ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:FWHM

シーイングを客観的に評価するのは結構大変です。今回は太陽望遠鏡としてヘリオスター100Hαにモノクロのピクセルサイズ2μmのG3M678Mを用いて撮影した多数の画像を使い、シーイングを計測してみようと思います。

本記事はCP+で話した太陽トークでまだ記事にしてないことの一つで、
の3と4になります。


撮影条件

撮影日は2026年2月14日、ヘリオスター100Hαで太陽を約30秒に1回、約1時間で合計120枚撮影しました。一回あたりの撮影では、露光時間5ms、gain200 (ZWOのカメラでgain60=6dB=2倍に相当) で、200フレームを撮影しています。フレームレートは40fps程度で、一回の撮影で5秒くらいかかります。

ちなみに、1ファイル3GB程度の大きさになるので、120回撮影すると400GBものサイズになります。今回は通常の1倍撮影と、2倍のバローレンズをつけた撮影の、120x2=240回になります。画像処理も入れるSSDを1TB近くを消費したことになります。今回はテストなので全ファイルを残していますが、シーイングの悪い時間帯のserファイルは消すとかしないと、流石にストレージが持ちません。

1回の撮影でできたserファイルの200フレームのうち、AutoStakkert!4で上位80%をスタックします。これを120回分まとめて全て連続処理しますが、できた1枚1枚の画像ファイルのサイズはバラバラになってしまうので、ImPPGで画像サイズを合わせます。必須ではないですが、同じくImPPGで位置合わせまでしてしまうと、後からのタイムラプス映像を作る時の処理が楽になるでしょう。

これ以降シーイング評価の話になりますが、実際にやったのは目で画像を見て分解能別に分別することです。目で画像の分解能を見分けるためにはスタック直後の画像ではボケボケで見分けがつかないのでダメで、それをImPPGのバッチ処理を使い、細部出しをしたもので判別しています。その後、アルゴリズムで画像から分解能を評価するテストに進みましたが、その際はImPPGで細部出しをしたものではシーイングが現実的な値にならずにうまく評価できませんでした。そのため、以下の話はスタック直後の画像で評価しています。


シーイングの評価

画像からシーイングを評価する方法としては何種類かありますが、ここでは5つの方法を試しました。
  1. Tenengrad: 画像のシャープネス(鮮明度)や焦点の合い具合を評価するためによく用いられる勾配ベースの指標
  2. ラプラシアン分散(Laplacian Variance): 画像内のエッジ(輪郭)の強さを表す「ラプラシアン」を計算し、その分散(ばらつき)を算出する。
  3. FFT高周波比(高周波/低周波パワー比): 信号の全パワーに対する特定の高周波帯域(バンド)のパワーの割合を計算する。
  4. エッジ遷移幅: エッジ画像からエッジスプレッド関数 (ESF、画像上の輝度変化)を求め、それを微分してラインスプレッド関数 (LSF)を求める。エッジ法線方向に輝度プロファイルを取り、誤差関数(erf)やロジスティックでフィットして遷移幅を得る。
  5. フレーム間jitter(位相相関で微小シフト): シーイングは「ぼけ」だけでなく「像の揺れ」も大きいので、サブピクセルの微小移動は残る。連続フレームの相互相関からピーク位置のシフト求め、jitter のRMSを計算。
1-5までの評価を120枚に渡り、横軸時系列で、縦軸を粗さ細かさの変化でプロットします。

それぞれの計算結果が正しいかどうかの判断はなかなか難しいです。ここでは120枚の画像を目で見て1枚1枚粗さ別に仕分けして、それを時系列でプロットしてみた場合と比較してみました。

その結果、少なくとも3と5は、見た目で分けた傾向とは全く違いました。3はブレが大きい場合の違いを見分けることが得意でないようです。5は大きく間違えている場合がいくつかあったので却下しました。

1、2、4に関しては、目で見た傾向とは似たものが得られました。相対的な変化は甲乙つけ難いですが、問題はこの粗さ細かさの相対的な時系列変化を、シーイングという秒角の単位の絶対的な評価にしてやる必要があります。この場合、arcsec/pixelの値がわかっていれば、秒角にまで落とし込むことができるはずです。ところが、これがなかなかうまくいくことができずに、結局1のTenengradのみがそれらしい値になりました。2と4はいずれも1秒角以下と現実的な値から乖離していたので、今回はこのTenengradを採用することにしました。


シーイング変化の結果

その際の結果が以下になります。
graph_x1_ok



グラフを見る限り、1時間の間にシーイングがどんどん良くなっているのがわかります。9時頃は4秒書く以上と、典型的か少し悪い程度。それが改善されていって、10時頃からは1秒角程度になっているので、相当良かったことがわかります。この評価ですが、見た目で仕分けたものと比較してみます。見た目の画像は先に書いたように、ImPPGで細部出しをしたもので分別しています。

graph_x1_eye_ok

右軸の目の評価はランク付けしただけの値なので、秒角とは無関係ですが、少なくともTenengradで評価した傾向は目で見て分けた傾向とそこそこ合っているように見えます。その目で仕分けた画像を、分解能別の頻度分布を画像枚数で表してみます。
hist_x1_ok
頻度は正規分布にそこそこ従っているように見えます。全枚数をある程度の順位付けした後、一番いいものと一番悪いもの、ちょうど真ん中のもの、真ん中とベスト、ワーストの中間の5枚を引き出して並べてみたものが下の比較図です。左がワースト、右がベストになります。

five

同じ機材、同じ手法、同じ日でも、1時間内で見た目でわかるほど大きく分解能が変化することがわかります。このばらつきが上記のような分布に従うとすると、何も考えずに適当に撮影すると真ん中ら辺の画像になる確率が一番高くなります。きちんと選ぶと、1時間で120枚撮影したうちのわずか数枚は、ものすごくいいシーイングになりますが、その確率は数%と小さいので、偶然に頼るのはあまり得策でないことがわかります。


2倍バローでどうなるか?

上記の撮影に加えて、連続して2倍のバローレンズをつけて焦点距離を伸ばし、再び同条件で1時間、120枚の撮影をしました。焦点距離を増やしたということは、カメラのピクセルサイズの制限が緩和されるので、うまくいくとより分解能がよくなるはずです。

これも同様に時系列で解析します。

graph_x2_ok

横軸の時間を見てもらうとわかりますが、1倍の撮影の直後の時間帯から始めていて、グラフの値も1倍の最後のところをほぼ踏襲しているように見えるので、評価としては同様のことができていると思われます。

続いて、目で仕分けしたものとの同一プロットです。

graph_x2_eye_ok


まあそこそこ傾向は一致しているように見えます。というより、目で見ていてももう良すぎて差がわからないと言った状況でした。

同様に分布図です。

hist_x2_ok

1倍の時は正規分布に近い形をしていましたが、2倍の場合はどちらかというとピークが左側に寄ってしまっていて分解能が頭打ちのような状況になっているのかと思います。一つの解釈は、もう口径や光学系の制限に近づいてしまい、これ以上シーイングが良くなっても、像は良くならないと考えることができそうです。もしまだシーイングのばらつきが効いているなら、分布はもっと左側に広がってもいいはずだということです。

実際、1倍の時の一番いい画像と、2倍の時の1番いい画像を比べてみます。
x1_x2

確かに微妙に2倍の方がいいように見えますが、そこまで大きな差は無いと言えそうです。いいシーイングを実現してはじめて、やっとヘリオスター100Hαの性能限界に近づくことができるということなのかと思います。逆に言うと、口径100mmの性能を引き出すのは、そう簡単ではないということです。

もし、ヘリオスターの76mmでも100mmでもいいのですが、撮影したらフェニックスとそう結果が変わらなかったと悩んでいる場合は、ぜひともシーイングを選ぶということをやってみてください。方法はいろいろあるかと思いますが、これまでの経験から30秒くらいの単位で大きく変わることもあるので、やはり今回のように長時間、30秒くらいのスパンで間欠的に撮影して選ぶのが確実なのかと思います。


シーイングがこんなにいいのは本当か?

ここで少し疑問が湧きます。上のシーイングの時系列グラフを見てみると、1秒角を切っているところがあります。日本でのシーイングは典型的には2-4秒角、いい時でも1秒角と言われています。今回のように1秒角を平気で切るようなことはあり得るのでしょうか?

