ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:FC-76

3連休ですが、富山は3日とも天気は駄目の予報。初日の今日、朝起きても雨が降っていて太陽は駄目そうでした。でも昼近くになってきて徐々に青空の範囲が広がってきました。北と東の方はかなり曇っているのに、南側から天頂向けてかなり晴れてきています。ガストでモーニングを食べてのんびりしていたのですが、天気を見て急遽帰宅して、機材の準備を始めました。


2時間くらいの昼間の晴れ

IMG_2147

前回の撮影が10月12日だったので、3週間ぶりくらいになり、結構久しぶりです。Hαでまずは調子を見ます。コリメーターレンズもカメラレンズも少しずれていたので調整します。鏡筒の焦点はかなりズレていました。SharpCapのバージョンを上げたら、起動時に立ち上がるはずの連続撮影のためのSHGスクリプトが認識されなくなってしまいました。SHGスクリプトの新バージョンも出ていたのでそれも試したのですがダメ、SharpCapのバージョンを戻してもダメで、結局SharpCapもSHGスクリプトも旧バージョンに戻してやっと認識されました。時間が惜しいのでとりあえず撮影を開始しました。スクリプトが認識されない問題は後から検証します。

赤道儀の極軸があまり合っていなかったようで、繰り返し撮影の間に結構な速さで太陽位置が左にずれていきます。確かに赤道儀が少し西向きになっている様子なので、赤道儀の水平回転ねじで合計3回転ほど回して東方向に回転し、その後は10ショット撮るくらいではズレがわからなくなるくらいになりました。

Hαを18ショット撮って安定に撮影できることを確認してから、次の波長に移ったのですが、その後すぐに曇ってきてしまい、機材を片付けた直後に雨が降り出しました。正午を中心に2時間くらい晴れていましたが、撮影にかけることができた時間は1時間弱位だったでしょうか。


Hα画像

今日の撮影結果はHαだけです。いつも通りモノクロ画像から順に、ドップラーシフト画像まで載せておきます。

撮影時間に間が空いてしまうと表面の模様が変わってしまい平均化されて分解能が出にくくなるののは分かっているのですが、今回は短時間のうちに枚数を撮ったので、スタックした方が解像度が出ました。撮影した18枚のうち、雲が流れていないなど使い物になる9枚をスタックしてみました。

今回、画像処理は
  1. JSol'ex1の1枚撮りのオートストレッチ
  2. AS!4でスタック、Registax6で解像度出し
  3. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度と炙り出し
  4. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度出し、PixInsightのSolarToolsで炙り出し、
の4つを比較してみました。1枚撮りよりは、スタックした方がいずれも分解能が出ます。2のRegistaxは分解能は出るのですが、ダークフィラメントの階調が消えてしまうようなので諦めました。3と4はどちらも良かったですが、カラー化することも考えるとSolarToolsのカラー化機能が使える4の方が良さそうです。その後、4をPixInsightのMultiscale Linear Transformでノイズを少し落として、今回のモノクロ画像の仕上げとしました。結局カラー画像は使わなかったので、3を使っても良かったのかもしれません。

1枚目のモノクロのみスタックしたものを示します。

IP_aligned_lapl2_ap5296_IP_PI_MLT_LHE2_cut

2枚目以降はスタックなしの1枚画像です。
12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_negative_0_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_autostretch_15_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_card_0_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_mix_0_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_doppler

今回ちょっとだけ面白かったのは、P角が25度近くとかなり大きく、軸が相当傾いていたことです。一般的な太陽観測サイトは、例えばよく参照する「宇宙天気ニュース」でもP角補正をしていないので、黒点の位置がかなりズレて見てしまい、最初間違えて上下フリップをしてしまったのではないかと勘違いしたくらいでした。黒点位置があっているかどうかはJSol’Exの「active regeon」画像を見るとわかります。普段出さない画像ですが、向きなど間違えて撮影していないかの確認に使っています。

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_activeregions_15_00

他にも普段出していない画像があって、プロミネンス画像と、そのドップラーシフトというのがあります。いい機会なので、今回載せておきます。
12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_protus_0_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_doppler-eclipse

毎回示すカラー画像は、JSol'Exでモノクロ画像を単にカラー化した「colorized」というものではなく、実は「mix」という出力ファイルで、カラー化された太陽表面に、上のあぶりだされたプロミネンスも合成して疑似カラー化したものを載せるようにしています。なので、ブログに載せてあるカラー画像だけはプロミネンスがよく見えています。他の画像はプロミネンスがほとんど見えていません。ただし、今回のようにモノクロをスタックした場合は、その過程でプロミネンスもあぶりだしているので、その場合はプロミネンスもよく見えるようになっています。

うーん、記録の記事だとあまり書くことがないですね。もう少し天気がいい時間が確保できれば、また劇的に進む予定です。それまではおとなしくいい天気になるのをゆっくり待つことにします。


SHG700での太陽分光撮影ですが、安定に運用できることはほぼわかってきたので、もう少し性能アップを図りたいと思います。そのための下計算をしてみます。


改善パラメータ

太陽の分光撮影で、結果として改善ていきたいのは
  • より細かい波長分解能
  • より細かい空間分解能
の2点です。これらを改善するために分光撮影の構成機器である、1. 鏡筒、2. カメラ、3. 分光器の性能を考えていきます。

1. 望遠鏡に関しては
  • 口径
  • 焦点距離
がパラメータになります。望遠鏡によって収差も当然ありますが、簡単のためここでは考えないこととします。

2. カメラに関しては
  • ピクセルサイズ
が一番効くパラメータです。実際にはセンサーサイズやフレームレートなども関係してきますが、分解脳にはやはりどれだけ細かく写せるかというピクセル自身のサイズが重要です。

3. 分光器に関しては
  • スリット幅
  • 回折格子の溝の数の密度
  • コリメートレンズの焦点距離
  • カメラレンズの焦点距離
が大きく効いてくるでしょうか。

波長分解能についての計算はastrosurfのSol'ExのTheoryのページがわかりやすいでしょう。それでも空間分解能まで含めて自分で計算するのは結構大変なので、Ken Harrison氏が作ったエクセルファイル「SIMSPEC SHG」を使うといいでしょう。最新は2023年6月のversion V1.5bのようです。下の画像は、自分の環境用にSHG700、FC-76、G3M678Mを適用して計算したものです。
SimSpec SHG V1_5b_20250913_SHG700_FC76_G3M678M_cut

ここで注目すべき値は、
  • 波長分解能: Dispersion (r): 0.091 Å/pixel
  • 空間分解能: Spatial (best) resolution: 2.2 arcsec
で、各種パラメータをいじって、これら2つの値を改善することを目標にします。


波長分解能の改善の難しさ

表の値で波長分解能に関するところを見ていくと、よく似た値としてナイキスト周波数も考えたEstimated (best) bandwidthというのがあります。ただし、Hα回りの輝度グラフを書くと、ピクセルごとに輝度に有意な差が見えたために、Dispersionの方で考えることにしました。ここで計算された0.091 Å/pixelは、実際のHα線の撮影動画をJSol'Exで実測した値と一致しています。
スクリーンショット 2025-07-05 101928


でも現実的には、この波長分解能のを改善しようとするのは結構大変で、分光器のカメラレンズの焦点距離を長くするか、回折格子の密度を増やすか、CMOSカメラのピクセルサイズを細かくするくらいしか手がありません。前者2つはSHG700を大幅にてこ入れする必要がありますし、ピクセルサイズはすでに最小に近い部類のG3M678Mを使っているため、これも難しいです。

もしやろうとするなら、SHG700の秀逸なアセンブル(コンパクトさ)を諦めてカメラレンズの焦点距離を伸ばすのが最も簡単かと思いますが、大幅改造になるので波長分解能の改善に関しては今回は諦めることとして、将来の課題としておきたいと思います。実際には撮影して楽しむレベルでは0.091 Å/pixelという値はもう十分すぎる性能なので、ここを改善する場合何か明確な動機を持っておいた方がいいでしょう。


空間分解能の改善の可能性

一方、空間分解脳に関してはまだまだ改善の余地がありそうです。例えば、上記設定の鏡筒の口径を76mmから120mmに変えると、
  • 空間分解能は2.2 arcsecから1.4 arcsecに改善
されます。手持ちの鏡筒だとTSA120を使うことができます。ですが、その場合焦点距離が900mmになるので、太陽像が大きくなってしまいます。ここで浮上する問題点は
  • スリットの長さが短すぎて太陽像がはみ出してしまう
  • CMOSカメラのセンサーサイズが小さすぎて太陽像がはみ出してしまう
ということです。実際計算すると、太陽サイズの84.8%しか撮影できないため、このままだとモザイク撮影の必要が出てきます。もちろんモザイク画像でも、太陽の縁がある程度映っている限り可能ですが、何枚かスタックすることも考えるとかなり面倒です。

