ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:赤道儀

今回の記事は小ネタです。

以前赤道儀の子午線越えの反転時に、ケーブルが引っかかってUSBハブを
壊したことがありました。2022年4月のことです。


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さらにもう一度、2023年1月、ケーブルを引っ掛けてUSBのコネクタを壊してしまった記事を書きました。こちらは子午線反転時ではなく、ターゲットを切り替えた時でした。反転はしないからいいだろうと油断してたのですが、次の天体がかなり離れたところにあり、反転に近いような状態で導入されてしまったときでした。

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他にも、直接の反転ではないのですが、ターゲットは同じでもフィルター切り替えなどの時にNINAで中心合わせのオプションをオンにしておくと、反転を伴って再導入されることがあります。自動反転をオンにしていなくても、反転するのでこれも注意です。


さすがに反省

NINAで赤道儀の自動反転ができるようになってから1回、自動反転でなくても導入時に1回と、すでに過去に2回はやらかしていて、しかも自動反転以外でも壊す可能性があるとわかってきたわけです。極端なことを言うと、単純な導入時や、ターゲットやフィルターの切り替え時でも、もうその場で見るしかなくなってしまいます。でも平日とかの撮影で、寝てしまった後に毎回起きて外に出るのも大変で、しかたないので何らかの対策をしようと考えていました。

2023年5月にε130Dのセットアップの過程で機器の接続について解説した記事もありますが、この時はまだε130D反転対策はしていませんでした。 


でも実はその時には、既にSCA260にはコッソリ反転対策を施していました。用意したものは、
  1. 30cmくらいの短いUSB3.0ケーブル
  2. 二又の30cmくらいの短い12V用DC電源ケーブル
  3. USBの2メートル延長ケーブル
  4. 2メートルの延長用12V用DC電源ケーブル
  5. ケーブルタイ
です。

1はType Bのものでカメラに接続するケーブルです、USB2の短いものはよくありますが、USB3.0の短いものはほとんど種類がないみたいです。


2は二又ケーブルの一方をカメラ側に接続し、もう一方はEAFに接続しています。この手のケーブルは何種類かあるので、自分のシステムに合わせて適したものを選べばいいでしょう。ただし、普通の一本ケーブルの短いものはほとんどないようです。この場合は適当なパーツを買って、自分で好きな長さに切って、自作することになるようです。なので私はEAFに繋ぐこともあり、二又タイプを買ったというわけです。


ポイントは、下の写真のように1と2の一方をケーブルタイでカメラにかなりキツく固定してしまうことです。ケーブルタイの固定から手前側はケーブルがぷらぷら状態になっていて、引っ張られると抜ける方向に力がかかるようにします。カメラに挿したUSBケーブルだけだと、引っ張られた時に抜ける方向と直角に力がかかったりで、コネクタ破損の原因になります。

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カメラからケーブルがピロンと2本出た状態になるので、そこに下から長いケーブルで接続します。カメラに固定した1のUSBケーブルのもう一方の端はType Aなので、3のUSBケーブルはType  Aのオスとメスが両端についた延長タイプのケーブルを用意する必要があります。

ちょっと心配なのは、1と3のUSB  Type Aの接続が結構固くて、引っ張られた時にうまく抜けるかどうかです。手で引っ張るくらいの力ではなんとか抜くことができるのと、買い直すのもシャクなので、とりあえずこのまま運用してみることにしました。


反転対策の実際の効果

この対策をしたのはいつくらいのことだったでしょうか?先に最初にSCA260で対策したのは2023年の2月とか3月だったと思います。2023年1月に2度目のコネクタを壊して流石に反省してすぐに対策したと思います。その後、ε130Dにも同様の対策をしています。

さて、今回実際にケーブルの引っ掛けが発生したのはSCA260の方です。自宅でM104を撮影していた時です。自動反転オンにしたのですが、近い時間になったら見にいこうと思っていました。でも一旦仮眠を取ったらそのまま朝近くまで寝てしまって、目が覚めて画像をチェックしようと、ベッドの中からまだ眠い目を擦りながらリモートPCに繋ぐと、PHD2の警告で「カメラが認識されていません」とか出ています! 画像をチェックしてみると、ちょうど反転の時刻くらいから画像が保存されていません!!! これはまずいとすぐに飛び起きて、望遠鏡を見にいきました。

すでに周りは明るくなってきていて、そのまま状況が見えます。

ものの見事に、2本のケーブルはすっぽ抜けてくれていました。

焦っていて直後の写真を撮り忘れたのですが、ケーブルが首を巻くよう赤道儀のところで一回転していました。赤緯体がくるっと一回転したような状態です。M104で南の低い空なので、もしかしたら撮影時に赤緯体が180度近く回ったところにあって、反転時に赤緯体の反転方向の判断を間違えたのかもしれません。仮にそうだとしても、その判断が赤道儀での判断なのか、NINAでの判断なのか、再現性も含めて検証する必要があるのかと思います。赤緯体が一回転してケーブルが巻きつく可能性があり得ると思っておいて、ちょっと気をつけた方がいいかもしれません。

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まとめとその後

とにかく反転時の引っ掛けでケーブルが無事に抜けていて、最悪の事態を回避できたのは、まずはよかったです。引っ掛けた時は結構な力が赤道儀などにもかかったはずですが、その次の番も撮影がてらテストしましたが、特段おかしなところはなかったので、まずはこの反転時のケーブル引っ掛け対策は、成功と言えるかと思います。

あ、もちろんケーブルを引っ掛けないのが一番なのですが、子午線越えだけでないというトラップもあります。まだ気づいていないトラップもあるかもしれません。2年で3回やらかしていることになるので、確率的には1年に1回は今後も起きそうな気がします。こう考えると対策は絶対に必要ですね。カメラの端子部分を壊したらそれこそ大ごとです。

