ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:DBP

前回記事でSWAgTiのディザー撮影ができたことを書きましたが、書ききれなかったこともあるので、少し補足します。


機材

鏡筒ですが、最近手に入れた新機材でRedCat51です。と言っても新品ではなく、譲り受けたもので、IIでもIIIでもなく初代です。

富山県天文学会のK会長が4月に逝去されました。2016年の5月、星を始めたときに牛岳で誘われて入会して以来、折につけお世話になっていました。会内では最もアクティブな方で、とにかく天気さえ良ければいろんなところに顔を出して星を見てた方です。星や宇宙の解説が大好きで、普通に来てた一般の人にも、いつも分かりやすく説明されていました。昨年末くらいからでしょうか、急に痩せられて、体調を悪くされているようでしたが、3月の役員会には顔を出されていたのに、まだ60代半ばで、あまりに早すぎるお別れでした。熱心な方だったので、当然大量の天文機器があるのですが、遺族の方のご好意で、できれば皆さんで使ってくれないかということで、私はRedCat51とEOS 6Dを格安で譲っていただくことになりました。ちなみにK会長、6Dがよほど気に入っていたのか、3−4台もあって、私はその中であえて1台だけあった無改造機を選びました。私が持っている一眼レフカメラは全て天体改造をしてあるもので、ノーマル機を一台も持っていなくて、普通の景色も少しは撮ってみたいと思っていたので、実はとてもありがたかったのです。

IMG_9796

撮影用のコンパクト鏡筒としてはこれまで主にFS-60CBを使っていましたが、赤ハロ青ハロ問題を避けたいというのがありました。これはFS-60CB特有の問題で、ピント位置が赤と青で微妙にずれていて、赤か青のどちらかのハロがどうしても出てしまうというものです。ジャスピンが難しく、赤と青を均等になるように合わせたりしてきました。また、FS-60CBにレデューサをつけると焦点距離が250mm程度になるのですが、周辺星像がすこし流れるのも気になっていたこともあり、250mm程度の短焦点で性能の良い鏡筒を狙っていました。実は最近はBXTがあるので、これらのFS-60CBの欠点はソフト的にかなり解決できますが、やはり撮影時に解決したいという思いがあります。

RedCat51を使ってみて驚いたのは、周辺減光の少なさです。今回使ったカメラがUranus-C Proでセンサーサイズが1/1.2インチと決して大きくはないのですが、オートストレッチで強あぶり出ししてもほとんど周辺減光が確認できませんでした。なので、簡単撮影という目的も考えて、今回あえてフラット補正をしませんでした。さらにいうと、PixInsight上でもなんのフラット化もしていません。普通は周辺減光とかあると、輝度差で淡い部分のあぶり出しがうまくいかないはずです。でも今回はフラット補正も、ABEも、DBEも、GCも、本当に何もしていないのですが、きちんとM27の羽まで見えるくらい問題なく炙り出しができています。これは今までにない経験で、RedCat51の性能の高さの一端を見た気がしました。

前回記事でも見せましたが、改めて何のフラット補正もしていない、WBPP直後の画像を載せておきます。M27の周りを広い範囲で撮っているのってあまり見当たらないので、本当は背景の構造を出したかったのですが、今回の2時間では全然ノイジーです。でももうSWAgTiで長時間露光も楽にできるので、天気がいい時に放置で10時間とか露光しても面白いと思います。
masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

カメラですが、M27は結構小さいので、センサー面積が小さく、夏場なので冷却ができるものというので、PlayerOneのUranus-C Proを使いました。CP+で使わせてもらったカメラです。PlayerOne社のカメラの特徴の一つ「DPS」も魅力で、これでホットピクセルはかなり軽減されるはずです。実は今回、ダーク補正を全くしていません。PixInsightのCosmetic Correctionのみ使いました。それでホットピクセルやクールピクセルは全く問題にならないレベルになったので、お気楽撮影にふさわしいカメラだと思います。

IMG_8960


iHDRがすごい!