このサイズ拡大問題はそんなに単純ではなくて、スリットサイズやカメラセンサーサイズの拡大を含めて、トータル設計で改善する必要があります。

これに関して、最近MLastroから10mm長のスリットの発表がありました。標準の7mmが700mmの焦点距離まで対応しているので、ざっくりですが焦点距離を1000mm程度まで増やすことができます。これはすでに発注してあるので、そのうち自宅に届くでしょう。

たとえスリット長だけを伸ばしても、カメラセンサーサイズの制限から、それでも太陽像の93.0%までしか一度に入らない計算になります。実際は余裕を見て太陽サイズの120%程度の広さを撮影したいので、カメラセンサーサイズを大きくする必要があります。

焦点距離1000mm程度までなら、IMX183が小さなピクセルサイズと適したセンサーサイズを兼ね備えた候補なのですが、値段的にカメラをぱっと買うのは大変なので、とりあえずは手持ちのASI294MM Proのbin1を試してみようと思っています。ただし、bin1撮影はこれまでの経験でジャジャ馬っぽいことがわかっているのと、フレームレートが出にくい可能性があるので、どうしようもなければ新規にカメラを購入することになるのかと思います。

スリットとセンサーサイズは計算上に出てきてすぐにわかることなのですが、実際にこれらを改善しようとすると、実は問題はこれだけにとどまりません。例えば口径が76mmから120mmに増えると、光量が約2.5倍に増えます。ちょうど焦点位置に置かれるスリットがその光量増加に耐えられるのか、必要なら別途フィルターを追加するなどの処置が必要になるかもしれません。

それでも空間分解能で1.5倍の改善というのは、目に見えてわかる劇的な改善なので、ぜひ試してみたいと思っています。TSA-120とASI294MM Proを適用した改善後の計算結果を示しておきます。

SimSpec SHG V1_5b_20250913_SHG700_TSA120_ASI294MM_cut

カメラを変えたことによりピクセルサイズが若干大きくなって、波長分解能が少し悪くなってしまっています。それでも0.105Å/pixel程度はあるので、十分でしょう。

追記: その後、TSA-120にアップグレードし、さらにカメラをASI294MM Proにして撮影してみました。



Sol'Exとの比較

ここで少し、SHG700とSol'Exの違いについて考えてみたいと思います。数値的に光学性能だけ見れば、SHG700よりもSol'Exの方が優れていることが多いのがわかります。例えば、SHG700はコリメートレンズ、カメラレンズともに焦点距離72mmですが、Sol'Exはコリメートレンズが80mm、カメラレンズが125mmと長いものになっています。例えば今の自分のFC-76とG3M678MにSol'Exを取り付けてみます。

SimSpec SHG V1_5b_Solex_FC76_G3M678M_cut


計算結果から分かりますが、
  • 波長分解能は0.091 Å/pixelから0.052 Å/pixel
と劇的に改善することがわかります。これだけみると、Sol'Exの方が得な気がします。SHG700はなぜ一見改悪とも取れる、焦点距離を短くする方向に向ったのでしょうか?

これを考察する前に、まずはネットに上がっているSol'ExとSHG700の太陽画像の平均らしきところを比べてみましょう。明らかにわかるのですが、SHG700の方が綺麗に出ていることは誰もが思うことでしょう。もちろん例外はありますが、傾向としては明らかだと思います。

ではなぜここまで差が出るのか?少し検証してみます。といっても私自身はSol'Exは持っていないので、かなり推測の部分も多くなると思いますが、そこら辺はご容赦ください。

まず大きく違うのが、SHG700でコリメートレンズとカメラレンズのピント合わせにマイクロメータを採用していることでしょうか。これまでの実際の撮影で、両レンズの位置をマイクロメーターの値を見ずにベストの位置を探って決定し、その後に確認でマイクロメーターを見ると、ほぼ毎回マイクロメーターの1目盛以内に収まります。付属のマイクロメーターの1目盛は、1回転で50目盛で0.5mm移動なので、10ミクロンの移動量に相当します。結局これくらいの精度での位置合わせが必要になるということなのですが、Sol'Exの標準の手動での移動ではどう足掻いてもこの精度を出すのは厳しいのかと思います。XでJia Cangさんがレンズの移動をネジ式に変えて、かなり綺麗に撮影できるようになっているので、やはりここは大きく効いているのかと思います。もう一つの、3つ目の波長選択のためのマイクロメーターは、あると便利ですが、実際にはある程度の波長幅を持って撮影するので、精度という意味では撮影画像のクオリティーにはそこまで効いていないのかと思います。

もう一つの違いがスリットです。Sol’Exのスリット幅も初期の10μmから現在は7μmと進化していますが、スリット幅自身が問題というわけではありません。ポイントはSHG700のスリットは合成石英製で、熱に強いものになっているところです。そのため、多少口径の大きい鏡筒でも問題なく使えることになります。MLastroのページによると口径100mm程度まではERFなどのフィルターなしで使用することができるとのことです。口径は空間分解能に直結するので、Sol’Exで大口径を使いにくというのは、やはり差が出るのかと思います。

結局ブログ記事にはしていませんが、今年も胎内の星まつりに少し参加していて、そこで太陽分光機材を出しているブースがありました。Sol'Exと、なんとSHG700も置いてあったのですが、聞いてみるとまだSHG700は届いたばかりで使っていないとのこと。でも話を聞いている限り、Sol'Exを使う限りはコリメートレンズとカメラレンズの精度に関してはあまり気を使っていないようでした。というよりも、Sol'Exだけを使っているとレンズ位置にそこまで精度がいるという認識にならないような印象を受けました。よく「Sol'Exは面白いけど難しい」とか「再現性よく撮影することができない」とか聞くのですが、機構的にレンズの位置合わせの精度が出ないことが最大の理由なのかと推測してます。でも簡単に改造できるのもSol'Exの利点の一つなので、Jia Cangさんのように、ネジ式にするだけでも相当改善するのかと思います。


日記

久しぶりのブログ記事です。お盆からずっとほぼ休みがないレベルで忙しくて、ここ一ヶ月で天文にかけることができたのは、胎内の星まつりにかなり無理して行ったことと、8月末の友人主催の観望会のお手伝いをしたことくらいです。休日もあるにはあったのですが、ほとんど書類書きに追われていて、ブログを書く時間さえ確保できませんでした。やっと懸念事項も解決しつつあり、この連休くらいから趣味に割ける時間が戻ってきました。

ブログ記事にできなかった胎内での話を少しだけ書いておきます。

今回の参加はあまり無理をせず、土曜の朝、比較的ゆっくり自宅を出て、昼頃に会場近くに到着しました。とりあえず胎内ロイヤルパークホテルのちょっと豪華なランチを食べ、その後のんびりと会場に向かいました。最近は太陽ばっかりで、そこまで欲しいものはないので、何か買うというよりはブースをゆっくり見て回りながら、店員さんや、知り合いの人たちと会話を楽しむのがメインでした。夜も少し星を見て、また次の日も忙しいので、あまり遅くならないうちに帰宅してしまいました。

星まつり会場では、太陽に関する講演があったので、たまたまお会いした仙台の木人さんと一緒にチケットを取って聞くことができました。透過波長幅を測る手段として分光について少しだけ講演内で話があり、SHG700にも触れられていました。講演者が直接使ったというよりは、知り合いが手に入れて試してみたとのことなのですが、今後日本でも様々な結果が出てくることでしょう。今後もっと分光に関しては盛り上がってもいいのかと思っていますが、ブースで何人かのショップ関係者に聞いたところの感触はあまり良くなくて、やはり撮影と撮影後の処理の大変さがあまり好まれないようで、ちょっと残念でした。

明日の日曜は京都の「星をもとめて」に参加します。今回はユニテックさんのブースにいる予定ですので、お気軽にお声かけください。


7月11日の連続波長シフトの記事のコメントでMakiさんから、Hαから波長をずらしてみると「Hαグレイン」というものが見えるかもしれないという情報がありました。今回はそれを発端にいろいろ試した話です。

Hαグレインとは?

