前回までの紫金山アトラス彗星もやっと落ち着きましたが、その後は天気がずっと悪かったり、忙しかったり、イマイチ盛り上がらなかったりで、ブログ記事はしばらく休んでいて、少しのんびり画像処理を進めていました。今回は10月にSWAgTiで撮影したM31アンドロメダ銀河についてです。
10月12日、昨日の馬頭星雲の撮影に引き続き、まだ天気が良さそうだったのでそのままのセットアップで撮影続行です。昼間は置きっぱなましだったので、極軸を取り直さなくていいので楽でした。
この日はアンドロメダ銀河狙いです。実はこの日は2セット出していて、RedCat51+ASI294MC Pro+SWAgTiでカラー、ε130D+ASI6200MM Pro+CGEM IIでHαで、後で合成する予定ですが、まずは今回は簡単なカラー画像のみの処理までです。
アンドロメダ銀河は結構大きいので、SWAgTi撮影の方の画角を少し広げたくて、カメラをこれまでの1/1.2インチのUranus-C Proからフォーサーズの上記ASI294MC Proに変更しました。あと、銀河なので、これまで入っていた2インチのDBPを外して、同じく2インチのUV/IRカットに変更しました。
SWAgTiを含む架台側のセットアップはそのままでよかったのですが、鏡筒の方を色々いじっていたら結構時間が経っていて、月が沈む0時過ぎをとっくに超えてしまい、撮影開始は午前1時過ぎになってしまいました。
撮影ソフトはNINAで、ガイドなしでディザーありのSWAgTi特有の「お気楽、でも縞ノイズは出ないよ」撮影になります。撮影時のミスを避けるなどを考えると、SharpCapよりもNINAの方が圧倒的に気を遣わなくて楽で、SWAgTiではこの「NINA、ガイドなし、ディザーあり」がほぼデフォルトになってきました。
RedCat51にASI294MC Proを付けての初撮影だったので露光時間を少し迷いましたが、とりあえず1枚あたり3分としました。3分露光だと、250mmくらいの焦点距離でも、普通の赤道儀ではピリオディックモーションが避けきれなくて採択率が下がってしまうおそれがあります。ここはSWAT350 V-SPEC Premiumの高精度追尾のおかげで普通に100%の採択率を目指すことができます。
ゲインはHCGがオンになる120一択です。HCGのおかげで13stopsくらいのダイナミックレンジを取ることができます。stopsはbitと同じで、2の13乗 = 8192階調で輝度を表すことができるということです。
ゲイン120一択と言いましたが、選択できるゲインは露光時間と密接な関係があります。もし高精度追尾が無ければ、露光時間を十分に伸ばすことができないので、対象天体の淡いところを出そうとすると、その分ゲインを上げなくてはいけません。ゲインを上げることで淡いところの輝度を読み出しノイズより大きくして撮影する必要があるからです。ゲインというのは、「露光時間を延ばせない環境下において、淡い部分を読み出しノイズ以上に持ち上げてダイナミックレンジ内に入れる」という、非常に便利な機能であると考えることもできます。その一方、ゲインを高くすると、当然「ダイナミックレンジを犠牲にしてしまう」ので、恒星などが飽和する可能性が高くなってしまいます。
このように考えると、SWAT350 V-SPEC Premiumの高精度追尾は単にガイド無しで1枚あたりの露光時間が延ばせるだけでなく、「最適なゲインを選ぶ選択肢を持てる」ということが利点の一つになるのかと思います。ただし単に1枚あたりの露光時間だけ伸ばすことができても、トータルで長時間露光を目指すと縞ノイズがどうしてもついて回るので、SWAgTi特有のガイド無しディザーで縞ノイズを避けるというわけです。改めて考えてみても、SWAgTiはかなり理にかなっているのかと思います。
