ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:黒点振動

ここ数週間で撮影した画像を、いくつか鑑賞用に画像処理しておきます。


これまでの撮影

TSA-120 + Phoenixが稼働し始めてから何本かテストがてら撮影していますが、ここまでの記事はあくまでテスト比較で、画像処理もできるだけシンプルに、という方針で進めてきています。でもせっかく撮影したものなので、鑑賞目的で少しまとめておきます。

これまで、
  • 5月10日: 1. 黒点AR4432 (シーイング良)、2. 黒点AR4436 (シーイング良)
  • 5月16日: 3. 黒点AR4436 (シーイング最良)
  • 5月17日: 4. 黒点AR4436 (シーイング普通)、5. プロミネンス (シーイング駄目)
の5つ、それぞれ30秒に1ショット、各ショット200フレームで合計120ショット前後、合計約1時間ほど撮影しました。最後のプロミネンスはもうシーイングがボロボロだったのですが、それ以外の4つをタイムラプスにまとめてみました。大きなイベントとかではないのであまり見栄えはしませんが、TSA-120 + Phoenixでこれくらいの動画にはできるというところを示す意味合いが強いです。最後のプロミネンスは、ひどいシーイングの中で一番まともだったものを1枚ピックアップして、それを仕上げてみます。


タイムラプス映像

以下の動画ですが、とりあえずYouTubeに上げたものを貼っていますが、なかなか厳しいです。とりあえずYouTubeに飛んでもらって、解像度を上げてみてもらうのがまだマシかもしれません。

5月10日: AR4432
まずは、今回の連番記事 (その4) で見せた黒点画像のタイムラプスです。あまり動きはないですが、右の黒点あたりを見ていると激しく噴き上げているのがわかります。


5月10日: AR4436
同じ日の2ショット目で、東端に出始めた少し小さい黒点です。

プロミネンスが激しく動いています。黒点の上部にも小さなフレアのような吹き上げがあるのがわかります。

5月16日: AR4436
次は、(その5)で見せた5月16日のもので、上の動画のものが太陽の自転で真ん中過ぎまで進んできたものです。シーイングがかなり良かったので、多分これが一番見応えがあるのかと思います。

これはAstroBinにもアップロードしたので、そちらで見た方がいいかもしれません。


下のダークフィラメントが激しく動いています。他にもよく見るとたくさん動きがあって、この動画は1時間見ていても飽きませんでした。激しく動くところと、ピタッと止まっているところがあるのも面白いです。

この動画だと、以前ヘリオスター100Hαで撮ったような黒点周りの3分周期振動も見えていますね。黒点振動は、どうもシーイングがいい時が長く続かないとあまりはっきり見えないようです。ヘリオスターで撮影したときはたまたま晴れた日だったのですが、かなりラッキーだったのかもしれません。

面白いのは、この3分周期が他の場所も何か相関がありそうなことです。細かい模様もかなりの場所はあまり動かずピタッと止まっているのですが、一部モジャモジャ動いている場所があります。これが、シーイングなどのブレで動いて見えるのか、本当に太陽表面が動いているのか、もう少し精度が欲しいところですが、シーイングで一部だけずっと動き続けるというのはちょっと考えにくいので、やはり何か動いている可能性が高そうです。もしかしたら、今後面白い展開になるのかもしれません。

もう一つ面白いのが、ダークフィラメントを通して見る表面で、特に上の真ん中が顕著ですが、周りがボケボケになっているところです。最初エタロンの精度が一部出ていないのかとも思ったのですが、それにしては局所的すぎます。おそらくですが、ダークフィラメントは表面に吹き出しているので、太陽表面の大気相当のものに密度揺らぎみたいなのが起きていて、ユラユラして見えているのかと思います。

5月17日: AR4436 
タイムラプスの最後は、上の画像の次の日、5月17日(日)に撮影したもので、同じ黒点AR4436です。あまりシーイングが良くないので、途中結構ぼけてしまっています。

4つを見比べても、やはりシーイングがいい時間が長く続かないと、ハッキリしたタイムラプス動画にならないのがわかります。これは相当朝早くに撮るのが重要になりそうです。せっかくの休日で多少寝坊したいのもありますが、頑張って朝活しますか。もしかしたら、夏場は早くから日が昇るので、平日の仕事前の撮影でもいいのかもしれません。もし平日の朝の撮影も考えるとすると、方角が東と決まっているので、もうベランダに置きっぱなしで、撮影後はカバーをかけるだけでもいいかもしれません。


