2024年11月2日(土)、長野県の大鹿村で開催された「長野県は宇宙県」の第9回ミーティングに参加してきました。参加といってもゲスト参加で、昨年の小海で代表の方から講演をお願いされたからです。
「長野県は宇宙県」は、星がよく見える長野県をアピールするための集まりで、メンバーはアマチュア天文家を中心に、学芸員の方や研究者の方も参加されているようです。各メンバーはそれぞれローカルの天文同好会や各機関に所属している方が多く、長野全県から賛同する方が集まっていて、「長野県が宇宙県」そのものは、ローカルな地域の天文同好会というようなものではないようです。今回は年1回の全体ミーティングで、会の創立8年が過ぎ、9年目に入ったということで9回目ということです。メンバーの方は皆さんとても熱心で、ミーティングの途中も盛んに意見が交換されていました。基本的に星がかなり好きな人の集まりのようで、各自の思いを熱烈に語っている方も多かったです。
場所は大鹿村でしたが、私自身は大鹿村自体は今回で2度目で、昨年の観望会に参加させてもらいました。その時にお世話になったKさん、ドブ村長とあだ名のついている30cmのドブソニアアン持ちの村長、夜遅くまで話したギルモアさん初め観望会でお会いした方々、さらにはコロナ前に何度が訪れた木曽シュミットでお世話になった方々など、懐かしい方達との再会も嬉しかったです。
講演自体は午後からだったのですが、少し早めにと思い朝6時過ぎに自宅を出ました。接近しつつあった台風自体はまた遠くて、その日のうちに温対低気圧に変わるとのことなので大丈夫だったのですが、大雨の予報が少し心配でした。途中の道で激しく降ったところはありましたが、特に危ないことなはく、結局高速は使わずに富山から安房峠経由で奈川渡ダムのところで南下して木祖を抜け、権平トンネルを通って伊那に出て、そのまま下道で大鹿村まで移動しました。10時半頃に着いたので、かなり順調だったと思います。
朝ごはんを食べ来なかったので、到着後すぐに大鹿村の道の駅で定番の鹿肉ステーキ定食を食べようとしたのですが、オープンは11時から。時間があるので、事前に場所だけ確認しておこうと、道の駅向かいにあるミーティング会場に足を伸ばしたら、何ともうすでに何か会合が何か始まっています。
どうやら、午前中は別の「第14回長野県星空継続観察ミーティング」というのが開かれているらしく、早速受付だけ済ませて少しだけ覗いてみました。内容は長野各地で行われている、星空の明るさ観察の集計結果についてでした。こういったところに全県で力を入れることができているのも、「長野県は宇宙県」が音頭をとってやっているからだとわかりました。そもそも、ローカル天文同好会がいくつもあり、それらをまとめるような役割を担っているというので、やはり長野は教育県であり、天文も多分に漏れず盛んで、しかも県の面積の大きさもあってかかなり広い範囲で活動されているのが印象的でした。でもやっぱりお腹が空いていて、11時頃にこっそり抜け出して、鹿肉ステーキを食べにいってしまいました。
道の駅のレストランはすでにオープンしていて、どうやら1番乗りでした。鹿肉焼きに定食というのもあったのですが、ちょっと迷って結局食べ応えのありそうなステーキにしました。味付けは塩のみ。塩といっても大鹿村で作られた地元名物の塩です。今年に引き続き、臭みも全くなく、付け合わせの豆腐も合わせてとても美味しかったです。
お腹も膨れて、再び午前のミーティングに参加。もうまとめ近くになっていて、私は講演の準備で少し内職です。講演のお客さんは一般の方が多いかなと思っていたのですが、受付の方と少し話した限り宇宙県のメンバーが多く、かなり詳しい人の方が多いとのこと。詳しい人も面白いと思えるように、少し話の構成を変えました。そんなこんなで12時過ぎには午前のミーティングは終了し、昼ごはんの時間に。私はすでに食事は済ませているので、プロジェクターの表示のテストです。今回はZoomで参加されているメンバーもいるということで、プロジェクターに有線接続ではなく、Zoomに直参加しての画面共有で、Zoomで参加されているメンバーと、Zoom画面を表示している会場プロジェクターも同時に表示するようです。でもこの場合、プレゼンで使うMacから見ると複数モニター扱いにならないので、発表者ツールが使えなくなることに気づきました。その場で検索すると、フルスクリーンでZoomの画面共有で表示して、パワポの画面を右クリックして「発表者ツールを使用する」を選択すると、無事発表者ツールを使えるようになり事なきを得ました。ただし、自分の画面上で見ているマウスの位置と、Zoom上で見えているマウスの位置が違っていたようで、これは話がずいぶん進んでから気づいたので、今後注意が必要です。
