ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:G3M678M

前回の記事で、SHG700の開封と事前準備などについて書きました。


今回はSHG700本体を鏡筒に取り付けて、実際に撮影した様子を記事にしていこうと思います。

一番確実なのはMLastroのチュートリアルビデオを見ることでしょう。

このビデオの主に後半が今回の記事の範囲になります。ただ、英語なのと、私はあまり動画は好きではないので、自分のやったことも含めてまとめておこうと思います。


鏡筒

まず鏡筒ですが、今回は手持ちのタカハシのFC-76を選びました。このブログの昔の記事を読んだことがある方は覚えているかもしれませんが、名古屋にスターベースがまだある頃に、ジャンクで格安で購入した白濁レンズものです。

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鏡筒カバーが分厚い金属製で、まだ鋳造メーカーの名残が残る逸品です。惜しむらくは、レンズのコーティングがまだ未熟な時代のもので、時間と共に必ず白濁してしまうようです。これはのちのマルチコーティングになって解決されていますが、実際は多少の白濁なら望遠鏡をのぞいて見る限りは、全く気になりませんでした。眼視で月など非常に明るいものを見ると、もしかしたら気づくかもというくらいです。カメラで撮影している分には全く問題なかったので、まあ多分今回も大丈夫でしょう。

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鏡筒選びのポイントです。狭い範囲の分光撮影の場合は、ある意味単波長撮影のようなものなので、3枚玉とか4枚玉とかのそこまでハイスペックな光学系は必要ないこと。それともう一つ、こちらの方が重要ですが、接眼部がしっかりしていることです。さすが鋳造を自分のところでやっているだけあって、FC-76の接眼部はかなり強固で、今回のかなりモーメントの大きくなる長もの機器を付けるのにはもってこいです。

加えて、焦点距離が600mmと、SHG700の限界の700mmに近いので性能を十分発揮できるはずです。口径が8cm近くと、PSTやPhoenixなどの4cmよりは倍くらい大きいのも効いてくるはずです。


鏡筒への取り付けとピント出し

まず、鏡筒を赤道儀に取り付けます。この時点ではSHG700はまだ外しておいた方がいいでしょう。導入の際は下の写真のような太陽用のファインダーを使うと楽でしょう。
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撮影時には赤経(RA)か赤緯(DEC)のモーター(どちらのモーターにするかは結局スリットが取り付けられている向きで全てが決まるみたいです。今回の場合は結局赤経モーターになりました。)をスイープさせるので、モーターが一定速度で動く必要があります。そのため、ある程度精度のいい赤道儀がいいかと思われます。私は普段使っているCelestronのCGEM IIにしました。

SHG700を鏡筒に取り付ける前に、一度太陽を導入します。追尾を太陽モードにするのを忘れないで下さい。導入後、接眼部から太陽の明るい光が出ていることを、手などに光を当てて確かめてみてください。熱いので火傷しないようにパッと手をかざすくらいでしょうか。心配なら金属の板などをあてて確かめるといいでしょう。SHG700では、鏡筒接合部の手前についているスリット位置に鏡筒の焦点を合わせる必要があります。あらかじめその位置を確認しておいて、フォーカサの調整範囲内で焦点がスリット位置に持って来れるかどうか、試しておくといいでしょう。

MLastroのページによると、SHG700の前方についているスリットの器材は合成石英でできていて、熱膨張に強いため、口径102mmの鏡筒で集光させて使っていても問題なかったと書いてあります。あまり大きな口径の鏡筒を使うとスリットがダメージを受けることがあるので、注意が必要です。今回は口径76mmなので、スリットを壊すような問題はないでしょう。

いよいよ鏡筒にSHG700を取り付けます。SHG700の取り付け角度はとても重要です。赤道儀の赤緯体が回転する平面にできるだけ平行に取り付けます。あとで撮影して、どれくらいズレているか出て、その量を補正するのですが、とりあえずここの段階である程度正確に取り付けておくに越したことはないでしょう。

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同時にPCと繋いだカメラの画像をSharpCapで見ます。まだ太陽から視野からがずれていると、背景光が見えます。背景光は暗いですが、事前にフラウンフォーファー線を見たように、露光時間とゲインを上げてやれば見えるはずです。線は水平になっているか(左右の高さが揃っているか)?、ピントが合っているか、今一度確認するといいかもしれません。左右の高さが合っていなければカメラの回転角を調整します。ピントが合っていなければ、カメラレンズ側のマイクロメーターを調整します。

その後、鏡筒の向きを赤道儀で調整して、カメラ視野の中に太陽を入れると、かなり明るい、おそらく飽和した画面になるので、露光時間とゲインを下げます。私の場合は1msでゲインが最低の100(1倍、ZWOで0相当、0dB)で丁度いい明るさになりました。

事前準備の段階、もしくは背景光で、カメラ側のピントをSHG700内部のカメラレンズ位置をマイクロメーターで調整することで合わせてあるので、ここではもうカメラやマイクロメーターに触る必要はありません。また、初期状態ではSHG700内部の手前側のコリメーターレンズの位置は出荷時に調整してあるとのことなので、コリメーター側のマイクロレンズも最初は触らないほうがいいでしょう。また、回折格子の回転角は出荷時ではHαに合わせてくれているようです。最初は一番見やすいHαから試すのが無難なので、回折格子のマイクロメーターも触らないでおくことにします。

太陽が導入された状態で適当に露光時間をゲインを合わせると、横線のフラウンフォーファー線がたくさん見えてくるはずです。もし見えない場合は鏡筒のフォーカサーを調整します。繰り返しになりますが、この時点でカメラの位置やカメラ側レンズのマイクロメーターは触らないことです。ピントが合ってくると線がはっきりしてきますが、ここからはかなりの微調整が必要です。コツはチュートリアルビデオにもありますが、SharpCapのヒストグラムの真ん中の線を右側に持っていってコントラストを上げて、フォーカサーを微調整して見えてくる「縦のたくさん動く線」が最も濃くなるようにすることです。これは太陽表面の模様が見えているのですが、縦全体に見えるということは、Hα線のところだけでなく、模様が広い波長域に渡って広がっているということを意味します。ビデオでも言っていたように、粒状斑が見えていると思って良さそうです。

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最後に重要な確認です。画面上はROIで制限されて表示されていると思いますが、それを300%くらいに拡大表示して、画面を右と左にスクロールさせて、太陽の端の部分見て見ます。太陽と背景が以下の写真のように、十分シャープになっていることを確認してください。

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初期設定ではきちんとシャープに映るようになっているはずですが、万が一輸送などの振動で、特にコリメーターレンズの位置がズレたりすると、ここがシャープにならずにボケボケになります。その場合は、コリメーターレンズをいじる必要があります。少なくとも私の場合はいじらなくて大丈夫なレベルでしたが、いずれ波長域をHαから変えた時にはいじる必要が出てきます。詳しい調整方法はその時に説明します。


SharpCapの設定

ここまでで、ハード的な準備はほぼ整いました。必要ならばSharpCapと赤道儀を接続しておきましょう。撮影時モーターでスイープさせる時に、ハンドコントローラーで操作してもいいのですが、いずれ自動でスイープできるようにするので、PCから操作できたほうがいでしょう。

