ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:Heliostar100Hα

シーイングを客観的に評価するのは結構大変です。今回は太陽望遠鏡としてヘリオスター100Hαにモノクロのピクセルサイズ2μmのG3M678Mを用いて撮影した多数の画像を使い、シーイングを計測してみようと思います。

本記事はCP+で話した太陽トークでまだ記事にしてないことの一つで、
の3と4になります。


撮影条件

撮影日は2026年2月14日、ヘリオスター100Hαで太陽を約30秒に1回、約1時間で合計120枚撮影しました。一回あたりの撮影では、露光時間5ms、gain200 (ZWOのカメラでgain60=6dB=2倍に相当) で、200フレームを撮影しています。フレームレートは40fps程度で、一回の撮影で5秒くらいかかります。

ちなみに、1ファイル3GB程度の大きさになるので、120回撮影すると400GBものサイズになります。今回は通常の1倍撮影と、2倍のバローレンズをつけた撮影の、120x2=240回になります。画像処理も入れるSSDを1TB近くを消費したことになります。今回はテストなので全ファイルを残していますが、シーイングの悪い時間帯のserファイルは消すとかしないと、流石にストレージが持ちません。

1回の撮影でできたserファイルの200フレームのうち、AutoStakkert!4で上位80%をスタックします。これを120回分まとめて全て連続処理しますが、できた1枚1枚の画像ファイルのサイズはバラバラになってしまうので、ImPPGで画像サイズを合わせます。必須ではないですが、同じくImPPGで位置合わせまでしてしまうと、後からのタイムラプス映像を作る時の処理が楽になるでしょう。

これ以降シーイング評価の話になりますが、実際にやったのは目で画像を見て分解能別に分別することです。目で画像の分解能を見分けるためにはスタック直後の画像ではボケボケで見分けがつかないのでダメで、それをImPPGのバッチ処理を使い、細部出しをしたもので判別しています。その後、アルゴリズムで画像から分解能を評価するテストに進みましたが、その際はImPPGで細部出しをしたものではシーイングが現実的な値にならずにうまく評価できませんでした。そのため、以下の話はスタック直後の画像で評価しています。


シーイングの評価

画像からシーイングを評価する方法としては何種類かありますが、ここでは5つの方法を試しました。
  1. Tenengrad: 画像のシャープネス(鮮明度)や焦点の合い具合を評価するためによく用いられる勾配ベースの指標
  2. ラプラシアン分散(Laplacian Variance): 画像内のエッジ(輪郭)の強さを表す「ラプラシアン」を計算し、その分散(ばらつき)を算出する。
  3. FFT高周波比(高周波/低周波パワー比): 信号の全パワーに対する特定の高周波帯域(バンド)のパワーの割合を計算する。
  4. エッジ遷移幅: エッジ画像からエッジスプレッド関数 (ESF、画像上の輝度変化)を求め、それを微分してラインスプレッド関数 (LSF)を求める。エッジ法線方向に輝度プロファイルを取り、誤差関数(erf)やロジスティックでフィットして遷移幅を得る。
  5. フレーム間jitter(位相相関で微小シフト): シーイングは「ぼけ」だけでなく「像の揺れ」も大きいので、サブピクセルの微小移動は残る。連続フレームの相互相関からピーク位置のシフト求め、jitter のRMSを計算。
1-5までの評価を120枚に渡り、横軸時系列で、縦軸を粗さ細かさの変化でプロットします。

それぞれの計算結果が正しいかどうかの判断はなかなか難しいです。ここでは120枚の画像を目で見て1枚1枚粗さ別に仕分けして、それを時系列でプロットしてみた場合と比較してみました。

その結果、少なくとも3と5は、見た目で分けた傾向とは全く違いました。3はブレが大きい場合の違いを見分けることが得意でないようです。5は大きく間違えている場合がいくつかあったので却下しました。

