ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:Hα

前回までの記事で、C8のコリメートレンズとして別の負レンズを使うことで、20cmの口径を活かし、フェニックスである程度の分解能が得られることがわかりました。



ただし、撮影は順調とは言い難く、結構苦労しての結果の画像です。この時の撮影に加えて、今回さらに2回の撮影をして、ある程度の結論を得ました。今回は、そんなお話です。


じゃじゃ馬鏡筒

太陽撮影にC8を使うことで、いくつかの課題があります。まず、前回挙げた
  • 時間とともにピントがずれていく
というのが最大の問題で、ズレの時間スケールから考えて、温度変化っぽいです。これがある限り、つきっきりでピントを合わせ続ける必要があり、離れての撮影ができません。

更に今回の撮影で気づいたことがあって、
  • エタロンの最適位置が時間とともにずれていく
というのが新たにわかりました。おそらくこちらも温度変化起因です。


エタロンの温度変化によるずれ

まず最初の撮影です。7月23日(木)の平日の朝5時半起きで、6時くらいから撮影を開始しました。最初の撮影は流石に高度が低すぎたのか、結果はボロボロで見せるまでもないのですが、一つ気づいたことがあります。ピントが時間とともにずれていくのは変わらないのですが、それに加えてエタロンのHα線の透過中心周波数が時間とともにずれていって、気づくと画面が明るくなっているのです。

これまで気づかなかったのに、今回どうやってこのことに気付いたかです。太陽の入射エネルギーを制限するために、現在はC8の接眼部、エタロンの手前に、UV/IRカットフィルターと、その後に赤色のR2フィルターを使用しているのですが、R2フィルターが結構な熱を持ってしまっています。以前R2フィルターを熱で破損したという黒歴史があるので、今回このR2フィルターを外してみました。すると、より多くの太陽光が透過し、エタロンが温められ、中心波長変化が顕著になり、あからさまに時間とともに画面が明るくなっていきました。確認のため再びR2フィルターを入れると、変化はゆっくりにはなりましたが、やはり変化が存在することがわかり、これまでも長時間撮影では影響があったのかと思われます。波長のズレは、エタロン部が熱せられ、エタロンの2枚の鏡の間の距離が変化して起こるものかと思われます。

これを防ぐために、R2フィルターの代わりに、昔星まつりでジャンクで格安で購入した36mm径のHαフィルターを、UV/IRカットフィルターの手前に取り付けてみました。このHαフィルターに太陽光を直接当てて反射光を見て確認したのですが、Hα以外はほぼ反射するような仕様になっているようで、フェニックスのエタロン内部に入る光を大幅に軽減できます。これを取り付けて再び試すと、エタロンの透過中心周波数の変化は見ている限りなくなりました。これで再び撮影を始めます。

この時に得られた画像が以下になります。まずはG3M678Mで1分ごとに30分撮影しました。次に2倍バロー + Apollo-M MINIで30秒ごとに1時間撮影しました。その中で、一番いい画像をえらびました。

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  • 撮影日時: 2026年7月23日9時15分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Celestron C8 (f2000mm、F10) + ACUTER OPTICS Phoenix (f400mm、F5)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ToupTek G3M678M
  • 撮影: SharpCap Gain 800 (= 8倍)、露光時間4ms、200/200 frames
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、Photoshop

面白いのは、これまでG3M678MとApollo-M MINIでピクセルサイズあたりの視野角を合わせるようにして同じ対象を撮影した場合に、毎回Apollo-M MINIのほうが分解能が出ていました。理由の一つが、グローバルシャッターかと思っていましたが、決定的な証拠はありませんでした。

今回、初めてG3M678Mの方が圧倒的に分解能が出ました。しかも相当いい分解能で、自己ベストだと思います。だからと言って、グローバルシャッターもローリングシャッターも差がないという結論が出るわけではないです。全く同じ状況が実現できてそれぞれ撮影したら、やはりグローバルシャッターのほうがいいという可能性はまだ残ります。

でもここで重要なのは、ローリングシャッターだとしても、もう口径20cmを活かすくらいの像は十分撮影できるという事実です。しかも、G3M678Mはセンサー面積が広い割に、ピクセルサイズは市販モノクロカメラではおそらく最小クラスです。さらにもっと重要なことに、なぜか鏡筒のF値を大きくしてもニュートンリングが出にくい、というか出ないことがあります。理由はよくわかりませんが、カメラをチルトしなくていいのはものすごく楽で助かります。

このように、グローバルシャッターでないということよりも、他のメリットが大きいので、今後しばらくはG3M678Mを使っていくことになると思います。画面周辺にHα中心波長が出ない部分が写ってしまいますが、それはクロップすればよく、クロップしたとしてもピクセルサイズが小さいのでまだ十分な解像度が残ります。


2回目撮影

更に、次の日の金曜日は休暇をとっていました。この日も5時半に起きて撮影です。午前中に病院に行く必要があり、7時までが撮影時間になります。

前日の撮影で、Hαフィルターをエタロン前に取り付け、エタロンの透過中心周波数のズレを解決しました。これは、フェニックス内部に入っていく太陽エネルギーをかなりカットしていることになるので、もうフェニックス内の温度変化はほぼないはずです。なので、ピントのズレがなくなるかどうかを確認するのが目的でした。

今回はG3M678Mで30秒ごとに30分間撮影します。1ショット撮影するのに13秒ほどかかるので、1ショット終了してからのインターバルを17秒と設定して、大体30秒ごとに撮影しています。

結論としては、結局ピントズレはまだ存在していて、シーイングがいいとピントの山がはっきり見えて、つきっきりで数枚ごとにピントを合わせる羽目になりました。

よく考えると、前日撮影した像でも、一番最初の像、もしくは10分おきくらいにピントを合わせ直した後の像が一番分解能が出て、それ以降は時間とともに悪くなっていました。