SharpCapの設定を見直します。
スクリーンショット 2025-06-17 100657_cut
  • 重要なのはROIです。横幅はカメラの最大幅で、G3M678Mの場合は3840ピクセル、縦幅は200ピクセル程度でいいでしょうか。私の場合、ファイル量節約のため最終的には縦幅100ピクセルまでしましたが、慣れないうちは200ピクセルくらいあったほうがいいでしょう。
  • Hα線が真ん中に入っていることを確認します。上下にずれている場合は、ROI設定画面の「ティルト」を調整して、Hαの上に凸の曲線の全てが画面の中に入るようにします。使うのはHα線の周りのせいぜい数ピクセルなので、基本的に暗い線の中心が全部画面内に入っていれば大丈夫でしょう
  • 露光時間が1ms程度十分速いこと、ゲインが高すぎないこと。
  • モーターの速度を4倍とか8倍適した速度する。速過ぎると中心線を分離よく撮影することができません。遅過ぎるとファイルサイズが大きくなります。
  • 階調がRAW16になっているか、フォーマットがserになっているか確認。
  • FPSが100以上十分速いこと、ドロップが原則0であることを、画面下部に出ている数値で確認します。私の場合、上記ROIだと220fpsくらい出ます。必要ならUSB転送速度を最速や、高速モードオン、フレームレートを最大など、fspを制限しないように設定します。
  • 最後に、一度テストでモータを回して太陽をスキャンして、一番明るいところでも飽和しないか確認。
などでしょうか。ちなみに緑字のところは、使っている機材のパラメータなどから必要な値を正確に計算することができます。でもややこしくなるので、詳しくは後日別記事で解説します。


いよいよ撮影

準備ができたら、いよいよ撮影開始です。一旦太陽の端を越えるところまでWかEの赤経のモーターで持っていきます。フレーム数や時間が無制限で、ストップするまで録画される設定になっていることを確認してから録画開始ボタンを押し、モーターをさっき進めたのと反対側に回します。太陽がもう一方の端までスキャンできたら録画を停止します。これで終わりです。

一応撮影された.serファイルを、SerPlayerなどで確かめるといいでしょう。きちんと太陽の端から端まで撮影できていますでしょうか?


太陽像を再構築

撮影したファイルから太陽の全景像を再構築するためには、何らかの変換ソフトを使った方が楽でしょう。ここではMLastroでオススメされていた「JSol'Ex」を使いたいと思います。かなり高機能なソフトで、この解説だけで一記事使ってしまうほどなので、詳しいことは後日別途記事にしようかと思います。

ここではメニューの「File」->「Open SER file」から撮影したserファイルを開いて、出てきた画面の下の真ん中の「Quick mode」ボタンを押してください。しばらく待つと、serファイルがあったところの下にフォルダができていて、そこを探っていくと「processed」というフォルダの中に太陽全景の画像が2枚入っていると思います。1枚はストレッチなし、もう1枚はオーとストレッチしたものです。

今回、ホントのホントに最初の撮影でできた画像が以下になります。ストレッチしていない方なので、撮って出しと言ってしまっていいでしょう。右に見える筋は雲でしょうか。また、細かいところ、特にプロミネンス周りを見ると、分光撮影特有のギザギザが見えます。
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それにしても、初っぱなからかなりの解像度で撮影されています。

実際に雲などなく、うまく撮れたのは3ショット目で、オーとストレッチしたものですが、以下になります。
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とりあえずここまで出たなら、十分満足でしょう。細かいギザギザを取るためには、複数枚とってスタックするのがいいらしいのですが、それはまた次回以降に試すとします。

その前に、一つ重要なことを。チュートリアルビデオにも指摘があるのですが、JSol'Exでserファイルを解析するときに、何度傾いて撮影されたかが角度で表示されます。下の画面のログの中にある「Tilt angle:」というところです。

スクリーンショット 2025-06-20 201321


私は最初-3.88度でした。これは、赤道儀のモータを動かした時の動きに対して、SHG700が平行からどれだけずれて取り付けられているかを表しています。鏡筒のアイピース固定ネジなどを緩めて、SHG700本体をしてされた角度だけ、まあ目分量になりますが、ずらします。方向はわからないので、とりあえずどちらかにずらしてみてください。私は2回目はズレが-6度になりました。3回目は回転方向を変えて0.1度とかになりました。ズレが+/-1度以下がいいとのことです。その後必要なら、今一度鏡筒のフォーカサーでピントを合わせます。


まとめ

初めての分光撮影ですが、とりあえず太陽の再構築までうまくいったようです。分解能もかなりのもので、今後が期待できます。

やはり最初から組まれているSHG700を買って正解だったかもしれません。3Dプリンタを持っていないのですが、たとえ持っていたとしてもSol'Exを自分で印刷してから撮影するまでの敷居よりははるかに低いはずです。完成品でも普通の天体撮影と違いかなり苦労するので、自分で印刷して撮影までたどり着いた方たちには敬意を表します。

長くなったので、今回はここまでにしたいと思います。次は何について書きましょうか?実作業はかなり終えていて、分光撮影でやりたかったことの半分くらいはすでに済んでいます。その一方、記事書きの方が全く追いついていません。JSol'Exの使い方にするか?多数枚スタック撮影の方法にするか?、まあ書きあがった記事からアップしていくことにします。

明日の土曜日も晴れるとのことなので、もう少し凝った撮影に入っていきたいと思います。書くべき記事は更にたまっていきますが...。













久しぶりに新機材を手に入れました。太陽を見るためのものですが、鏡筒とかではなく接眼側にくっつける分光器です。かなり楽しそうなので、今回からしばらく太陽分光の記事が続くことになると思います。


太陽の分光

6月10日、自宅に帰ったら待ちに待った太陽分光撮影のためのMLastroSHG700が到着していました。


4月初頭に発注してから、約2ヶ月待ちました。値段は880USDで、日本円にすると税など合わせてほぼ14万円でした。オプションなど何も無しです。これを高いと見るか安いと見るかですが、ほぼPhoenixと同じ価格帯です。Phoenixは太陽望遠鏡の中ではエタロンの性能は抜群ですが、口径的には入門機の部類でかなり安価な方と言えるので、同価格帯のSHG700も決して高くはないのかもしれません。でもこれまで私が太陽関連でかけてきた金額(C8: 3万、PST1台目: 3万、PST2台目: 3万、ASI290MM: 4万、G3M678M: 3万)から見ると、単体で10万越えで、しかもこれまでのメイン太陽機材全部と同等の価格で、私的にはかなり高価な部類になります。実際Phoenixも欲しかったのですが、10万越えを一度に二つも買ったら大ゲンカで家庭崩壊が目に見えているので、散々迷って、今回はより多くのことができそうなSHG700にしました。
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機種名にもなっているSHGですが、これはspectroheliographから来ていて、現在ではおそらく一般用語と言っていいでしょう。spectroが分光、helioがラテン語で太陽なので、分光太陽写真とか太陽分光写真とか訳されているようです。Wikipediaによると

It was developed independently by George Ellery Hale and Henri-Alexandre Deslandres in the 1890s.

とあります。さらに日本語でもう少し詳しい文書がここにあり、これによるとアイデアとしては1868頃に考え出され、1890年頃に発展したということです。アイデアから150年以上経った現在、アマチュア天文家が市販品レベルで普通に、しかもはるかに精度良く試せるようになっているというわけです。素晴らしい時代ですね。


Sol'Exについて

アマチュア用の太陽分光で近年の大きな出来事といえば、Shelyak INSTRUMENTSのSol’Exでしょう。


3Dプリンタで各ユーザーが印刷することを前提に図面を提供し、光学部品をまとめて販売してくれています。

日本で話題になったのは2022年の夏くらいでしょうか?プロジェクトとしてはAstrosurfに2021年の資料があるのは確認できましたが、おそらくそれ以前から議論されていたのかと思います。見つけた中で一番古い関連ページはここで2020年12月でした。

Sol'Exについては、海外記事にはたくさん解説があります。わかりやすいのはやはりAstrosurfのページでしょうか。特にここのTheoryとかResoursesのところは読んでおいて損はないです。日本語だとKanzakiさんのページが詳しいです。星仲間だと木人さんが2022年から始められていて、確か福島の星まつりで講演されていたはずです。

いずれにせよ、アマチュア天文において、誰でも市販レベルで太陽分光撮影を試せるようにしたSol’Exが、大きな潮流を産んだことは間違いないでしょう。特にソフト関連は、Sol'Exコミュニティーで発達した「JSol'Ex」というものを今回のSHG700でも使うようです。

Sol'Ex自身も開発を続けていて、その後Sol'Ex Proというのが出ていたり(これは本体印刷済みのものを売っているということなのでしょうか?フランス語なのでわからなかったです)、スリットをGEN2として7μmのものを提供するなど、バージョンアップしているようです。


なぜSHG700?