1、2、4に関しては、目で見た傾向とは似たものが得られました。相対的な変化は甲乙つけ難いですが、問題はこの粗さ細かさの相対的な時系列変化を、シーイングという秒角の単位の絶対的な評価にしてやる必要があります。この場合、arcsec/pixelの値がわかっていれば、秒角にまで落とし込むことができるはずです。ところが、これがなかなかうまくいくことができずに、結局1のTenengradのみがそれらしい値になりました。2と4はいずれも1秒角以下と現実的な値から乖離していたので、今回はこのTenengradを採用することにしました。


シーイング変化の結果

その際の結果が以下になります。
graph_x1_ok



グラフを見る限り、1時間の間にシーイングがどんどん良くなっているのがわかります。9時頃は4秒書く以上と、典型的か少し悪い程度。それが改善されていって、10時頃からは1秒角程度になっているので、相当良かったことがわかります。この評価ですが、見た目で仕分けたものと比較してみます。見た目の画像は先に書いたように、ImPPGで細部出しをしたもので分別しています。

graph_x1_eye_ok

右軸の目の評価はランク付けしただけの値なので、秒角とは無関係ですが、少なくともTenengradで評価した傾向は目で見て分けた傾向とそこそこ合っているように見えます。その目で仕分けた画像を、分解能別の頻度分布を画像枚数で表してみます。
hist_x1_ok
頻度は正規分布にそこそこ従っているように見えます。全枚数をある程度の順位付けした後、一番いいものと一番悪いもの、ちょうど真ん中のもの、真ん中とベスト、ワーストの中間の5枚を引き出して並べてみたものが下の比較図です。左がワースト、右がベストになります。

five

同じ機材、同じ手法、同じ日でも、1時間内で見た目でわかるほど大きく分解能が変化することがわかります。このばらつきが上記のような分布に従うとすると、何も考えずに適当に撮影すると真ん中ら辺の画像になる確率が一番高くなります。きちんと選ぶと、1時間で120枚撮影したうちのわずか数枚は、ものすごくいいシーイングになりますが、その確率は数%と小さいので、偶然に頼るのはあまり得策でないことがわかります。


2倍バローでどうなるか?

上記の撮影に加えて、連続して2倍のバローレンズをつけて焦点距離を伸ばし、再び同条件で1時間、120枚の撮影をしました。焦点距離を増やしたということは、カメラのピクセルサイズの制限が緩和されるので、うまくいくとより分解能がよくなるはずです。

これも同様に時系列で解析します。

graph_x2_ok

横軸の時間を見てもらうとわかりますが、1倍の撮影の直後の時間帯から始めていて、グラフの値も1倍の最後のところをほぼ踏襲しているように見えるので、評価としては同様のことができていると思われます。

続いて、目で仕分けしたものとの同一プロットです。

graph_x2_eye_ok


まあそこそこ傾向は一致しているように見えます。というより、目で見ていてももう良すぎて差がわからないと言った状況でした。

同様に分布図です。

hist_x2_ok

1倍の時は正規分布に近い形をしていましたが、2倍の場合はどちらかというとピークが左側に寄ってしまっていて分解能が頭打ちのような状況になっているのかと思います。一つの解釈は、もう口径や光学系の制限に近づいてしまい、これ以上シーイングが良くなっても、像は良くならないと考えることができそうです。もしまだシーイングのばらつきが効いているなら、分布はもっと左側に広がってもいいはずだということです。

実際、1倍の時の一番いい画像と、2倍の時の1番いい画像を比べてみます。
x1_x2

確かに微妙に2倍の方がいいように見えますが、そこまで大きな差は無いと言えそうです。いいシーイングを実現してはじめて、やっとヘリオスター100Hαの性能限界に近づくことができるということなのかと思います。逆に言うと、口径100mmの性能を引き出すのは、そう簡単ではないということです。

もし、ヘリオスターの76mmでも100mmでもいいのですが、撮影したらフェニックスとそう結果が変わらなかったと悩んでいる場合は、ぜひともシーイングを選ぶということをやってみてください。方法はいろいろあるかと思いますが、これまでの経験から30秒くらいの単位で大きく変わることもあるので、やはり今回のように長時間、30秒くらいのスパンで間欠的に撮影して選ぶのが確実なのかと思います。


シーイングがこんなにいいのは本当か?

