ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:AZ-GTi

SWAT + AZ-GTi = SWgTi (スワッティ, gは発音せず)の開発の過程のまとめです。


SWAgTi始動

アイデアが出てから、実際の撮影に至るまでです。ディザーに挑戦しましたが、この時はまだ成功しませんでした。







番外編

プレートソルブなど、SWAgTiに付随する機能のテストです。







開発第2期

2023年の初期開発からおよそ1年経って、やっとディザー撮影に成功し、縞ノイズの回避に成功しました。しかも、オートガイドなしという手軽さは保っています。








SWAgTiの撮影例

オートガイドなしでも十分精度が出るSWAgTiの気軽な特徴を活かし、撮影が進みます。










星まつりでのデモ

Unitecさんのご好意で、星まつりで紹介させていただきました。







彗星の画像処理が残っていますが、彗星前にSWAgTiで NINAを使って長時間撮影したパックマン星雲が仕上がったので、先に記事にしておきます。




撮影

詳しくは前回記事を見て頂ければいいのですが、撮影時間は7時間に及びました。朝起きて画像を確認してみたら途中から雲が出たようで、使えたのは94枚で、1枚当たり3分露光なので合計282分 = 4時間42分です。この間、NINAでも順調に動いて、特にSWAgTiの長時間撮影で縞ノイズを避けるために必須であるディザリングも問題なく動いていました。SharpCapではこれまで最長でも2時間程度しか試していなかったので、NINAという新しい撮影ソフトの選択肢が増えたことに加えて、さらに長時間露光できたということは大きな前進です。

パックマン星雲は電視観望で見たことはあっても撮影は初めてで、私的には新規天体なので、またギャラリーページに載せるネタが増えることになります。




冷却時のダーク補正の有り無し

SWAgTiシリーズでは以前、冷却を(忘れて)してなくて、センサー温度が高い状態で撮影した場合の、ダーク補正有り無しの比較をしましたが、結果は大きな違いが出ました。


さすがに夏場で温度が高いと、ホットピクセルの影響が大きくなり、何も補正しないと相当ノイジーになります。冷却がなくても、ダーク補正することで、なんとか見える画像になるということがわかりました。

その一方、冷却さえしてしまえば、たとえダーク補正なしで十分見える画像になるということも示しました。


その時の天リフさんのピックアップ配信で、冷却した場合の、ダーク補正した場合としない場合でどう違いが出るかを知りたいとか言われていたので、今回その比較をしてみます。


SWAgTiでのダーク補正の効果

セットアップですが、鏡筒がRedCat51で、カメラはUranus-C Proを−10℃に冷却しています。1枚あたりの露光時間は180秒で、カメラのゲインは本当はHCGがオンになる220にすべきを間違えて100としてしまいました。NINAでのカメラのオフセット設定は40です。ライトフレームは10月9日に合計139枚撮影しそのうち94枚を使い、ダーク補正比較のためのダークフレームは後日77枚撮影して使いました。

SWAgTiの簡単撮影の特徴を活かすために、バイアス補正、フラット補正などは無しで処理します。解像度を上げたいので、drizzle x2を選択しておきます。今回はダーク補正の有り無しだけを比較します。

PixInsightのWBPPで出来上がったdrizzle x2のマスターライトファイル画像を、ダーク補正有り無しで比較してみます。

comp_dark
左がダーク補正無し、右がダーク補正ありです。ダーク補正なしの方がクールピクセルっぽい落ち込みが少しきついくらいでしょうか。でも見ている限りダーク補正の有り無しはわずかの差のようで、細かくこだわらなければ、ほとんど問題になることはないでしょう。これ以降はSWAgTiの簡単撮影の特徴をキープするために、少なくともUranus-C Proを冷却した場合ではダーク無しで進めることにします。


結果

画像処理は至ってシンプルです。今回のセットアップでは周辺減光もほとんどないのですが、念の為ABEの2次だけをかけました。その後SPCCをかけましたが、使った光害防止フィルターがDBPとそこそこきついので、色の諧調がどうしても乏しくなってしまいます。そのため、Photoshopの段階で色バランス、特に青系を少し強調しています。また、WBPPの際にDrizzleを2倍で適用しているので、BXTを使い相乗で解像度の向上効果を狙っています。

画像処理としてはこれくらいでしょうか。PixInsightでの処理もPhotoshopの過程も、私的にはかなりシンプルです。SWAgTiのシンプル撮影には、あまり時間をかけないシンプルな画像処理がいいのかと思います。

結果です。

「NGC281: パックマン星雲」
180_00s_RGB_drizzle_2x_ABE2_SPCC_BXT02_0_10_MS_HT_2_5s
  • 撮影日: 2024年10月9日21時3分-10日2時48分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
  • フィルター: サイトロンDBP
  • 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)
  • カメラ: PlayerOne Uranus-C Pro (-10℃)
  • ガイド:  なし
  • 撮影: NINA、bin1、Gain 100、露光時間3分 x 94枚 = 282分 = 4時間42分
  • Dark, Flat: なし
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

さすがSWAgTiのお気楽撮影、画像の説明も情報が少なくていいので楽です(笑)。出来上がった画像を見る限り、星雲本体も十分な解像度も出ていますし、微恒星まで綺麗に出ていて、そこそこ満足です。

恒例のアノテーションです。ちょっと斜めになってしまいました。カメラの回転角の調整を忘れてしまっていたようです。
180_00s_RGB_drizzle_2x_ABE2_SPCC_BXT02_0_10_MS_HT_2_5s_An


まとめ

これまでSWAgTiでいろいろ工夫してきたのが、やっと実を結んできています。ポタ赤クラスなので普通の赤道儀よりもコンパクトで軽いです。それでいてプレートソルブなども含めて今時の機能は全て使え、かつ追尾精度は大型赤道儀にも負けないくらいいいので、ガイドも必要ないです。パッと出して、実際の撮影時の設置も、撮影中の手間もかなり楽です。カメラを選べばダーク撮影もフラット撮影もしなくてもいいので、画像処理も短時間で済み、それでこれだけの画像が得られるなら、かなり楽しいと言わざるを得ません。彗星の時もそうだったのですが、カメラレンズや軽量鏡筒の場合は、ここ最近はSWAgTi一択になっています。

