以前書いた「HG700応用編 (その1): 各種波長を撮影してみる」の時に、あまりに淡いと言って諦めたHe-D3線ですが、今回はその撮影に挑戦してみました。普通に処理しようとするとかなり大変なのですが、JSol'Exを使うと拍子抜けするほど簡単になります。
5875.62ÅのHe-D3線ですが、改めてSpectrum browserで確かめても線がはっきりしません。
実際にSharpCapで見た時も、全然わかりませんでした。それもそのはずで、He-D3線は吸収線ではなくて、輝線とのことです。
確認方法の一つが、太陽のリム(rim、縁(へり))の方に持っていって太陽表面の明るさの影響が少ない状況で見てみるとわかるとのことなので、実際やってみました。下の画面のように赤道儀のカーソルで端の方に持っていきます。画面内の明るい部分の上の方に左右に僅かにはみ出ている明るい線があって、どうやらこれがHe-D3線のようです。確かに輝線として光っていることがわかります。
なのでこの場合は、近くにある5883.82ÅのFe-I線とか、5889.95ÅのNa-D2線を一緒に撮影して、その吸収線のところの波長を元に、He-D3線の波長までをオフセットとしてずらして処理するというわけです。
JSol'Exのマニュアルを見ると、serファイルを解析して手作業で波長ラインをクリックしていって、オフセットを加えて処理するような方法が載っていますが、どうもそれも今は昔の話で、今では自動的に処理ができるようです。
撮影は2025年7月13日になります。少し雲もでてますが、おおむね快晴でした。赤道儀や鏡筒などの機材をセットアップ後、回折格子の回転角をHe-D3線に合わせて、カメラレンズ、コリメーターレンズ、鏡筒のピント合わせをして早速撮影開始です。
ROIサイズですがが、今回は少し広めの上下幅をとって、3200x250ピクセルとしました。最近の撮影は1枚だけの場合でも、SharpCapで動くあまりに便利すぎな「SHGスクリプト」を使っています。撮影時間が32倍速で8秒と、かなり短くできるようになってきたのと、横幅は元の3840ピクセルから少し攻めて3200ピクセル、縦幅もHαとかの単線なら80ピクセルで十分となり、ファイルサイズが元の10GBから2GB程度になってかなり小さく撮影することができています。出せるフレームレートはROIサイズなどによりますが、小さいサイズにすると450fpsから570fpsくらい出ます。これくらいのフレームレートだと32倍速で大丈夫そうで、実際に処理しても今の所問題は見えていません。今回はHe D3を含む複数の線をまとめて撮影するので3200x250ピクセルと少し太目のため、450fpsでの撮影になりました。
多波長撮影の記事にコメントをくれたhasyamaさんによると「Jsol'ExのWavelengthの設定をAutodetectにして処理すれば、自動でHe-D3画像を生成してくれるはず」とのことなので、早速やってみました。基本的にはQuick modeで処理すればいいみたいです。でもどうやら、うまくできるときとできないときがあるみたいです。うまくいくときは、そのままHe-D3線が自動で認識され、黒いもやもやのような特徴的な画像が出力されます。
うまくいかない場合ですが、原因を探るとprofileタブのスペクトルのフィッティングを見てわかりました。He-D3線の処理はかなり特殊で、撮影したHe-D3線の近くの吸収線(Na-D2やFe-I)を元に、JSol'Exが持っている参照スペクトルと比較してフィッティングなどし、吸収線周りの波長の値と、1ピクセルあたりが何Åにあたるのかかを決めます。そのNa-D2やFe-Iの情報を元にして、He-D3の波長は既知なので、何ピクセルずらして処理すればいいかを計算します。ところがうまくいかないときにprofileを見てみると、実測で番暗いNa-D2が参照データの吸収線と合っていなくて、波長が全然ズレたものになっていました。その場合、serファイル処理の際のQuick modeでの波長設定をAutodetectではなく、あえてNa-D2線をにして再処理すると、うまくフィッティングできるようです。もしNa-D2線が撮影されてなくて、もう少しHe-D3線に近いFe-I線だけが入っているなら、波長設定をFe-I線を選んで同じserファイルを処理しても大丈夫でした。
とにかく、Autodetectを選択しても、Fe-IやNa-D2選択しても、撮影した動画にHe-D3が含まれていれば勝手に認識してHe-D3画像を生成してくれるようになっているようです。
ちなみに、Image Mathのサンプルスクリプトにもヘリウム処理があるのですが、多分Image Math自身のバグで、処理中に変数での画像の受け渡しがうまくいかなくて、表面が一色に塗りつぶされてしまうようです。スクリプトを書き換えて一度Quick modeで出た画像を出してやってから元に戻してやると、きちんとしたHe-D3を出せたりするのですが、どうも再現性があまりないようで、今の所あきらめてます。というのも、処理時にHe-D3線画像から連続光画像を引くことで明るさに隠れているHe-D3線が見えるようにしているのですが、この引き算処理がブラックボックスで、処理ごとに引きすぎで暗くなったり、うまく引けなくて明るくなりすぎたりして、出てきた画像にばらつきがあります。今回は初めてなのでとりあえず自動処理で済ませることにしますが、そのうち調整できるようになったら色々処理過程で試してみようと思います。