この日は随時ピントを追っていたので、30分の中でいいシーイングの時間帯を選ぶことがやっとできていて、その時間は撮影開始時ではなく、きちんと撮影の途中に訪れていました。

ベスト画像は以下になります。

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  • 撮影日時: 2026年7月24日6時58分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Celestron C8 (f2000mm、F10) + ACUTER OPTICS Phoenix (f400mm、F5)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ToupTek G3M678M
  • 撮影: SharpCap Gain 800 (= 8倍)、露光時間4ms、200/200 frames
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、Photoshop

作品としても兼ねているので、波長のズレがある部分をクロップしています。これだけを見るなら、かなり満足のいく画像で、20cmの大口径の効果が十分生かされているのかと思います。撮影時のピントの変化はありますが、それさえ頑張って追うことができれば、言い換えると、30分とか1時間の撮影の間中、つきっきりで数枚ごとにピントを合わせ続ければ、かなりの高解像度で太陽Hα像が撮影可能だということがわかりました。

当然、自己ベストです。


まとめ

ここまでの結果から、どうやらピントの時間変化は、C8側で発生していると考えるのが妥当という結論になってきました。これはなかなか大変です。C8の鏡筒内部は密閉されているので、あまり手を出せなくて、今のままでは改善の目処が立たないからです。

もしこれ以上次の手を考えるとしたら、C8を大幅改造して、筒の部分を無くし、何本かのフレームで主鏡とシュミット補正板、副鏡を固定する、オープン鏡筒の形をとることになりそうです。C8ではなく、手持ちの口径20cmのニュートンをオープン鏡筒にするのもいいかもしれません。実際、世界で市販されている20〜30cm級の大口径太陽撮影用望遠鏡ではオープン鏡筒を採用し、顕著な成果を出しています。

とりあえず、安定性はともかくとして、20cmでのある程度の分解能は得られたので、C8での太陽撮影は一旦ここまでとして、次の課題に移りたいと思います。次に何をやるかはまだ秘密です。アイデア段階なので、ちょっとやってうまくいきそうなら公開することにします。


TSA-120を使ってのフェニックスの大口径化の最後の記事で少しだけ見せたのですが、次に更なる大口径、20cmのC8を使うことを考えています。


PhoenixとC8の接続

PhoenixとC8の接続は、TSA-120の時と同様に、アルミフレームを使っています。そもそも、C8で高さが変わることも見込んで、最初からアルミフレームを採用していたというわけです。

IMG_3173

このフレームを縦に2段にすることで、フェニックスの位置を高くすることができ、長穴の空いた板で接続することで高さを調整することができます。


コリメートレンズ

コリメートレンズはTSA-120の時と同様に、PSTの焦点距離-200mmのメニスカスレンズを使いました。TSA-120の時は、コリメートレンズ位置で光束径が27mmと、実測レンズ径の23mmを超えていましたが、C8は焦点距離2000mmのF10鏡筒なので、焦点から200mm対物側に置いてやれば、光束径は20mmになり、レンズ径内に収まるはずです。

C8は主鏡を移動することでピントを合わせる構造となっています。その調整範囲はかなり広く、焦点距離は1800mm程度から2300mm程度まで調整できるそうです。これはフェニックスを置く位置の範囲を、広く取れることを意味します。逆にいうと、この調整範囲の広さから最初は簡単にピントが出るでしょうが、最適化は自由度が大きく大変だということになりそうです。


減光

減光に関しては、PST+C8やTSA120+Phoenixでやった方法と同じで、エタロン前にUV/IRカットフィルターをつけています。

UV/IRカットフィルターは基本的に反射と透過が主で、熱はほとんど発生しません。熱は、反射でも透過でもないわずかのロスで発生するからです。

また、UV/IRカットと言いながらも、実際に太陽光をフィルター単独で反射光を見るとわかるのですが、意外に可視光も反射することがわかります。さらに、見る限り透過光より反射光の方が明るかったりします。そのため、不可視光も含めたパワー的には3分の1程度に抑えることができるはずです。

その後にさらに赤色のR2フィルターを入れています。以前C8の光をこのR2フィルターに直接入れたときは熱で割れてしまいましたが、UV/IRカットフィルターの後に入れた場合はほんのり温かくなるくらいで、全然余裕がありそうです。

エタロンも基本的には反射と透過なので、エタロン自体が熱を持つことはあまりなく、熱で壊れることはないということは、PSTで経験済みです。ただし、フェニックスのエタロンはPSTと違い中央遮蔽があり、そこでのロスが熱になる可能性があるので、十分注意しながらエタロンを壊さないように試す必要があります。今回UV/IRカットフィルターとエタロンの間にR2フィルターを入れたのは、中央遮蔽での熱膨張を心配してです。

副鏡のところではそこそこ集光しているので、鏡以外のところには全光量をあまり当てない方がいいでしょう。最初のアラインメントだけは、鏡筒の蓋を少しだけ開けて、大きくずれていないことを確認してから全部開けるようにしています。

また、焦点から大きく外れたところに平面の反射面を置くと、戻り光が変なところで集光する可能性があります。基本的には焦点から遠くない所に反射物を置きますが、やはり対物側を覗き込まないように気をつけるべきです。戻り光は集光さえしなければ、太陽光以下の光しか返ってこないので、基本的には問題ないはずです。

でも、そうは言っても太陽望遠鏡が危険なことには変わりないです。ここで書いていることが理解できない場合、もしくは危険を軽視して注意を払えないような場合は、太陽望遠鏡の改造などは絶対に試すべきではないです。もし試す場合も、口径が大きな鏡筒での太陽観察は、失明や火事など、本当に深刻な危険が伴うことを十分肝に銘じて、安全に十分な注意を払いながら、自己責任の範囲で進めるようにしてください。この記事を読んで何か事故が起きたとしても、私は何の責任も取ることができません。