プロミネンス

次にプロミネンスも撮影したのですが、こちらは動画にすることは出来ないシーイングレベルだったので、120ショットのうち一枚だけたまたまよく撮れたものを静止画で画像処理しました。カラーにもしてみました。ちなみに、反転画像はダークフィラメントがプロミネンスに繋がっていく境界のところでうまくつながらなくて諦めました。もうちょっと処理方法を探る必要があるかもしれません。

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まとめ

テスト撮影続きでしたが、せっかく長時間撮影したものなのでタイムラプス映像にしてみました。でも難しいですね。シーイングが持続する時間を探す必要がありそうです。

TSA-120 + Phoenixの合成焦点距離は2000mmになっていて、これはすでにC8+PSTで撮影した時と同じです。TSA-120は口径ではC8に劣りますが、中央遮蔽のない屈折らしいクッキリとした見え味があり、実写上の分解能にはほとんど差がないように思えます。しかも、まだ視野の端にボケているところは存在しますが、すでにC8で見ていた視野内で比べると、以前はあった視野内での見え方の違いなどもなく、安定して全体が一様に見えるので、ある意味これまでの結果を超えたと言ってしまってもいいでしょう。PSTからフェニックスエタロンへ変更した甲斐があったというものです。

その一方、ヘリオスター100Hαで撮った画像を改めて見直すと、はるかに広視野で均一な画像を叩き出しています。焦点距離と視野と分解能をかなりバランスよく設定していることがわかります。

確かにフェニックスよりも値段ははるかに上ですが、これだけの苦労をしていてもまだ追いつけないところが多分にあることを考えると、もし懐に余裕があるのなら素直にヘリオスターに走った方がいいのかと思います。フェニックスに分があるとすれば、さらに大口径に行ける可能性を持っているということでしょうか。でもここからは更に茨の道になりそうです。集光力が高まり危険性も増えますし、フェニックスの400mm対物レンズだと合成焦点距離が長くなりすぎるでしょう。もう少し根本的にやり方を考える必要があるかもしれません。




いよいよCP+で話したネタ
の記事化も、これで最後になります。

これらのネタを、今回の記事も合わせて4つの記事にしました。どれも、少なくとも日本のアマチュア天文ではあまり話題になったことがないものです。

海外を見るとヘリオスター100Hαのエタロンの測定結果はいくつかアップロードされていて、その中の最新の#5は私が測った結果とほぼ同じFWHMの値が出ています。#3はFSRが全然違うので、何か波長のキャリブレーションを失敗している気がします。

こうやってみると、CP+のセミナーのために色々試したとはいえ、新しいことも多く、今後も参照できるような結果になったのではないかと思います。

というわけで、今回はCP+でも目玉になった、5番目の太陽黒点の3分周期振動についてです。


撮影

撮影データは前回記事のシーイングの時間変化を検証した際の30秒に一回で200フレーム撮影し、60分で120枚撮影したものと同じになります。

120枚の画像を見比べている最中にまず思ったことは、「黒点の形が結構変わる」ということです。これは最初シーイングが時間変化しているからかと思っていました。でもある時、PixInsightのBlinkで短時間で連続的に表示していった時に、どうも何か意味のある動きのように見えました。

改めてよく見てみると、どうも黒点の動きが周期的に変化していることに気づきました。その黒点の動きが周りにシュワシュワと広がっていっているように見えたのです。どうやら黒点自身が振動していて、その動きが周りに伝搬しているようです。ここで「黒点、振動」で検索をかけると、3分周期の振動が存在すると言うことがわかりました。画面上で実際に周期を測定してみると、約6枚ごとに振動しているように見えました。1枚あたり30秒ですので、ほぼ3分周期で間違いないようです。

その後さらに、3分周期の動画がないかいろいろ検索してみました。探した限り、わずかに黒点周りが揺れてるような動画は見つかりましたが、あまりはっきりせず、むしろその動画からFFTでスペクトル計算し、そのピークを見積り周期が1÷3分=0.00556秒程度と求めていて、それで3分周期の振動があると結論づけているものがほとんどで、動画などでクリアに見るというよりは解析の結果の振動と結論づけているような印象でした。ましてや、振動が周りに広がっていくような動画を見つける事は、少なくとも探した範囲ではできませんでした。