さて、こんなSWAgTiですが、撮影が一旦始まってえば、あとは基本放置で楽なものです。今回の撮影は0時46分スタートで、午前5時1分終了でした。といっても、自宅なので寝ていただけで、後でチェックしたら天文薄明開始の午前4時半頃からあきらかに明るくなっているのでカット。それ以外で省いたものは合計7枚で、7枚のうち4枚は人工衛星がかなり明るく写っていたので、Integration時のsigma clippingなどで綺麗に取り除けない可能性を考えて除きました。残り3枚は連続していて、どれも赤径方向の星像のジャンプで、特にそのうちの1枚はかなり大きなジャンプでした。原因は不明ですが、機材トラブル、風、地震、周りに車や人がいたなどの可能性が考えられます。結局使えたのは全80枚のうち64枚で合計3時間12分です。あえて除いた天文薄明と人工衛星を無視すると67枚のうち64枚なので、96%程度の採択率が今回のSWAgTiの実力と言っていいでしょうか。
下は、3時間12分の画像をPixInsightでスタックまでしてオートストレッチだけの画像です。色などは何もいじっていません。例の如く、お気軽撮影を目指しているので、ダーク補正もフラット補正もバイアス補正も無しです。
まず心配だったのは、ダーク補正をしないことによるIMX294センサー特有のアンプグローです。実際に右上に少しだけ明るい部分が見えていますが、高々この程度です。これを消すためにダークフレームを撮影して、ダーク補正するという手間をかけて、かつダークカレント起因のダークノイズを増やしてしまうことを考えると、ASI294MC Proでもダーク補正をあえてする必要もないかと思います。
1/1.2インチのUranus-C ProよりもフォーサーズのASI294MC Proの方がセンサー面積が大きくなったので、周辺減光も少し心配でした。フラットフレームを撮影していないので、かなり大雑把な見積もりですが、ABEの2次と4次で補正した時のbackground画像の輝度から推測するに、最大でも4%程でした。この程度なら、ホコリなどの局所的な欠損さえ無ければ、光学的なフラット補正はなくても十分なのかと思います。
繰り返しになりますが、上の画像はスタック直後にオートストレッチだけしたもので、彩度アップなどの色調も何もいじっていないです。それでも星の色も分かりますし、M31本体の色もある程度出ています。簡単セットアップで、3時間放っておくだけで、スタック以外特に画像処理もせずにこれだけの画像が撮れるなら、SWAgTiでのこのセットアップはかなりすごいのかと思います。
次が、PixInsightでABEの4次、SPCC、BXT、MaskedStrerch、NXTをかけたものです。次のPhotoshopでの処理のために、輝度は少し抑えています。
こちらも色調整はSPCCのみで、あえて彩度はいじっていませんが、更に色がはっきりしてきています。
もう上の画像でも十分かと思いますが、最後にPhotoshopに持っていって、少しだけ仕上げします。
仕上げはかなり迷いました。アンドロメダ銀河の色って、人によって本当に千差万別ですね。AstrobinのM31で検索した結果を見ると何が標準か全くわからなくなります。派手なものは真ん中が金色に輝いていて、端の方はかなり青に寄っています。地味なのは全体に緑色っぽいものでしょうか。上の画像だとかなり地味な色居合いになります。緑の代わりに黒と白でモノクロっぽくして、あえて赤ポチを目出させているようなカッコイイものもあります。
前回のM31の撮影は4年前の2020年でFC-76とEOS 6Dを使っています。
4年前の時も4年ぶりの撮影とか言っているので、4年枚にメジャー天体を撮影し直すようなペースになっているということでしょうか。6Dのカラー撮影で赤ポチを少しでも表現しようとするような無理をしている感じで、かなり派手目な色使いになっています。今回はHαは別撮りのものがあるので、ここでは比較的シンプルな銀河っぽい感じにしてみました。
銀河のシンプルさに比べて、恒星の色をある程度出しました。上にある明るい青い恒星と、散りばめられたオレンジの恒星のおかげで、寂しさはあまり感じられないと思います。
銀河中心が飽和しないように、また腕の構造がある程度はっきり出るようにしてみました。色は私の中ではかなりおとなしめですが、これはのちの赤ポチで派手になることも見越して少し抑えています。
恒例のアノテーションです。周りにすごい数の銀河があることがわかります。
PGCを無くしたこっちの方がシンプルでいいでしょうか?でもちょっと寂しぎですかね?