ここで少し疑問が湧きます。上のシーイングの時系列グラフを見てみると、1秒角を切っているところがあります。日本でのシーイングは典型的には2-4秒角、いい時でも1秒角と言われています。今回のように1秒角を平気で切るようなことはあり得るのでしょうか?

少し調べてみると、一般的な天文観測サイトでは
  • 良い観測地(世界標準)-> 中央値 0.6–0.8″
  • 普通の観測地 -> 中央値 0.8–1.5″程度
  • 都市・低地 -> 中央値 2″以上も普通
とのことです。でもこれは世界でのことで、日本ではいろいろ不利な面があり、典型的には
  • 山岳観測所(木曽・岡山など) -> 中央値 1–2″程度が中心
  • 良い夜(山) -> 中央値 0.8–1.0″
  • 非常に良い夜 -> 中央値 0.6–0.8″
  • 平地・都市 -> 中央値 2–4″以上も普通
とのことです。これらの値は全て中央値であることに注意です。今回の撮影は自宅なのですが、時間によって1秒角から5秒角くらいまではブレても良さそうです。今回の測定結果を見ると、6秒角くらいから1秒角を切った時間帯もあります。もう少しきちんと考えてみます。

そもそも、シーイングとは普通はどう測定されるのかというと、一般的にはDIMM(Differential Image Motion Monitor)とも呼ばれ、ミリ秒単位の短い露光で「波面の傾きの揺らぎ」を測定し、その「ばらつき(分散)」を評価します。注意すべきことは、DIMMでは短時間露光が必須ということです。仮に露光時間を長くして平均化すると画面はぼやけるのですが、その一方でばらつきは小さくなってしまうため、もしシーイングとして評価しようとすると、良すぎる値が出てしまいます。要するに、平均化で見た目はボケてもシーイングがいいと判断してしまい、逆センスとなるわけです。これはシーイングという指標が、高次の細かい波形を見ているわけではないことを示しています。

その一方、今回の撮影は惑星のように、ごく短時間露光で撮影して多数枚をスタックしています。具体的には5ms撮影で160枚スタックしたものを1枚の静止画としています。AutoStakkertは特徴点を抽出して画像を歪めて位置合わせするようなアルゴリズムのはずなので、短時間で露光したものは一瞬一瞬のブレの少ない状態を撮影して、その特徴的な位置を認識し、次の画像も特徴的な位置を合わせるように画面を歪ませて画像を重ね合わせています。なので同じトータル時間 (ここでは5秒くらい) で単純に平均化した画像と比較すると、位置合わせして多數枚スタックした画像はシャープさが格段に良くなります。こう考えると、短時間露光で評価したシーイングと、位置合わせ多数枚スタックは同等の露光時間で評価したと言っていいのかと思います。

もう少し詳しく書いておきます。今回スタックした画像というものは、厳密にはシーイングそのものは違っていて、実効的にはPSF(Point Spread Function)を評価しています。PSFは点光源がどのように広がるかを表す関数で、これを「秒角/pixel」という画角とカメラセンサーから出てくる値から、PSFのFWHM を秒角単位にしたものです。短時間露光のスタックなので、短時間露光で測定したシーイング相当になるというのは上記で説明したとおりでいいでしょう。ただし、短時間露光スタックの方が一般的にいいFWHM値が出てしまうようです。理由は難しくはなく、位置合わせによって本来シーイングが見るべき傾き成分が取り除かれてしまい低周波成分が減るため、PSFのFWHMが小さくなるとのことです。例えばオフアキでのAO撮影のように、単純に各フレームを平行移動でそろえるだけでも一般的にFWHMは改善しますし、画像を歪ませての位置合わせとなると改善はさらに大きくなります。

さらにですが、今回は200枚中の上位160枚で8割を選んで使っていますが、この割合をもっと減らして1つのserファイル内でラッキーイメージング的なことをもっと進めると、さらに改善幅は大きくなる可能性があります。