太陽光を入れてみる

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C8とPhoenixの2台を繋いだ状態で、実際に太陽を導入してみます。やはり最初は怖いので、鏡筒前の蓋を少しずつずらしながら、熱くなるようなところがないか、手で触ったりして確かめながら進めます。接眼部では最初はカメラをつけずに、手をかざして明るい光が来ていないことを確認しながら、徐々に蓋をずらして開けていきます。

問題なさそうならカメラを取り付けて、早速SharpCapで見てみます。C8のピントノブを回していくと、やはり予想通り範囲内に簡単にピントが合うところがありました。

スクリーンショット 2026-05-25 165132


視野の問題

でも、ピントが合ったというだけで、これで成功かというと、見ている限り問題点が大ありです。
  1. まず、視野が狭いです。カメラはApollo-M MINIですが、像は円状の内部にのみ見え、周りは真っ暗に見えます。
  2. 合成焦点距離が、(2000mm / 200mm)*400mm =4,000 mm とかなり長いので、視野が狭くなってしまいます。

視野が狭いので、PST時代のASI290MMよりも多少センサー面積の大きいということで、Apollo-M MINIを使いました。でもこれだと丸く見える範囲しか使えず、特にピクセルサイズが大きく画素数が多くないので、全然有効活用できていません。

なぜ、視野が狭くなるのか?まず試しに、接眼部についているERFとBFを外してみました。エタロンのいわゆる櫛形の透過光を見ている状態になります。
スクリーンショット 2026-05-25 165455

連続光に近い状態になるのですが、少なくとも周りをカットするようなものはなくなってるようです。BFとERFが何か悪さをしているようなのですが、必ずしもBF、ERFが単体で問題ということは言い切れません。エタロン単体も問題ないと結論付けそうになりますが、これもやはり言いすぎです。エタロンとBFとERFがそろって、Hαのナローになって初めて出てくるような複合要因の問題はまだ残されているかもしれないということです。ここで言えることはせいぜい、「C8とPhoenixの組み合わせで、連続光で見ている限りは変な視野の制限はなさそう」ということくらいでしょうか。

ここでは視野を制限する理由として、2つの原因の可能性を考えてみます。
  1. エタロンに対する入射角がつくこと
  2. センサー前のBF径が小さく、絞りのような状態になっていること
とりあえず思いつくのはこれくらいなのですが、どちらも定性的に考えるだけでは意味がないので、もう少し定量的に実際に見えているものと比較してみることにします。

1と2をそれぞれ個別に議論してみます。


エタロンの入射角

まず、エタロンへの入射角で視野がどれくらい制限されるかの見積りです。コリメートレンズで平行光を作っているはずなので、平行光がエタロンへ入っていくはずで、なぜエタロンに対して入射角がつくか、不思議に思わないでしょうか?ここはきちんと理解しておく必要があるので、今回説明することにします。

最初に、コリメートレンズ中心の光は入射角0度でエタロンに入っていきます。でも、太陽は面積を持っているので、視野の中心位置からズレたところでは「局所的な光束はたとえ平行光」だとしても、「その光束全体が角度を持って」エタロンに入射している状態になります。

まだちょっとわかりにくいかもしれないので、次のように考えてみましょう。(C8とかの接続を考えずに)フェニックス単体でHαで、太陽を中心に導入して、カメラで見ることにします。この場合、鏡筒の対物レンズ前にエタロンがついていることになります。太陽から平行光が入ってきていて、対物レンズ全体でその光をとらえます。センサーの中心に集光する光は太陽中心を見ている光なので、平行光で入射角も0度でエタロンに入った光を見ることになります。その一方、センサーの中心からy[mm]離れた端の位置に集光する光は、面積のある太陽の中心からずれた端の方を見ることになります。その光は、局所的な光束で考えると平行光ですが、エタロンに対しては

y = f tanθ

で表されるような入射角θを持って、エタロンに入射していることになります。ここで、yはセンサー上での中心からの距離、fは対物レンズの焦点距離で、フェニックスの場合400mmになります。

ポイントは、太陽は面積を持ってるということです。それが面積を持っているセンサーの上で像を結んでいるので、(光束としては)平行光ですがエタロンの時点で入射角を持った光を見ているということになります。間違えやすいのは、対物レンズで集光する際の角度とは違うということです。対物レンズ上ではセンサー上よりもっと大きなビーム径になっているので、その集光する角度はもっと大きな角度になります。この角度と、エタロンへの入射角は別物です。

もっとわかりやすい話として、視野角を考えてみましょう。太陽の視野角は0.5度程度です。視野角0.5度の円状の面積が、センサー上に円状の像を結びます。この視野角と、エタロンへの入射角は同じものになります。なので、太陽の縁の所は、センサー上で中心から400[mm] x tan(0.5/2度) = 1.75[mm]の位置に像を結び、その際の光の「エタロンへの」入射角は0.25度ということになります。

センサー位置から逆にエタロンへの入射角を考えて見ます。例えば、Apollo-M MINIのセンサーサイズ横幅8.75mm、縦幅6.6mmの場合、横端では

8.75mm/2 = 400mm  x tanθ

でエタロンへの入射角θ = 0.627度の光が集光している

縦端では
6.6mm/2 = 400mm  x tanθ

でエタロンへの入射角θ = 0.473度の光が集光している

ことになります。

ここできちんと意識しておかなければならないことは、フェニックスのようにエタロンが対物レンズの前に置かれている場合は、この入射角は「対物レンズの焦点距離」と、「センサー上の像の位置」のみで決まってしまうということです。波長にも、口径にも依存しないということはきちんと理解しておくべきでしょう。これは太陽のような平行光を見ている限り、もしくはフェニックスの手前にTSA-120やC8を接続してもコリメートレンズで平行光にしている限り、一般的に成り立つ話です。なので、フェニックス前をどういじろうが、平行光条件を満たす場合は、エタロンへの入射角に対してはフェニックスという決まった対物レンズを使っているので、もうどうにかするような自由度は残されていないということです。これは結構痛いですね。