今回初めて使いましたが、PixInsightのストレッチの中でも比較的新しい「iHDR」がすごいです。M27の星雲本体とその周りの淡い羽の部分には相当な輝度差があり、普通のストレッチでは両方を同時にうまく出すことができません。そのため、一般的にはマスク処理が必要となるのですが、今回は部分的なマスクを使うことなく、ほぼ自動で輝度差が出ないようにストレッチすることができました。

iHDRの説明についてはこちらをご覧ください。
 

インストールは

https://uridarom.com/pixinsight/scripts/iHDR/

をレポジトリに登録して、アップデートをチェックするだけです。インストールされたiHDRはメニューの「Scripts」の「Sketchpad」の中に入っています。

パラメータですが、iHDRでMaskStrengthを倍の2.5にしてより明るい部分を抑え、Iterationを3にしだけで、あとはデフォルトにしました。中心の明るい部分を十分に抑えることができました。
  1. まず、背景が何回くらいIterationすれば適した明るさになるか、何度か繰り返して試してから確定します。
  2. 星雲本体の輝度差がまだ残るようならMaskStrengthの値を増やして、これも何度か調整してみます。
一度試すたびに、Undoで元に戻してから再度パラメータを変えて試し、値を確定していくと楽かと思います。その際、Undoは一度で元に戻らないことがあるので、Undoアイコンのところにカーソルを持っていって、ちょっと待って、何の作業を戻すのか表示されるのを確認すると良いと思います。これがPixelMathと表示されるうちは、まだUndoしきれていないです。

iHDRの後は、NXTでノイズを軽く落として、StarNet++で恒星と背景を分離して、最後Photoshopに渡して仕上げますが、ストレッチまでかなり仕上がりに近い形で済んでいるので、Photoshopでは軽く好みに処理するだけで済みました。


SPCC

もう一つ、PixInsightでの色合わせツールのSPCCを少し使い込んでみました。実際にはWBPPでスタック後にすぐに試したことです。

今回は光害防止フィルターとして、サイトロンのDual Band Pass (DBP) フィルターを使いました。これまではSPCCのナローバンドモードを使って適当な波長幅を指定していましたが、いい機会なのでフィルターをきちんと設定することにしました。参考にさせて頂いたのはだいこもんさんのこのページです。
 

同ページにだいこもんさん自身が作ってくれたフィルター用ファイルが紹介されていて、その中にDBPのファイルもあったので、それを使わせて頂きました。フィルターを設定して公開してくれているだいこもんさんと、さらにオリジナルのJason Coonさんに感謝です。

だいこもんさんによると、カメラがASI294MCの場合はSonyのCMOSの標準フィルターでいいとのことでしたが、Uranus-Cで使っているIMX585は特に赤外の感度が高く、標準の応答とは少し違っています。いい経験になると思い、ついでにIMX585用のカラーフィルターを作ってみました。

実際自分でフィルターデータを作ってみるとわかりますが、cvsファイルの1箇所に波長情報を全て入れるとか、透過率も1箇所にいれるとか、結構面倒です。また、メーカーのグラフから値を読み取るのですが、読み取りソフトはだいこもんさんお勧めのPlotDigitizerを使いました。面倒だったのは、赤外の領域ではRGBの線が重なっていて、グラフで一番上の色(この場合青でした)しか読み取ることができず、後から赤と緑に同じ波長の青の線を近似的に追加するなど、少し加工が必要だったことです。

IMX585_R
IMX585のR曲線ですが、長波長側は青線と重なっていて直接読めないので、
青線から起こしています。


自分で作ってIMX585とDBPの応答を合わせて、今回の撮影に合わせた応答を作りましたが、結局2つのグラフを合わせると、ただの一本線になってしまうので、IMX585のデータを作った意味があるかどうかはちょっと疑問です。でも面白いのは、例えば下のBグラフでは、長波長の赤の領域にも線があるんですよね。
DBP_IMX585_B2