と、この記事をほぼ書き終えてから公開しようとする前に、ちょうど今日届いた天文ガイド6月号のリモート天文台の特集記事を見てたら、3人が3人ともカメラのところにケーブルタイで同じようにケーブルを固定していました。もしかしてこの手法は常識なのでしょうか?でも、改めてWebで検索とかしてもそれらしいものは全く出てきません。まあ、いざという時に助かるので、興味がある方は試してみてください。

CP+連動企画、「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回でやっとオリオン大星雲の撮影を開始することができました。


機材の設置からソフトの設定まで、やはり工程が多いですよね。天体写真撮影が敷居が高いと言われるはずです。それでも電視観望でオートストレッチまで済んでいるので、画像処理は楽になるはずです。そこら辺をCP+でお見せできたらと思っています。


オートストレッチ

前回の記事で重要なことを一つ書き忘れていました。画像保存時におけるホワイトバランスの重要性です。

ライブスタック中に普段画面を見る時からでいいので、3つのことをしておくといいです。
  • ライブスタック画面の「Histogram」タブを開き、左のカラーバーの下にある雷マークアイコンを押し、ホワイトバランスを整えます。
ホワイトバランスはすごく重要で、これができてないとオートストレッチがうまくいかないことがあります。オートストレッチに関しては前回も説明していますが、
  • 次に同じくライブスタック画面の「Histogram」の左の上のもう一つの雷マークアイコンを押し、オートストレッチします。
  • 新たに右パネル「ヒストグラムストレッチ」の方の雷マークを押し、さらに炙り出します。もし画像が明るすぎる場合は、右側パネルのヒストグラムの、山を挟んでいる左と真ん中の2本の線を少し動かしてみるといいでしょう。

今回の記事もこのような状態で画像を保存したものを使っています。


検証項目

撮影までに赤道儀の設置や、オートガイドを使った長時間撮影など、それなりに準備だけでも大変でした。電視観望の技術を使い、ここからの画像処理は楽になるとしても、ここまでの準備をもう少し簡単にできないものなのでしょうか?今回はいろいろ設定を変えてみることで、簡単になるのかどうか議論してみます。

今回比較したいものを準備が簡単な順に並べてみます。矢印の右側は、予想される問題点です。
  1. 経緯台AZ-GTiでの10秒露光 → 露光時間に制限がある(10秒程度)、視野回転、縞ノイズが問題になる
  2. 経緯台AZ-GTiでの10秒露光+ディザー → 露光時間に制限がある(10秒程度)、視野回転
  3. 赤道儀SA-GTiでの20秒露光 → ピリオディックモーションのために縞ノイズが問題になる
  4. 赤道儀SA-GTiでの20秒露光+ディザー → 露光時間に制限がある(20秒程度)
  5. 赤道儀SA-GTiでの60秒露光+ディザー+ガイド 
  6. 赤道儀SA-GTiでの3秒露光でゲインを0に下げる+ディザー+ガイド → 読み出しノイズが顕著になる
順に詳しく見ていきます。


1. 経緯台AZ-GTiでの10秒露光 (ガイドなし、ディザーなし)

まず対極で、できる限り簡単な撮影というものをしてみましょう。

ここでは赤道儀の代わりに、自動導入機能がある経緯台AZ-GTiを使ってみます。鏡筒を軽いもの、例えばFMA135やFMA180とかなら、もっと手軽にトラバースでも構いません。特にトラバースは超小型で自動導入も自動追尾もできるので、対極という意味ではこちらの方がいいのかもしれません。トラバースについては以前撮影例を記事にしているので、よかったらご覧ください。

これらの経緯台は赤道儀と違って、極軸調整などを省くことができます。最初はオートガイドやディザー撮影も無しとします。経緯台なのですが、自動追尾はできます。それでも経緯台は縦と横とでしか動かせないので、長時間で回転していく星を追尾しようとすると、視野の回転が問題となるはずです。視野の回転はそこそこ激しいので、星像が天になるためには露光時間に制限ができます。鏡筒やカメラにもよりますが、今回の機材だと現実的には10秒程度でしょう。また視野が流れてしまうことによる「縞ノイズ」が問題になってきます。

今回使うAZ-GTiの写真です。SA-GTiの元になった機器だと思いますが、経緯台だけあってAZ-GTiもかなり小さいです。

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左がトラバース、右がAZ-GTiです。どちらもコンパクトです。

実際に撮影した結果を示します。問題を見やすくするために、かなり明るくしています。1枚当たり10秒露光で、30フレームなので高々5分程度の撮影ですが、

Stack_30frames_300s_22_40_26_WithDisplayStretch_HT

まず視野回転しているのがわかります。右下の方にずれていっている様子がわかります。ずれが三角型になっているのが、視野が回転している証拠です。多少ならば最終的にトリミングすればいいのですが、長時間撮影ではカットする部分が大きくなってしまいます。

PlayerOneのCMOSカメラにはDPS (Dead Pixel Supression)という機能があり、輝度が飽和してしまうようなホットピクセルは、輝度が0近くになってしまうコールドピクセルという、センサーにどうしても存在してしまうわずかの欠損を目立たなくしています。さらに今回、SharpCapの設定でホットピクセル/コールドピクセルの簡易除去をしていしてます。それでもホットピ/コールドピクセルのようなものが存在しているようで、高々5分の撮影でもスクラッチ状のノイズを残してしまいます。拡大するとよくわかります。

