ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:黒点

ゴールデンウィーク中の太陽の目玉は、何と言っても大型黒点でしょう。


名古屋市科学館での太陽

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5月3日の4連休の初日に実家の名古屋に行った際、名古屋市科学館に行きました。9時10分頃に到着したのですが、運よく10時からの一般向けの回のチケットを、残り10席くらいでとることができました。ゴールデンウィークなので次の11時20分からのファミリー向けの回の方が人気があったようです。

今回のプラネタリウムは土星の輪の消失の解説が面白かったです。名古屋市科学館はいつも生解説なのが魅力です。今回も素晴らしいトークでした。解説によると、3月24日に地球が土星の輪の平面内を通過するので一度輪が見えなくなっていて、次が5月7日なのですが、その時は今度は太陽が土星の輪の平面内を通過するために輪に平行にしか光が当たらなくなり見えなくなるとのことです。このことを、CGで土星の輪に乗っかって地球と太陽を見るという試みをしていました。非常に直感的でわかりやすくてよかったです。

科学館の常設展示の中で今回特に面白かったのは、太陽のリアルタイム映像でした。プラネタリウム中にも解説していたのですが、同じフロアで太陽の白色光を減光して投影していて、この日は話題の大型黒点がよく見えました。
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北が上になるように写しました。おおがた黒点が間も無く正面にくるくらいです。

他にも、5階の天文コーナーがいろいろ変わっていました。円形の部屋の壁全面を利用して、一周で宇宙のスケールを距離で表している展示があって、かなりわかりやすい試みだと思います。
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ここがスタート。

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壁全面に、宇宙の果てまでの距離に応じた展示があります。

この日は特別展で科学館の地下で「鳥」展が開催されていました。かなり人気らしくて、入場のところから並んでいて、中もすごい人でした。いろんな鳥が各「目」に分かれていて、たくさんのはく製が展示されています。「目」での分類は、ある意味鳥の進化の歴史でもあるようで、鳥の進化そのものがわかるという内容で、とても充実していました。
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こんな展示が44目(多分)まで続きます。

私は鳥にはそこまで興味はないごくごく普通ののですが、非常に興味を引くように展示が工夫されていて、鳥に詳しくないとしてもとても面白いと思います。


天文ショップスコーピオでの太陽

その後、大須方面まで歩いて移動し、上前津から地下鉄に乗り、伏見で東山線に乗り換えて八田駅まで行き、天文ショップのスコーピオに顔を出しました。早速店長さんが口径76mmの太陽望遠鏡Heliostarを見せてくれました。
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CP+で話したPhoenixも良かったですが、Heliostarは口径が76mmとPhoenixの40mmの倍近くになり、特にアイピースの焦点距離を短くして拡大した時は、見応えも格段に良くなります。今回は標準の20mmアイピースに加えて、10mmと5mmのアイピースで見させてもらいました。5mmは126倍とかなり拡大して見ることになるので、流石に少しは暗くなりますが、それでも元の口径が76mmと大きいので、不満のない十分な明るさで見ることができます。ここまで拡大しても細かいところまでよく見えるのは、やはり76mmの恩恵でしょう。これで拡大して見た大型黒点は、かなり細かい模様も見えて大迫力でした。

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スマホで撮影してみましたが難しいです。
目で見た方がはるかに迫力があります。

この大黒点は肉眼黒点の可能性もあり、スコーピオの店長さんと太陽フィルムで見てみました。肉眼黒点としてはそこまで大きなものではないので、かなり小さかったですが確かに何の拡大もなく見ることができました。


Hαで太陽大黒点を撮影

次の日の4日には富山の自宅に帰ってきて、今回の黒点を撮影しようとしました。午前中は曇りで諦め、午後からHαで撮影したのですが、少しの晴れ間を狙っての撮影だったので時間をかけられずに、大した解像度は得られませんでした。むしろこの日はいろんな調整に時間を費やしました。この日のことはまたまとめて記事にします。

天気予報では次の日の5日は朝から快晴のはずです。張り切って朝の5時半には起きたのですが、外はなぜかどん曇りです。その場でSCWを見直してもWindyを見直しても雲はないはずです。もう状況がよくわからないので、ふてくされてガストのモーニングで時間を潰します。10半頃にはかなり晴れてきたので自宅に戻り、11時頃にはほぼ快晴、11時半頃には準備も完了して、前日あまりうまくいかなかった撮影を始めました。機材はいつものC8+PST+ASI290MMです。赤道儀は簡単に出せるCGEM IIです。

30秒インターバルで1ショットあたり200フレームで120ショット余り撮影しましたが、シーイングは普通よりは多少いいくらいだったでしょうか。撮影した中の、連続の2ショットがかなりシーイングが良かったので、2ファイル分の合計400フレームのうちPIPPで上位300フレームを選び、その300フレームをすべてAS4!でスタックしました。その後はImPPGで細部出しですが、最近の精細な画像ではsigmaは0.5一択で、あとは適時調整します。コントラスト出しやカラー化などはPixInsightのSolar Toolboxで、その後仕上げにPhotoshopに回しています。

結果はモノクロ、カラー、カラー反転の3つを示しておきます。
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12_04_42_pipp_lapl2_ap3929_IP2_05_13_50_color

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今回のゴールデンウィーク中の目的の一つ、大黒点の撮影がある程度分解能よくできました。このように目立つ黒点が出た時も、確実に分解能よく撮影する手法が確立して、それが実践できるようになってきたのかと思います。また、少なくとも静止画に関しては撮影、選別、画像処理のルーチンはほぼ出来上がったと言っていいので、処理もその日のうちに終わり、今回も当日のうちにXに投稿しています。太陽は時間勝負のところもあるので、ここら辺の早い処理というのも目的の一つでした。


お客さんと太陽を見る

C8での撮影を終えて、全景用に鏡筒を変更しようとして家の中に入っているときに、玄関のチャイムがなりました。最近近くに引っ越してきた、アメリカ在住時代からの古くからの友人が、お嬢さんを連れてやって来ました。何でもお嬢さんの方が、私のXの投稿で朝から太陽をやっているのを見て、興味を持って来たとのことです。実はお嬢さんは赤ちゃんの頃に顔を見ているだけで、聞いたらもう中3とのことで、はじめましてではないのですが、実際にははじめまして状態でした。わざわざ太陽なんかに来てくれるくらいなので、星のことには結構興味があるみたいで、話してみると色々詳しくてちょっとびっくりでした。

まずは、太陽グラスで黒点を見てもらいますが、大黒天と言っても肉眼だとやはり小さくてわからないようです。そこで、星座ビノに太陽グラスをテープで固定して見てもらうことにしました。
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これだとさすがに黒点も十分に見えるはずで、二人とも「見えた!」と叫んでました。