少し調べてみると、一般的な天文観測サイトでは
  • 良い観測地(世界標準)-> 中央値 0.6–0.8″
  • 普通の観測地 -> 中央値 0.8–1.5″程度
  • 都市・低地 -> 中央値 2″以上も普通
とのことです。でもこれは世界でのことで、日本ではいろいろ不利な面があり、典型的には
  • 山岳観測所(木曽・岡山など) -> 中央値 1–2″程度が中心
  • 良い夜(山) -> 中央値 0.8–1.0″
  • 非常に良い夜 -> 中央値 0.6–0.8″
  • 平地・都市 -> 中央値 2–4″以上も普通
とのことです。これらの値は全て中央値であることに注意です。今回の撮影は自宅なのですが、時間によって1秒角から5秒角くらいまではブレても良さそうです。今回の測定結果を見ると、6秒角くらいから1秒角を切った時間帯もあります。もう少しきちんと考えてみます。

そもそも、シーイングとは普通はどう測定されるのかというと、一般的にはDIMM(Differential Image Motion Monitor)とも呼ばれ、ミリ秒単位の短い露光で「波面の傾きの揺らぎ」を測定し、その「ばらつき(分散)」を評価します。注意すべきことは、DIMMでは短時間露光が必須ということです。仮に露光時間を長くして平均化すると画面はぼやけるのですが、その一方でばらつきは小さくなってしまうため、もしシーイングとして評価しようとすると、良すぎる値が出てしまいます。要するに、平均化で見た目はボケてもシーイングがいいと判断してしまい、逆センスとなるわけです。これはシーイングという指標が、高次の細かい波形を見ているわけではないことを示しています。

その一方、今回の撮影は惑星のように、ごく短時間露光で撮影して多数枚をスタックしています。具体的には5ms撮影で160枚スタックしたものを1枚の静止画としています。AutoStakkertは特徴点を抽出して画像を歪めて位置合わせするようなアルゴリズムのはずなので、短時間で露光したものは一瞬一瞬のブレの少ない状態を撮影して、その特徴的な位置を認識し、次の画像も特徴的な位置を合わせるように画面を歪ませて画像を重ね合わせています。なので同じトータル時間 (ここでは5秒くらい) で単純に平均化した画像と比較すると、位置合わせして多數枚スタックした画像はシャープさが格段に良くなります。こう考えると、短時間露光で評価したシーイングと、位置合わせ多数枚スタックは同等の露光時間で評価したと言っていいのかと思います。

もう少し詳しく書いておきます。今回スタックした画像というものは、厳密にはシーイングそのものは違っていて、実効的にはPSF(Point Spread Function)を評価しています。PSFは点光源がどのように広がるかを表す関数で、これを「秒角/pixel」という画角とカメラセンサーから出てくる値から、PSFのFWHM を秒角単位にしたものです。短時間露光のスタックなので、短時間露光で測定したシーイング相当になるというのは上記で説明したとおりでいいでしょう。ただし、短時間露光スタックの方が一般的にいいFWHM値が出てしまうようです。理由は難しくはなく、位置合わせによって本来シーイングが見るべき傾き成分が取り除かれてしまい低周波成分が減るため、PSFのFWHMが小さくなるとのことです。例えばオフアキでのAO撮影のように、単純に各フレームを平行移動でそろえるだけでも一般的にFWHMは改善しますし、画像を歪ませての位置合わせとなると改善はさらに大きくなります。

さらにですが、今回は200枚中の上位160枚で8割を選んで使っていますが、この割合をもっと減らして1つのserファイル内でラッキーイメージング的なことをもっと進めると、さらに改善幅は大きくなる可能性があります。

というわけで、普通に評価するシーイングよりもスタックした方がある程度良い値になるというのは少なくとも定性的にはおかしくなさそうで、上記のグラフで出した良すぎる値は十分あり得るのかと思います。

このように厳密にいうとスタック撮影から評価した分解能はシーイングとは違うということになりますが、ここではイメージしやすいということで、グラフ内ではシーイングという言葉をあえて残すことにします。


まとめ

撮影した多数の太陽のHα画像から、シーイング相当の時間変化を定量的に評価してみました。1時間でシーイングは大きく変化し、その際の最も分解能の出ている画像と、最もボケた画像では、大きく違うことがわかりました。同じ機材を使って、ここまで大きな差があることは驚き以外のなにものでもありません。いいシーイングを選ぶということは非常に重要で、口径の大きいヘリオスター100Hαはシーイングを選ぶだけの価値がある太陽望遠鏡だということです。その一方で、口径限界まで達するとそれ以上いいシーイングがあったとしても、分解能は頭打ちになってしまいもうそれ以上改善しません。

口径100mmはハイエンドクラスの太陽望遠鏡なのですが、口径200mmや300mmでの太陽画像の分解能はさらに別世界となります。例えばここは、口径300mmの太陽望遠鏡を市販しているメーカーになります。最後は口径が効いてくるのは、惑星の場合と同じなのかと思います。


日記

2月の途中から3月はとにかく忙しかったです。CP+もありましたが、その前後も合わせて出張が多くて、ほとんど自宅にいない日が続きました。たまに自宅にいても1日とか2日で、次の日朝早く出発することを考えるとなかなか夜の撮影もままならない日が続きました。

そんな中で、先日実家の名古屋に行く用事があり、ついでにSCORPIOに寄ってきました。いつもの如く何か買うわけではないので申し訳なかったのですが、店長さんにCP+の黒点振動の動画を見せたりして盛り上がりました。ちょうど来ていたお客さんに、小学4年生の男の子と、さらにその後中学2年生の女の子がいたので、黒点振動や撮影した星雲や銀河の写真をみてもらいました。二人とも天文に興味がある子達で、一人は望遠鏡の受け取りに、もう一人は赤道儀の検討に家族と一緒に来店していました。その間に、ヘリオスター76Hαを覗かせてもらったりして、結局2時間近く滞在してしまいました。店を出た後に、たまたま宙うたさんが来店されたらしくて、つい先日購入されたヘリオスター100Hαを持ち込んで76Hαと並んで太陽を見ていたとのこと。せっかくなので宙うたさんとお会いしたかったです。もう少し長くいればよかったのかもしれません。

更に今週末は天文仲間のお客さんが自宅に来る予定です。少し準備をしたいので、できれば平日のうちに晴れてくれればいいのですが。


CP+で話した太陽トークの内容で、まだ一部記事にしてないことがいくつかあります。
順に記事にしていこうと思います。今回は1のヘリオスターのエタロンについてです。


これまでの結果

これまでに、PST、フェニックスと、手持ちの太陽望遠鏡のエタロンの特性を測定してきました。





PSTに比べて、フェニックスが圧倒的に性能が良くなっているという結果でした。

具体的には、鏡間の距離が0.3mmから0.2mm程度に短くなってFSRが1.5倍広がったために、両隣のピークの影響がすくなくなったこと、FSRが広がってピークの太さは太くなるはずなのに、鏡の反射率を70%程度から90%程度に上げて、FWHMを捕捉してよりHα線をコントラストよく補足するようになっていることがわかりました。

今回はそれに加えて、CP+セミナーのためにお借りしていたヘリをスター100Hαについても同様の測定をしてみます。公称値ではフェニックスが0.6Å以下、ヘリオスターが0.5Å以下となっていて、差がついています。特にこの差が有意なのかどうか、フェニックスのエタロンに比べて違いがあるのかどうかに注目です。


ヘリオスター100Hαの測定

測定方法はフェニックスの時とほぼ同じです。測定日は2月8日、LEDライトを使って測定しています。確度依存性をなくすために鏡筒を使い、対物レンズ側からLEDライトを入射します。

IMG_2532

分光器はSHG700を使い、カメラはG3M678M。画像としては
  1. 分光器のみで鏡筒をつけないフランホーファー線
  2. 鏡筒からBF(ブロッキングフィルター)を外した状態(エタロンの測定)
  3. 鏡筒のノーマルの状態(エタロンあり、BF無し)で太陽望遠鏡としての測定
  4. BFのみ分光器に取り付けた場合
の4つを撮影しています。この中で今回は1、2、4を使っています。

1枚の分光画像の撮影は、10秒露光で10スタックの計100秒間撮影しています。ゲインは3200(=ZWOだと300に相当)で、オフセットをSharpCapの値で2000加えています。


測定結果

波長のキャリブレーションはこれまで同様に、フラウンホーファー線を撮影し、参照データ(PEPSI)にフィッティングしています。
Figure_1
エタロンの透過特性の測定値とフィッティングです。
fit_result
  • 鏡の強度反射率、強度透過率: R = r^2 = 0.909, T = t^2 = 0.091
  • キャビティーの鋭さを表すFinesse = π r/(1-R) = 33.1
  • エタロンを構成する鏡と鏡の間の距離 = 0.208 [mm]
  • 周期の幅を表すFSR (Free Spectrul Range) = 10.34 [Å]
  • エタロンの性能を表すFWHM = FSR/Finesse=0.31 [Å]
  • 光の折り返し回数: Finesse x 2/π = 21.1 [回 (片道)]
という結果になりました。

フェニックスのFWHMが0.37Åでヘリオスター100Hαが0.31Åと、約2割違うことがわかります。公称値も0.6Å以下と0.5Å以下で2割の差があるで、ちょうどその違いを説明できています。今回測定したFWHMの絶対値がまだどこまで信頼できるかはわかりませんが、少なくとも同様の方法で測定しているので相対的な違いはある程度正確に評価できていると考えると、公称値の違いも含めてこの差は有意であると考えて良さそうです。これは推測ですが、今回FSRの値はほぼ一緒の0.2mmなので、おそらくエタロンと作っている会社は同じではないかと思います。その上で、公称値に差をつけているということは、鏡の反射率を実際に変えてFWHMに差をつけていると考えると素直な気がします。

続いて、BFも考慮した場合の透過曲線です。エタロンの測定値とBFの測定値を掛け合わせています。BFは両隣のピークからの漏れをカットする役目がありますが、グラフを見る限り十分カットしていることがわかります。
all

さらに、太陽光を掛け合わせたものです。太陽光を掛け合わせると、両隣のピークの影響が少し出てくることがわかりますが、積分した総光量に対する量としてはごく僅かで、大した影響はなさそうなことがわかります。
all_sun_multi

ここまで見ても、相当性能の良いエタロンだということがわかります。


エタロン透過曲線のフィッティングについて

少し考察します。エタロンのフィッティング曲線をPST、フェニックス、ヘリオスターを並べてみます。

fit_result

fit_result_ok

fit_result
よく見ると、どのグラフもピークの裾の部分が、実測とフィッティングがずれしまっているように見えます。いずれも実測よりもフィッティングの方が大きく出てしまっています。

もし、裾野部分のフィッティングが実測に合うように重みづけをして改めてフィットしたりすると、おそらくフィッティングしたピークはもっと細くなって、FWHMはさらに小さくいい値になってしまうでしょう。今でもPST、フェニックス、ヘリオスターの公称値

1.0Å以下、0.6Å以下、0.5Å以下

に対して、私が実測した値は
0.71Å、0.37Å、0.32Å
と公称値よりかなりいい値になっています。これに、裾の影響を補正するとさらにいい値になってしまうのは、方向性として果たして正しいのでしょうか?