あと、今回試したダーク補正有り無しの比較を、定量的に数値で示そうと思っています。かなり面白い結果になりそうなので、またまとまったら記事にします。

10月の初めに少し晴れ間があったので、少し前に新しく実装されたというSynScan Proのプレートソルブ機能をテストしてみました。

個人的な狙いとしては、SWAgTiで使えるかどうかです。今の所SharpCapでプレートソルブしてから長時間撮影をすると、SynScan Proとの接続が不安定になってしまい、途中のディザリングができなくなってしまいます。前回のSWgTiの記事ではプレートソルブをした後に、一旦SynScan Proを落としたり、アラインメント情報をリセットするなど、少しトリッキーなことをして、プレートソルブを使いつつ問題を回避しています。SynScan Proの新機能のプレートソルブでこのSharpCapのプレートソルブを置き換えられないかと思ったのが直接の動機です。

この記事自身はSynScan Proのプレートソルブ単体の使い方の説明にもなっていると思います。単独でもかなり強力なツールですので、興味がある方はぜひお試しください。


ソフト的な準備

今回のプレートソルブを使ったSynScan Proの「SynMatrix AutoAlign」ですが、2024年8月10日アップデートのバージョン2.5.2から搭載された新機能です。この機能を使う場合は、2.5.2以降のできるだけ最新版をダウンロードしてインストールしてください。2024年10月7日現在はまだ2.5.2が最新版です。


ダウンロードページによると、このアラインメントの新機能を使うためには

index-4108.fits

をダウンロードして、SynScan Proの「fits」フォルダにコピーしてくださいとあります。ただし、これらのファイルはgoolgeドライブにアップロードされているので、アクセするにためにはgoogleアカウントが必要なようですのでご注意ください。

この新しいプレートソルブアラインメント機能はSynScan Proにカメラを接続することが大前提です。そのためiOSでは使用できないとのことです。私はWindowsにUSBでカメラを繋いで、Windows上でSynScan Proを走らせました。iOS以外では動くということなのですが、Androidもカメラを繋げばこの新機能を使えるということなのでしょうか?私はAndroidを持っていないので確認できていませんが、カメラの接続が可能ならおそらく動くのではないかと思われます。


テストで使用した機材

今回試した機材と接続について改めて説明します。
  1. 三脚にAZ-GTiを載せ、そこに鏡筒(RedCat51)を載せます。
  2. 鏡筒には撮影用カメラとしてPlayerOne社の冷却CMOSカメラのUranus-C Proを取り付けます。
  3. WindowsノートからType-CのUSBケーブルでUranus-C Proに接続します。
  4. SynScan Proの2.5.2をWindows上で走らせます。
  5. AZ-GTiの電源を入れ、WindowsからWi-FiでAZ-GTiに接続します。
今回は(AZ-GTiをSWAgTiに載せてあるため)AZ-GTiを赤道儀モードで動かしましたが、経緯台モードでも同様に動くはずです。

次に実際に動作させて新機能のSynMatrix AutoAlignを使うための準備をします。
  1. 初期状態では、鏡筒は北向きにセットします。
  2. カメラの画面を見るためにSharpCapを立ち上げ、SharpCapからカメラを選択/接続し、(赤道儀状態で北極星方向を見ているはずなので)星が画面内に見えていることを確認します。
  3. もし何も見えなかったら、鏡筒に蓋がされていないか、ピントが合っているか、SharpCapの露光時間は1秒程度以上になっているか、ゲインは十分に高いか、ストレッチはされているかなどを確認してください。経緯台モードの時には鏡筒が水平方向なので、星は見えないはずですが、いずれ星が入る用になった時に、ピントをきちんと合わせることを忘れないでください。
  4. まずは普通の初期アラインメントです。私は通常ワンスターアラインメントを使っています。
  5. 例えばターゲット天体にベガを選びますが、最初の初期導入ではほとんどの場合ターゲット天体は画面内に入ってきません。
  6. とりあえずターゲット天体が入っていなくても、何か星が映っていることを確認したら、星形マークがある横長のボタンを押して、ワンスターアラインメントを完了します。
  7. 最後に、SharpCapでカメラ画像を見ていると思いますが、一旦SharpCapでのカメラの接続を切ります。「カメラ」のところで接続さているカメラを再度選択すると接続が切断されます。面倒なら、SharpCapを終了させてしまってください。

これでSynMatrix AutoAlign使用の準備が完了です。


新機能を使用してみる

SynMatrix AutoAlignを開始します。まずSynScan Proのトップ画面から「アラインメント」を押します。次の画面で「SynMatrix AutoAlign」を押します。

51_11_synscan

すると、SynMatrix AutoAlignに移りますので、以下のようにカメラを選択します。
52_14_cameraall

ここでは手持ちのカメラがPlayerOneなので、「Player One Camara 1」を選びましたが、自分の手持ちのカメラに合わせて選択してください。ここで重要なのは、最大手のZWO以外のカメラもかなりサポートされていることで、少なくとも今回はPlayerOneカメラを動かすことができました。

カメラが接続されると、以下のように背景が赤っぽい色になります。星が見えているようには思えないのですが、これで大丈夫です。この画面でピント合わせをするのは至難の業だと思うので、あらかじめSharpCapでのピンと確認があった方がいいのかと思います。ここで注意ですが、SharpCapにカメラが接続されたままだと、SynScan Pro側でカメラが接続されません。もし画面が以下のように赤くならなかったら、SharpCapのカメラ接続がきちんと外れているか、今一度確認してみてください。
53_13_POcamera

ここではカメラの設定のために、上記画面にある「Properties」 ボタンを押します。すると以下のような画面になるので、カメラの設定をします。

54_01
私はPresettingをHighest Analog Gainにしました。露光時間がデフォルトで0.5秒程度と短いので、高いゲインの方が有利だと思ったからです。これで「OK」ボタンを押します。

次に設定するのが、背景の色です。左側の「Histgram Stretch」ボタンを押すと、以下のような画面になります。
55_15_red
デフォルトでは「Red tint」がチェックされています。これを外すと、上のように背景が通常の黒っぽい色になります。これは好みだと思うのですが、私は赤っぽいのが落ち着かなくて、背景を上のように変えました。

次に、同じ画面で「Expornential stretch」を選びます。画面が暗すぎたり明るすぎたりする場合は、すぐ下のバーを左右に動かして調整してください。不思議なのは「Bright」側に動かすと背景が暗くなることです。バグなのか、仕様で何か意図があるのか、今の所不明です。

56_17_exposure

問題は、これでも星が見えているようにはあまり思えないことです。ストレッチがあまりうまくいっていないのか、RedCat51の星像が鋭すぎて点にしか見えないのか、いずれにせよ一見星が見えていないようでもプレートソル分ではきちんと星を認識するようなので、心配しないでください。

これでだいたい準備完了なので、オートアラインメントを走らせます。左側の「Run」を押します。以下のような画面になるので、何回アラインメントを繰り返すかを選びます。私は最小の2回の「2points」を選びましたが、(極軸がある程度程度よく設定されていたからかと思いますが)これでも十分な精度でした。
57_18_points

