ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:ASI294MMPro

ASO294MM ProのROIを変更することで、TSA-120での分光撮影ができるようになったのですが、その日は風が強くて撮影した画像はブレブレでイマイチでした。エタロンを使ったフェニックスでのHα画像撮影とも比較しようとしましたが、ミスでライブスタックした画像しか残っていなかったので、年末休暇の2日目の28日(土)、満を持しての比較検討です。


機材の違い

3パターンの分光撮影と、参考として口径4cmのエタロンを使った
  1. TSA120+ASI294MMPro
  2. FC76+ASI294MMPro
  3. FC76+G3M678M
  4. Phoenix+G3M678M
の計4種で撮影しました。上3つが分光、最後がエタロンです。見たいポイントは、波長分解能と、空間分解能です。

IMG_2314

IMG_2315

波長分解能は分光の3つはほとんど差が出ないことは計算上わかっています。厳密にはカメラのピクセルサイズが効いていて、G3M678Mを使ったFC-76の方がいいですが、高々1割程度の違いなので見た目ではわからないでしょう。今のセットアップでの分光撮影とフェニックスエタロンとはFWHMで5倍くらいの差があるので、ここまで差があると見た目にもわかるかと思われます。

空間分解能に関してはFC-76の口径で制限されていることがわかっているので、TSA-120が有利です。計算上はカメラの分解能は2.0umのG3M678Mでも2.3umのASI294MMのbin1でも効いていなくて(bin2だと効いてきて分解能が悪くなる)、口径の1.5倍の違いだけが効いてくるので、空間分解能は単純に1.5倍良くなるはずです。を1の1.5倍ほどいいはずです。空間分解能の1.5倍は見た目にも顕著なはずで、こちらも画像で見て確認できるはずです。

というわけで、波長分解能は計算上

3>1=2>>4

でFC76+G3M678Mが一番よく、空間分解能は計算上

1>3~2>4

でTSA120+ASI294MMProが一番いいはずです。

さて、実際の結果はどうなるのでしょうか?


撮影

撮影は、1→4→2→3の順になりました。前回のTSA120+ASI294MMPでの再現をまずして、次に簡単なフェニックスでの撮影、その後エタロンとカメラをくっつけたままFC-76につかけえて撮影、最後にカメラをG3M678Mに取り替えたという手順になります。

時間と撮影枚数などは
  1. 11時41分-12時16分で10枚
  2. 13時3分-13時27分で10枚
  3. 14時20分-14時31分で10枚
  4. 12時38分で1500枚の内上位50%
となります。撮影した時間にある程度の開きはありますが、天頂を挟んでいることと、天候も一定で風もほとんど無く、条件はそこまで変わらないと思います。

画像処理もある程度条件を揃えています。分光撮影はJSol'Exで処理後、ストレッチなどしていない「disk」フォルダのtifファイルを上記枚数分AutoStakkert!4でスタック、ImPPGで細部出しとコントラスト出しをするところまでです。前回の記録ではさらにPixInsightとPhotoshopで加工などしていますが、今回の比較ではできるだけ未加工の状態で比べたいので、それらの最後の仕上げはしていません。フェニックスの方は、動画をAutoStakkert!4スタックし、ImPPGで細部出しをしています。


全体像の比較

結果を1、2、3、4の順に並べます。

IP_aligned_lapl2_ap21123_IP
1. TSA120+ASI294MMPro

IP_aligned_lapl2_ap8066_IP
2. FC76+ASI294MMPro

IP_aligned_lapl2_ap11969_IP
3. FC76+G3M678M

12_38_40_lapl2_ap3724_IP_flipcut
4. Phoenix+G3M678M

波長分解能は上の4枚の比較でわかるかと思います。予想通り、1、2、3はほとんど同じかと思いますが、4はやはり違って見えます。見るべきところは、分光の1、2、3はダークフィラメントのコントラストが良いこと、プラージュの明るい領域の他に、もっと広域で白いモヤモヤが広がっているところでしょうか。細かい模様は4のフェニックスの方が一見よく見えています。これはHα線からズレたところに出てくる模様で、波長分解能としては悪くなっていることを表しています。分光撮影で波長幅をあえて大きくしてHαからズレたところも含めると、同様の画像が再現できることがわかっています。

TSA-120の画像はコントラストがいまいちな他に、上下に周辺減光の影響が出ていることがわかります。細長い領域で撮影し、それを赤経でスキャンするので、その端の暗い部分の影響が上下に出るというわけです。もっと言うと、コントラストが悪いのもこの周辺減光が原因です。輝度差のために簡易な画像処理の段階ではまだコントラストを補正しきれないのです。


拡大像の比較

次に、真ん中右の黒点部分をそれぞれ拡大して比較してみます。左上から1、右上が2、左下が3、右下が4です。
スクリーンショット 2025-12-30 204222_cut


空間分解能は拡大した画像を比較すると良くわかります。予想は

1>3~2>4

でしたが、結果は意外なことに

2>3>1

となりました。4のフェニックスの画像は少し出方が違うので比較が難しいのですが、あえて言うなら

2>3>4>1

くらいでしょうか。これは画像処理を進めていくとわかる結果で、FC-76はもっと細部を出しても耐えられますが、フェニックスは無理をすると破綻してしまいます。口径わずか4cmなので、限界に近い分解能が出ているのかと思います。ざっくり計算で口径4cmだと分解能は4秒、カメラの1ピクセル2umでが焦点距離400mmだと分解能が1秒くらいなので、口径からくる光学限界が見えている可能性が高いです。

問題はTSA-120で、なぜここまで出ないのかよくわかっていません。


なぜ実際の分解能が予測と違うのか?

いずれにせよFC-76のカメラ違いの順序も含めて、予想と全然違います。これにはさすがに???となってしまいました。何か順序とかに間違えがないか見直しても、特におかしなところはありません。単純なミスではなさそうなので、いくつか可能性を考えてみます。
  • まずパッと思いついたのは、撮影した時間が違うことです。でも、普通は朝早い方が条件がいいので、TSA120の結果が悪くなることはないはずです。
  • 撮影に長い時間をかけると模様が変わってくるのでぼやけたような結果になります。確かに1のTSA-120での撮影に一番時間をかけていますが、2と3のFC-76の撮影では3の方がはるかに短い時間で撮影していても、2の方が分解能が出ているので、うまく説明できません。
  • たまたま2の撮影の時だけシーイングが良かった可能性もあります。でも、いいシーイングがある程度続くのはせいぜい10分くらいで、特にいいシーイングは1時間のうちほんの30秒くらいです。機材1パターンの撮影が30分程度にわたって続いているので、こちらもある程度平均化されているかと思います。でも、シーイングの可能性は捨てきれないことも確かです。
  • 分光器の調整や、ピントがあっていなかった可能性もあります。できる限り同じような精度で調整していますが、今回は分光器の付け替えや、カメラの付け替えで、調整の精度がばらついている可能性は否定できません。でも今回は1=2>3の順で精度がいいのかと思っています。1は前回も合わせていていつもの手順通り。2は太陽像が小さくなるので、同じ手順で調整できます。3はカメラのセンサー面積が小さくなり、スリットの端が見えないので、太陽像と背景のエッジ、フラウンホーファー線のピント、粒状斑ので具合の3つを見ながら、コリメートレンズ、カメラレンズ、鏡筒の焦点の3つの自由度を合わせ込む必要があります。これら3つの自由度は独立ではないため、合わせ込みが難しく、3番目の調整が一番大変でした。もしかしたら3番目に一番時間をかけて調整したので、ここだけ逆に精度が出ている可能性もなくはないですが、いずれにせよ1番と2番に差はあまりないはずで、この調整が原因で1番と2番の順序の逆転を説明できるとは思えないです。

色々考えていて、ふと思いついたことがあります。撮影時の赤道儀のスキャンのスピードの違いです。
  • 1番と2番はASI294MMPでフレームレートが70fps程度低いので、スキャン時の赤径の移動スピードを4倍にまで落としています。その一方、3番はG3M678Mのフレームレートが300fps程度とかなり速いので、赤径の移動スピードを16倍にしてあります。
  • 1番と2番のスキャンスピードは同じですが、TSA-120とFC-76で焦点距離が違うので、太陽像自身が小さくなります。太陽の径は同じなのでスキャンしている角度は同じですが、焦点距離が短い分仕上がり画像で言う縦幅が小さくなるので、縦横比が大きくなります。要するにより仕上がり画像の横方向を相対的により(ゆっくり)細かくスキャンしていることになります。その分情報量が多くなるので分解能も増すという考えです。
  • 3番は縦横比を保つくらいの速度でスキャンしているので、分解能はそこまで上がらないはずです。
  • でも相対的には縦に比べて横方向は情報量は増えたかもしれませんが、TSA-120の画像に比べたら縦横比が増したというよりは、縦の情報量が減っただけと考えることもできるので、あまり説明できない気もします。