Makiさんによると、太陽の下部の彩層にはたくさん『毛穴』みたいな穴があり、時により黒い『ゴマヒゲ』みたいなものが写るはずで、Hαから0.6Åほど短波長側で見え、3分から5分周期くらいで現れるとのことです。



このページの動画の±0.5~0.6Åの画像にもそれらしき『穴』がたくさん写っているとのことです。

興味が出たので、自分でも調べて見ました。天文学辞典によると
太陽の彩層に見られるネットワーク構造の内側にH𝛂線で観測される暗点。この暗点は、H𝛂線の中心波長から0.6Å程度だけ短波長側で観測されることから、音速が10 km s-1程度の彩層内を超音速で上昇する構造である。この暗点は、約3分の周期で強度が変化して現れたり消えたりする。この変化は、カルシウムのHK線で見える輝点の変動と同期している。光球下から発生した音波が彩層に伝播する際に衝撃波化し、この衝撃波によって彩層が加熱された結果としてHK線で輝点が観測されたと解釈されている。H𝛂グレインとカルシウム輝点の関係はまだよくわかっていない。
とのことです。他にもここに研究トピックスの形で、ここに学位論文のまとめの形で少し説明があります。「グレインという現象はまだ統一された定義があるわけではありませんが 、ここでは彩層の Hα 線のフィルターを通して観測した画像の中で、直径1∼2arcsec(1000km)ほどの黒い粒状の構造を指します。」とのことです。

今のFC-76とG3M678Mで空間分解能を計算すると、視直径31.47分(7月)の太陽が2780ピクセルで撮影されているので、シーイングなどを考えないものすごい単純計算で0.68秒/pixelくらいの分解能なので、うまくいくと数ピクセルの大きさの黒い点として見えることになりそうです。

残念ながら学位論文自身は電子化されていないようで、見つけることはできませんでしたが、学位論文の結果と思われるペーパーについては見つけることができました。ここにありますが、フリーアクセスのようなので興味のある方は読んでみるといいかと思います。

今回まずはHαのみで見てみますが、Ca II H線(3968.47Åで、3933.66ÅのCa II K (CaK) 線の近く)などとの相関も見られるということなので、いつか多波長の同時観測も視野に入れて複数台の機材を揃えれたらと思います。


本当に写っているのか?

最初に試したことが、7月11日の記事で示した画像で、0.091Å x 7ピクセル分 = +/-0.637Åずれたの2枚の画像の差分を取ってみることでした。模様はHα中心から対称に出ていて、その中でグレインが-0.6Åのみに出るのなら、それらしい点が写ってもおかしくないと思ったからです。差分画像をさらに輝度の高いところだけを強調してみると、確かにそれらしい点が写っています。
004_07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_autostretch_-7_00

わかりやすいように反転してみます。
004_07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_autostretch_-7_00_inv

わかりにくい場合はクリックして拡大してみると、細かい黒い点がたくさん残っているのがわかります。Hα中心から波長が長い側と短い側に、等間隔ずれたところを比較しているので、ドップラーシフトの差は出るかもしれませんが、基本的に正負の波長ずれに対して対称な模様となっているはずです。もしそこに差があると黒く出てくるということなので、このゴマのように見えるたくさんの黒い点は、少なくとも正負0.6Åずれたところで違いがあるということになります。

差分を見る前の、元の-0.6Å画像を下に示します。同じ黒い点の位置を見比べてみると、確かに黒い点があるのがわかります。
07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_autostretch_-6_00

でもこれが本当にグレインなのか、そもそもグレインがどれくらいの分布で広がっているのかよくわからないのと、長波長側の+0.6Åに写っているように見える黒い点もあることから、いまいち確証が持てません。


グレインの時間変動

次に考えたのが、グレインの特徴の3-5分周期で出たり消えたりしているのかどうか、調べてみようと思いました。

そこで試したのが、前回の記事のタイムラプス映像です。

先に記事にはしましたが、このタイムラプス映像は元々はジェットを撮る目的などではなく、グレインの時間変化を見たくて連続撮影を試したというわけです。ジェットがたまたま撮れていたので、特徴的なドップラーシフトでの見え方の違いを動画で見せたのはあくまでおまけでした。

動画化する途中でも、グレインがどう見えるかは気にしていたのですが、まず位置合わせがしっかりしていないとどの点が数分間続いているのかさえよくわかりません。なので位置合わせはかなりの時間を割いて十分合わせられるようにパラメータ調整などの手法を工夫しました。

でも、位置が合ったとしても見分けるのはかなり困難です。3分から5分くらいの周期ということは、今回の動画で5-10コマで出てきて消えるわけです。しかも短波長側だけに出ているということで、長波長側に出ていないことも確認する必要があります。実際はっきり写るのは高々数コマになるので、先の動画の左右2つを見比べるだけでも大変で、繰り返し見ていてもいまいち確証が持てませんでした。行き詰まったところで、一旦グレインについてはストップして、先にジェットの方をまとめることにして、ブログ記事を公開しました。

ところが前回の記事公開後、Xの方でMASAさんから「このジェットのドップラーシフトを色付けして見てみると面白いのでは?」というコメントがありました。これまでドップラーシフトはJSol'Exを使って出していて、serファイルを処理した時のみドップラーシフトを出力できるだけなので、今回のように処理済みの波長のシフト画像から色付きのドップラーシフト画像を作るのはちょっと面倒だと思っていました。

でもMASAさんからさらに「アップした動画に擬似的に色をつけて見たら面白かった」とのコメントが入り、私も興味に勝てずに、結局処理済み画像から色付きのドップラーシフト画像を作るコードを書くことになってしまいました。

アルゴリズムはJSol'ExのImageMathのサンプルコードを見ることができたので、あとはpythonに落とし込むだけでした。+側をred、-側をblueとし、+側画像と-側画像の最小値をgreenとするのが一般的なようです。そうしてできた動画が以下になります。

rgb

噴き上がる時が赤で地球から遠ざかっていき、落ちる時が青で地球側に向かってくるということで、確かにジェットの速度が変わっていく様子が色付きでわかるので、かなりわかりやすくて面白いです。

と、この動画を見ていて思ったのが、あれ?これってグレインの可視化の方法としてはベストに近いのでは?ということでした。一つの画面だけを見ていて、青い点が出て消えるものを探せばいいのです。実際上の動画でもそれらしいものがすでに見えています。


確かにグレインっぽいものが時間変動している!

いくつかの場所を見てみましたが、青い点を目立たるようにして見たいということで、太陽の右側(西側)を見ることにしました。理由は、ドップラーシフトで背景が赤にシフトするので、波長が短い側にある青い点は見やすくなるからです。グレインは数ピクセルくらいのサイズになりそうなので、ある程度拡大しないと見えないのかと思います。上と同じように、右側下部を600x600ピクセルくらいの大きさで切り取ってみました。

rgb

これでもまだ変動が激しく、青が目立つと言っても小さな点なので、かなりわかりにくいです。

もう少しわかりやすくするために、青がある閾値以上で、ある大きさの範囲にあり、点状に近い形のものを自動で検出して、それが同じような位置に連続で出ているものをピックアップするようにしてみました。1画面だけ出ているものが灰色、2画面連続で出ているものが淡い青色、3画面以上出ているものを濃い青丸で囲んでみました。これらの処理はpythonで書きましたが、特に閾値などのパラメータ設定がかなり難しくて、ここまでピックアップするのに100回近くパラメータを調整しています。高画像版はYoutubeにアップしています。

rgb

やっとグレインらしきものが出て消えていく様子がはっきりと分かるようになったのかと思います。

3分周期とのことですが、
  • 一つのグレインが出たり入ったりを連続で繰り返すのが3分ごとなのか?
  • 一つのグレインが出始めて消えるの過程が3分間で、その位置では繰り返して出ることはないのか?
は今の所不明です。同じ位置で繰り返しているように見えるのがあるようにも思えますが、ほとんどは一度出たら消えています。そもそもグレインがどういうものなのかがあまりわかっていないようなので、今回見えたものが本当にグレインなのかどうかはわかりませんが、少なくともHα線から-0.6Åずれとところに3分くらいの周期で出たり消えたりするような点状の模様があるということは言えるのかと思います。


まとめと今後

今回はHαグレインらしきものが見えたというところで終わりとしたいと思います。アマチュアレベルの分光器でこんなものが見える可能性が出てきたということだけも、かなり面白い結果だと思います。

この後発展させていくとしたら、やはり2006年の論文にあるようなCaHとの相関を見ることでしょうか。これだと複数台のSHG700が欲しくなります。もしくは、Hαのグレインの3分周期をグラフ化して、同様にCaHもグラフ化するとかでしょうか。これだと1台でもなんとかなるかもしれません。