少し時を戻します。CP+でPhoenixに触れて太陽熱が再開してから、海外も含めて太陽関連を調べていると、太陽全景のものすごい画像がいくつもアップされていました。

そこで何度か見たSHG700の名前。なんだろうと調べていくと、どうやらエタロンではなく分光で撮影しているらしいのです。分光撮影はSol'Exの印象が強かったので、空間的な分解能はそこまで出ないのではという印象がありました。SHG700で撮影したという画像は、分解能不足を払拭させてくれる印象で、かなりの高解像度の画像がユーザーレベルの報告みたいな形でいくつも出ています。しかも少し調べていくと、今までエタロンの制限で出来なくて悩んでいたことが相当解決できそうです。例えば、Hαの波長幅がエタロンよりも遥かに小さく、太陽の自転の左右の速度差から出るドップラーシフトとかも見えるそうです。Phoenixで自転のドップラーシフトが見えないか、以前計算したことがあるのですが、Phoenixの0.5Å以下という鋭い半値幅でもまだ一桁くらい足りないようで、全然諦めていました。

今回のSHG700ではMLastroのページによると、0.06-0.1Åが楽に出るそうです。(その後きちんと見積もると、手持ちの機材では0.18オングストローム程度になるようです。でもそれでも十分すごいです。)一般的な太陽望遠鏡についているエタロンから考えたら、相当いい波長分解能です。市販の太陽望遠鏡で、シングルエタロンとしてはかなり性能のいい部類の0.5ÅのPhoenixから見ても十分細かいです。しかもそれが決められた波長だけではなく、300nm後半から900nmを切るくらいまで広い範囲にわたって同じ分解能で見えるとのことです。CaK線などの特殊機材を持っていなければ見えなかった波長も当然見えるので、とても楽しみです。

その一方、空間分解能はそこまでいかなくて、アップされている画像を見ているとSHG700を口径8cmクラスで焦点距離600−700mmの鏡筒に取り付けて使ったとしても、Phoenixの口径4cm、焦点距離400mmと同じくらいか、少し勝てるくらいでしょうか。しかも、1枚の画像を出すのにかなり手間はかかりそうなので、達成できる空間分解のうが同じくらいだとすると、波長での有利さのSHG700をとるか、簡単さのPhoenixを取るかと言ったところでしょうか。SHG700はPhoenixと同様に、基本的には太陽全景を見るためのもののようで、いつもC8+PSTでやっているような、長焦点鏡筒を使って細部を見るという目的には適していないようです。

SHG700は、初代普及器とも言えるSol'Exよりはかなり精度が上がっていて、普及2世代目といっていいような仕様になっています。例えば、可動部の調整機構にマイクロメーターを3箇所取り付けています。その精度がどれくらい効くのかはこれから確かめていこうと思いますが、必要な所に必要な精度を持ってきたということなのかと思います。また、マイクロメーターは精度もそうですが、位置の再現性もあるので、バックラッシュなどもあるかと思いますが、再現性の高い撮影ができそうです。

もう一つの特徴はスリットでしょう。Sol'Exのスリットは元々幅10μm、長さ6mmから始まって、現在はGEN2と呼んでいる幅7 μmと10μmの2ポジション、長さ6mmが標準となっているようです。スリット幅は狭いほど空間分解能が増し、スリット長が長いほど長焦点の鏡筒を使うことができます。口径にもよりますが、基本的には長焦点の鏡筒の方が空間分解能が増します。SHG700では最初から幅7μm、長さ7mmが標準で、長さ10mmのものも検討されているようです。また、SHG700では合成石英タイプのスリットを利用しているために、熱膨張しにくく、より集光した光を当てても歪んだり壊れたりしないということです。このことは鏡筒の口径や焦点距離を大きくすることに一役勝っているようです。Sol'Exのスリットの素材も改良されてきているようですが、あくまで膨張係数の小さいガラスという表現にとどまっているようです。

一方、内蔵されている2つのコリメーターレンズとカメラレンズはSHG700のものは共に焦点距離72mmで、Sol'Ex標準のコリメーターレンズの125mm、カメラレンズの80mmと比べると、特にコリメーター側はかなり短いので、波長分解能的に多少不利になるようです。ただし、使用鏡筒の口径にも依存するので、一概にどちらが有利かは単純には言えず、鏡筒とカメラも含めた全体設計として各パラメータを考える必要があります。

最新のSol'Exで撮影した画像はかなり細かいものもアップされていて、個人的な感想としてはトータルではSHG700の方が少し勝るくらいの印象でしょうか。最高画質だけで比べたら、かなり拮抗していると思います。ただ、Sol'Exを使っている人に話を聞くと、やはり「難しい」と。何が難しいかというと、調整があまりうまくできないことと、頑張って調整してももなかなか解像しないところみたいです。それでだんだんやる気がなくなってしまうようです。SHG700でマイクロメーターを使う利点は、精度そのものよりも、むしろ調整の簡単さを狙ったものなのかもしれません。その結果として、高解像度の画像が安定してアップされているような印象です。


開封

今回の注文ではオプションなど何もつけなかったので、下の写真のようにパッケージは至ってシンプルです。これに検査成績書が1枚入っていただけです。

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  • 太陽だけに使うのではなく、星を分光するためのオプション部品もありましたが、今回は見送りました。でもこちらも楽しそうなので、欲しくなったら注文するかもしれません。
  • カメラを差し込むためのアイピース口へと変換するアダプターが、発注時のオプションでありますが、一緒に注文しておいてもいいかもしれません。私は手持ちがあったので、注文しませんでした。
  • 同様に鏡筒への取り付けとして、2インチアダプター口へ差し込むためのノーズアダプターがオプションであります。今回は1.25インチで接続するために手持ちのノーズアダプターを使いましたが、2インチの方が接続が強固になりそうなので、買っておいた方がいいかもしれません。その場合当然ですが、鏡筒の方が2インチアイピースに対応している必要があります。
  • 他にも、MLastroのオススメのカメラとしてG3M678Mがオプションにありますが、AliExpressで探すとそちらの方が安かったのと到着も早そうなので、今回は一緒に頼むのはやめました。

送られてきた時、箱の長手方向の角の一辺が少し凹んでいましたが、中身には何の問題もありませんでした。初期の頃はネジが緩んでいるというクレームがあったようですが、今は改善されているそうで、少なくとも到着した本体にそのような緩みはありませんでした。

製作はベトナムでしているらしくて、ハノイからの出荷となっていました。香港を経由して大阪で輸入手続き、その後富山の自宅までという経路だったようです。出荷の連絡はMLastroから直接メールでトラックナンバー付きでくるので、その時その時にどこにあるのかがわかります。楽しみで何度も見ていたら、途中アクセス制限されてしまいました(笑)。ハノイ出荷から自宅到着までちょうど一週間でした。
  • 重さはMLastroによると1.2kgとのことです。筐体はアルミニウム製。金属なので強度的には十分で、アルミなのでそこまで重くもなく、鏡筒に取り付けてもそこまで撓むことはなさそうです。
  • 外観で目立つのは3つのマイクロメーターでしょう。鏡筒側と、回折格子の回転はとりあえず触らなくていいそうなので、そのままにしておきます。後述しますが、カメラ側はピントを出すためにすぐに結構な量を触る必要がありました。