これはIMX585がRGBともに長波長に感度があるからです。だからBもGも実は赤を少し含みます。どれくらいの割合かというと、B曲線ではBが0.44に対してRが0.07と16%程度、G曲線ではGが0.78に対してRが0.17と22%程度と、無視できないくらいの結構な割合で含まれることになります。カラーカメラとDBPはモノクロカメラで撮ったAOO相当になると思うのですが、DBPでは赤と青でのっぺりせずに多少なりとも色調が豊かに見えるのは、この余分な色の成分のせいなのかもしれません。ちなみに、R曲線にもGがすこしまざりますが、Rが0.96に対してGが0.03とごく僅かなので、こちらはあまり効いてこないでしょう。

上の重ねたグラフを使い、SPCCで測定した結果を見ると見事に直線に載ったので、ちょっと嬉しかったです。

SPCC

でもSPCCのフィルター制作は完全に蛇足で、SWAgTiの簡単撮影のためにはこんなことまでやる必要は全くないと思います。


SWAgTiについて

SWAgTiを改めて振り返ってみます。

高精度追尾で1軸単機能のSWATに、低精度でも2軸で高機能のAZ-GTiを組み合わせることで、SWATがまるで高精度高機能赤道儀のように生まれ変わります。実際、SWAT350のピリオディックエラーはPremium仕様で+/-2.8秒を実測して出荷しているそうです。これだけの精度を有している赤道儀はポータブル型ではほぼ皆無で、大型の高級機と比較しても何ら遜色ない素晴らしい値なので、ガイドなしでの簡単撮影が生きてきます。

AZ-GTiを赤道儀化される方も多いかと思いますが、その際の極軸を北極星方向に向ける35度の角度をつける台座に苦労します。揺れてしまわないためにも、台座の強度も重要になります。SWATには底面に角度がつけてある、SWAT自身が強固な35度の台座を兼ねることができます。

AZ-GTiは、自動導入、プレートソルブ、エンコーダー内蔵など、値段から考えたら非常に高機能で汎用性が高く、ユーザーも多いため情報に困ることはまずないと思います。プレートソルブだけは今回ディザーと併用できませんでしたが、元々できていたことなので単なるバグの可能性が高く、いずれ解決するものと思っています。AZ-GTiは精度があまりないと言っても、モーターさえ動かさなければその強固な筐体と合わせて、極めて安定しています。追尾中はSWATのみが動き、AZ-GTiのモーターは動かないので、撮影時の精度はSWATのみで決まります。AZ-GTiのモーターが動くのは、導入時や、撮影の合間のディザーの時のみです。

PCとAZ-GTiとの接続はワイヤレスなので、ケーブルの数も一本減らせています。それでも少なくとも今回の2時間は全く接続が落ちることなどなく、安定でした。なのでケーブルの数は、PCとCMOSカメラを繋ぐUSB3.0ケーブル、CMOSカメラの冷却電源ケーブル、SWATの電源ケーブルの3本です。PCは内臓バッテリー駆動です。ダーク補正しないなら、特に冬場なら、冷却カメラでなくてもいい気もするので、冷却用の電源ケーブルは減らせるかもしれません。SWATも乾電池駆動が可能なので、SWATの背中側に電池をおいてしまえばさらに長いケーブルの数を減らせます。AZ-GTiも私は電池駆動にしています。こう考えると、最小構成ではPCとカメラを繋ぐUSBケーブル一本で稼働可能かもしれません。あ、StickPCを使えばさらにUSBケーブルも短くできるので、超シンプルになるかもしれません。こうなってくるとASIAirみたいですね。どこまでシンプル化ができるか、ちょっとやってみたくなってきました。