ちなみに4年前の画像を再掲載しておきます。
今回のものと比較してみると、やはり見た目が全然派手です。あと、私はもともと恒星の処理が苦手で、この頃はまだStarNetで恒星分離ができ始めた頃で試行錯誤をしている最中で、今見るとかなり酷いです。さらに今回はBXTも使えるので、恒星に関しては進歩があったのかと思います。
機材でいうと、口径は76mmから51mmに減っていますが、F値では8から4.9になっているので、単位面積あたりの光子数が多くなっていて、今回の方が有利になります。画角はほぼ同じ(微妙に今回の方が広角)なので、その分センサー全体の大きさは違いますが、S/Nは単位面積あたりの光子数で決まるので、S/N比較ではあまり関係ないです。S/Nはピクセルサイズと密接に関係があり、6Dの6.5μmとASI294MCの4.6μmなので、信号が1ピクセルの面積に比例し、1ピクセルあたりの読み出しノイズは同じと仮定して、その他ノイズを無視してS/Nを考えると、計算上では(8/4.9) / (6.5/4.6) = 1.15とほとんど差は無くなってしまいます。
仮にトータル露光時間が同じとすると、信号Sが1.15^2倍前回の方が今回大きく、ノイズNが1.15倍だけ今回増えるので、S/Nは前回よりも今回の方が1.15倍いいことになるということで、機材としては今回の方が有利ということです。その代わりに分解能が前回の5472×3648から、今回は4144×2822と悪くなっています。S/Nをとるか、分解能を取るかですが、それぞれ別個のパラメータで、このように数値的に比較ができるものなので、画像と合わせてどちらをとるか考えればいいのかと思います。
実際には前回の露光時間が4時間35分で、今回が3時間12分なので、Sqrt(275/192)=1.20となり前回の方が有利なので、先の1.15倍と相殺してS/Nはほぼ同じと思っていいでしょう。分解能は6Dの方がいいので、機材と撮影条件では前回の方が良かったということになります。
それでも見かけでは今回の方がかなり良く見えるのかと思いますが、この違いは鏡筒自身の性能の差、さらにはカメラ自身の性能の差、あとは主に画像処理によるものかと思います。画像処理はBXTなどの分解能をソフト的に上げる効果もあるので、そこら辺も効いているのかと思います。
4年ぶりのアンドロメダ銀河の撮影でしたが、機材はSWAgTiのおかげもあり鏡筒と合わせて軽くシンプルになり、撮影もガイドなしでかなり楽でした。ある意味、ここが一番大きな進化だと思います。実際の仕上がりの差はすでに出ていますが、L画像を別途撮影してさらに分解能を増すという手もあるかと思います。
SWAgTiは私の環境ではサブの標準機材としての位置を完全に確立しました。手軽だけれど信頼度は十分です。最近はずっと天気が悪いのですが、冬の星座も出てきているので、天気がいい機会があればパッと出して貪欲に狙っていきたいと思います。
昨日の土曜日、午前中に金沢で用事があったので、午後から21世紀美術館に行って、金沢星の会の70周年記念の展示会に顔を出してきました。
たまたま私の顔に気づいたNさんが声をかけてきてくださって、いろいろ案内してもらえました。今回70枚展示したとのことですが、70周年で70枚で、狙っていたわけではないですが圧巻でした。というのも、21世紀美術館は北陸では随一の規模を誇る美術館で、集客量もすごくて、今回訪れている間もひっきりなしにお客さんが訪れています。来ている方は星好きというよりは、ごく一般の方がほとんどのような印象でした。このような大きな場所での展示会はかなりインパクトがあり、参考にできるところが数多くありました。準備などもかなり大変だったと想像しますが、それだけの価値があるものだと思います。
展示は星景、季節ごとのDSO、太陽、月、惑星、彗星など多岐に渡り、奥の部屋ではタイムラプス映像を常時流していました。その部屋にも壁に写真が飾られていて、テーマは「能登の天体写真」ということです。今年初めの能登半島地震からの復興を意識しているのかと思います。これも全国から観光に訪れる金沢で、代表的な観光スポットにもなっている21世紀美術館で展示会を開くことが、意義に繋がっているのだと思いました。
天体写真は会員の方達の個性がとても出ていて、撮影者の名前を見ていると、この人はこんな傾向だとか、この人はこんな色使いが好きなんだなとか、いろいろ楽しむことができました。今回の記事と同じアンドロメダ銀河も大きなパネルに引き伸ばして飾ってあり、とても綺麗でした。ちょうど会場にアンドロメダ銀河を撮影した方が来ていたので、話をすることができましたが、ε160と6Dで撮影したとのことで、自分の環境と比較できるので面白かったです。