太陽と言っても、C8の撮影は撮り続けて待っているだけなのですが、太陽全景ならSharpCapでリアルタイムで色付きで見えるので、多少は楽しいはずです。というわけで、鏡筒交換の準備を続けながら太陽全景を一緒に見てもらうことにしました。


8cm鏡筒用に太陽用ファインダーとガイド鏡

口径8cmの鏡筒も改良が進んでいます。玄関のチャイムが鳴った時は、ちょうど太陽ファインダーを取り付ける準備をしているところでした。C8の場合は鏡筒内からの反射光のスポットが補正版に当たるので、それが中心に来るようにアラインメントを取ればいいので目安があって簡単なのですが、口径8cmの場合はそのような指標がなくて、毎回導入に手こずっていました。10cmに取り付けていた太陽ファインダーがあったのを思い出し、それアルカスイス互換のクイックシューを取り付け、8cm鏡筒の下部に取り付けたアルカスイス互換プレートにそのまま取り付けられるようにしました。

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写真のようにアルカスイスプレートの前方にファインダーを取り付けるのですが、導入後は取り外して、撮影時は下に写っているガイド鏡に交換します。今後は、この後に出てくる新カメラで一度に太陽全景が撮れるようになるので、タイムラプスなどの長時間撮影をしたい時にガイド鏡が活躍するはずです。

こんなふうに実物を見せながら、ファインダーの動作原理から、取り付けの際のアルカスイス互換リリースの取り付け、鏡筒に固定してからの導入などもお客さん二人に説明しながら、いよいよ太陽像を見てもらいます。


太陽撮影用新カメラG3M678M

今回の目玉は新カメラの投入です。ToupTekのG3M678Mという機種です。
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中身は至ってシンプルで、マニュアルもドライバー関連も入っていません。
左上の黒いアダプターを使うと、
アメリカンサイズのフィルターを取り付けることができます。

IMX678センサーを使っていて、ピクセルサイズが2μmとかなり細かい撮影が可能です。これまでのASI290MMが2.9μmなので、約1.5倍くらい細かくなるわけです。同センサーのカラータイプはZWOからもでていますが、モノクロで天体用はToupTekからだけのようです。 (追記: 2025/5/8) ZWOでも同センサーでASI678MMが出ていますが、いずれも売り切れや取り寄せなど、日本の代理店を通してだと入手が大変そうなのと、値段がかなり上がります。海外では太陽でG3M678Mの実績が多数報告されているので、初期不良や故障の場合は少し面倒かもしれませんが、今回はG3M678Mを選びます。(追記ここまで) 分解能を考える場合は、カラーとモノクロではモノクロの方が単純に2倍細かくなるので、単波長の太陽撮影では同じセンサーならモノクロタイプの方が圧倒的に有利です。センサーサイズは1/1.8''と、これまでのASI290MMの1/3インチよりこちらも1.5倍くらい大きくなるので、今回は大きな面積を取ることができ、かつ細かく撮影できると、いいことずくめです。

その一方で、もちろん犠牲にするものがあって、それはピクセルサイズが小さくなることによる感度の低下と、センサー面積が大きくなることで高価になることでしょうか。でも太陽撮影で十分明るいものを見るので感度はそこまで問題ではないでしょう。またセンサー面積が大きくなったと言っても、たかだか惑星用カメラの面積なので大したことはなく、CMOSカメラとしてはまだ安価な部類でしょう。しかも今回はじめてAliExpressを使って安いところを探して購入してみました。ToupTekの日本語のページもありましたが、ただ単に日本語化しているだけのようで、ドル払いで、しかも割高なので、結局AliExpressにしました。支払いもPayPalでできたので、直接カード番号を入れるとはしなくてよく、多少安心です。発注から到着まで20日ほどかかるとのことでしたが、実際には15日くらいで少し早めに来て、ちょうどこの日C8から8cm鏡筒に交換している最中に到着したので、タイミング的なこともありますが、ゴールデンウイーク中に使うことができて、結構好印象です。


太陽全景撮影

さて、今日の太陽全景です。まずはいつものようにASI290MMで撮影し、特に問題ないことを確認します。その後、今回の新カメラに交換します。このカメラはアイピース径と同じ筒タイプのカメラなので、アイピース口の中に押し込んでセンサー面をより鏡筒側に近くにすることができます。

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今回はカメラの差し込み位置などの最適化はまだできていないので、適当な位置に入れてピントが出るかどうか試したくらいです。ドライバーとかはあえて何もインストールしなかったのですが、SharpCapではそのまま認識して、接続までできました。

さて実際にSharpCapで見てみると太陽全景が一度に入っていることがわかります。こんなふうに撮影まで何のトラブルもなくできたので一安心です。

スクリーンショット 2025-05-05 150358
とりあえずの細部出しです。今後パラメータを調整していきます。

スクリーンショット 2025-05-11 141625
Stabilization/Alignmentの設定を見たいというリクエストがあったので、
フォルダーモニター機能で保存してあったファイルを再生し、追加しました。
ガイドが前提なので、最低限の設定になっています。

PCでこの画面を見て、高分解、モノクロで、やっと一度に太陽全体が入って、かなり嬉しかったです。このカメラは今後の太陽撮影に色々使えそうで、今回の全景撮影はまだほんの一例に過ぎないです。

この状態で、とりあえずリアルタイムスタックでカラー化とプロミネンス鏡長をしたものを、PNGで画像を保存してみました。SharpCap以外での画像処理はしていません。(ブログにアップロードする関係でサイドの黒いところをクロップして、jpgに変換だけしてあります。)
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ここまでがワンステップで出るので、これまでやっていたかなりのことを省くことができて、相当楽になります。今後は、気軽に全景のタイムラプスとかもできそうなので、どんどん試していきたいと思います。

今回はASI290MMで撮影したものもありますが、まだG3M678Mの方の最適化ができていないので、比較は次回以降にします。とりあえずのパッと見では差がほとんどないか、まだASI290MMの方が少しいいみたいです。たとえ口径8cmだとしても、焦点距離が400mmと短いために、ピクセルサイズの小ささが効くような状況ではないからだと推測しています。この件はもう少し詳細に調べます。


まとめ

今年のゴールデンウィークは太陽三昧でした。大黒天の撮影もうまくいきましたし、新カメラも到着して全景撮影にも進展がありました。もう少し晴れの時間が欲しかったですが、天気が悪い時には画像処理やブログを書いていました。名古屋に行ったり、お客さんが来たりもしたので、かなり充実していて楽しかったです。