ここで「Run AutoAlign」を押すとアラインメントが始まります。その際、なぜか背景が再び赤くなりますが、今のところ仕様のようなので驚かないでください。

2回のアラインメントのうちまずは1回目ですが、これは今の画角位置を動かさずに、画面をそのままキャプチャーして、プレートソルブで位置を計算します。この時に
  • カメラが接続されていないと全く進まなくなること
  • カメラが接続されていても星が入っていない状態だとエラーになること
は確認しましたが、他にもトラブルになる原因はいろいろ考えられると思いますので、各自で試してみてください。最初のプレートソルブがうまくいくと、鏡筒が動いて見ている方向が変わり、再び画面をキャプチャーして、プレートソルブを繰り返します。全てうまくいくと以下のような画面になり完了です。

60_24_done

これで「Close」を押し、左上の「<」ボタンを押すと元の画面に戻ります。

再びSharpCapなどでカメラに接続して、カメラの画像を見てみます。アランメント情報が更新され
、精度が上がっているはずなので、この状態でSynScan Proから天体を自動導入すると、画面内に目的の天体が入ってくると思います。ちなみに、最初のワンスターアラインメントでベガを選んで、そこからAutoAlignを実行した後に、再びベガを自動導入すると以下くらいの精度になりました。
62_vega

かなり真ん中に入っていると思います。

続いてM27も導入してみましたが、ベガの時よりは少し真ん中からズレていますが、そこそこの精度だと思います。少なくとも画面内には入ってくるので、あとは方向ボタンを押してマニュアルで微調整すればいいのかと思います。
61_28


まとめと今後

一通り試しましたが、プレートソルブもかなり安定していて、全く問題なくうまく動きます。何度か試しましたが、少なくともソフトが問題で失敗するようなことはありませんでした。無料のアップデートでこれだけ使えるようになるのなら、とてもありがたいです。

あえて注文をつけるとしたら、
  • 背景の色はどうあれ、恒星をもう少し見えるようにストレッチを工夫してほしい。
  • 恒星が認識できたら、マーキングするなど、うまくいっているかどうかをユーザーにわかるようにしてほしい。
  • SynScan Proを通常使う時のアプリの面積に比べて、AutoAlignで使うときの画面の面積をかなり広げる必要があるので、自動で大きさが切り替わるとか、うまくデザインして欲しい。
  • 他のソフトでカメラが接続されていても、SynScan Pro側でカメラを認識できるようにして欲しい。
とかでしょうか。特に最後のカメラの認識ですが、ドライバー絡みなので難しいと思いますが、カメラを1台で運用する場合にはカメラの切り替えは(特に低温にしている時などは)大変で、使い勝手に大きく差が出るかと思いますので、もし実現できるなら検討していただければと思います。


SWAgTiで使えるか?

その上で、このSynScan Proのプレートソルブが、元々の目的のSWAgTiで使えるかどうかの議論をしてみたいと思います。

まず、SharpCapのプレートソルブを一度でも使うと、その後の長時間撮影の時にSynScan Proとの接続が不安定になることが問題です。でもプレートソルブ自体は相当便利で、これまで単機能に近かったSWATにAZ-GTiの機能を足すことで目玉のプレートソルブを使えるようになるのなら、かなりの進化になります。

では今回のSynScan ProのプレートソルブがSharpCapのプレートソルブの代わりになるかというと、結論としては十分代わりになるのではというのが、今の所の私の見解です。これをきちんと判断するためには、いくつか確認しておきべきことがあります、

まず、カメラを一つしか使っていないことです。SWAgTiの特徴の一つに、SWATの高精度追尾を利用したノータッチガイドを実現するというのがあります。すなわち、ガイド用のカメラを省いているので、カメラは撮影用一つしかないのです。

今回は焦点距離250mmの鏡筒に取り付けた1/1.2インチの撮影用カメラでSynScan Proでもプレートソルブができました。まず、この撮影カメラでプレーとソルブが問題なくできたということは特筆すべき事柄として認識すべきだと思います。その上で、上の本文中にも書きましたが、カメラが一台なので、ソフト間をまたぐ時にカメラの接続をオンオフする必要があります。特に、撮影用に低温にしている場合には、これは大きな手間となるでしょう。

SWAgTiの場合、実質的には
  1. 最初は常温でSharpCapでピントなどを合わせて、
  2. SynScan Proに切り替えてプレートソルブ
  3. 再びSharpCapにカメラを切り替えて、SynScan Proで自動導入
  4. 画面内に天体が入っていることを確認して、マニュアルで位置を微調整
  5. カメラを低温にして、撮影する
というような手順になると思います。長時間露光を目指しているので、天体をコロコロ変えるようなことをすることはないと考えると、最初に一度プレートソルブができればいいという考えです。

天体を変えるとき、例えば一晩に複数の天体を撮影する場合は、カメラ温度を一旦上昇させてカメラを切り替えて、プレートソルブを含めて(SWATで追尾しているため、いずれにせよAZ-GTiの位置情報は役に立たないので)一からアラインメントをする必要があります。プレートソルブをするためだけに一旦カメラの温度を上昇、撮影時に再び温度を下げるというのが余分な手間となります。温度の変化は結露などのトラブルになることもあるので、本来ならこれは避けたいところです。

一晩で一天体しか撮影しない、もしくは天体の切り替え際アランメントの際に温度の切り替えを許容するのなら、今回のプレートソルブは十分実用になるでしょう。SharpCapでのプレートソルブがSynScanとの接続を不安定にするので実質使えないことを考えると、大きな進歩です。

さて、今回のテストは少し雲があったときに試していて、テスト終了間際にさらに雲が厚くなってきたので、撮影までには至りませんでした。これ以上のSWAgTiでの使い勝手は、実際に撮影した時にまたレポートしたいと思います。


SWAgTiのセッティングが楽なので、短い時間でも撮影する気が起きます。まだテスト撮影なので、お気楽にM20です。今年は本当に天気が良くなくて、たまに晴れてもそれが長い時間続きません。結局今回撮影できたのは、3分露光で16枚の合計わずか48分です。月が出るまで2時間くらいはあったのですが、途中で曇ってしまいました。まあ南の低空なので、雲も出やすく仕方ないですね。

IMG_9916


夏場の非冷却のテスト?

今回のテーマは「冷却はなくてもいいのか?」です!