そもそも、なぜ実測とフィティングでズレが起きるのか考えてみます。光キャビティーは一般的にはh状に素直な応答を示し、かなり理論的に説明できるものです。今回のずれは光キャビティーそのものというよりは、その測定方法に問題があると考える方が素直です。

では何が問題なのでしょうか?一つ考えられることは、測定時間が10秒x10スタック=100秒と長過ぎたことかと思われます。今回の応答はフィネスを見てもわかるように、そこそこ鋭いものになっています。実際、ヘリオスターはその鋭いピークゆえに実測点はわずか5-7点ほどです。ピーク周りに至っては3点ほどでピークを跨いで測定してしまっています。1つの測定はカメラの1ピクセルに相当します。ピクセルサイズを考えるとわずか2μmです。測定時間の間、カメラに入る光が全くずれなければいいのですが、地面や望遠鏡を載せている机が揺れるため、100秒の長い間には、例えばLEDライトと望遠鏡が相対的に僅かにズレることはあり得るでしょう。

もしピークのところがずれたとすると、どちら方向にずれても値は小さく読み取られます。値が小さくなる傾向はピークに近いところほど顕著で、裾に行くに従って緩和されます。すなわち、ピークが低い値で測定され、ピークに近いところではその分太るので、本来のピークよりも頭でっかちなものとして測定されていると考えられます。その頭でっかちなところを合わせるようにフィットすると、裾の部分でズレが大きくなり、本来のFWHMよりも大きな、性能の悪いものと結果が出てしまいます。

この推測が正しい、もしくは他の理由で裾がズレるとしても、いずれにせよ裾の方が測定点が多く、本来の値からのズレは少ないと考え、ピーク部分のずれが本来の値から大きくズレると考えると、実際のFWHMはもっと小さいと考えて良さそうです。

ただし、今回は撮影画像の上に凸の曲線の真ん中の部分だけを使っているので、エタロンの中心部のみを測定していることになります。もしかしたら端の方はもっと透過幅が大きくて、その平均を取るとメーカー値に近づくのかもしれません。ここら辺は今後の課題としたいと思います。

どこをどう測定するかで値は変わってきそうですし、一番いい最小値か、平均値か、最低限の保証をするために最大値を採用するかなどは、メーカーによっても方針が違うかもしれません。やはりきちんと比較するためには、同じ方法で、同じ基準で比較すべきで、そういった意味では手元に持って実測して相対値を比較するのが一番確実だと思われます。少なくとも、今回まででPSTとフェニックスとヘリオスター100Hαの違いは、相対的にはっきり見ることができたというのが結論になると思います。


まとめ

これで手持ちと借りたもののエタロンとBFの測定が終わりました。太陽望遠鏡は高価なのでなかなか自分で買うことはできません。もし今後借りたり、もしくは新しい鏡筒を手に入れたりできた場合にはまた測定を続けようと思います。

あと、もう少し精度を上げたいとも考えています。短時間測定や中心部以外を測定するのも、今後余裕があったら試すことができればと思います。





何日か前の記事で少しだけ書きましたが、分光器のSHG700を使って、太陽望遠鏡のHαエタロンの性能を表すFWHM(Full Width Half Maximum, 半値全幅)を実測してみました。これは太陽望遠鏡のフィルターがFabry-Perot cavityを利用したものだと知った2017年頃からやってみたかったことで、一時は中古の研究用の分光測定器を買うことを本気で考えていました。長年の夢の一つが叶ったことになります。


測定方法

今回SHG700で測定したものは、
  1. 太陽光の散乱光
  2. エタロンの透過光
の2種類です。ここからFWHMまで持っていきます。

1の散乱光は、SHG700を鏡筒から外して単体にして。部屋の中の(直射日光ではない)白い壁に向けます。白く明るい壁ですが、所詮背景光なので光量は大したことはなくて、露光時間を12.8秒でG3M678Mのゲインを400とし、さらにライブスタックで10枚重ねて、十分フラウンホーファー線の構造が見えるようにしました。

2のエタロンの透過光ですが、最初1と同様に太陽の散乱光を使って測定しようと思いました。でも光量が十分でなく、エタロンが共振しない暗いところは十分に見ることができません。太陽光を直接入れて測定するのがいいのですが、あいにくこの日は曇りです。というか、晴れないので痺れを切らしてこの測定を開始したので、太陽が出てないです。代わりに下の写真のようにLEDの小さなライトを使いました。
G1ghTC8aoAAOVvC

PCの画面にも出ていますが、うまくエタロンのComb (櫛形) 構造が見えるようになりました。

ただし測定は結構難しくて、ライトの光の絞り具合とか、ライトと分光器の間の距離だとか、ライトの位置や角度など、うまく合わせないとなかなか綺麗な線が出ません。とりあえず今回は机の上に適当に置いてやりましたが、できるなら光学定盤などを使い安定した測定にしたいです。特に、エタロンは入射光に角度依存性があって、いつかそれも含めて測定したいので、光の角度をきちんと調整できる機構が欲しくなります。


撮影画像

測定した画像は以下のようになります。

まず1の背景光です。
Capture_00001_WithDisplayStretch
太陽光のスペクトルが綺麗に出ているので、この画像から波長のキャリブレーションをすることができそうです。でもこれだけだと、Hα線は目立つのでまだしも、どの線がどの波長なのかよくわかりません。JSol'Exの「Spectrum browser」で見る参照スペクトルと比べてみても、なんか違うように見えます。

下の画像を見るとわかると思いますが、左が今回撮った散乱光、真ん中の細長いSharpCapの画像が以前撮った太陽を直接見たもの、右がJSol'Exの参照画面です。
Fraun_comp_cut

左と真ん中は同じような構造になっているので、まずは背景光がきちんと取れていると判断します。でも右の参照画面の線はかなり実測と違うことがわかります。なので下の画像のように、Hα線と目立って一致しているもう一本の線の波長を調べて、それを基準として他は波長が線形に変化していると仮定して、縦方向の波長を1次の直線でフィットすることにしました。

wavelength_select_cut


2のエタロンですが、本当は透過「率」を知りたいのですが、これは結構難しいとわかりました。まず、エタロンがある場合とない場合の画像を2枚撮影します。まずはエタロンありの画像をLEDライトの位置や角度を変えうまく撮れる状況を作ります。
Capture_00001

その撮影したままの状態をキープしながら、エタロンだけを動かして取り除きます。こうすることで同じ状況で基準光を撮影することができます。
Capture_00001

基準光は一見一定に見えますが、画像の上から下までで緩やかに暗くなっていくことがわかりました。エタロンの透過光のピーク位置もやはり同様に緩やかに暗くなっていくので、基準光で割ることにより、エタロンの透過光のピーク位置が平らに近くなります。

それでも、エタロンがないときにはSHG700の入射口径全体から光が入り、エタロンがあるときにはエタロン前後のレンズ径などに制限された光しか入らないので、透過率が低く出過ぎてしまいます。そのため透過「率」とすることは諦めて、ピーク位置を1とするようように規格化しました。

波長は画像の縦方向で変化しますが、スリットに長さがあるために画像の横方向にもフラウンホーファー線は広がっていて、しかも線が直線にはならずに曲線になっています。(どういった仕組みで曲線になるのか、どう調整したら直線にできるのかの方法は私はまだわかっていないので、こちらもいずれ解決したいです。おそらくスリット位置と回折格子の相対位置で決まるのではと推測しています。)しかも、エタロンの透過光の明るいところと暗いところの幅は横位置によって多少変わります。

今回は1の画像も2の画像も、真ん中あたりの斜めになっていない場所の10ライン程度の縦線を抜き出して、横方向に平均値をとりました。エタロンについては真ん中ら辺が明るい線が一番細いようなので、こちらも真ん中ら辺を選ぶのが一番良さそうです。

背景光のフラウンホーファー線を見ている限り、SHG700の回折格子を触りさえしなければ、撮影ごとの波長のズレのようなものはなさそうなこともわかりました。


波長のキャリブレーション

1の背景光画像のフラウンホーファー線では、波長がリニアに変化すると仮定して、上で決めた基準の2点Hαの6562.81Åと6643.63Åを元に1次の直線でフィットします。この時のあるところの数値と次の数値との差が、1ピクセルあたりに変化する波長となり、今回は0.089Å/pixelとなりました。しかしながら、SIMSPEC SHGで求めた0.091Å/pixelや普段撮影動画をJSol'Exで再構築した際にはこれまで0.091Å/pixelと出ていて、2%ほど結果が異なることがわかりました。

この違いの原因は2点だけを基準として波長が1次的に変化すると仮定したことかと思いますが、今のところはっきりとした原因は不明です。まあ今回は基準点のHα周りのFWHMを求めるのが最大の目的で、そこまで影響はないはずなので、とりあえずこのズレは無視することにします。