というわけで、普通に評価するシーイングよりもスタックした方がある程度良い値になるというのは少なくとも定性的にはおかしくなさそうで、上記のグラフで出した良すぎる値は十分あり得るのかと思います。

このように厳密にいうとスタック撮影から評価した分解能はシーイングとは違うということになりますが、ここではイメージしやすいということで、グラフ内ではシーイングという言葉をあえて残すことにします。


まとめ

撮影した多数の太陽のHα画像から、シーイング相当の時間変化を定量的に評価してみました。1時間でシーイングは大きく変化し、その際の最も分解能の出ている画像と、最もボケた画像では、大きく違うことがわかりました。同じ機材を使って、ここまで大きな差があることは驚き以外のなにものでもありません。いいシーイングを選ぶということは非常に重要で、口径の大きいヘリオスター100Hαはシーイングを選ぶだけの価値がある太陽望遠鏡だということです。その一方で、口径限界まで達するとそれ以上いいシーイングがあったとしても、分解能は頭打ちになってしまいもうそれ以上改善しません。

口径100mmはハイエンドクラスの太陽望遠鏡なのですが、口径200mmや300mmでの太陽画像の分解能はさらに別世界となります。例えばここは、口径300mmの太陽望遠鏡を市販しているメーカーになります。最後は口径が効いてくるのは、惑星の場合と同じなのかと思います。


日記

2月の途中から3月はとにかく忙しかったです。CP+もありましたが、その前後も合わせて出張が多くて、ほとんど自宅にいない日が続きました。たまに自宅にいても1日とか2日で、次の日朝早く出発することを考えるとなかなか夜の撮影もままならない日が続きました。

そんな中で、先日実家の名古屋に行く用事があり、ついでにSCORPIOに寄ってきました。いつもの如く何か買うわけではないので申し訳なかったのですが、店長さんにCP+の黒点振動の動画を見せたりして盛り上がりました。ちょうど来ていたお客さんに、小学4年生の男の子と、さらにその後中学2年生の女の子がいたので、黒点振動や撮影した星雲や銀河の写真をみてもらいました。二人とも天文に興味がある子達で、一人は望遠鏡の受け取りに、もう一人は赤道儀の検討に家族と一緒に来店していました。その間に、ヘリオスター76Hαを覗かせてもらったりして、結局2時間近く滞在してしまいました。店を出た後に、たまたま宙うたさんが来店されたらしくて、つい先日購入されたヘリオスター100Hαを持ち込んで76Hαと並んで太陽を見ていたとのこと。せっかくなので宙うたさんとお会いしたかったです。もう少し長くいればよかったのかもしれません。

更に今週末は天文仲間のお客さんが自宅に来る予定です。少し準備をしたいので、できれば平日のうちに晴れてくれればいいのですが。


今年もCP+が近づいてきました。今回もサイトロンブースにおいて、太陽について話します。タイトルは

「昼間の天体観察
〜太陽専用望遠鏡を使ってみる〜」

としました。太陽観察をしている方、太陽に興味がある方、太陽望遠鏡のことを知りたい方、是非とも会場まで足を運んでいただければと思います。フェニックスとヘリオスター100Hαを使ったので、その比較を中心にお話しします。

CP+の情報については、公式サイトをご覧ください。


セミナー情報はここから検索できます。出展社で「サイトロンジャパン/LAOWA」を選択して「検索」ボタンを押して、最終日の3月1日を選んでください。

私のトークは

3月1日(日)の15時30分から

で、サイトロンのセミナーの中では一番最後になります。

サイトロンの特設ページからもリンクが張られています。リンク先の下の方にセミナー一覧が出ていますので、スクロールさせてみてください。
 

また、天リフさんの協力で今年もセミナーがライブ配信されます。おそらく後日見ることもできると思いますので、会場に来れなかった方は是非ともYoutubeでセミナーの内容をご覧ください。