HαとCaHのみでなく、他の波長でももしかしたら同様のグレイン現象があるのかもしれません。他の波長ではまだ誰もやっていないようなので、もしかしたら科学的な成果につながっていくかもしれません。こんなことまで視野に入ってくるSHG700はこれからもいろんな可能性を秘めているのかと思います。


日記

お盆期間は忙しくて、天文関連の記事はHαグレインについてだけです。雨だったり、満月だったり、暑かったり、結局あまり休みにはならずに仕事が入ったりで、ほとんど撮影とかはできませんでした。

イベントとしては、8月7日に富山駅近くの環水公園で観望会がありました。雲が多く、夏の大三角とかと最後の方で月を見たくらいですが、多くの人が訪れてくれました。県天メンバーだけでなく、富山大、県立大の天文部も参加してくれていました。

他にも、8月12日には母校の高校の天文部の合宿に参加させてもらいました。こちらも天気が悪くて、見えた星はおそらくデネブだと思いますが、1個だけでした。ちょうどペルセウス座流星群が極大期で、部のメンバーが電波観測で流星群を捉えようとしていました。これまで学校でテストはしてたとのことですが、実際の観測は初めてみたいで、いくつか検出できていたようです。私はあまり詳しくなかったので、原理を少し調べてみましたが、結構面白そうです。機材も含めてそこまで大変ではなさそうです。天気に関わらず、雨の日でも検出できるというのはちょっと面白いかもしれません。ちょっと手を出してみてもいいかとも思いますが、観測というのが続くと思えないので、今回みたいな流星群の時にイベント的にやってみるのは、天気が悪い時の補足手段としてもいいのかもしれません。

分光は一度にたくさんのデータがとれて、いろいろ解析することがあります。お盆期間も結局はこの記事のための処理でほとんど費やしてしまいました。さらに、他にも撮影した大量のデータで未処理のものがあり、時間を結構かけていますが結果に結びついていません。しかも、今後機材の方にもう少し進歩がありそうな感じです。とにかく分光はこれまで手を出してこなかった分野で、とてつもなく奥が深いので、今後ももう少し踏み込んでいきたいと思います。




前回の記事から少し間が開きましたが、一連のSHG700の応用編になります。

太陽望遠鏡を使ったタイムラプス映像は、比較的挑戦しやすく動きも見えて楽しいかと思います。特に、Phoenixのような入門機クラスの太陽望遠鏡では全景を見ることに適していて、最近ではSharpCapの「太陽/月/惑星のライブスタッキングと強化」機能を使うことで、かなり簡単に安定にタイムラプス映像が撮影できるようになってきています。私も以前PSTで試した記事が以下になります。


その一方、最近ずっとテストを続けている分光撮影では、そもそも一回の撮影に赤道儀をスキャンする必要があるなど、手間と時間がかかり、更に撮影後の画像処理も結構手間なので、連続で撮影してタイムラプスかすることはあまりされていません。でも不可能ではないはずです。今回は、SHG700での分光撮影で実際どれくらいのペースで連続撮影ができるか試してみました。


連続撮影

まずは撮影です。撮影したのは7月21日。結構前になりますが、なんでこんなに前なのかというと、後述するようにタイムラプス化するための位置合わせにものすごく時間がかかったからです。

スクリーンショット 2025-07-21 082845

撮影は連続撮影なのでSharpCapのSHGスクリプトを利用します。ポイントは、SHGスクリプトの一番下の「Return to Center of Solar disk per Round」オプションをオンにすることです。これがオフだと、撮影回数と共に徐々に赤道儀の移動量がずれていってしまい、太陽本体がうまく撮影時間の中に収まらなくなってきます。どうも時間で判断して移動量を決めているようで、その見積もりが正確でないために毎回のズレ幅が大きくなったり、ズレが溜まって毎回シフトしたりしてしまいます。このオプションをオンにすると1回の撮影が終了したごとに必ず毎回初期位置に戻すので、時間の代わりに位置で管理されるようなことになり、全くズレなくなりました。さらに、こうすることで一回の撮影時間も絞ることができて、トータルのファイル容量も小さくすることができます。

さらに、撮影をForward onlyにします。これは復路でも撮影すると後の画像処理が往路と復路で分けてしなければならずに二度手間になります。また、上記オプションをオンにすることで、往路の1枚撮影後にすぐにセンターに戻るので、下手すると往復で撮影するよりも速いです。とりあえずですが、今回連続50回撮影することは余裕でした。

今回は32倍速で1撮影あたり6秒で録画しましたが、1本1本の撮影間隔は27秒から34秒で平均は31.22秒でした。やはり撮影間隔は完全には一定にならないようです。それでも約30秒で1枚撮影できるので、全景タイムラプス映像を作るには間隔的には十分速いでしょう。

実際50枚撮影した結果を処理してみると、そのうちの5枚目と8枚目の2枚がおかしかったです。2枚目はなぜかわからないけど画面全体が明るく写ってしまっていました。もう一枚の8枚目は赤道儀の移動量がおかしかったです。でもその次の動画ではきちんと正しい位置で撮影できていたので、やはり何かトラブルがあっても毎回初期位置に戻るというのでリカバーできるのかと思います。

赤道儀の移動量は、赤道儀のモーターがいかに一定速度で動くかが鍵なのですが、どうもこの安定性は温度に依存するようです。とにかく暑すぎです。別の日のことなのですが、あまりに暑いせいか赤道儀がギーギー言い出して、動きがカックンカックンとなり挙動が完全におかしくなったことがありました。その後はまた元に戻ったので、おそらく温度が高すぎてギヤの噛み合わせに問題が出たのでないかと推測しています。今回撮った50枚も、よく見ると撮影中に速度が一定だったとは言い難い画像が結構あり、処理をしても太陽の形が円から少しズレてしまったり、円に一件収まっているように見えても太陽表面の模様が部分的にズレているような画像がたくさんありました。分光撮影の原理上ある程度は仕方ないですが、温度を含めて赤道儀の問題を解決することで、もう少しマシになるのではと思います。というのも、下で書くように、位置合わせの処理があまりに大変すぎるからです。


Hα中心線画像のタイムラプス化

撮影した50枚の連続画像をJSol'Exで処理し、まずは単純にHα中心線をタイムラプス化してみます。撮影を失敗した2枚は省いています。概要をブログ上で示したいだけなので、縦横800ピクセルまで縮小してgif化しています。

Blink_600

見ればわかるように、ここで分光撮影の欠点が露呈してしまっています。1枚1枚の太陽位置、もしくは太陽表面内の模様の位置がぶれてしまうのです。

特徴的なポイントははっきり出ているので、これらを元に画面内で位置合わせしようとしましたが、どうしてもきちんとできるソフトは見つかりませんでした。探ったソフトは、
  • AutoStakkert!4
  • RegiStax6
  • AstroSurface V5
  • SharpCapの惑星/月/太陽スタック
  • PixInsightのFFTregistration
  • waveSharp2 (勘違いていて、そもそもスタック機能がなく、waveletで炙り出すためのソフトでした)
  • FIJI
などです。これらのソフトの元々の目的の「最終的にスタックする」場合は (十分かどうかはわかりませんが) ある程度の位置合わせができるようです。でもほとんどのソフトはそもそもスタック後の画像しか出力することができず、位置合わせした個々の画像を出力することがでず、確認する術もありません。結局PixInsightのFFTregistrationとFIJIのみが、位置合わせした後の個々の画像を保存することができたのですが、今回のように大きなズレを補正するには両方ともあまりに非力でした。

次に考えたのが、自分で位置合わせプログラムを書く方法です。調べていくとどうやら画面内の特徴点の情報を元に画面を歪ませるDeformable registrationという分野があるらしく、医療関連の画像の位置合わせで発展しているようです。医療用のソフトも使ってみたのですが、フォーマットが合わなかったり、使い勝手が悪かったりで、結局はpythonにライブラリが揃っていたので、結局は自分で書いてみました。

今回使ったものはSimpleITKというライブラリのDemonsRegistrationFilterです。でも思ったより時間がかかってしまい、かなり試行錯誤して結局2週間近く費やしてしまいました。重要なパラメータが2つあって、繰り返し回数を指示するdemons.SetNumberOfIterationsと、どこまで細かさを見るかというdemons.SetStandardDeviationsで結果を調整します。