入射角による波長のずれ

次に、入射角と波長のズレの関係を考えます。エタロンに入っていく光に入射角がある場合の波長のズレは、アマチュア天文の範囲では例えばAstrosurfのこのページで検討されています。中心波長λ0の光が、エタロンへ入射角θを持って入射した場合に、波長のズレΔλは

Δλ = λ0 (θ^2) / 2

というような式になります。でもこの式、きちんとした証明が同サイト内のどこにも書いてないんですよね。根拠がわからない式を使うのは気が引けるので、今回きちんと証明しておこうと思います。

エタロンについては、関係式を太陽を始めた初期の頃にある程度説明しています、エタロンの間の距離dは半波長λ/2の整数倍mになるという条件が課せられるので

m λ/2 = d

となります。もし光がエタロンに対して角度θで入射した場合、dは入射光から見るとエタロン間のギャップの距離が1/cosθで長くなったように見えるので、

m λ/2 = d/cosθ

となるように思えますが、ここは注意が必要で、実際には

m λ/2 = d cosθ

となります。これは隣り合う2つの光の光路長差をきちんと考えると理由がわかります。エタロンの2枚の鏡の内側を反射する隣り合う2つの光が、「後ろ側の鏡を出た時を基準」に光が重なりあうと考えると、一つ目の光のスタート地点は手前側の鏡に入射した地点がスタートではなく、入射角のために遅れた場所がスタート地点となるからです。これはわりと有名な話で、わかりやすい解説などもあるので、ここでの証明は省きますが、興味がある人は調べてみてください。1より小さいcosθが「掛かって」いるので、エタロンへの入射角がある場合には、共振する波長は全て短くなる側にシフトします。

この場合、入射角θを持ってエタロンに入射する波長λ(θ)は、入射角θが0度の時の波長λ0に対して

λ(θ) = λ0 cosθ

と書けることがわかります。θが十分小さいとして、cosθをテイラー展開してやると

λ(θ) = λ0 (1 - (θ^2) / 2)

と書けるので、元の中心波長λ0からの差Δλは、入射角θの関数として

Δλ = λ(θ) - λ0 = -λ0 (θ^2) / 2

と書くことができます。これを元に計算してやります。


先に議論したように、センサー端部に集光する光の入射角はわかっているので、λ0=6562.8Åとして、
  • 横端の像の入射角θ = 0.627度の場合、波長のズレΔλは-0.39Å
  • 縦端の像の入射角θ = 0.473度の場合、波長のズレΔλは-0.22Å
と計算できます。


実画像との比較

この計算値が実際撮影した画像とどれくらい合っているのか見てみましょう。フェニックスのエタロンのFWHMは以前の測定結果を用いて0.37Åとします。これは全幅なので、中心から0.185Åずれると、透過光量が半分になるということです。

上の式から、波長のズレが0.185Åの場合には、入射角は0.43度となり、その場合中心から半径3.0mmの円のところで、光量が半分になるということがわかります。センサーサイズが8.75 x6.6mmなので、縦はほぼ上下の端で光量は半分以下くらいになります。ピクセルサイズは4.5μm/pixelなので、半径667ピクセル、直径で1334ピクセルが光量が半分になるところです。

実際の画像で光量が半分になるところをPhotoshop上で円を描いて測ってみると、直径で約1600ピクセルだったので、少し計算とズレていて、もう少し大きな範囲で見えているようです。さらに、次で議論するBFの絞りでも周りの光量が減るはずなので、実際の有効範囲はもう少し広いと思われます。
スクリーンショット 2026-06-21 202048

ズレの原因は、
  • フェニックスエタロンのFWHMの測定値が良く出すぎていて、実際のFWHMは2割ほど大きい
  • 本来コリメートレンズの位置が平行光を出す位置よりも、C8の対物レンズ側に寄ってしまっていて、広がりのある光束となり、エタロンへの入射角が小さくなることで、波長のズレが小さくなる
などの可能性があります。

BFによる絞り効果

センサーで見える範囲が限られてしまう一つの可能性は、上で説明したようなエタロンでの波長シフトによる透過光量の低下ですが、もう一つの可能性は、接眼部についているBF(Blocking Filter)の径でカメラ上の光束が制限される場合です。絞りの効果と同じですね。

フェニックスのBFの直径は8mm程度です。BFがカメラのセンサー面と同じ位置にあると、カメラセンサー上では直径8mm以上のところには光が来ません。

実際にはBFはセンサー面から手前の離れた位置に置かれ、そこではさらに大きな光束になっています。この場合、BFによって直径8mmにカットされた光束がセンサー上でどのような像を結ぶのか考えてみます。

まず、光の集光具合はF値で表すことができます。フェニックスは太陽モードの時、F10鏡筒で、対物レンズで口径40mmの光が、焦点距離の分400mm進むと径が0になります。傾きは40/400 = 1/10 = 1/Fとなり、F値のみで集光の傾きが決まりますね。

ただし今回は、口径200mm、焦点距離2000mmのC8と、焦点距離-200mmのコリメートレンズがC8の焦点位置から200mm手前に置かれているために、フェニックス手前で直径20mm (= 200 x 200/2000) の光束径になっています。そのため、口径20mmで焦点距離400mmで決まるF値が実効的なF値と考えるべきです。今回の場合400/20=20で、F20として考えるべきでしょう。

センサー面からs離れた位置にBFのような絞り径を入れると、絞りの端の一点の光がセンサー面でどれくらいの広がりを持った像になるかというと

s/F

になります。今回、直径8mmのBFが、チルターも込みでセンサー面から結構離れた位置に置かれていて、その距離が50mmだとすると、最大で8mm + 50/20 = 10.5mm、最小で8mm- 50/20 = 5.5mmのボケた円像になると考えることができます。

