ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:黒点

2週連続の太陽撮影です。七夕の日の日曜の朝の撮影です。


3度目の朝の撮影

朝の撮影は5月18日(土)6月29日(土)に続いて今回で3回目です。過去2回解像度もそこそこ出て、前回は粒状斑を出す手法も少しわかってきました。今回はどうだったでしょうか?

まずHα画像ですが、これを撮影して画像処理をすることでシンチレーションの指標になるようになってきました。 具体的には、ImPPGのLucy-Richardson deconvolutionのsigmaの値が小さくて済む場合はシンチレーションがいいです。細かい模様が残ると言う意味です。シンチレーションが悪いとそのsigmaをある程度大きくせざるを得ず、解像度はそれなりに悪くなっていきます。前回は1.5程度、今回は2-3程度が良かったので、シンチレーションは少し落ちたくらいかと思います。それでも十分良かった方だと思います。

撮影条件は前回とほとんど同じです。違うところは三脚にゴム板を置いたこととだけですが、風が結構強かったので、揺れは結構大きかったです。やりたかったPSTの調整は暑くて、やる気になりませんでした。この日は朝8時頃からもう30℃になっていてたので、準備も含めて、Hαも白色撮影も短時間で済ませました。

まず一番大きな黒点AR3736です。
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東側のAR3738群です。プロミネンスも同じ画面に収めてみました。
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西端に近いAR3733です。
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この結果を見る限り、シンチレーションはやはり前回の方が良くて、それに隠れてか地面の揺れを防止したことの影響は見えていなさそうです。


粒状斑

今回も白色光を撮ってみました。違いは、前回初めて使ったGreenフィルターに加えて、UV/IRカットフィルターを加えたことです。後のセットアップは同じで、C8にOD5のAstroSolar Safety filmをつけ、Apollo-M MINIで撮影しています。まだOD3.8のフィルターは準備ができていません。

まずは前回撮り忘れたPowerMATEなしの画像です。黒点の数はだいぶ寂しくなっているのがわかります。1週間で結構変わるものです。
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次にx4のPowerMATEを入れた画像です。前回試したように、事前にser playerで模様をある程度出しておきます。
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まあ、前回と同じくらいのレベルまで出ているので、再現性もあると言えるかと思います。でももう少し出て欲しいです。何が問題なのでしょうか?


まとめ

朝の撮影はやはり良さそうです。特に夏は暑くて早くから太陽も高くなるので、早いうちにパッと撮影してしまうことがいいでしょう。粒状斑はまだ一段階くらい何か謎がありそうな気がしています。実は今回PSTでHαから大きくずらして白色光に近いものを撮影したり、Photosphereも使ってみましたが、前者は解像度は出るものの粒状斑はでず、後者は解像度がでずで諦めました。次の一手が機材なのか、シンチレーションなのか、画像処理なのか、もう少し考えたいと思います。

先週の土曜、この日は梅雨の合間の珍しく晴れ間が見える日でした。この天気も夕方くらいまで、夜からはまた曇りで次の日からは2週間予報でずっと雨です。せっかくの休日なので、朝から起きて太陽撮影を開始しました。


朝のシーイング

機材はいつものC8+PST+ASI290MMをCGEM IIに載せています。前回の5月18日の撮影も、朝でまあまあのシーイングでしたが、今回も解像度がそこそこ出たので、やはり朝の方がシーイングがいいことが多いようです。何枚か見栄えがいいものを撮影したので結果だけ示します。

まずは一番大きな黒点のAR3727です。黒点の番号はここ「宇宙天気ニュース」で確認しています。黒点の南にあるダークフィラメントも結構大きくて見栄えがします。
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クリックして拡大してもある程度耐えられるくらいの解像度になっているので、シーイングは良かったことがわかります。

私はスタック後の細部出しにImPPGをよく使うのですが、シーイングがいい時の撮影ほど画像処理に負担がないです。今回のImPPGのパラメータはLR deconvolutionのsigmaが2.0、Unsharp Maskingのsigmaが5.0、Amountが3.0とかなり小さい値で十分でした。特にLRの値は大きくするとせっかく撮れた細かい模様が荒く潰れてしまいます。

