ASO294MM ProのROIを変更することで、TSA-120での分光撮影ができるようになったのですが、その日は風が強くて撮影した画像はブレブレでイマイチでした。エタロンを使ったフェニックスでのHα画像撮影とも比較しようとしましたが、ミスでライブスタックした画像しか残っていなかったので、年末休暇の2日目の28日(土)、満を持しての比較検討です。
機材の違い
3パターンの分光撮影と、参考として口径4cmのエタロンを使った
- TSA120+ASI294MMPro
- FC76+ASI294MMPro
- FC76+G3M678M
- Phoenix+G3M678M
の計4種で撮影しました。上3つが分光、最後がエタロンです。見たいポイントは、波長分解能と、空間分解能です。
波長分解能は分光の3つはほとんど差が出ないことは計算上わかっています。厳密にはカメラのピクセルサイズが効いていて、G3M678Mを使ったFC-76の方がいいですが、高々1割程度の違いなので見た目ではわからないでしょう。今のセットアップでの分光撮影とフェニックスエタロンとはFWHMで5倍くらいの差があるので、ここまで差があると見た目にもわかるかと思われます。
波長分解能は分光の3つはほとんど差が出ないことは計算上わかっています。厳密にはカメラのピクセルサイズが効いていて、G3M678Mを使ったFC-76の方がいいですが、高々1割程度の違いなので見た目ではわからないでしょう。今のセットアップでの分光撮影とフェニックスエタロンとはFWHMで5倍くらいの差があるので、ここまで差があると見た目にもわかるかと思われます。
空間分解能に関してはFC-76の口径で制限されていることがわかっているので、TSA-120が有利です。計算上はカメラの分解能は2.0umのG3M678Mでも2.3umのASI294MMのbin1でも効いていなくて(bin2だと効いてきて分解能が悪くなる)、口径の1.5倍の違いだけが効いてくるので、空間分解能は単純に1.5倍良くなるはずです。を1の1.5倍ほどいいはずです。空間分解能の1.5倍は見た目にも顕著なはずで、こちらも画像で見て確認できるはずです。
というわけで、波長分解能は計算上
3>1=2>>4
でFC76+G3M678Mが一番よく、空間分解能は計算上
1>3~2>4
でTSA120+ASI294MMProが一番いいはずです。
さて、実際の結果はどうなるのでしょうか?
撮影
撮影は、1→4→2→3の順になりました。前回のTSA120+ASI294MMPでの再現をまずして、次に簡単なフェニックスでの撮影、その後エタロンとカメラをくっつけたままFC-76につかけえて撮影、最後にカメラをG3M678Mに取り替えたという手順になります。
時間と撮影枚数などは
- 11時41分-12時16分で10枚
- 13時3分-13時27分で10枚
- 14時20分-14時31分で10枚
- 12時38分で1500枚の内上位50%
画像処理もある程度条件を揃えています。分光撮影はJSol'Exで処理後、ストレッチなどしていない「disk」フォルダのtifファイルを上記枚数分AutoStakkert!4でスタック、ImPPGで細部出しとコントラスト出しをするところまでです。前回の記録ではさらにPixInsightとPhotoshopで加工などしていますが、今回の比較ではできるだけ未加工の状態で比べたいので、それらの最後の仕上げはしていません。フェニックスの方は、動画をAutoStakkert!4スタックし、ImPPGで細部出しをしています。
全体像の比較
結果を1、2、3、4の順に並べます。
1. TSA120+ASI294MMPro
2. FC76+ASI294MMPro
3. FC76+G3M678M
4. Phoenix+G3M678M
波長分解能は上の4枚の比較でわかるかと思います。予想通り、1、2、3はほとんど同じかと思いますが、4はやはり違って見えます。見るべきところは、分光の1、2、3はダークフィラメントのコントラストが良いこと、プラージュの明るい領域の他に、もっと広域で白いモヤモヤが広がっているところでしょうか。細かい模様は4のフェニックスの方が一見よく見えています。これはHα線からズレたところに出てくる模様で、波長分解能としては悪くなっていることを表しています。分光撮影で波長幅をあえて大きくしてHαからズレたところも含めると、同様の画像が再現できることがわかっています。
TSA-120の画像はコントラストがいまいちな他に、上下に周辺減光の影響が出ていることがわかります。細長い領域で撮影し、それを赤経でスキャンするので、その端の暗い部分の影響が上下に出るというわけです。もっと言うと、コントラストが悪いのもこの周辺減光が原因です。輝度差のために簡易な画像処理の段階ではまだコントラストを補正しきれないのです。
拡大像の比較
次に、真ん中右の黒点部分をそれぞれ拡大して比較してみます。左上から1、右上が2、左下が3、右下が4です。
空間分解能は拡大した画像を比較すると良くわかります。予想は
1>3~2>4
でしたが、結果は意外なことに
2>3>1
となりました。4のフェニックスの画像は少し出方が違うので比較が難しいのですが、あえて言うなら
2>3>4>1
くらいでしょうか。これは画像処理を進めていくとわかる結果で、FC-76はもっと細部を出しても耐えられますが、フェニックスは無理をすると破綻してしまいます。口径わずか4cmなので、限界に近い分解能が出ているのかと思います。ざっくり計算で口径4cmだと分解能は4秒、カメラの1ピクセル2umでが焦点距離400mmだと分解能が1秒くらいなので、口径からくる光学限界が見えている可能性が高いです。
問題はTSA-120で、なぜここまで出ないのかよくわかっていません。
なぜ実際の分解能が予測と違うのか?