まとめ

TSA-120での分光撮影から久しぶりにFC-76での分光撮影にもどって思ったのは、TSA-120での撮影はかなり無理をしているなということです。スリット長を長くしましたが、焦点距離900mmはスリット長ギリギリまで太陽像が大きくなります。極軸が合っていないと撮影していてもすぐに位置がズレてしまい、スリットからはみ出してしまいます。カメラも大きなセンサーサイズを必要としますし、その分フレームレートも落ちます。単発の撮影ならまだしも、スタックすることを考えて連続撮影しようとしても、撮影時間が長くなってしまい、かつ成功率も低いので、さらに撮影時間が長くなってしまいます。毎回記録撮影をするとしたら、ここまで苦労するのは大変ではないかと思っています。しかも苦労の割に今回口径の大きいはずのTSA-120の方が分解能が悪いという結果になってしまいました。周辺減光も深刻そうだと改めて今回思いました。

分解能が出ない理由がまだはっきりしなくて、結局結論は出ないので、天気が良くなったら今一度撮影してみようと思います。簡単なのは、FC76+G3M678Mで赤道儀のスピードをx4、x8、x16、x32倍速でそれぞれ撮影し比較してみることです。x4があからさまに分解能がよくなったなら、今回のことは説明ができる可能性が出てきます。

その一方、TSA-120はASI294MMPの4倍速の一択なので、こちらも何かおかしなところがないか、またFC-76の撮影の前後で撮影するとか、FC-76の4回の撮影と交互に撮影するとかで、状況変化の影響をなくせればと思います。

とにかく、TSA-120の方がいいのか、FC-76の方がいいのか、今後の撮影の大変さに大きくかかわるので、はっきりさせたいです。もっと正直に言うと、今回のFC-76くらいの結果がコンスタントに出るならもう十分で、機材が楽なこともあり、今後もこの設定で記録していく方が楽な気がしています。

今回はTSA-120の優位性を示したかったのですが、予想外の結果となってしまいました。でもこれはこれで面白いので、かたをつけたいと思います。

今回はTSA-120の優位性を示したかったのですが、予想外の結果となってしまいました。でもこれはこれで面白いので、かたをつけたいと思います。


日記

実は次の日曜にC8で粒状斑の撮影を試みたのですが、強風で画面が揺れまくり、合計400GBくらい撮影した画像は全て無駄となりました。休暇のうちはもう富山は晴れそうにないので、実家の名古屋に年末年始で帰る時に機材一式を持っていって、今一度チャレンジしようと思っています。太平洋側が羨ましいです。

IMG_2317

ちなみに土曜の夜も撮影しています。新機材のテストです。こちらもまたまとまったら記事にします。



以前、SHG700用に新しい10mm長のスリットを手に入れて、TSA120で分光撮影を試みたのですが、カメラのセンサー拡大も必要で、手持ちのASI294M Proを使ってみたところ、ROIの設定が限定されていてい結局使えなかったという記事を書きました。新しいIMX183系のカメラを買えば済む問題なのですが、最近フェニックスを買ってしまったので、しばらくはお預け状態になっています。




ASI294MM Proが使えるかも!

でも捨てる神あれば拾う神ありで、ASI294MM ProのROIを任意に設定する方法があることがわかりました。SharpCapのフォーラムに投稿されていたのですが、やはり悩みは全く同じで、新しいスリットで手持ちのカメラを使えないかというのが発端です。



それによると、Windowsのタスクバーの検索欄に「regedit」などと入れて、出てきた「レジストリエディター」をクリックして立ち上げます。
「\HKEY_CURRENT_USER\Software\AstroSharp Limited\SharpCap\4.1」まで行き、「CustomResolutions」をダブルクリックします。「値のデータ」に例えば「;8000x180」などを加えます。

スクリーンショット 2025-12-06 112732_cut

SharpCapが立ち上がっていた場合は再起動して、ASI294MMProを接続し直すと、設定したROIが選択できるようになっています。


実際の撮影

IMG_2276

最初8000x180で試しましたが、seeファイルの大きさが10数GBと大きくなってしまったので、もう少し攻めて結局5400x150に落ち着きました。一時、縦幅を120まで攻めたのですが、Hα線をうまく読み出せないことがあったので少し余裕を持たせています。頑張れば5000x130くらいでも実用的になるかと思います。でも、撮影時のファイルサイズが大きいのはそんなに問題ではなくて、JSol'Exで処理するときにserファイルを時間、サイズともに同クオリティで小さくするオプションがあるので、それを使うと結局どんなサイズで撮影してもほぼ同じ小さいサイズで保存することができます。今回も小さくしたファイルでもきちんとHα画像を再現することを確かめました。撮影時7GBくらいのファイルが1.5GBくらいの大きさになるので、撮影時にさえディスクが溢れないように気を付けておけば、処理した後はディスク容量などそこまで問題になることはなさそうです。

問題はフレームレートです。8000x180で70fps、5400x150で76fpsでした。fpsは縦幅のみに依存していて、横幅はほとんど関係ないみたいです。縦幅を120にしてももう大きくは上がらず80fps程度で高止まりです。これまでのG3M678Mは縦幅にも依りますが、実測で450-570fps程度は出ていたので、これまでの6分の1以下のスピードと相当遅くになります。

これは1枚あたりの撮影時間に直結します。出来上がる画像の横の空間分解能はserファイルの撮影枚数で決まります。縦幅が5400ピクセルなので、横幅も同じくらいのピクセル数にすると考えると、ざっくり5400枚撮影する必要があります。撮影時間はこれをフレームレートで割った、5400/76=71秒くらいは必要なわけです。実際には太陽が映っている部分はもう少し小さいとしても、これまでFC-76とG3M678Mだと1回16秒くらいで撮影を済ましていたことを考えると、大幅な撮影時間の増大となります。

また、時間をかけて撮影する必要があるということで、赤道儀のスキャンスピードも16倍から4倍程度にまで落とす必要があります。以前、16倍と32倍で試したのですが、赤道儀としてはどうも速いスピードのほうが安定っぽかったので、ここまでスピードを落としてうまく撮影できるかも心配になります。

最初、1回あたり90秒でスキャンしてテスト撮影していました。一応太陽全景は入るには入っていたのですが、連続撮影のための「SHGスクリプト」の初期位置を最初に太陽中央に置くと、撮影時間ギリギリになってやっと太陽の終わりが入るくらいになってしまいます。その一方太陽の写り始めは録画開始時刻のはるか後になってしまいます。できた動画は前半は何も映っていなくて、後半にのみ太陽が入っているという時間的にもファイルサイズ的にも無駄が多い状態になってしまいました。

本来このSHGスクリプトでは、太陽中央を初期位置にするので正しいはずなのですが、赤道儀のスキャンスピードが4倍と遅いのが原因なのか、それともスクリプトにまだ対応しきれていないところがあるのかわかりませんが、とりあえずあらかじめ初期位置をずらすことで回避することにしました。具体的には、太陽の進む方向に先回りしたところ(具体的には赤道儀のWestボタンを押して太陽が見えなくなるところから、16倍速で10回ボタンを押すくらい離れたところ)に初期位置を設定してスクリプトを開始すると、動画の真ん中の時間帯に太陽が入ります。この設定で動画の長さを60秒くらいまで短くすることができ、前後5秒くらい余裕が残る程度になりました。これで撮影動画をJSol'Exで処理すると太陽の縦横比が0.98と出たので、ちょうどいいくらいのスピードでしょう。例えば縦横比が0.5とかだと、赤道儀のスピードが速過ぎて潰れたような太陽になってしまい、それを無理に円形にするので、解像度が出ないというわけです。

結局これらの
  • ROI5400x150
  • フレームレート76fps
  • スキャンスピード4倍速
  • 撮影時間60秒
  • 初期位置が太陽端から16倍速で10回ボタンを押したところ
というパラメータを見つけるのに12月7日(日)と13日(土)とほぼまる2日使ってしまい相当苦労してしまいましたが、とにかく、TSA-120とASI294MM Proで撮影することは可能だということがわかりました。


実際の撮影画像

下の画像は、テスト中に撮影した30枚くらいのがぞうのなかから、30分間くらいの間に撮影した10枚をスタックしたものになります。

0_lapl2_ap21049_IP_PI

残念ながらこの日はかなりの強風で、さらにシーイングも見るも無惨な日でした。特に分光撮影ではスキャン時間の間の風による鏡筒のブレの影響は結構深刻で、画像自体の分解能はまだ議論できるレベルではないと思います。それでも口径がこれまでの76mmから120mmになって分解能が得している様子はある程度伺うことができているように見えます。今回はとりあえず撮影ができることがわかったということで、細かい比較は今後余裕が出た時にしようと思います。