Samとしての講演内容は電視観望に関してで、最近ものすごい勢いで普及しているスマート望遠鏡を少し紹介しました。スマート望遠鏡は全般の傾向として、どんどん小さく、軽くなってきています。特に前日の11月1日に詳しいスペックが公開されたSeestar S30について、口径わずか30mmでよく見えるはずだということを話しました。というのも、私の電視観望のメインは口径3cmのFMA135で非常によく見えていて、観望会でもすでにいつも多くのお客さんに楽しんでもらっているからです。その後、スマート望遠鏡と自分で組み上げるカスタム電視観望の比較を、スライドで例を見せながら解説しました。スマート望遠鏡も何種類かの口径や焦点距離がラインナップされてきました。従来の望遠鏡も一つでは全ての天体に対応できなくて何種類も使い分けるように、今後は天体に合わせてスマート望遠鏡も何種類も持つことになるのかもしれません。カスタム電視観望はむしろ機材を自由に入れ替えることは普通のことなので、スマート望遠鏡の次の段階として、カスタム電視観望に興味を持ってくれたら嬉しいです。
私の講演終了後は宇宙県のメンバーの発表が続きます。午前中にも議論されていた星の明るさ計測のことや、宇宙県としての観望会の対応について、発表だけでなく意見も非常に盛んに交換されていました。皆さんかなり星が好きで、天文環境やアピールの仕方など、真剣に考えていることが伝わってきました。
残念だったのは、天気が悪くてミーティング後の電視観望実演と、楽しみだったバーベキューが中止と事前に決まってしまっていたことです。バーベキューの代わりに希望者を集めた座談会が企画されました。20人くらいはいましたでしょうか。みんなでお弁当を食べて、その後輪になって座って自己紹介と、長野県は宇宙県のもっと突っ込んだ議論がなされました。観望会を依頼され宇宙県としてどう対応しようとしているかが課題の一つでしたが、私も部外者ながら富山県天文学会の例を引き合いに、少し議論に参加させて頂きました。
外の空の様子見にいったメンバーによると、少し星が出始めているようです。我々も外に出て空を見上げると、一部ですが雲の切れ間からいくつか星が見えます。天気予報では、台風一過でしょうか、晴れていく予報のはずです。早速駐車場に戻り、車の後ろの空いているスペースにFMA135+Uranus-Cとトラバースで、いつもの電視観望をセットアップしました。口径3cmなので、DWARF3やSeestar S30に興味がある方には参考になったかもしれません。
とにかく興味を引いたのはその小ささで、折りたたみ机の脇に置いたのですが、あまりに目立たなくて本体が蹴飛ばされないように、目印の電球を置いておきます。どなたかが「三脚は使わないのですか?」と質問されたので、「三脚も小さいのでわかりにくいかもしれませんが、きちんと使ってますよ」と答えると、「なぜ大きな三脚を使わないのですか?」と次の質問が。その答えは「カバンからスッと出したいからです」と言って、普段背負っているリュックタイプのカバンを見せます。PCが入るくらいのごく普通の大きさなので、そこにすっぽり入れるためには、三脚も小さくする必要があります。別の方が、FMA135のすぐ脇に置いた電球や三脚の小ささも含めて「何もかも今までと違う...」と呟いていました。電球も普通なら問題になるところですが「蹴飛ばされない」という目的があることも一応理解していただけたようです。
残念ながら天気が回復せずに、どんどん悪化していったので、見せることができたのは最初の頃の雲越しのアンドロメダ銀河だけでした。それでもM101やM32、わずかですが腕の構造も確認はできたので、かろうじてカスタム電視観望がどんな感じが見せることだけはできました。その後は目では星は全く見えなくなってきて、PCの画面上でも運がいいと数個明るい星が見えるだけで、プレートソルブもままならなく、星雲などは全く見えないので、ここで撤収としました。それでも、周りにいる方と機材についてもいろいろ話をする時間は十分取れたので、ほんの少しの晴れ間だけでもあってよかったです。
この時点で21時頃だったでしょうか、その後は希望者を募り、2次会で宿泊予定の宿に移ることになりました。地元の長野の方が多いので、その日のうちに帰る方も多く、ここでで半分くらいの方とはお別れとなりました。
