今回は、4月から撮影の合間にずっと続けているエタロンの調整についてです。現段階でまだ結論は出てませんが、かなり溜まってきたので、途中経過を一旦記事にまとめておきます。
4月30日に書いた記事の中で書いた目標の最後の9番、C8+PSTでの良像範囲の改善です。今回の記事の範囲ではカメラはASI290MMを使っています。次回以降の記事では新カメラも使っていきます。
エタロンの調整はなかなか難しいので、簡単でわかりやすいところから順番に丁寧にやっていきます。この記事の後に試したことで、答えがわかっていてすでに意味がないこともありますが、それを飛ばして書くと意味がつながらなくなることもあるので、基本はやったことを順に書いておくことにします。
作業に入る前に、前提条件を書いておきます。
(補足) 以前は入射光に対するエタロンの角度を変えて中心波長を調整すると思っていましたが、それだと計算上十分な角度変化が取れなさそう (今考えるとFSRの10%くらいは変わっていいはずで、当時の計算は2%) なので、ずっと疑問に思っていました。PSTを作ったCoronado社が持っている特許と、実際に実装されている方式を見る限り、圧力式と思って間違いないと思われます。2024年春までに一連の特許が切れたために最近のエタロンに採用されたようです。Phoenixのエタロンも、後部のスポンジの存在など、見ている限りPSTのものに酷似しています。
もう一つ、今回の一連の作業で困難と思われることを書いておきます。
1については、前回、前々回の記事で、8cmでエタロン位置を0-5cm程度動かして、エタロン内に入射する光を平行光からずれた状態を作ったはずなのですが、結局エタロンの働きに差を見出すことはできませんでした。鏡間距離が短いことと、フィネスが低い( = 光の折り返し回数が少ない)ことが要因だと推測していますが、もっと動かしたら違いがわかるのか、実はすでに影響が出ていて気づいていないだけなのか、もう少し検証が必要です。
2は結構厄介です。はっきりとした悪い像はリアルタイム見てもわかるのですが、中にはリアルタイムで(まだボケた状態で)見て問題無いと思っていても、スタックした後で(これもまだボケた状態で)見て問題無いと思っていても、ImPPGで細部を出すと、なんかボケ気味だという場所が画面の中の部分的に存在することがあります。撮影時に確かめられるといいのですが、かなり最後の方まで画像処理して出てくるので、すぐに判断ができなくて調査が進みません。この一部がボケる原因そのものも、まだよくわかっていません。
3は、今回以降の一連の検証作業の途中で、カメラの角度が問題だということがわかってくるのですが、カメラの角度を変えるとニュートンリングが出てくることがあります。ニュートンリングを避けたいのですが、軽いものだと太陽表面の模様などに隠れて、撮影中はよくわからないのです。これも画像処理を進めていく過程、特にタイムラプス映像まで作ると、リング上の模様が動いているのがわかることがあります。撮影時に判断ができないので、困りものです。
最初にやったのはかなり簡単なことです。
1. PSTとC8の取り付け相対角度を変える
まずいつもの通りC8+PST+ASI290MMで太陽表面のHα画像を撮影します。上に書いた通り、エタロンリングの調整は画面中央付近が一番暗くなるところを選ぶので、ほぼ一意に決まります。少しわかりやすいところを選びましたが、いつものように画面右側が明らかに模様が出ていないのがわかります。
次に順次PSTをC8に対して90度づつ回転していきます。その際、同時にCOMSカメラも順次90度回転させていき、視野の角度が回転しないように補正するようにします。PSTを90度や180度回転させただけではそこまで違いがわからなかったのですが、270度回転させた時には明らかに改善が見られました。
その時の画像です。見ている場所が違うので少し比較しにくいですが、明らかに右側が改善しているのがわかると思います。
この状態で、500フレーム撮影し、改善するかどうか比較してみました。
うーん、右側は思ったより改善してません。この日(4月26日)はここでおしまいとなりました。
