました。また画像処理して記事にします。)で撮影した時、BackYarEOS (BYE) でカメラに接続できないことが一度ありました。カメラの電源が切れたのかなと思ったのですが、そうでもありません。また、PC再起動直後だったので前の接続がとかいうことはありません。結局BYEを再起動することで解決しました。

あと、PHD2が何故が赤経側の一方向にずっとドリフトがあり、補正信号を出し続けているという現象が起きました。最初VISACの固定方法を疑ったのですが、問題になるようなところは見当たらず、その後に変えたFS-60CBでも同様のドリフトが起きたので、PHD2自身か赤道儀に問題がありそうです。でもこれは赤道儀の電源を入れ直したら直りました。


VISACのさらなる強化

今回のM104撮影後、まだどうも鏡筒を横から弾くと星が振動します。一番の問題はやはり一つの鏡筒バンドに対して、下側一本のネジで固定していることです。鏡筒が赤道儀から横に転げ落ちるようなモード(一般的にロールモードと言います)が弱いです。鏡筒がお辞儀するようなピッチモードや、水平面に回転するようなヨーモードは、たとえ鏡筒を叩いて励起しても、星像はほとんど揺れません。

ただ、ネジを補強するにしてもどうやればいいのか?鏡筒バンドとアリガタとの設置面積がちいさいので、ネジなどをつけるのもなかなか大変です。

Twitterで呟くと、何人かの方反応してくれました。その中でrimpaさんがアリガタ下からの押しネジでリングを固定しているとのこと。「そうか、押しネジでいいのか!」と思い、さらにシンプルに改良しました。

もともと橋頭バンドとアリガタを取り付けたM6のネジの左右に、M8のいもネジを入れました。これで押し引きネジ構造になります。

IMG_2194

下の写真の左側、鏡筒の先の方は穴にねじ山が切ってあったのですが、右側、接岸側はただの穴でした。そのためM8のタップを切り、そこに同様にいもネジを入れました。

IMG_2192

手で触っても違いがわかるくらいガチガチになりました。次回これで撮影を試してみます。


まとめ

VISACについてはある程度クセが見えてきました。強化は必須ですね。まだ不十分かもしれません。

光軸は副興側はある程度調整しましたが、接眼側もふくめて調整する必要がありそうです。今のところおにぎり星像が出る確率は減ってきました。でもこれは光軸調整がまだ不十分だからという可能性もあります。

ラッキーイメージはもう少し見直します。シンチレーションも大いに関係するのですが、分解能ができるだけ出るようなパラメータをもう少し見つけたいと思います。


VISAC復帰第2段です。前回のNGC4216に続き、今回はM104ソンブレロ銀河。




今回のターゲット

M104にした理由ですが、あまりこだわりはなくフォーサーズのASI294MCの画角に合うところを探したらM104だったといっても良いかもしれません。M104は意外に大きくて、VISACの1800mmとフォーサーズでもそこそこの大きさになります。自宅から見てくらい東や南の空でこの画角にちょうど良い大きさの銀河が意外に少ないのです。

でもM104って、南のかなり高度がかなり低い位置にいるんですよね。撮影期間が意外に限られているので、ちょうどよかったかもしれません。


撮影

セットアップは前回のNGC4216と同じなので、ピント合わせくらいでほとんどいじるところはありません。露光時間などもNGC4216の時と同じゲイン120で5分露光で撮影しています。

22時頃から撮影を始めたのですが、平日なので撮影が始まったら放っておいて寝てしまいました。あとからチェックしたら、使えるのは50枚だったので、5分 x 50枚 = 250分で、合計4時間10分となります。


NINAで自動で天頂越え


そういえば前回から撮影ソフトにNINAを使っています。最近はCMOSカメラでの撮影は課金までしたAPTから完全にフリーのNINAに移りつつあります。構図決めや導入時のプレートソルブもうまくいくので非常に快適です。LiveViewでのオートストレッチも便利で、短時間の露光でターゲット天体が見えるので、一決めも正確です。

最近の撮影時間は結構長いので、どうしても天頂越えをしてしまいます。前回の撮影からNINAの赤道儀の自動反転機能を使い始めています。ケーブルの絡みが心配だったので、最初だけはその場にいて見ていましたが、全く問題なさそうです。最近はケーブルの固定位置を赤道儀の赤緯体の可動部付近だけ一箇所にしていて、他は余裕があるようにかなり緩めています。こうすることで、最終稼働部である赤緯体のモーター位置から、鏡筒やカメラまでのケーブルの長さが固定されるのでトラブルが少ないです。赤緯体からバッテリーやStick PCまでのケーブルはあえて固定せず、余裕があるケーブル長さでプラプラしています。赤経体が回転する時にケーブルが引っかからないか心配なのですが、赤経体がホームポジションにある時に北側から見て左右対象になるようにStick PC、バッテリーなどを配置し、(赤道儀の電源口が片側に寄っているので全部は無理なのですが)ケーブルもできるだけ左右均等になるように配置します。そうすると、たとえ赤経体が反転しても、反転前後どちらの場合もケーブルもバランスよく配置されるので、スムーズに反転します。



画像処理と結果

バイアス、ダーク、フラット、フラットダークも前回のNGC4612の時の使い回しです。セットアップが同じで冷却カメラで、カメラの回転角とかを触っていないと、これらのファイルがそのまま使えるので、画像処理が楽になります。

銀河はまだ画像処理に慣れていないのか、少し迷走しています。あまりシンチレーションが良くなかったこともあると思いますが、焦点距離が長いこともあり、星像がどうしてもボタっとしてしまいます。最初はArcsinhStretchでストレッチしたのですが、色は出てもすごく眠い恒星となったので、結局STFとHistgramTransformationのみでストレッチしました。なので恒星の色があまり出ていません。それでもまだ鈍い星像には不満で、ピントが合っていなかったのか、5分露光で長すぎたのか、赤外の収差で大きくなっているのか、まだまだ改善の余地がありそうです。


結果

結果です。

「M104: ソンブレロ銀河」
masterLight_ABE_DBE_PCC_HT
  • 撮影日: 2021年4月7日22時4分-4月8日3時28分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒: Vixen VC200L
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro、-10℃
  • ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、gain120、露光時間300秒x50枚 = 4時間10分、ダーク128枚(gain120、露光300秒、最適化なし)、フラット256枚(gain120、露光40ミリ秒)、フラットダーク256枚(gain120、露光40ミリ秒)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC、Sharpen AI

恒例のAnnotationです。

masterLight_ABE_DBE_PCC_HT_Annotated

今回も水平がバッチリ決まっていて気持ちいいです。


まとめ

まだまだ反省点だらけです。星像をキリッとさせるためにまだできることがたくさんありそうです。ピントはEAFを導入した方がいいかもしれません。VISACの星像がまだ安定しないので、ピントが合ってないのか光軸がまだずれているのか迷う時がよくあります。撮影に関しても、露光時間が長すぎるのでラッキーイメージが効果的かと思います。ノーフィルターの方向性は間違っていないと多いますが、どうもIRで星像が肥大化している可能性があるので、UV/IRフィルターは入れた方がいいのかもしれません。それとは別に、最近赤外が流行っているので分解能目的でIRだけを撮るのはありかもしれません。

次回は鏡筒自身の強度を上げるために、VISACを改造します。でもこれも大きな落とし穴があったのでした。


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