組み立て

基本的に本体は出来上がった状態で、しかも調整された状態で到着するので、組み立てといっても大したことはなにもないです。とりあえず必要なアダプターなどをいくつかつけていきます。
  1. 鏡筒側にはT2(M42-P0.75)の雌ネジが切ってあって、しっかりたとした金属の蓋がねじ込み式でついています。この蓋を回して外して、代わりにCMOSカメラに付属していたT2(M42)-1.25インチのノーズアダプターを取り付けます。重要部品のスリットが付いている側なので、埃などが入らないように、普段は別途キャップをしておきます。
  2. カメラ側にもT2の雄ネジが切ってあって、こちらも金属の蓋が付いています。蓋を回して外して、手持ちの1.25インチアダプターに変換するアダプターをつけます。このアダプターはたまたまアイピース側に別途T2の雄ネジが外周に切ってあったので、カメラを取り付けない時には、付属の金属蓋をそのまま取り付けることができます。
  3. 本体底面部にはアルカスイス互換のプレートを取り付けました。これは最初に鏡筒なしで調整するためにカメラ三脚に簡単に取り付けるためです。ただし、本体側のネジ穴がかなり浅くてこの手のアダプターについている、手で締められるタイプの1/4インチネジだと微妙に長くて奥まで入っていきませんでした。仕方ないので、ネジを一旦プレートから外して、間にM6のワッシャーをかましました。

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ピント合わせ

初期調整のために、本体をカメラ三脚に取り付け、太陽光を取り入れます。この時点ではまだ鏡筒をつなぐ必要はなく、しかも晴れていなくてもかまいません。実際、雨の日に部屋の中で、鏡筒取り付け口を窓の外に向けて試しました。

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カメラはわざわざこのために新調した、MLastroオススメののG3M678Mです。手持ちのカメラでも使えないか色々考えましたが、多分これが性能的にも値段的にも一番有利です。AliExpressで探すと、安いものが見つかります。SHG700発注と同じくらいの時に別途発注して先に到着していたので、これまでのブログ記事にもあるように、すでに太陽撮影で使ってきました。

このカメラを使う利点は、ピクセルサイズが2μmとかなり小さい方なので、高分解能で撮影できることです。分光撮影ではセンサーの長手方向を利用して使うことになりますが、スリット長の7mmに丁度長さの横手方向になっているはずです。

カメラを最初に取り付けて調整するときに、カメラのピントが意外に出にくい場合があるので注意です。わたしはアイピース口に変換するアダプターに、手持ちのものを使いましたが、おそらくMLastroが想定しているアダプターよりも若干長いものなのかと思います。そのため、カメラを一番奥まで突っ込んでも、初期マイクロメーター位置の5mmの所ではピントが全然出ませんでした。もっとカメラを押し込む方向でピントが合うようです。でもピントがずれていると、線も何も見えないので手がかりが全くありません。マイクロメータを触ればいいのですが、チュートリアルには「初期位置からあまり触るな」と言っているので、ちょっとビビってました。結局、マイクロメーターで10回転、約5mmくらい伸ばして、10mmくらいの位置でやっとピントが出ました。マイクロメーターで5mmは結構な量に感じるので、最初は勇気が必要でした。でもその後、別のチュートリアルビデオを見ていたら、マイクロメーターで10mmくらいの位置でピントが出るはずだとか言っています。最初からそれくらいの位置に合わせておいてくれたらと思いました。


ファーストライトとフラウンフォーファー線

さて、ここでファーストライトになりますでしょうか。

ピントが合うと、SharpCapの画面上にとうとうフラウンフォーファー線が見えてきます。今回は1秒露光でゲインが3200(=32倍、=ZWOの300に相当、=30dB)で、ヒストグラムでストレッチしたら十分見えました。
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いやー、これはすごい!
自分で撮って、ここまで綺麗に見えるとは。

ものすごい細かい線まで見えていますSHG700の標準のスリット長が7mmですが、画面を見る限りこれでG3M678Mの横幅をフル近くで使っているように見えます。これ以上長いスリットを見つけたとしても、カメラから変更しなければならないので、現時点で最もパフォーマンスが出る上手い組み合わせを考えてくれていると言えます。しかもカメラセンサーを大きくすると、ピクセルサイズが今の2μmよりも大きくなる可能性の方が高いので、その場合スリット長を伸ばす効果を相殺してしまいます。もし今後拡張する場合は、かなり考えて一気にやる必要がありそうです。

この撮影した画像ですが、そもそのどの波長なのか、どれくらいの範囲を写しているのか、どれくらいの分解脳があるのか、この時点では全くわかっていませんでした。SHG700本体の回折格子の回転調整のところを見てみると、初期位置でHαを指しているので、おそらくHα線が画面上下の真ん中近くにあるはずです。とすると、真ん中少し上の太い暗い線がHαなのでしょうか。
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少しだけ調べてみると、CNにあったSol'Exで撮影したHα周りの画像と比較することで、どれくらいの範囲が取れているのか判明しました。線の模様が同じようになっていて、主要な波長を数値で示してくれています。その結果、
  • 真ん中少し上にある太暗い線はやはりHαで656.28nm。
  • 上1/5くらいにある次に暗い線はFe IIで651.61nm。
  • 別途保存した画像から測定すると、この2つの輝線の間が506ピクセルだったので、分解能は実測で、0.923Å/pixel程度です。
  • 今回撮ったものは上から下までで18nmくらいの幅を見ているのかと思います。
どうやら一度に撮れる範囲が18nmと結構狭く、例えば可視光全波長をスキャンするのは30-40回くらいの撮影になり、ちょっと大変そうです。細かい調整も大変そうなので、回折格子の回転の微調整のためにマイクロメーターが付いているのは正解な気がしてきました。

露光時間を増やしてスタックしたら、ノイズに埋もれている淡い輝線ももう少し見えるはずです。次の日10秒露光で30フレームをスタックして、合計300秒で見てみました。

Stack_30frames_300s_WithDisplayStretch

拡大してみてもらえるとわかりますが、相当細かい線まで写っています。更にHα周りを拡大してみます。

Stack_30frames_300s_WithDisplayStretch_cut

このページの図と比較してみるとわかりますが、上の拡大写真の縦軸の範囲は、リンク先の左下の図で見えている範囲の3倍くらいに相当します。リンク先の図では、Hαより短い波長に2本、長い波長に1本落ち込みがありますが、上の画像ではそれらの線を含めてさらに淡い(細い)線も見えていることがわかります。


まとめ

とうとう太陽分光が指導しました。フラウンフォーファー線でももう大興奮です。今、やりたいことリストを作っていますが、かなり楽しそうです。

最近はもう真夏のような暑さなので、熱中症とかに気をつけながら撮影など進めていきたいと思います。













6月1日の記事で書いたエタロン改善ですが、最後に少し謎が残っていました。
  1. なぜエタロンとカメラの間の距離を長くすると、両像範囲が拡大するのか?
  2. なぜエタロンとカメラの間の距離を長くすると、画面が暗くなるのか?
  3. なぜエタロンとカメラの間の距離を長くすると、分解能が良くなったように見えるのは気のせいか?
などです。その後、少し検証しました。


暗くなる理由

6月5日、平日ですが朝早くから試したところで、2の原因の一部は理由がわかりました。前の記事で推測はしていたのですが、先に答えだけ言ってしまうと、接眼部についているBF(ブロッキングフィルター)と呼ばれている、直径5mmの径の小ささが原因でした。

試したことは、まずは前回のようにカメラをできるだけPSTのアイピース口に対して浅く取り付けて、エタロンとセンサー面の距離を長くとります。具体的な順序は

PST -> BF+アイピース取り付け口 -> アイピース口延長筒(手持ちのVixen製のもの) -> カメラ(G3M678M)

となります。ピントが出るように、C8の主鏡位置移動のつまみを回して合わせます。前回同様に距離が短い場合に比べて画面全体が暗くなるので、再現性はあります。
スクリーンショット 2025-06-05 073153_01_75mm_PST_BF_VIXENextender

次に、接続順序を以下のように変更します。

PST -> アイピース口延長筒(PSTに付属していたもの) -> BF+アイピース取り付け口 -> カメラ(G3M678M)

スクリーンショット 2025-06-05 07375702_75mm_PST_extender_BF_camera

ようするに、エタ論とカメラ間の全体の距離を保ちながら、Vixen製の延長筒を外しBFとカメラセンサー面の相対距離を縮めたわけです。全体長を保つために、BFの手前に別途延長筒を取り付けています。ピントは、C8の調整つまみを回すのではなく、カメラをアイピース口に出し入れすることで調整しています。カメラ位置を変えることでピントが出たなら、そこは全長が同じだった位置ということになります。

