ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:ASI224MCPro

お蔵入り?になりかけ

実を言うと、この記事書くのをあきらめてました。今回の彗星の核の撮影画像を見てみると、星像がかなり甘いのです。しかも星の数がかなり少なく、うまく画像処理できるか?と初めから疑問でした。実際途中まで全然うまく行かなくて、半ばお蔵入りするところでした。

というのも、ちょっと前に今回使ったSCA260のバッフル交換のアップグレードがあって、ちょうど販売店から返ってきたばかりでした。光軸調整はしてくれたとのことなのですが、その後、強度を保っているはずのアルミの長さ40cmトッププレーを自分で付け替えたため、鏡筒に歪みが残ったままになっている可能性が高いです。改めて光軸調整せずにそのまま持ち出してしまったためでしょうか、とにかく今回の撮影時にピントを合わせても星像が小さくならないのです。もしかしたら単に低空だったからかもしれません。いずれにせよ、普通だったら画像処理をする気にもならないくらいの画質でしか撮影できなかったのです。

とまあ、前置きはこれくらいにして、紫金山アトラス彗星の記事も今回で最後になるかと思います。10月20日に撮った、3セットの機材のうちの3つ目、焦点距離1300mmのSCA260にASI294MC Proを取り付けています。カメラは冷却可能ですが、今回は冷却せずに常温で稼働させています。

前回の記事で、焦点距離250mmのRedCat51とフルサイズの一眼レフカメラ6Dで撮影した画像の核の部分を拡大し、練習がてらLarson-Sekaninaフィルターで角度方向の輝度変化を強調して見てみましたが、広角画像の核の部分をかなり拡大しているため、粗いながらも回転している様子がわかりました。



今回は焦点距離が長く、それよりも遥かに解像度が良いはずなので、どこまで見えるかが楽しみです。


画像処理

とにかく、撮影した画像の処理をPIのWBPPで始めましたが、まずスタックが全然うまくいきません。各画像の位置特定でおそらく星の認識数が全然足りてないのでしょう、RANSACエラーが出まくりで、registeredにたどり着いたのが64枚のうちわずか20枚でした。Debayerまで普通に全部処理されているようなので、その後は自動のWBPPでなく、マニュアルで一ステップづつ処理することにします。

まずはStarAlignmentです。Star Detectionの基準をデフォルトの0.5から0.75にしたら、WBPPでは20枚しか認識されていなかったものが、30枚ほど位置合わせされていました。この方向で良さそうなので、さらに基準を相当甘くします。いろいろ試して、まず元々位置が大幅にズレていた15枚を省き、残り49枚で剃りを進めることにしました。さらにSensitivityとPeak responseを共に0.9程度にしたら、49枚全部を認識し、49枚分のImageIntegrationまでできました。その後、StarAlignmentした画像を、さらにCometAlignmentし、ImageIntegrationすることで無事に彗星核基準のスタック画像になりました。

今回は核の周りの構造を見たいために、基本的にスタックのみで他の処理はほぼ何もしません。ABEなどのソフト的なフラット化さえもしません。当然、恒星の分離もしませんが、核の周りだけ見るには恒星が流れていても基本的にはお構い無しのはずです。ただし、SPCCやPCCなどの恒星を使った色合わせができないことは認識しておくべきでしょう。なので最終画像はグレースケールに落として、モノクロとしました。


Larson-Sekanina フィルター

さて、核基準でスタックだけした画像に、早速Larson-Sekanina フィルターを適用してみます。パラメータを注意深く探りながら色々試して、最終的に距離2ピクセル、回転2度、量0.2であとはデフォルトと決まりました。

角度はあまり敏感ではなく、今回は2度から5度くらいまであまり変化はありませんでした。今回の画像では5度以上ずらすと根本的に違った構造が出てくるようです。そもそもズレを使って淡い輝度の違いを見やすくするものなので、ズレた時にある程度相関を持って重なる必要があるはずです。なので、今回の場合5度以上のズレになってくるとおそらくズレすぎで、全然相関がないところとのフェイク構造が出てしまうのかと思われます。前回、例え話で出した古文書などのズラしを考えてみても、一文字の中の狭い範囲内でズラすことに意味があるのであって、文字を超えて例えば上とか横の別の文字とのズレを見出い出してしまうのは、Larson-Sekanina フィルターでは距離や角度を大きくズラしすぎることに相当するでしょう。全く違う文字と重ね合わせてそのズレを見るのだと、たまたまそれぞれの文字の一部が重なるなどの偶然の相関が検出されるだけで、出てきた構造はフェイクで、結果に意味がないことは容易に想像ができるかと思います。