自分が所属する富山県天文学会も長い歴史があるので、今後何十周年とかなる時には、今回の展示会を参考にできればと思いました。
自宅に着いてから、さらに撮影
10月12日、昨日の馬頭星雲の撮影に引き続き、まだ天気が良さそうだったのでそのままのセットアップで撮影続行です。昼間は置きっぱなましだったので、極軸を取り直さなくていいので楽でした。
この日はアンドロメダ銀河狙いです。実はこの日は2セット出していて、RedCat51+ASI294MC Pro+SWAgTiでカラー、ε130D+ASI6200MM Pro+CGEM IIでHαで、後で合成する予定ですが、まずは今回は簡単なカラー画像のみの処理までです。
アンドロメダ銀河は結構大きいので、SWAgTi撮影の方の画角を少し広げたくて、カメラをこれまでの1/1.2インチのUranus-C Proからフォーサーズの上記ASI294MC Proに変更しました。あと、銀河なので、これまで入っていた2インチのDBPを外して、同じく2インチのUV/IRカットに変更しました。
SWAgTiを含む架台側のセットアップはそのままでよかったのですが、鏡筒の方を色々いじっていたら結構時間が経っていて、月が沈む0時過ぎをとっくに超えてしまい、撮影開始は午前1時過ぎになってしまいました。
朝、片付け前の様子。
撮影ソフトはNINAで、ガイドなしでディザーありのSWAgTi特有の「お気楽、でも縞ノイズは出ないよ」撮影になります。撮影時のミスを避けるなどを考えると、SharpCapよりもNINAの方が圧倒的に気を遣わなくて楽で、SWAgTiではこの「NINA、ガイドなし、ディザーあり」がほぼデフォルトになってきました。
RedCat51にASI294MC Proを付けての初撮影だったので露光時間を少し迷いましたが、とりあえず1枚あたり3分としました。3分露光だと、250mmくらいの焦点距離でも、普通の赤道儀ではピリオディックモーションが避けきれなくて採択率が下がってしまうおそれがあります。ここはSWAT350 V-SPEC Premiumの高精度追尾のおかげで普通に100%の採択率を目指すことができます。
ゲインはHCGがオンになる120一択です。HCGのおかげで13stopsくらいのダイナミックレンジを取ることができます。stopsはbitと同じで、2の13乗 = 8192階調で輝度を表すことができるということです。
ゲイン120一択と言いましたが、選択できるゲインは露光時間と密接な関係があります。もし高精度追尾が無ければ、露光時間を十分に伸ばすことができないので、対象天体の淡いところを出そうとすると、その分ゲインを上げなくてはいけません。ゲインを上げることで淡いところの輝度を読み出しノイズより大きくして撮影する必要があるからです。ゲインというのは、「露光時間を延ばせない環境下において、淡い部分を読み出しノイズ以上に持ち上げてダイナミックレンジ内に入れる」という、非常に便利な機能であると考えることもできます。その一方、ゲインを高くすると、当然「ダイナミックレンジを犠牲にしてしまう」ので、恒星などが飽和する可能性が高くなってしまいます。
このように考えると、SWAT350 V-SPEC Premiumの高精度追尾は単にガイド無しで1枚あたりの露光時間が延ばせるだけでなく、「最適なゲインを選ぶ選択肢を持てる」ということが利点の一つになるのかと思います。ただし単に1枚あたりの露光時間だけ伸ばすことができても、トータルで長時間露光を目指すと縞ノイズがどうしてもついて回るので、SWAgTi特有のガイド無しディザーで縞ノイズを避けるというわけです。改めて考えてみても、SWAgTiはかなり理にかなっているのかと思います。
さて、こんなSWAgTiですが、撮影が一旦始まってえば、あとは基本放置で楽なものです。今回の撮影は0時46分スタートで、午前5時1分終了でした。といっても、自宅なので寝ていただけで、後でチェックしたら天文薄明開始の午前4時半頃からあきらかに明るくなっているのでカット。それ以外で省いたものは合計7枚で、7枚のうち4枚は人工衛星がかなり明るく写っていたので、Integration時のsigma clippingなどで綺麗に取り除けない可能性を考えて除きました。残り3枚は連続していて、どれも赤径方向の星像のジャンプで、特にそのうちの1枚はかなり大きなジャンプでした。原因は不明ですが、機材トラブル、風、地震、周りに車や人がいたなどの可能性が考えられます。結局使えたのは全80枚のうち64枚で合計3時間12分です。あえて除いた天文薄明と人工衛星を無視すると67枚のうち64枚なので、96%程度の採択率が今回のSWAgTiの実力と言っていいでしょうか。