この日の宿泊場所は、古民家を再生した1棟貸しの民宿「イナンクル」で、中はきれいにリフォームされていて、薪ストーブもあり、暖かくてとても雰囲気がいいです。最大10人まで泊まれるらしく、人数によって料金が決まるとのことで、少人数で利用することも可能だそうです。天文民に特筆すべきは、裏の少し上がったところにに駐車場としても利用できる、比較的広い広場があることです。視界もそこそこひらけていて、望遠鏡を展開するには十分です。合宿とかにも利用できそうなので、大鹿村の素晴らしい空の下で、仲間と撮影なども兼ねた宿泊施設としても利用できるのかと思います。
2次会は10人ほどは集まったでしょうか。その中でも、4人の女性の方が大活躍してくれました。お酒やつまみだけでなく、焼肉なども出てきて、かなり豪華な2次会でした。みなさん本当に星好きの方ばかりで、話も盛り上がり、十二分に楽しむことができました。特に、昼間のミーティングのネットワーク機器のセットアップから私の講演の接続のお手伝い、宿の手配や食材の買い出しまで、O代表の実務的な補佐と言われているMさんには、今回何から何までお世話になり、本当に感謝しています。2日間どうもありがとうございました。
このMさん含め、塩尻3人娘と言っていいのでしょうか、いつも一緒に行動しているという女性お三方の星見に対するパワーに圧倒されました。実は昨年の大鹿村でもお会いしているのですが、そのときはそこまでお話しすることはできませんでした。今回夜遅くま色々聞かせていただいたのですが、かなりの頻度で星見スポットを行き来しているみたいです。長野県は面積が広く、数多くの有名星見スポットがあります。南北で天気も全然違い、しかもちょうど塩尻市は高速の分岐点にも近く、どこにいくにも便利とのことです。その日の天気を見て決めるとのことで、どこに行くにも1時間程度で移動でき、平日でもお構いなしに行動しているようです。3人のうちお二人は学校の先生のことで、かなり忙しと思うのですが...。
結局この日、宿泊までしたのは7人でしたが、女性4人は全員宿泊、塩尻3人娘グループは次の日もどこかに星を見にいくとのこと。私は体調がまだ戻りきっていないこともありますが、基本的に宿泊から帰った日は普通は休むようにしています。とにかく、3人組ですごいパワーですごく楽しそうでしたが、あまり無理をして事故などないよう、またいつかお会いした時に武勇伝をお聞かせ頂ければと思います。
結局午前1時半頃まで盛り上がっていたと思います。寝るのは畳の部屋で、二間あるので男女別にしました。次の日曜日は仕事がある方もいて、朝は早くから起きていて、私は6時半過ぎに起きたのですが一番遅かったです。朝食もホットドッグにフレンチトーストと、朝からかなり豪華です。朝食中も朝食後も、話が途切れることはありません。
午前9時前くらいでしょうか、片付けとその後に宿の周りを少し見て、解散となりました。とても楽しい時間を過ごすことができました。前日の講演を含めて、宇宙県のみなさんには本当にお世話になりました。どうもありがとうございました。
昨日の雨と打って変わって、この日は朝から一面の青空の快晴です。宿を後にし、一旦道の駅に寄ってから、次の目的地に向かいます。
次は、大鹿村を訪れた天文民に最近密かなブームになっている「HAKKO OOSHIKA」 です。1500メートルの眼下から見下ろす絶景とともにランチを食べることができるそうです。大鹿村の道の駅からも、距離だけは11kmとたいしたことはないのですが、途中の山道が過酷で、時間はGoogle mapで調べると40分かかると出ます。11時からオープンとのことですが、食事が出るまでに時間がかかると聞いたので、少し早めの9時半頃に大鹿村の中心部を出ます。
途中の山に入ってからは確かにかなり細い道で、車がすれ違える場所が限られています。行きはまだ朝早かったのでほとんど対向車はいなかったですが、早めに食べ終わるとこれから来る車が多そうなので、帰りが心配です。
実際にお店に到着したのは10時10分くらいだったので、本当に40分くらいかかりました。まだお店は当然空いていませんが、もうとにかくすごい絶景です。標高が高いせいか、山の向こうの雲海の上にある山とかも見えます。
まだ11時のかなり前ですが、スタッフの方がテラス席の掃除を始めました。昨晩の雨がすごかったので、席は濡れたままです。一人なら予約なしでも大丈夫とのことなので、11時まで待つことに。10時50分くらいになると、お客さんが続々と車で到着するので、入り口のところで待つことにしました。11時開店で店内に案内してもらい、早速名物のサーモンクリームパスタをセットで、しかもパスタ大盛りで頼むことにしました。注文は席に取りに来てくれるのではなく、1階のレジのところに行って前金で払います。早めに入ることができたので1番で注文することができました。早めの注文がラッキーでした。「この日はパスタの在庫が入ってこなくて、申し訳ないのですがサーモンクリームパスタは提供できません」と、他のお客さんにそんな説明をしています。私も心配になったので、途中聞いてみたら私の分は「OK」とのこと。本当にラッキーでしたが、むしろ大盛りを頼んでしまって申し訳なかったのかもしれません。