課題はPSTのHαの良像範囲が限られていることと、ピントが出る範囲が限られていることです。そのため今回の画像は端部をある程度クロップしています。良像範囲に関してはちょうどこの日にgariさんがPSTのペンタプリズムの光軸を合わせてかなり改善したという報告がされていたので、近いうちに私も試してみたいと思います。

続いて東の方のAR3729です。上の黒点よりは迫力は落ちますが、小さいものが3つ並んで賑やかです。
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黒点最後は西端のもう間も無く裏に回ってしまうAR3719です。こちらはダークフィラメントが端までかかっていて、プロミネンスが飛び出している様子がわかります。スピキュールを見る限りそこそこ解像度は出ていると思うのですが、光球面の解像度が少し落ちてしまったようです。
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あとはプロミネンス2つです。上の黒点のすぐ下に大きく出ていたものです。
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もう一つは東側にでていたものです。少しジェットのようなものが見えています。
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ところで、今回もドップラーシフトしたサージ(ジェット)が見えないか、PSTのエタロンの角度を大きく回して太陽全面を見てみましたが、それらしいものはありませんでした。やはり前回はかなりラッキーだっのかもしれません。今思ったのですが、ドップラーシフトを見るだけなら波長は多少Hαからズレていいので、もっとセンサー面積の大きなフォーサーズのASI294MCとかで全面を一度に見た方がいいのかもしれません。もしくはモノクロがいいなら1/1.2インチと294よりは少し小さいですが、Apollo-M MAXでもいいかもしれません。


粒状斑

撮影した時間は前後するのですが、Hαの前にC8にBaaderのAstroSolar Safety film(ただしOD5の眼視用)をつけ、PlayerOneのApollo-M MINIで白色光を見てみました。

フィルターは、これまではBaaderの青緑色とかを使ってましたが、今回新たに緑色のフィルターを使ってみました。一枚やっと余ったからです。青緑だと波長粒状班の波長から少しずれるはずで、多分緑の方があっているのかと思います。

画像を保存し忘れましたが、全体を見渡すと黒点がたくさん出ています。小さいものまで合わせると結構な数です。Appolo-M MINIはグローバルシャッターで速い撮影に向いているのですが、ピクセルサイズが4.5μmといつも使っているASI290MMの2.9μmより少し大きいので、4倍のPowerMATEを使って拡大して分解能を出します。そのまま普通にAS!4でスタックしてからImPPGで細部出しをします。
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それでもやはり、何か少し見えるものの、粒状班らしき形には全然なりません。シーイングが十分でない可能性もあるのですが、ここでふと気づきました。Hα画像の細部に全然敵わないことです。

同じ時間帯、同じ鏡筒で撮影した場合、シンチレーションはそこそこ同じなので、分解能はそれほど変わらないはずです。今回は朝の撮影ということもあり、シーイングはそこそこよさそうなので、Hαは結構細部が出ています。それに比べて白色光はより細部があからさまに出ていない気がします。なぜそうなるのか?可能性はパッと思いつくだけで
  1. 見ている波長域が広いため、色収差などの影響でシャープさに欠けること
  2. 背景が明るいために模様のコントラストが出なくて、スタック段階でうまく位置合わせができていないのでは
の2つあります。

今回はまずは後者を疑ってみました。実際撮影したserファイルを見ても、黒点以外の背景はフワッとした淡いモヤモヤが見えるだけです。AS!4は画面上に打ったたくさんのポイントが合うように画面を歪ませながらスタックしていくのかと想像します。でも、模様がはっきり見えないと位置合わせのしようがないのではないかということです。

serファイルの動画の中に情報としては何か模様は残っているはずなので、その模様を参照して位置合わせをした方がいいはずです。そこで、ser playerのPreprocessingでガンマ値とゲインをいじって動画の段階で模様を見えるようにしてみました。その状態で、一旦別のserファイルに書き出し、それをAS!4でスタックしてみました。

結果は、同様にImPPGでいじるだけでかなり粒状斑らしきものが出てきます。それも、LR deconvolutionのsigmaを上げると粗い点々のようになってしまうので今回は0.5として、ほぼ何も効果を出さずに抑えます。Unsharp Maskingのsigmaが4.5、Amountが5.0とこちらも抑え気味でも十分粒状斑らしき形になりました。どうやら明らかに効果があるようです。
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一つ上の画像と全く同じパラメータで処理しています。明らかに構造が出ています。