ブログに書いたこと以外でも、まだエタロン良像範囲の調整を数週間前からずっと続けています。こちらは今の段階でも進展はありますがまだ途中なので、もう少し結論が出てからまとめるようにします。





前回の記事で、4月7日にタイムラプス用に1分おきに撮影した画像を使って、シーイングの時間変化を検証してみました。今回の記事では、翌週の4月12日にもっと短い間隔で撮影し、シーイングの持続時間を検証してみました。


撮影条件

4月5日の撮影では、
  • 1分毎に1.25ms露光で200フレーム、2時間で合計120本
を撮影したもので検証しました。1本あたりのserファイルの容量は800MB越えです。

次の週の4月12日に、どれくらいの時間間隔で撮影すればいいのかと、必要フレーム数のあたりをつけるために
  • 20秒毎に1.25ms露光で200フレーム、30分で合計90本
  • 10秒毎に1.25ms露光で100フレーム、30分で合計180本
で撮影してみました。1本あたりのserファイルの容量はそれぞれ800MB越えと、400MB越えで、トータル量は共にそれぞれ75GB程度になります。


4月12日のシーイングの評価

この日は4月5日と比べると、(昼近くからだったこともあるのか) シーイングは全然良くありませんでした。といっても特別悪い日でもなくて、これまで見てきた経験から言うと、ごく平均的なシーイングなのかと思います。そのため、前回分けた
  1. ベストに近いもの
  2. ベストクラスからは劣るけれども、そこそこいいもの
  3. 特別いいわけではないけれど、普通にいいもの
  4. それより分解能があからさまに劣るもの
  5. 仕上げには絶対使いたくないもの
  6. ワーストクラス
というようなランク分けで言うと、6クラスが半分以上、5クラスが3割程度、4クラスでさえも1割くらい、3クラスが数えたら7枚 / 270枚 ~ 2.5%程度あるだけといったところです。1、2クラスはありませんでした。

2025/4/5 太陽(その1): 望遠鏡2台での撮影」で見せた、4月5日の中で適当な時間に撮ったものが「ランク4の悪い方か、5のいいほうくらい」という評価だったので、シーイングがいい日に適当な時間に撮影するよりも、シーイングが悪い日に最もいいものを選んで採用した方がいい確率が高いということが言えそうです。


シーイング継続時間

一番興味のある、同じようなシーイングがどれくらい続くかということを検証してみます。

前回の4月5日での結論は
  • 1分おきに3−4秒ほど撮影していて、1分毎にシーイングが大きく変わっているのがわかった
  • 撮影中の3−4秒でもシーイングは変化しますが、1分毎の平均的な大きな変化には至らず、いい時はいい中での変化、悪い時いは悪い中での変化
というものになります。

今回の4月12日の画像からわかったことですが、
  • 20秒おきの撮影ではそこまではっきりとした傾向は見られない。
  • その一方、10秒おきの撮影ではある程度はっきりとした傾向が見られた。
  • 悪いシーイングの画像がほとんどで、その分いいシーイングが目立ち、一旦いいシーイングになると、2から4枚とか連続して続く。
  • ただし、その2−4枚の中でも良い悪いは結構変わるが、他の悪い時画像よりは明らかにいい。
  • シーイングがいい時間は、20秒ごとの撮影では30分間で2回、10秒ごとの撮影でも30分で2回だった。

もし今回のことが典型的なケースとすると、
  • ごく一般的な、そこまで良くないシーイングの日でも、1時間も連続で撮影すれば、少なくとも数回はいい時があり、そのいい時間は数十秒程度続く。
  • 1分毎の撮影だといい時を逃す可能性があり、30秒毎の撮影ならとりあえずチャンスを逃すことはない。
  • ただし、いい時の数十秒の中でも良い悪いがあるので、ベストの時を得たいなら更に半分の15秒毎程度の撮影が安全そう。
というようなことが言えそうです。


ワンショットあたりの必要フレーム数

もう一つ、一回あたりのフレーム数についても検討してみましょう。前回の経験から
  • 200枚撮影して、そのうちの上位100枚程度を処理すれば、多少ノイズは目立ちますが、ノイズ処理前提なら十分な枚数
ということがわかりました。

今回10秒毎の撮影を処理してみたところ、
  • 100フレームでの撮影だとちょっと心許なく、ノイズがかなり目立つ。多少きつめのノイズ処理をしても、ノイズを消し切ることができない、もしくは無理して不自然になってしまう
という結論です。

なのでやはり
  • 1回で最低200フレーム撮るか、
  • 1回100フレームで撮影して、いい分解能の何本分かを合わせて使う
とかでしょうか。


現実的な値

こう考えると、静止画を作るのにいいシーイングを探すのには、30秒毎に200フレームくらいをトータル1時間くらいが限界な気がします。これでもファイル総量は100GB程度になります。

タイムラプスの場合は、プロミネンスで30秒毎に200フレームでトータル1時間、太陽表面で1-2分毎に200フレームでトータル2時間とかになるのでしょうか。

もう一つの方法は、ダメだった動画ファイルはすぐ捨てることを前提で、10秒毎に200フレームとかで1時間でしょうか。これだと300GBくらいになるので、トータル1TBの空きスペースがあっても高々最大3セットで、いかにいらないファイルを早く消せるかの判断が重要になってきます。私の場合、性格的に本当に要らないとわかるまではすべてのファイルをとっておくタイプなので、この方法はちょっと厳しいかと思います。


この日のベスト画像

この日の、悪いシーイングながらも、その中でいいシーイングの時を選んで画像処理をしたものを載せておきます。11時22分1秒のもので、200フレームのうちAS!4で上位90%を選んでスタックしています。細部出しはImPPG、コントラストとカラー化はSolar Toolboxで仕上げにPhotoshopです。

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以前までの基準から言うと相当いい部類ですが、シーイングがいい時に選びぬいたベストとは流石に比べるまでもなく劣ってしまいます。でもこのレベルの画像が、シーイングが多少悪くてもほぼ確実に撮れるとしたなら、 全然悪くないのかと思います。