重量に関しても少しコメントを書いておきます。SWATもAZ-GTiもそこそこの重さはあるので、二つ合わせると決して軽量とは言い難くなります。一般的な小型赤道儀程度の重量と言っていいでしょうか。それでも十分に軽くてコンパクトなので、私は鏡筒を取り付けたまま運んでいます。玄関においてあるのですが、そのままなんの組み外しも組み立てもなしで運べるのはかなり便利です。超高精度と考えると、最軽量クラスの赤道儀と言ってもいいのかと思います。

逆に、今のところの欠点ですが、SharpCapでの極軸調整を三脚をずらすことでやっているので、ちょっとテクが必要です。微動雲台を使ったほうがいいのかもしれません。ただ、微動雲台は双刃の剣で、揺れを導入するかのうせいがあるので、以前テストさせていただいた迷人会の微動雲台クラスのものが欲しいレベルかと思います。

プレートソルブが使えなかったのはかなり痛いです。でもこれはソフト的な問題のはずなので、いずれ解決するでしょう。短期的にも、何か回避策がないか少し試したいと思います。


まとめ

アイデアが出たのが去年の6月、星まつりでデモなどしましたが、今回ディザーができ縞ノイズが解決して、ある程度のキリがついたと思います。1年以上にわたるテストでしたが、(プレートソルブを除いて)何とか形になりましたでしょうか。今後は鏡筒やカメラを変えて、実用で使っていきたいと思っています。

そうそう、Unitecさんにディザーが成功したことを伝えたら「諦めないところがすごいです」と言われてしまいました。結構嬉しかったです。その経緯でUnitecさんのページでもSWAgTiがまた紹介されてます。

今週末の胎内はちょっと時間的に厳しそうなので、参加は見送ることになりそうですが、9月15日の京都の「星をもとめて」でUnitecさんのブースでまたSWAgTiをお披露目できるかと思います。その際は、お気軽にお声掛けください。


少し前に網状星雲をDBP(Dual BP Filter)で撮影し、かなり青いところが出てきたことを記事にしました。



今回、星フェスの記事はちょっとお休みで、少し前に画像処理を済ませていたDBPで撮影したハートと胎児星雲のまとめです。DBPでの2例目になります。 


セットアップ

対象はハート星雲と胎児星雲。FS-60CBとフルサイズ一眼のEOS 6Dで二つぴったり入る画角になります。

機材のセットアップと言っても、実際には前回の網状星雲と全く同じです。それもそのはずで、網状星雲が西に沈んだその後、まだ高い位置にあるハートと胎児の両星雲をそのまま導入し直すだけです。なので今回の記事は書くことがあまりありません。

今回は7時間と長く撮影したので、ノイズも少なく画像処理がかなり楽でした。DBPがよく働いてくれて、Hαも一枚撮りで見てもかなり出ています。


画像処理と結果

画像処理は、まずはいつも通りPIでWBPPです。Cosmetic Corectionを外したのがいつもと違うところくらいでしょうか。でも大勢には影響がないはずです。フラット補正もうまく当たっているようで、背景もABEを1次でかけただけで、DBEもかけてません。PCCはさすがにちょっと変なけっかになりますが、恒星は擬似的に最もそうな結果にしてくれるのかと思います。その代わり星雲を含む背景はどこまであってるか分からないので、適当に補正します。基本赤が多いので、のっぺりならないように、特に青を、加えて緑も強調してやります。

結果ですが、以下のようになります。

「IC1805: ハート星雲とIC1848: 胎児星雲」
masterLight_Rsmall_ABE_crop_SCNR_ASx2_HT

  • 撮影日: 2021年10月30日1時15分-5時2分、10月31日0時57分-5時2分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FS-60CB(f355mm) + マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: サイトロン Dual BP Filter
  • 赤道儀: Celestron Advanced VX
  • カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
  • ガイド: f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間300秒x83枚 = 6時間55分、bias: ISO1600, 1/4000秒x100枚、dark: ISO1600, 300秒x76枚、flat: ISO1600, 1/100秒x128枚、flatdark: ISO1600, 1/100秒x128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