最初は店内に案内されたのですが、外に出てみるとちょうどテラス席に日の光が当たり始めていて、しかも1500mという標高なのに、この日はほとんど風が無かったので、席を外に移動してもいいか聞いたら「ぜひ」とのことでした。
外のテラス席に座って、太陽がポカポカ暖かく、目の前の景色を見ているだけでもうかなり満足なのですが、出てきたパスタセットもかなり満足でした。サーモンクリームの名に負けないくらい、サーモンの身が塊でゴロゴロと入っています。付け合わせの野菜もパスタのアクセントになります。サラダと合わせて栄養たっぷりでしょう。大盛りにしたからでしょうか、量的にもかなり満足でお腹いっぱいになりました。本当はミニスイーツセットがオプションであって、その日はチーズケーキだったみたいでかなり食べたかったのですが、最近甘いものを控えているので我慢しました。でもさつまいもの甘煮の桃和え、葡萄と柿がデザートで付いていたので、もうそれで十分でした。食べ終えた後もドリンクのカフェオレと景色でしばらく楽しんでいました。山道は険しいですが、十分に来る価値のあるところで、ここでしか味わえないようなかなり贅沢な時間となりました。
帰りにスタッフの方に「とてもおいしかったです」と声をかけて、HAKKO OOSHIKAを後にしました。心配だった帰り道は、5台くらいの車とすれ違いましたが、いずれも少し道幅が広いところで問題なくすれ違うことができました。
大鹿村から自宅までは下道だと4時間半ほど、でも山の上のHAKKO OOSHIKAからだとさらに40分かかるので、5時間以上の運転になります。レストランを出たのが12時過ぎなので、順調に行っても夕方になりますです。あまり無理をせずに、ここで自宅に帰ることにしました。
帰り道は152号線を通って伊那市の東側を北上して抜ける道を選んだのですが、途中面白そうなパワースポットらしきものがありました。少し覗いてみると、「ゼロ磁場」とか「ゼロ磁場の秘水」とかなかなかヤバそうなことが書いてあります。どうも、「分坑峠(ぶんぐいとうげ)」という名所らしくて、大鹿村から続いている中央構造線の上では、断層状の2つの地層がぶつかり合って磁場がゼロになるということらしいのです。
このことは152号線を北上して山道を抜けたあたりにある道の駅の「南アルプスむら長谷」にある観光案内所の詳しい説明を見て、やっとどんなものかわかってきました。ここの説明はまともで、きちんと中央構造線や、その断層の交じり具合が見える「露頭」について詳しく説明しています。その中に「ゼロ磁場や、身体をセンサーとして確認された(???)という気については科学的に証明されたものではないので、その事をここで取り上げて解説することは適切ではない」というような至極真っ当なことが書かれています。でも「観光スポットとして人が集まっているのを否定することはない」というようなも書いてあるので、エンターテインメントとして楽しんでいこうというものかと思います。分杭峠には自家用車で行っても停める駐車場のようなものがなく、この道の駅から出ているバスを利用することになるようで、通りがかりに見た分杭峠のバスの折り返し場には、この日もたくさんの人が居ました。
昔アメリカに住んでいた頃に、西海岸の1号線のロングドライブの途中で、わざわざサンタクルーズの山奥にある、強い磁場で重力が斜めになると言われている「Mystery Spot」という観光地に寄ったことがあります。そこのスタッフに「ただの目の錯覚だ」と食ってかかったのは若気の至りです。今回のゼロ磁場については憤慨などすることなく、暖かい目で楽しませていただきました。
実は、講演前の日も準備であまり寝てなかったので、2日連続で睡眠不足で、途中あまりに眠くなってしまい、権平トンネルの手前で仮眠をとりました。そのため自宅に着いたのは暗くなった18時過ぎでした。自宅についてから空を見上げると星が出ているので、頑張って撮影に行こうかとも一瞬思いましたが、流石に疲れていて早くにベッドに入ってすぐに眠ってしまいました。朝起きても快晴で、ちょっとだけ後悔しました。
今回は「長野県は宇宙県」の年一回のミーティングに呼んでいただき、とても感謝しています。いろんな方とお話しすることができて、とてもいい機会になりました。宇宙県の取り組みは素晴らしいと思います。今後もますます長野県の天文情報を発信して、いずれ全国規模で活動が広まっていくことを期待しています。
長野県は宇宙県