例では繰り返しが100と細かさ1から始めるといいなどとありますが、これでは全然ダメで、繰り返し回数は500回ほど、細かさは荒い方向に4くらいまで増やしました。繰り返し回数500だと、50枚の処理で一回あたり計算時間が数時間かかるので、なかなか大変です。特に細かさは3以下だと太陽表面の模様がまるでタイルみたいになってしまうようです。繰り返し回数も時には500回で足りなくて、最後は変化の激しい画像は別個に1200とかまで増やしてやっとパッと見でわかるズレがなくなりました。他にもImPPGやPIのFFTregistration、自分で書いた輝度合わせのpythonコードなどを併用し、仕上げています。

最終的にそこそこ満足したのが以下の動画になります。とりあえずYoutubeにアップロードしましたが、かなり高解像度なので、拡大して見て頂ければと思います。ただし、Youtubeの仕様か、拡大しての繰り返し撮影が手間なので、毎回元のサイズに戻して繰り返しボタンを押す必要があるようです。もう少しいいアップロード先を考えた方がいいかもしれません。


よく見ると、さすがに細かいところは動いていますし、まだうまく位置合わせしきれていないところもあるように見えます。でもここまでできたなら、概要として全景を見る分にはかなりマシなのかと思います。太陽全景で高々25分間なので基本的にあまり動きはないのですが、たまたまラッキーなことに右上の方に何か吹き出しているのが見えています。これだけの短時間で大きく速くうごいているので、ジェットなのかと思われます。


ジェットをタイムラプスで

拡大してみます。拡大といっても、上の全景の動画はJSol'Exのautostretchで出力したものなので、出力の時点ですでに多少加工済み、さらにImPPGなどで細部出しをしています。でも、これ以降はあらかじめJSol'Exのdisk画像(RAW出力に相当)から一部を切り取って、その後に位置合わせをしているだけで、余分な画像処理はしないようにしています。見た目よりも、客観的に判断できるということを優先しています。とりあえずサイズ的にgifでアップロードできる範囲なので、gifフォーマットでまずは示します。

Blink_600

これを見ると、最初にバッと噴き出して、その後は拡散してしまったようにも見えます。ジェット自体もそこそこ珍しいので面白いのですが、果たしてこの描像は十分な情報を与えてくれているのでしょうか? -> 2025/8/9:追記 その後Xでジェットはプラズマで、プラズマは荷電粒子と考えるとローレンツ力が働いて、磁場に直行する成分は回転に変換されてしまうからという答えを得られました。


ドップラーシフトで見るジェット

ここからが、分光撮影の特徴をうまく生かすような、今回の記事で本当に書きたかったことになります。

このジェット、Hα中心線では実はまだ見えていない部分があります。ここであえて波長をHα線から+/-0.6Å程度ずらしてやることで一気に面白くなります。動画で見てみましょう。左がHαから+0.64Åずらしたもの、真ん中がHαピッタリ、右がHαから-0.64Åずらしたものになります。


左右と真ん中を見比べてみると
  • ジェットが出る時は左の画面に主に写っているので波長が長い方にずれているのがわかります。
  • 下降していく時には主に右側のに写っているので、波長が短い方にずれているのがよくわかります。
  • ちょうど上昇と加工をが切り替わる時くらいに、真ん中のHα中心が一番濃くなる。
などがわかります。最初、なぜ下降の時に波長が短くなるのか?逆ではないのか?と思いましたが、右画面の右下の方に出ているプロミネンスを見ると明らかに太陽の自転より速く手前側 (地球側) に移動していて、それは左画面に写っていないことから、右が波長が短くなっていることは間違っていないはずです。

ということは、噴出の時には太陽の自転と同じ方向に出ていって、戻る時は重力に引かれて下に落ちるとかではなく、自転方向と反対に、出てきた場所に戻っていくような動きだと推測できます。なぜ元いた位置に戻るのか、重力よりも大きな別の何かが働いているのか、かなり興味深いです。


ドップラーシフトタイムラプスのカラー化

上の画像動画をカラー化してみました。JSol'ExのImageMathのコードを参考にして+側をred、-側をblueとし、+側画像と-側画像の最小値をgreenにしました。色が付くとわかりやすくて面白いです。しかも色付き動画で見るこの手法、次に確かめたかったHα grainにもそのまま繋がりそうです。

  • 撮影日: 2025年7月21日9時17分-9時47分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FC-76(f600mm、F7.9) 
  • 分光器: SHG700
  • 赤道儀: Celestrn CGEM II
  • カメラ: ToupTek G3M678M
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間200ms、ROI: 3840x80、466fps
  • 画像処理: JSol'Ex、ImPPG、自作位置合わせPythonプログラム

念願のジェットのドップラーシフト撮影ができた!

このように、分光撮影で波長をずらしたものを一緒に撮影できるというのは、これまでエタロンタイプの太陽望遠鏡でなかなか見えなかった様子を、顕にしてくれるので、非常に興味深いです。

ジェットについては2019年に初めて撮影できていて、その頃からの大きな課題の一つでした。


その後、昨年2024年5月にも撮影できて


その後の記事でドップラーシフトにも言及しています。


この時いろいろ調べていて、この現象がサージまたはジェットと呼ばれるもので間違いなさそうだとわかってきました。


ジェットはかなりのスピードで変化する現象なので、原理的にはエタロンで波長のズレも見ることはできるはずです。いつか手持ちのエタロンを使ってドップラーシフトの評価に挑戦しようとも思っていました。でもジェットは狙って取れるものでもないことと、そのために最初から波長をずらして待ち構えていることもあまり現実的ではないので、あまり進展は期待できていませんした。

そこに分光撮影という手段が舞い降りました。これなら以前までの分光で出にくかった解像度もSHG700なら十分出そうなので、うまくすればジェットの様子もはっきり見ることができるかもしれないということで、SHG700購入の動機の一つとなりました。でも実際やってみると、分光特有のジャギーや、撮影ごとのブレに悩まされました。

今回ある程度そのブレに見通しがつき、たまたま撮影した連続画像にジェットらしきものが写っているという幸運にも恵まれまれたというわけです。一つ大きな課題がやっと達成されたことになり、分光に手を出した価値を十分に味わせてもらうことができました。アマチュア天文の範囲でこんなことまでできるなんて、現代はとても幸せな時代なのかと感謝しています。


まとめ

やっと念願のジェットのドップラーシフトを、波長別に、しかも時間変化をタイムラプス動画としてとらえることができました。これは分光で連続撮影に挑戦した結果なのかと思います。

でも実はこの連続撮影、元々はジェットを撮影する目的ではなく、もう一つ全然別のことを確かめたくて始めたものです。こちらの話も少しづつ進んでいますが、もう少し時間がかかりそうです。うまく結果が出たら、また記事にしようかと思っています。


これまでSHG700を使った始動編として、基本的な太陽分光撮影の解説を、ハード面ソフト面に渡り記事にしてきました。今回からは徐々に応用編に入っていきます。と言ってもまだしばらくはJSol'Exの標準機能の範囲内の話です。でも、徐々にこれまであまり見ることがなかったものになってくると思います。

前回はSHG700始動編の(その5)でCaK線の撮影をしましたが、今回はもっと多波長で撮影してみました。


撮影途中で気付いたこともいろいろあるので、メモ代わりですが細かく書いておきます。


波長の選択

前回のCaKの分解能が悪かったので、まずはその再現性です。前回終了時の設定を何も変えずに、まずは1ショット撮影しておきました。その後、何が悪いのか見るために色々見てみると、輝線のピントがあった状態で、太陽光と背景の境目の縦線がボケボケでした。縦線は空間分解能に聞くはずなので、何か設定がおかしいようです。ちなみみ、撮影した動画ファイルからCaKの全景を再構築して見てみると、雲が通過していて全景を見るのが厳しかったですが、分解能は前回と変わらずやはりだめそうです。

CaKの分解能がダメそうだったので、次にHαに戻して分解能が回復するかを見ることにしました。その後、波長を順次短くしていっていくつかの代表的な波長を撮影し、再びCaKに再挑戦することにしてみました。

順序としては、
  1. Hα (6562.81Å)
  2. Na D1 (5889.95Å)
  3. Mg b1 (5183.62Å)
  4. Hβ (4861.34Å)
  5. Hγ (4340.47Å)
  6. CaK (3933.66Å)
としました。

