Xで少し触れたのですが、馬頭星雲と燃える木星雲の色の違いについて調べてみました。
下の画像は以前撮影したものですが、馬頭星雲と燃える木星雲で明らかに色が違っています。カラー撮影なのですが、一応ワンショットナローバンドフィルターを使っています。フィルターは公称値で半値幅がOIII:16nm(±3nm)、Hα:12nm(±3nm)のDBPを使っています。決して狭い半値幅ではないですが、それでもHα周りは赤になるはずなのに、なぜ色に差が出るのでしょうか?
この色の差は、長年ずっと疑問に思っていました。
そのため、燃える木星雲の色は純赤というよりは、赤に白が混ざり、サーモンピンクのように見えます。
その一方、SHG700の分解能を活用して、Hα線とN II線の比を図ることもできるはずです。この比と、上のHαとBおよびGとの比を比較することで、相関があるかなどを見ることができるのかと思います。
これらのことは1970–90年代の分光観測で示されてきたとのことですが、馬頭星雲と燃える木星雲の色の違いの理由を自分で測定して確かめてみることができそうで、かなり楽しそうです。
昔からの疑問
下の画像は以前撮影したものですが、馬頭星雲と燃える木星雲で明らかに色が違っています。カラー撮影なのですが、一応ワンショットナローバンドフィルターを使っています。フィルターは公称値で半値幅がOIII:16nm(±3nm)、Hα:12nm(±3nm)のDBPを使っています。決して狭い半値幅ではないですが、それでもHα周りは赤になるはずなのに、なぜ色に差が出るのでしょうか?
この色の差は、長年ずっと疑問に思っていました。
正体は連続光
どちらも主に Hα(656.3 nm)で光る輝線星雲なのに色が違って見える理由は、「Hα 以外の成分」が大きく関係しているようです。
まず馬頭星雲ですが、馬の形そのものは暗黒星雲でB33と呼ばれていて黒く見えていて、その背景がIC434と呼ばれているHα線で輝く輝線星雲です。IC434はHα成分が支配的であるために、純粋な赤に近い色に見えます。
その一方、燃える木星雲はNGC2024と呼ばれていて、Hα(656.3 nm)に加えて、N II(654.8 / 658.3 nm)がかなり混ざっています。ナローバンドフィルターといえども半値幅が12nmと大きく、Hαと[N II]の波長の差は差は最大でも ±1.5〜2.0 nmと小さいので、どうしてもN II成分も拾ってしまいます。
ここで、HαとN IIはともにH II領域の一部であるということをまず理解しておく必要があります。
H II 領域とは「水素が電離して H⁺ と自由電子として存在しているガス」であり、定義としては「状態量」です。一方、Hα領域とは「Hα(656.3 nm)が強く観測される領域」であり、分光で見ることができる観測的な区分です。同様に、N II領域とは「N II(654.8 / 658.3 nm)が強く観測される領域」を指す観測的な呼び方です。これらはいずれも H II領域という物理的実体の内部構造を、異なる輝線で可視化しています。
ではなぜN IIが強いと色が変わるのでしょうか?
実は、波長の差は本質的ではなくて、N IIが強い領域では何が起こっているかということが問題になります。
重要なのは、H II領域では電離・再結合が活発になり、自由–自由放射や自由–束縛放射といった連続光に加えて、ダスト散乱光も増え、その成分がG、B側にも「連続的に分布していく」という点です。N IIの強度も、電子密度や電子温度に対してよく似た依存性を持つため、N IIはH II領域の物理状態を示す良い指標となるということです。結局、N IIが強いということは、H II領域の中でも電離・再結合が特に活発な物理条件にあることを意味し、「連続光が増える」という状態を表しています。その連続光がGとB成分にも入ってくるということが本質です。
また、燃える木星雲ではガスとダストの密度が非常に高く、GやBを含む反射星雲成分が混ざりやすいため、中心付近の明るい星(アルニタクなど)からの光が周囲の濃いダストで散乱されるという要素も大きいそうです。
まず馬頭星雲ですが、馬の形そのものは暗黒星雲でB33と呼ばれていて黒く見えていて、その背景がIC434と呼ばれているHα線で輝く輝線星雲です。IC434はHα成分が支配的であるために、純粋な赤に近い色に見えます。
その一方、燃える木星雲はNGC2024と呼ばれていて、Hα(656.3 nm)に加えて、N II(654.8 / 658.3 nm)がかなり混ざっています。ナローバンドフィルターといえども半値幅が12nmと大きく、Hαと[N II]の波長の差は差は最大でも ±1.5〜2.0 nmと小さいので、どうしてもN II成分も拾ってしまいます。