同日のフェニックスで撮影した画像

ちなみに、フェニクスでSharpCapのライブスタックで同じような時間帯に撮影したものが下になります。この画像はライブスタックでの簡易撮影ということと、シーイングが相当悪かったこともあり、分解能は前回より相当落ちてしまっています。

Snapshot of 13_48_07_Sun-Halpha_RA+_4x_00001 13_48_07_PI_cut

先の分光撮影の画像と比較したいのは、波長分解能(波長透過幅)です。白く明るいところはプラージュと呼ばれている領域です。このプラージュ以外にも、先の分光の撮影ではもっと広い領域に白いモヤモヤしたものが写っています。これは波長分解能が相当良くなると見えてくるもので、私的にはこのモヤモヤがどれだけ見えているかで波長透過幅どれくらい狭いかを評価する指標としています。

また、先の分光撮影の方が黒いダークフィラメントがより濃く見えるのも、波長分解能がより細かい証拠で、背景光の影響がより少なくなるためによりコントラストがよくなります。

白いモヤモヤ部分ですが、どのように呼べばいいのか、少なくとも私はまだ名前を知りません。波長分解能がものすごく良くなってから初めてわかるものなので、これまであまり認識されていなかったのかもしれません。どなたかこの名前がわかる方いらっしゃいませんでしょうか?フェニクスはそのモヤモヤが少しですが、実際に見えているところがすごいです。エタロンですが、昔のものよりも性能が確実に上がっているのがよくわかります。

ここら辺の詳しい話は、以前SH700で波長透過幅が分光よりも広いエタロンの写り具合を再現した時の記事で詳しく議論しています。


今回のフェニックスも同程度の写りかと思うので、エタロンの性能としては前回お借りしたフェニックスと大きな差はないものと思われます。フェニクスエタロンの波長透過特性は、そのうちに測定するつもりです。これまでの手持ちのPSTと比べてどれくらい差があるのか、とても楽しみです。


まとめ

とうとう、SHG700+長めの新スリットと、より口径の大きいTSA-120と、手持ちでセンサ面積の広いASI294MM Proで、太陽全景の分光撮影が成功しました。このカメラのフレームレートが遅いのでかなり苦労しましたが、カメラを新規で購入するまでには至らずになんとかなったので、まあよかったでしょう。

これで以前計算した結果によると、空間分解能は2.2 arcsecから1.4 arcsecと大幅に改善されたことになります。その一方、波長分解のは0.091Åから0.105Åと少し悪くなっていますが、そこまで大きな違いではないでしょう。

トータルとしては大きな改善なのですが、今回の撮影では天候のせいでまだその性能を引き出せたとは言えないので、風もなくシーイングがいい日を狙って再度評価してみたいと思います。


太陽分光撮影のアップグレード計画の開始です。

アップグレートはトータルで考える

以前議論したように、現在のFC-76+SHG700+G3M678Mがどこまで性能が上がるのか、実際に機材をアップグレードして試してみることにします。

きっかけは、元々SHG700に標準で付いていた幅7μm、長さ7mmのスリットが、幅は同じで長さが10mmのものにアップグレードされることが検討され、そのテストも完了し、やっと一般配布が始まったことです。私も発表されてすぐに発注しました。到着はかなり前だったのですが、今のセットアップでやりたいことも大体できたので、やっとテスト開始というわけです。

そもそも、スリットの長さが長くなると何が良いのかというと、一言で言うと鏡筒の焦点距離が伸ばせると言うことです。分光撮影ではスリット上で焦点を合わせる必要があることから、焦点距離によって太陽像の大きさが一意に決まってしまいます。ざっくり言うと、長さ7mmのスリットで焦点距離700mmまで、長さ10mmのスリットで長さ1000mmまでです。今使っているFC-76の焦点距離は600mmなので、7mmスリットでまだ少し余裕があります。今回は10mmスリット用に、焦点距離900mmのTSA-120を使うことを考えています。

でも単純に焦点距離を伸ばせば良いのかというとそうでもなくて、例えばカメラセンサー上の太陽像の大きさも大きくなるので、センサー面積を大きくするか、カメラレンズの焦点距離を短くするなどの手当てをしてやる必要があります。また、焦点距離が長くなると口径も大きくなりがちで、その分集光された光のエネルギーが上がるので、スリットが焼けたり壊れたりしないかなども考慮する必要があります。SHG700で使われているスリットは溶融石英製で熱膨張率が小さいため、MLastroによると口径4インチ(102mm)までは大丈夫とのことです。普通のBK7などのスリットだと耐熱量はもっと下がるので、普通はNDフィルターなどを入れる必要があります。だた、溶融石英と言えど今回は口径120mmと推奨口径より大きくになるので、少し心配です。


参照画像撮影と事前テスト

まず比較のために現在のFC-76ベースでのHα画像を撮影しておきます。その結果は前回の記事にまとめてあります。そうです、前回記事はいつもの記録撮影に加えて、新システム移行に際しての比較テストという意味も兼ねていたのです。これと今回撮影する画像との比較で、性能が上がったかどうか判別します。

比較のための事前撮影が終わった後に、まず最初にやったのは、口径を大きくしてスリットが溶けたり燃えたりしないかの安全テストです。口径が120/76=1.58倍となるので、光量は(120/76)^2~2.5倍となります。上でも書いたように少し心配なので、C8にPSTを取り付けた際に使ったようなUV/IRカットフィルターを入れてやります

太陽のエネルギースペクトルを考えると、可視光の割合は全エネルギーの約半分(47~52%)とのことです。今の76mmで十分余裕があること、120mmそのにするとその2.5倍になるくらいなので、可視光以外をカットしてしまえばスリットにダメージが出るようなことはなさそうです。

それでも念のために、まずはSHG700には何も手を加えず、鏡筒をTSA-120に変更します。
IMG_2173

最悪スリットにダメージがあったとしても、長さの短いものが壊れるだけで、新しい10mmのものはまだ壊したくないという意図があります。光を入れる際も、少し光りを入れてから一旦鏡筒からSHG700を外して、スリット部やその周りが熱くなっていないかなどを確認しながら、徐々に入れる光の量を増やしていきます。フルで光が入っても問題なさそうなことを確認できた後も、光を入れる時間を徐々に増やして、その都度外して暑くなっていないか確かめます。数分間入れても全く熱くならないことができたので、撮影に入ります。カメラはまずはこれまでと同じG3M678Mです。当然ですがもう全景は入らないので、左右2つに分けて撮影します。JSol’Exでの太陽像再構築は、全景が入っていなくても可能なはずです。1ショットだけ撮影したところで太陽像を再構築してみましたが、問題なさそうなので、左側5ショット、右側5ショットを撮影しました。

実際のスリット交換と、失敗したカメラ交換

次に、スリットを新しい10mmの長いものに変更します。二つスリットを並べましたが、溝をカメラで写すのはちょっと大変で、部屋の明かりを利用して何とか片方づつ写るようにしてみました。右が古い7mmスリットで、左が新しい10mmスリットになります。
IMG_2184

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古いスリットは、SHG700に取り付ける台座とスリット部の台座が分かれていたのですが、新しいスリットは一体型になっていました。
コスト的には新しい方が正しいのかと思います。もしかしたら、スリットの角度を変更したくなったときに少し困るかもしれません。

新しいスリットをSHG700に取り付け、さらにカメラのセンサー面積を大きくするために今回はフォーサーズのASI294MM Proを使ってみました。ですが、ここから大きくトラブることになります。まず、アイピース型のカメラではなくなるので、カメラを取り付け口の中に入れ込むことができなくなり、ピントが出なくなります。そのためアメリカンサイズに変更するアダプターを取り外しT2ネジでとりつけることになりますが、ねじ込み式になるのでカメラの回転角の調整ができなくなります。最初どうするか迷ったのですが、MLastroのチュートリアルビデオを見直すと、SHG700本体側にイモネジがあって、そこを緩めることで取り付けアダプターを回転できるとわかりました。

決定的な問題点は、ASI294MM Proは任意のROI(Region Of Intrest、ソフト的な画角)を選べないのです。ZWOのマニュアルによると選べるROIはどうも固定っぽいです。しかも、フレームレートが最小のROIの320x240でも高々60-80fps程度で、実際にほしい300fps程度には全く届きません。最大幅にしてテイフレームレートになっても、赤道儀をものすごくゆっくり動かして撮影することはできるかもしれませんが、さすがにあまり実用的ではありません。