いずれにせよFC-76のカメラ違いの順序も含めて、予想と全然違います。これにはさすがに???となってしまいました。何か順序とかに間違えがないか見直しても、特におかしなところはありません。単純なミスではなさそうなので、いくつか可能性を考えてみます。
- まずパッと思いついたのは、撮影した時間が違うことです。でも、普通は朝早い方が条件がいいので、TSA120の結果が悪くなることはないはずです。
- 撮影に長い時間をかけると模様が変わってくるのでぼやけたような結果になります。確かに1のTSA-120での撮影に一番時間をかけていますが、2と3のFC-76の撮影では3の方がはるかに短い時間で撮影していても、2の方が分解能が出ているので、うまく説明できません。
- たまたま2の撮影の時だけシーイングが良かった可能性もあります。でも、いいシーイングがある程度続くのはせいぜい10分くらいで、特にいいシーイングは1時間のうちほんの30秒くらいです。機材1パターンの撮影が30分程度にわたって続いているので、こちらもある程度平均化されているかと思います。でも、シーイングの可能性は捨てきれないことも確かです。
- 分光器の調整や、ピントがあっていなかった可能性もあります。できる限り同じような精度で調整していますが、今回は分光器の付け替えや、カメラの付け替えで、調整の精度がばらついている可能性は否定できません。でも今回は1=2>3の順で精度がいいのかと思っています。1は前回も合わせていていつもの手順通り。2は太陽像が小さくなるので、同じ手順で調整できます。3はカメラのセンサー面積が小さくなり、スリットの端が見えないので、太陽像と背景のエッジ、フラウンホーファー線のピント、粒状斑ので具合の3つを見ながら、コリメートレンズ、カメラレンズ、鏡筒の焦点の3つの自由度を合わせ込む必要があります。これら3つの自由度は独立ではないため、合わせ込みが難しく、3番目の調整が一番大変でした。もしかしたら3番目に一番時間をかけて調整したので、ここだけ逆に精度が出ている可能性もなくはないですが、いずれにせよ1番と2番に差はあまりないはずで、この調整が原因で1番と2番の順序の逆転を説明できるとは思えないです。
色々考えていて、ふと思いついたことがあります。撮影時の赤道儀のスキャンのスピードの違いです。
- 1番と2番はASI294MMPでフレームレートが70fps程度低いので、スキャン時の赤径の移動スピードを4倍にまで落としています。その一方、3番はG3M678Mのフレームレートが300fps程度とかなり速いので、赤径の移動スピードを16倍にしてあります。
- 1番と2番のスキャンスピードは同じですが、TSA-120とFC-76で焦点距離が違うので、太陽像自身が小さくなります。太陽の径は同じなのでスキャンしている角度は同じですが、焦点距離が短い分仕上がり画像で言う縦幅が小さくなるので、縦横比が大きくなります。要するにより仕上がり画像の横方向を相対的により(ゆっくり)細かくスキャンしていることになります。その分情報量が多くなるので分解能も増すという考えです。
- 3番は縦横比を保つくらいの速度でスキャンしているので、分解能はそこまで上がらないはずです。
- でも相対的には縦に比べて横方向は情報量は増えたかもしれませんが、TSA-120の画像に比べたら縦横比が増したというよりは、縦の情報量が減っただけと考えることもできるので、あまり説明できない気もします。
まとめ
TSA-120での分光撮影から久しぶりにFC-76での分光撮影にもどって思ったのは、TSA-120での撮影はかなり無理をしているなということです。スリット長を長くしましたが、焦点距離900mmはスリット長ギリギリまで太陽像が大きくなります。極軸が合っていないと撮影していてもすぐに位置がズレてしまい、スリットからはみ出してしまいます。カメラも大きなセンサーサイズを必要としますし、その分フレームレートも落ちます。単発の撮影ならまだしも、スタックすることを考えて連続撮影しようとしても、撮影時間が長くなってしまい、かつ成功率も低いので、さらに撮影時間が長くなってしまいます。毎回記録撮影をするとしたら、ここまで苦労するのは大変ではないかと思っています。しかも苦労の割に今回口径の大きいはずのTSA-120の方が分解能が悪いという結果になってしまいました。周辺減光も深刻そうだと改めて今回思いました。
分解能が出ない理由がまだはっきりしなくて、結局結論は出ないので、天気が良くなったら今一度撮影してみようと思います。簡単なのは、FC76+G3M678Mで赤道儀のスピードをx4、x8、x16、x32倍速でそれぞれ撮影し比較してみることです。x4があからさまに分解能がよくなったなら、今回のことは説明ができる可能性が出てきます。
その一方、TSA-120はASI294MMPの4倍速の一択なので、こちらも何かおかしなところがないか、またFC-76の撮影の前後で撮影するとか、FC-76の4回の撮影と交互に撮影するとかで、状況変化の影響をなくせればと思います。
とにかく、TSA-120の方がいいのか、FC-76の方がいいのか、今後の撮影の大変さに大きくかかわるので、はっきりさせたいです。もっと正直に言うと、今回のFC-76くらいの結果がコンスタントに出るならもう十分で、機材が楽なこともあり、今後もこの設定で記録していく方が楽な気がしています。
今回はTSA-120の優位性を示したかったのですが、予想外の結果となってしまいました。でもこれはこれで面白いので、かたをつけたいと思います。
今回はTSA-120の優位性を示したかったのですが、予想外の結果となってしまいました。でもこれはこれで面白いので、かたをつけたいと思います。
日記
実は次の日曜にC8で粒状斑の撮影を試みたのですが、強風で画面が揺れまくり、合計400GBくらい撮影した画像は全て無駄となりました。休暇のうちはもう富山は晴れそうにないので、実家の名古屋に年末年始で帰る時に機材一式を持っていって、今一度チャレンジしようと思っています。太平洋側が羨ましいです。
ちなみに土曜の夜も撮影しています。新機材のテストです。こちらもまたまとまったら記事にします。









