ここで、HαとN IIはともにH II領域の一部であるということをまず理解しておく必要があります。
H II 領域とは「水素が電離して H⁺ と自由電子として存在しているガス」であり、定義としては「状態量」です。一方、Hα領域とは「Hα(656.3 nm)が強く観測される領域」であり、分光で見ることができる観測的な区分です。同様に、N II領域とは「N II(654.8 / 658.3 nm)が強く観測される領域」を指す観測的な呼び方です。これらはいずれも H II領域という物理的実体の内部構造を、異なる輝線で可視化しています。
燃える木星雲はHαに加えて、「N II成分が多く観測されて」います。
でもここで、HαとN IIは波長がかなり近いので色はほとんど同じであること、さらにHαの上下にN IIがあるので平均化され、ほとんど色に差がつかないのではという疑問がわきます。最初はN IIが波長的に広がりを持っているためにG/Bまで及んで色が変わるのかと思ったのですが、調べてみるとピークは2つに分かれているけれども基本的には単色光で、それぞれの波長の広がり具合はHαと同じと思っていいそうです。
ではなぜN IIが強いと色が変わるのでしょうか?
実は、波長の差は本質的ではなくて、N IIが強い領域では何が起こっているかということが問題になります。
重要なのは、H II領域では電離・再結合が活発になり、自由–自由放射や自由–束縛放射といった連続光に加えて、ダスト散乱光も増え、その成分がG、B側にも「連続的に分布していく」という点です。N IIの強度も、電子密度や電子温度に対してよく似た依存性を持つため、N IIはH II領域の物理状態を示す良い指標となるということです。結局、N IIが強いということは、H II領域の中でも電離・再結合が特に活発な物理条件にあることを意味し、「連続光が増える」という状態を表しています。その連続光がGとB成分にも入ってくるということが本質です。
また、燃える木星雲ではガスとダストの密度が非常に高く、GやBを含む反射星雲成分が混ざりやすいため、中心付近の明るい星(アルニタクなど)からの光が周囲の濃いダストで散乱されるという要素も大きいそうです。
そのため、燃える木星雲の色は純赤というよりは、赤に白が混ざり、サーモンピンクのように見えます。
G、B成分の測定
RGBの比はそれぞれ
SHG700はこれまで太陽にしか使ってきませんでしたが、夜の天体にもいよいよ分光器の出番を作ることができそうです。ただし、SHG700は波長分解能はいいのですが、一度に見える全体の波長域は狭いので、G/Bを同時に見ることができません。回折格子を回転させ波長をGやBにずらしてみてやることはできますが、いずれにせよ範囲は狭いので、GやBの一部しか比較できません。それでも「H II領域でのGやBへの広がりは連続的」なために、馬頭星雲の背景と燃える木星雲をR、G、Bの波長帯の一部を拾い上げて見ることで、全体の比の比較を十分に推測することができそうです。
- 馬頭星雲 R(Hα) : G : B ≈ 1.00 : 0.02 : 0.02
- 燃える木星雲 R(Hα) : G : B ≈ 1.00 : 0.10–0.20 : 0.08–0.15
SHG700はこれまで太陽にしか使ってきませんでしたが、夜の天体にもいよいよ分光器の出番を作ることができそうです。ただし、SHG700は波長分解能はいいのですが、一度に見える全体の波長域は狭いので、G/Bを同時に見ることができません。回折格子を回転させ波長をGやBにずらしてみてやることはできますが、いずれにせよ範囲は狭いので、GやBの一部しか比較できません。それでも「H II領域でのGやBへの広がりは連続的」なために、馬頭星雲の背景と燃える木星雲をR、G、Bの波長帯の一部を拾い上げて見ることで、全体の比の比較を十分に推測することができそうです。
その一方、SHG700の分解能を活用して、Hα線とN II線の比を図ることもできるはずです。この比と、上のHαとBおよびGとの比を比較することで、相関があるかなどを見ることができるのかと思います。
これらのことは1970–90年代の分光観測で示されてきたとのことですが、馬頭星雲と燃える木星雲の色の違いの理由を自分で測定して確かめてみることができそうで、かなり楽しそうです。












