視野の大きさや、分解能に見た目の変化はほとんどないですが、明るさだけは倍程度になりました。(見かけの明るさはヒストグラムに応じてオートストレッチしているので同じようになりますが、ヒストグラムの山の位置は変わっているので実際の明るさは変化しています。) これはBFの小径が通る光を制限していたことになり、BFの位置がより焦点近くに移動したために、BFでの光束径が小さくなり、より多くの光が通ることになったのかと思われます。

この結果を踏まえて、BFとセンサー面の距離がある程度短い方が有利ということで、PSTとBFの間に、PST付属のアイピース口延長筒をもう一つ追加 (PSTが2台あるのでもう一台から奪ってきたもの) しました。それでもまだカメラ位置はエタロンから遠い方が良さそうなので、さらにBFとカメラの間にVixen製のアイピース口延長筒を入れたものをデフォルトの設定としました。


視野が広がる理由がまだわからない

1については考察のみしてみます。

8cm鏡筒でエタロン位置の最適化を探った時、エタロンを対物レンズから遠ざけるほど、カメラ位置はPST側に押し込まなければピントが出なかったという経験をしています。

対物レンズの焦点距離をf1、エタロン手前のレンズの焦点距離をf2として、その2枚で得られる合成焦点距離fは、レンズ間の距離をdとすると
1/f = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1 f2)

と書くことができます。エタロン内部で平行光を作る条件は、= ♾️なので、

0 = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1 f2)
で両辺にf1 f2をかけて、

0 = f2 + f1 - d
なので

d  = f1 + f2
となる長さで、エタロン内部に平行な光が提供されます。エタロン手前のレンズは凹レンズで焦点距離はf2 = -200 [mm]とわかっているので、例えばよく使っている8cm鏡筒で、対物レンズの焦点距離f= 400 [mm]の場合は、d = 200 [mm]となり、実際にその辺りの距離にエタロンをおいて運用してうまく動いているようなので、間違っていないでしょう。

ここで、エタロン位置を対物レンズから遠ざけるということは、dを大きくするということです。これは合成焦点距離が正の無限大でない数になります。言い換えると、平行光にはならずに、光を有限の距離で収束させる合成レンズになるということです。わかりにくい場合は、具体的に数値を入れてみるといいでしょう。最初の式に、f= 400と f = -200を入れてみると

1/f = 1/400 - 1/200 + d/(400 x 200)
となります。右辺最初の2項を合わせると負になるので、

1/f = -1/400  + d/(400 x 200)

となり、右辺の初項と2項目が等しいとバランスが取れて平行光になります。dは正の数で、増えると2項目が増えて、右辺は正になるので、結局合成焦点距離fも正になり、光を収束することになります。

エタロン後部に置かれた焦点距離 f= 200 [mm]のレンズで集光するのですが、エタロンをより後ろに動かすと、もともとあった平行光が、dが伸びたことでより集光された状態になるので、カメラまでの焦点距離がより短くなる方向になります。なので8cm鏡筒で試したように、現実にカメラをPST側により押し込んだときに焦点が合うというのは、正しいと言えそうです。

以上のことを踏まえて、C8で起こったことを考えます。
  1. 今回は、カメラの位置をPSTから遠ざけるほど視野が広がりました。カメラをPSTから遠ざけてピントを出したということは、上の考察から「エタロンはより対物レンズに近づいた」ということになります。そして、エタロン後部のレンズを出た光が焦点を結ぶ距離は、より後ろに下がったということになります。
  2. その一方、センサー上で見えている太陽表面のエリアは広がりましたが、これは拡大率が変わったわけではなくて、センサー内に映る円の大きさが大きくなったために、より多くの範囲が見えているというだけです。
これら2つのことがどうしても一見対立しているようで、なかなかいい説明ができません。エタロンが相対的に対物レンズ(この場合主鏡)に近づいたということは、レンズ径やエタロン径の制限がより効く方向なので、視野が狭くなると思えるのです。

ここ1週間くらいずっと考えていましたが、いまだに結論は出ていません。


黒点撮影

というわけでまだ謎は残りますが、とりあえずこれで撮影してみます。

まずは黒点AR4100、4101周りです。30秒おきに1ms露光で200フレームづつ、合計60枚で約30分間撮影しました。シーイングはあまりよくなく、その中で一番いいものを画像処理しました。画像処理は、ImPPG、PixInsightのSolarToolbox、Photohopなどです。いつものように、モノクロ、カラー化、さらに反転させたものです。それぞれ端の方を少しクロップしています。

08_56_22_lapl2_ap3397_IP_2_50_mono_cut

08_56_22_lapl2_ap3397_IP_2_50_color_cut

08_56_22_lapl2_ap3397_IP_2_50_color_inv_cut

その後、タイムラプス映像も作りましたが、高々30分であることと、シーイングが良くない時間が多かったので、結構ボケボケです。参考程度に載せておきます。フレアが最後に収まっていくのと、次のフレアが起こる始めくらいが見えています。



プロミネンス撮影

その後、プロミネンスを撮影し、タイムラプス化しました。前回記事の東端9時方向に出ていた大きなものです。カメラの回転角を変えて、長手方向に全体が入るようにしました。30秒おきに1ms露光で200フレームづつ、合計120枚で約1時間撮影しました。最後のffmpegのコマンドだけメモがわりに残しておきます。
  • ffmpeg -y -r 20 -i Blink%05d.png Blink_20.mp4
  • ffmpeg -i .\Blink_20.mp4 -vf "crop=3500:1900:175:125" Blink_20_cut.mp4
  • ffmpeg -i .\Blink_12_cut.mp4 -vf "scale=1920:-1" -vcodec libx264 -pix_fmt yuv420p -strict -2 -acodec aac .\Blink_12_cut_X.mp4


前回記事のものを再掲載しますが、やはり分解能の違いは明白で、全景からの切り出しでは細部を出すのは難しいことがわかります。


一度に全体と細部を撮る方法はないのか?口径が大きく、C8程度の焦点距離に、広い面積に渡り精度のいいエタロンを探して取り付け、ピクセルサイズの小さいフルサイズモノクロセンサーを使うとかでしょうか。まあ、技術的にも予算的にも全然無理な気がします。


カメラをASI290MMに戻すか?

ここまでの調整の甲斐もあり、G3M678Mで撮影範囲も広がり、かつ分解能も上がっています。その一方、今回の画像を見ても、まだ真ん中と端の方では差があり、これはHαの分解能なのか、収差などでピントがあっていないのかまだわかりませんが(エタロンがかなり無理をした位置に置いてあるので、後者の可能性も高いと思います。)、画角的には欲張りすぎな気がしています。

というわけで、カメラをASI290MMに戻すことを考えています。戻すことは結構利点があって
  • 大きな黒点が少なくなってきて、ある程度の狭角で撮らないと迫力が出ない。
  • G3M678Mだと、ワンショットあたりのファイルサイズが3-4GBで、すでに大きすです。ASI290MMだと800MB程度です。ちなみにこの6月5日に撮影したファイルの総量は600GB超えです...
  • G3M678Mのフレームレートが23fpsと結構遅いです。ASI290MMは60-70fpsくらい出ます。
  • 画素数もすでに多すぎる気がします。タイムラプス映像でYouTubeにアップするとしたら、横は1920ピクセルあれば十分です。G3M678Mはいわゆる4Kカメラで横幅3840ピクセルと倍もあり、今回もかなり削って、最後は横が1920ピクセルになるように縮小しています。
  • また、分解能に関してはシーイングの方が効きやすいので、2μmまでは必要ない気もしています。画像処理、特にImPPGでの細部出しの時に、1ピクセルレベルの細部が十分聞いていない気がしています。
  • G3M678Mを今後別目的(分光太陽撮影のための新機材のSGH700)で専用に使いたい、というかそもそもこのカメラを買ったのはSHG700のためです。
などの理由があります。