Stack_30frames_300s_22_40_26_WithDisplayStretch_HT_HT_cut

このように経緯台での簡単撮影では、回転とスクラッチ上のノイズが問題になってしまいます。でも逆に言うと、対極的に簡単な撮影でも問題点は高々これくらいです。セットアップが簡単になるなら、十分ペイするくらいのささいな問題点かもしれません。

この後に画像処理をすることで、たった5分の撮影でも、大迫力のオリオン大星雲の魅力は十分に出てきます。撮影時間が長くなるほど、縞ノイズの問題が深刻になってくることが予測されるでしょうか。許容範囲は人にも求める仕上がり具合にもよると思いますが、後の画像処理次第で十分天体写真として通用するものになるかと思います。


2. 経緯台AZ-GTiでの10秒露光 + ディザー (ガイドなし)ここに文章を入力

経緯台での簡単撮影ですが、どうせ撮影するなら一手間だけかけてみましょう。ここではオートガイドなしのディザーを提案してみます。天体写真に経験のある方だと、ガイドなしでディザーなんかできるのか?と思われる方もいるかもしれませんが、SharpCapのLiveStack撮影ではそれが可能になります。

設定方法です。
  1. SharpCapメニューの「ファイル」の「SharpCapの設定」の中の「ガイディング」タブを開きます。
  2. 下の画面のように「ガイディングアプリケーション」を3つ目の「ASCOMマウントパルス...」を選びます。
  3. 「ディザリング」の「最大ディザステップ」は、AZ-GTi単体で上の「1. 経緯台AZ-GTiでの10秒露光 (ガイドなし、ディザーなし)」で見たホットピクセルやクールピクセルをできるだけ散らしたいため、かなり大きな値にします。ここでは40としました。
  4. その代わり、AZ-GTiが十分に落ち着くように、「ディザリング」の「最大整定時間」を大きくとります。ここでは60秒としました。
  5. 最後に下の「OK」を押します。
07_guide_setting

上記設定でディザー有り、ガイドなしで撮影した結果です。先の1と同じく、10秒露光で5分間の撮影です。
Stack_30frames_300s_22_47_52_WithDisplayStretch_brighter

ホットピクセルやクールピクセルが散らされて、かなり目立たなくなっています。拡大してみます。これくらいなら十分許容範囲ではないでしょうか?
Stack_30frames_300s_22_47_52_WithDisplayStretch_brighter_cut

このように、自動導入経緯台にディザーをかけての撮影というのは、一つのシンプル撮影の到達点かと思います。それでももちろん問題はあって、
  • 視野回転は避けられないこと
  • 露光時間を長く取れない
ということです。今回は10秒程度の撮影なので星像がまともでしたが、AZ-GTiでの経緯台撮影だと20秒程度で星が流れ始めてしまいます。

この星像のずれは、視野回転影響も大きいです。経緯台でオートガイドをすることも不可能ではありませんが、思ったより大変なのと、オートガイドをしたとしても原理的に視野回転は防ぐことはできません。これ以上露光時間を伸ばしたいとすると、赤道儀に移行した方が無難と思われます。


3. 赤道儀SA-GTiでの20秒露光 (ガイドなし、ディザーなし)

というわけで、ここから再び赤道儀のSA-GTiに戻ります。

下の画像はSA-GTiで、オートガイドもディざーも無しで、露光時間を20秒として「1枚だけ」撮影した画像です。
01_single_frame_00001_20_0s_RGB_VNG

中心部付近を拡大してみますが、赤道儀ということもあり視野回転もないし、20秒程度の露光なら星像も全然流れていないことがわかります。
01_single_frame_00001_20_0s_RGB_VNG_cut

「1枚だけ」の撮影なら問題ないのですが、その一方これを例えば20秒露光で「30枚、合計10分」撮影すると何が起こるかというと、以下のようになります。
Stack_30frames_600s_20_28_37_WithDisplayStretch

気づきにくいかもしれないので、拡大します。
Stack_30frames_600s_20_28_37_WithDisplayStretch_cut
星はライブスタックで位置を確認して重ねあわているので、依然流れていません。問題はホットピクセルやクールピクセルが流れて、背景にいくつか縦方向の紫色に見えるスクラッチができているのです。

これは赤道儀のギヤの精度に起因して起こる、「ピリオディックモーション」などと呼ばれる現象が原因です。赤道儀にもよりますが8分程度の周期で、赤経方向にsin波的に揺れてしまう動きが存在します。どれくらい揺れるかは、ギヤの精度に依存します。

ライブスタック技術で、星を位置合わせして重ねるために、星自身は流れなくなっています。その代わりに、1枚1枚に存在する固定位置のホットピクセルやクールピクセルは逆に重なることはなくて、30枚の撮影で軌跡として流れるように残ってしまうというわけです。

ちなみに、今回のこの軌跡は測定してみると22ピクセル程度の長さです。鏡筒の焦点距離360mmとカメラセンサーの大きさ11.2mm x 6.3mm から、このサイトなどで画角を計算すると1.78度 x 1.00度と出ます。センサーの画素数が3856×2180なので、1.78度 x 60 x 60 = 6408秒角、これを3856で割ると、1ピクセルあたり1.79秒角となります。これが22ピクセルあるので、39.3秒角、プラスマイナスで考えると、+/-19.7秒角のピリオディックエラーということになります。この値はオリオン大星雲で測定しましたが、天の赤道付近なので、この値から大きく変わることはないでしょう(実際には赤緯-5度付近にあるので、5%程度小さく測定されています。それを補正しても+/-21秒角程度でしょう。)。以前測定したAZ-GTiを赤道儀モードで測定した値が+/-75秒角程度でした(今思うとかなり大きな値なので、再計算しましたが間違ってませんでした)から、随分と改善されていることになります。