「長野県は宇宙県」は、星がよく見える長野県をアピールするための集まりで、メンバーはアマチュア天文家を中心に、学芸員の方や研究者の方も参加されているようです。各メンバーはそれぞれローカルの天文同好会や各機関に所属している方が多く、長野全県から賛同する方が集まっていて、「長野県が宇宙県」そのものは、ローカルな地域の天文同好会というようなものではないようです。今回は年1回の全体ミーティングで、会の創立8年が過ぎ、9年目に入ったということで9回目ということです。メンバーの方は皆さんとても熱心で、ミーティングの途中も盛んに意見が交換されていました。基本的に星がかなり好きな人の集まりのようで、各自の思いを熱烈に語っている方も多かったです。
場所は大鹿村でしたが、私自身は大鹿村自体は今回で2度目で、昨年の観望会に参加させてもらいました。その時にお世話になったKさん、ドブ村長とあだ名のついている30cmのドブソニアアン持ちの村長、夜遅くまで話したギルモアさん初め観望会でお会いした方々、さらにはコロナ前に何度が訪れた木曽シュミットでお世話になった方々など、懐かしい方達との再会も嬉しかったです。
到着
講演自体は午後からだったのですが、少し早めにと思い朝6時過ぎに自宅を出ました。接近しつつあった台風自体はまた遠くて、その日のうちに温対低気圧に変わるとのことなので大丈夫だったのですが、大雨の予報が少し心配でした。途中の道で激しく降ったところはありましたが、特に危ないことなはく、結局高速は使わずに富山から安房峠経由で奈川渡ダムのところで南下して木祖を抜け、権平トンネルを通って伊那に出て、そのまま下道で大鹿村まで移動しました。10時半頃に着いたので、かなり順調だったと思います。
朝ごはんを食べ来なかったので、到着後すぐに大鹿村の道の駅で定番の鹿肉ステーキ定食を食べようとしたのですが、オープンは11時から。時間があるので、事前に場所だけ確認しておこうと、道の駅向かいにあるミーティング会場に足を伸ばしたら、何ともうすでに何か会合が何か始まっています。
どうやら、午前中は別の「第14回長野県星空継続観察ミーティング」というのが開かれているらしく、早速受付だけ済ませて少しだけ覗いてみました。内容は長野各地で行われている、星空の明るさ観察の集計結果についてでした。こういったところに全県で力を入れることができているのも、「長野県は宇宙県」が音頭をとってやっているからだとわかりました。そもそも、ローカル天文同好会がいくつもあり、それらをまとめるような役割を担っているというので、やはり長野は教育県であり、天文も多分に漏れず盛んで、しかも県の面積の大きさもあってかかなり広い範囲で活動されているのが印象的でした。でもやっぱりお腹が空いていて、11時頃にこっそり抜け出して、鹿肉ステーキを食べにいってしまいました。
道の駅のレストランはすでにオープンしていて、どうやら1番乗りでした。鹿肉焼きに定食というのもあったのですが、ちょっと迷って結局食べ応えのありそうなステーキにしました。味付けは塩のみ。塩といっても大鹿村で作られた地元名物の塩です。今年に引き続き、臭みも全くなく、付け合わせの豆腐も合わせてとても美味しかったです。
講演
お腹も膨れて、再び午前のミーティングに参加。もうまとめ近くになっていて、私は講演の準備で少し内職です。講演のお客さんは一般の方が多いかなと思っていたのですが、受付の方と少し話した限り宇宙県のメンバーが多く、かなり詳しい人の方が多いとのこと。詳しい人も面白いと思えるように、少し話の構成を変えました。そんなこんなで12時過ぎには午前のミーティングは終了し、昼ごはんの時間に。私はすでに食事は済ませているので、プロジェクターの表示のテストです。今回はZoomで参加されているメンバーもいるということで、プロジェクターに有線接続ではなく、Zoomに直参加しての画面共有で、Zoomで参加されているメンバーと、Zoom画面を表示している会場プロジェクターも同時に表示するようです。でもこの場合、プレゼンで使うMacから見ると複数モニター扱いにならないので、発表者ツールが使えなくなることに気づきました。その場で検索すると、フルスクリーンでZoomの画面共有で表示して、パワポの画面を右クリックして「発表者ツールを使用する」を選択すると、無事発表者ツールを使えるようになり事なきを得ました。ただし、自分の画面上で見ているマウスの位置と、Zoom上で見えているマウスの位置が違っていたようで、これは話がずいぶん進んでから気づいたので、今後注意が必要です。