前回のSWAgTiの記事で、ケーブルの数を減らしたいと書きました。夏の暑い日に冷却がないとどうなるかを試してみました...とか言いたいのですが、実はこれ全く嘘で、単に冷却するのを忘れただけです。NINAだと冷却されてないと警告が出るのですが、SharpCapはそういった親切設計にはなっていません。

NINAってできるだけ撮影を失敗しない設計になっています。冷却設定も親切で、まだ冷えている途中だと完全に冷えるまでは警告を出してくれます。例えばファイル形式はデフォルトfitsで、形式を変えるときは結構奥の方で「あえて」変更してやる必要があります。SWAgTiだと必要ないですが、例えばガイドソフトがつながっていないと警告を出してくれます。SharpCapは撮影「も」できる汎用ソフトですが、撮影「専用」ではないので、色々「設定できる余地」が残っていて、ミスもあり得てしまうというわけです。

でも今回はさらにしょぼいです。もっと言い訳するんですが、最初はSharpCap上でちゃんと冷却したんですよ。でも、一度SynScan Proとの接続がトラブって、一旦「あえて」SharpCapを落としたんですよね。後から考えたらわざわざ落とさなくてよかったんです。でも落とした後の復帰で他に気を取られていて、冷却をオンにするのを忘れて撮影を開始してしまったというわけです。そういえばライブスタック画像を見た時に「なんかノイジーだなー」とか思ってたんですよ。でも気づいたのは撮影も終了して、次の日に画像処理を始めてからでした。なんかおかしいと思ってfitsのヘッダ情報を見たら、センサー温度が32度とかになっていました...。


プレートソルブをなんとか使う

冷却は忘れてしまいましたが、その分トラブルに対して色々試したおかげで、SWAgTiでの撮影までのコツが少しわかりました。

前回報告した通り、やはりプレートソルブをすると、しばらくして接続がおかしくなるのはもう間違いないようです。今回もそうだったので、再現性があります。今回試して、接続がダメになった後にSharpCapを立ちあえげる必要がないのはわかりました。SynScan Proのみ一旦落として再起動すると、うまく再接続されるときもあるし、再接続されずにエラーが再度出るときもあります。うまくいかないときは更に、SynScan Proの「アラインメント」の「リセット」を押すと、再起動でエラーが出ることがなくなるようです。たとえリセットしたとしても、実際のアラインメント情報はAZ-GTiの方に残っているため、再度SharpCapから接続すると今向いている方向の情報がきちんと出てきます。

というわけで、こんな順序がいいのかと思います。
  1. SharpCapからSynScan Proに接続する。
  2. SynScan Proで、ワンスターアラインメントを実行する。
  3. SharpCapからプレートソルブを実行して、初期アラインメントの天体が画面中央に入るのを確認する。
  4. (この時点で落ちることは多分まだないので)SynScan Proで、撮影対象天体を導入する。
  5. SharpCapからプレートソルブを実行して、撮影対象天体が画面中央に入るのを確認する。
  6. 必要なら、SynScan Proの矢印ボタン、もしくはSharpCapの矢印ボタンで画角を調整する。
  7. (プレートソルブを何度かしたり、しばらく時間が経ったりして)接続が切れたり、接続エラーが出たら、一旦SynScan Proを落とし、SynScan Proを再起動して、アラインメントの「リセット」を押す。
  8. すでに対象天体はプレートソルブされていい位置にいるはずなので、自動追尾をSWATに切り替える。
  9. ライブスタックを始める。同時にAZ-GTiの自動追尾が強制的にオンになるので、すかさずAZ-GTiの方の自動追尾をオフにする。
  10. ライブスタックの撮影時間を希望の長時間に設定する。
  11. ライブスタックのクリアを押して、長時間露光を開始する。
くらいでしょうか。とにかくポイントは、SharpCapとAZ-GTiの接続が切れたら、一旦SynScan Proを再起動、アラインメントの「リセット」を押すことです。

あ、前回までSharpCapがそこそこ古いバージョンだったのですが、今回最新にしても基本的に接続の安定度が大きく変わることはありませんでした。プレートソルブはやはり何か問題を引き起こすようです。ただ、最近AZ-GTiの方が大幅アップデートされて、AZ-GTi単独でプレートソルブ機能が実現されたようです。これがうまく動くなら、今の不安定な原因のSharpCapからのプレートソルブをしなくていいかもしれないので、期待できそうです。


撮影開始

と、こんなテストを色々していたら、いつのまにか天文薄明終了時間になったので、撮影を開始しました。上の通り、最低限のプレートソルブは使えた(一旦SynScan Proでのアラインメントからのリセットは必要でしたが)ので、かなり楽でした。その後は、SWAgTiならではの、ガイド無し、SWATの精度の良さに頼った、AZ-GTiを利用しての簡単ディザー撮影でした。

実用上は前回からかなり進歩していて、前回は一旦AZ-GTiをホームポジションまで戻して、ワンスターアラインメントもさらには目標天体の自動導入も、プレートソルブ無しで頑張って導入していました。


非冷却ではやはり...

さて、冷却忘れの結果ですが、なかなか悲惨なことになりました。処理は前回と同じ、ダーク補正も、フラット補正も、バイアス補正も、何も無しのライトフレーム単体でのスタックです。下の画像が、スタック直後の画像をオートストレッチしたものです。
masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

拡大するとわかりやすいでしょうか。
180.00s_FILTER-NoFilter_RGB_cut

ディザーは効いているので、縞ノイズのようにはなっていませんが、ホットピクセルが出まくりです。今回はこれでもSharpCapで簡易ホット/クールピクセル除去をオンにしています。でも全くダメだったので、WBPP時にCosmeticCorrectionでホットピクセルをソフト的に緩和しようとしましたが、焼け石に水でした。上の画像はそのCosmeticCorrectionも効かせた状態です。

この状態から、なんとか頑張って画像処理を進めましたが、やっぱりどうやってもダメでした。ホットピクセル起因のノイズが多すぎて、M20本体を炙り出すこともままならないです。


仕方ないのでダーク補正

仕方ないので、ダークファイルを別途撮影しました。一手間増えますが、これで非冷却のホットピクセルが補正できるなら、かなりマシです。
masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

180.00s_FILTER-NoFilter_RGB_cut


やっと画像処理

このまま画像処理を進めても、十分耐えるようです。低空で少し下にカブリがあるみたいなので、ABEの4次だけかけて、SPCC、BXT、iHDR、GHSと進めて、最後StarNetで星と背景を分離してPhotoshopに渡します。まあ、通常やっている処理をもう少し簡単にした程度でしょうか。結果はというと、かなりマシになりました。
180_00s_ABE4_SPCC_BXT_iHDR_GHS2

M20のあたりだけ切り出してみます。

180_00s_ABE4_SPCC_BXT_iHDR_GHS2_cut

トータル露光時間が48分と、1時間にも満たないので青いところはまだ全然不十分です。今回DBPを使っていますが、比較的青がでにくい強いフィルターにしては、かろうじて青い所も出たのかと思います。


SWAgTiの利点

今回は焦点距離250mmの3分露光ですが、BXT前でも流れるようなことは全くなく、曇る前の画像は、何かで揺れてしまった1枚を除いたので、採用率94.4%でした。この追尾の安定度はSWATならではで、AZ-GTiが途中にあっても撮影中にモーターに信号さえ行かなければ全然揺れないことがわかります。

今回は、予期せず非冷却になってしまい、SWAgTiでどこまで手を抜けるか試したことになるのですが、結論としては夏場は少なくとも冷却するか、ダークファイルを別途撮影してダーク補正すれば、ホットピクセルに関しては許容範囲になるということでしょうか。

冬場ならなんとかなるか... ?