この内、HγはJSol‘Exでの全景再構築時に選択肢として出てこないので、JSol‘Exのメニューの「Tools」から「Spectral ray editor」を選び、以下のように名前と波長を入れてやります。
スクリーンショット 2025-07-04 142837_cut
波長を入力するとそれに応じた色が勝手に付きます。でもこの色、ちょっと微妙で、出来上がる画像は設定通りになかなかならないことがわかりました。あとで画像と一緒に検討します。


ピント合わせの自由度

何度か波長を変えていくうちに、ピント合わせ方がある程度確立しました。前々回の記事でCaKに挑戦したときのピントは今思うと大幅にずれていたので、分解能が出なかったのも納得です。

まず自由度の数ですが、SHG700の部分に回折格子の回転 (固定ネジを緩めてラフに回転+マイクロメーターで微調整) と、レンズについているマイクロメーターが2つと、鏡筒のフォーカサーが1つで、合計4つあります。具体的に番号を振っておきます。
  1. 回折格子
  2. コリメーターレンズ
  3. カメラレンズ
  4. 鏡筒フォーカサー
調整を難しくしている一つの原因が、これらの自由度が独立ではなく、各自由度の調整が他の自由度に影響することです。ただし、順を追って調整することで、それぞれの位置が一意に決まることがわかってきたので、メモがわりに手法を書いておきます。ただし、今後もっといい方法が出てくるかもしれないので、とりあえず参考的な手順としてくらいです。また、この方法はSHG700で試しましたがSol'Exでも有効なはずで、また必要そうな精度も書いておいたので、どれくらい頑張って合わせれがいいかの目安にもなるかと思います。


波長を変えた時のピント合わせの具体的手順

A. まず最初に見たい波長を決め、回折格子の回転角度を決定します。
  1. 回折格子下部のネジを手で緩めて、回転台の切り欠き溝の真ん中を印刷されている目的の輝線にラフに合わせます。
  2. SharpCapの画面で見ながら、JSol‘ExのSpectrum browserで表示されるフランフォーファー線図と比較して、目的の波長の近くにいるか確認します。
  3. 似たような輝線模様が見つかったら、目的の輝線が画面の上下で真ん中になるように、回折格子についているマイクロメーターで合わせます。SharpCapで同心円と十字のレチクルを出しておくと合わせやすいでしょう。撮影時にはROIで上下100ピクセル内に輝線を入れる必要があり、そのために必要なマイクロメーターの精度は1-2目盛り程度になります。
付属のマイクロメーターは50目盛りが2回転すると1mm移動するので、1目盛りは10μmに相当します。回転角への変換係数がわからないので、角度の精度で議論はできないのですが、かなりの精度が必要なことがわかります。といっても、多少ずれていたとしても後からROIのTiltを変えてやることで、センサーのどこを見るかの位置調整ができるチャンスがあるので、ここではそこまで精度にこだわる必要はありません。ここで回折格子の回転角を決めたら、これ以上はもうこの自由度はこれ以上いじることはないです。というか、これ回折格子の回転角を以上いじってはいけません。もしいじると、また最初からやり直しです。

B. 次に、2のコリメーターレンズのマイクロメーターと、3のカメラレンズのマイクロメーターの2自由度を同時に動かします。
  1. SharpCapの画面を300%程度に拡大し、画面を右か左にスクロールさせて、太陽光が切れるところまで持っていき、ヒストグラムの一番右の線を左にかなり寄せて背景光の輝線が見えるようにします。
  2. 背景光で輝線がうまく出たら、さらに端に寄せて、スリットの境の光が見えるところと見えないところまで画面を持っていきます。ここで二段階目の調整をします。
  3. まずは3のカメラレンズのマイクロメーターを回して、画面の横向きの線のピントが合うようにします。
  4. 一旦横線のピントがあったら、次に2のコリメーターレンズのマイクロメーターを回して、縦の「光があるところとないところの境目」のピントを合わせます。
  5. ここを合わせると、3のカメラレンズのピントが少しズレるので、また3のカメラレンズのマイクロメーターを微調整します。この時に必要な精度は+/-2目盛りくらいです。かなりの精度が必要なことがわかります。
  6. 3を微調整したら、再び2のコリメーターレンズのマイクロメーターを微調整します。ここでの必要な精度は+/-7,8目盛りくらいでしょうか。こちらは多少大きく動かしてもいいでしょう。
  7. この2と3のマイクロメーターの調整を数回繰り返し、横の輝線と縦の光の境目の線の両方のピントが出るようにします。
うまく調整できると下の画面のようになるはずです。左の明るい部分が太陽の直接光で、真ん中の木線が見えている部分が背景光になります。

スクリーンショット 2025-07-04 092825
 
調整位置が決定したら、回折格子のマイクロメーターも含めて3つともこれ以上触ってはダメです。


C. 最後に、鏡筒のフォーカサーを調整します。
  1. ヒストグラムを調整するなどして、太陽の直接光の輝線が見えるようにします。
  2. フォーカサーのピントを調整すると、粒状斑や黒点などの瞬く縦線が濃く見えるところがあるはずです。
  3. 同時に、太陽光と背景光の境目のピントもぴったり合うはずです。
うまくいくと、下の画面のようになるはずです。
スクリーンショット 2025-07-04 092926

この段階で、縦線は見えるのに境目のピントが合わないとか、境目のピントを合わせると瞬く縦線が見えなくなる場合などは何かおかしいので、Bからやり直すことをお勧めします。ここでのフォーカサーの精度は使っている鏡筒に依るかと思いますが、微動減速装置が欲しくなるレベルです。まだ微動装置を付けていないので、ここのピント合わせに一番気を使います。

逆に言うと、SHG700にマイクロメーターが付いているために、回折格子と2つのレンズの調整がかなり楽になっているということです。この微調整の精度で、横向きの輝線のピントが波長分解能に効き、瞬く縦線や太陽光と背景光の境目の縦線のピントが空間分解能に効いてきます。画像の仕上がり精度にそのまま直結する部分です。Sol‘Exでは微調整の機構はないので、ここで苦労するのかと推測します。SHG700ではSol‘Exで大変だったところをきちんと改善しているのがわかります。

今回合わせたピントを合わせた状態で、前回分解能が出なかったCaKを改めて14枚スタックしてみました。見てもわかる通り、あからさまに分解能が増しているのがわかるので、とりあえずは子のピント出し方法でしばらくは続けていこうと思います。

IP_resize_lapl2_ap5118_IP


JSol'Exがよく止まる

今回、数多くの.serファイルをJSol'Exで処理して分かったのですが、処理中に結構頻繁にエラーが出ます。処理中にタスクマネージャーで見ていると、CPUパワーもメモリも9割以上使っていることが多いので、かなり重い計算をしているようです。撮影用のPCで画像処理もしているのですが、処理用のPCは別途もっと速くてメモリが多いものにするほうがいいのかもしれません。

エラーが出ると、途中で止まってしまったり、画像が最後まで生成されません。一見エラーが見えなくても、特にバッチ処理途中のエラーですでにログ上でスクロースされてしまっていてエラーじゃないと思っても、結局最後まで辿り着かずに止まってしまうこともあります。止まる確率は10%くらいでしょうか。バッチ処理ではいくつのserファイルは成功しても、一つでも止まってしまうものがあると、フォルダの中のどれが完了しているわからなくなるので、結局最初から全部やり直しています。複数のserファイルがあることになるので、全部が成功する確率は結構低くなってしまいます。完了したというメッセージが出ない時は、何か足りないファイルがあると思っていいでしょう。

JSol'Exのバージョン3.2.2がリリースされました。ちょっと重くなったように感じています。エラーの頻度も増したように思えて、最後までたどり着く率が下がった気がします。なので、私は今は3.2.1に戻して使っています。


特徴波長での画像

かなり寄り道をしてしまいましたが、今回撮影した各波長です。色はJSol'Ex標準にしています。細部出しとかも何もしていないので、拡大してみるとちょっと物足りないかもしれません。

各タイトルの波長の横に書いてある数字は、波長分解能になります。例えばHαなら
スクリーンショット 2025-07-05 101928
というように実測で0.091Å/pixelと評価できていて、実際に隣のピクセルとも有意な差が見えているので、分解能を0.091Åと言ってもよさそうです。この分解能は見ている波長によって変わってきて、波長が短くなるほど分解能が悪くなります。最初、あれ逆では?波長が短い方が精度がよくなって分解能もよくなるのでは?と思ったのですが、ピクセルサイズが決まっていてそこに短い波長を詰め込むと考えると、同じピクセルサイズなら見える波長の細かさは粗くなってしかるべきと理解できました。でも波長分解能の違いは、波長の違いの比のルートに比例するようです。1次でそのまま効きそうなので線形化と思いましたが、なぜルートに比例なのか?未だに疑問です。