少し脱線しましたが、このように赤道儀を使ってもピリオディックモーションからくる制限があります。これを解決するために、次はディザーを考えます。


4. 赤道儀SA-GTiでの20秒露光+ディザー  (ガイドなし)

3で見た、ピリオディックモーションでのホット/クールピクセルの軌跡をなくすために、赤道儀でディザーをしたら、どうなるでしょうか?ただし、オートガイドはなしです。露光時間20秒、総露光時間5分間です。
Stack_15frames_300s_20_57_18_WithDisplayStretch

拡大します。
Stack_15frames_300s_20_57_18_WithDisplayStretch_cut

3の時よりかなりマシになっていますが、まだ少し軌跡が残っています。これは少し設定ミスがあって、記録を見たらディザー設定の「最大ディザステップ」が10と少し小さく設定し過ぎたようです。AZ-GTiの時は40だったので、もう少し散らせばもっとまともになるかもしれません。

さて、ディザーで軌跡が少しマシになることは分かりましたが、まだ根本的な問題があります。1枚当たりの最大露光時間がピリオディックモーションで制限されているということです。例えば下の画像は、これまで通りオートガイドなしで60秒露光したものです。
Stack_1frames_60s_20_24_55_WithDisplayStretch

中心付近を拡大するとわかりますが、既に星が流れてしまっています。これは1枚撮影する間にピリオディックモーションによって星が動いてしまい、1枚の画像の中にその動きが記録されてしまうことが原因です。
Stack_1frames_60s_20_24_55_WithDisplayStretch_cut

これを避けるためには、1枚撮影している間に、星の位置を保つようにオートガイドをする必要が出てきます。


5. 赤道儀SA-GTiでの60秒露光+ディザー+ガイド

まず、20秒露光でトータル5分、ディザーあり、それにPHD2によるオートガイドを加えます。ディザーはPHD2の支配下に置かれるので、PHD2でのディザー幅の設定となり、4の時より大きな幅で動かしています。
Stack_15frames_300s_21_09_53_WithDisplayStretch

変な軌跡も完全に消えていますし、星像も流れていません

さらに条件を厳しくして、露光時間を60秒露光と伸ばして、トータルで少し長く16分、ディザーあり、それにPHD2によるオートガイドを加えたものです。
Stack_8frames_480s_21_00_44_WithDisplayStretch

このようにガイドのおかげで、長時間露光してもピリオディックモーションが出てこなくて、星流れていないのがわかります。

赤道儀を使って1枚当たりの露光時間を伸ばそうとすると、やはりガイドとディザーを使った方がいいという結果になります。


一旦まとめ

ここまでをまとめます。
  • 経緯台だろうと、赤道儀だろうと、ディザーはあった方がいい。
  • 経緯台でディザーをするならば、かなりシンプルな撮影体制を構築することができる。ただし、画角回転は避けられない。同時に、1枚当たりの露光時間も10秒程度とかなり制限される。
  • 赤道儀を使うことで画角回転は避けられるが、オートガイドを使わない場合は、ピリオディックモーションのために1枚当たりの露光時間を伸ばすことはできない。
  • 赤道儀でも露光時間を伸ばしたい場合は、オートガイドは必須。
といったところでしょうか。

ここまでで大体の検証は終わりですが、露光時間を伸ばすための努力だったと言ってもいいかもしれません。その反証として最後にもう一つ、1枚当たりの露光時間が短い場合の弊害を見てみましょう。


6. 赤道儀SA-GTiでの3秒露光でゲインを0に下げる+ディザー+ガイド

ここではこれまでのSA-GTiの赤道儀で、露光時間を3秒に下げ、さらにカメラのアナログゲインも220から0にするという、極端な場合を示します。上の5が60秒露光だったので20分の1、さらにアナログゲインが220変わっているので、220 [0.1dB] = 22 [dB] = 20 + 2 [dB] = 10 x 1.26 [倍] = 12.6 [倍]小さくなります。露光時間と合わせると、1/(20 x 12.6) = 1/252  ~ 0.004と0.4%ほどの明るさになったということです。これで100フレーム、合計300秒=5分撮影した結果です。
Stack_100frames_300s_21_28_38_WithDisplayStretch_enhanced

たくさんの縦線と、淡いですが横線も見えています。これは俗に言う「読み出しノイズ (リードノイズ)」が見えてきてしまっているということです。露光時間が短かったり、ゲインが低かったりした場合にこのような状態になります。要するに暗すぎるということです。

同じ露光時間3秒でも、アナログゲインが220の場合はかなりマシになります。1枚当たりの露光時間は上と同じ3秒、100フレームで5分間の撮影は同じです。オートガイドをしていないので、ホット/クールピクセルの軌跡は残ってしまっています。かなり炙り出しているので、縦縞はまだ見えますが、横縞に関してはほとんど無視できます。
Stack_100frames_300s_21_17_26_enhanced

背景はまだひどいですが、面白いのはオリオン大星雲の中心のトラペジウムはよく見えているということです。どうも前回までに撮影したゲイン220で1分露光は少し明るすぎるのかもしれません。中心を取るか背景を取るか、ここら辺が難しくまた面白いところです。

いずれにせよ、露光時間が短いとか、ゲインが小さいとかで、写している天体からの信号が小さい場合、読み出しノイズが支配的になって、縦横の縞ノイズが現れてきます。ホットピクセルやクールピクセルが流れる縞ノイズは斜めに流れることが多いので、このように垂直、水平にノイズが出るようならば、自分の撮影時の設定が暗すぎはしないか、一度疑ってみるといいと思います。