シーイングが効く状況

少し補足です。前回記事はシーイングの時間変化の話でした。この記事は結構インパクトがあったらしくて、個別にネットや電話で何人もの方から直接質問がありました。


質問に答える中で一つ気づいたことがあります。それは「シーイングが効くのはある程度の分解能が出てから」ということを伝えるべきだったということです。

例えば口径4cmのPhoenixなどは、実際にはシーイングはほとんど効かないでしょう。実際にはもっと長焦点、大口径になってきて初めてシーイングが効いてきます。

太陽撮影の分解能に関係することとして、より効くものや、簡単に改善できそうなものから順に挙げていくと、
  1. カラーカメラかモノクロカメラか
  2. カメラのピクセルサイズ
  3. 鏡筒の焦点距離
  4. 口径
  5. シーイング
などといった感じでしょうか。もちろん、機材の質、環境、撮影状況などによって順序は多少入れ替わりますし、実際の分解能はこれら全ての項目できまる個々の分解能の2乗和のルートになります。一つでも悪い分解能があるとそれが支配的となり、それを解決しない限り他のものをどう改善しても無駄になります。そのため、分解能を改善しようとするなら、一番効いているところ( 一番悪いところ)を改善するのが鉄則となります。

  1. 例えばカラーカメラかモノクロカメラかは、ピクセルサイズが同じだとしても単純に分解能が倍になるのでかなり大きな効果です。Phoenixのような鏡筒の焦点距離が短い400mm程度の場合でも、カラーかモノクロかの違いは効いてくるでしょう。
  2. 同様に、モノクロにしたとしてもピクセルサイズが小さい方が分解能としては有利になってきます。
  3. 小口径の太陽望遠鏡は焦点距離も短いので、例え4cmクラスの口径でも焦点距離を伸ばすと分解能が増えるケースが多いと思います。焦点距離を伸ばす代わりに、簡単にはバローレンズを入れてもいいでしょう。
  4. カメラのピクセルサイズを小さくしたり、焦点距離を伸ばしていっても、あるところで望遠鏡の口径で分解能の限界がきます。こうなった状態で口径を大きくすると、大きな改善の効果が見えるはずです。逆にいうと、分解能を制限していないところを改善しても改善の効果はほとんど見られません。例えば、焦点距離が短い状態、ピクセルサイズが大きすぎる状態で口径を大きくしても、分解能に関してはほとんど改善が見られないということです。
  5. バローなどで焦点距離を伸ばしても、ピクセルサイズが小さいカメラを選んでも、口径の大きな太陽望遠鏡を手に入れても、いずれ分解能には限界が出てきます。その場合は、やっとシーイングが効いていると思っていいでしょう。特に日によって分解能が変わることが認識出るなら、おそらくシーイングが原因です。この状態なら、前回の記事でやったように、いいシーイングの時間帯を探すということが効果的になるはずです。
エタロンの性能差や精度差による透過波長幅の差はまた少し別の話で、解像度というよりはコントラストに効くといったほうがいいのでしょう。


まとめ

ある程度ですが、いいシーイングの持続時間みたいなものが見えてきました。現実的にはディスク容量からの制限の方がきつそうで、最もいいところを完全に逃さずにというのは難しそうです。でもまあ、1分くらいまでなら多少時間感覚を増やしても、かなりの確率でいい分解能を拾えるでしょうし、たとえベストでなくても適当な時間に撮るよりははるかにいいはずので、今後しばらくは現実的に処理できるくらいの時間とフレーム数で試そうと思います。

加えて、今後検証したいのが、動画ファイルからいいフレームを自動できちんと選べるかです。今はまだAutoStakkertの選択を信頼できないでいるので、自分で手作業でいいものを選んています。これが十分な信頼度で自動でうまく上位フレームを選択できるなら、何本かの動画を合わせて処理するとか、枚数が多くなっても対応できそうです。

太陽関連でまだまだやりたいことがたまっているのですが、未処理の撮影ファイルが残っていて、ブログ記事に書くことも追いつていないです。もっと時間が欲しいです。今後もしばらくは太陽ブームは続きそうです。





前回からの続きで、4月5日の太陽撮影の(その2)になります。


4月5日は快晴で雲のない時間帯が続いたので、大量に撮影したものがあって、その処理が長引いしてまいブログ記事を書く速度が全然追いついていないです。しかもその間に次の週末が来てしまい、新たな撮影が追加されてしまいました。前週のタイムラプス映像の処理がやっと終わったところで一旦記事にしておきます。


プロミネンスのタイムラプス映像

今回は太陽タイムラプスです。前回記事で見せた、太陽表面と周辺の画像撮影をした直後から、プロミネンスの連続撮影を開始しました。機材は前回記事の撮影と同じで、口径20cmのC8にPSTを取り付け、ASI290MMで撮影してます。赤道儀はCGEM IIです。

プロミネンスは大型のものの方が変化が見やすいようです。大型のもので、特に長く伸びている淡いところは変化が激しいと予測し、前回記事にも載せた東端に出ているプロミネンスを引き続き撮影することにしました。今回もカメラの長手方向に収まるように、カメラを90度傾けて撮影し、北が右側、東が上側になるようにしています。

PCの画面を見ると、1枚撮影した時よりも長いプロミネンスが伸びて出ているようなので、早く撮影を始めたいところです。撮影間隔と各撮影でのフレーム数は迷いましたが、1分おきに200フレームとしました。トータル時間もまだ決めてなかったので、とりあえず120枚で2時間としておきました。これは途中でやめる可能性も含めてです。

撮影が始まるとしばらく暇になるので、朝食と、もう一本の太陽望遠鏡を準備してました。ここら辺は前回記事に書いてますね。結局のんびりしていたら2時間が過ぎてしまっていて、PCを見たらすでに撮影が終わっていました。ところが、撮影したものを見てみると、30分を過ぎたあたりから少し雲が出ていて画面が暗くなっていたこと、長く伸びるプロミネンスはわずか30分でほぼ消えたこと、その後のシーイングは少し劣ることなどから、最初30分だけで処理することにしました。やっぱり早く撮影を始めれば良かったとこの時点で反省しました。

このプロミネンスタイムラプスの画像処理は、その後1日くらいで終えることができました。今回は静止画と同じく、見栄えがいいようにカラー化しています。カラー化する際、これまで色がなかなか安定しなかったのですが、静止画でいろいろ試して、やっと安定化する目処がついてきました。ここら辺の処理については別途記事にする予定です。

大まかな処理の流れは
AutoStakkert4! -> ImPPG -> PixInsight -> FIJI->ffmpeg
といったような順です。多数枚の連続処理なので、いつも仕上げに使っているPhotoshopだとちょっと面倒なので、今回はPhotoshopは使わないようにしました。
  1. ImPPGは細部出しと位置合わせをしています。プロミネンスは光球面と周辺部のコントラスト比が高いので、これだけでもある程度位置合わせできます。
  2. PixInsightはSolarToolboxで色出しと、Blinkで連番ファイルの書き出しです。
  3. 連続処理はImageContainereとProcessContainerを使っています。
  4. 位置出しは相変わらずFIJIが最強です。
  5. 動画化はffmpegです。