この時点でASI294MMを使うのを諦めました。別のモノクロでセンサー面積の広い、且つピクセルサイズが小さいカメラを手に入れる必要があります。とりあえずTSA-120での全景撮影はしばらくお預けです。

追記: 後日、ASI294MM ProでROIを変える方法が見つかりました。これで全景を一度に撮影できるようになりました。ただし、フレームレートが遅いので、撮影に時間がかかるのが難点です。



とりあえずの画像比較

TSA-120での全景撮影はあきらめましたが、撮影時に左右(再構築時には上下)に分かれた画像はできたので、それをFC-76の画像と比較してみます。前回記事で示した画像は処理済みで比較しにくいので、JSol’Exで出力したRAWに近い「disk」イメージで、スタックなどもしないで比較します。

まずはFC-76のもの。
09_03_03-trimmed_0000_09_03_03-trimmed_disk_0_00

次に2つに分かれたTSA-120のものです。
0000_14_07_56_disk_0_00

0008_14_14_13_disk_0_00

同じ日の撮影ですが、2時間ほど間が空いているので、Hαの構造は結構変わってしまっていますが、差がわかりやすいところを拡大して並べて見ます。左がFC-76、右がTSA-120です。
comp

よく見比べないとわかりにくいかもしれませが、それでも明らかに右のTSA-120のほうが細部まで出ています。十分に価値のあるアップグレードになりそうなので、新しいカメラを手に入れることにしました。

カメラセンサーはIMX-183が良さそうです。ZWOでも出てますし、ToupTekでもあります。ToupTek提供でMLastroブランドでも出るみたいです。選択肢はありそうなので、値段と在庫を見て決めればいいのかと思います。ただし、ピクセルサイズがG3M678Mの2.0μmより大きく、2.3μmとなるので、上の比較画像ほどは差が出ないと思いますが、それでも価値は十分にありそうです。将来的なさらなるアップグレードも視野に入れて、機材を徐々に充実させていきたいと思います。

まとめ

残念ながら手持ちのカメラではROIとフレームレートが不十分でしたが、分解能向上のポテンシャルは十分確認することができました。スリットはそのままで、鏡筒は一旦FC-76に戻してしばらくは撮影を続け、新しいカメラが来たらTSA-120に再び交換して試してみたいと思います。



11月17日からの週末の5連続の記事です。







前回の記事で今年5月に撮影した南天の天体を処理しましたが、今回はさらに前の4月の撮影結果になります。


春の銀河

私は春の銀河はあまり得意ではありません。SCA260の1300mmの焦点距離と、ASI294MM Proの画角だと、少し広くて銀河の細かい構造に迫力があまり出ないからです。それでも今回は、一度撮影してみたかったヘルクレス座銀河団に挑戦してみました。

銀河団といえばおとめ座銀河団が有名で、以前撮影しています。範囲もヘルクレス座銀河団よりも遥かに広く、焦点距離420mmのε130Dとフルサイズのカメラでもまだ収まりきりません



今回のヘルクレス銀河団の場合、もっと小さい領域に小さい銀河が集まっていて、一部を拡大して細かい銀河を見ることになるので、分解能が勝負となり、きちんと撮影しようとするとかなり手強いです。

撮影はもうかなり前で記憶の彼方なのですが、その時の様子は当時文章にして残してあったので、ほぼそのままの形でブログ記事として使いました。その時のことを読んでて、赤道儀の反転を失敗したのも思い出しました。ことなきを得たのですが、冷や汗ものでした。

時期的には4月初めに撮影したM104の次で、4月中頃になります。LRGB合成の予定で、3晩にわたって撮影し、Lだけで6時間以上、RGBがそれぞれ約1時間と、合計9時間以上になっています。画像処理の途中で思ったのが、思ったより色が出ないので、もう少しRGBをの枚数を増やしても良かったのかもしれません。

M104のときには画像処理にかなり時間をかけてしまったのも、今回のヘルクレス座銀河団の画像処理が遅れてしまった理由の一つです。実は画像処理は4月の時点で一度パッとやっていたのですが、気に入らなかったので改めて一からやり直しでした。それから約半年後になりますが、今回新たに書いた記事は主に画像処理についての部分です。


撮影時のトラブル1: 赤道儀の反転失敗

今回の撮影ですが、夜中の2時半頃に子午線反転があります。この時間夜中に起きているときついこともあり、NINAの自動反転機能で乗り切ろうとしました。ただし、自動反転は以前痛い思いをしたことがある



ので、ある程度の対策をしてました。

数十cm程度の短いUSBケーブルとDC電源ケーブルをカメラ側に取り付け、カメラの周りにケーブルタイで固定して、引っ張られた時に必ずケーブルの長手方向にのみ力がかかるようにして、引っ張って抜けるようにしておいたのです。

IMG_9265
青いUSBケーブルとDCジャックケーブルが宙ぶらりんになっています。
引っ張られて抜けてしまっていましたが、
このおかげで機材の破損はありませんでした。

今回はこれが功を奏しました。朝起きて撮影結果を見ると、PHD2が途中で止まっていて、カメラが認識されないと出ています。撮影画像のタイムスタンプもちょうど反転時刻くらいまでで、その後は撮影されていません。これはまずい!と直ぐに外に出てみてみると、どうやら赤緯体がクルッと一回転しているような状態で、ケーブルが首に巻かれているような状態になっていました。

それでも想定通り、短いケーブルのところでUSBもDC電源も共に抜けていて、ことなきを得ました。こんな風に首を巻いた状態は初めてでしたが、赤緯体が初期位置からほぼ真反対に向いた状態での撮影になるのでこんなことが起きたのかもしれません。南天の高いところの天体は少し注意が必要かもしれません。今のところはっきりとした原因は不明ですが、とにかく機材が壊れなくて何よりでした。


撮影時のトラブル2: バッテリー

手持ちのバッテリーの一つが、気温が低いと変な振る舞いを見せることが確実となってきました。以前開田高原に行ったときには低温警告が出たのですが、警告は出なくても、温度が低いと電圧降下が激しいようです。

まず、気温が低い時は最初は使えるのですが、途中で電池の消耗が早いと自ら誤認識してしまうようです。一晩持つことはなく、夜中気温が低くなってくると止まってしまいます。こうなると、電源を入れようとボタンを押しても何も反応がないのですが、充電しようとしてACアダプターに繋ぐと何故か一瞬(秒単位)で100%になります。温度がまだ低いうちにACアダプターを外すとまた直ぐにダウンしてしまうのですが、しばらく待って温度が少し上がってからACアダプターを抜いても100%を保ったままになります。充電し切れているとはとても思えない短時間で100%になるので、何か表示がおかしいかです。

季節が進み気温が上がってくると、一晩持つようになってきます。撮影が終わって朝チェックすると、気温によって0%と出る時と、数十%残る時があります。0%となっているときにACアダプターに繋ぐと、これもなぜか一瞬で100%に戻りますが、一晩使っているので明らかに電力が多く残っているとは思えず、充電時の表示が何かおかしいと思われます。一方、数十%とか残っている時は、すぐに100%にはならずに、数十%が徐々に増えて、でも直ぐに(1分くらい?)で99%とかになります。温度が上がってきて徐々に振る舞いがまともなものに近づいてくる印象ですが、まだ春くらいの温度だと信用できません。一応100%充電されていると表示されていようが、そのまま充電を続けて半日くらい放っておきますが、次回使うときは今のところ問題なく使えています。

他のバッテリーを5台ほど使ってきましたが、同じような状況で同時に使っても、今のところこの一台のみがこのような変な振る舞いをします。たまたまこの個体だけなのか、興味がありますが、Amazonのレビューとかみても低温関連のことはあまり書いてないので、よくわかりません。Amazonの同機種のレビューを見ると、低温以外でもよく似たトラブルはたくさん報告されていて、途中から充電できなくなったとか、保証期間を過ぎると修理もできないとかの投稿がたくさんあります。大手のものだから数が出ているからというのもあるのかもしれません。

今回のようなことがあると改めて思うのですが、大型のバッテリーを買って1台で運用するようなことは、撮影失敗のリスクを考えるとちょっと怖いと思ってしまいます。私は1万円からせいぜい2万円までの機種で抑えていて、そのクラスの数を揃えるという戦略です。トラブルの時はすぐに交換して、冗長性で回避できることと、不具合時の1台あたりの金額的なダメージを防ぐのが目的です。低温時には問題があるこのバッテリーも、その後暑い夏には普通に使うことができたので、冬場は他のバッテリーを使えば良く、長い目で見たらそこまでダメージはないです。