Samとしての講演内容は電視観望に関してで、最近ものすごい勢いで普及しているスマート望遠鏡を少し紹介しました。スマート望遠鏡は全般の傾向として、どんどん小さく、軽くなってきています。特に前日の11月1日に詳しいスペックが公開されたSeestar S30について、口径わずか30mmでよく見えるはずだということを話しました。というのも、私の電視観望のメインは口径3cmのFMA135で非常によく見えていて、観望会でもすでにいつも多くのお客さんに楽しんでもらっているからです。その後、スマート望遠鏡と自分で組み上げるカスタム電視観望の比較を、スライドで例を見せながら解説しました。スマート望遠鏡も何種類かの口径や焦点距離がラインナップされてきました。従来の望遠鏡も一つでは全ての天体に対応できなくて何種類も使い分けるように、今後は天体に合わせてスマート望遠鏡も何種類も持つことになるのかもしれません。カスタム電視観望はむしろ機材を自由に入れ替えることは普通のことなので、スマート望遠鏡の次の段階として、カスタム電視観望に興味を持ってくれたら嬉しいです。
私の講演終了後は宇宙県のメンバーの発表が続きます。午前中にも議論されていた星の明るさ計測のことや、宇宙県としての観望会の対応について、発表だけでなく意見も非常に盛んに交換されていました。皆さんかなり星が好きで、天文環境やアピールの仕方など、真剣に考えていることが伝わってきました。
座談会
残念だったのは、天気が悪くてミーティング後の電視観望実演と、楽しみだったバーベキューが中止と事前に決まってしまっていたことです。バーベキューの代わりに希望者を集めた座談会が企画されました。20人くらいはいましたでしょうか。みんなでお弁当を食べて、その後輪になって座って自己紹介と、長野県は宇宙県のもっと突っ込んだ議論がなされました。観望会を依頼され宇宙県としてどう対応しようとしているかが課題の一つでしたが、私も部外者ながら富山県天文学会の例を引き合いに、少し議論に参加させて頂きました。
外の空の様子見にいったメンバーによると、少し星が出始めているようです。我々も外に出て空を見上げると、一部ですが雲の切れ間からいくつか星が見えます。天気予報では、台風一過でしょうか、晴れていく予報のはずです。早速駐車場に戻り、車の後ろの空いているスペースにFMA135+Uranus-Cとトラバースで、いつもの電視観望をセットアップしました。口径3cmなので、DWARF3やSeestar S30に興味がある方には参考になったかもしれません。
とにかく興味を引いたのはその小ささで、折りたたみ机の脇に置いたのですが、あまりに目立たなくて本体が蹴飛ばされないように、目印の電球を置いておきます。どなたかが「三脚は使わないのですか?」と質問されたので、「三脚も小さいのでわかりにくいかもしれませんが、きちんと使ってますよ」と答えると、「なぜ大きな三脚を使わないのですか?」と次の質問が。その答えは「カバンからスッと出したいからです」と言って、普段背負っているリュックタイプのカバンを見せます。PCが入るくらいのごく普通の大きさなので、そこにすっぽり入れるためには、三脚も小さくする必要があります。別の方が、FMA135のすぐ脇に置いた電球や三脚の小ささも含めて「何もかも今までと違う...」と呟いていました。電球も普通なら問題になるところですが「蹴飛ばされない」という目的があることも一応理解していただけたようです。
残念ながら天気が回復せずに、どんどん悪化していったので、見せることができたのは最初の頃の雲越しのアンドロメダ銀河だけでした。それでもM101やM32、わずかですが腕の構造も確認はできたので、かろうじてカスタム電視観望がどんな感じが見せることだけはできました。その後は目では星は全く見えなくなってきて、PCの画面上でも運がいいと数個明るい星が見えるだけで、プレートソルブもままならなく、星雲などは全く見えないので、ここで撤収としました。それでも、周りにいる方と機材についてもいろいろ話をする時間は十分取れたので、ほんの少しの晴れ間だけでもあってよかったです。
宿泊
この時点で21時頃だったでしょうか、その後は希望者を募り、2次会で宿泊予定の宿に移ることになりました。地元の長野の方が多いので、その日のうちに帰る方も多く、ここでで半分くらいの方とはお別れとなりました。
この日の宿泊場所は、古民家を再生した1棟貸しの民宿「イナンクル」で、中はきれいにリフォームされていて、薪ストーブもあり、暖かくてとても雰囲気がいいです。最大10人まで泊まれるらしく、人数によって料金が決まるとのことで、少人数で利用することも可能だそうです。天文民に特筆すべきは、裏の少し上がったところにに駐車場としても利用できる、比較的広い広場があることです。視界もそこそこひらけていて、望遠鏡を展開するには十分です。合宿とかにも利用できそうなので、大鹿村の素晴らしい空の下で、仲間と撮影なども兼ねた宿泊施設としても利用できるのかと思います。