2. チルト角度調整
4月30日の記事で書いたように、上のテストの次の日 (4月27日) に粒状斑を撮影しています。そこでふと気づいたのですが、ここでも同じように右側がボケボケなんですよね。クロップしていない画像を改めて載せておきます。
PSTで右側がボケていたのはエタロンの透過中心波長がHαからズレていたと思い込んでいたのですが、粒状斑の撮影では白光なのでエタロンは全然関係ないはずです。ということは、これはC8かカメラから来ているでは?と考えたわけです。
ここで怪しいのは、カメラの手前に入れてあるチルトアダプターです。もともとの目的は、焦点距離が長くなりF値が大きくなると、直線的に入ってくる光が多くなるためにニュートンリングが発生しやすくなるので、それを回避する目的でカメラを傾けて取り付けるために入れています。ただ、その傾き角をかなり大きく取ってしまっているので、もしかしたらそれで焦点が合っていないだけなのではないかと思ったわけです。
しかも、午前と午後では赤道儀が反転するので、画面で見て上側を北に保つためにCMOSカメラを午前と午後で180度回転するのですが、たまにこの180度回転を忘れてしまう時があって、その忘れた時はボケが右から左に移動してるのを思い出しました。もしこのボケがエタロンからきているなら、ここでボケの左右反転は起きないはずですが、もしこのボケがチルトアダプターからきているとしたら、カメラとチルトアダプターの取り付けはねじ込み式なので相対角度は常に保たれているので、左右反転が起きるはずで、今ある現象を説明することができます。
この推測を確かめるために、ゴールデンウィークの5月4日の午後の曇りの中の晴れ間を利用して、実際にチルトアダプターを変更してみました。
結果は上から順に、チルトアダプターが 1. これまで通りほぼ最大角、2. 半分の角度、3. 傾きなしとなります。
下にフラット補正時のヒストグラムが残ってしまっているので少し比較しにくいですが、右側が明らかに改善されていきます。傾きをなくした時にもニュートンリングはパッと見は確認できません。傾きなしが一番いいので、とりあえずこれ以降は傾きなしでさらに調整を進めます。(その後、別の黒点画像を連続撮影し、タイムラプス映像にしたところで、明らかにニュートンリングの存在がわかりました。なので、傾きをなくす場合は、何らかの対策が必要です。)
3. C8に対して、どれだけPST本体を押し込むか
次に試したかったことは、鏡筒に対するPST固定位置の変更でした。でもその前に、カメラ位置の自由度を高めるために、ここでいったんチルトアダプターを外してカメラをより押し込む方向に動かしました。その結果を載せます。
右側の見え方が有意に悪くなっていますが、理由はまだよくわからないので、一旦は放っておきます。ここでのテストは上の画像がスタートになります。
鏡筒に対して、レンズ込みのエタロン位置を相対的に変えるために、手持ちの2インチの延長アダプターをC8とPSTの間に挟み込みます。これでエタロン位置も含めてPST全体が3cmほど後ろに下がったことになります。ここから更にPSTの入れ込み度合いを調整することで、もう少し位置を変化させることができ、最大で6cmくらい下げることができます。その際のピントは、C8側で合わせます。C8の主鏡の位置をずらすということですが、この調整範囲がかなり広くて、以降のテストで様々な個所の位置を変えていますが、すべてピントを出すことができます。この調整範囲の広さはC8を選んだ利点の一つです。
結果になります。上から順に 1. 2インチ延長アダプター挿入後で初期位置から3cm下がった状態、2. さらにアダプターに浅くPSTを入れることでさらに3cmほど、合計で6cmほど後ろに下げた後となります。