でも、上の考えはまだ不十分で、BF位置の絞りの端の光がセンサー上でどうなるかを見ただけで、より正確にはセンサー上のある位置y に結像する光束の中心が、穴の面ではどこを通るかを考えるべきです。

まず、センサー面から50mm手前にBFがあるので、焦点に向かう光束はBF位置でまだ少し広がっていて、センサー面で中心の1点に結像する光束のBF位置での直径は、

20mm × (50/400) = 2.5 [mm]

となります。

一方、センサー上の位置yに対応する光束中心は、50mm離れた絞り面では0.875yの位置にあります。これは

(400−50)/400 = 0.875

からわかりますね。

センサー上の中心からyの位置に集光する光は、BF位置で0.875yにあり、最大で半径 2.5/2 = 1.25 [mm]の範囲の光が影響し、それがBFの半径 8/2 = 4 [mm]以内であれば、完全に光が通る条件となり

0.875y + 1.25  < 4 [mm]

最小で半径1.25 [mm] の範囲の光が影響し、それがBFの半径 8/2 = 4 [mm]以内であれば少しでも光が届く限界の条件となるので、

0.875y - 1.25  < 4 [mm]

となります。これらを満たすyは

3.14 < y < 6.0 [mm]

となり、中心から半径 約3.14 mm以内では完全に光が届き、半径3.14 mmから6.0 mmでは周辺に向かって徐々にケラれ、 半径6.0 mmより外側では光が届かないということになります。

Apollo-M MINIのセンサーサイズが8.75 x6.6mmなので、BFによる周辺減光は存在するが、光が届かないわけではなく、フラット補正をすれば何とかなりそうです。

別で撮影した、中心がずれてしまっている画像があります。Photoshop上で光が届かない所に円を描いてみます。
スクリーンショット 2026-06-21 210401

中心と思われる点から、完全に光が届かなくなるまでの距離が、SharpCapをキャプチャした画面上で2350/2 = 1175ピクセルくらい、横幅を本来のApollo-M MINIの1944ピクセルで換算すると1337ピクセルで、センサー上の距離にして6.01mmなので、上記の見積もりでかなり合っているように思われます。

このBFの絞りの効果も、フェニックスという縛りがある限り大幅に改善することは出来ず、BFとセンサー面との距離で多少いじることができるくらいです。
  • BFとセンサーを近づければ近づけるほど有効径は小さくなってしまうが、はっきりとした (均一に明るい) 像になる
  • BFとセンサーを遠ざければ遠ざけるほど大きな径で太陽像の情報を得ることができるが、周辺に行くにしたがって徐々に暗くなるような像になる
ということです。

このことは、以前PSTとC8でカメラ位置をより遠くにした場合に見える範囲が広がったことを少なくとも定性的にうまく説明できます。


まとめ

今回、C8+Phoenixで見える範囲が制限される理由として
  1. エタロンの入射角
  2. BFでの絞り効果
の2つを考えました。今のセットアップでは、実画像の上では入射角の方が影響が大きそうです。

入射角はフェニックスの対物レンズの焦点距離で決まってしまい、エタロンに入る光が平行光という条件を満たす限り、その手前がC8だろうがTSA-120だろうが違いはありません。BFによる絞りも同じで、C8だろうがTSA-120だろうが違いはありません。要するに「フェニックスを分解せずに使う」という縛りを設ける限り、大口径化のために接続する鏡筒に何を選んでも、これ以上あまり大きな改善をすることはできないということです。

実際、今回C8で撮影した画像を見ても、以前TSA-120で撮影した画像を見ても、上の二つの理由でうまく像が周辺で悪くなっていく様子を説明できます。ただ、C8の方がTSA-120よりも一見視野が狭いように見えている (急激に周りが落ち込む) のですが、なぜなのかはちょっと不明です。

これらを解決できるのか、解決していくべきなのかが、今後の課題でしょう。解決のためのアイデアはすでにいくつかあるのですが、その前に、少しこの状態でいくつか試したいことがあるので、まずは一旦、この状態で撮影してみたいと思います。


ここまでで、TSA-120 + Phoenixである程度の形になってきたので、一度きちんと撮影してみようと思います。


撮影のための撮影をしてみる

記事の(その6)で、TSA-120 + Phoenixでのある程度の撮影結果をタイムラプス動画や静止画で示しましたが、これらはあくまで大口径化のテストをしている最中に撮影したものです。毎回何か設定を変えてから撮影しているので、朝イチでは撮影できず、正午近くや、午後になることもあり、シーイングの悪化など撮影条件的にはあまり良くはありませんでした。今回は朝早くからいいシーイングを狙って、撮影を目的として撮影をしてみようと思います。

2026年5月25日、平日ですがこの日は休暇で朝6時くらいから起きて準備していました。でも朝イチは曇りで、結局晴れてきたのは8時過ぎです。それでもこの日のシーイングは素晴らしく、朝からの1本目だけでなく、結局2時間くらい撮影を続けて昼近くまでなってしまった2本目も、まだ十分に悪くないシーイングでした。


一本目

一本目の撮影は常時シーイングが良くて、ボケた画像の数がかなり少なかったです。このレベルのシーイングになると、かなり口径リミットに近いと思われるので、多くの画像ではシーイングにあまり左右されずに分解能は口径で頭打ちになっています。それでも一番良さそうなものをとりあえず1枚選びました。まずは静止画として画像処理します。

黒点AR4446、4444、4447を含む、見栄えのいいところを選んで、モノクロ、反転、カラー、反転カラーとしてみます。カメラの回転角を合わせるのをわすれてしまっていて、方角が少しずれてしまい、右斜め上くらいが北側になってしまっています。

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  • 撮影日時: 2026年5月25日8時46分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120 (f900mm、F7.5) + ACUTER OPTICS Phoenix (f400mm、F5)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: PlayerOne Apollo-M MINI
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (= 20dB)、露光時間5ms、200/200 frames
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、PixInsight SolarTools、Photoshop