エタロンフィッティング

エタロンの透過光ですが、透過光を数値化したものを、基準光で割ったものをグラフにします。
etalon_ok

ここからHα周りのピークを抜き出して、フィッティングします。ピークの高さは右に行くに従って上がっていくようですが、基準光でのノーマライズがうまくいっていないのか、それともこうなるのが正しいのかよくわかりませんでした。Hα周りだけに絞ってしまえば、局所的にはほぼ同じ高さとしてしまっていいでしょう。

フィッティングはFitykというソフトでローレンツ関数やVoigtを使う例がいくつか示されているので、私も同様に試してみましたが、いくつか問題がありそうです。

下の画像は実際にFitykでフィットしてみたものです。
Voigt_cut

一つ目の問題は、これらの関数は基本的にピークの両側は0になることを想定していることです。ところが、エタロンの応答を表す関数は繰り返し構造になるため、ピークとピークの間の透過率が0になりません。ピークとピークの真ん中のちょうど反共振の位置では、エタロンの透過率は、同じ特性の鏡を2枚使うと仮定して、鏡の強度反射率Rと強度透過率Tを使って

(T/(1+R))^2

のような形に書けます。例えばここで、強度透過率T=0.3、強度反射率R=0.7とすると、ピークの真ん中でも(0.3/1.7)^2=0.0311と、3%ほど光を通してしまいます。

Fitykでは、別途定数を用いてフィッティングさせるような手法が取られているようですが、これだと個別の赤い2本の線のうち曲線の方を見てもらえばわかりますが、明らかに実測のピークより細い線でフィッティングされてしまっています。これは結果として、FWHMが小さく出過ぎてしまい、実際よりも性能がいいという間違った結果を出してしまいます。

今回の上の結果では、グラフ右にあるFWHMの数値を見ると、0.65ÅとPSTとしてはにわかに信じられないくらいのいい値が出てしまっています。例えばこのページでも同様の間違いをしていて、HeliostarのエタロンのFWHMがなんと0.3Åと、これも良すぎる値を出してしまっています。ピークの高さの半分のところの幅を見るだけでも、少なくとも0.4Åはあることがパッと見るだけでわかるので、明らかな間違いです。このグラフが出た時に何でこんな良すぎる値になるのかおかしいと思ったのですが、実際に自分でFitykを使ってみることでなぜこんな間違いに陥ったのかがよくわかりました。

二つ目の問題点は、ローレンツ関数やVoigt関数だと、一つのピークのみしかフィットすることができないことです。原理的に、エタロンの透過光の応答のような周期的なものを表すことはできません。このため、周期構造から求めることができる、FSR(Free Spectral Range)をきちんとフィッティングして求めることができません。

FSRはFinesse、FWHMとともにとても重要なパラメーターで、

Finesse = FSR / FWHM

というとてもシンプルな関係があります。Finesseはπで割って2をかけると、エタロン内での光の折り返し回数をすぐに計算できる、非常に重要な指標となります。FSRはエタロンの2枚の鏡の間の距離と反比例関係にあるので、FSRがわかるとエタロン間の距離を直接求めることができます。このように、複数のピークを含めてフィッティングしてFSRを求めることはかなり意義があると言えます。

では、なぜこれまであまり周期的な関数でフィットされてこなかったのでしょうか?これは推測なんですが、単に関数が結構複雑になるためにあまり挑戦してこなかっただけなのかと思います。少なくともFItykのような既存のソフトでフィットするのはかなり大変になりそうです。

今回は周期的な関数を書き下して、自分でpythonでコードを書いて、いくつかのピークをまとめてフィッティングしてみました。結果は以下のようになります。
fit_result_ok

フィッティング曲線がきちんと周期的に出ること、ピークとピークの間が0にならないことがわかるかと思います。ただし、ピークとピークの間の暗い部分が実測とフィッティング曲線でずれてしまっています。これは鏡のロスを考えないで、R+T=1という理想的な鏡を考えてしまったことに由来します。ロスを考えるとさらに複雑になるので、今回は諦めました。それでもFWHMの推定は、ピークの高さをきちんと0を基準に考えているので現実により近い値になっているはずです。


パラメータなど

実際の計算手順としては、フィッティングパラメータとして使った鏡の反射率と透過率、鏡間の距離がまずわかります。鏡の反射率からFinesseが計算でき、鏡間の距離からFSRがけいさんできます。FinesseとFSRがわかると、FWHMがわかるというわけです。下に少しだけ式を書いておきました。

代表的なパラメータはグラフの中に書き込んでおきましたが、今回分かったエタロンの特性を表すパラメーターは以下の通りです。
  • 鏡の振幅反射率、振幅透過率: r, t
  • 鏡の強度反射率、強度透過率: R = r^2 = 0.70, T = t^2 = 0.30
  • キャビティーの鋭さを表すFinesse = π r/(1-R) = 8.75
  • エタロンを構成する鏡と鏡の間の距離 = 0.313 [mm]
  • 周期の幅を表すFSR (Free Spectrul Range) = 6.88 [Å]
  • エタロンの性能を表すFWHM = FSR/Finesse=0.787 [Å]
  • 光の折り返し回数: Finesse *2/π = 5.6 [回 (片道)]
目的のFWHMは0.787 [Å] と出ましたが、公称1 [Å] 以下という値と比べてもそこそこ信頼性のある数字になったのかと思います。FWHMだけでなく、他の重要なパラメータもかなりの精度でわかり、PSTエタロンの特性がかなり特定できたと言っていいかと思います。長年の疑問にやっと答えが出たと言えそうで、かなり嬉しいです。
逆に、今回の測定でまだわからないことは
  • 光の入射角度の依存性
  • Hαからのピークの中心波長のずれ (入射光の角度と、エタロン回転調整をいじっていないため)
  • 個々の鏡の反射率と透過率がどれくらい違うか (2枚の鏡の反射率と透過率を同じと仮定したため)
  • 鏡のロス
などになります。今後の課題としたいと思います。


まとめと今後

手に入れたSHG700で、手持ちのPSTエタロンの透過特性を、うまく測定することができました。角度依存性などの課題はまだ残されていますが、目的のFWHMが測定でき、これまでわからなかった鏡の反射率、ミラー間の距離やFSR、フィネスまで確定できたのはかなり満足感が高いです。

今後やりたいことが、エタロン以外にも太陽望遠鏡でに必須の、BFの測定とかERFの測定です。他にも、ナローバンドフィルターやワンショットナローバンドフィルターも、メーカーが謳っている半値幅が本当に出ているのか、実測してみたいと思っています。




週末にやっと撮影できましたが、まだ手持ちの画像でもう少し確かめたいことがあります。今回は、高波長分解能の分光器でエタロンで見たHα画像を再現してみます。


太陽分光撮影でHαエタロンのFWHMの差を再現してみる

今回の比較は、SHG700を手に入れる前からやってみたいと思っていたことの一つです。エタロンの透過波長幅(FWHM)の性能差によってどう見え方が変わるのかを、きちんと比較してみたかったのです。これは、今後新たなエタロンを選ぶ際の、重要な指標になっていくのかと考えています。

これまでにHα線での太陽はPSTが2台と、今年に入ってPhoenixを少しの期間触って撮影してきました。PSTのエタロンの波長透過特性はFWHM (Full Width Half Maxmum、半値全幅)で1Å、Phoenixのエタロンは0.6Å以下というのが公称値です。さらに、CP+での講演の時にも比較したのですが、京都大学飛騨天文台SMARTはFWHM0.25ÅでHαの中心波長と+/-0.5Åずらして撮影した画像を公開してくれています。

手元にあるPSTエタロンの透過特性はいずれ直接測ってみたいのですが、SHG700で撮影したもっと細かい波長分解の画像がすでにあるので、これだけでも何かできそうです。そこで今回は、これまで撮影したPSTの全景画像とPhoenixの画像、飛騨天文台SMARTの画像を、それらのFWHMの値の情報と共に、今回のSHG700で撮影した画像を同波長幅相当にした画像を生成し比較してみたいと思います。

見たいのは、波長透過幅によってどんな画像になるかの比較検証です。これまで撮影したもののうち、中心波長を比較してみます。波長分解能がいい順です。


1. SMART

SMART: 2025/1/18 (Phonenixで撮影したものと同じ日)のHαで波長幅は0.25Åです。

ポイントは、波長分解能が市販エタロンよりも数倍いいこと、そのため太陽表面に淡い白いモヤモヤした筋のようなものが随所に見えていることです。

halpha_p000_20250118031856_fits_IP_ST_MLT2

これをSHG700で再現してみます。SHG700の波長分解能は分光された光を撮影する際の1ピクセル幅で考えて0.091Åとします。中心波長とその前後の画像で上の画像に迫れるかを見ます。下は中心画像に+/-1枚の計3枚を平均化したものです。単純計算で、波長幅は3枚の間の2つ分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の3ピクセル分と考え、0.091 x 3 = 0.273Åになります。上の画像と比べると、白いモヤモヤも含めて、そこそこ再現できているのではないでしょうか?