上3枚を比較してみると、最初の位置からエタロンを変化させても、予想に反して右側の映り具合はほとんど変化しません。これは8cm鏡筒でのコメントの議論がヒントになって謎が解決しました。gariさんが「PSTの黒箱を望遠鏡に挿してピントを合わせられる場合、対物がいずれの場合でも焦点位置からだいたい200mm手前の位置に-200mmのレンズが配置されることになるので、いずれの対物でもほぼ平行光になります」と言っていて、その後、私から「PSTの場合、レンズ位置とカメラの位置が固定だから、ここをいじれない限り大きく状況は変わらないということですね」と返しています。今回はPSTのピント調整を使わずに、この段階ではカメラ位置も調整していなくて、手前のC8のみでピントを合わせていることになります。結局エタロン以降でのセンサー面までの光の状態に(ほぼ)違いはないので、コメントでの議論が実証されたような形になるのかと思い、納得できました。
面白いのはここからです。
4. カメラの位置を変えて、エタロンとカメラセンサー面の間の距離を変える
上の最後の状態から、カメラをPSTに対して浅く差し込むようにして、エタロンから遠くで固定するようにしてみました。右側に明らかな改善が見られ、細かい模様が出ています。
ここに載せている状況以外でもいろいろ試してみましたが、やはりカメラを遠くに付ける方が右側のボケが少なくなるのは確実なようです。なので結局、C8とPSTの間の2インチ延長アダプターは外して、チルトアダプターを再度取り付けました。その時の画像が以下です。
ただしこれがベストかというと、たぶんまだ結論を出すのは早そうです。まず画面右側はいいのですが、逆に左側の分解能が出ていない気がします。また、画面上にニュートンリングっぽい回転状の模様が出ているようにも見えます。でも見分けはかなり微妙で難しくて、明らかな差が出るような状況にない限りは自信をもってこれがいいというのは難しいです。
5. PSTをC8に対して、再び回転させてみる
上の状態をもう少し改善できないかと思い、ここから、再度前週に試したPSTの取り付け角度を探ることにしました。書き忘れてましたが、この日のテストは再びPSTを0度で取り付けていて、前週の270度ではなくなっています。正直に言うと、単に270度のことを完全に忘れていただけで、何の疑いもなく最初からいつも通りに0度に取り付けてしまっていました。
0度から順に変えていきます。上から0度、90度、180度、270度です。
これら4枚を比べると、特に画面左側が、有意に180度 > 90 or 270度 > 0度となっていると言えそうです。前週の270度がよかったというのは、やはりチルトアダプターでの右側のピンボケの効果が含まれた複合原因だったといってよさそうで、今回の180度の方がより独立した正しい判断だと言うことができそうです。
6. カメラを最大限遠くに固定
この日の最後に、カメラ位置をもっと遠くにしたらどうかということで、カメラのところに1インチの延長アダプターを挟み込んでみました。下が結果になります。
大きく変わったことが2つあります。まず、明らかに全体が暗くなりました。画面での見かけ上はストレッチを駆使して同じくらいになるように調整していますが、ヒストグラムの山の位置を比べて見ると明らかに左に移動しているので、実際は暗くなっているのがわかります。この暗くなるのが、BFの径が小さいことによる制限からきているのか、エタロンの働きが変わってよりHαに合ったので暗くなったのか、もしくは全く別の理由なのかは今のところ不明です。ただ、全体的に分解能はよくなったようにも見えますが、これは時間にも依るものなのかもしれないのでまだ結論は出ていません。
と、今回の記事はここまでとしたいと思います。
ここ最近ずっとこのエタロン調整のことを考えています。週末の天気が悪くて、何の検証もできなかったのが不満なのか、昨晩はとうとう夢の中にエタロンが出てきて、全く訳のわからない調整を延々としていました。もうちょっとした末期症状です。
この後、より画角の広いG3M678Mが来て、さらにいろんなことがわかるのですが、これまた長くなるので、次回以降に書くことにします。
はじめに
4月30日に書いた記事の中で書いた目標の最後の9番、C8+PSTでの良像範囲の改善です。今回の記事の範囲ではカメラはASI290MMを使っています。次回以降の記事では新カメラも使っていきます。