よく考えると、模様が出ない可能性の1も密接に関連しているはずです。粒状斑が見える波長域は限られています。今回はGreenフィルターを使いましたが、まだ波長域が広すぎか、このフィルターは特価で買ったものなので、もしかしたら眼視用でUV/IRに透過領域がある可能性もあるので、動画の背景が明る過ぎる可能性があります。以前使っていたPlayerOneのPhotosphireフィルターは透過波長幅が10nmとかなり暗かったので使わなくなってしまったのですが、減光フィルターを眼視用のOD5から撮影用のOD3.8のものに変えるとかなり明るくなるはずなので、撮影時からコントラストをよくすることができるかもしれません。

ImPPG後にPixInsightのABEの2次をかけフラット化し、MultiscaleLinearTransformをかけさらに細部出しをし、最後にPhotoshopで仕上げたのが以下のものになります。
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以前はかなり無理な画像処理で無理やり何か出していましたが、今回は無理な画像処理はしなくても、粒状斑に見えるようなものが出始めています。とりあえずの、ポイントはスタック前の処理だったわけです。

少なくとも少し手がかりは見えたので、今後はもう少し方針立てて改善できそうです。改善ポイントは
  • OD3.8フィルターに交換
  • Green+UV/IRカットにするか、Photosphireフィルター
  • 地面の揺れをカットするために三脚の足にゴムを挟む
などでしょうか。まだシンチレーションが悪い可能性もあるので、いい時間帯を狙うことも続けていきたいと思います。


休日が晴れた時は太陽撮影をできるだけしようと思っています。やっと秋らしくなり、昼間の撮影でも暑くなくて快適です。

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最初準備している時は曇りがちだったので、C8の補正板の清掃をしたり、カメラのチルターを新しいものに交換したりなど、少し機材メンテナンスをしました。補正版はここしばらく触ってなかったのでほこりだらけでした。

あと、新しいPCで太陽撮影ができるようにアプリをいくつかインストールしました。といってもすでに電視観望で使っているPCなので、新たにインストールしたものはCelestronのASCOMドライバーとImPPGだけです。あとはSharpCapを最新版にしたくらいでしょうか。

まずはPSTでのHα画像です。鏡筒はC8でカメラはASI290MMなので、そこそこ拡大しています。曇りの間を狙っての撮影となりましたが、シーイングも良くないので、ボケボケです。大きな黒点は見当たらず、細かいものがいくつか出ていました。下の画像は一つ一つは小さいですが、少し密になっている黒点で、上半分がAR3451群で、下半分がAR3452群になります。

13_14_38_lapl4_ap493_IP_cut


プロミネンスもでていますが、その中で一番大きいものを。
13_17_29_lapl4_ap194_IP

次に、白色画像です。あ、カメラをASI290MMそのまま使ってしまったので、いつも入れているPlayer OneのPhotosphereフィルター入れるの忘れてました。なので、白色光です。上で見せた黒点AR3451群とAR3452群になります。シンチレーションは良くないのに、さらにPhotosphereフィルター入れてないのに、意外に粒状班が見えています。前回のApollo-M MINIからカメラのピクセルサイズが半分程度になったのが効いているのかと思います。

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その後、4倍のPowerMATEを入れて、シーイングが良くならないか少し期待して30分ほど粒状班撮影をしてましたが、全然ダメでした。上の等倍のと解像度がほとんど変わらないくらいです。カメラの分解能は上がっているので、逆に倍率が高すぎたのでしょうか?明日と明後日、昼間晴れたらもう少し試してみます。

いずれにせよ、シーイングはとにかく見てみないと分からないので、今後もうしばらくは続けたいと思います。でももう秋だから北陸だとそもそもシーイングはダメなのかもしれません。

休日で晴れているので太陽撮影です。大きな目的は粒状班ですが、まずはHα画像から。


セットアップ

取り掛かったのは、がストのモーニングでのんびりして帰ってきてからの、ちょうど正午12時くらいからでしょうか。

まずはいつものC8とPSTです。まずPCの画面に写した段階で、そこまでシンチレーションは酷くはないですが、前回の9月10日の時よりも明らかに揺れています。もうこの時点で粒状班は諦めました。Hα画像も処理をしてみると分解能が明らかに劣っています。なのでこの日の画像は記録程度の意味しかありません。