さて、今年の内容ですが、少し期待して頂いていいかと思います。

Heliostar100Hαで撮影した高分解能の画像の一部を載せておきます。
11_05_01_lapl3_ap2189_IP2_light_mono_cut
こんな画像をどうやって撮影するのか、これまでの経験から学んだ手法を解説します。

当日は上の画像が動く様子も見せます。多分これまであまり見たことがない映像になると思います。

さらには、昨年解説したエタロンの仕組みをさらに発展させ、実際にその特性を実測した結果もまとめて紹介します。

楽しみにしていてください。



なんとサイトロンさんからSkywatcher社の最新の太陽望遠鏡「ヘリオスター100Hα」をお借りすることができました。

サイトロンさんは2024年4月にACUTER OPTICS社の「フェニックス」で太陽望遠鏡を扱い始め、2025年3月にSkywatcher社のヘリオスター76Hα、2025年11月には屈折太陽望遠鏡の中では最大のクラスの口径100mmというヘリオスター100Hαの取り扱いを始めました。

これまで星まつりなどでヘリオスター100Hαを含めて何度か見比べる機会はありましたが、じっくり扱うのは初めてです。今回試すことができたのは、2026年1月17日の午前と、翌日18日の午後の一部の、晴れ間のチャンスのときで、時間も限られていたため、まだ最初の評価でしかありませんが、そのすごさは十分に実感できました。


ヘリオスター100Hαの外観

IMG_2419

鏡筒は大きなケースの中に入っています。中身は鏡筒本体と、ブロッキングフィルターが中に組み込まれている天頂プリズム、20mmのアイピース、遮光板などです。サイトロンが作成した日本語のマニュアルも入っています。

早速出して、赤道儀にセットしてみます。赤道儀は今回は手持ちのCGEM IIを使いました。ヘリオスター 100Hαの重量は6kgなのでもう一段階小さいAdvanced VXでも十分稼働できるかと思いますが、撮影まで考えるともう一段階大きなCGEM IIクラスの赤道儀の方が安定するのかと思います。
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面白いのは太陽ファインダーで、手持ちのハンドルと兼ねている秀逸なデザインのものです。

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最近は太陽でも長時間撮影になることもあり、ガイド鏡が必要だったりするのですが、ガイド鏡を取り付けるためのねじ穴も充実しています。
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フォーカサーも減速器が付いたタイプで細かい調整ができます。フォーカス部の動きの硬さを調節するつまみも使いやすいものがつけられています。

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眼視観察

今回は手持ちの太陽望遠鏡の入門機のフェニックスと比較してみたいと思います。

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まずは眼視での比較です。眼視に関してはあまり大した経験はないので、元々の予定ではパッと終わらせて、すぐに撮影に向かう予定でした。でもここで思ったより時間を使ってしまいます。なぜなら、フェニックスとヘリオスター100Hαの見え具合にあまりに差があったからです。使ったアイピースはヘリオスター100Hαに付属の20mmのものと、手持ちのハイペリオンの13mmです。これとVixexの2倍のバローレンズを組み合わせて見比べています。

まずですが、フェニックスも眼視で十分に見えています。プロミネンスも、ダークフィラメントも、プラージュも普通に見えます。さて、どれくらい違うのだろうとヘリオスターを覗くと、「えっ!?」と声を出してしまうほど違いました。まず、ダークフィラメントの濃さが全然違います。さらにプラージュがキラキラ輝いています。この日は黒点群が大きくつ出ていたのですが、大きい方はフェニックスでも十分に見ることができました。でも小さい方はフェニックスではそこまで気づかなくて、ヘリオスターを見て「あれ?もう一つある?」と改めてフェニックスを見て「あー、これは見落とすな」と思うくらいに、ヘリオスターだと細かいところが見えるのです。黒点周りの模様の一つ一つの細かいところが見えるというのでしょうか、もう全然違いました。

スマホで写真を撮ったみました。フェニックスと
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ヘリオスター100Hαです。
IMG_2472