結果ですが、やはりシンチレーションが良かったのでしょう。動画にしてもそこそこ細部が出ています。


わずか30分ですが、プロミネンスの形も、長く伸びた筋も激しく変化しているのがわかります。ツンツン出ているスピキュールも分単位で出たり消えたりしています。光球面の模様に関しては、まだ精度よく出ているとは言えません。これは今後の課題でしょう。

1分おきでの撮影でしたが、これだけ激しい変化なのでやはり30秒ごと、できれば10秒とか20秒ごとでもいいかもしれません。特にスピキュールの出入りは相当速いようで、1分単位だと明らかに短すぎです。

1枚あたりのフレーム数の200枚ですが、この枚数だとやはり少な過ぎで、ImPPGでの細部出しの際に粒状のノイズが目立ってしまったのが気になります。これはフレーム数を1000枚程度まで増やすとかなり改善することはわかっているのですが、今後数時間単位の撮影を考えると、ディスク容量が足りなくなることは目に見えているので、できれば増やしたくありません。少なくとも今回の200枚では、ノイズ処理が必須でした。逆にノイズ処理を前提とするなら、200枚からどこまで減らせるかの方に興味があります。例えば、SharpCapのリアルタイム処理では100枚でもそこそこ見える画像になります。

フレーム枚数を増やすと、1ショットあたりの撮影時間も伸びるので、撮影間隔をあまり短くできないことも問題です。フレーム枚数を増やしても撮影間隔を短くしても、いずれもファイルの総量は大きくなっていきます。画質とディスク容量のトレードオフなのですが、今後もいい落とし所を探っていこうと思います。


太陽黒点周りのタイムラプス映像

プロミネンスタイムラプスの撮影が終了すると、そのまますぐに黒点周りのタイムラプス撮影に移りました。これも1分おきに200フレームで、2時間分撮影しましたが、こちらはそのうちの最後20枚だけ捨てて、約100枚を使うことにしました。

太陽表面は動きが少ないので2分おきでもいいと思っていましたが、まだよくわからなかったので今回は1分おきにしました。でも結果を見る限りかなり動きが速い部分もあり、1分で良かったと思っています。

プロミネンスとの処理の違いは、各種パラメータくらいで、大まかな行程はほとんど同じです。処理はその後数日けかてやっています。ある程度の時点で一度Xに投稿しましたが、コントラストがあまり高くなくて縞模様の動きがあまり目立っていないがどうしても気に入らなくなり、その後Photoshopのアクションの多数枚処理で色を変えたことが、プロミネンスの時の処理からの大きな違いでしょうか。

結果は以下のようになりました。変化がわかるように、25fpsで動画化してあります。短いので、よかったら繰り返し見てやってください。


出来上がった映像は、自分的にはかなりインパクトがありました。太陽表面はそこまで動いていないと思っていたのですが、一部は非常に激しく動いています。この激しく動いているところは、プロミネンスやダークフィラメントに相当する部分なのでしょうか?同じような模様に見えても、動きの差が場所によって全然違っています。

後半には小さいですが、一部フレアと思われる明るいフラッシュが見えています。フレアだとしたら、私としては初めて撮影できたことになります。


まとめ

今回、処理に思ったより時間がかかりましたが、できた太陽タイムラプス動画はすごいインパクトがありました。ずっと見てても飽きません。特に黒点周りの方は、最初の動画バージョンができた時に1時間くらい見続けていて、どこが面白くてどこの処理を変えたらいいとか、ずっと考えてました。

ちょっとした変更がとても大変だと言うことも今回実感しました。動画にして始めて判断できるところもあり、気に入らなくて途中のパラメータを触ろうとすると、最後までの処理を再び延々とやり直しになります。

今回時間をかけた甲斐もあり、方針も方法も大分見通しがついてきたと思います。今の機材でどこまで出せるのか、もう少し挑戦したいことがあるのでしばらくは太陽を続けようと思います。

ちなみに、この日の撮影だけでファイル総量は181GBにもなってしまいました。使わなかった動画ファイルを捨ててもこの量です。これからずっとタイムラプスを続けるとしたら、ちょっと考えたくなる量です。

次の記事はカラー化のことを書いておこうと思っています。











待ちに待った雲が全然ない昼間の快晴!タイムラプスも長時間できそうです。太陽撮影がはかどります。


この日の目標

最近太陽熱がずっと続いています。昼間は休みの日しか活動できないので、休みの日で且つ晴れの日が待ち遠しいです。2025年4月5日は午前中は晴れの予報で、午後からは曇りの予報だったので、休みの日には珍しく午前7時くらいには起きて準備を始めました。

この日の計画は盛りだくさんで、なんと太陽望遠鏡を2台も出すことになりました。撮影データとしてもかなりの量がとれたので、1回分の記事にはできなさそうです。元々考えていたのは
  1. いつもの口径20cmのC8+ASI290MM+PSTで黒点周りと大きなプロミネンスを一通り撮影。
  2. 同セットアップでプロミネンスのタイムラプス撮影を2時間くらい。
  3. 同セットアップで黒点周りののタイムラプス撮影を2時間くらい。
  4. 1台目のPSTをオリジナルに戻し、眼視と撮影
  5. 1台目のPSTを、初期の頃の魔改造に使っていた手持ちの口径10cm F10 (国際光器のMAGELLAN 102)に取り付け、ASI294MM Proで太陽全景を撮れるか試す。
  6. PSTの視野を広げるために少し改造。
  7. 改造後のPSTで10cm Mazaranで視野の広がりを確認。
  8. 改造後のPSTで20cmC8で視野の広がりを確認。
くらいでしょうか。最後曇ったので少し時間が足りませんでしたが、かなりのことはできました。


とりあえず撮影

とりあえず朝の早いうちに1の撮影は一通り済ませたので、まずはその結果です。あ、この日は結局昼すぐには薄い霞みたいな雲が全面に出てきて、それでも撮影やテストは続けたのですが、午後1時半には完全にぼやけ出したので撤収、そのあとは大量の画像をずっと処理してました。

画像処理については今回改めてかなり見直しました。例えば今回の画像はすべてカラー化してあります。カラー化してもモノクロに劣らないようなコントラストを安定につけることができるようになってきまひた。画像処理ついてはまた機会があったら別途記事にします。