画像処理

撮影直後の画像処理では銀河がのっぺりと絵のようになってしまい、やる気を無くしてしまいました。反省して、今回はRAW画像の選択からやり直しです。

まず、前回画像処理した自分の画像と、Astrobinのヘラクレス銀河団でよく写っているものを見比べてみました。のっぺりは仕方ないとして、パッとわかる決定的な違いは微恒星の数です。例えばAstrobinのImage of the day (IOD) に選ばれた画像と自分の画像で、同じ領域を切り出してPixInsightのSubframeSelectorで認識できる星の数を比べてみると、IODの方が約1.5倍の星の数になりました。実際の画像を見ても、細かい星があるかないかでかなり違って見えて、1.5倍というのはちょうど納得できるくらいの数字です。

1回目の画像処理ではFWHMが5以下、星の数が250以上という閾値を設けてRAWのL画像を振り分けました。その場合、376枚中、147枚が採用されました。できるだけ小さな星を救おうとしたために、悪い画像を切り捨てたつもりですが、かなりの枚数を捨てていることになります。今回、2回目の画像処理はFWHMが7以下、星の数が150以上と条件を緩め、採用枚数を376枚中、274枚としました。

まずこれで微恒星の数が変わるかです。ここでいう微恒星の数というのは、M104の時に散々議論したBXTで認識される小さな星の数ということです。


結果はというと、M104の時とほぼ同じで、
  • 1回目の、枚数を絞ったFWHMが小さい方が、出来上がりの恒星の大きさは小さい。
  • この場合、背景ノイズが大きい。
  • ノイズに埋もれた淡い微恒星を救いきれない。
でも、落としてしまう微恒星の数は大したことはなく、IODの画像で見えている微恒星からみたらまだ全然少ないままなので、誤差の範囲です。

一方2回目では、
  • FWHMは大きくても枚数が多い方が背景のノイズは明らかに小さくなる。
  • S/N測定でもいい結果出ている。
  • かつ残る恒星の数も多少増える。
  • 恒星の大きさが少し大きくなる。
といいことが多いのので、今回は枚数を増やしたもので処理することにしました。不利な点として、恒星が少し大きくなるのはBXTでどうにでもなると考え、今回は重要視しなかったです。もしBXT無の場合は、判断が変わるかもしれません。


次に今回の画像処理でやり直したことは、drizzleの有無です。今回は最初drizzle無しで処理しましたが、小さい銀河が多数あるので、改めて比較するとdrizzle x2の方が有利そうです。
comp1
左がdrizzle x2で、右がdrizzle無し。
わかりにくい場合はクリックして拡大してみてください。

そのため、2度目の処理はdrizzle x2を使いました。

本当はM104の時のように、撮影時からASI294MMのbin1にしてもよかったのですが、撮影時から画像サイズが大きくなり、画像処理の負担も大きくなり、かなりきついです。フラットなども合わせると、ディスク容量も平気で数100GBを使用してしまいます。bin2のdrizzleのx2なら、最後のインテグレーションで増えるだけなので、全然許容範囲です。drizzle x2にBXTをかけるとかなり解像度が出ることがわかっているので、これでbin1に迫れるといいのですが。

ただし今回は、露光時間をこれまでの自分の標準の5分から1分に短くしました。恒星が飽和するのをできるだけ避けるためです。そのため撮影枚数はこれまでの5倍と多くなるので、その分ディスク容量を食います。

4月の最初の画像処理でのっぺりとしてしまった原因もわかりました。ストレッチ時のGHSの使い方が原因でした。GHSは最初にSP (Symmetric Point)を選ぶのですが、SPに0以外の値を入れてしまうと銀河の中の淡い部分が明るくなりがちで、どうも階調が取れません。今回だけなのかもしれませんが、SPは0にして、当然LP保護も0になりますが、HPの保護は明るいところをあまり明るくしないように適当に0.5とかにしました。あとの残りのパラメータはStretch FactorとLocal Intensityだけなので、これで銀河の暗いところから明るいところまで階調ができるだけ残るようにストレッチとLPを調整しました。どちらも大きくしすぎないことがコツみたいですが、まだあまりよくわかっていない部分もあるので、もう少し経験が必要みたいです。

さらにその後、GHS以外にもいくつか試したのですが、今回は背景の淡い構造を出す必要はないこと、飽和しないことという条件で、結局もっとシンプルなMaskedStretchとしました。結果を見ると、もう少し彩度を出しても良かったので、ArcsinhStretchでもよかったのかもしれません。

そこからの最後の仕上げはかなり苦労して、結局5回くらいやり直しました。Astrobinを見ていると、銀河も恒星も色彩豊かで、一つの銀河内でオレンジから青白まで出ているものもあるのですが、自分の画像だとなかなかそこまで出ないです。RGBの撮影時間が短いので色情報がノイジーなこともあるのかと思います。もう少し手はあるのかもしれませんが、キリがないのでできる範囲でまとめました。まだ少し不満が残っているので、微恒星の写りも含めていつかリベンジしたいです。


結果

今回画像処理した結果を示します。drizzle x2だと画像が大きくなりすぎてアップロードできなかったので、ブログ用に少しだけ(75%くらい)解像度を落としています。

「ヘルクレス座銀河団」
Image15_cut_low
  • 撮影日: 2024年4月13日1時35分-4時8分、4月13日22時17分-14日2時32分、4月14日22時26分-15日3時27分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: ZWO社のLRGBフィルター
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 274枚、R: 57枚、G: 54枚、B: 60枚、総露光時間445分 =7時間25分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120でLRGB: それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop

画角が少し広いので、一部銀河団の中心部を切り取った画像も載せておきます。銀河をできるだけ取り込むために、縦型に切り出した後、90度回転させています。これぞ「銀河団」という感じです。
Image15_cut_small_rot

特に拡大図の方をみると、4月ののっぺり画像処理から比べたら、輝度の階調を残し、色調もある程度確保することができたと思います。BXTの効果も絶大で、drizzle x2と合わさって、銀河の細部もよく出ていますし、恒星の肥大も抑えられています。

見る距離や拡大率にもよると思いますが、小さな銀河なので離れた時見てもある程度はっきり見えるように、もう少し輝度や彩度を出してもいい気もします。その一方、あまり派手でないこのくらいがいいのかとも思えます。まだ自分の中で銀河にあまりはっきりとした基準がないので、今後しばらく試行錯誤かと思います。

上で議論したように、M104の時と同じでBXTで認識できない微恒星を取りこぼしてしまっているので、あるところより暗い恒星が全く見えなくなるという、あからさまな閾値ができてしまっています。BXTで小さな銀河と恒星の見分けが本当にできているか、StarNetで恒星と背景を分離するときに、銀河をうまく背景に分離できているかどうかは、まだ多少疑問が残ります。私は趣味と割り切っているのであまり気にしていませんが、気にする人は気になるかもしれません。ただし、同じクオリティーをBXTなどなしで出そうとすると、鏡筒の大口径化、赤道儀の大型化、シンチレーションのいい撮影地の選択、更なる長時間撮影など、敷居がはるかにはるかに上がります。簡単に同程度の効果をソフト的に実現するBXTやStarNetは、やはりすごいと言わざるを得ません。

最後に、恒例のアノテーションです。

Image15_cut_Annotated

確かにそこそこ銀河の数はありますが、おとめ座銀河団の時アノテーション画像ほどではなく、面積も数もやはりもう少し小ぢんまりとした印象です。


まとめ

長く処理されずに残っていたヘルクレス座銀河団も、やっとブログ記事にたどりつきました。細部をいかに出すかで、おとめ座銀河団の時はε130Dで最初から焦点距離が短かったのであまり気にしなかったのですが、今回は焦点距離1300mmなので、かなり細かい描写でシンチレーションとかも効いてくるはずです。処理してみると、思ったよりはるかに手強かったです。

HDDの中身を見ても未処理画像も、だいぶん底が尽きてきました。残っているのは中途半端に撮影したものとかで、今後処理する気になるかどうかもよくわからないものばかりです。なんとか救ってやりたいものもあるのですが、もう2年前に撮影したものとかもあるので、撮り直したほうが早いかもしれません。

撮影にも画像処理にも時間がかかるようになっています。もっと気楽に済ませたいという思いもあります。この場合はSWAgTiとかを活用すればいいのでしょうか。でも大口径のものと比べてしまい、満足できるのかどうかはまた別問題になるのかと思います。

さて、次はここしばらく何日か撮影している網状星雲です。もう諦めて画像処理を進めるか、さらに撮影枚数を増やすか。いや、全然気楽な方向に行ってないですね...。


久しぶりのブログ更新になります。皆様いかがお過ごしでしでしょうか?ゴールデンウィークは天気も良く、特に後半は新月期に入り絶好の星見日和だったのかと思います?