一方、今回入れた距離ズレの2はそこそこ敏感で、1とか3だと全然違う結果になります。前回の粗い画像でも2.5にしているのですが、これだけ分解能が違うのに、なぜ同じような値なるのかまだ謎です。彗星の核周りの構造の大きさ自身によるのでしょうか?焦点距離が前回250mmと今回1300mm、ピクセルサイズが前回6.3umと今回4.3umなので、焦点距離もピクセルサイズもより細かく見ていることになります。比を計算してみると、1300/250 x 6.3/4.3 =7.62となり、前回と今回の距離のズラしはピクセル単位で8倍くらいあっても良さそうです。前回2.5なら今回は20くらい、今回2なら、前回0.25くらいになっていいはずです。前回の画像でも、今回の画像でも、この比くらい大きくズラしてもみましたが、少なくとも有意な画像に見えることはありませんでした。もしかしたら、まだ私自身が大きな勘違いをしている可能性もあるので、今後の課題とします。

今回のLarson-Sekanina フィルターの適用結果ですが、回転のように見える構造がかなりはっきりと出ました。以下の画像は核まわりを見やすくするために、すでに縦横半分ほどにクロップしています。また、比較しやすいように良画像ともモノクロにしてあります。

フィルター適用前の画像と、
integration2_49files_normal_cut_mono

フィルター適用後の結果です。
integration2_49files_LS_cut_mono

核回りに明らかに時計回りの回転構造と、テイルに縞がはっきりと出ているのがわかります。ただ、Larson-Sekanina フィルターで出てきたテイルの縞は、フェイクの可能性もあるという情報をどこかで見たので、判断は慎重になるべきかと思います。


仕上がり画像

上記画像を、北向きを上にして、クロップして、核の周りをより詳しく見てみます。大きさを示す矢印も入れたので、スケール感もわかるかと思います。
integration2_49files_LS_cut_mono_middle_rot_cut_arrow

拡大してみると、更にはっきりと時計回りに回っていることがわかります。核の大きさがわからないのですが、調べたところによると直径20-40kmとのことです。ほとんどの彗星は直径10マイル(16km)を超えることはないとのことなので、この大きさが本当なら、やはりかなり大きな彗星ということになります。

撮影をした日の地球から核までの距離は、この日は0.595 [au] = 8.9e7 [km]とのことなので、核の直径30kmとすると、核の視野角は0.069秒角程度になります。クロップ前の画像の横幅が50分角程度でそれをCMOSセンサーの横幅の4144ピクセルで見ているので、1ピクセル辺り0.72秒程度です。すなわち、1ピクセルで核の10倍程度の幅があるということです。核は相当小さいことがわかりますし、核がガスを出すことでここまで大きく見えることも実感できます。

パッと見える回転の構造は10ピクセル程度あるので、核が回転しながら、核のすぐ周辺に核の100倍程度のくらいの太さでガスを出していると推測されます。

まだ全然大したことは引き出せていないですが、このはっきりとした回転が見えただけで、もう興奮モノの面白さです。Larson-Sekanina フィルター偉大です。数学的には単純と言いましたが、相当強力で、相当の汎用性を持っていると思います。逆に言うと、汎用性を持っているからこそ単純な数式で表すことができるといってもいいのかもしれません。

汎用的なLarson-Sekanina フィルターをもっと応用できないのかと思いましたが、もしかしたらステライメージに搭載されている「回転アンシャープマスク」は応用例にあたるのかもしれません。ステライメージの回転アンシャープマスクの解説ページを見ると、Larson-Sekanina フィルターにあたるローテーショナル・グラディエントより、微細構造の抽出と滑らかさを両立し、結果を確認しながら仕上げられると言うようなことが書いてあります。惜しむらくは、この回転アンシャープマスクの使用例がほとんど皆既日食で、彗星に使った例は極々わずかなことです。もしこれを彗星核にうまく使えたら、面白い結果が出るのかもしれないと思いました。


まとめ

回転らしきものが見えるのはわかってきたので、次回の大彗星では日を変えて連続で撮影して回転がどう変化していくのかなどに興味があります。日々の変化で、核の回転速度などもう少し何か意味が引き出せるかもしれません。次回の大彗星でどこまでできるかかなり楽しみです。