Hα画像

結果だけ示します。真ん中ら辺に目立つ黒点が2つ出ていました。宇宙天気ニュースによると、大きい方からAR3435とAR3440だそうです。番号が小さいほうが先に出ていたもので、先に裏側に回り込みます。

AR3435
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AR3440
12_31_29_lapl4_ap530_IP

シンチレーションがいいとImPPGのSigmaが小さい値でかなり細かい模様が残り、分解のがいいことがよくわかります。9月10日の画像は1.5とかせいぜい2でした。シンチレーションが悪くなると、Sigmaの値を大きくしてごまかすような形になります。今回は3とか4でしたので、やはり分解能がでないです。

プロミネンスもいくつか出ていましたが、一つだけ撮影しました。

12_15_48_lapl4_ap530_IP

撮影データです。
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2023年9月24日12時15分-12時44分
  • 鏡筒: Celestron C8、口径203mm、焦点距離2032mm、F10
  • エタロン: Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI290MM
  • 撮影ソフト: SharpCap 4.1 (64bit)
  • 画像処理: AS3にてスタック、ImPPGで細部出し、PhotoshopCCで後処理


VISACでの粒状班撮影

シンチレーションが悪いので多分ダメなのはわかっているのですが、一応粒状班を撮影してみました。前回PowerMATEの2倍では拡大率が不十分だったので、今回はPowerMATEの4倍を使いました。

今回はC8だけでなく、VISACでも撮ってみました。もしかしたらC8に固有の問題があるかもしれないとも思ったからです。でも見た限りだと、C8もVISACもどちらも同様で劇的な違いはなく、どちらも全然ダメでした。

IMG_8604

撮影したものですが、結局画像処理をするとC8でとったものの方が少しだけよかったので、こちらを載せておきます。

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でもまだ分解能が全然足りていません。また休日に晴れていたら撮影してみます。


今年の夏は殺人的な暑さでした。9月に入ってやっと少しだけ暑さが和らいだのと、休日と晴れが重なったので、久しぶりに太陽撮影を試みました。2023/9/10の撮影分になります。前回の太陽撮影はゴールデンウィークの頃なので、もう4ヶ月も前のことになります。


今回の主な目的は2台のPSTを比較して2台目の方が良像範囲が広いと判断した5月の検証を再度確かめることです。




黒点

黒点群AR3423です。この日はシンチレーションも悪くなく、そこそこ細部まで出たのかと思います。

10_02_58_lapl4_ap530_cut
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2023年9月10日10時2分
  • 鏡筒: Celestron C8、口径203mm、焦点距離2032mm、F10
  • エタロン: Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI290MM
  • 撮影ソフト: SharpCap 4.1 (64bit)
  • 画像処理: AS3にてスタック、ImPPGで細部出し、PhotoshopCCで後処理

元のモノクロのカット前の画像が下になります。

10_02_58_lapl4_ap530_mono

左側がのっぺりしているのがわかると思います。これを見る限り良像範囲は8割程度でしょうか。前のPSTが3-4割といったところだったので、かなり使える範囲が増えたのかと思います。 細部もそこそこでているので、今後も2台目PSTでそのまま継続できるかと思います。

一つ心配なのが、真ん中から右にかけてなぜかピントがずれたように見えます。もっと右に行くと大丈夫そうなのですが、少し謎です。再発するようなら原因を探ってみます。


プロミネンス

この日はプロミネンスもたくさん出ていました。目立つものをいくつか載せておきます。画像処理はあまり気合が入っていません。

まずは、かなり広い範囲に渡ったプロミネンスですが、手前側の光球面上に広がっている様子もわかります。プロミネンス越しでは光球面の細部が出にくくなっているのがわかると思います。
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こちらも下部からプロミネンスが伸びて繋がっているのがわかります。やっとここら辺を出せるようになってきました。
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スピキュールがピンピンしてますね。こんなときはシーイングがいい日だということがわかります。
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粒状斑

前回C8にアルミシートを巻いて、少し熱流対策をしました。その効果かわかりませんが、2倍のPowerMATEで少し粒状斑が出ました。

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でもまだ動画の時点ではっきり出ているとは言い難いので、まだシーイングがかなりいいとは言えないでしょう。太陽撮影は休日に限られてしまうのでタイミングが難しいのですが、できるだけシーイングがいい日を探して継続していきたいと思っています。