2次会は10人ほどは集まったでしょうか。その中でも、4人の女性の方が大活躍してくれました。お酒やつまみだけでなく、焼肉なども出てきて、かなり豪華な2次会でした。みなさん本当に星好きの方ばかりで、話も盛り上がり、十二分に楽しむことができました。特に、昼間のミーティングのネットワーク機器のセットアップから私の講演の接続のお手伝い、宿の手配や食材の買い出しまで、O代表の実務的な補佐と言われているMさんには、今回何から何までお世話になり、本当に感謝しています。2日間どうもありがとうございました。
このMさん含め、塩尻3人娘と言っていいのでしょうか、いつも一緒に行動しているという女性お三方の星見に対するパワーに圧倒されました。実は昨年の大鹿村でもお会いしているのですが、そのときはそこまでお話しすることはできませんでした。今回夜遅くま色々聞かせていただいたのですが、かなりの頻度で星見スポットを行き来しているみたいです。長野県は面積が広く、数多くの有名星見スポットがあります。南北で天気も全然違い、しかもちょうど塩尻市は高速の分岐点にも近く、どこにいくにも便利とのことです。その日の天気を見て決めるとのことで、どこに行くにも1時間程度で移動でき、平日でもお構いなしに行動しているようです。3人のうちお二人は学校の先生のことで、かなり忙しと思うのですが...。
結局この日、宿泊までしたのは7人でしたが、女性4人は全員宿泊、塩尻3人娘グループは次の日もどこかに星を見にいくとのこと。私は体調がまだ戻りきっていないこともありますが、基本的に宿泊から帰った日は普通は休むようにしています。とにかく、3人組ですごいパワーですごく楽しそうでしたが、あまり無理をして事故などないよう、またいつかお会いした時に武勇伝をお聞かせ頂ければと思います。
結局午前1時半頃まで盛り上がっていたと思います。寝るのは畳の部屋で、二間あるので男女別にしました。次の日曜日は仕事がある方もいて、朝は早くから起きていて、私は6時半過ぎに起きたのですが一番遅かったです。朝食もホットドッグにフレンチトーストと、朝からかなり豪華です。朝食中も朝食後も、話が途切れることはありません。
午前9時前くらいでしょうか、片付けとその後に宿の周りを少し見て、解散となりました。とても楽しい時間を過ごすことができました。前日の講演を含めて、宇宙県のみなさんには本当にお世話になりました。どうもありがとうございました。
絶景のHAKKO OOSHIKAへ
昨日の雨と打って変わって、この日は朝から一面の青空の快晴です。宿を後にし、一旦道の駅に寄ってから、次の目的地に向かいます。
道の駅のテラスから見た大西山の昭和36年に起きた崩落面。
ここの下の公園の管理棟で座談会がおこなわれました。
ここの下の公園の管理棟で座談会がおこなわれました。
次は、大鹿村を訪れた天文民に最近密かなブームになっている「HAKKO OOSHIKA」 です。1500メートルの眼下から見下ろす絶景とともにランチを食べることができるそうです。大鹿村の道の駅からも、距離だけは11kmとたいしたことはないのですが、途中の山道が過酷で、時間はGoogle mapで調べると40分かかると出ます。11時からオープンとのことですが、食事が出るまでに時間がかかると聞いたので、少し早めの9時半頃に大鹿村の中心部を出ます。
途中の山に入ってからは確かにかなり細い道で、車がすれ違える場所が限られています。行きはまだ朝早かったのでほとんど対向車はいなかったですが、早めに食べ終わるとこれから来る車が多そうなので、帰りが心配です。
実際にお店に到着したのは10時10分くらいだったので、本当に40分くらいかかりました。まだお店は当然空いていませんが、もうとにかくすごい絶景です。標高が高いせいか、山の向こうの雲海の上にある山とかも見えます。
まだ11時のかなり前ですが、スタッフの方がテラス席の掃除を始めました。昨晩の雨がすごかったので、席は濡れたままです。一人なら予約なしでも大丈夫とのことなので、11時まで待つことに。10時50分くらいになると、お客さんが続々と車で到着するので、入り口のところで待つことにしました。11時開店で店内に案内してもらい、早速名物のサーモンクリームパスタをセットで、しかもパスタ大盛りで頼むことにしました。注文は席に取りに来てくれるのではなく、1階のレジのところに行って前金で払います。早めに入ることができたので1番で注文することができました。早めの注文がラッキーでした。「この日はパスタの在庫が入ってこなくて、申し訳ないのですがサーモンクリームパスタは提供できません」と、他のお客さんにそんな説明をしています。私も心配になったので、途中聞いてみたら私の分は「OK」とのこと。本当にラッキーでしたが、むしろ大盛りを頼んでしまって申し訳なかったのかもしれません。