画像処理
下は、3時間12分の画像をPixInsightでスタックまでしてオートストレッチだけの画像です。色などは何もいじっていません。例の如く、お気軽撮影を目指しているので、ダーク補正もフラット補正もバイアス補正も無しです。
まず心配だったのは、ダーク補正をしないことによるIMX294センサー特有のアンプグローです。実際に右上に少しだけ明るい部分が見えていますが、高々この程度です。これを消すためにダークフレームを撮影して、ダーク補正するという手間をかけて、かつダークカレント起因のダークノイズを増やしてしまうことを考えると、ASI294MC Proでもダーク補正をあえてする必要もないかと思います。
1/1.2インチのUranus-C ProよりもフォーサーズのASI294MC Proの方がセンサー面積が大きくなったので、周辺減光も少し心配でした。フラットフレームを撮影していないので、かなり大雑把な見積もりですが、ABEの2次と4次で補正した時のbackground画像の輝度から推測するに、最大でも4%程でした。この程度なら、ホコリなどの局所的な欠損さえ無ければ、光学的なフラット補正はなくても十分なのかと思います。
繰り返しになりますが、上の画像はスタック直後にオートストレッチだけしたもので、彩度アップなどの色調も何もいじっていないです。それでも星の色も分かりますし、M31本体の色もある程度出ています。簡単セットアップで、3時間放っておくだけで、スタック以外特に画像処理もせずにこれだけの画像が撮れるなら、SWAgTiでのこのセットアップはかなりすごいのかと思います。
次が、PixInsightでABEの4次、SPCC、BXT、MaskedStrerch、NXTをかけたものです。次のPhotoshopでの処理のために、輝度は少し抑えています。
こちらも色調整はSPCCのみで、あえて彩度はいじっていませんが、更に色がはっきりしてきています。
仕上げの色使い
もう上の画像でも十分かと思いますが、最後にPhotoshopに持っていって、少しだけ仕上げします。
仕上げはかなり迷いました。アンドロメダ銀河の色って、人によって本当に千差万別ですね。AstrobinのM31で検索した結果を見ると何が標準か全くわからなくなります。派手なものは真ん中が金色に輝いていて、端の方はかなり青に寄っています。地味なのは全体に緑色っぽいものでしょうか。上の画像だとかなり地味な色居合いになります。緑の代わりに黒と白でモノクロっぽくして、あえて赤ポチを目出させているようなカッコイイものもあります。
前回のM31の撮影は4年前の2020年でFC-76とEOS 6Dを使っています。
4年前の時も4年ぶりの撮影とか言っているので、4年枚にメジャー天体を撮影し直すようなペースになっているということでしょうか。6Dのカラー撮影で赤ポチを少しでも表現しようとするような無理をしている感じで、かなり派手目な色使いになっています。今回はHαは別撮りのものがあるので、ここでは比較的シンプルな銀河っぽい感じにしてみました。
「M31: アンドロメダ銀河」
- 撮影日: 2024年10月13日0時46分-4時33分
- 撮影場所: 富山県富山市自宅
- 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
- フィルター: UV/IR cut
- 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)
- カメラ: ZWO ASI294MC Pro (-10℃)
- ガイド: なし
- 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分 x 64枚 = 192分 = 3時間12分
- Dark, Flat: なし
- 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
銀河のシンプルさに比べて、恒星の色をある程度出しました。上にある明るい青い恒星と、散りばめられたオレンジの恒星のおかげで、寂しさはあまり感じられないと思います。
銀河中心が飽和しないように、また腕の構造がある程度はっきり出るようにしてみました。色は私の中ではかなりおとなしめですが、これはのちの赤ポチで派手になることも見越して少し抑えています。
恒例のアノテーションです。周りにすごい数の銀河があることがわかります。
PGCを無くしたこっちの方がシンプルでいいでしょうか?でもちょっと寂しぎですかね?