エタロンの調整はなかなか難しいので、簡単でわかりやすいところから順番に丁寧にやっていきます。この記事の後に試したことで、答えがわかっていてすでに意味がないこともありますが、それを飛ばして書くと意味がつながらなくなることもあるので、基本はやったことを順に書いておくことにします。
作業に入る前に、前提条件を書いておきます。
- エタロンの回転角の自由度による不定性をどうするか? -> 画面中央が暗くなる位置で、ほぼ一意に決まると考える。
(補足) 以前は入射光に対するエタロンの角度を変えて中心波長を調整すると思っていましたが、それだと計算上十分な角度変化が取れなさそう (今考えるとFSRの10%くらいは変わっていいはずで、当時の計算は2%) なので、ずっと疑問に思っていました。PSTを作ったCoronado社が持っている特許と、実際に実装されている方式を見る限り、圧力式と思って間違いないと思われます。2024年春までに一連の特許が切れたために最近のエタロンに採用されたようです。Phoenixのエタロンも、後部のスポンジの存在など、見ている限りPSTのものに酷似しています。
もう一つ、今回の一連の作業で困難と思われることを書いておきます。
- エタロンへの入射光の平行光度と、エタロンがきちんと働いているかの関係がまだよくわかっていない。
- 良像かどうか、スタックして細部出しをしないとわからないことがある。
- ニュートンリングが撮影時に確認できない。
1については、前回、前々回の記事で、8cmでエタロン位置を0-5cm程度動かして、エタロン内に入射する光を平行光からずれた状態を作ったはずなのですが、結局エタロンの働きに差を見出すことはできませんでした。鏡間距離が短いことと、フィネスが低い( = 光の折り返し回数が少ない)ことが要因だと推測していますが、もっと動かしたら違いがわかるのか、実はすでに影響が出ていて気づいていないだけなのか、もう少し検証が必要です。
2は結構厄介です。はっきりとした悪い像はリアルタイム見てもわかるのですが、中にはリアルタイムで(まだボケた状態で)見て問題無いと思っていても、スタックした後で(これもまだボケた状態で)見て問題無いと思っていても、ImPPGで細部を出すと、なんかボケ気味だという場所が画面の中の部分的に存在することがあります。撮影時に確かめられるといいのですが、かなり最後の方まで画像処理して出てくるので、すぐに判断ができなくて調査が進みません。この一部がボケる原因そのものも、まだよくわかっていません。
3は、今回以降の一連の検証作業の途中で、カメラの角度が問題だということがわかってくるのですが、カメラの角度を変えるとニュートンリングが出てくることがあります。ニュートンリングを避けたいのですが、軽いものだと太陽表面の模様などに隠れて、撮影中はよくわからないのです。これも画像処理を進めていく過程、特にタイムラプス映像まで作ると、リング上の模様が動いているのがわかることがあります。撮影時に判断ができないので、困りものです。
PSTを回転
最初にやったのはかなり簡単なことです。
1. PSTとC8の取り付け相対角度を変える
まずいつもの通りC8+PST+ASI290MMで太陽表面のHα画像を撮影します。上に書いた通り、エタロンリングの調整は画面中央付近が一番暗くなるところを選ぶので、ほぼ一意に決まります。少しわかりやすいところを選びましたが、いつものように画面右側が明らかに模様が出ていないのがわかります。
次に順次PSTをC8に対して90度づつ回転していきます。その際、同時にCOMSカメラも順次90度回転させていき、視野の角度が回転しないように補正するようにします。PSTを90度や180度回転させただけではそこまで違いがわからなかったのですが、270度回転させた時には明らかに改善が見られました。
その時の画像です。見ている場所が違うので少し比較しにくいですが、明らかに右側が改善しているのがわかると思います。
この状態で、500フレーム撮影し、改善するかどうか比較してみました。
うーん、右側は思ったより改善してません。この日(4月26日)はここでおしまいとなりました。
もしかしてエタロンのではない?