今回の大彗星の一大騒動、自分的にはやっと終局を迎えました。1ヶ月以上楽しめたので、かなり満足です。特に最後に辿り着いたLarson-Sekanina フィルターでの核の回転画像は、普段の画像処理とはまた違った方向性だったからでしょうか、自分の中でかなりインパクトがありました。その一方、今回の紫金山アトラス彗星では弧を描くようなテイルは見えなかったので、私の中ではそれでもネオワイズ彗星の方が印象が大きいです。これは最初に見た大彗星だったと言うこともあるのかもしれません。

次に大彗星が来るのはいつのことか?8年で2回見たペースの通り、4年後なのか?もっと先なのか?意外にすぐ来るのか?今から楽しみに待ちたいと思います。


2024年10月20日、おそらくこの日が紫金山アトラス彗星の、最後の最大のチャンスです。


好条件で天気も良さそう!

薄明終了が18時34分、月が昇ってくるのが18時52分なので、わずか17分ですがやっと暗い時間が訪れます。高度も月が出るくらいまで20度以上を保ち、かなりの好条件です。しかも富山の天気予報は快晴ということです。

その一方、彗星自身はだいぶ暗くなってしまっているようで、最新の光度データによると、この日は5等級以下くらいになっているようです。テイルも短くなっていると思われるので、今回はとりあえず核を狙うことにしました。核が回転している様子が撮影されているようで、上手く見えたらこれは面白そうです。他は、前回取れなかったタイムラプスでしょうか。あとは暗い空なので、イオンテイル狙いでしょうか?


結局同じ場所に

午前は天リフのピックアップの様子を聞ききながら、画像処理やブログ書きです。午後一で大型赤道儀を含む大量の機材を車に積み込んで、準備万端にしておきます。

ところが、天気予報では一日中快晴クラスのはずなのに、昼くらいからどんどん曇り始めて、15時を回ってもまだ全面かなり厚い雲で、その時はもう半分諦めモードだったのでした。16時になって再び外を見ると、一応日が差していて西の方も青空が出始めているので、とりあえず車を出すことにします。

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まだどこに行くか迷っていたのですが、出発が遅くなったのであまり時間がないこと、どうも南の空の雲が多いように見えたので、結局前回撮影した同じ場所で、近くの川沿いに陣取ることにしました。

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というのも、富山は北の海側に街があるので、北側が明るく南側が暗いのです。早くから晴れていたらもっと南の暗い空を狙う予定でした。結局は雲を見て、いつものそこそこ明るい場所で妥協したのですが、この判断は正しかったようです。

撮影している途中に以前会ったことがある人が来て、「南がダメだったのでここまで来た」と言っていました。「結局時間がなくて簡単なセットアップにした」とのことなので、欲張らずに時間に余裕をもつことが大事なのかと思いました。というのも、今回撮影機材を3セットも出したのですが、トラブル続きでかなり焦ってしまって、全然時間が足りなかったのです。


3つの機材

現場に着いたらすぐに機材を出しますが、今回は3セットと多いことと、一つはSCA260とCGX-Lという大型機材の部類なので、そこそこ時間がかかります。大雑把に機材を設置して、少し余裕が出た時に撮った写真がこちらです。

IMG_0291

ここから実際の撮影に入っていきます。


1セット目はタイムラプス

1セット目はタイムラプス目的で、シグマの50mmのレンズにEOS 6Dで17時くらいから20秒に1枚のペースで撮影を開始します。

できるだけ手間をかけたくなかったので、最初からISO1600で固定します。露光時間は1/4000秒、F11から始めて、暗くなるごとにまずはF値を小さくしてF2.8まで行きます。あとは露光時間を暗くなるごとに伸ばして、最後は2秒まで行きます。2秒で止めたのは、前回の撮影から105mmで3秒で流れ始めたからです。今回は50mmだったので、4秒くらいまでは大丈夫だったかもしれませんが、もうその頃には余裕がなくなってきていたので、2秒までいってあとは完全放置です。

あ、連続撮影はMagic Lanternを適用した6Dを使っています。レリーズいらずで、連続撮影の際の細かい設定もできます。例えば今回は、20秒ごとに1枚シャッターを切って、500枚でストップするなどです。20秒間隔なので、撮影の途中は少し余裕があり、露光時間とかを任意に変えるなどができます。とても重宝しているのですが、ファーム書き換え作業とかがあり、失敗するとダメージが大きく、万人向けではないのであまりお勧めではありません。