1. Hα (6562.81Å), 0.091Å
09_39_22-trimmed_0000_09_39_22-trimmed_colorized_0_00
  • 撮影日: 2025年7月4日9時39分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FC-76(f600mm、F7.9) 
  • 分光器: SHG700
  • 赤道儀: Celestrn CGEM II
  • カメラ: Touptek G2M678M
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間0.75ms、ROI: 3840x100、平均381fps
  • 画像処理: JSol'Ex、ImPPG

2. Na D1 (5889.95Å), 0.100Å
0000_08_24_28_colorized_0_00
  • 撮影日: 2025年7月4日8時24分
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間0.75ms、ROI: 3840x100、平均381fps

3. Mg b1 (5183.62Å), 0.106Å
0000_08_34_13_colorized_0_00
  • 撮影日: 2025年7月4日8時34分
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間0.75ms、ROI: 3840x200、平均221fps

4. Hβ (4861.34Å), 0.108Å
03_Hbeta_0001_08_44_26_colorized_0_00
  • 撮影日: 2025年7月4日8時43分
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間0.75ms、ROI: 3840x100、平均381fps

5. Hγ (4340.47Å), 0.111Å
04_Hgamma_0000_08_56_44-trimmed_colorized_0_00
  • 撮影日: 2025年7月4日8時56分
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間1ms、ROI: 3840x100、平均381fps

6. CaK (3933.66Å), 0.113Å
05_CaK_0003_09_14_06_colorized_0_00
  • 撮影日: 2025年7月4日9時14分
  • 撮影: SharpCap Gain 400 (=12dB)、露光時間1.5ms、ROI: 3840x100、平均381fps

こうやって見ると、波長ごとに模様がかなり違うのがわかります。でもNa D1を見てもわかるように白色光とあまり変わらず特徴が無かったりもします。というか、ほとんどの波長はこのNa D1みたいに白色とほぼ同じに見えるようです。

実は他に、He-D3 (5875.62Å)というのが結構面白そうな模様を出しそうなのですが、Spectrum browserで確認したところ、あまりに淡そうなので今回は諦めました。
スクリーンショット 2025-07-05 090320

またいつか挑戦してみたいと思います。


JSol'Exでの色付け

実はJSol’ExではHαの色だけ、特別な処理をしています。Hαだけ他のものに食らえて派手すぎです。即別な処理を外して、JSol’Ex標準のルールに従って色付けすると、Hαといえど下のようにかなり地味になってしまいます。
09_39_22-trimmed_0000_09_39_22-trimmed_colorized_0_00

私は結構派手な色使いも好きなので、他の波長もHαでやる場合と同じように特別な処理をして派手目にしようとしてみました。でもうまくいきません。どうやらバグみたいで、Spectral rays editorでcolor curveオプションをオンにして色をいじってみるとわかるのですが、青を濃くしてしまうと、serファイルでカラー画像を出した時に変更できるstretchingの所で選択できる「Linear stretch」と「Curve stretch」で初期状態での色遣いが違ってしまっていて、しかもLinear stretchで調整したものは保存できないようです。Hαは青をほとんど出さないので、バグとして認識されていないのかもしれません。

というわけで、もう少し派手目に色付けするとして、Photoshopで自分でやってみました。参考にしたものはMLastroのこのページの一番下にある各波長の色付けです。

6colors

と、こんなカラフルな太陽画像はどうでしょうか?


まとめ

SHG700関連記事も応用編に入り、徐々に分光撮影の威力が発揮されてきました。全波長で本当に0.1Åオーダーで撮影できてます。これは結構すごいです。しかも今回は1枚画像での処理で、JSol'Exのオーとストレッチと色付けだけで、スタックや細部出しもしてません。必要なら、特定の波長は枚数を撮ってもっと凝った処理にしてもいいのかと思います。コンスタントな撮影ももう少し落ち着いたら続けて見たいと思います。

新しく撮影したものを含む、手持ちの撮影ストックはこれくらいです。これまで撮影した画像を使いまだ試したいことがあります。次回、次々回と、ドップラーシフト関連の記事になるかと思います。



前回の記事で、SHG700の開封と事前準備などについて書きました。


今回はSHG700本体を鏡筒に取り付けて、実際に撮影した様子を記事にしていこうと思います。

一番確実なのはMLastroのチュートリアルビデオを見ることでしょう。

このビデオの主に後半が今回の記事の範囲になります。ただ、英語なのと、私はあまり動画は好きではないので、自分のやったことも含めてまとめておこうと思います。


鏡筒

まず鏡筒ですが、今回は手持ちのタカハシのFC-76を選びました。このブログの昔の記事を読んだことがある方は覚えているかもしれませんが、名古屋にスターベースがまだある頃に、ジャンクで格安で購入した白濁レンズものです。

IMG_7127_cut

鏡筒カバーが分厚い金属製で、まだ鋳造メーカーの名残が残る逸品です。惜しむらくは、レンズのコーティングがまだ未熟な時代のもので、時間と共に必ず白濁してしまうようです。これはのちのマルチコーティングになって解決されていますが、実際は多少の白濁なら望遠鏡をのぞいて見る限りは、全く気になりませんでした。眼視で月など非常に明るいものを見ると、もしかしたら気づくかもというくらいです。カメラで撮影している分には全く問題なかったので、まあ多分今回も大丈夫でしょう。

IMG_7068

鏡筒選びのポイントです。狭い範囲の分光撮影の場合は、ある意味単波長撮影のようなものなので、3枚玉とか4枚玉とかのそこまでハイスペックな光学系は必要ないこと。それともう一つ、こちらの方が重要ですが、接眼部がしっかりしていることです。さすが鋳造を自分のところでやっているだけあって、FC-76の接眼部はかなり強固で、今回のかなりモーメントの大きくなる長もの機器を付けるのにはもってこいです。

加えて、焦点距離が600mmと、SHG700の限界の700mmに近いので性能を十分発揮できるはずです。口径が8cm近くと、PSTやPhoenixなどの4cmよりは倍くらい大きいのも効いてくるはずです。


鏡筒への取り付けとピント出し

まず、鏡筒を赤道儀に取り付けます。この時点ではSHG700はまだ外しておいた方がいいでしょう。導入の際は下の写真のような太陽用のファインダーを使うと楽でしょう。
IMG_1478

撮影時には赤経(RA)か赤緯(DEC)のモーター(どちらのモーターにするかは結局スリットが取り付けられている向きで全てが決まるみたいです。今回の場合は結局赤経モーターになりました。)をスイープさせるので、モーターが一定速度で動く必要があります。そのため、ある程度精度のいい赤道儀がいいかと思われます。私は普段使っているCelestronのCGEM IIにしました。

SHG700を鏡筒に取り付ける前に、一度太陽を導入します。追尾を太陽モードにするのを忘れないで下さい。導入後、接眼部から太陽の明るい光が出ていることを、手などに光を当てて確かめてみてください。熱いので火傷しないようにパッと手をかざすくらいでしょうか。心配なら金属の板などをあてて確かめるといいでしょう。SHG700では、鏡筒接合部の手前についているスリット位置に鏡筒の焦点を合わせる必要があります。あらかじめその位置を確認しておいて、フォーカサの調整範囲内で焦点がスリット位置に持って来れるかどうか、試しておくといいでしょう。

MLastroのページによると、SHG700の前方についているスリットの器材は合成石英でできていて、熱膨張に強いため、口径102mmの鏡筒で集光させて使っていても問題なかったと書いてあります。あまり大きな口径の鏡筒を使うとスリットがダメージを受けることがあるので、注意が必要です。今回は口径76mmなので、スリットを壊すような問題はないでしょう。

いよいよ鏡筒にSHG700を取り付けます。SHG700の取り付け角度はとても重要です。赤道儀の赤緯体が回転する平面にできるだけ平行に取り付けます。あとで撮影して、どれくらいズレているか出て、その量を補正するのですが、とりあえずここの段階である程度正確に取り付けておくに越したことはないでしょう。

IMG_1465

IMG_1476

同時にPCと繋いだカメラの画像をSharpCapで見ます。まだ太陽から視野からがずれていると、背景光が見えます。背景光は暗いですが、事前にフラウンホーファー線を見たように、露光時間とゲインを上げてやれば見えるはずです。線は水平になっているか(左右の高さが揃っているか)?、ピントが合っているか、今一度確認するといいかもしれません。左右の高さが合っていなければカメラの回転角を調整します。ピントが合っていなければ、カメラレンズ側のマイクロメーターを調整します。