まとめ

やっと昼間に太陽を見る気になるような気温になってきました。忙しくてブログをまとめてなかったのですが、明日から日曜、月曜と連休を利用しての京都の「星をもとめて」なので、それまでにまとめておこうと画像処理も含めて記事を書き上げました。

今日の夜は飛騨コスモス天文台で観望会、でも天気は微妙です。明日は朝から京都「星もと」へ移動です。星もとでは胎内に引き続いて、ユニテックブースでSWAT+AZ-GTI=SWAgTiの展示とデモをする予定です。関西の星仲間に会えるのを楽しみにしています。


ゴールデンウイーク初日に久しぶりに太陽に復帰したのですが、まだいまいち調子が出ません。



今回も改めて認識できたのですが、長年懸念の大きな課題が2つあります。
  • 一つはPSTのHαの良蔵範囲が小さいのが気になること、
  • もう一つがシーイングはそこそこなのに粒状班がなかなか出ないこと
です。

この記事では、まずはPSTのHαの良蔵範囲について考えたいと思います。


エタロン取り出し

最近のPSTを使っての太陽のHα画像を見ていて、どうもシマシマやモジャモジャのみえる良蔵範囲が狭いのではないかと思うようになってきました。まずはエタロンの設置角度が悪いのではと思い、最初に分解して以来、久しぶりにエタロン部を分解してエタロン本体を取り出してみました。

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いい機会なのでついでにエタロンを少し観察してみます。

エタロンは、開発者のCharles FabryとAlfred Perotの二人の名前を冠したファブリーペロー干渉計などとも呼ばれ、2枚の鏡を合わせ鏡状態で平行に並べた光共振器になっています。鏡の平行度がとても大切で、鏡が傾いて取り付けられると光がうまく干渉せず、共振状態になりません。どれくらいの角度の精度が必要かは鏡間の距離に依存しますが、評価はTEM(Transverse ElectroMagnetic、横モード)00モードが他の高次モードに比べてどれだけ出てくるかで評価します。PSTでは2枚の鏡の間に等厚のスペーサを4つ入れて、角度の精度を出しているようです。上の写真をよく見ると、鏡の隙間の中にスペーサーがあるのが分かります。

エタロンを正面から見てみましょう。
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4隅にスペーサーがあるのがわかると思います。でもスペーサーの形が超適当です。これは下手なカットをして端部で厚みが変わるのを避けているためと思われます。接着はこの手のものはオプティカルコンタクト(表面の平面度を出して、分子間力で接合する方法)かと思われます。

裏面を見てみます。PSTのやばいデザインの一つ、スポンジでの固定です。
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これも理由がきちんとあって、PSTの回転リングでエタロン本体にかかる圧力を変えて透過波長を調節します。スポンジでDC的な圧力変動に対して追随するというわけです。

このスポンジも面白くて、2つのカケラを貼り付けることで平行度を出しているようです。真横から見ると、この2つのかけらがあって初めてまっ平になっているように見えます。一番上の写真を見直してみると、スポンジに欠けがあります。これはわざとなのかたまたまなのか、理由も含めてよくわかりません。でもなんか欠け際に焦げたような跡が見えるので、もしかしたら何か意味があるのかもしれません。

よくよく考えると、なぜエタロン外側の回転リングを回すと入射光に対してエタロンの角度が変わるのか、まだ理解できていません。回転リングはぱっと見平行に回しているように見えます。言い換えると、均等に圧をかけているだけの気がします。これだけだと角度変化にならない気がします。もしかしたらスポンジの裏面のカケラを置くことで、スポンジの密度を変えていて、そこを支点に入射光に対するエタロンの角度が変わっているのかもしれません。もしそうならコストを抑えたものすごいアイデアです。