実際の露光時間の変更はかなり頻繁で、明るさを見ながらマニュアルでダイヤルを回していきます。他の準備に夢中で暗くなりすぎしまったりとかで、結構大変でした。


2セット目は彗星全景

とにかく、1セット目のタイムラプスをセットしてから、やっと次に取り掛かれます。もうそこそこ暗くなってきているので星が見え始め、極軸調整ができるはずです。2セット目はSWAgTiにRedCat51を載せて2台目のEOS 6Dで、彗星全景とイオンテイル狙いです。ところが、よく考えたら一眼レフカメラなのでCMOSカメラと違い、SharpCapに繋いでの極軸調整がちょっと面倒です。しかもこの6Dは最近手に入れたものなので、まだSharpCapに繋いでテストしていません。結局、電視観望用のFMA135+Uranus-Cがあったので、RedCatを一旦取り外して、こちらで極軸調整をしました。

SWAgTiの極軸微動の記事でも書いたように、極軸調整は必ず往復で2度試すのですが、どうも2度目の誤差が3−5分角くらい出てしまいます。どこか緩んでいると思われるのですが、パッと見つからないので、このままRedCatに戻して、初期アラインメントに進みました。西の低い空の星があまり明るいのがなかったので、少し天頂に近いですがベガにしました。ところが、これまた一眼レフカメラなのSynScan Proのプレートソルブが使えないのにここで気づきました。

ここら辺からかなり焦ってきます。

次にピント合わせをしていると、なんと鏡筒が動くことに気づきました。どうやら三脚と極軸微動アダプターの間のネジが緩んでいたようです。往復の極軸調整で大きくズレたはずです。

ネジは締め直しましたが、ここら辺からヤケになりました。

RedCatから6Dを外して、SCA260につけてあったASI294MC Proを外してRedCatの方に付け替えます。よく考えたら、Celestron赤道儀で彗星を自動導入する方法を考えてなかったので、1300mmの焦点距離ということもあり、うまく入れられる自信が全く無くて、もう核は諦めようと判断したのです。

でもこの判断は良かったようです。RedCatとASI294MCの極軸調整は一瞬でおわりました。緩んでいたネジはしっかり締め込んだので、今度は誤差も1分角程度で許容範囲です。初期アラインメント(ベガ)もSharpCapのプレートソルブが使えるので、すぐに導入できます。

次が痛かったのですが、なぜかPCで繋いでいるSynScan Proのアランメントで彗星を選んでも何も出てこないのです。かわりにiPhoneの SynSan Proに接続しようとするとなぜか接続エラー。もうここら辺で暗い時間帯に入ってきているので、泣く泣くマニュアル導入にしました。

まず金星をプレートソルブで視野に入れ、そこから矢印ボタンで右上に行き、とりあえずM5と思われるものが入り、さらに右上に行きます。なんとか入ってくれないかと思っていたら、明らかに明るい太い線が見えました。こんな明るく写るのはテイルしかないはずです。これを根元まで辿ることで核まで辿り着くことができました。でもASI294MCの範囲ではテイルの全景まで入りきらないようです。

ここでまた判断です。このアラインメント状態で、再び6Dに変更することにしました。鏡筒をずらさないようにカメラを入れ替え、今度はBackYardEOSで画面を確認し、ピントを合わせます。そこそこピントもあったので、とりあえず30秒で10枚撮影します。ここでやっと余裕が少し出ました。

まだ暗い時間帯は続いているので、もう10枚の撮影に入ります。でもその前に、今度は余裕を持ってきちんとピントを合わせて、核の位置ももう少しいいところに持ってきます。これ以降は10枚セットの撮影を時間の許すまで続けることで、こちらも放置できるようになりました。

とりあえず1枚撮りの全景画像の画像を載せておきます。これと同じような画像を50枚くらい撮影したので、スタックしてどこまで淡いところが出るのか楽しみです。

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3セット目のセットアップは核

やっと最後のSCA260のセットアップです。先ほどRedCatから外したASI294MC Proを、再びSCA260に取り付けます。

実はちょっと前にSCA260のアップグレードがあったのですが、つい最近帰ってきたばかりで、この日段ボール箱から出してそのまま持ってきました。まだいろんな準備がいろいろできていなくて、特にいつもつけてあるガイド鏡を取り付けるプレートをまだ付いていなかったのです。手持ちの適当なプレートを使って工夫してガイド鏡をつけるような時間的な余裕がなく、結局極軸を取るのをあきらめました。