前回の記事で、SWAgTiのディザーがうまくいくかもと書きましたが、まだ確証がありませんでした。


少し晴れ間があった日の夜、改めてディザー撮影ができるかどうか試してみました。長時間露光が効く天体ということで、M27亜鈴状星雲の羽を狙うことにしました。 

最初に結果だけ書いてしまいます。3分露光で40枚、2時間分の撮影ができましたが、
見事にディザーで画面を揺らすことができました!

動画で示します。ピョコピョコずれているのがわかるかと思います。
Blink

これで縞ノイズが解決されるのか、画像処理までしてみます。


設定

今回のSWAgTiのディザーをソフト的にどう設定したのか、詳しく書いておきます。

ディザーですが、通常の場合はオートガイド撮影が前提で、オートガイドによってソフト側から撮影中に信号を出して架台を制御できる状態にしているわけです。ディザーはそれに加えて1枚1枚の撮影の合間に、架台に信号を出して少しだけ(数〜数十ピクセル)画角をずらし、ホットピクセルが重ならないようにして、また撮影に入ります。

通常のディザー撮影から考えると、SharpCapのディザー撮影はかなり特殊です。まずガイド撮影やディザーは基本的にライブモードを使います。なぜこう設計したのかは少し疑問もあるのですが、とにかくライブモードでしかガイド撮影もディザーも出来ません。さらに特殊なことは、SharpCapでは、オートガイドなしでディザーすることができます。要するに、ガイド鏡がなくても、PHD2などのガイドソフトを使わなくても、それらとは独立にディザーができてしまうということです。もちろん、ディザーで架台に信号を送る必要はあるので、その制御のためのセットアップは必要です。それでもこの「オートガイドが必要ない」ということは、SWAgTiのお気楽撮影の目的にかなり合致していて、今のところSharpCap以外にガイド無しでディザー出来るソフトは、少なくとも私が探した限りでは見つかりませんでした。今回SWAgTiの撮影ソフトにSharpCapを選んだのは、ガイドと独立してディザーができるというのが1番の理由です。だって、SWATの追尾性能が飛び抜けていいのに、あえてガイド鏡とか用意するのはなんか負けた気がするからです。

そのディザーの設定です。まずはSharpCapの設定のガイドタブから。
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  • 「ガイディングアプリケーションは」3つ目の「ガイディング無し」を選びます。これでガイドは無しでディザーのみできるようになります。
「ディザリング」のパラメーターは状況に応じて適当に設定しますが、重要なのはどれだけずらすか、収まるまでにどれくらいかかるかでしょうか。
  • 今回はディザーでの揺れ幅を見るために「最大ディザステップ」をかなり大きくしています。これはもっと小さくてもいいでしょう。
  • 「最小整定時間」はある程度長めの方がいいかと思います。ディザー時にAZ-GTiを動かすのですが、モーターの精度がSWATと比べて劣るので、キックしてしばらく揺れる可能性があります。一年前のテストではそんな兆候が見られたのですが、今回撮影した画像を見ている限りではキックのようなものは確認できなかったので、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。

次に、ライブスタックモードでのガイドタブの設定です。
14_cut
  • 最初の「Monitor Guiding Applicaton」にチェックを入れると、実際にディザーされます。
  • 「Only stack when guiding is active」はチェックしましたが、ちょっと確かめきれていません。これがないとディザーしている最中もライブスタックするかもしれません。
  • 私は3枚撮影するごとにディザーするようにしています。1枚ごとにディザーをかけると撮影終了までの時間が増えてしまからです。
  • 「Reduce Exposure While Dithering」はオンにしておいてください。長時間露光に設定してあっても、ディザーの最中は短時間露光に勝手に切り替えてくれます。揺れが収まったかどうか見るのに、短時間露光で比較することが必要になります。
  • 右に、ディザーやドリフトなどで中心からずれていくと、プレートソルブを使って元に戻すという機能もあります。今回は使っていませんが、M27のような中心が決まりやすい天体はオンにしておいたがいいかもしれません。

もう一つ重要な設定があります。ライブスタック画面左の「Raw Frames」のところです。
03_cut
  • ここを「Save except for when Paused/Dithering」にしておきます。こうしないと、ディザリング中の短時間露光の画像が何枚も保存されてしまいます。
今回は露光時間を180秒、ゲインを200でHGCモードにしてライブスタクを始めると、3分ごとにRAW画像が保存され、3枚ごとにディザーが適用されます。ディザーが動いているかどうかは、ライブスタックパネルの「Log」タグを見ると、実行時に色々メッセージが出てくるので、それを読むとうまくいっているかなど詳細が分かります。

あとは通常のライブスタックと同じでしょうか。あ、一つ忘れそうなことがあります。毎回のことなのですが、AZ-GTiで追尾をオフにしても、SharpCapでライブスタックを立ち上げた瞬間になぜか強制的にAZ-GTiの追尾がオンになります。ライブスタックをオンにしたときに、毎回必ずAZ-GTiの追尾を改めてオフにするようにしてください。そうしないと2重で追尾することになり、星が画面内を流れていきます。


プレートソルブがトラブルの種

撮影中は少し雲がかかっていましたが、基本的に安定していて順調でした。前回書きましたが、プレートソルブが安定性に関係するのは確実みたいです。

まだ一回しか試せてませんが、最初にプレートソルブをしてから長時間露光を開始すると、やはり1枚目の途中でSharpCapの「望遠鏡制御」のところの「赤経」の更新頻度が徐々に広がり、程なくして更新が止まります。その後、ディザーをするときにSharpCapからSynSan Proに信号を出しても反応がないので、エラーダイアログが出てきます。