まずは黒点関連です。最初は一番大きなAR4046です。番号はいつもの通り宇宙天気ニュースで調べてます。真ん中から少し西に寄っています。
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次は4048群です。こちらはこの日がほぼ真ん中です。大きな黒点に、細かい黒点がたくさん連なっています。
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小さな黒点群AR4049です。位置的には4046の真下あたりでしょうか。
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最後はかなり西に寄ったAR4044です。周辺部も入っているので、彩層面を反転しています。なので、一番白いところが黒点になります。
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次はプロミネンスです。大きなものが東の9時方向に出ていました。画像は横長の画角を生かすために90度時計回りに回転させています。
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画像を見てもわかりますが、この日は朝早かったこともあったのでしょうか、相当シーイングが良かったようです。どれもかなりの分解能が出ています。これくらいのものが撮影できると、画像処理は相当楽です。これくらいいつも撮影できるならいいのですが、これをコンスタントに出すのが当面の目標でしょうか。


全景を入れてみる

最初の一連の撮影の後、タイムラプス映像の撮影を開始しましたが、こちらは長時間なのでその間に他にやれることをやっておきます。

この日試したかったのは、なんとかして太陽の全景を一度に撮れないかということでした。ずっと以前、口径10cmで全景を出したことはあります。



この時は太陽活動はまだほとんど低迷期で、あまり表面の様子が分からなかったこと、その後画像処理技術も上がったことで、同じ機材でどこまで全景の模様に迫れるかという比較をしたかったのです。これはPhoenixだとあまりに簡単に、しかもかなり綺麗に全景が得られたことも影響しています。

まずは、昔やっていた設定と全く同じで試してみます。機材は口径10cm 焦点距離1000mmの国際光器のMAZELLAN 102というF10鏡筒にPSTを、カメラは視野の広いフォーサーズのASI294MM Proです。これで太陽を見てみますが、本当になんとかギリギリで全部視野内に入ります。でも相当厳しいです。

面白かったのが、鏡筒の先端につけるキャップが2段構造になっていて、真ん中の径4cm位の穴を開けると、明らかに視野が狭くなることでした。これだと全景が入りません。実は最初に4cmで試したので、あれ?以前は入ったのにとびっくりしました。その後に、キャップを全部取り外し10cmをフルで使うと、太陽全景がギリギリですが入ってきて、以前と同様になったというのが実際です。

確かに4cmに絞ると視野は狭くなりそうなのですが、なんでそうなるのかまだいまいち理解できていません。光は対物側のいろんな方向から入ってくるので、たとえ先端で口径を絞っても、暗くなることや周辺がぼやけることはあったとしても、あからさまに視野が狭くなることはないと思っていました。これはF10という平行光に近いのが効いているのでしょうか?たとえそうだとしても、少し定量的に理解しておきたいと思いました。

いずれにせよ10cmをフルに使っても、まだ太陽全体を一度に見るにはまだ視野はギリのギリです。視野を制限しているもう一つ怪しい場所はBFの径です。焦点近くに置くとは言え、わずか5mm程の直径なので、ここで視野が制限されている可能性が十分にあります。大口径のBFを手に入れられればいいのですが、太陽望遠鏡の中でもエタロンに次いで高価な部品の一つなので、購入するとなると10万円以上の大きな出費になること間違いなしです。


BFの加工を少し

そんな理由もあり、BF部分を分解して少し調べてみました。以前も分解した通り、アイピース部分を外すと、ERFとBFに分けることができます。

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上がBRFで、下がBFになります。BFの径はかなり小さいのがわかります。BF部の蓋をさらにかに目レンチで外します。

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BF自身は直方体に近い形をしていて、太陽光が入射する面に金色のコーティングがしてあります。両辺の長さをノギスで測定すると、両方とも5.9mmでした。その一方、BFをマウントする台座と蓋は丸い穴が空いていて、その直径は台座側が5.2mmで蓋側が5.1mmでした。要するに、実際の径はBF自身でなく、そのマウント側で制限されているというとこです。高々0.7-8mmの違いですが、5.1mmから考えたら15%くらいの違いになります。

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大きさを比較しても、やはり穴の径よりもBF本体の方が大きく見えます。

今回は穴を広げすぎて光が漏れたりしないように少し余裕を見て、手持ちの5.5mmのドリル刃を使ってマウントの台座と蓋の径を広げることにしました。ドリル刃がスポスポが通るくらいにするので、5.6mmくらいなっているとして、元の最小径の5.1mmから見たら1割程度の拡大になります。

ドリルで穴を開けた後、MAZALLANで再び、他の設定は何も変えずにカメラで視野を見てみると、おお、確実に太陽全景がはっきり見える範囲が増えています。


全景のテスト撮影

ここで太陽全景を撮影しておきます。まだ周辺減光の影響がかなり残っていることは確かで、そのせいもあるのか太陽中央と端の方の輝度差が激しく、端の方のHαの模様は画面を見ただけではほとんど見えませんでした。その後、画像処理をして輝度差を落としてみると、多少なりとも模様は出ているようです。
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ただ、これで十分かというと全くそんなことはなくて、やはりエタロン径とBF径的に無理があるのと、カメラもフォーサーズみたいなセンサー面積が大きいのを使うのはもったいないです。しかもピクセルサイズの粗い294では口径10㎝を生かせてるとも到底思えません。もっと焦点距離を短くして、見える太陽径を小さくして、ピクセルサイズの小さい小面積のCMOSカメラを使った方が、PSTのエタロンのいいところを使えるはずなので、有利なはずです。

手持ち機材で、全景を撮るだけでこんなに苦労とするならとも思ってしまいます。今迷っているのは、Phoenixを購入するかどうか。これならかなり楽に全景が撮れますし、今後改造するときにも特に精度のいいエタロンは格好の素材になります。でもそもそも、手持ちのPSTも2台とも中古のジャンクで格安で買っていて、C8も3万円ほど、MAZALLANはタダで譲り受けています。太陽関連で全部合わせても新品の少し大きめのBF一個の値段にも及ばないので、このまま格安路線を続けれればと思っています。というか、これくらい安価でないと改造なんて怖くてとてもできないです。あー、でもPhoenixのエタロンかなりよかったのでやっぱり買っておいた方がいいかなー?