まとめ

いろいろ検証しましたが、結局のところ、電視観望を利用した撮影と言っても、撮影の段階で解決できることはできる限り解決しておいた方がいいということです。

今回の結果から、電視観望技術を利用した撮影方法は、主に下の2つの方法に収束すると思います。
  • 経緯台で、短時間で、ガイドなしで、ディザーを使って縞ノイズを散らす方法は、シンプルという観点から十分使う価値がある。
  • 赤道儀で長時間露光を目指すならば、オートガイドとディザーを使う方がいい。ガイドなしだとピリオディックモーションで1枚当たりの撮影時間が制限される。
といったところでしょうか。

次回は、長時間露光のパラメータを探ってみます。










先日お知らせた、CP+とほしぞloveログの連携企画

電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう

ですが、いよいよ開始します。企画名は略して「電視撮影」として、今回の記事のタイトルにも使っています。今回は (その1) で、機材の準備です。

記事としては、今回紹介する機材を用いてCP+当日までにオリオン大星雲の撮影をし、その過程をブログで公開していきます。セミナー当日は時間が限られると思うので画像処理をメインに見せたいと思っています。セミナーを聞いた人も、撮影に興味が出たらブログを見てもらうように誘導するつもりです。


機材選択

セミナーを引き受けたあとに、具体的にどのように進めるかをサイトロンのスタッフさんと一緒に相談したのですが、ここでポイントとなったのは「入門者でも手が出せる天体写真撮影機材を使おう」ということです。

天体写真の撮影はなんだかんだ言って敷居が高いです。初めて撮影に挑戦する方を想定して、電視観望を利用して技術的に敷居を下げることだけでなく、機材に関しても「撮影ができるクラス」で「手の出しやすい価格帯」のものを選択することにしました。その結果、
  1. 赤道儀: SkyWatcher Star Adventurer GTi
  2. 鏡筒: SkyWatcher EVOLUX 62ED + ED62 Reducer
  3. カメラ: PlayerOne Uranus-C Pro
という機材を選んでみました。

1. Star Adventurer GTi、略してSA-GTiは1年ほど前にSkyWatcher社から発売開始された赤道儀で、2軸制御としては三脚込みで税込9万円台前半と、最安の部類になるかと思います。もっと安いのだと、同じSkyWatcher社のこれまた最安クラスの自動追尾経緯台に「AZ-GTi」というのがあるのですが、これはファームウェアを書き換えることで赤道儀モードで使うことができます。ただし赤道儀動作はメーカーオフィシャルではないためかなり敷居が高く、少なくとも初心者にお勧めできるものではないと思います。SA-GTiはある意味、AZ-GTiのメーカーオフィシャルな赤道儀としてアップグレードされたものと言えるのかと思います。

2. 鏡筒に関しては名前にEDと冠しているように、アクロマートクラスとは一線を画したもので、専用レデューサも発売されているように、明らかに写真撮影を意識したものです。「レデューサ」とは、焦点距離を短くして視野を広げるためのものですが、同時に星像を改善する働きを持たせていることが多いです。今回も撮影を目指すので、画面四隅の星まで綺麗な点になることを願って、62ED専用のレデューサを使うことにします。鏡筒が実売約6万円、レデューサを入れても約10.5万円と、撮影鏡筒としては安価な部類に入ります。初心者がはじめに手にいれる撮影用鏡筒としては手頃で、いい選択肢ではないのかと思います。

ちょっと心配なのはこのEVOLUX 62ED、シュミットの販売ページに行っても在庫切れで、他のショップやAmazonでも在庫切れやお取り寄せとなっているところばかりです。3年前のCP+でEVO GUIDE50での電視観望を紹介して、その後しばらくの間、肝心のEVOGUIDEが在庫切れという状況が続いたことを思い出してしまいました。もちろん今回CP+で見せようと思っている画像処理の方法は、他の鏡筒でも問題なく応用が効くので、お手持ちの鏡筒で構わないのですが、もしかしたら在庫有りのものにしたほうが良かったのかもしれません。

3. カメラですが、今回の目的が撮影ということなので、冷却タイプのCMOSカメラを選びました。冬季ということでそもそも冷えていることと、撮影も入門用に簡単にということでそこまで露光時間を長く取らない予定なので、ダークノイズはそこまで効かないでしょう。またホットピクセルやコールドピクセルもPlayerOneのカメラの特徴のDPS (Dead Pixel Supressioin) 機能で軽減されるので、冷却は必要ないかもしれません。それでも今後撮影に進んでいくと、一枚一枚撮影しダーク補正をする可能性は高く、冷却を選んでおくに越したことはありません。もう一つは冷却そのものというよりは、「一定の温度で撮影できる」ということが、温度管理という意味で便利だったりします。


赤道儀SA-GTiの組み立て

最初は赤道儀Star Adventurer GTiの組立です。日本語版のマニュアルが同封されているので、基本的にはマニュアルを見て進めていけばいいでしょう。

1. 箱から三脚を取り出し足を広げます。三角受け皿をはめ込み、回転させて固定します。
2. ハーフピラーを三脚の上に載せ、三脚上部から出ているネジを締め、固定します。
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3. ハーフピラー上部の3つのネジを緩めて、接続部を外します。
4. 赤道儀を箱から取り出し、上で外したハーフピラー上部を赤道儀本体底部ににねじ止めします。
5. 赤道儀をハーフピラーの上に載せ、ハーフピラー上部の3つのネジを締めて固定します。
6. 赤経体の経度を日本の35度付近に合わせます。赤経体が上下に動くように、赤道儀本体左右についている2つの大きめのネジが緩んでいることを確認(箱から出した直後は全て緩んでいました)して、前部についているネジを締めながら赤経の角度を35度付近にまでします。
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7. ウェイトバーを取り付けますが、ここで少し迷いました。マニュアルにあまりはっきりと書かれていませんが、バーの根元に取り付けるアダプターの上下に注意です。ウェイトバーがアダプターにすっぽりハマる向きに取り付け、その後ウェイトバーを赤道儀本体に取り付けます。