分解能に関しては、少なくとも真ん中らへんは十分満足しています。ただし、周辺部は少し落ちるので多少クロップしています。プロミネンスがあると縁の曲率からどれくらいのエリアを見ているかわかるために、結構ぼけていますが今回はあえて残しました。

更に動画です。8時56分から9時59分まで、約30秒おきの113枚を7.5秒のタイムラプス動画にしています。この動画がすごいのは、シーイングが平均的にかなり良かったので、これまでのような途中の霞んで見えるような画像がほとんどないことです。朝から撮影した甲斐があったというものです。


YouTubeは画質が悪くなることがあるので、その場合は下のAstroBinを見ていただければと思います。


面白いのは、ほとんど動いていない所と、パタパタと激しく動いているところが、かなりはっきり分かれていることです。この動いているところと動いていないところは、何が違うのでしょうか?背景にある物理がとても面白そうです。パタパタは、30秒間隔の撮影だとまだ粗すぎるのかもしれません。トータル10分くらいで、もっと短時間でもいいので、短い時間間隔で撮ってみると何かまた見えるのかもしれません。


二本目

二本目は1本目よりは多少シーイングは落ちるものの、それでも悪くはないです。同様にベスト画像を選びます。
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  • 撮影日時: 2026年5月25日11時31分
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (= 20dB)、露光時間2.5ms、200/200 frames

タイムラプス動画が結構面白いです。10時3分から11時33分まで、約30秒おきの159枚を10秒のタイムラプス動画にしています。2本目にどこを写すか迷っていた時に、たまたま伸びているジェットのようなものが見えたので、急いで撮影を始めました。ジェットがこれから伸びていくか、もうジェットの終わりで縮んでいくのかわからなかったのですが、少し経ってから見たら縮んでいたので、「あー、ダメだったか」と思い、一旦やめようかと思ったのですが、面倒なのでこのまま放っておいて朝昼ごはんを食べに行ってしまいました。その後帰宅して改めて処理してみると、どうやら縮んでいただけではなくて、かなり面白い動きをしていました。見てもらった方が早いでしょう。




どうでしょうか?右下のジェットらしきものが何度も出たり引っ込んだりで、激しく動いているのがわかります。


今更ながらIrfanViewについて

そうそう、AutoStakkertから出力された大量の枚数のTIFFファイルは、画像の大きさがバラバラで、例えばPixInsightのBlinkで全部を一度に読み取ることができなかったりします。これまでIrfanViewを使って大きさが同じになるように一括でクロップしていたのですが、今更ながらにIrfanViewはTIFFであっても8bitでしか出力できないことに気づきました。

太陽画像は処理のかなり最初の方の段階からある程度炙り出された状態なので、実際の弊害はそこまでないのですが、暗いプロミネンス部分を炙り出す時は8bitだと流石に影響が大きいでしょう。FIJIを使う方法もありますが、あまりに大袈裟なので、結局自分でpythonで組んだものを使うことにしました。モノクロでもカラーでも、16bitでも8bitでも、入力画像と同じフォーマットで、最小の大きさの画像に全てサイズを合わせて出力するようにしています。IrfanViewと同じように、クロップする起点を左上、右上、左下、右下、中央から選べるようにしています。GUI化してWindowsの実行ファイルにしているので、扱いはシンプルで使いやすくてかなり便利です。元々はpythonですが、軽くて、IrfanViewより速かったりします。


まとめ

とりあえず今回で、フェニックスの大口径化のTSA-120版は完了とします。まだ周辺の分解能の課題が残っていますが、これは視野の広いカメラでは、今の手持ちの機材だとどうしようもない気がしてきました。でもまあ、口径リミット近くまで出たと思うと、自分的にはかなり満足です。

次ですが、すでにこんなことをやっています。

IMG_3173

こちらはさらに前途多難です。


ここ数週間で撮影した画像を、いくつか鑑賞用に画像処理しておきます。


これまでの撮影

TSA-120 + Phoenixが稼働し始めてから何本かテストがてら撮影していますが、ここまでの記事はあくまでテスト比較で、画像処理もできるだけシンプルに、という方針で進めてきています。でもせっかく撮影したものなので、鑑賞目的で少しまとめておきます。

これまで、
  • 5月10日: 1. 黒点AR4432 (シーイング良)、2. 黒点AR4436 (シーイング良)
  • 5月16日: 3. 黒点AR4436 (シーイング最良)
  • 5月17日: 4. 黒点AR4436 (シーイング普通)、5. プロミネンス (シーイング駄目)
の5つ、それぞれ30秒に1ショット、各ショット200フレームで合計120ショット前後、合計約1時間ほど撮影しました。最後のプロミネンスはもうシーイングがボロボロだったのですが、それ以外の4つをタイムラプスにまとめてみました。大きなイベントとかではないのであまり見栄えはしませんが、TSA-120 + Phoenixでこれくらいの動画にはできるというところを示す意味合いが強いです。最後のプロミネンスは、ひどいシーイングの中で一番まともだったものを1枚ピックアップして、それを仕上げてみます。


タイムラプス映像

以下の動画ですが、とりあえずYouTubeに上げたものを貼っていますが、なかなか厳しいです。とりあえずYouTubeに飛んでもらって、解像度を上げてみてもらうのがまだマシかもしれません。

5月10日: AR4432
まずは、今回の連番記事 (その4) で見せた黒点画像のタイムラプスです。あまり動きはないですが、右の黒点あたりを見ていると激しく噴き上げているのがわかります。


5月10日: AR4436
同じ日の2ショット目で、東端に出始めた少し小さい黒点です。

プロミネンスが激しく動いています。黒点の上部にも小さなフレアのような吹き上げがあるのがわかります。

5月16日: AR4436
次は、(その5)で見せた5月16日のもので、上の動画のものが太陽の自転で真ん中過ぎまで進んできたものです。シーイングがかなり良かったので、多分これが一番見応えがあるのかと思います。