続きは次回

とりあえず今回の記事はこんなとことにしておきます。タイムラプスで結構すごいのが撮れたのですが、ちょっと安定度に難ありで、処理に時間がかかりそうです。






年明けからCP+での講演のためにでPhoenixに付き合って以来、太陽熱が再燃しています。でもPhoenixはもう返してしまったので、手持ちのPSTで楽しもうと思います。
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CP+が太陽熱再燃のきっかけに

昨年度の振り返りでも太陽にはほとんど触れなかったことからもわかるのですが、ここしばらく太陽から離れてしまっていました。たまに撮影とかするのですが、あまり進展がないのでイマイチ盛り上がっていませんでした。理由としては
  • 粒状斑が一向に分解能よく見えてこない。
  • C8は焦点距離が長いので、PSTでみると良像範囲がどうしても限られてしまい、画面の中で分解能がいいところと悪いところに差ができてしまう。
  • 良像のところは満足だが、結果がシンチレーションに依ってしまい、機材ではもうこれ以上伸ばすのはあまり簡単ではない。
などでしょうか。何か機材などで進化したことを撮影で確認するというのが一番楽しくて、進化がないのに撮影を続けるのは結構苦痛になってしまうのです。

太陽が盛り上がってきた理由はいろいろあります。例えば、
  • 今太陽活動の最盛期か少し過ぎたくらいなのに、この時期を楽しまないのは勿体無い。
  • Phoenixのエタロンの精度がかなり良かったので、PSTエタロンをもう少し活用できないか考えたくなった。
  • CP+のサイトロンブースでのフォトコンの裏側の話で、選考には残らなかった画像の中に、ものすごい分解能の粒状斑を写した画像が紹介されていた。
など、CP+のスライドを作っていた時とか、CP+で聞いたセミナーがきっかけだったりします。


良像範囲の検討

良像範囲がどんなメカニズムで決まっているかを確認するために、普段使っているASI290MMよりもセンサー面積の大きいApollo-M miniで見てみました。どうやら光がセンサーまで届く範囲はそこまで大きくはなく、円状になっているのがわかります。右と左では、左の方がより暗くなっているようです。

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さらに、エタロンの良像範囲はリング状に分布していることがわかりました。上のそこそこエタロンの回転角があっている場合から、エタロンの回転角を変えていきます。
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どんどん中心が明るくなって、同心円状に広がっていく様子がわかります。明るくなっているところは波長がずれているところにあたります。

現在2台のPSTを所有していて、以前良像範囲については一度検討しています。1台目はリング状に、2台目は線上に良像範囲が変化すると書いてありますが、どうもこれは見ている場所が違うだけで、結局は2台ともリング状に変化すると思って良さそうです。


ペンタプリズムの位置調整

実は先々週、1台目のPSTの箱の部分の蓋を開け、ペンタプリズムの位置を動かしていろいろ調整してみました。
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元々こんな風ペンタプリズムは組み込まれています、下に見えるバネ付きの棒が焦点合わせのつまみで、これが回転することでペンタプリズムが載っている台が前後します。上の黒い塊はただの押さえで、さらに上に貼り付けられたフェルト生地で箱の上蓋に接していて、フェルトで滑りやすくなっています。

これをはずして、下の台座からプリズムをカッターナイフを使って外しました。
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上の良像範囲の画像で見た、画面の左側の方が暗いのを、左右均等にしようとかしたのですが、ペンタプリズムの位置をどう変えても、この状況を大きく変更することはできませんでした。光が当たる範囲を上下させることはできるのですが、左右に変化させることはほとんどできません。どうやら、光がペンタプリズムの厚みで制限されてしまっていることが原因とわかってきました。

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手前から光がペンタプリズムに入射し、奥の面、右側の面と2回反射し、左側に抜けていきます。左の黒い壁に投影されている光を見ると、ペンタプリズムの厚みで上下がカットされているのがよくわかると思います。

1台目のPSTのペンタプリズムの位置をある程度最適化すると、2台目のPSTの見え方にかなり近くなりました。左側がどうしても欠けること、エタロンの回転角でリング状に良像範囲が変わることは2台ともほぼ同じです。なのでこの見え方はPSTにある程度固有のものと捉えて、今回はこれ以上は諦めることにしました。


2つのピント合わせの使い分け

今週になってもう一つ、C8でのピント合わせと、PSTでのピント合わせのどちらが得かを検討してみました。

結論としては「PSTのネジを締め込んで、C8でピント合わせした方が良像範囲が多少広がる」ということがわかりました。
  • PSTのネジを引き出して、C8でピント合わせ: PST内での光路長が長い場合
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  • PSTのネジを締め切って、C8でピント合わせ: PST内での光路長が短い場合
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画像を見比べると、明らかに下の方が両像範囲が大きいです。例えば、わかりやすいところでは、四隅の黒い部分は下の方が小さくなっています。

理由を考えてみます。PSTのネジを締め込むということはペンタプリズムがよりアイピース口に近づくということになります。PSTのピント合わせがどんな位置にあるにせよ、C8の焦点調整範囲ははるかに広くてセンサー面に焦点をあわせることができます。最終的にピントが合った状態では焦点位置はセンサー面で固定すると考えると、PSTの焦点つまみをいじることは「C8の副鏡からセンサー位置の間のどこにペンタプリズムを置くか」ということに他なりません。すなわち、PSTの焦点つまみを締めることはペンタプリズムをより光の径の小さい焦点側に寄せるということになります。上でも書いたように、ペンタプリズムの厚みで光がカットされていると思われるので、そのカットをできるだけ小さくするためにペンタプリズムを焦点側に寄せると、より良像範囲が広がるということで、ある程度納得できます。


カメラセンサーの位置

さらにもう一つ試したことが、カメラをアイピース口にの奥まで差し込んだ方がいいのか、抜き気味で遠くで固定した方がいいのかです。

現在一番径が小さいところはBF部分です。直径5mmほどでしょうか。ここで焦点になれば一番得なはずなので、最終的に焦点が合うはずのセンサー面がBFに近い方がいいと予測しました。でもどうも結果は逆で、センサー面を遠くに置いた方が良像範囲が広がるようなのです。
  • カメラをアイピース口の奥まで押し込んだ場合
09_51_38_Sun_00001 09_51_38_WithDisplayStretch_camera_near

  • カメラをアイピース口で少し浮かせて固定した場合
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わかりにくいですが、下のカメラを離して固定した帆が、特に画面右側の広がりが明るくなっています。

画像を見てピントが合った状態にしてから、カメラとBFとERFを外して、PSTの出射口から出てくる光に手を当ててみると、どうも径が一番小さいところはセンサー面が元にあった位置ではなく、もっとPST寄りに見えます。例えばここの図にもあるように、確かにセンサー面である広がりを持つので、最小径はその手前ですね。

というわけで、今回の場合はカメラはある程度離した方がいいことがわかります。必要なら、もっと積極的にBFに焦点を持ってくるようにきちんと計算して距離を決めてもいいかもしれません。


エタロンの良像範囲

いずれにせよ、以前よりも良像範囲が少し広がったというのが、先々週と今週でやったことの成果です。良像範囲という言葉を適当に使ってしまっていますが、今回改善した良像範囲はあくまで光の欠けが小さくなった部分のことで、エタロン起因の波長のズレによる良像は何ら改善していないです。