その一方、ASI290MMに戻すときの問題点がニュートンリングです。G3M678Mでは全く出なくなったニュートンリングですが、ASI290MMではカメラを傾けない限りはまた復活するでしょう。大きな違いはセンサー前の保護ガラスかと思っていて、一度ASI290MMの保護ガラスを外してニュートンリングが出なくなるかどうか見てみようと思います。


まとめ

結局視野が広がる謎は解けていませんし、さらにまだカメラ位置と画角と分解能の関係は印象だけで検証さえもできていませんが、実用的にはやれることは大体やったので、この時点でカメラをASI290MMに戻すことでほぼ問題ないでしょう。少なくとも以前よりは良い状態で撮影できるようになるはずです。

あとはエタロンそのものを探ることですが、これはさらに大変そうなのと、今の状態でも撮影結果にはそこそこ満足できそうなので、しばらく放っておきます。今後は撮影例を増やしていきたいと思います。

さて、いよいよ次回からは新機材、分光で太陽を撮影する「SHG700」の始動です。多分できることがものすごく増えるので、じっくり取り組もうかと思っています。







前回記事の「エタロン良像範囲改善 (その1)」の続きになります。今回は主に新カメラG3M678Mを使ってエタロンの良蔵範囲を調査してみました。




ニュートンリング

7. ニュートンリングをあらわに見てみる

前回の記事は5月4日までにやったことですが、その次の5月5日に、やり残してあったニュートンリングのテストをしました。新カメラG3M678Mが到着したのがちょうどこの日なのですが、このテストはまだASI290MMを使っています。

元々、チルトアダプターの角度をほぼ最大限まで傾けて使っていました。ニュートンリングを完全に消すためにはほぼ最大角度まで傾ける必要があったからです。下の写真を見てもらえばわかりますが、USBケーブルが見えている方向の裏側から出てることからわかるように、センサーの長手方向が傾くようにチルトアダプターに角度をつけています。

IMG_1336

太陽を実際に撮影した画像だと模様がグシャグシャしていてわかりにくいのですが、ピントをずらしてフラットフレームを撮影するとニュートンリングがどれくらい出ているかよくわかります。その状態で比較してみます。まずは傾ける角度を0度にしてニュートンリングが最も出る場合です。かなり目立ちます。
スクリーンショット 2025-05-05 132111

いくつか角度を変えて試したら、センサーの上側方向に角度をつけるとニュートンリングが小さくなりました。上側を傾けて、その角度は最大の半分くらいにした場合です。干渉縞の幅が大きくなって多少ましになっているのがわかります。角度0度だと目立ちすぎるのと、かといって最大角度ではピントずれの場所が出てしまいます。ピントずれが出るか出ないかくらいの、とりあえずこれくらいを基準とします。
スクリーンショット 2025-05-05 133748_tilt_upper_half

多少ましとはいってもこんなに目立つニュートンリングですが、実際の撮影時にはフラット化するとほぼ目立たなくなります。

まず、フラット化をしない画像ですが、撮影中でもすぐにわかるくらいです。特に黒点下など、横に走る縞が多数見えているのがわかります。
スクリーンショット 2025-05-05 133932_tilt_upper_half

次にフラット化した画像です。前回の記事で示したものとほぼ同じですが、ニュートンリングは全く見えないと言っていいでしょう。
11_57_18_lapl2_ap3954_out

ところが、このまま撮影を長時間続けていくと、フラット補正ががずれてくるのかと思いますが、ニュートンリングが見えてきてしまいます。真ん中上部に明らかに縞模様が見えるのがわかるかと思います。
13_08_17_lapl2_ap3929_out

フラット補正直後の撮影始めは大丈夫かもしれませんが、これだと長時間撮影するタイムラプス映像は厳しいかと思います。

ちょっと結論が出ないので、とりあえずこの問題はこのままにして、次は新カメラのテストに移りました。


カメラ位置のテスト

8. より広角なG3M678Mでカメラ位置を変えて良像範囲を探る

その後は天気が悪くてじっくりとした時間が取れなかったので、せいぜい8cmの全景のテストだけが進み、再びC8でテストができたのは5月18日になります。ここからは新カメラG3M678Mでのテストになります。
  • 大きな違いは、長辺、短辺ともにセンサーの大きさが1.5倍程度になるので、面積だと2倍くらいになり、より広い範囲を見ながら判断できます。
  • もう一つの重要な違いが、アイピース型なので、センサー面よりPSTの奥まで押し込むことができることと、さらにBFとの距離を縮めることができることです。これは光束の径が最も小さくなるところを、一番径の制限されるBFのより近くに持ってくることができる可能性高くなります。

カメラの差し込み位置を変えるということは、結局のところエタロンとセンサー面の間の距離を変えるということになります。その距離に合わせたピント位置を、C8の主鏡の位置で合わせるということなので、相対的には実質C8とエタロン間の距離を変えていることに他なりません。エタロンカメラ間の距離を保ったまま、C8エタロン間の距離を変えても結局C8主鏡でのピント合わせで補正してしまうので、実質ほとんど状況は変わらないということは、前回記事の「3. C8に対して、どれだけPST本体を押し込むか」で示しました。

ここからカメラ位置を変えた結果を、違いがわかる代表的なところをA-Eまでの5ヶ所で示していきます。

A. まずは、カメラを最も中に入れた位置です。ここを0mmとします。
スクリーンショット 2025-05-18 063445_01_0mm_min

B. カメラをPSTから約15mm引き抜いてねじで固定た場合です。周辺の黒いケラレが減っているのがわかります。
スクリーンショット 2025-05-18 063837_02_15mm_blueallout_noblackpart

C. カメラにフィルターを付けるための延長ノーズアダプターをカメラ側に取り付けて長くし、その分最初の位置から35mm引き出した状態です。明らかに良蔵範囲が広がっています。黒点と白いプラージュ間の距離を比べても、拡大しているだけではなくて、見える範囲が広がっていることがわかります。
スクリーンショット 2025-05-18 064615_04_35mm_oneringoutest

D. 別途手持ちのアイピース口の延長等をつけて、カメラを最初の位置から55mm引き出した場合です。良蔵範囲がほぼ全面に広がっています。また、ヒストグラムを見るとわかりますが、明らかに山の位置が左に行っていて、全体に暗くなっているのがわかります。
スクリーンショット 2025-05-18 065033_06_55mm_onering_extender_longest

E. カメラを最大引き出した70mmの状態です。ねじでカメラの伸ばしたアダプターの一部を固定しているだけなので、撮影をするには不安定ですが、テストのために確認してみました。55㎜よりも明らかに左右が改善されているのがわかります。ヒストグラムが示すように、さらに暗くなっています。
スクリーンショット 2025-05-18 065334_07_70mm_onering_exteder_longets

ここまでの結果でいくつかのことが判明しました。
  • カメラを引き出せば引き出すほど、良蔵範囲が広がり、全体が暗くなることがわかりました。
  • それにしても、これだけの違いで良蔵面積が2倍以上になっているのは驚きでした。
  • ただ、暗くなっている理由がまだわかっていません。制限がBFの径からきているのなら暗くなるのはわかりますが、その場合良蔵面積は小さくなるセンスだと思います。
  • 時間経過もあり、ピントがきちんとあっている保証がないので、どこまではっきり言えるかはわからないのですが、カメラを引き出せば引き出すほど分解能も増しているようにも見えます。これはエタロンにより平行光に近い光が入ったということなのでしょうか?
かなり大きな進展です。まだいくつかミステリーはありますが、とにかく引き出した方が面積、分解能がよくなる傾向で、暗くなることだけが不利なので、これはもう引き出す方向のほうがメリットが大きいと言っていいでしょう。