07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_averaged1

少し条件だけ書いておきます。SMARTにアップロードされている画像は、jpgファイルの場合は輝度などの多少の画像処理はされているようです。でも解像度が低く細部比較にあまり適していないと思われたので、fitsファイルを落として自分で画像処理をしました。fitsファイルはRAWに近いようで、ストレッチも含めて何も画像処理をしていないようでした。ただしノイズがかなり多かったので、ノイズ処理が影響して空間分解能が犠牲になってしまっったかもしれません。また、画像処理の度合いによってはコントラストを変えることなどで見栄えが大幅に変わることもあるのですが、SHG700の画像をJSol'Exでっ標準的に処理したものに合わせました。画像処理の影響は少なくないのですが、面白いのは表面の淡い白いモヤモヤだけは出方が画像処理とはかなり独立に波長に依存しているようなので、この見え方が似ているということは、そこそこうまく再現できているのではと考えています。


2. Phoenix

次はPhoenixで1月18日に撮影した画像です。Hαで波長幅0.6Å以下というのが公称値です。

SMART画像に比べて、太陽表面の白い淡いモヤモヤは明らかに薄くなっています。これは明らかに波長透過幅の違いによるものと考えていいでしょう。そうは言っても、市販エタロンでHαでこの白いモヤモヤが出ること自体がすごいことなのかと思います。
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上の画像をSHG700での再現してみます。Hα中心画像に+/-3枚の計7枚を平均化したものです。波長幅は7枚の間の6つ分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の7ピクセル分と考え、0.091 x 7 = 0.637Åになります。分光の1枚画像なのと、JSol'Ex標準のストレッチだけでその後の加工はしていないので、空間分解能はPhoenixの方が上になりますが、白いモヤモヤはそこそこ再現できているのかと思います。
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ここまでの結果を見るに、実写の場合にはエタロンの透過波長幅によって表面の白いモヤモヤの見え方には違いがあって、分光でシミュレーション的に透過波長幅を再現した時にも同様の傾向が見られるので、やはりこの白いモヤモヤの出方が透過波長幅に影響を受けていることは明らかであると言えそうです。言い換えると、この白いモヤモヤの出方を見ることで、エタロンの性能をかなり直感的に判断することができるのかもしれません。


PST

さらに透過波長幅が広いPSTで2025年5月18日に撮影した画像です。Hαで波長幅1Åが公称値ですが、エタロンの個体差でかなり見え方が違うと言われているので、この値がどこまで正しいかは別途検証する必要があるかと思います。
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再現のためのSHG700の画像に合わせて、リンク先のページの実写PST画像から輝度などを少しいじっていることに注意です。

パッと見でPSTが、SMARTやPhoenixとは見え方が大きく違うのがわかるかと思います。白いモヤモヤは全く見えなくなり、代わりに表面の模様というか、ガタガタが多くなり、SMARTやPhoenixでのちょっとのっぺりとした印象とは変わって、いい意味で賑やかになっている気がします。これらの違いは画像処理で差が埋まるレベルではなく、エタロンの透過波長幅の影響が大きく出ているのかと思われます。

また、同一画像内の違う場所でエタロンの性能の違いが出てしまってるようです。中心部分は明るいためFWHMが大きくなってしまい性能が悪く見えてしまっているようで、模様もより大きな構造になっていて、荒々しく見えます。

これをSHG700で再現してみます。中心画像に+/-5枚の計11枚を平均化したものです。波長幅は11枚の間の10個分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の11ピクセル分と考え、0.091 x 11 = 1.001Åになります。白いモヤモヤはほぼ何も見えず、ガタガタの模様もよく再現されていると思います。その一方、SHG700では画面内の波長透過幅の差はないので、PSTでの上の実写のような中心だけが明るくなるような画像は再現できません。

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SHG700単体での中心波長からのズレの比較

最後に、SHG700で撮影した中心波長のみの、0.091Åの透過波長幅の画像を載せておきます。
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SMART画像ともやはり違いがあります。これはHα吸収線の底の暗い部分で見ることができることが効いていると思われ、白いモヤモヤは太陽面全体に存在しますし、ダークフィラメントがより色濃く出ることがわかります。ダークフィラメントのコントラストについては、撮影では画像処理で誤魔化すことはできますが、眼視ではこのエタロンの性能差はより明確な違いとなって見えるのかと思います。よく「半値幅の小さいエタロンは模様がよりハッキリ見える」とかというのは、このダークフィラメントだけとっても正しいのかと思います。

透過半値幅が小さいと淡いダークフィラメントまでよりコントラストよく見えるようになるので、1年ほど前の太陽活動が最も活発だった頃には、分光撮影でダークフィラメントが太陽全体をぶった斬っているような画像を得ることができていたようです。SHG700をもう少し早く始めたかったです。これは次回の太陽最活動期の10年後くらいの目標でしょうか。


比較のまとめ

3つの比較で分かったことをまとめます。
  • SMARTの画像は太陽表面内に白い淡いモヤモヤが一番多いです。
  • PhoenixでもSMARTほどではないですが、白いモヤが多少見えています。透過波長幅が狭くなるほどこの白いモヤが見えてくるので、このモヤがどれくらい出るのかがエタロンの性能の指標の一つになるとも言えます。
  • 白いモヤモヤが一体何なのか?少なくとも私はまだ特定できていません。
  • 日付が違うので、細かい違いについては大したことは言えませんが、それを差し引いてもPSTの見え方は全然違っています。まず、白いモヤは全く見えません。波長透過幅が大きいからだと思われます。その代わりにもっと粗いガタガタの構造の模様が全面に見えます。
  • PSTと比べると、SMARTもPhoenixも、ガタガタが全然見えなくて、むしろ印象としてはのっぺりしています。
  • 以前は、PSTで見えているようなガタガタが見えるのがいいと思っていました。これはむしろ中心波長から少しズレたところに出てくる模様のようです。ただ、このガタガタがあった方が賑やかで逆に見栄え良く見えるのではという印象も捨てることができません。実際、JSol’Exのスクリプトを見ていると、あえて中心波長回りの複数枚を平均化している例があります。あまりに狭すぎる透過波長幅だと見栄えがいまいちというのは、太陽分光関連の方たちの共通の認識なのかもしれません。
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さらに、SHG700の中心画像と比べると
  • SHG700単体の透過波長幅が0.091ÅとSMARTに比べても2.5分の1程度まで行くので、白いモヤモヤはより表れるし、ダークフィラメントがよりハッキリ見える。

なぜこんな比較をしてみたか?

そもそもなぜこんなことをしたかですが、SHG700を手に入れる前に、次の太陽機材をPhoenixとSHG700のどちらにするか迷っていました。Phoenixはすでに触った経験もあり様子もわかっていたので、最初は単純にPhoenixにしようと思っていました。Phoenixのエタロンは、透過波長幅においても、面内の均一性においても、製品のばらつきにおいても、世代が完全に代わったと思わせるほど素晴らしいものになっています。

でもここで一つ疑問がありました。太陽光のHα周りのスペクトルをみると吸収線になっていて、Hαの中心波長のところが一番暗くなっています。周りの波長の明るさに邪魔されないために、Hα吸収線の底にある太陽そのものの模様が見えると解釈することができます。もしこの解釈が正しいなら、周りの邪魔な明るさだけが問題なので、例えば光害で埋もれる淡い星雲を炙り出すように、DC的な光のオフセットを除いてやれば太陽本来の模様がもっと見えてくるはずです。明るさだけの問題なら、本当にそれだけのことで、PSLエタロンの画面の不均一性の問題は残りますが、透過波長幅の問題はもしかしたらなんとかなるのではという淡い期待がありました。

でも今回の比較結果から見てみると、透過波長幅が大きくなると、もっと言い換えると、Hαの中心波長から0.5Åも上下にズレてしまうと、明るさの変化だけでは全く説明できないレベルで見かけの模様が変わってしまうことがわかりました。このことを考えると、Hα吸収線の底でHαで別途輝線として輝いている別の明るさがあると考えたほうが自然です。

実はこのことは、以前太陽のジェットを見た際に調べた時に答えは出ていて、その時の言葉では「採光面からの水素に照らされて吸収と放射を繰り返し、Hαで輝く輝線となる」と書いています。要するに、Hαで見える模様は、吸収線であり輝線である結果出てくるものということがわかります。輝線でもあると考えると、Hαの中心線からズレることによって見える模様が変わってくることは納得できます。今回はそれを改めて確かめてみたということになります。

以上のことから、結論としてはエタロンの透過波長幅が狭いもので見えてくる輝線の模様は、透過波長幅の広いものでは決して見ることができないと言えるのかと思います。性能のいいエタロンは何者にも代え難いということです。

でもですね、まだ少し疑問が残っているのです。C8とPSTエタロンでものすごくシーイングがいい時に見た黒点周りなどの模様と、シーイングが悪い時に見た黒点周りの模様は、前者がまるで透過波長幅の狭いエタロンで見たような感じで、後者はまるで透過波長幅の悪いエタロンで見たような模様に酷似しています。シーシングの良さ悪さでボケ具合が変わるのだけで説明するのはちょっと無理があるくらいの違いになります。この違いを、いまだにうまく説明することができません。

もうちょっとだけあがいてみます。上のPST相当のSHG700の再現画像を、画像処理だけで無理やり明るいところを抑えて、さらに大きな構造を抑えることで、どこまで中心波長近辺の画像に迫れるかやってみました。等価透過波長幅は同じ1.001ÅでPST相当の広いままです。

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どうでしょうか?大分印象が変わったかと思います。白い淡いところも少し見えるようになるし、太陽表面も似たような感じにすることはできます。ただしこれ、PSTの実撮影画像でやろうとしたら全然できませんでした。PSTの実写画像ではこのようになってしまいます。
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理由は、画面内でエタロンの不均一性が出てしまっていて、特に中心が明るすぎるなど、画面内輝度差が目立ってしまい、うまくいかないのです。フラット化とかまでやってみましたが、それでもいまいちでした。なのでFWHMだけならなんとか誤魔化せるが、画像内の透過波長の平坦性は如何ともしがたく、むしろそちらの方が重要な気がしています。