エタロンの像がどうしてリング状になるのか少し考えてみました。

元々PSTのエタロンはF10を仮定して前後にレンズが置かれています。このF10の傾きに合わない光線ならリング状に波長ズレが起こってもおかしくないです。でもC8はF10で大丈夫なはずと思っていましたが、よく考えたらC8はカセグレン系鏡筒です。主鏡と副鏡の組み合わせで短い距離でF10を実現しているだけなので、F10とは名ばかりで光線の収束具合は違うはずです。最初コレか!と思ってレンズを用意する必要があると思ってC8の設計を調べたのですが、このページにある8インチのシュミカセの典型的なデザインを見ると、副鏡から焦点までの距離が127+240+127~500mmで光の半径が24mm (~直径50mm)になるので、副鏡より後ろはF10と思って良さそうです。このデザインがC8と同じかはわかりませんが、あまり変な設計にするとは思えないので、とりあえずエタロンが入る位置でのF10相当の傾きは正しいと思うことにします。

そうすると他の可能性ですが、例えば熱レンズ効果でしょうか?エタロン手前にUV/IRカットフィルターが入れてあるとはいえ、エネルギーの半分くらいを占める可視光はそのままエタロンに入り得るので、そこそこの光量になります。エタロンでは櫛状に入ってきた光が10回程度のオーダーで折り返されるので、もしエタロンにロスがあったら中心部が温まりエタロンに温度勾配ができる可能性があります。温度勾配はレンズと同じ効果をもつので、平行光にならずにリング状のモードが見えてもおかしくはありません。

これを確かめるために、エタロンに入る光量を下げてみました。具体的にはUV/IRカットフィルターの後にMarumiの赤いR2フィルターを追加しました。そうです、以前熱で割れてしまったものと同じフィルターです。波長域で考えると少なくとも光量は4分の1くらいにはなるはずなので、もしこの熱レンズ効果が犯人なら何らかの違いが見えることでしょう。でも結果はほとんど違いは分からず。どうやら熱が原因ではないようです。

ちなみに今回は手前にUV/IRカットフィルターがあるためにR2フィルターはほとんど熱くもならず、そのまま入れておいても問題なさそうなので、入れっぱなしで残しておきました。やはりUV/IRカットフィルターだけでもかなりの効果があり、そこの反射光を実際に見てみると、十分に広がって対物側に返ってきていることもわかりました。集光はほぼされていないので、たとえ仮に目に入ったとしても、太陽を直接見るよりもエネルギーは小さいはずです。

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ちょっとわかりにくいですが、C8の対物側のカバーの裏に鏡筒内からの
反射光を当てています。右に見える半円の明るい部分が鏡筒内の
UV/IRカットフィルターで反射された光です。

というわけで、エタロン部の改善は引き続き課題なのですが、もうこうなってくると本当にエタロンの精度そのものが悪いという結論にもなってきます。この件、今後もう少し調べます。


とりあえずの撮影結果

先々週の3月9日と、今週3月22日に、調整作業のついでにC8で太陽撮影しました。9日はシーイングがボロボロでしたが、22日ものは多少見ることができそうなので、ここに載せておきます。

黒点AR4030まわりです。
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カラー版です。
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上の画像はトリミングしているのでそこそこ解像度が出ているのかと思いますが、元の画像を見るとやはり全面一様というよりは、中心以外はかなり粗く、ボケているのがわかります。
10_15_36_lapl3_ap530_IP
これでも良像範囲の調整はしたあとなので、以前よりは多少マシになっています。

その後、次の日の3月23と合わせてPHD2のガイドなども試しましたが、これは次の記事で書くことにします。

2週連続の太陽撮影です。七夕の日の日曜の朝の撮影です。


3度目の朝の撮影

朝の撮影は5月18日(土)6月29日(土)に続いて今回で3回目です。過去2回解像度もそこそこ出て、前回は粒状斑を出す手法も少しわかってきました。今回はどうだったでしょうか?

まずHα画像ですが、これを撮影して画像処理をすることでシンチレーションの指標になるようになってきました。 具体的には、ImPPGのLucy-Richardson deconvolutionのsigmaの値が小さくて済む場合はシンチレーションがいいです。細かい模様が残ると言う意味です。シンチレーションが悪いとそのsigmaをある程度大きくせざるを得ず、解像度はそれなりに悪くなっていきます。前回は1.5程度、今回は2-3程度が良かったので、シンチレーションは少し落ちたくらいかと思います。それでも十分良かった方だと思います。

撮影条件は前回とほとんど同じです。違うところは三脚にゴム板を置いたこととだけですが、風が結構強かったので、揺れは結構大きかったです。やりたかったPSTの調整は暑くて、やる気になりませんでした。この日は朝8時頃からもう30℃になっていてたので、準備も含めて、Hαも白色撮影も短時間で済ませました。

まず一番大きな黒点AR3736です。
09_00_42_lapl2_ap2554_IP3_7_8_ABE3_ABE4

東側のAR3738群です。プロミネンスも同じ画面に収めてみました。
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西端に近いAR3733です。
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この結果を見る限り、シンチレーションはやはり前回の方が良くて、それに隠れてか地面の揺れを防止したことの影響は見えていなさそうです。


粒状斑

今回も白色光を撮ってみました。違いは、前回初めて使ったGreenフィルターに加えて、UV/IRカットフィルターを加えたことです。後のセットアップは同じで、C8にOD5のAstroSolar Safety filmをつけ、Apollo-M MINIで撮影しています。まだOD3.8のフィルターは準備ができていません。

まずは前回撮り忘れたPowerMATEなしの画像です。黒点の数はだいぶ寂しくなっているのがわかります。1週間で結構変わるものです。
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次にx4のPowerMATEを入れた画像です。前回試したように、事前にser playerで模様をある程度出しておきます。
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まあ、前回と同じくらいのレベルまで出ているので、再現性もあると言えるかと思います。でももう少し出て欲しいです。何が問題なのでしょうか?


まとめ

朝の撮影はやはり良さそうです。特に夏は暑くて早くから太陽も高くなるので、早いうちにパッと撮影してしまうことがいいでしょう。粒状斑はまだ一段階くらい何か謎がありそうな気がしています。実は今回PSTでHαから大きくずらして白色光に近いものを撮影したり、Photosphereも使ってみましたが、前者は解像度は出るものの粒状斑はでず、後者は解像度がでずで諦めました。次の一手が機材なのか、シンチレーションなのか、画像処理なのか、もう少し考えたいと思います。

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