出来上がり画像です。今回は10ショット撮影し、4ショットを使いました。6ショットも捨てたわけは、上で書いたように自動処理で明るくなったり暗くなったり、どうも画像が安定にならないからです。その中で最も似通った4枚を使いました。モノクロとカラー化した画像を示しておきます。
ただ、明るいオフセットを引いた差分の画像なんて初めてで、処理の匙加減がよくわかりません。上の画像は一見反転しているように見えますが、実際には反転なんてしていなくて、明るいHe-D3輝線画像から連続光画像を引いているために黒い部分がでてくるようです。黒い部分はあまり諧調が残っていないのですが、マニュアルで処理過程を調整できるならもう少しマシになるのかもしれません。表面のモヤモヤ具合もどれがHe D3に特徴的なものかよくわからないので、シャープにした方がいいのか、もっとかすんでいるようなのがいいのか全然わかりません。ネット上にもあまり手本がないので、とりあえず今回はImPPGも無しなど、最低限の処理に抑えることにしました。
He-D3線が目的だったのですが、撮影の際に暗線のNa-D2線とFe-I線も撮影せざるを得ないので、ついでに処理して画像にしてみました。
まずはNa-D2線です。波長がHe-D3線とほぼ同じなので、似たような色にしました。多少ですが、表面に特徴のあるひび割れみたいなものが出ています。
次はFe-I線ですが、こちらはかなり地味です。それでも少しだけ模様が見えます。
やはり特徴的なHe-D3線に比べると、白色光に似ていてそこまで面白味はなさそうです。
以前諦めたHe-D3に挑戦してみました。最初は大変だと思っていていろいろ調べてたのですが、ほぼ自動でできてしまったので、ちょっと拍子抜けでした。
SHG700に関して、このセットアップで太陽に限っていうと、だいぶやりたかったことはできてきていて、ネタとしてはあと数個といったところでしょうか。でも、このセットアップを外してまだやってみたいこともたくさんあるので、もう少し分光熱は続きそうです。
He-D3線
5875.62ÅのHe-D3線ですが、改めてSpectrum browserで確かめても線がはっきりしません。
実際にSharpCapで見た時も、全然わかりませんでした。それもそのはずで、He-D3線は吸収線ではなくて、輝線とのことです。
確認方法の一つが、太陽のリム(rim、縁(へり))の方に持っていって太陽表面の明るさの影響が少ない状況で見てみるとわかるとのことなので、実際やってみました。下の画面のように赤道儀のカーソルで端の方に持っていきます。画面内の明るい部分の上の方に左右に僅かにはみ出ている明るい線があって、どうやらこれがHe-D3線のようです。確かに輝線として光っていることがわかります。
明るいところが太陽表面の縁です。
その縁の上部(波長が低い方)に飛び出ている線がHe D3の輝線になります。
下の方の黒い太い線がNa-D2線になります。
その縁の上部(波長が低い方)に飛び出ている線がHe D3の輝線になります。
下の方の黒い太い線がNa-D2線になります。
なのでこの場合は、近くにある5883.82ÅのFe-I線とか、5889.95ÅのNa-D2線を一緒に撮影して、その吸収線のところの波長を元に、He-D3線の波長までをオフセットとしてずらして処理するというわけです。
JSol'Exのマニュアルを見ると、serファイルを解析して手作業で波長ラインをクリックしていって、オフセットを加えて処理するような方法が載っていますが、どうもそれも今は昔の話で、今では自動的に処理ができるようです。
撮影
撮影は2025年7月13日になります。少し雲もでてますが、おおむね快晴でした。赤道儀や鏡筒などの機材をセットアップ後、回折格子の回転角をHe-D3線に合わせて、カメラレンズ、コリメーターレンズ、鏡筒のピント合わせをして早速撮影開始です。
ROIサイズですがが、今回は少し広めの上下幅をとって、3200x250ピクセルとしました。最近の撮影は1枚だけの場合でも、SharpCapで動くあまりに便利すぎな「SHGスクリプト」を使っています。撮影時間が32倍速で8秒と、かなり短くできるようになってきたのと、横幅は元の3840ピクセルから少し攻めて3200ピクセル、縦幅もHαとかの単線なら80ピクセルで十分となり、ファイルサイズが元の10GBから2GB程度になってかなり小さく撮影することができています。出せるフレームレートはROIサイズなどによりますが、小さいサイズにすると450fpsから570fpsくらい出ます。これくらいのフレームレートだと32倍速で大丈夫そうで、実際に処理しても今の所問題は見えていません。今回はHe D3を含む複数の線をまとめて撮影するので3200x250ピクセルと少し太目のため、450fpsでの撮影になりました。
He-D3の自動処理
多波長撮影の記事にコメントをくれたhasyamaさんによると「Jsol'ExのWavelengthの設定をAutodetectにして処理すれば、自動でHe-D3画像を生成してくれるはず」とのことなので、早速やってみました。基本的にはQuick modeで処理すればいいみたいです。でもどうやら、うまくできるときとできないときがあるみたいです。うまくいくときは、そのままHe-D3線が自動で認識され、黒いもやもやのような特徴的な画像が出力されます。