新カメラでのニュートンリング

新カメラG3M678Mに変えて一つ気づいたことがあります。それはニュートンリングが全く目立たなくなったことです。

これまでのASI290MMとの大きな違いは、センサーの前に保護ガラスが無くなったことでしょうか。もしそうだとすると、ZWOカメラでニュートンリングが出てくるのは、保護ガラス単体か、保護ガラスとセンサー面でニュートンリングが出ていた可能性が高いです。いずれにせよ、チルトアダプターをつける必要がなくなって、さらにアイピース口に差し込むタイプのカメラなので、これまでより対物側にかなり押し込めるようになりました。今回のC8での結果では、センサー面をより遠くにする方がいい結果が得られているので、逆センスなのが残念ですが、全景を8cm鏡筒で撮る場合は有利な方向に働きます。


PSTの光軸調整

9. PSTのC8に対するセンタリング(光軸調整)

5月18日にやった最後の検証です。実はここからC8に対してPSTを回転させて、良蔵範囲が変わるかテストしようとしてました。回転する前にPST固定のねじを緩めて、何の気なしにPSTを横に動かしてみると、画面の右手方向にさらに良蔵範囲が広がっていることに気づきました。最良のところは、これまで見ていた位置から画面の横手方向の半分くらいの長さ行ったところにあるようです。

これまでの固定位置です。いいところと悪いところがわかるように、フラット化を外して輝度差をあえて目立つようにしています。フラット化していないと、実質分解能が落ちたようにも見えるため、左側が暗く、ボケたように映ります。
スクリーンショット 2025-05-18 071127_11_70mm_longest_noflat_0deg

次に、最良方向に向けて黒点を画面中心あたりに持って来ました。これもフラット化はなしですが、明るさは均一に近くなっています。左端の分解能は上がっています。その一方、黒点右側の分解能が悪くなっているように見えます。さらにその右側は再びよくなっているようにも見えます。
スクリーンショット 2025-05-18 071557_12_70mm_longest_noflat_0deg_center

なぜこんな風に画面内途中で複雑に良蔵範囲が変化して見えるのかはまだ謎です。

その後、PSTのねじを固定すると「安定に」毎回最良位置から左側の所に固定されることがわかってしまいました。これまでずっと悪い位置で見ていたということです。また、前回の検証でASI290MMでPSTを回転させて良蔵範囲が改善していたのは、最良方向へ位置が少し移動しただけということもわかりました。

さて、どうやったらいい位置で固定できるかですが、とりあえず今回は対処療法で、PSTの差し込み部に1枚テープを張り、ねじを締めたときに良蔵方向へ傾いて固定されるようにしてみました。また、C8とPSTの固定部分がおそらくネックになっていて最も弱く、今のセッティングではここが一番揺れる可能性が高いこともわかってきました。固定方法はいずれ、強固にする方向で解決する必要がありそうです。


その後の撮影

ここで長時間撮影に移りました。その結果が、前々回の記事で示したものになります。



まとめ

5月後半はなかなか晴れなくて、太陽関連のやりたいことが溜まってしまっています。しかも最近は休日も忙しかったりするので、さらにチャンスが少なくなっています。今週末の福島も残念ながら参加できません。

ゆっくりですが、エタロン調整は一応進んではいます。そうは言っても、結局のところエタロン関連でここまでで有効だったことって、
  • 2のカメラのチルトをなくしたこと
  • 4、6、8のカメラ位置を遠くにしたこと
  • 9のC8に対するPSTの光軸調整
くらいです。どれもたいして難しいことはしていなくて、ある意味単純なことしかしていないんですよね。その一方、これだけ単純なことでもある程度検証しようとすると、手順は丁寧に、問題を切り分けて、一つ一つ確認していく必要があります。ここまででもいろんな不具合がわかり、ある程度改善もできてきましたが、今後必要ならもっと大変になってくるエタロンそのものにメスを入れることもあるかと思います。

そもそもPSTエタロンで自分が望むものが得られるいのか、もしくはより高性能なエタロンを手に入れる必要があるのか、はたまた自分が望んでいるものとはいったいなんなのか?

まだまだ道は長そうです。







新カメラのTouptek社のG3M678Mを使うと、8cm鏡筒での太陽全景でエタロン位置をさらにずらし、像が改善するはずです。実際にやってみました。これはちょっと前の2025年5月11日、あまり天気の良くない日に、晴れた瞬間瞬間を狙ってなんとかやれたテストです。


エタロン位置の最適化 (その2)

8cm鏡筒を使ったエタロン位置の検証は4月末に一度ASI290MMを使って試しています。鏡筒にPSTが当たる最前の位置0mmから、最大33mmまでPSTを後ろに下げることができ、以前のブログ記事では0mmと30mmの画像を比較しています。比較によると、
  • 口径80mm、焦点距離400mmの対物レンズで集光された光は、200mm進むと光径が40mmになる。そこに口径20mmのエタロン手前のレンズが置かれるので、F値は口径から考えるF5ではなく、レンズ径による制限でF10になる。
  • エタロンとともにレンズの位置を後ろに下げると、光径が40mmより小さい位置にレンズが置かれることにより、実効的なF値の制限が緩和される。
  • 実行的な口径が大きくなったことに相当し、分解能が改善する。
  • 実際の画像で見る限り有意な改善が見られた。
というのが結論でした。エタロンを最も下げた33mmという位置では、その位置でピントを出そうとするとカメラを最も奥にPST側に差し込まなければならず、それ以上エタロン位置を下げようとすると、カメラをそれ以上差し込めないので、ピントが出ないのです。これまで使っていたASI290MMではエタロン位置が33mm後ろというのが限界でした。

新カメラのG3M678Mはアイピース型で、さらにPST側に差し込むことができるため、今回はエタロンを50mmまで下げることができました。

その時の撮影画像の結果です。露光時間0.25秒、gain 400 (= 2倍 = 12dB = ZWO換算で120)、100/500framesをAS4!でスタック、ImPPGで細部出しをしています。左がエタロン位置が0mmで、右が50mmです。画像処理過程は両方とも全く同じです。
スクリーンショット 2025-05-18 193130_8cm_G3M678M_0mm_50mm_cut

画像ををクリックして拡大しながら比べて頂きたいのですが、黒点や、黒点右上のダークフィラメントが比較しやすいでしょうか。明らかに50mm下げた方が分解能が出ています。前回の0mmと30mmの比較よりも今回の方が差がはっきりしていて、やはりレンズ径がF値を制限していて、それが緩和されるために分解能が改善されたと言えるのかと思います。

撮影している最中は、エタロン位置が後ろの方が、ヒストグラムで見ていると画面が明るくなっているのが確認できます。これはレンズ径での光のケラレがより少なくなることで説明ができます。実はその際、その明るさの違いから0mmより50mm位置の方が一見分解能が出ていないように見え、なんでだろうと思っていました。でもきちんと同条件で画像処理をして比較すると、やはり理屈通り50mm位置の方がより細かいところが見えたので、やはり考え方におかしなところはなさそうです。

ただし、エタロンが0mmの位置の場合と、50mmズレた位置の場合での、エタロンの効果の違いはまだ認識できていません。エタロンに入る光は少なくともどちらかは平行光からずれることになるので、エタロンの効果が変わってきて、その差がわかるのではないかと期待していたのですが、今のところどちらがいいと、どちらが悪いとかはまだ言えていません。やはりエタロンの鏡間の距離が0.1mm程度と極端に短いので、多少平行光からずれてもエタロンとしての機能は失わないのかと推測しますが、位置を50mmもずらしても、まだあからさまに何も変わらないというのは、ちょっと意外でした。


ROIによる画像サイズの縮小

他にも、画面の大きさを制限するROI機能を使ってみました。目的は2つで、
  • フレームレートを上げたいこと
  • 画像サイズを小さくしたいこと
です。

G3M678Mのフレームレートは23fpsくらいで、ASI290MMの60-70fpsに比べると明らかに落ちています。これは画素数が1936×1096=2121856から3840x2160=8294400へと増えていて、その比8294400/2121856 = 3.91にほぼ比例したフレームレートの低下になっています。ROIで画素数を制限することにより、これが改善しないかと思ったわけです。