ちなみに、撮影をしたのが2月14日で、画像処理を進めながら黒点が動いていることに気づいたのが2月23日くらい、振動していると気づいて「黒点 振動」で検索してみたのが2月26日で、CP+に出発するわずか前々日のことです。

この段階で、CP +での発表は結構インパクトがあるものになるのでは?と予測できましたが、相変わらず宣伝は下手くそなので、Xでそれとなく呟いただけで、事前にうまく知らせる事はできませんでした。結局、せいぜい発表前日の会場で会った知り合いの方たちに「すごいのが撮れた」と話すのが関の山でした。

実際にセミナー本番で見せたときにはかなりのインパクトで、会場でも「おぉー!」というような雰囲気でした。その後のSNSでの反応もかなりすごいものがありました。もっとうまく事前に宣伝しておけばよかったと、後になって思いました...。


タイムラプス映像

下はCP+で見せたものと同じ、2倍のバローを入れて撮影したもので、その日見えていた一番大きな黒点になります。


黒点が揺れている様子、その揺れが周りに伝わっている様子がかなりはっきりとわかるかと思います。もし振動らしい映像が見えない場合はおそらく解像度がSDになっているので、Youtubeの設定でHDモードを選んでみてください。かなりマシになると思います。

ちなみに、アップロードする際に、なぜこれまで黒点振動の映像があまりなかったかがわかった気がします。モノクロだとYoutubeの画像圧縮が働いてしまい、うまく振動に見えないのです。フォーマットを264にして解像度を1440pにしてやっと振動がはっきり見えてきました。それでも手元のオリジナルファイルでローカルで見るものよりもどうしても劣ってしまっています。このような、モノクロで、画面の一部の淡い揺れに近に注目して欲しいような動画は、かなりうまくアップロードしないとノイズなどと勘違いされてしまうようです。

さらに次の日の別のタイムラプス動画で、こちらはバローなしの1倍で、30秒おきではなく、1分おきに撮影した、太陽の全景の下半分程度の画角のものです。

ただしこれだと、動いている様子などはほとんどわからないので、黒点部分を一部を拡大してみます。

同様に、もう一つの黒点も拡大してみます。

今回は1分ごとの撮影なので、コマ数が少なく振動がわかりにくいですが、それでも振動が広がっていく様子はわかると思います。

プロミネンスも激しく動いているのがわかります。

ダークフィラメントはプロミネンスと同じものですが、上から覗いている形になり、動きがわかりにくいです。それでも下の動画を見る限り、1時間で大きく動いていることがわかります。



静止画像

全体の高解像度画像で最も分解能よく撮れたものも載せておきます。モノクロと、よくある反転、カラー、カラー反転になります。このように加工してもまた印象が違って見えて面白いと思います。

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10_36_27_lapl2_ap6587_mono_inv

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さらに、そこから切り出した画像です。そこそこ高解像度なので、切り出し画像でも十分見応えがあるかと思います。

10_36_27_lapl2_ap6587_mono_sharpen_cut1

10_36_27_lapl2_ap6587_mono_inv_inv_cut1-topaz-upscale-2x

10_36_27_lapl2_ap6587_color_sharpen_cut2

10_36_27_lapl2_ap6587_color_inv_cut1

こんなふうに広角から切り出して楽しめるのは、全景に近い画角が撮影範囲内に入り、なおかつ分解能がそこそこあるからで、ヘリオスター100Hαはとても使いがいのある太陽望遠鏡なのかと思います。かなりバランスがとれていて、フラッグシップと呼ぶに相応しい性能と言えるのかと思います。モウスコシヤスケレバ...。


太陽の振動

CP+の時にはまだ黒点振動が見えただけくらいで、そもそもなぜこんなことが起こるのか理由はあまり把握できていませんでした。今回ブログ化するにあたり、時間もあったので少し調べてみました。

そもそも、太陽には5分周期の振動があるそうです。これは検索するとすぐに出てきて、1960年代に発見され、「対流」が起源で励起される「音波」のpモードと呼ばれる「固有振動」で説明できるということが1970年代くらいにわかってきたそうです。