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機械的な組立はこれくらいです。

次に電源についてです。電池駆動もできますが、撮影中はどうせ冷却カメラに12V電源を使うことになるので、赤道儀、冷却カメラともに12Vの外部のDC電源を使うことにしました。

ちなみに、電池駆動する時の場合の手順です。こちらの方が少し迷うかもしれません。
  1. インターフェースパネル下のネジを外して、インターフェース部分を取り囲んでいるカバーを外します。
  2. 極軸望遠鏡のカバーを外し、電池ケースを2つ取り出します。(注1. 極軸望遠鏡のカバーを外さないと、電池ケースを取り出すことができません。外れないからと言って、無理に引っ張って壊さないようにしてください。)
  3. それぞれのケースに4本、計8本単3電池を入れます。電池は受電式のものでも十分稼働します。
  4. ケースを赤道儀本体に戻します。(注2. その場合、極軸望遠鏡のカバーができなくなりますが、これは液漏れを防止するための仕様とのこと。)
あと、付属のUSBケーブルを挿しておきます。PCとはこのUSBケーブルを介して接続します。
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赤道儀の組立はここまでです。


鏡筒とレデューサー

鏡筒のEVOLUX 62EDですが、どうやら日本ではあまり本数が出回っていないのかもしれません。日本語のレビューなどを探してもごくわずかしか見つかりません。専用ケースが付いてくるようですが、今回私の場合はデモ機をお借りしているので、専用ケースはありませんでした。

まずは鏡筒本体に鏡筒にレデューサをつけます。鏡筒接眼側についている、緑のアダプターを回転させ外します。

ここで、必要ならばフィルターを鏡筒側に取り付けます。取り付けることができるのは48mm径のもので、後に詳しく書きますが、今回はCBP(Commet BandPassフィルター)を取り付けました。

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CBPを鏡筒側に取り付けた様子。

(2024/2/4追加) [[注意]] 初出の記事で、フィルターをこの位置に入れると書きましたが、レデューサ側にはまり込んででしまうとものすごく外しにくくなることがわかりました。カニ目レンチなどがあれば頑張って外すことはできますが、かなり大変なのと、フィルターを傷つける可能性があるので、フィルターを入れる位置は再考します。

フィルターを挟み込むようにして、レデューサを鏡筒本体に取り付けます。下の写真のように、レデューサーの字の向きが鏡筒の字の向きと逆になりますが、これが正しいです。

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CMOSカメラの接続

次にカメラと鏡筒の接続です。

Uranus-C Proには17.5mmと20mmの延長アダプターがついています。さらに、カメラのシャーシ端面からセンサー面までの距離は17.5mmとのことです。ここで、63ED レデューサーに必要なバックフォーカスを調べてみると、55mmだとわかりました。レデューサの「後端」から測って、55mm伸ばしたところに「センサー面」が来ればいいということになります。先ほどの距離を足してみると、17.5+20+17.5 = 55mmで、何とちょうど55mmとなるではありませんか。これは、最近の鏡筒のバックフォーカスは55mmのものが多いので、カメラの方でそれにうまく合うようなアダプターを付属しているというわけです。

とうわけで付属のアダプター2つを挟んでカメラをレデューサの後ろに取り付けます。ネジは全てT2と呼ばれるカメラ界隈で使われている規格で、径42mm ピッチ0.75mmになります。

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CMOSカメラの電源ですが、メインはUSBで供給されます。コネクタはType-Cです。露光時間が長いので、USB2.0でもなんとかなると思いますが、転送速度はやはり早い方がいいので基本はUSB3.0以上で接続した方がいいでしょう。冷却用のDCの12V電源も別途必要になります。撮影用のバッテリーを一つ買うといいと思います。下の写真のようなDCジャックができれば複数付いているバッテリーを選ぶといいでしょう。

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これで赤道儀SA-GTiも駆動できるようになります。

バッテリーとCMOSカメラ、赤道儀を接続するDC電源用のケーブルも必要です。ケーブルを選ぶときに、オスメスを間違えないように気をつけてください。今回のように、通常はオス-オスタイプが必要になりますが、実際に売っているのはオス-メスタイプが多いので、そんな場合はオスメス変換のアダプターを一緒に購入するといいでしょう。

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これで鏡筒とカメラの準備は完了です。


赤道儀に鏡筒を載せてみる

鏡筒部を赤道儀に載せてみましょう。鏡筒にはアリガタプレートが最初から付いているので、そのまま赤道儀に取り付けることができます。
  1. まずは赤道儀のウェイトのネジを緩め、ウェイトバーの下の方までウェイトを十分下げて、再びネジを締め固定します。赤経体のネジを緩めて、ウェイトをぷらぷらさせ、手を離して一番下に下がるところで赤経体のネジをしめます。
  2. 赤緯体のネジを緩めて、鏡筒を乗せたときに真っ直ぐ上を向くくらいの位置までアリミゾ部を回転させ、再び赤緯体のネジを締めます。
  3. アリミゾの所のクランプネジを緩めて、鏡筒のアリガタのところをアリミゾ部にはめ込んで、再びネジを締めて固定します。一度ゆっくり手を離してみて、落ちたりしないか確認し、さらに鏡筒部をつついてグラグラ動いたりしないか確認します。
  4. 赤経体のネジを緩めて、さらにウェイトのネジを緩めて、赤経体を回転させ、水平になるように持っていき、ウェイト位置を中央側にずらして、赤経体のバランスをとります。手を離しても赤経体が回転しないところを探してウェイトのネジを締め固定します。
  5. 赤経体は水平のまま、一旦赤経体のネジを締め水平からずれないように固定します。
  6. 次は赤緯体のネジを緩めてバランスをとります。鏡筒が落ちたりしないように注意しながら、アリミゾクランプのネジを少し緩めて、鏡筒部を前後に動かして、手を離しても回転しないところを見つけてください。手を離す際は「毎回」アリミゾクランプのネジを締めるのを忘れないようにしてください。油断すると鏡筒が地面に真っ逆さまになります。
  7. 赤経、赤緯の重量バランスが取れたら、赤経体のねじ、赤緯体のネジを緩めて元のホームポジション(鏡筒が上に来るように赤経体を上に戻し、赤緯体は鏡筒先端が北を向くようになるような位置です)に戻し、再びネジを固定しててください。