7時間の露光のせいなのか、かなり淡いところまで出たのかと思います。胎児のオナラとプンプンもよく出てます。ハートの背景の淡いところもそこそこ出ています。富山は町が北にあるために北の空はいつも不利ですが、ハートと胎児はかなり北の空に近くなります。それでも光害をあまり気にせず撮影できるDBPは相当強力だと言わざるを得ません。

おまけのAnotationです。
masterLight_Rsmall_ABE_crop_SCNR_ASx2_HT_Annotated


星と自然のフェスタにて

実はこの画像、星と自然のフェスタの直前には仕上がっていて、Twitterではすでに公開していました。星フェスの準備とブログ書きなどで、結局記事にするのが今になってしまいました。

その小海の「星と自然のフェスタ」で何人かの人にDBPで撮ったと言って見せたのですが、かなり好評でした。と言っても、シュミットブースのところでDBPを買おうか迷っている人とかなのですが、後押ししてしまったのかもしれません。自己紹介用のネームプレートをつけていたので、何度か店員さんと間違われてしまったようで「これいくら?」とか聞かれてました。「いえいえい、私はただの客です」と答えるのですが、それくらい星フェスでのDBPの注目度は高かったです。


まとめ

今回はDBPで富山の北の空でも十分に結果が出ることを示すことができました。これまで北の空はほとんど諦めていたのですが、道が開けたような感じがします。今後もDBPに適した天体があればどんどん撮影していこうと思います。


自宅撮影でなんとか淡い青を出したくて、サイトロン社の「Dual BP Filter(デュアル バンドパス フィルター)」を使ってみました。


Dual BP Filter

「Dual BP Filter」はまだ9月に発売されたばかりの比較的新しいフィルターです。



48mmタイプとアメリカンサイズがあります。今回は一眼レフカメラでの撮影なので、48mmの方を使いました。

同様のフィルターにOptolong社の「L-eXtreme」がありますが、DBPの方が半値とはいかないまでも4割ほど安く、比較的手を出しやすくなっています。またDBPの特徴として、OIIIの波長495.6nmと500.7nmを両方とも透過するので、OIIIの写りがよくなるとのこと。ここら辺は後発が有利なところでしょうか。

今回はこのフィルターを使って青い星雲がどこまで出るかを試したいと思います。


自宅での青の挑戦

これまでアンタレス付近や、青い馬星雲などいくつか自宅からの青を挑戦してきました。




でもやはりなかなか難しく、例えばスパゲティー星雲などは完全に敗北でした。


そもそもHαの赤自身が淡く、さらに淡いOIIIの青は全くといっていいほど出ませんでした。

何れにせよ青い星雲を光害地でうまく出すのは相当難しく、フィルターの力を借りるなど工夫が必要となります。


網状星雲に狙いを定める

今回のターゲットは網状星雲です。赤と青の対比が綺麗で、Dual系のフィルターを手にれると一度は撮ってみたくなるという格好のターゲットです。

これは以前もCBPを使って自宅から挑戦したことがあるのですが、真ん中の淡い青が広がっているところを出すことがどうしてもできませんでした。



今回はCBPの代わりに、HαとOIIIのみを通し、さらにその透過バンド幅が狭いDBPを使っての撮影となります。DBPは48mm径のもので、FS-60CBのマルチフラットナーのところに取り付けています。


条件の比較

前回の撮影との相違点です。
  1. 鏡筒は全く同じでTakahashi FS-60CB + マルチフラットナー。
  2. 赤道儀は以前がCGEM IIだったものを簡単にしてAdvanced VX。
  3. ガイドカメラも以前が120mm+ASI290MMだったものを、50mm+ASI290MMと焦点距離を短く。
  4. 撮影カメラはEOS 6Dで同じ。露光時間も感度も同じ300秒でISO1600。
  5. PHD2のガイドは同じで、撮影ソフトもBackYardEOSで同じ。
  6. 撮影時間は前回が5時間ぴったり、今回が5分で49枚なので245分=4時間5分。少し不利ですね。
  7. 前回は8月の撮影だったのでちょうど天頂を挟んだ撮影だったので条件は良かったですが、今回は1月末から11月初めと、西の空に沈んでいくような撮影時間だったので、周りが明るく不利になります。
季節的には不利で、撮影時間は1時間減ったのでさらに不利といったところでしょうか。あとはCBPとDBPの差になります。この条件でDBPがどこまで戦えるのかが見どころとなります。