一旦、AZ-GTiの電源を落とし、PCも再起動し、次はプレートソルブなしでマニュアルで再度初期アラインメントから試すと、不安定なところは微塵も出ずに、まるまる2時間連続で撮影ができました。プレートソルブの具体的などの操作が原因なのかまでは特定できていません。できればプレートソルブはつかいたいので、何か回避策がないか今後探っていきたと思います。


ライブモードでの実際のディザー撮影

さて、撮影ですがディザーはライブスタックモードですることになるので、必然的に常時仕上がり具合を見ることができます。これが結構楽しかったです。なんと、総露光時間わずか30分ですでに羽が確認できます。
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鏡筒のせい?カメラのせい?ちなみに鏡筒は最近手に入れたRedCat51で、カメラがUranus-C Proです。フィルターはサイトロンのDBP(Dual Band Pass)の48mmをRedCatに取り付けて使いました。機材については次回記事で詳しく書きます。

約2時間経ったのちのライブスタック画像です。羽もさらに濃くなっています。
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うれしいことに、少なくともこれを見る限り縞ノイズは全く発生していないようです!

2時間少し撮影しましたが、最後の数枚は雲が出てきたので、ちょうど2時間分を画像処理に回すことにします。上のライブスタック画像は最後の雲の画像も入ってしまっていますが、長時間露光から考えたら影響は少ないようです。


ライブスタックとWBPPでのスタック

ライブスタック画像をfits形式で保存したRAWファイルと、PixInsightでスタックした画像にどれくらい違いがあるか比較してみましょう。一見したところではクオリティーは同じかと思いました。

これがライブスタック画像をオートストレッチした画像です。
Stack_16bits_41frames_7380s_22_23_34_cut


次がPixInsight上でスタックした画像をオートストレッチした画像です。
180.00s_RGB_cut

ほとんど同じに見えるかもしれませんが、よく見るとライブスタック画像の左上の真ん中よりに明るい緑の輝点群が、右下に軽く青の輝点群があるのがわかります。ホットピクセルが残っていて、ディザーで散らされたものの残りと思われます。PixInsightではWBPPの際に、Cosmetic CorrectionをAutomaticでhigh sigma = 10でかけたので、そこでホットピクセルが除去されたのかと思われます。ライブスタックでもSharpCapで簡易ホットピクセル除去をするだけでも、ライブスタック画像もそのまま処理できるくらいにホットピクセルが消えるかもしれませんが、今回は試していません。

今回、WBPPではフラット補正もダーク補正もしていません。RedCat51と1/1.2インチのUramus-Cではフラット補正は必要がないほど周辺減光はないです。あ、CMOSセンサー面に埃がついているとダメですよ。フラット補正が必須になります。フラット補正をサボるためには、少なくともセンサー面はきれいにしておきましょう。ダーク補正もしていないので、ホットピクセルとコールドピクセルはCosmetic Correctionで除去しているだけですが、これで十分なようです。ダーク補正をしない場合は大きなメリットが一つあります。ダーク補正によってダークカレント起因のダークノイズが余分に加算されないということです。今回のような強い光害補正フィルターを使った「暗くて」、さらに「長時間露光」での撮影では、背景などの淡い部分がダークノイズで制限されている可能性があり、画像処理でダークノイズを増やさないことはかなり有利になります。具体的には、ダーク補正をするとダークノイズは√2倍になり、信号は増えなくて1倍のままなので、仕上がり画像のSN比の違いは最大で1/√2 = 0.71倍となり、損をします。ダーク補正についてのもっと詳しい計算を知りたい方はここをご覧ください。


一つ心配だったのは、バイアス補正でした。今回、バイアス補正もしていません。なのでバイアスファイルに含まれる決まった模様などのコヒーレントなノイズは除去されていないことになります。バイアスファイルに含まれるノイズは読み出しノイズと考えていいかと思いますが、長時間露光で相対的に読み出しノイズは効きが弱くなるはずなので、みている限り今回は影響がないように思われます。

と、今のところこのセットアップだとフラット補正もダーク補正もバイアス補正も、あえてしなくても問題はなさそうです。仮に多少画質に影響はあったとしても、フラットファイルとダークファイルとバイアスファイルを撮影する手間を省くのは、相当気楽です。


画像処理

画像処理はSWAgTiのコンセプトを崩さないように、できるだけシンプルにしたいと思います。WBPPでも、上で書いたようにライトフレームだけを処理しています。

上で書いたように、このRedCat51とIMX585の1/1.2インチ程度の範囲だと、光学的なフラット補正無しでも周辺減光がほぼありません。一度ABEの4次をかけましたがほとんど補正しなかったので、簡単のためPixInsightでのソフト的なフラット補正も無しとしました。 
masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB
スタック直後の画像の強あぶり出し。周辺減光はほとんど見られません。
左にカブリが少しあるように見えますが、これは実際に何か構造があるようです。
この構造はかなり淡く、今回の露光時間ではまだノイジーで
うまく出すことは諦めました。

結局PixInsightで使ったのは、スタックでWBPP、色調整でSPCC、恒星出しにBXT、ストレッチにiHDR、最後にNoiseXTerminatorで背景のノイズを緩和して、StarNet++で恒星と背景を分離までで、あとはPhotoshopに渡します。今回iHDRがうまくいって、自動的にうまく羽根まで炙り出してくれたので、Photoshopでは背景と恒星を重ねること以外には、ホントに最後微調整したくらいです。


結果

まずは全体像です。
180.00s_RGB_SPCC_BXT05_02_10_iHDRx3_NXT05_015_back2

少し画角が広いので、クロップしてみます。わずか2時間の露光ですが、既に羽もはっきりとわかります。

180.00s_RGB_SPCC_BXT05_02_10_iHDRx3_NXT05_015_back2_cut

肝心な縞ノイズですが、拡大した画像でも全く見えていません。

SWAgTiのディザー撮影大成功です。

これでSWAgTiが一気に実用的になりました。今後デフォルト機器として、使う頻度が増えてくると思います。


まとめ

SWAgTiのアイデアが出てから苦節1年。縞ノイズがどうしても気になって、どうやって解決しようかずっと悩んでいました。

一時はSharpCapとSynScan Proの間に何かソフト的に割り込ませようとも思いましたが、プログラミングはあまり得意でないので時間がかかりそうでした。でもそこにSharpCapが大幅改善されていて、(プレートソルブで不安定になる以外は)ほぼ目的通りのことができました。正直言って、わざわざガイド無しディザーを実用レベルに持ってくるためのアップデートだったとしか思えません。でもそもそもガイドも無しでディザーをやりたい人が実際どれくらいいるのでしょうか?たまたま開発がこの方向で進んだのか、もしくは誰かが開発者に助言してくれたのか、最近SharpCapフォーラムなどあまりフォローしていないので状況がわかっていませんが、とにかく感謝でしかありません。