ガイド鏡

今回の撮影では、長時間撮影しても視野がずれていかないように、オートガイドと呼ばれる手法を用います。別途もっと視野の広い焦点距離の短い望遠鏡とカメラを用意して、1秒程度の短時間露光で常に画角を確認して、ずれたらそれを補正するようなフィードバック信号を赤道儀に返します。

そのためのガイド鏡を用意しておきます。ガイド鏡の「鏡」は望遠鏡からきていますが、今回は安価な監視カメラ用のCマウントレンズ(実際にはCSマウントレンズで、延長アダプターをつけてCマウントとしています)を使いました。ガイド鏡はメイン鏡筒の焦点距離の10分の1程度の焦点距離があれば十分です。今回はメイン鏡筒がレデューサーをつけて360mmなので、ガイド鏡の焦点距離は50mmとしました。こういったレンズはアマゾンなどで「cマウントレンズ」と検索すると簡単に手に入れることができます。

カメラは手持ちであったPlayerOneのNeptune-Cを使います。

ガイド鏡は、カメラにL字の適当な金具をつけ、底にアルカスイス互換のクランプをつけます。一方鏡筒側には、鏡筒付属のアリガタにアルカスイス互換のプレートをとりつけました。これらもアマゾンで「アルカスイス」と検索すると、安価な互換品を簡単に手に入れることができます。これで着脱も自由です。

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まとめ

全てを組み上げた全体図になります。

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今回の機材はあくまで一例です。機材はお手持ちのものがあれば、もちろんそれらを使えばいいかと思います。

初めて天体機材を触る場合は、最初の組み立ては昼間の明るいうちにやっておいたほうがといいと思います。最初はなかなかうまくいかなくて、組み上げるだけでも大変です。暗い中ではさらに大変になります。あせらずに、余裕を持って、時間をかけて組み立ててみてください。

一応これで、機材の準備は完了です。次回はPCを接続して電源を入れてみましょう。いよいよ望遠鏡の像を見ることになります。










ここ最近新鏡筒のセットアップでε130Dでの撮影体制を整えています。いい機会なので、普段どんなふうに、何に気をつけて機材を組んでいるか、メモがてら書いておこうと思います。


基本方針

まず第一の基本方針ですが、できる限り撮影時のトラブルを少なくするということです。具体的には
  • できるだけシンプルに、かつ堅固に組み上げる。
  • L字のものや、捕捉くびれている金具などを避け、できるだけ揺れないような構造を目指す。
  • ケーブルの本数は少なく。例えばST4ケーブルは使わない。
  • ケーブルはあまりガチガチに固定せず、引っ張ったら動くくらいに固定。
  • ケーブル長は余裕を持って、テンションをかけ過ぎない。
などでしょうか。

また、大変か楽かだったら、楽な方をとります。例えば、
  • リモート撮影が可能なように、ネットワークで接続できるようにする。
これは外に機材を出して、家や遠征では車の中からヌクヌクモニターしたり操作したりするためです。

StickPC

撮影用 PCにはStickPCを用いていて撮影はローカルで完結するようにしています。例えネットワークが落ちても撮影が中断されないようにしておくということです。また、
  • 自宅や車の中から赤道儀で自動導入して、Plate Solvingの結果を赤道儀に返して自動で微調整する
ことも重要です。楽をすることで他を見る余裕ができ、結果としてトラブルが少なくなります。ただし、赤道儀を大きく移動するときは、必ずその場に行って見るようにしています。万が一のケーブルの引っ掛けを防ぐためです。

最近は1台の赤道儀に専用に1台のStickPCを専用で使っています。カメラやEAFを変えた時など、設定が変わるのをできる限り防ぐためです。こういったことも撮影時の設定ミスを防ぐことにつながります。StickPCの取り付けは三脚のところにマジックテープを貼り、StickPC側にもマジックテープを貼り、簡単に取り外しできるようにしています。

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汎用接続ケーブル

接続する機器ですが、撮影用冷却CMOSカメラ、ガイド用CMOSカメラ、赤道儀、フィルターホイール、EAFがあります。ほとんどがUSB接続で、冷却カメラやEAFもZWOの旧型はDCの12Vが必要です。

ケーブル配線ですが、撮影用の汎用ケーブルを何本か作ってあります。どれも同じ設定で
  1. CMOSカメラ用に2メートル程度のUSB3.0ケーブル。
  2. セレストロンの赤道儀に接続するための1メートル程度のUSB Type B miniケーブル。
  3. 冷却カメラ用の3メートル程度の12VのDC電源用ケーブルです。
をスパイラルチューブで束ねています。

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上がカメラ側で、
真ん中左がStickPC、真ん中右が赤道儀のコントローラ、
下がDC12V電源に挿す側です。