私はというと、あいにくGW中に体調を壊してしまい、前回の小ネタ記事を書いて以降ほぼ何もできない日が続きました。やっと体力も少し回復してきて、今もこの記事は病院の中で書いています。と言っても今回のM104の撮影はずっと前に終わらせていましたし、画像処理もブログ記事ある程度まで終えていたので、少し仕上げたくらいであまり無理はしないようにしています。

せっかくの長期休暇の新月期、暑くもなく寒くもなく、大きな太陽黒点と低緯度オーロラを横目にと、数々の絶好のチャンスを逃してしまい残念でなりません。その不満を払拭すべく、少しづつですが再開していきたいと思います。


三たびM104、でも本当は4度目

M104は分解能ベンチマークのような役割もあり、これまで何度か撮影しています。最初は2021年4月にVISACで。中心部を拡大すると、まだまだ無理やり解像度を出している感があります。


次は2022年8月、SCA260を手に入れてからより大きな口径で違いを見ました。


ただ、SCA260は焦点距離が1300mmとそこまで長くないので、M104は小ぢんまりと写ります。そのためこの時は
  1. バローなどなしでbin1の場合
  2. 2倍のPowerMATEを使ってbin2の場合
で比較しました。1素子あたりの明るさと画角は同じになるようにして比較したということです。違いはFOV(全体の視野角)と、bit depthになります。結果としては、恒星は2の2倍でbin2方が良かったですが、銀河本体は1の方がビミョーに良かったです。でも有意な差はほとんどなくて、結局1のほうがバローの挿入などの余分な操作がなく埃などが入る余地が少ないので、今後は1でいくという結論になりました。あと、この時はまだRGB合成のみで、L画像は撮っていませんでした。

その後、2023年5月にL画像だけ撮影していて、明らかに解像度が上がっていることまで確認したのですが、同時期にRGBを撮影する機会がなかったのでそのままお蔵入りにしてしまいました。2022年のRGB画像と合成しても良かったのですが、いまいち盛り上がらずに2024年を迎えてしまって、このままではさすがにダメだと思い、今回やっとLもRGBも一緒に撮影するに至りました。


NINAが重い

今回の撮影の少し前、3月18日にNINAの3.0が正式に公開されました。ただしちょっと重いみたいです。3.0にしてから撮影画像の保存にすごく時間がかかるようになりました。1枚撮影すると保存だけで毎回1分以上かかり、保存中は撮影は進まないので、かなりの時間ロスになります。

現在はStick PCで撮影し、micro SDに保存しているのです結構非力です。最初ディスクの書き込み速度を疑いました。でも撮影したファイル単体のコピペとかだと全然速く終わります。そこで、タスクマネージャーで撮影中の様子を見てみたら、NINAがものすごくCPUパワーを食っていて、かなりの時間100%になるようです。仕方ないので、以前の2.2に戻したら、ほぼタイムロス無しで連続で撮影できるようになりました。単にソフトが肥大したのか、それとも何か負荷が増えるようなバグっぽいものなのか、3.0がさらにアップデートされたらちょくちょくチェックしてみたいと思います。


今回の撮影

今回の撮影での大きな違いは、
  • 前回まではRGB撮影だけだが、今回はL画像を撮っているところ
  • 露光時間をこれまでの5分から1分にしたこと
です。L画像は実際の解像度向上に大きく貢献することになるかと思います。露光時間に関しては、SCA260+ASI294MM Proの場合gain120で露光時間5分だと、かなりの恒星がサチってしまうことに気づきました。特に、明るいL画像は深刻です。

下の画像は昨年5分で撮影したL画像を反転させています。bin1での撮影なのでそもそも12bit = 4096階調しかありません。ここでは階調の99%以上(4055/4096)になってしまっているところを黒くしています。

2023-05-11_20-58-14_M 104_LIGHT_L_-10.00C_300.00s_G120_0004
結構な数の星と、なんと画面真ん中の銀河中心までサチってしまっています。これはいけませんね。

下は今回露光時間を1分にしたもので、他の条件はほぼ同じです。だいぶマシになっていますが、それでもまだ飽和を避けることはできていません。少なくとも銀河中心は問題ないです。
2024-04-01_22-25-41_M 104_L_-10.00C_60.00s_0013

さらに露光時間を変えるにあたり、以下の2つのことを考えましたが、処理後の画像を見比べた限り違いはわからなかったです。
  1. 自宅撮影に限っていうとスカイノイズが圧倒的に支配的になります。露光時間を短くすると、読み出しノイズの効きが大きくなってくるのですが、露光時間を1分にしたくらいではまだまだ読み出しノイズは全然効かないくらいです。
  2. 淡い部分の階調がADCの暗い側にシフトするので、階調が出にくくなる心配もありましたが、まだ全然余裕があるようです。
LRGB画像は今後1分でいいと思います。ナローに関しては輝度が10分の1以下になるので、露光時間5分をキープするか、ダイナミックレンジがそこまで必要なければgainを上げてもいいかと思います。


画像処理 

WBPPでLRGBそれぞれインテグレートまでします。その後、すぐにRGBを合成して、カラーにしてからABEとDBEでフラット化をかけました。それぞれの色でフラット化してもいいのですが、カラーでやっても独立して働くので効果は同じはずで、1度で済むので手間を省いているだけです。

銀河で自宅撮影なので、背景のIFNなどは気する必要はなく、RGB画像もL画像も、気軽に簡単にフラット化してしまいます。だいこもんさんのブログ記事(元情報はUTOさんだそうです)によると、M104の周りにも相当淡い構造(更に大元がここ)があるようなので、試しに去年撮った5分露光画像も含めてL画像をかなり頑張って炙り出しましたが、私のところではその片鱗さえ全く見えませんでした。大顧問さんはチリで30時間露光して見えたとのことなので、自宅のような光害環境ではここまで淡いのは全然無理なのかと思います。なので、今回は背景は気にしないで、とにかく目的のM104本体の内部の細部構造がどこまで見えるかに全力を傾けます。

この内部構造、シンチレーションに強度に依存するようです。L画像は二日にわたって撮影していますが、二日目の画像は全然ダメで使うかどうか迷いました。1日目だけのもの133枚と、1日目133枚+2日目の中でもマシなもの56/103枚を使ったものを比較しましたが、見た目では違いがわからなかったので2日目のも入れたもので処理を進めました。

L画像はABEの2次、DBE、BXTをかけていますが、この時点でかなりの解像度が出ていて期待が持てそうです。
Light_BIN_1_8288x5644_60s_L_drizzle_1x_ABE4_DBE_BXTc_BXT_BXT03


LRGB合成

RGBとLをどう合成するかはいまだに迷います。過去に何度が議論しています。LRGB合成を初めて試したのは2022年10月のまゆ星雲です。この時わかったのは、L画像を合成したときに色がかなり出なくなるのですが、見えなくなっているだけで色情報としては十分残っているということでした。でもLとRGBをどのタイミングで合成すべきか、どういった比率で合成すべきかなどはまだまだ謎のままでした。


その後、この2つの過程でLRGB合成の経験的な方法はある程度確立したのかと思います。



そしてこのページである程度の理屈も含めて結論が出ています。


久しぶりのLRGB合成になるのでかなり忘れていることもあり、今回改めて読み直しましたが、今見てもかなり有用な議論です。当時のniwaさん、botchさん、だいこもんさんに感謝です。

今回まずは様子見で、PIのLRGBCombinationを使ってL画像を指定してRGB画像放り込んでみると、カラーノイズが結構目立ちました。RGBの撮影時間が短いので当然なのかもしれません。そこでLab分解してaとb画像にぼかしをかけてみました。以前うまくいった方法なのですが、今回はカラーノイズに対してほとんど効果が見られませんでした。カラーノイズ対策ができないのならa、b画像で何かする価値はほとんどなくなってしまいます。カラーノイズは後で対策できることと、奇をてらう方法はできるだけ避けたいこともあり、今回は素直にLRGBCombinationを使う方法を探ります。

未だ残っている一番の疑問は、LとRGBの混合比率です。これまでわかっていることは、
  • LRGBCombination処理はリニアでやらずにノンリニアでやること。ノンリニアとはフルストレッチしてからということ。
  • でもフルストレッチは厳しすぎる制限で、多少のストレッチでも大丈夫そうなこと。
  • リニアで処理すると、恒星内部に明るい飽和の飛びができ、後からどうしようもなくなること。
  • 飽和の飛びはL画像がRGB画像より暗い場合にできたが、L画像を明るくすると無くなること。

まず思っている疑問は、リニア段階での処理では本当にダメなのかということです。リニアはノンリニアの特別な場合と考えることができ、ノンリニアでいいのならリニアでも当然大丈夫だと思うからです。今のところ確認できている弊害は、
  • 恒星の飛び
だけです。