そもそも、焦点距離がフェニックスの400mmに対して、ヘリオスター100Hαは760mmと倍近く違うので、同じアイピースで見ると、見た目の大きさも倍近く違うのはわかるかと思います。そして、ヘリオスター100Hαの方が、太陽表面の模様がより見えているのもわかるかと思います。

それでもスマホの撮影では眼視での違いは全然伝わりません。ここからは言葉の説明のみになりますが、雰囲気だけでも伝わればと思います。

眼視で見比べたときに相当な違いがあるので、何が違うのか確かめたくなります。フェニックスに
  1. ヘリオスターに付属の20mmアイピースと
  2. ハイペリオン13mmと
で見比べてみます。2にすると太陽は倍近くまで大きくなり、ヘリオスターに1を付けたときと同じくらいになります。それでもフェニックスで見ている限り、ダークフィラメントやプラージュのコントラストも、黒点周りの細かさも良くなることはほとんどありません。

そこでフェニックス側で13mmアイピースに、さらに2倍のバローレンズを付けてよく見てみたのですが、根本的に解像度が良く出ません。この時点で、「あ、これは口径の差だ」とものすごく腑に落ちました。40mmと100mmの口径の差は眼視でも明らかで、フェニックスとヘリオスターと一緒に見比べてしまうと、やはりフェニックスの口径の小ささをどうしても実感してしまいます。その観点からいくと、ヘリオスターに13mmのアイピースを付けたときは、さらに細かい模様を見ることができます。その時のスマホで撮影した画像です。
IMG_2457

口径による明るさも効いているでしょう。フェニックスに13mmのアイピースを付けて、2倍のバローを付けたときにはやはり暗いという印象です。ヘリオスターに13mmのアイピースを付けると大体同じ大きさの太陽像になるのですが、まだ十分明るく感じます。口径で100/40=2.5倍なので、明るさはその2乗で6.25倍になります。これだけの明るさに違いがあるのは、高倍率にしたときに効いてきます。

分解能に関しては口径の違いで納得したのですが、コントラストの違いは口径では説明できません。分解能がいいと、よりはっきりとは見えるので、多少コントラストが上がったように見えるのも理解できるでのすが、どうもそれだけでは到底説明できないレベルで違いがあります。これはエタロンの違いなのでしょうか?このとき結論は出ませんでしたが、次の日に撮影までして謎が解けました。

結局この日は撮影しようしてカメラをセットしたところで雲が出てきて終了でした。次の天気は2週間予報を見ても全然晴れにならなさそうなので、早めに眼視を切り上げて撮影に移った方が良かったみたいで、ちょっと失敗したかな思い、その日は撤収しました。


撮影での比較

次の日、朝から天気予報通り曇っていたのであきらめていたのですが、午後から一部晴れ間が見えてきました。時間は限られていますが、早速撮影に取り掛かります。

この日もフェニックスとヘリオスター100Hαを並べて同じような時間帯に撮影します。
IMG_2479

カメラですが、フェニックスにはいつものG3M678Mですが、ヘリオスターだと全景が入らないので、大きなセンサーサイズでピクセルサイズの小さいASI294MM Proをbin1で使います。ピクセルサイズはG3M678Mが2μmでASI290MMがbin1だと2.3μmとなるのでフェニックスるの方が有利ですが、ヘリオスターは焦点距離が倍近くであることと、さらに口径の差もあるために、分解能は出るはずです。ただし、ASI294MM Proをbin1で使うと、格子状の模様が出ることがあるので、そこが不利になるかもしれません。

まずは全景で比較してみます。共に500フレーム撮影し、そのうちの400枚をAutoStakkert!4でスタックしています。細部出しはImPPGですが、できるだけ同じような処理をしました。普通は更にPhotoshop などで仕上げをするのですが、今回は比較のためにできるだけシンプルにということで、細部出し以降は無しもしていません。あと、天頂プリズムのせいで上下が反転した画像になってしまっていますが、そのままにしてあります。

フェニックスと
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ヘリオスター100Hαです。
14_04_33_lapl3_ap2298_IP

ヘリオスターの方は格子模様が心配でしたが、とりあえず今回は大丈夫なようです。いまだに条件が良くわかりませんが、出るときは何をやっても出るというのが今までの経験です。

全景だとフェニックスも縁をスターもそこまで違いがわからないので、拡大して比較しています。解像度が違うので、Windwos上のフォトで拡大した画像を表示し、全画面キャプチャーしています。左がフェニックスで、右がヘリオスター100Hαです。
スクリーンショット 2026-01-20 213957_cut

さすがに違いが判りますね。ヘリオスター100Hαの方がより細かいところまで出ています。


考察

え?撮影だと思ったより違わない?