ここまで使えるようになると、このSWAgTiで色々試したいことが出てきます。軽くて、コンパクトで、設置も楽。精度も出るし、機能的にも十分。5kg以下の機材は全てSWAgTiまかせにしてよさそうです。CGX-LもしくはCGEM IIとSWAgTiの2台体制でも、時間的にも精神的にも十分余裕が出そうです。使用頻度が大幅に増える予感しかありません。


久しぶりのSWAgTi ネタです。

1年ほど前から試していた
SWAT+AZ-GTi = SWAgTi (gは発音せず、スワッティ)。


SWATの追尾精度とAZ-GTiの柔軟性を合わせて、単機能に近いSWATに自動導入やプレートソルブなどの現代的な便利な機能を追加して使うことができるようになります。かつ追尾精度はSWATそのままと、互いの弱点を補い、いいとこ取りの機能となります。


SWAgTiの弱点

SWAgTiで目指していたところは「気軽な撮影」です。元々SWAT自身は1自由度の追尾精度がものすごくいい赤道儀で、ガイドなしでもそこそこの焦点距離で星を点像にすることができます。以前の SWAT350のテストでは、370mmの焦点距離で3分露光の場合、ガイドなしで歩留まり率は100%だったので、実用的にも十分だと思います。ガイドなしで気軽なSWATの撮影に、AZ-GTiの2自由度の便利な機能を追加して、さらに気軽にしようというのがアイデアです。

これまでのテストの過程で出てきた唯一の欠点が、長時間撮影時にディザーができないことです。


ディザーができないと、長時間撮影のドリフトなどでホットピクセルやクールピクセルが縞ノイズを作ることがあります。


実際に、SWAgTiの長時間撮影ででてきた縞ノイズの例がここにあります。


上のページでも挑戦していますが、縞ノイズは画像処理で改善しようとしても、緩和することはあっても完全に消すことはかなり困難です。できることなら撮影時に縞ノイズが出ないようにしたほうがはるかに楽で、ディザーはその解決策としては最も有効な方法です。

ところが、SWAgTi動作時にはSWAT側で恒星を追尾して、AZ-GTi側の恒星追尾を切る必要があり、AZ-GTiの恒星追尾がオフになるとSharpCapで出すディザー信号がAZ-GTiのモーター側伝わらずに、ディザーができないという結果になってしまったのです。

もちろんSWAT単体ではディザーすることはできないので、SWAgTiがSWATに比べて不利になったということではありません。ドリフトは数時間以上の長時間撮影で問題になってくるので、短時間撮影だと縞ノイズはそこまで目立ちません。SWAT単体で長時間撮影する際にどうするかですが、SWAT開発者が去年の胎内の星まつりで示してくれたように「撮影中に何度かわざと三脚をずらしてドリフトする方向を変える」とか、今年の福島の星まつりで見せてもらった10時間以上かけて撮影したというオリオン大星雲では「日を変えて何度も撮影することでドリフトの方向を一定にしない」などの対策をしているようです。ある意味余計な機材を使わないシンプルな解決策で、開発者の方が「そんな複雑なことはしてないですよ」とおっしゃられていたことが印象的でした。

なので、少し手間をかければ縞ノイズを避ける方法はあるということですが、私的にはやっぱりなんとかしたいので、再度ディザーに挑戦です。


ソフト的に何か間に割り込ませるか?

では具体的にどうするかですが、最初はSharpCapとAZ-GTiの間に何かソフト的に挟んで、命令を無理やり出せるようにしようと考えていました。Uedaさんがトラバースの赤道儀化でSynScan Appとトラバースの間に赤道儀のふりをするような別ソフトを間に入れて上手くいっているので、同じような手法が使えないかと思いました。幸いなことにソースコードを公開してくださっていて、C#で書かれているようです。初めての言語だったのですが、コードは規模的にも大きくなく、自分でビルドまでできて、とてもいい勉強になりました。SWAgTi用にどうハックすればいいのか、ある程度の目安が立ってきたので、とりあえず取り組んでみようと思っていた矢先でした。


SharpCapが変わった?

まずは状況の確認で、以前のSWAgTiの設定を再現します。再現といっても、プログラミングのための準備なので昼間の明るいうちでの確認になります。SWATとAZ-GTiを組み合わせて、SynScan ProからAZ-GTiに接続し、SharpCapからSynScan Proを操作できるように接続します。

ところがです、いつぞやのSharpCapのプレートソルブ関連の大幅アップデートらへんのことだと思うのですが、AZ-GTi側の恒星追尾をオフにしてもどうもディザー信号がきちんとモータまで届いているようなのです。

具体的にはSharpCapの右パネルの「望遠鏡制御」のところを見るのですが、AZ-GTiが恒星を追尾していると「方位」「高度」「赤経」が動き続けます。AZ-GTiが恒星を追尾を止めると「方位」「高度」は止まり、「赤経」のみ数値が動き続けるようになります。ここで SWATに恒星追尾を引き渡すと、ここまでのAZ-GTiの代わりにSWATが動き出し実際に星を追尾してくれるようになります。この状態でも、SharpCapの「望遠鏡制御」のところの矢印ボタンを押すと、信号はきちんとモーターまで行き、見ている方向を変えることができます。その際「方位」「高度」の数値もモーターへの信号に連動して動きます。ここまでは以前にも試した結果と同じでした。

ここでSharpCap上でライブスタックを立ち上げてディーザーをオンにします。以前はディザーをしようとしても実際にはモーターまで信号がいかなくて、画面は全く揺らされないことは確認していました。でも今回「望遠鏡制御」の数値を見ている限り、ディーザーのたびに「方位」「高度」の数値が動いているのです。以前この数値が動いていた記憶は全くない(動いていれば必ず気づいていたはず)ので、勘違いでなければ何か状況がわかっているはずです。少なくとも、現段階でこれらの動いている数値を信じるならば、ディザーはきちんと作動していることになります。


夜のテストは全くうまくいかず

昼間に試しただけでは、PC上に出てくる数値は動いていても実際の撮影画面が動くかどうかは見ていないので、まだ本当にディザーが動いているかどうかの確証は持てませんでした。なので夜になって実際に試してみました。ところがディザーを試す以前に、かなりひどい状況にぶち当たってしまいました。

IMG_9758

具体的には、一眼レフカメラ(EOS 6D)をSharpCapに繋ぎ、AZ-GTiで操作しました。CMOSカメラでなくてもSharpCapに繋ぎさえすれば、一眼レフカメラで極軸調整もプレートソルブも、全然問題なくできます。