でもまあいずれにせよ、「良いエタロンは良い」というのは代え難い事実っぽいので、次はPhoenixに走るのかもしれません。


まとめ

今回はSHG700で分光撮影したHα周りの画像を元に、これまで触ったエタロンで得た画像などで、いろいろ比較検討してみました。波長分解能が細かいと、それより粗い波長分解能で撮影した画像はそこそこ再現できるようです。今後のエタロン選択の指標になりそうです。

撮影用途に限るならまだしばらくは手持ちのPSTで誤魔化して使えないかなとも思ってましたが、やはりいいエタロンが欲しくなってしまいました。ただ、シーイングのいい時のC8のPST画像はそこまで不満ではないので、もう少し様子見です。だって新しいエタロンを手に入れたら、どうせすぐに改造の餌食になることは目に見えてるからです。

次回は、週末に撮影した画像を処理してみます。

M104の画像処理も終わり、補足も含めてブログ記事も書き終えたと思って安心していました。


次に撮影したヘルクレス座銀河団の画像をチェックしていたら、なんとM104をさらにもう1日ぶん追加で撮影していたことに気づきました。その日のシンチレーションが悪ければ無視していいのですが、こういう時に限ってなぜか有意にいいのが撮れてしまっているんですよね。


まずは画像のチェック

SubframeSelectorで個々の画像のFWHMを見てみます。L画像を3日間撮影しているので、それぞれL1、L2、L3とします。前回までで、L1がFWHM = 13pixelくらい、L2は20pixelくらいで、L1にL2から特に悪いものを除いたものを画像処理に回しました。L2の内、特に悪いものは20pixelよりもさらに悪く、残ったいいものでも20pixel程度だったので、L1とは明らかに差があるものを混ぜて処理してしまいました。それでも、実際インテグレートした画像のFWHMを測っても、そこまで有意な落ちがなかったので良しと判断しました。

FWHMを順に見ていきます。まずはL1です。133枚あって、前回までの画像処理では全て使いました。ここでは後に見たL3の基準に合わせた判断をしてみていて、FWHMが12以上、もしくは星の数が35以下なら弾くと判断しています。赤のx印はダメだという判断で、撮影したL1の133枚のうち40枚が残るという判断です。この判断は後で使います。_
SS_L1

L2は酷いもので、上の判断に従えば全滅です。これでも前回はBlinkで見た目判断でダメなものはすでに捨てていて、その残りの56枚でこの結果です。
SS_L2

最後はL3です。新たに発掘された4月12日に撮影したものですが、FWHMだけ見ても9以下のものもあり、L1と比べても全然いいのがわかります。途中時間が経つと悪くなってしまっているので、FWHMが12以上、もしくは、星の数が35以下は使わないという判断をここでしました。FWHMが12という理由は、前回の主にL1のFWHMが13程度だったので、それよりもいいものを使おうということ、星の数は、飛び抜けて数が少ないものを捨てようという意図です。L1にも同様の判断をしたものが、上の図の結果というわけです。L3は全部で139枚撮影して、そのうち24枚除いた115枚を採用しています。
SS


L1とL3の画像で比較

L2は論外なので使わないとして、まずはL1を全て(赤のxは無視して)使った場合と、L3を基準内で使った場合を比較します。それぞれWBPPでインテグレートしてできたL画像に、ABEの4次とDBEをかけて、BXTのCorrect onlyをかけ、その後BXTの星の縮小を0.5、ハロは0、PSFはオートで、背景は1.0をかけます。2枚ともインテグレート後も全て同じ条件で処理しています。

できた2枚の画像を前回締めしたハッブルの画像とほぼ同じ位置で切り取り、重ねてGIF画像で切り替えて見えるようにしてみました。
L1

違いがわかりますでしょうか?ぱっと見どこが違うかわかりにくいかもしれませんが、じっと見てるとモヤっとしてるか、星になっているかなど、違いが見えてくると思います。恒星が大きく見えるのがL1、小さく見えるのがL3です。BXTを同様にかけても、出来上がりの恒星の大きさは元の恒星の大きさに依るということがまずわかります。

上の画像だとちょっとわかりにくかもしれないので、L1でBXTに拾われなくて、L3でBXTに拾われたと思われる恒星を拾ってみました。
L3_marked
もしかしたら取りこぼしているものもあるかもしれませんし、判断が難しいものもありましたが、とりあえず24個と少なくとも無視できないくらいの数の違いがあります。

これらは最終処理で見える星として生き残るものです。一方、モヤモヤしていてまだBXTで取りこぼしてしまっているものも多数あることもわかります。これらは最終処理では背景に埋もれてしまい、星として見えることはないですし、モヤモヤも背景をある程度明るくしないとわからないので、実質的には表には出てこないでしょう。それでも、どれだけシンチレーションがいい日に撮影したとしても、BXTを使う限り、その閾値の上下で星として生き残るか無視されてしまうかが決まってしまうのかという問題は、今のところ避けることはできないようです。かといって、BXTを使わなければ、さらに多くの星が星として成り立たずに背景に埋もれてしまうので、今の所BXTを使う方向でいくほうが有利なのかと思います。

いずれにせよシンチレーションでBXTの有効範囲が大きく変わり、シンチレーションがいいほどより多くの恒星を救えることがわかりました。

一方、銀河本体はというと、あまり目に見えては改善しているように見えませんが、それでも細かいところを見てみると少なくとも何か改善はあるように見えます。


L3画像に同基準のL1画像を加えてみる

次に興味があるのが、L1にL3と同じ採用基準でいいと判断した画像を、L3画像に加えてインテグレートしたものを考えてみます。せっかく撮影した画像をできるだけ使いたいというもったいない精神です。

枚数は元のL3が115枚で、同条件で採用されたL1が40枚です。枚数が(115 + 40) /  115 = 1.38倍に増えたので、S/Nは√1.38 = 1.16倍くらいよくなるはずです。

インテグレーション直後の画像でPIのScript -> Image Analysis -> SNRView (PI上にロードしてある画像のS/Nを一度に評価してくれる)比較してみると、L3のみのS/Nが41.24dB、L3+L1のS/Nが42.65dBでその差は1.41dB = 1.176倍になり、ほぼ枚数増加で期待されるS/Nの増加となっていることがわかります。

これで気を良くしたので、恒星の数も増えると期待して、改めてL3だけの画像と、L3+L1の画像を同様にGIFで比較してみます。
L3_vs_L1L3

こちらはさらに変化がわかりにくいですね。なのでこれも同様に、変化のあった恒星を丸で囲みました。非常に面白い結果です。まず、青丸がL3+L1でBXTに恒星として認識されずL3のみのときにBXTで認識されたと思われる恒星です。数を数えると12個もあります。黄色の丸は逆にL3+L1の方がBXTで救い取られている恒星ですが、こちらの方が数が圧倒的に少ないです。撮影枚数の少ないL3だけの方が、恒星に関してはより分解能が出ているということで、S/Nとは逆転現象が起きてしまっています。
L3_vs_L1L3_marked

ちなみに紫色の丸はL3とL3+L1で位置がずれてしまっているものです。BXTで何らかの認識はされたのですが、補正が必ずしもうまくいっていないということでしょうか。どちらの位置があっているかはわからないですが、そもそもたまたま両画像で星の一致しているからといって、必ずしもその位置が正しいかどうかはわかりません。元々相当暗くて淡くて広がってしまっている星です。シンチレーションで星の位置がぶれていたり、インテグレートする時に画像を歪ませていることもありするので、この結果だけでBXTに問題があるというのは早計でしょう。これらのことについては、別途きちんと定量的な評価をすべきかと思います。


S/Nと分解能の関係は?

さて、このS/Nと恒星の分解能について少し考えてみます。私は最初単純に枚数が多いL3+L1の方がS/Nもよくなり、分解能も良くなると思い込んでいました。S/Nは数値的にもほぼ理論に従いましたが、分解能に関してはL1を加えた枚数が多い方が悪くなってしまっているようです。

このことについては、ラッキーイメージ的な解釈である程度納得することができました。L3に加えたL1画像は、基準が同じといってもL3と比べたら、L3の中でもかなり悪い画像に相当するものなのかと思います。ここでいう悪いというのは、FWHMが12に近い大きなもので、星の数も少ない方という意味です。たとえ枚数が少なくても、いい画像のみを集めて使うラッキーイメージと似たことが起こったと思うと、S/N(明るい信号部分と暗いノイズ部分の比)は悪くても、明るいところの分解能は得をするということでしょうか。

こう考えると、S/Nと分解能は結構独立で、別個のパラメータと考えた方が良さそうです。今回はL3をFWHMが12以下で区切って使っていますが、銀河部分をメインに考えるとS/Nは十分取れているので、もっと枚数を減らしても良いのではと考えることもできます。FWHMの基準を厳しくしたほうが、元々の目的のM104の内部の構造を出すという目的からは、正しいのではないかと推測できるわけです。

でもこれをどこまで攻めてもいいのか?S/Nをどこまで落としてもいいのかの基準がよくわからないので、判断が難しいです。例えばL3画像でFWHMを10以下として、枚数は半分程度に減ってしまうかもしれませんが、実際に試して画像処理までしてみるのは価値があるかもしれません。