CGX-Lの電源を入れ、極軸適当のままベガを導入します。ベガはSharpCapでプレートソルブして、なんとか画面内に導入できました。でもその後は、例えば彗星の近くのM5を自動導入しても全然入ってきません。

もうここからはSharpCapの画面を見ながら、マニュアルで矢印ボタンを押していくことにしました。RedCatでも入ったので、なんとかなるかもしれないと思ったのですが、焦点距離が250mmと1300mmでは全然違い、そう簡単に導入はできません。

ここでのヘルプは、隣のRedCatでした。少なくともRedCatは撮影中の彗星の方向を見ています。なので、その方向に近くなるようにSCA260も向きを合わせて、画面に入ってこないか見るのです。5分くらい探していたでしょうか、先ほどと同じように明るい領域が見えました。間違いなくテイルです。これでやっと核まで入れることができました。この時点で暗い時間帯は過ぎていましたが、核は明るいので多少の月明かりは大丈夫でしょう。

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1枚撮りです。こちらも50枚くらい撮影できていました。


忙しくて、大変で、焦ってた

核を何枚も撮影して、RedCatの画像を見ると、少し雲がかかっています。これ以上はRedCatは意味がないと考え、片付けを始めました。ちょうどRedCatセットが片付け終わる頃、核の方もかなり低空になってきているので、ここで片付け開始です。大型機材なので少し時間がかかりますが、片付け終わることにはタイムラプスも最初にセットした500枚に近付いていたので、500枚になるまで少しだけ待って、こちらも片付けです。

とにかく3セットは私にとって多過ぎで、ずっと焦っていた気がします。下手をしたらRedCatもSCA260も導入さえできなくて、メインの成果が全くなくなっていたかもしれません。かなり綱渡り的状態で、偶然に近かったかもしれませんが、画面で見たテイルの明るさには助けられました。全て終わってから、全景も核もタイムラプスも撮れたということで、やっとホッとしましたが、疲れ果てていました。

自宅に着いたら20時過ぎで、温かいシャワーを浴びて夕食を食べて、やっと落ち着くことができました。これから画像処理ですが、明日からまた平日で仕事なので、あまり無理をせずに一つづつじっくりと取り組もうと思っています。


夕方に見えるようになり、大化けしつつある話題の紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)。連休ということもあり、時間も少し取れそうなので私も挑戦してみることにしました。


場所をどうするか?

前回見た大型のネオワイズ彗星は、天気と暗い場所を求めて、能登半島を挟んだ富山の反対側の羽咋市の海岸にまで遠征しました。今回は月が出ているので、あまり暗いところに行くのは意味がありません。ただし、まだ高度がかなり低いので、西側が地平線近くまで開けている場所が必要です。というわけで、昼間のうちに一度偵察に行って、自宅から車で5分くらいの川の堤防を陣取ることに決めました。


セットアップ

18時くらいに日没なので、17時には準備を終えたいと思い、16時に自宅を出発。堤防に着くとまだそこそこ日が高く、日があたると暑いので車の影に隠れながら機材をセットします。

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撮影機材はRedCat51+ASI294MC Proと、シグマの105mm F1.4レンズ+ EOS 6Dの2セット。架台はCGEM IIとSWAgTiの2セットです。一応普通のカメラ三脚と自由雲台も用意しました。

結論としてはCGEM IIは全く使わなかったです。便利だったのはSWAgTiのAZ-GTiで、操作のためのSynScan Proをネットに繋いで起動すると、あらかじめ彗星の最新のデータをダウンロードでき、導入が楽に行えます。結局RedCat51をSWAgTiに載せ、105mmレンズと6Dは自由雲台で使うことにしました。

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PC側のアプリは、RedCat51がSharpCapで、6DがBackYardEOSです。両方ともPC上で画面が見えるので、特に6Dのモニターを覗かなくてよくて、確認がかなり楽でした。