過去画像との比較
ちなみに4年前の画像を再掲載しておきます。
今回のものと比較してみると、やはり見た目が全然派手です。あと、私はもともと恒星の処理が苦手で、この頃はまだStarNetで恒星分離ができ始めた頃で試行錯誤をしている最中で、今見るとかなり酷いです。さらに今回はBXTも使えるので、恒星に関しては進歩があったのかと思います。
機材でいうと、口径は76mmから51mmに減っていますが、F値では8から4.9になっているので、単位面積あたりの光子数が多くなっていて、今回の方が有利になります。画角はほぼ同じ(微妙に今回の方が広角)なので、その分センサー全体の大きさは違いますが、S/Nは単位面積あたりの光子数で決まるので、S/N比較ではあまり関係ないです。S/Nはピクセルサイズと密接に関係があり、6Dの6.5μmとASI294MCの4.6μmなので、信号が1ピクセルの面積に比例し、1ピクセルあたりの読み出しノイズは同じと仮定して、その他ノイズを無視してS/Nを考えると、計算上では(8/4.9) / (6.5/4.6) = 1.15とほとんど差は無くなってしまいます。
仮にトータル露光時間が同じとすると、信号Sが1.15^2倍前回の方が今回大きく、ノイズNが1.15倍だけ今回増えるので、S/Nは前回よりも今回の方が1.15倍いいことになるということで、機材としては今回の方が有利ということです。その代わりに分解能が前回の5472×3648から、今回は4144×2822と悪くなっています。S/Nをとるか、分解能を取るかですが、それぞれ別個のパラメータで、このように数値的に比較ができるものなので、画像と合わせてどちらをとるか考えればいいのかと思います。
実際には前回の露光時間が4時間35分で、今回が3時間12分なので、Sqrt(275/192)=1.20となり前回の方が有利なので、先の1.15倍と相殺してS/Nはほぼ同じと思っていいでしょう。分解能は6Dの方がいいので、機材と撮影条件では前回の方が良かったということになります。
それでも見かけでは今回の方がかなり良く見えるのかと思いますが、この違いは鏡筒自身の性能の差、さらにはカメラ自身の性能の差、あとは主に画像処理によるものかと思います。画像処理はBXTなどの分解能をソフト的に上げる効果もあるので、そこら辺も効いているのかと思います。
まとめ
4年ぶりのアンドロメダ銀河の撮影でしたが、機材はSWAgTiのおかげもあり鏡筒と合わせて軽くシンプルになり、撮影もガイドなしでかなり楽でした。ある意味、ここが一番大きな進化だと思います。実際の仕上がりの差はすでに出ていますが、L画像を別途撮影してさらに分解能を増すという手もあるかと思います。
SWAgTiは私の環境ではサブの標準機材としての位置を完全に確立しました。手軽だけれど信頼度は十分です。最近はずっと天気が悪いのですが、冬の星座も出てきているので、天気がいい機会があればパッと出して貪欲に狙っていきたいと思います。
日記: 金沢星の会70周年記念展示会@21世紀美術館
昨日の土曜日、午前中に金沢で用事があったので、午後から21世紀美術館に行って、金沢星の会の70周年記念の展示会に顔を出してきました。
たまたま私の顔に気づいたNさんが声をかけてきてくださって、いろいろ案内してもらえました。今回70枚展示したとのことですが、70周年で70枚で、狙っていたわけではないですが圧巻でした。というのも、21世紀美術館は北陸では随一の規模を誇る美術館で、集客量もすごくて、今回訪れている間もひっきりなしにお客さんが訪れています。来ている方は星好きというよりは、ごく一般の方がほとんどのような印象でした。このような大きな場所での展示会はかなりインパクトがあり、参考にできるところが数多くありました。準備などもかなり大変だったと想像しますが、それだけの価値があるものだと思います。
展示は星景、季節ごとのDSO、太陽、月、惑星、彗星など多岐に渡り、奥の部屋ではタイムラプス映像を常時流していました。その部屋にも壁に写真が飾られていて、テーマは「能登の天体写真」ということです。今年初めの能登半島地震からの復興を意識しているのかと思います。これも全国から観光に訪れる金沢で、代表的な観光スポットにもなっている21世紀美術館で展示会を開くことが、意義に繋がっているのだと思いました。
天体写真は会員の方達の個性がとても出ていて、撮影者の名前を見ていると、この人はこんな傾向だとか、この人はこんな色使いが好きなんだなとか、いろいろ楽しむことができました。今回の記事と同じアンドロメダ銀河も大きなパネルに引き伸ばして飾ってあり、とても綺麗でした。ちょうど会場にアンドロメダ銀河を撮影した方が来ていたので、話をすることができましたが、ε160と6Dで撮影したとのことで、自分の環境と比較できるので面白かったです。
自分が所属する富山県天文学会も長い歴史があるので、今後何十周年とかなる時には、今回の展示会を参考にできればと思いました。