今回も極軸調整をFS-60CBと6Dの画面で直接やり、初期アラインメントも6Dでプレートソルブを使うことで簡単に済ますことができました。
スクリーンショット 2024-08-03 215020_cut

その後、ターゲット天体を導入し、SharpCap右パネルの「望遠鏡制御」の矢印ボタンを使って位置決めをします。ここら辺までは問題ないです。

次に追尾をSynScan ProからSWATに渡して撮影に入る準備をします。ところが長時間露光を開始すると程なくしてSynScanとの接続がダメになります。ディザーをするためにはライブスタックモードにしなくてはいけません。 この接続トラブルはライブスタックに関係なく、ライブスタックをする以前に露光時間を分のオーダーとかに長くした時に発生するようです。SharpCapの「望遠鏡制御」のところでAZ-GTiからの位置情報が数値で見えるのですが、SWATで追尾しているので「赤経」の数値だけが増えていきます。最初はスムーズに数値が変わるが見えるのですが、徐々に数値が飛び飛びになり、最後は止まってしまって、それ以降は接続は切れているような状態になります。処理に時間がかかっているような印象で、何度やっても同じ状況になります。最初はCPUの負荷か何かと思って、SynScanの再起動、SharpCapの再起動、最後はPCまで再起動でもダメでした。

実はSharpCapとSynScan Proとの接続不安定な時は、SynScan Proを管理者権限で立ち上げると安定になるという情報があります。知り合いが試してみて、管理者権限での起動がものすごく効いて、実際にかなり安定になったという例を聞いています。ですが、今回の場合は管理者権限も効果がなく、状況は変わりませんでした。

次に一眼レフカメラが原因かと思って、ASI294MC Proに変えたり、さらにはPCが何か原因の可能性があるとも思い、別PCを持ってきて試しましたが、いずれの場合も最初はプレートソルブまで含めて順調なのに、長時間露光(180秒)の撮影の途中でSynScanとの接続がダメになり、その後はPCを再起動するまでは何をやってもダメです。ダメというのは、SharpCapからSynScan Proになんらかの信号を送った時に接続エラーが表示されるということです。PC再起動後はまたプレートソルブもできるようになりますが、長時間撮影開始でダメになると言うのを何度か繰り返しました。というわけでこの晩はここで諦めましたが、これまで電視観望で同じような状況にはしていたので、もしかしたら長時間露光がダメったのかもしれません。電視観望ではせいぜい10秒露光が最長ですが、今回は撮影ということで3分露光にまで伸ばしています。長時間露光が何か負担になっているのかもしれません。

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長時間露光を開始すると毎回こんなエラーが出てしまします。 


昼間に原因究明

次の日、昼間に今一度、全く同じ設定で試しましたが、なぜか今度は何をやっても安定します。カメラを変えようが、PCを変えようが、昨晩のトラブルは何だったんだというくらい、どうやっても不安定な状況を再現できません。3分の長時間露光でも全く問題がないです。一体何が問題なのでしょうか?

違うことといえば、昼間で実際に星が見えないので、プレートソルブはしていませんし、ライブスタックも星の位置合わせをせずに単に重ねていっているだけす。


再び夜に試して光明が!

その晩、昼間の状態を再現すべく、試しにプレートソルブなしでマニュアルアラインメントしてから長時間撮影してみたら、何と完全安定です。その後すぐに曇ってしまったので、プレートソルブありで不安定になるかどうかのテストができませんでしたが、長時間露光そのものは大丈夫ということはわかりました。ディザーも実際一回動かすことができて「望遠鏡制御」のところの「方位」も「高度」も数値が変わったのですが、肝心のディザー前後の撮影画像比較での動きがあったのかなかったのか、あったとしても移動量の設定値が小さ過ぎたようで、確証が得られるほどの揺れは確認できませんでした。

雲でこれ以上試せないので、この日はこれで撤収ました。今の段階でディザーが出来ているかどうかの判断はできていません。でも見込みはありそうです。今後もテストを続けたいと思います。

(2024/8/17追記: ディザー撮影成功しました!)



日記

あまりブログ記事にならない細かいネタも多いので、久しぶりに日記としてまとめて書いておきます。

お盆の季節になりました。8月7日の富山環水公園の観望会に引き続き、8月10日も高岡市のおとぎの森で観望会がありました。2週連続になります。初参加の観望会で、これまでは他の予定と重なることも多く参加できてませんでしたが、今年はお盆の休暇の初日で少し余裕もあるので参加することに決めました。機材は先週とと同じく電視観望で、20時20分頃に月によるスピカ食があるとのことで、外部モニターも用意して大勢で見ることができればと思っていました。夕方のまだ明るい頃は月もが見えていたのですが、暗くなり始めて機材も準備もできたころには空一面が曇ってしまい、それ以降は星も明るい月さえも、カメラを通した電視観望でも全く見えないくらいの雲になってしまいました。お客さんは100人以上と、かなりたくさん来てくれていたので、とても残念でした。もうこうなるとどうしようもないので、天文の話やクイズをずっとしていました。一番受けたのはASI294MCで暗闇が見えるかどうかで、カメラの周りには子供達が群がっていて画面に映る自分の姿を見て大騒ぎでした。

次の日の8月11日は自分の出身高校の天文部の合宿に参加させてもらいました。場所は奥飛騨で、富山からだとそう遠くない距離なので気軽に参加できました。昨年の12月にも豊田市元気村の合宿にも参加させてもらったのですが、それに引き続きとなります。年末の合宿もそうでしたが、残念ながら今回も天気には全く恵まれず、星一つ見ることもできませんでした。なんでもコロナ後にやっと復活した1年前の同じ場所での合宿の時は台風で、ここ最近の合宿は天文部としては非常に厳しいとのことでした。私は日を跨ぐ前くらいに帰路につきましたが、次の日は神岡の道の駅にある「カミオカラボ」まで行くそうです。でも夜の天気予報はあまり良くありません。ペルセウス座流星群なので、少しでも見えることができればいいのですが。

実は私も奥飛騨まで行く途中にカミオカラボに寄っていきました。
IMG_9803

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こんな面白い写真が撮れます。


とにかく最近は天気が全然ダメです。昼間はまだ比較的晴れているのですが、夜になるとドン曇りというパターンです。ペルセウス座流星群も自宅から雲の薄いところで1個だけ見ましたが、とても撮影とかするレベルの天気ではないです。せっかくの休暇でまだ月が昇っている時間もかぎられているので、なんとかお盆中に長時間撮影をしたいのですが、天気予報を見る限りまだしばらくは難しそうでうす。


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