うまくいかない場合ですが、原因を探るとprofileタブのスペクトルのフィッティングを見てわかりました。He-D3線の処理はかなり特殊で、撮影したHe-D3線の近くの吸収線(Na-D2やFe-I)を元に、JSol'Exが持っている参照スペクトルと比較してフィッティングなどし、吸収線周りの波長の値と、1ピクセルあたりが何Åにあたるのかかを決めます。そのNa-D2やFe-Iの情報を元にして、He-D3の波長は既知なので、何ピクセルずらして処理すればいいかを計算します。ところがうまくいかないときにprofileを見てみると、実測で番暗いNa-D2が参照データの吸収線と合っていなくて、波長が全然ズレたものになっていました。その場合、serファイル処理の際のQuick modeでの波長設定をAutodetectではなく、あえてNa-D2線をにして再処理すると、うまくフィッティングできるようです。もしNa-D2線が撮影されてなくて、もう少しHe-D3線に近いFe-I線だけが入っているなら、波長設定をFe-I線を選んで同じserファイルを処理しても大丈夫でした。
とにかく、Autodetectを選択しても、Fe-IやNa-D2選択しても、撮影した動画にHe-D3が含まれていれば勝手に認識してHe-D3画像を生成してくれるようになっているようです。
ちなみに、Image Mathのサンプルスクリプトにもヘリウム処理があるのですが、多分Image Math自身のバグで、処理中に変数での画像の受け渡しがうまくいかなくて、表面が一色に塗りつぶされてしまうようです。スクリプトを書き換えて一度Quick modeで出た画像を出してやってから元に戻してやると、きちんとしたHe-D3を出せたりするのですが、どうも再現性があまりないようで、今の所あきらめてます。というのも、処理時にHe-D3線画像から連続光画像を引くことで明るさに隠れているHe-D3線が見えるようにしているのですが、この引き算処理がブラックボックスで、処理ごとに引きすぎで暗くなったり、うまく引けなくて明るくなりすぎたりして、出てきた画像にばらつきがあります。今回は初めてなのでとりあえず自動処理で済ませることにしますが、そのうち調整できるようになったら色々処理過程で試してみようと思います。
できたHe-D3画像
出来上がり画像です。今回は10ショット撮影し、4ショットを使いました。6ショットも捨てたわけは、上で書いたように自動処理で明るくなったり暗くなったり、どうも画像が安定にならないからです。その中で最も似通った4枚を使いました。モノクロとカラー化した画像を示しておきます。
- 撮影日: 2025年7月13日8時50分-9時1分
- 撮影場所: 富山県富山市自宅
- 鏡筒: Takahashi FC-76(f600mm、F7.9)
- 分光器: SHG700
- 赤道儀: Celestrn CGEM II
- カメラ: ToupTek G3M678M
- 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間0.75ms、ROI: 3840x248、平均181fps
- 画像処理: JSol'Ex、PixInsight
ただ、明るいオフセットを引いた差分の画像なんて初めてで、処理の匙加減がよくわかりません。上の画像は一見反転しているように見えますが、実際には反転なんてしていなくて、明るいHe-D3輝線画像から連続光画像を引いているために黒い部分がでてくるようです。黒い部分はあまり諧調が残っていないのですが、マニュアルで処理過程を調整できるならもう少しマシになるのかもしれません。表面のモヤモヤ具合もどれがHe D3に特徴的なものかよくわからないので、シャープにした方がいいのか、もっとかすんでいるようなのがいいのか全然わかりません。ネット上にもあまり手本がないので、とりあえず今回はImPPGも無しなど、最低限の処理に抑えることにしました。
それでもこうやって見てみると、メジャー2強のHαとCaKを除くと、他のどの波長よりもHe-D3画像は特徴的と言えるでしょう。吸収線でないところの輝線というのも面白くて、少し離れた波長の明るい画像をさっ引くという処理方法の工夫で模様が出てくるところも面白いです。
ついでのNa-D2とFe-I線画像
He-D3線が目的だったのですが、撮影の際に暗線のNa-D2線とFe-I線も撮影せざるを得ないので、ついでに処理して画像にしてみました。
まずはNa-D2線です。波長がHe-D3線とほぼ同じなので、似たような色にしました。多少ですが、表面に特徴のあるひび割れみたいなものが出ています。
次はFe-I線ですが、こちらはかなり地味です。それでも少しだけ模様が見えます。
やはり特徴的なHe-D3線に比べると、白色光に似ていてそこまで面白味はなさそうです。
まとめ
以前諦めたHe-D3に挑戦してみました。最初は大変だと思っていていろいろ調べてたのですが、ほぼ自動でできてしまったので、ちょっと拍子抜けでした。
SHG700に関して、このセットアップで太陽に限っていうと、だいぶやりたかったことはできてきていて、ネタとしてはあと数個といったところでしょうか。でも、このセットアップを外してまだやってみたいこともたくさんあるので、もう少し分光熱は続きそうです。
