太陽でほぼ真円に近い形で写るので、ROIを正方形の2160x2160にした撮影してみたましたが、フレームレートは全く同じの23fpsで何ら改善は見られませんでした。

これで一気にROIを使う動機が薄くなってしまいました。もちろん画像サイズは小さくなります。横幅が3840/2160=1.78なので、ファイルサイズも約1.8分の1になります。その一方、写せる範囲がが小さくなるので、ガイドずれなどに対する耐性は下ってしまうため、少し迷います。

serファイルは絶対量が大きくなるので、それが小さくなるのは少し魅力です。実際、今回500フレーム撮影した場合にできたserファイルは、ROI無しだと8.1GB、ROIで正方形にすると4.6GBです。ただし、全景の場合は枚数を多くとることはあまりないですし、枚数を写すタイムラプスは、SharpCapで直接スタック後の画像だけを保存することを考えているので、トータルサイズはそこまで大きな差にはならなさそうです。ディスク容量を見ながら影響がありそうなら正方形の2160x2160を使うことにするかもしれません。

ちなみに、今回ROIで正方形にしてserで撮影したものから画像処理を進めてみました。最初のG3M678Mの画像は8bitで撮影してしまいましたが、今回は16bitのRAW16できちんと撮影しています。ただし、この日は天気が悪かったので、上記エタロン位置を最適化する前にとりあえず撮影しているので、以下の画像ではエタロン位置やカメラ位置はまだ適当です。

10_57_04_lapl2_ap10495_IP
10_57_04_lapl2_ap10495_IP_color
10_57_04_lapl2_ap10495_IP_color_inv
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2025年5月11日10時57分
  • 鏡筒: iOpton R80 口径80mm、焦点距離400mm
  • エタロン: Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: Touptek G2M678M
  • 撮影ソフト: SharpCap 4.1 (64bit)
  • 画像処理: AS!4にてスタック、ImPPGで細部出し、PixInsightでカラー化など、PhotoshopCCで仕上げ


タイムラプスは次回以降に

その後はSharpCapのリアルタイムスタックを利用したタイムラプスを撮影したのですが、雲が出てきてわずか20分で中断、その20分も雲の通過で明るさが変わったり、プロミネンスのブーストを失敗していたりで、見るも無残で動画化するにも至っていません。


まとめ

G3M678Mの全景撮影の最適化も進んできました。天気が悪かったので、最低限の全景撮影と、やりたかったテストの一部だけしか進みませんでしたが、それでも8cm鏡筒での振る舞いがよりはっきりしてきました。

実は、この日のことはすでに記事を書いたものと思い込んでいて、すっかり記事を書くのを忘れていました。この前後も色々撮影はテストをしていますが、すでに書いた記事もありますし、まだ書いていないことも随時気示威していきたいと思います。特に、エタロンの良像範囲に対する検証がやっと進んできたので、こちらは早いうちにまとめたいと思います。






今週末は天気があまり良くないので、先週撮影した画像の検証をしてみます。


カメラセンサーの違い

前々回、口径8cmの鏡筒+PSTにTouptekのG3M678Mを使って太陽全景を撮影した記事を書きました。これまではASI290MMだったのですが、これに比べるとセンサーが1/3インチから1/1.8インチになったので、一辺で1.5倍長くなりより広角で撮影できるようになったこと。さらにピクセルサイズが2.9μmから2.0μmに小さくなったので、こちらも1.5倍くらい分解能が良くなったことが利点です。

SharpCapで全景をリアルタイムスタック撮影し、PNGに直接落とした画像は前々回掲載したのですが、同時に動画のserファイルでASI290MMでもG3M678Mでも撮影しておいたので、それらの動画ファイルからマニュアルでフル処理をして、どこまで細部が出るのか試してみました。

露光時間はASI290MMが1msで、G3M678Mが0.5msです。ピクセルサイズはG3M678Mの方が小さいのですが、画面での明るさはG3M678Mの方が上でした。ゲインはASI290MMは100(= 10dB = ~3倍)として、G3M678Mの方の設定が最初わからなかったので400として大体画面の明るさが一致しました。ZWOの場合だとgain = 400は40dBという意味で、100倍になります。でもG3M678Mの400はどう見てもそこまで明るくなく、後で分かったことですが、これはデジタル一眼レフカメラのISOと全く同じだと理解しました。すなわち、100はISO100でgain=1、400はISO400と同じでgain=4というわけです。SharpCapでカーソルを近づけると、なんと値が何倍まで含めて直接表示されるように進化していました。こう考えてもG3M678Mはかなり明るいカメラということがわかりますが、これは単にconversion factor [e/ADU]が小さいのかと思います。

その他の条件はほぼ同じにしてあります。それぞれ500フレームをserフォーマットで撮影して、そのうちAS!4で上位50%をスタックした後、ImPPGで同じパラメータで細部出しをしています。この状態で拡大して二つのカメラの比較してみます。左がASI290MMで右がG3M678Mです。

スクリーンショット 2025-05-08 2128402_cut

この比較は面白いです。前々回の記事でも示したのですが、口径からくる分解能の制限のほうが厳しいために、センサーのピクセルサイズはあまり効いてこないはずです。なので本質的な分解能はあまり変わりません。でも拡大しているのでピクセルの大きさ自体はすでに見えるくらいになっていて、オーバーサンプリング状態だとしてもピクセルサイズの影響は多少なりともあるようで、やはり右の新カメラの方が分解能がいい印象です。その一方、ピクセルサイズが小さいということは1ピクセルあたりの光子数は少なくなり、トータル露光時間も半分なので、ノイズ的には不利になるはずです。拡大して比べるとわかりますが、ピクセルごとの輝度のバラつき(=ノイズ)は左の方が多く見えます。もう一つの不安要素が、ピントを明るい中で合わせているのでどこまで正確かいまいち自信がないです。ピントが合っているとするなら、そこそこ理屈に近いような画像の比較になっているのかと思います。

カメラを触っていて、もう一つ新カメラが不利なところがあるのに気づきました。フレームレートが出ないのです。ASI290MMは60-70fpsくらいは出ていましたが、G3M678Mの場合は23fps程度でした。ROIで画面を小さくしてもフレームレートは変化がなかったです。もしかしたらこの低フレームレートは撮影によっては将来決定的に不利になるかもしれません。


全体画像

G3M678Mで撮影した画像を、その後PixInsightのSolarToolboxでカラー化し、最後Photoshopに渡して仕上げました。モノクロとカラーと反転バージョンを載せておきます。

15_06_36_lapl2_ap18975_IP2_mono_cut

15_06_36_lapl2_ap18975_IP2_color_cut

15_06_36_lapl2_ap18975_IP2_color_inv_cut

リムの内側の表面外周部の模様がそこまで出ていないのが少し不満なくらいでしょうか。 最周部と中央の間に少し段差があるように見えるのが不思議です。そもそもPSTエタロンなので、最近のPhoenixとかの0.5Åクラスのエタロンには勝てないですが、それでも十分楽しめるくらいにはなっているかと思います。


SharpCapとの比較

先週SharpCapで見えた全景をPNGに落としたものを前々回の記事でも示しましたが、それと今回のserファイルからマニュアルで画像処理したものを比較してみます。左がSharpCap、右がマニュアル処理です。

スクリーンショット 2025-05-10 135439_cut

思ったより違いがあります。SharpCapの方ももう少し見栄えを良くすることができるのかもしれません。まだまだテスト段階なので、今後もっと詰めていこうと思います。


まとめと今後

と、上のところまで書き終えて週末を迎えて、次の週(今週末)に再度カメラを立ち上げたときに、なんと上の撮影を全て8bitで撮影していたことに気づきました。SharpCapの比較で差が出たのは、ビット数が関係しているのかもしれません。

やっぱりまだ触り始めなので、見逃していることがあります。ちなみに、ゲインがISOだったことも今週気づきいたことです。







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