2. チルト角度調整
4月30日の記事で書いたように、上のテストの次の日 (4月27日) に粒状斑を撮影しています。そこでふと気づいたのですが、ここでも同じように右側がボケボケなんですよね。クロップしていない画像を改めて載せておきます。
PSTで右側がボケていたのはエタロンの透過中心波長がHαからズレていたと思い込んでいたのですが、粒状斑の撮影では白光なのでエタロンは全然関係ないはずです。ということは、これはC8かカメラから来ているでは?と考えたわけです。
ここで怪しいのは、カメラの手前に入れてあるチルトアダプターです。もともとの目的は、焦点距離が長くなりF値が大きくなると、直線的に入ってくる光が多くなるためにニュートンリングが発生しやすくなるので、それを回避する目的でカメラを傾けて取り付けるために入れています。ただ、その傾き角をかなり大きく取ってしまっているので、もしかしたらそれで焦点が合っていないだけなのではないかと思ったわけです。
しかも、午前と午後では赤道儀が反転するので、画面で見て上側を北に保つためにCMOSカメラを午前と午後で180度回転するのですが、たまにこの180度回転を忘れてしまう時があって、その忘れた時はボケが右から左に移動してるのを思い出しました。もしこのボケがエタロンからきているなら、ここでボケの左右反転は起きないはずですが、もしこのボケがチルトアダプターからきているとしたら、カメラとチルトアダプターの取り付けはねじ込み式なので相対角度は常に保たれているので、左右反転が起きるはずで、今ある現象を説明することができます。
この推測を確かめるために、ゴールデンウィークの5月4日の午後の曇りの中の晴れ間を利用して、実際にチルトアダプターを変更してみました。
結果は上から順に、チルトアダプターが 1. これまで通りほぼ最大角、2. 半分の角度、3. 傾きなしとなります。
下にフラット補正時のヒストグラムが残ってしまっているので少し比較しにくいですが、右側が明らかに改善されていきます。傾きをなくした時にもニュートンリングはパッと見は確認できません。傾きなしが一番いいので、とりあえずこれ以降は傾きなしでさらに調整を進めます。(その後、別の黒点画像を連続撮影し、タイムラプス映像にしたところで、明らかにニュートンリングの存在がわかりました。なので、傾きをなくす場合は、何らかの対策が必要です。)
C8に対するエタロン位置調整
3. C8に対して、どれだけPST本体を押し込むか
次に試したかったことは、鏡筒に対するPST固定位置の変更でした。でもその前に、カメラ位置の自由度を高めるために、ここでいったんチルトアダプターを外してカメラをより押し込む方向に動かしました。その結果を載せます。
右側の見え方が有意に悪くなっていますが、理由はまだよくわからないので、一旦は放っておきます。ここでのテストは上の画像がスタートになります。
鏡筒に対して、レンズ込みのエタロン位置を相対的に変えるために、手持ちの2インチの延長アダプターをC8とPSTの間に挟み込みます。これでエタロン位置も含めてPST全体が3cmほど後ろに下がったことになります。ここから更にPSTの入れ込み度合いを調整することで、もう少し位置を変化させることができ、最大で6cmくらい下げることができます。その際のピントは、C8側で合わせます。C8の主鏡の位置をずらすということですが、この調整範囲がかなり広くて、以降のテストで様々な個所の位置を変えていますが、すべてピントを出すことができます。この調整範囲の広さはC8を選んだ利点の一つです。
結果になります。上から順に 1. 2インチ延長アダプター挿入後で初期位置から3cm下がった状態、2. さらにアダプターに浅くPSTを入れることでさらに3cmほど、合計で6cmほど後ろに下げた後となります。