これはAstroBinにもアップロードしたので、そちらで見た方がいいかもしれません。


下のダークフィラメントが激しく動いています。他にもよく見るとたくさん動きがあって、この動画は1時間見ていても飽きませんでした。激しく動くところと、ピタッと止まっているところがあるのも面白いです。

この動画だと、以前ヘリオスター100Hαで撮ったような黒点周りの3分周期振動も見えていますね。黒点振動は、どうもシーイングがいい時が長く続かないとあまりはっきり見えないようです。ヘリオスターで撮影したときはたまたま晴れた日だったのですが、かなりラッキーだったのかもしれません。

面白いのは、この3分周期が他の場所も何か相関がありそうなことです。細かい模様もかなりの場所はあまり動かずピタッと止まっているのですが、一部モジャモジャ動いている場所があります。これが、シーイングなどのブレで動いて見えるのか、本当に太陽表面が動いているのか、もう少し精度が欲しいところですが、シーイングで一部だけずっと動き続けるというのはちょっと考えにくいので、やはり何か動いている可能性が高そうです。もしかしたら、今後面白い展開になるのかもしれません。

もう一つ面白いのが、ダークフィラメントを通して見る表面で、特に上の真ん中が顕著ですが、周りがボケボケになっているところです。最初エタロンの精度が一部出ていないのかとも思ったのですが、それにしては局所的すぎます。おそらくですが、ダークフィラメントは表面に吹き出しているので、太陽表面の大気相当のものに密度揺らぎみたいなのが起きていて、ユラユラして見えているのかと思います。

5月17日: AR4436 
タイムラプスの最後は、上の画像の次の日、5月17日(日)に撮影したもので、同じ黒点AR4436です。あまりシーイングが良くないので、途中結構ぼけてしまっています。

4つを見比べても、やはりシーイングがいい時間が長く続かないと、ハッキリしたタイムラプス動画にならないのがわかります。これは相当朝早くに撮るのが重要になりそうです。せっかくの休日で多少寝坊したいのもありますが、頑張って朝活しますか。もしかしたら、夏場は早くから日が昇るので、平日の仕事前の撮影でもいいのかもしれません。もし平日の朝の撮影も考えるとすると、方角が東と決まっているので、もうベランダに置きっぱなしで、撮影後はカバーをかけるだけでもいいかもしれません。


プロミネンス

次にプロミネンスも撮影したのですが、こちらは動画にすることは出来ないシーイングレベルだったので、120ショットのうち一枚だけたまたまよく撮れたものを静止画で画像処理しました。カラーにもしてみました。ちなみに、反転画像はダークフィラメントがプロミネンスに繋がっていく境界のところでうまくつながらなくて諦めました。もうちょっと処理方法を探る必要があるかもしれません。

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まとめ

テスト撮影続きでしたが、せっかく長時間撮影したものなのでタイムラプス映像にしてみました。でも難しいですね。シーイングが持続する時間を探す必要がありそうです。

TSA-120 + Phoenixの合成焦点距離は2000mmになっていて、これはすでにC8+PSTで撮影した時と同じです。TSA-120は口径ではC8に劣りますが、中央遮蔽のない屈折らしいクッキリとした見え味があり、実写上の分解能にはほとんど差がないように思えます。しかも、まだ視野の端にボケているところは存在しますが、すでにC8で見ていた視野内で比べると、以前はあった視野内での見え方の違いなどもなく、安定して全体が一様に見えるので、ある意味これまでの結果を超えたと言ってしまってもいいでしょう。PSTからフェニックスエタロンへ変更した甲斐があったというものです。

その一方、ヘリオスター100Hαで撮った画像を改めて見直すと、はるかに広視野で均一な画像を叩き出しています。焦点距離と視野と分解能をかなりバランスよく設定していることがわかります。

確かにフェニックスよりも値段ははるかに上ですが、これだけの苦労をしていてもまだ追いつけないところが多分にあることを考えると、もし懐に余裕があるのなら素直にヘリオスターに走った方がいいのかと思います。フェニックスに分があるとすれば、さらに大口径に行ける可能性を持っているということでしょうか。でもここからは更に茨の道になりそうです。集光力が高まり危険性も増えますし、フェニックスの400mm対物レンズだと合成焦点距離が長くなりすぎるでしょう。もう少し根本的にやり方を考える必要があるかもしれません。




フェニックスの大口径の記事のまとめです。

IMG_3120













フェニックス+TSA120の組み合わせは変えずに、確認の意味でいくつか検証できることをしてみました。今回の記事はその中の一つで、カメラのシャッターについてです。


ニュートンリングが出てしまう

大口径化記事の(その4) の先々週末の撮影では、下の画像のようにクロップ前は左下が切れていることから分かるように、TSA120の光軸に対してフェニックスの光軸、特に高さ方向の光軸がかなりずれていました。
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2026年5月16日土曜日の朝から、いろいろと改善をしました。

まず、フェニックスの方が高さ的に低い位置にあったので、フェニックスの下部に一枚板を挟んで、高さを揃えてやりました。

IMG_3141
アルミフレームとフェニックスの間に、一枚板を追加

実際には少し高くなりすぎたのですが、前回よりはかなりマシで、少なくとも画面で見て左右方向のずれはほぼ無くなりました。上の画面の上下のズレは、フェニックスの方向を左右 (水平) に変えることで、ある程度の調整はできます。

これらの調整をすることで、画面で見ても、左右も上下もほぼずれはなくすことができたので、一旦はこれで良しとしました。ところが、光軸が合ってくると今度はニュートンリングが目立つようになってくることに気づきました。
スクリーンショット 2026-05-16 090237