起源である対流は表面では粒状斑となって現れることが有名で、私もちょっと前にやっとうまく撮影することができました。粒状斑の典型サイズは観測から L=1000km のオーダーで、典型速度 v = 1-2 km/s とわかっています。大きさと速度から、ざっくりとした寿命 τ が L/v で計算でき、τ ~ 500s となり、5-10分ほどのオーダーになります。

このように粒状斑のスケールからわかるように、対流が5分オーダーの音波を供給して、太陽内部の「pモード」と呼ばれる固有振動 (共鳴) を励起します。pモードのpはpressure (圧力) の意味だそうです。 pモードは3つの固有モードn, l, mで表され、
  • n: 半径方向の節数
  • l: 球面調和次数
  • m: 方位角次数
という関係があるそうで、pモードの周期は主にnのみで決まるとのことです。この中で周期5分オーダーのモードはn=20の場合で、このモードが先の対流が原因で最も大きく励起されます。

ではなぜ5分の周期が3分の周期になるのでしょうか?これはどうやら、黒点にこのモードが現れる際に、重力加速度と音速で決まるようなローパルフィルターの効果があり、それが5分程度のカットオフ周波数をもち、そこより多少低い周波数成分のみが通り抜け、結果として3分周期が最も大きく観測されるというのが今の解釈のようです。

カットオフ周波数 f は重力加速度 g と音速 Vs を用いて f = g/(2 Vs)/(2π) と表すことができます。太陽表面重力はg = 274 [ms^-2]、音速は光球付近では大体 Vs = 7 [km/s] 程度とのことなので、f = 0.00312 [Hz]となり、周期 P で書くと 1/f = 320 秒 = 5分20秒となります。これが黒点においては、磁場に沿った伝播と温度構造の変化によって有効カットオフが少し下がり、Pが3−4分になるとのことです。5分周りに広がったスペクトルが、黒点においては3分の成分だけが残るという理解だそうです。

さらに波の増幅という効果があって、波の振幅 a は密度 ρ と a ∝ ρ ^(−1/2) という関係があり、上空に行くと密度が急減するので波の振幅は一気に増幅します。すわなち、伝播できる波だけが急激に強くなるという効果があります。このようにして3分成分が大きく観測観測されるということのようです。

ここまでで、自分としては3分周期になる理由はカットオフ周波数によるスペクトル選択だと納得しました。でも、なぜ黒点のみ3分になるのでしょうか?カットオフが理由なら、光球面の周期も5分ではなく3分になっていい気がします。もう少し調べてみました。

黒点だけが3分になる主な原因は「磁場による波の導波(wave guiding)」だそうです。波が彩層まで届くかどうかが、黒点と、光球面などの静穏領域で違うとのことです。静穏領域では5分の波はほぼ水平に伝播するため彩層まで行かずに反射と干渉を繰り返します。一方、黒点では強い垂直磁場があり、音波は磁力線に沿って伝播します。波が垂直に導かれる(wave guide)ため、ローパスフィルターの影響が顕著になり、3分周期が支配的になるとうことのようです。

ここら辺まで来て、やっと納得できました。

さらに調べていくと面白い記述を見つけました。「3分振動は黒点の中心から同心円状に外へ波として広がることがあります。これは sunspot oscillation wavefront と呼ばれ、黒点が 巨大な波動導波管(magnetic waveguide) のように振る舞っている証拠と考えられています。」とのことです。今回撮影できたの映像のように、振動が広がっていく様子がはっきり見えたのも、この導波(wave guiding)の効果と考えられるようです。

とりあえずの調べ物はこれくらいにしておきます。


まとめ

黒点振動を含めて、ここまでの画像が撮れるとは思っていなかったので、自分自身もうびっくりでした。これもヘリオスター100Hαの高性能エタロンと高分解能のおかげだと思います。CP+セミナーのための評価というだけでなく、エタロンの透過特性の測定も合わせて、十分すぎるほと楽しまさせていただきました。サイトロンさんには改めて感謝いたします。

やっとCP+の顛末をまとめることができたので、次は何をしようかちょっと迷っています。やりたいことがまだありすぎで、時間は限られているので、天気とかのタイミングと、その時の興味と、いろんな準備状況など合わせて、少しづつ、焦らずに進めていこうと思います。



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