結論だけ言うと、今回リニア段階でLRGBCombinationを試しましたが、いずれも恒星の飛びは確認できませんでした。ただしこの結果は、LとRGBの明るさの違い(混ぜる比率)に依存しそうなので、その比率を変えて幾つか試しました。試したのはLRGBCombinationのCannel Weightsを変えることです。これらは相対的な比だけで決まり、例え全部を0.1とかにしても、処理後の画像の全体の明るさは変わらないことは以前確認しています。試したのは以下の4種類です。
  1. L : R : G : B = 0.1 : 1 : 1 : 1
  2. L : R : G : B = 1 : 1 : 1 : 1
  3. L : R : G : B = 1 : 0.1 : 0.1 : 0.1
  4. L : R : G : B = 1 : 0.01 : 0.01 : 0.01
いずれの場合も上で書いたように飛びは出なかったので、とりあえず今回は少なくともリニア段階でLRGB合成したとしても確認できるような問題は起きなかったと言えます。

その一方、できた画像の解像度には明確な差が出ました。下の画像になりますが、左から順に上の1,2,3,4となります。
comp

注意すべきは2, 3, 4で、Lの比率が高いとLRGBCombination直後はほとんど色がなく、一見モノクロのように見えることです。でも色情報はきちんとのこっているので、ここで心配する必要はありません。CurveTranformationで右のSの彩度を選んで曲線をΓの字になるくらいにして彩度を上げてやると確認できます。上の画像はそのように彩度を上げたもので比較しています。

4つの画像を見る限り、カラーノイズ、彩度に関しては明確な有利不利は確認できませんでした。最も大きな違いは分解能で、Lが一定以上の明るさがないとRGBが持つ低い分解能のままで制限されてしまうということです。わかりにくい場合は上の画像をクリックして拡大して比べて見てください。明確に違いがわかります。LとRGBの比が0.1:1や1:1ならばL分解能が十分生きてこなくて、1:0.1ならば十分、1:0.01にしてももう変化がないことがわかります。以前M106で試した時は1:0.25とかにして分解能が出たので、今回も再現性があり、ある程度L画像の明るさを保たないとダメだという結果を改めて確認できたことになります。

というわけで、今後もLRGBCombinationでシンプルに、Cannel WeightsだけLをある程度大きくしてLRGB合成をすればいいということにします。


結果

結果です。とりあえずはクロップして本体をある程度の大きさにしたものを完成とします。

「M104: ソンブレロ銀河」
Image07_middle
  • 撮影日: 2024年4月1日22時3分-4月2日2時41分、4月10日20時27分-4月11日3時18分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 189枚、R: 59枚、G: 51枚、B: 64枚、総露光時間363分 =6時間3分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が204枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120で露光時間 LRGB: 0.01秒でそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop

まず目的の銀河本体内部の構造ですが、結構出たといっていいかと思います。これはひとえにシンチレーションが良かったからと言うのが今回の結論です。BXTの効果も大きいかもしれませんが、シンチレーション自身が良かったのがまず第一だと思います。色は下に載せたハッブル画像に近くしました。

クロップ前の全体像になります。
Image07_low

恒例のAnnotationです。
Image07_low_Annotated

銀河っぽいシミがいくつかあると思ったのですが、候補に入らないものがいくつかあります。単に画像処理でなにか失敗してるのか、はたまたまだカタログ不足なのでしょうか?


ハッブルとの比較

恐れ多くもハッブルと比べてみます。

まず今回撮影し画像を5度時計回りに回転させ、次のハッブル画像と同じような画角に切り出したものです。
Image07_rot5_Hubble

次がハッブル望遠鏡が2003年に発表したM104です。
STScI-01EVT8YHAGM2WGQTV3DGKRFZ7Q

もちろん分解能には全然差はあって追いつけっこないですし、恒星に至っては大きさも微恒星の写りも全く違います。でもなんかちょっと比べてみようと思うくらいにはなったのかなと思って、自己満足しています。


まとめ

足掛け2年にわたって悶々としていたM104にやっと決着がつきました。2022年の結果がこれなので、大きな進歩だと思います。
final

ソフトは変わりましたが機材は同じです。今回L画像を撮影したのは大きな違いですが、やはりそのL画像のシンチレーションの影響が一番大きいと思います。撮影時のHFRを見るとシンチレーションの評価になりそうなので、いい日かどうかを定量的に評価しながらL画像を撮影すべきなのかカラー画像を撮影すべきなのかを決めることなどができそうです。そこらへんの補足記事を次に書こうと思っています。

今回健康を害すると何もできなくなってしまうことを実感しました。まだ今後も長年続けていきたい趣味なので、少し体に気をつけて、無理をせずに楽しみながらやっていけたらと思います。

画像処理も溜まっています。ダイオウイカは昨年10月くらいから残ってますし、ヘラクレス銀河団、さらに南天がいくつか残っています。これらも焦らずに進めていきたいと思います。


2023/10/12、久しぶりに新月期で晴れです。平日なのであまり無理をしたくないのですが、せっかくなので撮影を敢行しました。


久しぶりの撮影

実は前日の10月11日も晴れていたのですが、ε130Dの光軸調整で時間を潰してしまい、何の成果もありませんでした。実際光軸調整も大したことはできず、せっかくの晴れでもったいないです。なんとか撮影の成果だけは残そうと思い、SCA260+ASI294MM Proで簡単な撮影をしました。この日の撮影は、前半がM27、後半がM45です。でも結局撮影が忙しくて、せっかくε130Dを出してセットアップまでしたのに、光軸調整はやっぱりできないんですよね。平日に二つのことは厳しいです。

今回M27にした理由ですが、5月にHα画像を写していました。その後続けてOIIIも撮ったはずなんです。でも撮影後に確認したら、実際に撮影していたのはB...。AOO撮影のはずなのに、Aの次はBと思い込んでしまったようです。今回はそのリベンジで、OIIIの撮影です。でもここでも痛恨のミス。縦横を合わせ損なって90度ずれてしまい、使えるのは重なる正方形の部分だけとなってしまいました。

前回M27を撮影したのは2年前のTSA120を使ってです。2021年9月になります。この時が、そこそこセンサー面積があるモノクロカメラを使った初のナローバンド撮影で、まだフィルターホイールも持っていなかったので、手でフィルターを付け替えてのAOO撮影でした。本体周りの羽の部分を出したくてOを重点的に出そうとしました。羽はそこそこ写ったのですが、意外にAが出なくて、Aのリベンジが課題だったことを覚えています。



それでもこの時のM27には結構満足していて、もうしばらく撮ることはないなと思っていましたが、2年経つとアラも見えてきますし、SCA260でさらに光量が稼げるとか、BXTが台頭してきたとかで、状況も大分変わってきています。高度も高く、夏を中心に一年のうちのかなりの期間撮影が可能なので、ベンチマークがわりに再びM27を撮影しようとここしばらく思っていて、やっと実現できたというわけです。


撮影

SCA260での撮影は久しぶりです。少しづつ思い出しながらのセットアップになりますが、それでもほとんどトラブルもなく、比較的順調に撮影開始となりました。一つだけミスがあって、StickPCを使っているのですが、SCA260+ASI294MM Proで使っているStickPCと、ε130D+ASI6200MM Proで使っているStickPCが入れ替わっていて、気づかずにカメラの設定やフィルターごとのEAFのピント位置とかの設定でファイルを上書きしてしまいました。気づいたのはプレートソルブがどうしてもできなくて、ε130Dの焦点距離の400mmが入っていた時でした。でも面倒なのでそのままStickPC交換せずに使い続けたのですが、色々不具合が出てきて、すぐに交換すればいいと後から後悔しました。
M27
撮影中のNINAの画面。ガイドも順調です。

撮影は順調に続き、OIII画像が溜まっていきます。23時位になるとM27が隣の家の屋根にかかってしまい、次に考えたのが、ずっとやってみたかったモザイク撮影です。以前拡大撮影したM45: プレアデス星団が次のターゲットですが、これは別の記事で書きたいと思います。


追加撮影

OIIIの撮影直後は5月に撮影したHαと合わせて仕上げてしまおうと思っていましたが、縦横の間違いが悔しかったので、結局10月17日にHαを、OIIIと同じ方向にして撮影し直してしまいました。こうなってくるとOIIIもHαももう少し追加したくなり、18日にも追加撮影して、5分露光でHαが44枚、OIIIも44枚で、合計88枚、総露光時間440分で7時間20分となりました。17日から18日にかけては庭に望遠鏡を出しっぱなしにしていたので、すぐに撮影に入ることができ、18時台から撮影を開始できています。