なかなかうまくいかない

AZ-GTiの自動導入といっても、昼間なのでそもそも初期アラインメントがうまくできず、全く精度が出ません。水平を出して、iPhoneのコンパスアプリで方向を確かめて設置しましたが、結局かなりあさっての方向を向いていました。月が出ていればそれでワンスターアラインメントができるのですが、残念なことにその時間月は雲の中でした。しかたないので、鏡筒先端に蓋をして、(SynScan Proの太陽導入の制限を外してから)太陽を初期アラインメントで導入し、鏡筒の方向があっているかを目視で確かめたくらいでした。他にも、遠くの山でピントを合わせておくなどしたのですが、これらも結局最後星で合わせ直したので、昼間の精度はかなり出にくいということを実感しました。

そもそもの原因が、とにかく雲。準備の最中くらいはまだ西方向に晴れ間が広がっていたのですが、日没が近づくにつれ雲が広く厚くなっていきます。日没くらいには西から南がほぼ全面雲に覆われていました。その一方、北と東には青空が広がっています。

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iPhoneで適当に撮った画像です。17時ちょうど。

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同じくiPhoneで17時30分。日没直後は西側はほぼ全面雲でした。

今更場所を変えるわけにもいかず、もうここら辺で諦めモードで、とりあえず使わないCGEM IIを片付け始めます。一応RedCatは彗星と思われる方向に向け、6Dでは広角で多少位置が間違っても大丈夫なように見ていましたが、見えているのは雲ばかりです。遥か遠方に、山の上と雲の下に隙間があり、あわよくばそこから見えればと思って、最後に足掻いていました。

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17時50分。RedCatの画像。下の方にわずかですが、雲の隙間がずっとありました。

途中、彗星の位置思っていた方向と少しズレていることに気づきました。気づけたのは、太陽が沈む位置を写真で残しておいたことと、Vixenの彗星アプリで太陽が沈む位置と彗星が沈む位置が10度くらいズレているのを確認したからです。


なんか見える!

18時20分頃からでしょうか、雲の上の方が少し薄くなってきて、雲ごしに星が見えるようになってきました。改めて星を使ってピントなどを合わせ直し、彗星が出てそうな雲の薄いところを見ると、なんと真っ直ぐ上に伸びる尾っぽが見えているではありませんか!!!

ちょうどその時に妻から電話が!「今どこなの?ご飯食べるの?」とのことです。なんでやっと見えかけた時に限って!?と思いましたが。「今彗星。近くの川。帰ったら食べる。」とだけ答えて、すぐに撮影に入ります。その時に何枚か写したのがこれです。

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105mmレンズの画像です。縦に尻尾だけ見えます。時刻は18時32分。
核は多分山のちょうど天辺に隠れるか隠れないかくらいだと思います。

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RedCatの画像です。赤道儀に載っていて、上が天の北なので、尻尾が傾いて見えます。
時刻は18時37分で核が地平線に沈む直前です。 

あわよくば核も見えないかと思いましたが、結局下の方の暑い雲が退くことはなく、核も沈んでしまう時間になってしまいました。その頃には尻尾も再び見えなくなってしまい、上の写真が精一杯の結果でした。

CGEM IIは早くに片付けていたので、残りの後片付けも大したことはなく、そのまま自宅に帰り夕食にありつきました。


帰ってから

それでもなんとか尻尾だけは見えたので、彗星が全く見えなかったわけではありません。ほんの少しの満足感と、惜しかったというのと複雑な気持ちです。さらに、自宅に着いてから見たXの投稿で続々と綺麗な写真が投稿されているのを見て、全国的に見えたのに何故ここだけ?と、悔しくなってきてふてくされていました。

さらに時間が経ってくると、天リフのブログコーナーに「見えた!」という記事が次々とアップされています。みなさん素晴らしい結果です。はい、羨ましいです。それらを見て、一つくらいは見えなかった記事があってもいいのではと思い、今回のこの記事となりました。悔しさのあまり書いたので、わずか30分くらいで書き上げました。わかってます、本来ボツにするような記事です。

この記事を書き終えて、ふと思いついて尾っぽの写真をPixInsightで炙り出してみました。すると、ちょうどそれらしい位置に核のような白い点が見えます!

LIGHT_Tv2s_1600iso_f2_+23c_20241013-18h32m27s118ms_nueclear_cut

一応核も見えたということにしましょう。そう思うと少しだけ満足度が上がりました。

明日晴れないかな?天気予報だと夕方曇りですが、SCWだと場所を選べば晴れているところはありそうです。あまりぜいたくは言わないので、とにかく西が開けていて雲が少ない場所を探せればと思います。


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