確かにそうなんです。実は撮影になると、そこまで差が出ないのです。
  • フェニックスの方はこれまでの経験から、おそらく口径からくる限界近くの分解能を出しています。
  • 悪いはずのフェニックスのコントラストは画像処理で輝度のオフセットを変えることができ、うまくごまかせてしまいます。
  • 一方、ヘリオスターは口径の限界には達していなくて、むしろシーイングによって分解能が制限されてしまっていると考えられます。100mm位の口径になってくると、シーイングのいい時に撮影しないと、口径の有利さを十分に生かせません。
以前口径20㎝のC8で試したしたときのように、長時間撮影の中でいいシーイングの時を選び出して見てやると、口径100mmを生かした分解能になるのかと期待します。

では眼視で言っていたコントラストの差は撮影では出ているのでしょうか?実はこれも撮影で明確に相当する違いがあります。再び全景画像を見てみます。一見あまり差がないような全景ですが、よく見ると全然違っていることがわかります。
  • フェニックスの方は全体的に粗い模様が出て元気に見える一方、
  • ヘリオスターの方は細かく見えて一見のっぺりしているように見えます。
細かく出るのは波長分解能が優れていて、これまで分光撮影でさんざん見てきた、プラージュとは別の白いモヤモヤがヘリオスターの方にのみ全体に広がっています。これは明らかにエタロンの性能に差があり、ヘリオスター100Hαのエタロンの方が透過波長幅が狭くて性能がいいことを示しています。もしかしたらフェニックスのエタロンの合わせこみが不十分だった可能性も残っていますが、それでもそこそこは合わせたつもりで、調整のレベルを超えた違いなのかと思います。

エタロンに差があるのは、眼視で見たコントラストの違いも説明ができます。波長透過幅が大きいと、Hα線からずれた連続光の明るさが大きく邪魔をします。Hα線からずれると、とたんに明るくなるので、少しのずれが背景光の輝度に大きく影響するからです。これは特にダークフィラメントのコントラストに効いてきます。波長分解能がいいと、ダークフィラメントが黒く濃くみえるようになります。撮影の際は輝度のオフセットを調整するなどして多少はごまかせるのですが、人間の眼にはそのような機能はないので、コントラストの違いがそのまま見たときの印象になります。


まとめ

どうやら、今手元にあるヘリオスター100Hαのエタロンの性能がフェニックスのものよりもかなりいいというのは間違いなさそうです。このことは眼視での見え方、特にコントラストに効いてくるので、ヘリオスター100Hαは眼視で十分に楽しむがのが適している鏡筒かと思われます。もちろん撮影でも有利ですが、口径100mmの性能を生かすためには、シーイングのいい時を狙う必要があります。

フェニックスは太陽望遠鏡の中でもあくまで入門機です。これまでの入門機クラスのものと比べても見え味は非常に優れていて、性能も安定しています。今回の比較で言えることは、それでもヘリオスター100Hαとフェニックスには明確な差があって、ヘリオスター100Hαはハイエンドクラスの名に恥じない素晴らしい性能を持った太陽望遠鏡であるということです。特に眼視ではその違いがはっきりと分かると思いますので、星まつりの展示など、機会がある方はぜひとも見比べてみてください。

ヘリオスター100Hαは今後一か月くらい使用できる予定です。北陸の冬はあまり晴れないのですが、まだチャンスはこれかあもあるかと思いますので、またレポートを続けていきたいと思います。


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