と、ここまで記事を書いて疑問に思ったので、焦らずに疑問はできるだけ解決するということで、実際に試してみました。条件はSubframeSelectorでL3画像のうちをFWHM10以下、かつ星の数が50以上のものを採用するとしました。枚数的にはFWHM12以下、かつ星の数が35以上だったときに115/139枚だったのが、44/139枚と、3分の1強くらいになりました。これで全く同じ条件でWBPPをかけインテグレーション直後でまずはS/Nを測定してみると、115枚だった時が上でも示しましたが41.24dBで、さらに条件を厳しくした44枚の方が37.57dBでした。115枚と44枚から計算したS/Nの改善比はsqrt(115/44) = 1.62です。一方インテグレーションした画像の実測値での比は41.24 - 37.57 [dB] = 3.67 [dB] = 10 ^ (3.67 / 20) = 1.53となるので、1.62から少しだけずれますが、まあ誤差の範囲内で一致してるといっていいでしょう。

では同様にL3で115枚使った時と、44枚使った時を、GIFアニメで比較してみます。
L3_115_L3_44
S/Nで高々1.5倍程度の違いなのに、大きく違って見えます。違いを挙げてみると、
  1. 115枚の方が、恒星が大きく見えて、44枚の方は恒星が小さく見える。
  2. 44枚の方が背景がノイジーで荒れている。
  3. 44枚の方はBXTで救いきれていない、取りこぼしている恒星が多い。
  4. 銀河本体の評価は難しく、一見44枚の方が細かいところまで出ている気もするが、ノイジーなだけの気もする。
1. 恒星の肥大に関しては、FWHMが小さい44枚の方が(同じパラメータの)BXTをかけた後でも小さくでるので、FWHMだけで判断してしまっていいでしょう。やはりラッキーイメージ的なFWHMが小さいものを選ぶのは、恒星の鋭さでは結果的にも有利です。

2. 見かけの背景の荒れ具合はどこまで炙り出したかだけの問題なので、背景が荒れ荒れに見えるのは気にしないでください。同じS/Nの画像でも強炙り出しすれば荒れて「見えて」しまいます。

3. それよりもここで重要なのは、暗くて淡い恒星の出具合が全く違ってしまっていることです。明るい恒星は元々S/Nが高いので、2枚の画像であまり差はないですが、暗い恒星はS/Nが低いのでNの影響をより大きく受けます。

例えば、115枚インテグレーションした画像の中で、BXTでギリギリ生き残った星のS/Nをインテグレーション直後の画像で測定すると (実際は淡い星の範囲を決めるのが難しいので測定もなかなか難しいのですが)、少なくとも2から3くらいはあります。一方、115枚画像で生き残った同じ星と同じ位置の、44枚の画像で生き残らなかった星のS/Nを測定すると1から1.5程度で、有意に差があります。115枚の時に2とか3あったS/Nが、枚数が44枚と少なくなりノイズが1.5倍ほど上がり、S/Nも1.5分の1ほどになり、恒星として認識されなくなったということかと思います。

このように、高々1.5倍程度のわずかなノイズの増加が、淡い部分には決定的に効いてしまうわけです。

4. 恒星のFWHMが小さいと背景の分解能もより出ているはずですが、いかんせんノイズのNが悪くて判断がつきにくく、全体としては44枚の方が不利と言っていいでしょう。


こうなるともう、ラッキーイメージで枚数を制限するか、S/Nを稼ぐために多少FWMHは悪くても枚数を増やすかは、完全にトレードオフですね。恒星の鋭さを取るか、淡い恒星が残るのを取るかです。銀河本体も同様にトレードオフかと思います。要するにその場その場に置いて、どちらを取る方が有利か判断して決めるべきなのかと思います。しかもインテグレーションまでしての判断なので、手間も時間もかかり、きちんとやろうとするとかなり大変になりそうです。

それよりも、これ以上の劇的な改善を考えるとすると、
  • 同等のシンチレーションのいい日に、より多くの枚数を撮影するか
  • 同等のシンチレーションのいい日に、より暗い空で撮影するか
だと思います。今のノイズは光害によるスカイノイズが支配的なので、このスカイノイズを改善する方法を考えるべきだということです。言い換えると、ここまで来てやっと自宅の光害が問題になるレベルに辿り着き、やっと暗い場所で撮影するべきかどうかの議論する価値が出てきたということなのかと思います。これまでは基本自宅撮影が多くて、今回のM104は系外銀河で背景を気にしなければ銀河本体はそこそこ明るいので、自宅でも十分だと思っていました。今のところ自宅だと厳しいと思ったのが、
  • M81を撮影した時のIFN
  • Sh2-240やダイオウイカなどのものすごく淡い天体を撮影した時
ですが、今回の
  • 系外銀河周りの恒星を出したい時
が新たに加わり、3つになりました。

まだ暗黒帯とかにあまり手を出していないので、ここら辺もいずれ暗いところを求めることになるかと思いますが、徐々に自宅撮影の限界が見えてきたということだと思います。今のところ頻繁に遠征に行くのは時間的に厳しいので、貴重な遠征の機会を逃さないように、あらかじめ遠征時のターゲットをはっきり決めて置くことがこれからの課題でしょうか。


画像処理

FWHMを12ピクセルで切ったL3のみ44枚でインテグレートしたL画像と、前回までの画像処理で使ったRGB画像を使って、画像処理をしてみます。

比較しやすくするため、ハッブル、今回、前回の順で並べます。
STScI-01EVT8YHAGM2WGQTV3DGKRFZ7Q

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Image07_rot5_Hubble

恒星のシャープさは上がりました。救い上げた星の数は増えましたが、一部以前残っていた星が新たに消えてしまっているものもあります。でも、ハッブルの画像みたいに微恒星が一面に星が散らばっている様子からは程遠いので、ここら辺が次の課題でしょうか。

銀河本体は一部前回のほうが良かったところもあるように見えますが、基本的には今回の方が細部も出ていて、明らかに良くなっています。ハッブルの画像に多少なりとも近づいているのかと思います。どうやら改めて全画像処理工程をほぼやり直した甲斐はあったようです。

全体像も更新です。
Image07_middle

Image07_ABE1_crop_ABE4_DBE_BXTc_SPCC_BXT_LRGB_BXT_back_GHSx3_low
  • 撮影日: 2024年4月10日20時27分-4月11日3時18分、4月12日21時49分-4月13日0時46分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 115枚、R: 59枚、G: 51枚、B: 64枚、総露光時間289分 =4時間49分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が204枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120で露光時間 LRGB: 0.01秒でそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop


まとめ

今回いろいろ試したことで、FWHMで分解能を評価できる手法はある程度確立できたのかと思います。やはりシンチレーションの影響は大きく、まずはいい日を選ぶことかと思います。その一方、淡い部分はS/Nの、特にノイズが大きく関係するので、全体の仕上がりとしてはFWFMだけでなく、枚数をある程度確保するか、スカイノイズを回避する必要があるのかと思います。

長かったですが、M104はとりあえずこれで完了とします。次回M104に挑戦するときは、暗い場所に行って撮影し、恒星がどこまで出るのか挑戦してみたいと思います。



前回の記事のM104撮影に際し、少し検討したことがあるので、メモがてら書いておきます。大したことではなく、ホントに補足程度です。



恒星の飽和

今回のM104の撮影では、2023年5月と2024年4月で、機材や設定はほぼ同じで、露光時間だけ5分から1分に縮めました。5分露光では多くの星が飽和していて、1分間にしてもそこそこの数の恒星が飽和していることを前回示しました。

いい機会なので恒星の飽和について少し考えてみました。これは恒星周りを3次元でプロットしてみるとよくわかります。1分露光のL画像のストレッチ前のリニアの時のものを一部を拡大しています。

Image28_Preview05_3dplot
全角画像の左下の端にかかっている3つの明るい星。

3つ並んだ星はどれも豪快にてっぺんが平らになっていて飽和していますが、階調がどれくらい足りていないのかはこれだけだと良くわかりません。そこで、画面の中でちょうどギリギリ飽和するくらいのある星をStellariumで調べてみると12.5等級とのことでした。次に、画面の中で最も明るい星の等級を同じくStellariumで調べてみると「HD109875」で7.65等級とのことでした。12.5 - 7.65 = 4.75等級 = 87.1倍となりました。ということは、今回の画像ではまだ明るさを100分の1近くにしなければ、全ての星の飽和を無くすことができないのがわかります。ここではASI294MM Proのbin1設定で見積もっているのでダイナミックレンジは12bitと狭いですが、たとえ16bitのカメラを持ってきても4bit = 16倍稼げるだけで、100分の1という差は賄いきれません。

露光時間で考えてみます。今回は1分露光なので、同じカメラで同じgainだとすると60s / 90 = 0.67秒程度の短い露光時間にする必要があります。今回の撮影時のカメラのgainが120なので、たとえgainを0にしたとしても-12dB = 0.25倍程度です。この場合は露光時間を2.7秒程度まで伸ばせますが、それでも全く現実的でないほど短い露光時間です。これだと淡いところは読み出しノイズに埋もれてしまう可能性が高いです。

画像に写る星の明るさは、星がどれだけ鋭く写るかにも依るので、鏡筒の口径、スポットダイアグラム、シンチレーション、風や地面振動による鏡筒の揺れ具合、それらを積分する露光時間にも依ります。もちろん性能が良くなればより星像は鋭くなるので条件は厳しくなり、要求されるダイナミックレンジは大きく、露光時間はより短くなります。