とりあえず、見ている限り設置でのエタロンの平行度は問題なさそうなので、元に戻します。


2台目のPST

PSTですが、なぜか自宅にもう一台転がっています。以前やったPST分解講座の前にジャンクで安く出てたのを購入しておいたものです。

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今回、2台のPSTを2/3インチのセンサーサイズの大きいApollo-M MINIを使って、少し広い範囲で見てみました。結果はというと、
  1. これまでのPSTはPSTのリングを回すと円状に明るく(Hαからずれている)なったり暗く(Hαに合っている)なったりします。
  2. 2台目のPSTはPSTのリングを回すと筋状に明るく(Hαからずれている)なったり暗く(Hαに合っている)なったりします。
1. 円状に良像が変化するということは、レンズ系とエタロンのモードが合っていないなどが考えられます。エタロンを構成する鏡が平面鏡なのか曲率がついているものなのかは不明ですが、曲率がずれている可能性もあります。F10の鏡筒がエタロン手前のレンズで平行光になるように設計されているはずですが、レンズの焦点距離がずれている可能性もあります。もしくはエタロンと鏡筒の位置が間違っている可能性もあります。

2. 一方、スジ状に良像が変化する場合は、エタロンの鏡の平行度がおかしいとか、エタロンが傾いて取り付けられているなどの可能性があります。

いずれにせよ、Apolloに比べて1/3インチセンサーのASI290MMの方が狭い範囲を見ていて、この範囲内に良像が入っていればいいという観点で判断します。

実際の画像を見てみます。ASI290MMで撮影しています。まずはこれまでのPSTです。前日水曜日に撮ったもので、クロップ前のものです。Hαのシマシマが出ている良像範囲としては中央から右と右下方向のみで全画面の4分の1からせいぜい3分の1程度でしょうか。
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念のため良像範囲を検討した時の2019年の画像を見てみると、点々でなくきちんとHαのシマシマが出ているのはやはり4分の1程度です。

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これまで、大きな黒点とかはそこを中心にしてクロップするので、うまく写っていないところをカットして良く見せているだけでした。なので今回撮影したように、中くらいの大きさの複数の黒点が画面全体に広がっている場合は、それらを全部入れようとするとどうしてもHαが出ないところがあるというわけです。

少なくとも2019年から良像の割合はほとんど変わっていないので、エタロンの経年劣化などはないと判断しました。逆にいうと、今回エタロンを取り出してまた入れ直したりしましたが、それくらいでは良像範囲は大きく変わらないということです。エタロンは平行度が命で、自分の手で何かをして良像範囲を劇的に改善するのはかなり難しいとも言えます。

次に、2台目のPSTで連休2日目の木曜に撮ったものです。
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2日目のほうがシーイングが悪いので分解能は出てないのですがそれは無視するとして、Hαという意味ではどうも新しいPSTの方が良蔵範囲が広いようです。全画像の半分以上はシマシマが出ているように見えます。

一見黒点付近ではそれにも増して分解能が悪いようも見えますが、波長がHαに近づいてくると(シマシマがより見えるようになるために)白色光では良く見える黒点の形が分かりにくくなってくるはずで、シーイングのせいで分解能が悪いのを差っ引いても、正しい方向に向かっている気がします。


補足: 
そもそもエタロンの劣化はあまり考えにくく、ダメになる時は鏡がずれてしまったりで全く見えなくなる可能性の方が高いと思います。徐々に見えなくなるというシナリオは、鏡の反射面になんらかの支障が出る場合ですが、合わせ鏡の内側のことで、汚れたりコーティングが徐々に劣化していくことも稀かと思います。エタロンというよりは、BF(ブロッキングフィルター)やERFの経年劣化の可能性の方が遥かに高く、全体に暗くなったとかは大抵エタロン以外が原因です。実際エタロンが全く見えなくなった話はたまに聞きますが、だんだん見えなくなってきたという話はこれまで聞いたことがありません。

良像範囲はほぼエタロンの出来で決まるので、ユーザーは改善の手立てがあまりありません。せいぜい傾いていないかの位置調整くらいです。その確認の意味で、先のエタロンの位置を確認してみたというわけです。以前の議論にも書きましたが、物によっては当たりのエタロンもあり、そういったものを手に入れられるなら、大きな範囲で安定したHα像を得られるはずです。そのようなことを議論したのが、4年前の記事:



になります。今回やっと、この時不満に思っていたことを、2台目のPSTと見比べることにより、多少なりとも改善、進化に繋げることができるのかと思います。


まとめ

2台のPSTの比較で、一応の結論は出ました。
  • エタロン自体の改善はユーザーレベルではやはり難しい。
  • ASI290MMの範囲で見る限り、2台目の方が良像範囲が広い。
などです。というわけで今後しばらくは2台目のPSTで進めていこうかと思います。


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