実際の撮影

実はこの撮影、一連のSCA260のテストの最中にしています。最初に買った赤道儀AVXにFS-60CBをセットしてほっぽらかしてあるだけです。網状星雲のある白鳥座は夏の星座なので、撮影時間はせいぜい0時まで。その後は次のターゲット(胎児星雲とハート星雲)に移ります。こちらのほうも撮影は終わっているので、また画像処理したらブログ記事にします。

DBPを使って撮影している最中に思ったのですが、とにかく暗いです。白色に近い恒星だとかなりの波長が削り取られるので、6Dで露光300秒、ISO1600で撮影しても、ヒストグラムは左6分の1くらいのところでしょうか。露光時間を10分にしても良かったかもしれませんが、網状星雲は画角の中に明るい輝星が一つあるのでできるだけ抑えたいところで、今回は5分としました。

星が暗いことは画像処理にも影響します。恒星と星雲の輝度差が小さいので星が飽和するまでにまだ余裕があります。そのため、いつも使っているStarNetで恒星を分離してやってマスクを作っても、その効果が大きくないかもしれません。なのでマスクなどあまり気にせず処理してみるというのも、楽でいいのかもしれません。

あと、重要なことですが、DBPを入れたことによるゴーストなどは撮影中は全く気になりませんでした。後の画像処理でも見ている限り確認できませんでした。そのため安心して使うことができるかと思います。


画像処理

画像処理の途中でStarNetを用いて恒星を消してやると、既に真ん中の青い部分はしっかりと情報として存在していることが分かります。あとはこれをどう引き出してやるかだけです。

masterLight_ABE_ABE_clone

実際には上の画像は直接は使っていません。L化して星雲部のマスクとして使っています。恒星のみ抜き出した画像もマスクとしてPhotoshop上で使っています。


実際に画像処理まで済ませたのが下の画像になります。

NGC6960, 6979, 6992, 6995: 網状星雲」
masterLight_ABE_ABE_Rhalo_PCC_ASx2_HT3_cut
  • 撮影日: 2021年10月30日18時26分-19時10分、10月31日20時6分-21時20分、11月2日19時48分-23時37分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FS-60CB(f355mm) + マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: サイトロン Dual BP Filter
  • 赤道儀: Celestron Advanced VX
  • カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
  • ガイド: f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間300秒x49枚 = 4時間5分、bias: ISO1600, 1/4000秒x100枚、dark: ISO1600, 300秒x76枚、flat: ISO1600, 1/100秒x128枚、flatdark: ISO1600, 1/100秒x128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

鏡筒: Takahashi FS-60CB(f355mm) + マルチフラットナー(f370mm)
フィルター: サイトロン Dual BP Filter
赤道儀: Celestron Advanced VX
カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
ガイド: f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間300秒x83枚 = 6時間55分、bias: ISO1600, 1/4000秒x100枚、dark: ISO1600, 300秒x76枚、flat: ISO1600, 1/100秒x128枚、flatdark: ISO1600, 1/100秒x128枚
画像処理: PixInsight、Photoshop CC

真ん中の淡い青もある程度出ています。昨年CBPでここは全く出なかったので、大きな進歩かと思います。他の青い部分も今回の方が遥かにはっきり出ています。

また、周りの淡い赤も少し出ていますし、右半分の分子雲も少しですが顔を出し始めています。ここもCBでは太刀打ちできなかったところです。うーん、やはりDBPすごいです。