より一般的には、飽和しないための露光時間は画角に写った星のうち「一番明るい星」に依ります。Stellariumで調べてみましたが、今回撮影したものと同じ画角だと10等星は撮影位置を選べば避けることができそうですが、11等星を画角の中に一つも含まないというのはかなり難しそうです。さらに対象天体は中心に持ってくることが多いので、任意の場所を選べるわけでもありません。10等星は画角内に入ってくる確率がそこそこあるとすると、計算すると6.9秒程度まで露光時間を短くしなければならなくなり、やはり現実的でなくなってきます。

ものすごいラフな見積もりですが、恒星の飽和を完全に避け、かつ淡い天体を写すというのはかなり難しいということがわかるかと思います。こうなってくると、どうしても飽和を避けたい場合は、明るい恒星のみを写す超短時間露光を別撮りして、画像処理時にHDR合成することでしょうか。

というわけで、今後も恒星の飽和はあまり気にすることをせずに、撮影を続けたいと思います。


シンチレーションについて

今回L画像は2024年の4月1日と4月10日の夜に撮影しています。1枚撮りのRAW画像を切り取って、オートストレッチしたものを両日比べてみます。高度が同じ(31度)になるように時間を選んでいます。

1: 202/4/2 00:05:
01_good_1min_2024-04-02_00-05-46_M 104_L_-10.00C_60.00s_0059

2: 202/4/11 01:25 00:05:
02_bad_1min_2024-04-11_01-25-11_M 104_L_-10.50C_60.00s_0000

パッと見で、明らかに4/2の方がシンチレーションがいいことがわかります。

3: もう一つ、2023年5月11日に5分露光で撮影したものです。露光時間が長いので微恒星まで写り込んでいて、一見こちらの方が良さそうに見えますが、星像の大きさだけをよく見比べると今年の4/2の方が小さくてよく見えます。
03_middle_5min__2023_05_11_23_35_26_LIGHT_L_10_00C_300s_G120

実際にPIのFWHMEccentrisityツール(gausiaan, 0.5)で径を測定すると
  1. 12.51px
  2. 23.22px
  3. 13.64px
となり、画像を見た印象とほぼ一致しているのかと思います。

でも、いくらbin1での撮影といえ、そもそも12.5pxでもかなり大きい気がします。SCA260のスポットダイアグラムを見てみます。

sca260_2

いくつか数字があるのでわかりにくいのですが、図はどれも一辺200μmです。右下の一番大きなスポットの長辺が30umくらいでしょうか?これに相当する数値はField 4のGEO radius 15.53umのようです。radiusで半径なので2倍して31.06umでほぼ一致しています。

ではRMS radiusとは何かというと、光の強度分布をガウシアンだと仮定すると、標準偏差σがRMS radiusと一致します。σとFWHMの関係は、計算するとFWHM = 2.36σとなるので、例えばField 1のFWHMは1.916 x 2.36 = 4.50umとなります。

今回はASI294MM Proでセンサーの長辺が19.2mm、短辺が13.1mmなので、四隅までの距離は中心からsqrt(19.2^2+13.1^2) / 2 = 11.6mmとなり、Field 1と2の真ん中くらいでしょうか。2.51umと1.92umの真ん中を取り、RMS radiusを2.25umとしましょう。FWHMは2.25 x 2.36= 5.23umです。

今回のセンサーはASI294MM Proをbin1で使っているので、1pxあたり2.31umです。

ここまでの見積もりが正しいとすると、FWHMをピクセルで表すと、SCA260の中心付近では5.23[um] / 2.31[um/px] = 2.26[px]となりかなり小さい値が見込まれます。これとシンチレーションが良かった4月2日の12.51pxと比べると、実測は5倍以上大きいことになります。スポットダイアグラムなんて全然意味がないくらいに大きな星像になっているというわけです。

では今回撮影したM104の星像が、他のよく撮れている方の画像と比べて大きすぎるかというと、そんなことはなくて、ある意味一般的な恒星の大きさと言えるかと思います。そもそも他と比べてそこまで星像が肥大するようなら、M104本体の分解能もそこまで出ないはずです。

では、何がおかしいのでしょうか?

これまでこんなことはあまり定量的に見積もってこなかったので、冷静に考えてみました。まず気づいたのは、焦点距離に関わらず高性能な鏡筒のスポットダイアグラムも中心像ってそこまで大きく変わらないことです。例えば焦点距離300mmのFRA300 Proのスポットダイアグラムの数値を見ると、RMS radiusで中心では1.961umとSCAとほとんど同じ大きさです。これだけを信じると写る恒星の大きさは同じになるはずです。じゃあ焦点距離が長い鏡筒で写した恒星がそこまで小さくなるかというと、小さい系外銀河の画像などを見てもすぐにわかりますが、現実にはそんなことはなく、一つ一つの恒星の大きさは大きくなってしまい、星の密度も全然小さくなります。スポットダイアグラムでは同じ径なのに、焦点距離が違うと、なぜ撮影した画像ではこんなに違うのかという疑問に置き換えられたということです。

ここまで考えると答えはすぐに出てきて、焦点距離が長いので、同じ大きさの素子のカメラだとするとより拡大して見ていることになり、揺れなどの影響がより効いてくるということです。

揺れを見積もってみます。PHD2の出力を見てみると、角度揺れはRMSで概ね2秒角以内には収まっているようです。焦点距離1300mmとセンサーサイズ19.2mm x 13.1mmから、このサイトで計算すると画角は0.85x0.578度とわかるので、ピクセル数(1binであることに注意して)8288x5644でそれぞれの辺で割ると、1ピクセルあたり0.36秒角とわかります。そのため、PHD2から見積もった角度揺れで5ピクセルくらいは揺れていることになるので、スポットダイアグラムから見積もった2.26ピクセルの倍くらいにはなっています。実際にはこの2倍の揺れの周りに、元のスポットダイアグラムで表されるガウス分布が散らばるとすると、周りに片側0.5倍、両側で1倍程度の広がりを持ってもおかしくはないでしょう。これで3.3倍程度で、実像の5倍までまだ少し足りませんが、ある程度の説明はできそうで、少なくとも角度揺れだけでスポットダイアグラムで期待される径は、全然出るわけがないことがわかります。

ここで、オートフォーカス時の短時間のHFRを見てみます。2023年5月11日のL画像の撮影途中で合わせた時の画像が残っていました。
キャプチャ

この時のフォーカス位置でのHFRは7を少し切るくらいです。HFRはHalf Flux Radiusの略で半径、HFD(Half Flux Diameter)と呼ばれるものもあって、こちらは直径です。FWHMはFull Widthで直径なので、HFDと比較すべきなので、HFRの2倍と比較するとしましょう。でもFWHMとHFDは定義が違っていて、FWHMは最大値の「ある一点」を元に半分の値を径とするもの、FHDは定義によると「統計的に」中心を求めていることが大きな違いです。HFDの方が実測のような崩れた星像にも強いことがわかります。でも理想的なガウシアン分布に対してはいずれも2.36σになることがわかっているので、ここでは簡単のため同じものとして扱います。

2023年5月11日のL画像の撮影ではほぼFWHM =~ 2倍の HFR = 14を切るくらいになるので、測定自身はFWHMもHFRも、共にうまくできているようです。でもここでAF時のグラフを見てみると、フォーカスポイントの真ん中あたりにおいては、フィッティング曲線が実測値よりもかなり下に来ていることがわかります。そうです、なんらかの理由で径が一定値以下に下がることはないということを示しているのです。

この「なんらかの理由」が何なのかは、今のところ不明です。鏡筒の光学性能そのものの可能性もありますし、シーイングの可能性もありますし、シーイングや筒内対流を含むシンチレーションの可能性もありますし、地面の揺れ、風の影響などもあるかと思います。でも確実に2つのことが言えます。まず一つは、日によってFWHMが違っているので、シンチレーションに制限されている可能性が高いということ。もう一つは、短時間測定のHFRでもほぼ同様の結果なので、長時間積分の影響やガイドの影響はほとんど効いていないことです。

いずれにせよ、AF測定でここまではっきり制限が見えているので、逆に言い換えると、ここを見ながら底がフィッティング曲線に近づくような改善を目指していけばいいことになります。

ちなみに、ε130DのAF時の結果が以下になります。実測とフィッティング曲線がほとんど一致しています。でもこれは必ずしもε130Dの性能がいいというわけではなくて、単純に焦点距離が短いから、シンチレーションなどの揺れが効きにくいというだけだと思われます。
AF_good

SCA260でもこれくらい一致が見られるようなら、もっと星像は改善するはずです。日によって変わるシンチレーションや風の影響が小さい日を選んで撮影すること、赤道儀に弱いところがないか見直す、赤道儀をさらに強固なものにするなどでしょうか。性能のいいレデューサやバローを使って焦点距離を変えることで、鏡筒の性能か周りの環境かを切り分けることができるかもしれません。


まとめ

M104の撮影で気づいたことをまとめました。細かいことでしたが、自分的にはこれまであまり考えてこなかったことなので、面白かったです。

実は入院中で結構時間はあって、多少細かいことまで考える余裕がありました。このようにじっくり考えるのは結構楽しいのですが、実際にはなかなか時間が取れてこれませんでした。今後も焦って進めるのではなく、少し余裕を持って考える時間を確保するのが大事かなと今回改めて思いました。

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