とりあえずの解決策として、Apollo-M MINIの前にチルターを挿入してやりカメラを傾けてやると、一旦はニュートンリングは消えました。

IMG_3146

スクリーンショット 2026-05-16 090453


残る問題は、周辺のリング状の分解能が出ていないところ(原因は収差か、波長ずれか特定できていません)をどうするかです。前回の撮影では、シーイングがいい時は中心部では一本の線が1ピクセルに迫りつつあり、アンダーサンプル気味になっている可能性があるので、解像度を増やすために、2倍のバローレンズを入れてみました。すると、ニュートンリングが再びかなり目立ってきます。F値が大きくなるほど、ニュートンリングが目立つようになるんですよね。

すでにカメラは傾けていて、これでもニュートンリングが出てしまうということで、一旦はバローレンズはあきらめ、Apollo-M MINIよりある程度画角が狭く、ピクセルサイズが2.9μmと小さくなるASI290MMに交換しました。ASI290MMは比較的ニュートンリングが目立つカメラということがこれまでの経験でわかっていて、実際には同じ角度のチルターが入っていても、(Apollo-M MINIでは消すことができていた) ニュートンリングが再び目立ちます。なかなかうまくいきません。


ローリングシャッターのG3M678M

改善策として、これまでの経験でニュートンリングが比較的出にくいとわかっているG3M678Mにしてみました。このカメラだと、ピクセルサイズが2.0μmと小さくなり、4.5μmのApollo-M MINI + 2倍バローより分解能はよくなるので、この場合バローは必要ないです。視野が大きくなりすぎるのは、ROIでいらないところをカットしてしまえばいいかと思い、2400x1500に制限してみました。バローを外したこの時点で、ニュートンリングは確認することができないくらいに見えなくなっていました。下の画像を見るとわかりますが、視野的には、分解能が出ている範囲をほぼ全面でカバーできているので、かなりいいでしょう。

これでいつものように30秒ごとに1ショット200フレームで、全部で120ショット、トータル1時間撮影してみました。1ファイルのサイズも1.4GB程度なので、まあ現実的な範囲です。もう昼にかかったので、そこまでシーイングがいいわけではありません。全120ファイルを画像処理してみると、シーイングの時間変動もよくわかり、その中で一番いいと思われるベスト画像を選びました。

11_34_10_lapl3_ap4452_IP_ST_ref


一番の関心は、グローバルシャッターの有無で写りが変わるかです。パッと見は上の画像もそんなに悪いようには見えません。でも、先週末にグローバルシャッターのApollo-M MINIで撮れたような、滑らかな刷毛で細かく描いたような線は残念ながら出ていません。

収差に関しては先週よりもう少しフェニックスをTSA-120側に近づけたので、おそらく改善の方向のはずです。先週と今週の違いが、グローバルシャッターの有無によるものなのか、シーイングがたまたま先週の方が良かったのか、画像の比較から単純にこれらを判断するのは相当大変です。

ローリングシャッターでピクセルサイズが小さいG3M678Mの方が分解能よく撮れるか、もしくはApollo-M MINIと同等ならば、ローリングシャッターの影響は大きくないか、少なくとも無視できると言えるはずです。でも今のところそうはなっていなくて、グローバルシャッターが有利だという仮説を否定することはできません。


グローバルシャッター再び

もう少し比較検証を増やします。次の日の5月17日の日曜、再びカメラをApollo-M MINIに戻して、更に2倍バローを入れて撮影してみました。

前日に出たニュートンリングの影響を少なくするために、チルターの角度を調節する押し引きネジをより長いものに変更して、更に角度をつけることでニュートンリングはほとんど見えなくすることができました。チルターの角度が大きすぎるために隙間がかなり広がっていて漏れ光があるので、パーマセルテープで遮光しています。

この状態で、これまでのように30秒ごとに200フレーム、合計120ショット撮影し、ベストのものを選びます。

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この画像も十分な写りで、そこまで不満はありません。でも同じグローバルシャッターでも、前週に撮ったみたいな、フワッとするような感じまでは出ていないと思います。


比較

土曜のG3M678Mで撮った画像と、日曜のApollo-M MINIで撮った画像を並べて比較してみるとどうでしょうか?
スクリーンショット 2026-05-19 201449_cut

左が土曜のG3M678M、右が日曜のApollo-M MINIです。大きな画角で見ているとほとんど分かりませんでしたが、拡大して見てみると、どうやらApollo-Mの方が良さそうです。

シーイングに関しては、土日の全ファイルを見ていると、土曜のG3M678Mの時の方が平均的には良かったです。その上で、ベスト同士の比較では日曜のApollo-Mの方がいいという結果なら、グローバルシャッターの効果が出ていると言っていいのかもしれません。

そうは言っても、思ったより顕著な差ではないとも思います。ピクセルサイズと視野角から考えるとG3M678Mの方が有利で、値段差を考えたらG3M678Mの方が圧倒的にコストパフォーマンスがいいです。

でも、今回の結果のように、シーイングの差をひっくり返す可能性がグローバルシャッターにあるのなら、Apollo-Mに舵を切らざるを得ません。


まとめ

今回の段階では、グローバルシャッターの方が良さそうという結果ですが、まだ結論を出し切るには至っていないと思います。原理的にはもちろんグローバルシャッターのほうが有利でしょう。でもそれは、撮影時のシャッター速度と、対象天体が画面上でどのくらいの速度で移動しているかに依存するはずです。いまの太陽撮影の状況でこのグローバルシャッターが活きているかというと、シーイングの時間ごとの変化量が今回比較したベスト2枚の差よりもはるかに大きく、今の比較方法で結論づけるほどの判断をするのはまだ難しそうです。

全く同一の鏡筒で、同時に2つのカメラで撮影し、シーイングが全く同じになる状態で比較するしかない気がします。ある程度拡大して比べる必要があるので、焦点距離と口径も必要で、太陽だと同じ機材を揃えるのは難しそうです。月の方がまだ比較しやすいかもしれません。

この件、いつかきちんと比較して結論づけたいです。


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