恒星に関しては良く言うならうるさくなく、悪く言えば元気がないです。ここはDBPの特徴でしょう。

諧調深い色に関してはやはりCBPの方が出しやすかった気がします。DBPでは2色なので赤と青のバランスをうまくとる必要があります。


いつものアノテーションです。解説が入ったみたいでかっこいいですね。

masterLight_ABE_ABE_Rhalo_PCC_ASx2_HT3_cut_Annotated1

でも少し傾いてしまっています。3日にわたる撮影で、最初に合わせ忘れてしまってそれには後から気づいたのですが、それ以降の撮影ではいじりたくなかったというのが真相です。画像処理で回転冴えても良かったのですが、今回はそこまでこだわっていないので、まあよしとします。


比較

昨年CBPで撮ったものも載せておきます。

masterLight_ABE_PCC_STR_all3_DBE4_cut
以前はそこそこ出たと思っていましたが、今回のと比べるとまだまだ全然ですね。
  • OIIIに関してはやはりDBPが圧勝です。西の空に傾くのと、トータル露光時間が短いにもかかわらず、淡いところが格段に出ています。
  • Hαに関しても相当淡いところが見え始めています。10時間くらい露光したらどうなるか楽しみです。
  • 恒星に関してはやはりCBPの方が有利でしょうか。

Dual系フィルターが便利なわけ

(2021/11/7 追記)

なぜDual系のフィルターが良いのか、この記事を書き終えた後改めて考えてみました。そもそもQBPなども含めて「ワンショットナローバンド」と呼ぶらしいです。



「ワンショット」の名の通り、一枚一枚ナローバンドフィルターを揃えなくて良いところが楽なところです。

特に広角で撮影したい場合に例えばフルサイズで撮影しようとすると、2インチクラスのナローバンドフィルター一枚一枚の値段は馬鹿になりません。一番の問題はフルサイズのモノクロカメラでしょうか。CMOSカメラでフルサイズのモノクロになってくると4-50万円コースです。

その一方、ワンショットの場合は、今回のDual BP Filterが2万円、一眼レフカメラが改造済みの6Dなら10万円程度です。この値段の差はかなりのものです。

一方、ワンショットが不利な点は、まずはカラーセンサーなので解像度が出ない点です。それでも広角で撮る場合はそこまで問題にならないでしょう。分解能が効くくらいのところで勝負する場合は、長焦点になってくると思うので、小さなセンサーサイズの方がむしろ適している場合も多く、無理に2インチクラスのフィルターを使う必要性も薄れてきます。

もう一つは、淡いところをどこまで出せるかです。これはより波長幅の狭いフィルターが選べる単独のナローの方が有利でしょう。光害地や月が明るい時にはこの差が大きくなってくるかと思います。ここのところに価値を見出すかが決め所でしょうか。それでもDual BP Filterは相当の場合において、強力にかなりの結果を出すことができて、かつ「安価で簡単」と言うところがポイントなのかと思います。

今の私だと、そこまで無理をして広角単体ナローの道に行くことは、よほどことがない限り無いのかと思います。今回この画角で、淡い青いところを出せたのは大きな成果で、かなり満足してます。

もっと狭い範囲で、例えば手持ちのASI294MM Proを使って、Dual BP Filterと単独のAOを比較するのは興味があります。純粋にDual BP Filterがどこまで迫れるかというのを見てみたいという意味です。いつか機会があればやってみたいと思います。


まとめ

DBPは色が限られてしまうので多少のっぺりするとはいえ、HαとOIIIが支配的な天体はDBPは圧倒的に強いです。一眼レフカメラで一発で撮れてしまうのも楽なところです。天体を選びますが、HαとOIIIが支配的な星雲ならかなり淡いところまで出せそうです。

できるならこれでSh2-240を狙ってみたい気がします。青いところが出るか?やるとしたらまた10時間コースですね。



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