最初は店内に案内されたのですが、外に出てみるとちょうどテラス席に日の光が当たり始めていて、しかも1500mという標高なのに、この日はほとんど風が無かったので、席を外に移動してもいいか聞いたら「ぜひ」とのことでした。
外のテラス席に座って、太陽がポカポカ暖かく、目の前の景色を見ているだけでもうかなり満足なのですが、出てきたパスタセットもかなり満足でした。サーモンクリームの名に負けないくらい、サーモンの身が塊でゴロゴロと入っています。付け合わせの野菜もパスタのアクセントになります。サラダと合わせて栄養たっぷりでしょう。大盛りにしたからでしょうか、量的にもかなり満足でお腹いっぱいになりました。本当はミニスイーツセットがオプションであって、その日はチーズケーキだったみたいでかなり食べたかったのですが、最近甘いものを控えているので我慢しました。でもさつまいもの甘煮の桃和え、葡萄と柿がデザートで付いていたので、もうそれで十分でした。食べ終えた後もドリンクのカフェオレと景色でしばらく楽しんでいました。山道は険しいですが、十分に来る価値のあるところで、ここでしか味わえないようなかなり贅沢な時間となりました。
帰りにスタッフの方に「とてもおいしかったです」と声をかけて、HAKKO OOSHIKAを後にしました。心配だった帰り道は、5台くらいの車とすれ違いましたが、いずれも少し道幅が広いところで問題なくすれ違うことができました。
大鹿村から自宅までは下道だと4時間半ほど、でも山の上のHAKKO OOSHIKAからだとさらに40分かかるので、5時間以上の運転になります。レストランを出たのが12時過ぎなので、順調に行っても夕方になりますです。あまり無理をせずに、ここで自宅に帰ることにしました。
帰り道
帰り道は152号線を通って伊那市の東側を北上して抜ける道を選んだのですが、途中面白そうなパワースポットらしきものがありました。少し覗いてみると、「ゼロ磁場」とか「ゼロ磁場の秘水」とかなかなかヤバそうなことが書いてあります。どうも、「分坑峠(ぶんぐいとうげ)」という名所らしくて、大鹿村から続いている中央構造線の上では、断層状の2つの地層がぶつかり合って磁場がゼロになるということらしいのです。
このことは152号線を北上して山道を抜けたあたりにある道の駅の「南アルプスむら長谷」にある観光案内所の詳しい説明を見て、やっとどんなものかわかってきました。ここの説明はまともで、きちんと中央構造線や、その断層の交じり具合が見える「露頭」について詳しく説明しています。その中に「ゼロ磁場や、身体をセンサーとして確認された(???)という気については科学的に証明されたものではないので、その事をここで取り上げて解説することは適切ではない」というような至極真っ当なことが書かれています。でも「観光スポットとして人が集まっているのを否定することはない」というようなも書いてあるので、エンターテインメントとして楽しんでいこうというものかと思います。分杭峠には自家用車で行っても停める駐車場のようなものがなく、この道の駅から出ているバスを利用することになるようで、通りがかりに見た分杭峠のバスの折り返し場には、この日もたくさんの人が居ました。
昔アメリカに住んでいた頃に、西海岸の1号線のロングドライブの途中で、わざわざサンタクルーズの山奥にある、強い磁場で重力が斜めになると言われている「Mystery Spot」という観光地に寄ったことがあります。そこのスタッフに「ただの目の錯覚だ」と食ってかかったのは若気の至りです。今回のゼロ磁場については憤慨などすることなく、暖かい目で楽しませていただきました。
実は、講演前の日も準備であまり寝てなかったので、2日連続で睡眠不足で、途中あまりに眠くなってしまい、権平トンネルの手前で仮眠をとりました。そのため自宅に着いたのは暗くなった18時過ぎでした。自宅についてから空を見上げると星が出ているので、頑張って撮影に行こうかとも一瞬思いましたが、流石に疲れていて早くにベッドに入ってすぐに眠ってしまいました。朝起きても快晴で、ちょっとだけ後悔しました。
まとめ
今回は「長野県は宇宙県」の年一回のミーティングに呼んでいただき、とても感謝しています。いろんな方とお話しすることができて、とてもいい機会になりました。宇宙県の取り組みは素晴らしいと思います。今後もますます長野県の天文情報を発信して、いずれ全国規模で活動が広まっていくことを期待しています。