フラットでトラブル

久しぶりの撮影なので、フラットを撮り直しています。フラット撮影は、昼間に明るい部屋で白い壁を映しています。ところが、今回条件を一緒にしようとして「冷却して」撮影したのは失敗でした。結露が起こってしまったことに後から気づき、結局常温で全て撮影し直しです。DARKFLATも温度を合わせるため、こちらも全部取り直しです。
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フラット撮影中にオートストレッチして、こんな風に真ん中にシミのような大きな模様ができていたら、結露しています。拡大すると、おかしな黒い点々が見えたりします。

普段はフラットは昼間に部屋が明るい時に撮っていましたが、雲があると明るさがバラバラになるのでダメですね。今回は早く画像処理を始めたかったため、暗くなってから部屋のライトをつけて撮影しました。でもこれ、もしかしたらダメなのかもしれません。特にHαですが、微妙にフラット補正が合わずにムラになってしまいました。

以前記事に書いたことがあるのですが、ナローバンド系はフラットファイルそのものがどうしてもムラムラになってしまいます。



当時、センサー自身のムラではないかと予測したのですが、その後ZWO自身がこのムラはセンサーの特徴だと言及しているページを見つけました。



当時このページの存在は知らなかったのですが、後からやはり推測は正しかったと分かりました。でもいずれにせよ、このムラはフラット補正で解決できましたし、ZWOの説明でも同様のことが書いてあります。

でも今回は、フラット補正をしてもどうしても、ムラの形が残ってしまいました。まず、今回撮影したフラット画像のうちの1枚です。ナローバンド特有の大きなムラ構造が出ています。
masterFlat_BIN-2_4144x2822_FILTER-A_mono

次に、AOO合成した直後の画像です。上のフラット画像と比べてみると、ムラの形がよく似ていて、暗いところが赤くなってしまっているのがわかると思います。
Image11_ABE

まだ未検証ですが、部屋の明かりを使ったのが悪かった気がしています。明かりとしては、蛍光灯と電球を合わせたのですが、それぞれ波長が違っていて、違った種類の光源が複数方向から来ているので、複雑な形の輝度勾配ができてしまっていた可能性があります。もし時間が取れるなら、再度晴れた日の明るい部屋の中で自然光を光源に、再度撮影してみたいと思います。あ、多分ですが、晴れた日にの薄明時に鏡筒を空に向けるのが一番いいのかとは思いますが、時間が限られるので、壁での方法を確立しておきたいということです。

今回問題だったフラットのムラはHα、OIIIともにDBEを細かくかけることで、なんとか見える程度にすることができました。


ダークの撮影

あと、今回ついでにダークも久しぶりに撮影しました。ダーク系を撮るのも昼間は注意が必要です。カーテンを閉めてできるだけ部屋を暗くするのはもちろんですが、鏡筒や特にフォーカサー部などにきちんと暗幕(タオルとか、服とか)をかけて撮影しないと、完全にダークになりません。今回は二度に分けてダークを撮りましたが、最初の暗幕が甘くて、十分暗くなりませんでした。
IMG_8668
こんな風に望遠鏡をくるんで、さらに部屋を暗くしてダークを撮影してます。


最新版PixInsightと、Mac M1でのStarNet

私は画像処理にMacのM1を使っているのですが、最近PixInsightを1.8.9-2にアップデートしたら、StarNet V2が使えなくなりました。その後StarNet V2もアップデートされ、最新バージョンのPIでも使えるようになったということでしたが、再インストールの方法を忘れてしまい少し手間取りました。Niwaさんのページやその参照元のCloudy Nithtsに解説があるのですが、自分の環境とは微妙に違っていて、そのままではうまく動きません。うまく動いた方法を書いておきます。

まず、ダウンロードページに行って、



をダウンロードします。その後、ファイルを解凍します。
  1. StarNet2_weights.pbとStarNet2-pxm.dylibは/Applications/PixInsight/bin/にコピーします。
  2. libtensorflow.2.dylibとlibtensorflow_framework.2.dylibはApplications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/にコピーします。PixInsight.appの中身は、PixInsight.appを右クリックして「パッケージの中身を表示」を選ぶとアクセスすることができます。
  3. 以下のコマンドを、一つ一つコピペしてターミナルから実行します。
  • sudo chown root:admin           /Applications/PixInsight/bin/StarNet2_weights.pb
  • sudo chmod 644                  /Applications/PixInsight/bin/StarNet2_weights.pb

  • sudo chown root:admin      /Applications/PixInsight/bin/StarNet2-pxm.dylib
  • sudo chmod 755             /Applications/PixInsight/bin/StarNet2-pxm.dylib

  • sudo rm -f             /Applications/PixInsight/bin/libtensorflow*
  • sudo chown root:admin  /Applications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/libtensorflow*
  • sudo chmod 755         /Applications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/libtensorflow*

あとはREADME.txtに書いてある通りに、
  • PI上でPROCESSES=>Modules=>Install Modulesで'Search'を押すと、StarNetが出てきます。
  • その後他のボタンは何も押さずに'Install'を押します。
  • うまくいくとStarNet2がPROCESSES-><Etc>もしくはPRECESSES-><All Processes>に出てくるはずです。
怖かったのは、マニュアルに「ちゃんと手順を踏んでやってもサーチでStarNetが出てこない場合は、AVXに対応してないから仕方ないとか、心を折るような記述があることです。でもM1のMacでPIの最新版で、確実にStarNet V2をインストールできたので、諦めずに正しい手順でやってみてください。


結果

画像処理に関しては、あとはほとんど問題はありませんでした。ナローなので、色決めに一意の解はなく、SPCCも恒星の色を合わせるように設定したので、星雲の色は自由度があります。他の画像を見ていてもM27の色は様々で迷いますが、前回TSA120で出した色が比較的好みなので、今回も近い色としました。

画像処理の結果が下のようになります。
masterLight_BIN_2_300_AOO_SPCC_BXT_DBE_MS_MS_BG2_cut_X3
  • 撮影日: 2023年10月12日20時59分-22時52分、10月17日20時34分-23時29分、10月18日18時18分-22時35分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260 (f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα, OIII
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα:44枚、OIII:44枚の計88枚で総露光時間7時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、42枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα, OIII:10秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

ちなみに、2年前に撮ったTSA120の画像が以下になります。
Image09_DBE2_stretched7_cut_crop_b


比較と評価

2年前と今回を比較してみます。
  • 最初のスタック画像を見ていると、微恒星に関してはどうも前回のTSA120の方がより出ている気がしました。これまで同じ対象でTSA120とSCA260を比べて、SCA260が負けたことはないので、意外な結果でした。原因はシンチレーションくらいしか考えらないです。もう夏の気候は終わってしまったので、揺れは大きくなっているのかもしれません。それでもBXTをかけて改善する余地があったので、結果としては今回の方が微恒星は数も鋭さも出ています。
  • 狙いの本体外側の蝶の羽の部分は、今回の方が明るい鏡筒で露光時間も倍以上と長いため、明らかに綺麗に出ています。羽の部分はOIIIの青よりも、Hαの赤の方がやはり淡いようで、前回よりも出てはいますが、フラットムラのこともあり、まだ露光時間を伸ばすか、このレベルの淡さになってくると自宅よりはさらに暗いところに行ったほうが効率がいいのかと思います。ここ最近の記事で、明るいところと暗い所のスカイノイズの影響が数値で定量的に出るようになってきたので、いずれこの淡さならこの場所に行くべきというようなことが言えるようになるのかと思います。
  • 中心部の微細構造は、口径とBXTの効果で圧倒的に今回の方がいいです。ただし、淡い羽部分の分解能との差がありすぎるので、多少なりともバランスを取るために、あえて少し分解能を落としてあります。
今回のM27、羽の部分、中心部分の分解能、微恒星の鋭さ、背景のノイズなど、ほぼ全てを2年前の結果を上回っていて、自己記録更新です。あえていうなら、透明度みたいなのだけは以前の方が良かったように思いますが、これは画像処理に依っていて、まだ私も確信を持って(少なくとも見かけの透明度さえも)透明度をコントロールできていないので、偶然によってしまっています。それ以外はトータルとしてはかなり満足しています。


まとめ

久しぶりのSCA260での本気撮影でしたが、かなり満足な結果でした。自宅庭撮りで、M27の羽がここまで出るのなら、十分なのかと思います。その一方、これ以上出すのは撮影時間がかかりすぎることなどから難しく、暗いところに行く必要があると思います。次のシーズンに飛騨コスモスでしょうか?

ε130Dの光軸調整がなかなかはかどっていないので、しばらくはSCA260での撮影も継続していこうと思います。


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