その後、鏡筒の向きを赤道儀で調整して、カメラ視野の中に太陽を入れると、かなり明るい、おそらく飽和した画面になるので、露光時間とゲインを下げます。私の場合は1msでゲインが最低の100(1倍、ZWOで0相当、0dB)で丁度いい明るさになりました。

事前準備の段階、もしくは背景光で、カメラ側のピントをSHG700内部のカメラレンズ位置をマイクロメーターで調整することで合わせてあるので、ここではもうカメラやマイクロメーターに触る必要はありません。また、初期状態ではSHG700内部の手前側のコリメーターレンズの位置は出荷時に調整してあるとのことなので、コリメーター側のマイクロレンズも最初は触らないほうがいいでしょう。また、回折格子の回転角は出荷時ではHαに合わせてくれているようです。最初は一番見やすいHαから試すのが無難なので、回折格子のマイクロメーターも触らないでおくことにします。

太陽が導入された状態で適当に露光時間をゲインを合わせると、横線のフラウンホーファー線がたくさん見えてくるはずです。もし見えない場合は鏡筒のフォーカサーを調整します。繰り返しになりますが、この時点でカメラの位置やカメラ側レンズのマイクロメーターは触らないことです。ピントが合ってくると線がはっきりしてきますが、ここからはかなりの微調整が必要です。コツはチュートリアルビデオにもありますが、SharpCapのヒストグラムの真ん中の線を右側に持っていってコントラストを上げて、フォーカサーを微調整して見えてくる「縦のたくさん動く線」が最も濃くなるようにすることです。これは太陽表面の模様が見えているのですが、縦全体に見えるということは、Hα線のところだけでなく、模様が広い波長域に渡って広がっているということを意味します。ビデオでも言っていたように、粒状斑が見えていると思って良さそうです。

スクリーンショット 2025-06-17 100723_cut2

最後に重要な確認です。画面上はROIで制限されて表示されていると思いますが、それを300%くらいに拡大表示して、画面を右と左にスクロールさせて、太陽の端の部分見て見ます。太陽と背景が以下の写真のように、十分シャープになっていることを確認してください。

スクリーンショット 2025-06-18 153850_CaK_forcus_cut

初期設定ではきちんとシャープに映るようになっているはずですが、万が一輸送などの振動で、特にコリメーターレンズの位置がズレたりすると、ここがシャープにならずにボケボケになります。その場合は、コリメーターレンズをいじる必要があります。少なくとも私の場合はいじらなくて大丈夫なレベルでしたが、いずれ波長域をHαから変えた時にはいじる必要が出てきます。詳しい調整方法はその時に説明します。


SharpCapの設定

ここまでで、ハード的な準備はほぼ整いました。必要ならばSharpCapと赤道儀を接続しておきましょう。撮影時モーターでスイープさせる時に、ハンドコントローラーで操作してもいいのですが、いずれ自動でスイープできるようにするので、PCから操作できたほうがいでしょう。

SharpCapの設定を見直します。
スクリーンショット 2025-06-17 100657_cut
  • 重要なのはROIです。横幅はカメラの最大幅で、G3M678Mの場合は3840ピクセル、縦幅は200ピクセル程度でいいでしょうか。私の場合、ファイル量節約のため最終的には縦幅100ピクセルまでしましたが、慣れないうちは200ピクセルくらいあったほうがいいでしょう。
  • Hα線が真ん中に入っていることを確認します。上下にずれている場合は、ROI設定画面の「ティルト」を調整して、Hαの上に凸の曲線の全てが画面の中に入るようにします。使うのはHα線の周りのせいぜい数ピクセルなので、基本的に暗い線の中心が全部画面内に入っていれば大丈夫でしょう
  • 露光時間が1ms程度十分速いこと、ゲインが高すぎないこと。
  • モーターの速度を4倍とか8倍適した速度する。速過ぎると中心線を分離よく撮影することができません。遅過ぎるとファイルサイズが大きくなります。
  • 階調がRAW16になっているか、フォーマットがserになっているか確認。
  • FPSが100以上十分速いこと、ドロップが原則0であることを、画面下部に出ている数値で確認します。私の場合、上記ROIだと220fpsくらい出ます。必要ならUSB転送速度を最速や、高速モードオン、フレームレートを最大など、fspを制限しないように設定します。
  • 最後に、一度テストでモータを回して太陽をスキャンして、一番明るいところでも飽和しないか確認。
などでしょうか。ちなみに緑字のところは、使っている機材のパラメータなどから必要な値を正確に計算することができます。でもややこしくなるので、詳しくは後日別記事で解説します。


いよいよ撮影

準備ができたら、いよいよ撮影開始です。一旦太陽の端を越えるところまでWかEの赤経のモーターで持っていきます。フレーム数や時間が無制限で、ストップするまで録画される設定になっていることを確認してから録画開始ボタンを押し、モーターをさっき進めたのと反対側に回します。太陽がもう一方の端までスキャンできたら録画を停止します。これで終わりです。

一応撮影された.serファイルを、SerPlayerなどで確かめるといいでしょう。きちんと太陽の端から端まで撮影できていますでしょうか?


太陽像を再構築

撮影したファイルから太陽の全景像を再構築するためには、何らかの変換ソフトを使った方が楽でしょう。ここではMLastroでオススメされていた「JSol'Ex」を使いたいと思います。かなり高機能なソフトで、この解説だけで一記事使ってしまうほどなので、詳しいことは後日別途記事にしようかと思います。

ここではメニューの「File」->「Open SER file」から撮影したserファイルを開いて、出てきた画面の下の真ん中の「Quick mode」ボタンを押してください。しばらく待つと、serファイルがあったところの下にフォルダができていて、そこを探っていくと「processed」というフォルダの中に太陽全景の画像が2枚入っていると思います。1枚はストレッチなし、もう1枚はオーとストレッチしたものです。

今回、ホントのホントに最初の撮影でできた画像が以下になります。ストレッチしていない方なので、撮って出しと言ってしまっていいでしょう。右に見える筋は雲でしょうか。また、細かいところ、特にプロミネンス周りを見ると、分光撮影特有のギザギザが見えます。
10_06_08_20250617_disk_0_00

それにしても、初っぱなからかなりの解像度で撮影されています。

実際に雲などなく、うまく撮れたのは3ショット目で、オーとストレッチしたものですが、以下になります。
10_09_34_x4_20250617_autostretch_0_00

とりあえずここまで出たなら、十分満足でしょう。細かいギザギザを取るためには、複数枚とってスタックするのがいいらしいのですが、それはまた次回以降に試すとします。

その前に、一つ重要なことを。チュートリアルビデオにも指摘があるのですが、JSol'Exでserファイルを解析するときに、何度傾いて撮影されたかが角度で表示されます。下の画面のログの中にある「Tilt angle:」というところです。

スクリーンショット 2025-06-20 201321


私は最初-3.88度でした。これは、赤道儀のモータを動かした時の動きに対して、SHG700が平行からどれだけずれて取り付けられているかを表しています。鏡筒のアイピース固定ネジなどを緩めて、SHG700本体をしてされた角度だけ、まあ目分量になりますが、ずらします。方向はわからないので、とりあえずどちらかにずらしてみてください。私は2回目はズレが-6度になりました。3回目は回転方向を変えて0.1度とかになりました。ズレが+/-1度以下がいいとのことです。その後必要なら、今一度鏡筒のフォーカサーでピントを合わせます。


まとめ

初めての分光撮影ですが、とりあえず太陽の再構築までうまくいったようです。分解能もかなりのもので、今後が期待できます。

やはり最初から組まれているSHG700を買って正解だったかもしれません。3Dプリンタを持っていないのですが、たとえ持っていたとしてもSol'Exを自分で印刷してから撮影するまでの敷居よりははるかに低いはずです。完成品でも普通の天体撮影と違いかなり苦労するので、自分で印刷して撮影までたどり着いた方たちには敬意を表します。

長くなったので、今回はここまでにしたいと思います。次は何について書きましょうか?実作業はかなり終えていて、分光撮影でやりたかったことの半分くらいはすでに済んでいます。その一方、記事書きの方が全く追いついていません。JSol'Exの使い方にするか?多数枚スタック撮影の方法にするか?、まあ書きあがった記事からアップしていくことにします。

明日の土曜日も晴れるとのことなので、もう少し凝った撮影に入っていきたいと思います。書くべき記事は更にたまっていきますが...。













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