上3枚を比較してみると、最初の位置からエタロンを変化させても、予想に反して右側の映り具合はほとんど変化しません。これは8cm鏡筒でのコメントの議論がヒントになって謎が解決しました。gariさんが「PSTの黒箱を望遠鏡に挿してピントを合わせられる場合、対物がいずれの場合でも焦点位置からだいたい200mm手前の位置に-200mmのレンズが配置されることになるので、いずれの対物でもほぼ平行光になります」と言っていて、その後、私から「PSTの場合、レンズ位置とカメラの位置が固定だから、ここをいじれない限り大きく状況は変わらないということですね」と返しています。今回はPSTのピント調整を使わずに、この段階ではカメラ位置も調整していなくて、手前のC8のみでピントを合わせていることになります。結局エタロン以降でのセンサー面までの光の状態に(ほぼ)違いはないので、コメントでの議論が実証されたような形になるのかと思い、納得できました。
カメラ位置の調整
面白いのはここからです。
4. カメラの位置を変えて、エタロンとカメラセンサー面の間の距離を変える
上の最後の状態から、カメラをPSTに対して浅く差し込むようにして、エタロンから遠くで固定するようにしてみました。右側に明らかな改善が見られ、細かい模様が出ています。
ここに載せている状況以外でもいろいろ試してみましたが、やはりカメラを遠くに付ける方が右側のボケが少なくなるのは確実なようです。なので結局、C8とPSTの間の2インチ延長アダプターは外して、チルトアダプターを再度取り付けました。その時の画像が以下です。
ただしこれがベストかというと、たぶんまだ結論を出すのは早そうです。まず画面右側はいいのですが、逆に左側の分解能が出ていない気がします。また、画面上にニュートンリングっぽい回転状の模様が出ているようにも見えます。でも見分けはかなり微妙で難しくて、明らかな差が出るような状況にない限りは自信をもってこれがいいというのは難しいです。
再度PSTを回転
5. PSTをC8に対して、再び回転させてみる
上の状態をもう少し改善できないかと思い、ここから、再度前週に試したPSTの取り付け角度を探ることにしました。書き忘れてましたが、この日のテストは再びPSTを0度で取り付けていて、前週の270度ではなくなっています。正直に言うと、単に270度のことを完全に忘れていただけで、何の疑いもなく最初からいつも通りに0度に取り付けてしまっていました。
0度から順に変えていきます。上から0度、90度、180度、270度です。
これら4枚を比べると、特に画面左側が、有意に180度 > 90 or 270度 > 0度となっていると言えそうです。前週の270度がよかったというのは、やはりチルトアダプターでの右側のピンボケの効果が含まれた複合原因だったといってよさそうで、今回の180度の方がより独立した正しい判断だと言うことができそうです。
更にカメラを遠く
6. カメラを最大限遠くに固定
この日の最後に、カメラ位置をもっと遠くにしたらどうかということで、カメラのところに1インチの延長アダプターを挟み込んでみました。下が結果になります。
大きく変わったことが2つあります。まず、明らかに全体が暗くなりました。画面での見かけ上はストレッチを駆使して同じくらいになるように調整していますが、ヒストグラムの山の位置を比べて見ると明らかに左に移動しているので、実際は暗くなっているのがわかります。この暗くなるのが、BFの径が小さいことによる制限からきているのか、エタロンの働きが変わってよりHαに合ったので暗くなったのか、もしくは全く別の理由なのかは今のところ不明です。ただ、全体的に分解能はよくなったようにも見えますが、これは時間にも依るものなのかもしれないのでまだ結論は出ていません。
まとめ
と、今回の記事はここまでとしたいと思います。
ここ最近ずっとこのエタロン調整のことを考えています。週末の天気が悪くて、何の検証もできなかったのが不満なのか、昨晩はとうとう夢の中にエタロンが出てきて、全く訳のわからない調整を延々としていました。もうちょっとした末期症状です。
この後、より画角の広いG3M678Mが来て、さらにいろんなことがわかるのですが、これまた長くなるので、次回以降に書くことにします。