今回は説明は省きますが、別途EOS 6Dでの撮影用に
  1. 2メートル程度のUSB Type B miniケーブル。
  2. セレストロンの赤道儀に接続するための1メートル程度のUSB Type B miniケーブル。
  3. 冷却カメラ用の2メートル程度の12VのDC電源用ケーブルです。
というものもスパイラルチューブでまとめて作ってあります。


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このケーブルは、撮影毎に取り付けて、片付けるときに取り外します。赤道儀の回転中にひっかけたりしないように、赤経体の回転部分に近いところで、あえてゆるゆるのバンドに一回通してあります。できるだけ回転部分を支点にケーブルが配線され、万が一のケーブルの引っ張りに、ゆるゆるバンドのところでケーブルが多少移動できることで、ケーブル切断やコネクタ破損を防ぐことを考えています。

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鏡筒周りでの機器の接続

スパイラルチューブケーブルの先の、鏡筒周りのその他の機器ですが、撮影用のCMOSカメラは冷却タイプで、USB2.0端子を2つもっているので、そこにさらにUSB(3.0)ハブを挿して、そのハブから接続しています。

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ガイド用CMOSカメラ、フィルターホイール、EAFなどです。さらに、DC12Vケーブルもカメラ付近で二又ケーブルを使い、冷却用とZWOの旧EAF用に分岐しています。これらのケーブルは(小判鮫状態で鏡筒下部前方につけてあるガイド鏡への接続を除き)できるだけ短いものを使い、撮影するしないに関わらずほぼ固定で、触らないようにします。触らない一番の理由は、とにかくカメラを取り外すとホコリがフィルターやセンサー面に混入する可能性があり、フラットの使い回しができなくなるからです。コリメータを使っての鏡筒の光軸調整以外、基本カメラは外しません。

StickPCを鏡筒側にうまく取り付けて、USBケーブルなどを短くする方法も考えましたが、USB3.0ケーブルがPCの電源ケーブルに変わるだけで、USB Type-B miniケーブルは下から上に這わすのか上から下に這わすのかの違いだけでいずれ必要。DC12Vケーブルもどうせ必要ということで、結局今の形になっています。もしASIAirのように、DC12VケーブルでPCに給電できるなら、事情は変わると思います。このStickPCの電源、Type-Cの形をしていますが全然規格ものでなくて、付属のACアダプターからの給電以外負荷がかかると不安定になるという事情もあるため、電源とStickPC間の距離を短くしています。

 


撮影用ソフト

撮影で使っているソフトを見てみましょう。

CGEM IIでの撮影は久しぶりなので、撮影時に使うソフトをそれぞれアップデートしました。これは自宅撮影の場合はいいですが、遠征時やその前にはアップデートしません。遠征先でのトラブルになると解決手段が限られますし、せっかくの撮影時間がもったいないからです。
  • SharpCapは極軸合わせ、初期プレートソルブなどの機材確認などに使います。今回4.1.10523.0にアップデートしました。
  • NINAはメインの撮影ソフトです。2.2.09001にアップデートしました。
  • NINAをアップデートしたらASCOMプラットフォームをアップデートするようにいわれました。6.6にアップデートします。
  • PHD2は最新版でした。
  • ZWOのカメラドライバーのアップデートはチェックし忘れでしたが、ASI2400MM Proは特に問題なく認識されました。
実際に撮影に使っているソフトはこれくらいでしょうか。他には、fitsファイルの簡易確認でZWOのASIStudioに入っているASIFitsViewerは撮影中もモニターがわりによく使ったりします。


バッテリー

バッテリーですが、第一方針として大きくなくて1万円くらいの汎用の安価なものをいくつも持つようにしています。バッテリーは寿命もあるので、予備を常に持つようにしていて、いざ使えなくなってもすぐに交換して撮影チャンスを逃さないようにするためです。

機種にはそこまでこだわりはなく、StickPC用にAC100V出力があり、DC12V出力ができるものであればとりあえずOKです。安価なものしか買っていないので、例え失敗してもあまりダメージがありません。バッテリーはある程度使わないと使い勝手がわからないので、尚更です。リン酸鉄リチウムイオンタイプは冬場でも安定して動くので重宝しています。

一つの赤道儀に、二つバッテリーを使うようにしています。大抵は一つで一晩持つのですが、途中で万が一撮影が止まるのを防ぐためです。


まとめ

今回はいい機会なので、普段どんなことを考えて機材を組んでいるか書いてみました。

参考になりましたでしょうか?これらの接続はあくまで一例で、機器、環境、方針などによって人それぞれベストな解は違ってきます。どんなケーブルを使えはいいか、どう接続したらうまくいくか、トラブルが回避できるか、長時間稼働できるか、メンテナンス性はどうかなど、色々考えながら組んでいくのもまた楽しいものです。


まだまだ自分の中では皆既月食マイブーム状態です。今回は地球の影が止まるような位置をどう計算するかの一連の記事の、少し脱線するような記事になります。


「ほんのり光芒」さんとのコラボ? 

前回の記事でコメントをいただいた「ほんのり光芒」のみゃおさんがブログ記事の方で、地球本影の固定に関してかなり細かい検討をされています。


上記ページからリンクを辿れますが、かなり以前から考えられていたようで、私のようなにわか月食撮影とは歴史が全然違います。天リフさんのピックアップにも取り上げられていて、ほしぞloveログとのちょっとしたコラボのような様相を呈しています。




視野ズレの計算プログラム

前回までで、地球の自転による観測者の位置変化で視野に大きなずれができて、地球の影の形がひしゃげることを、多少定量的に見積もってみました。


大まかな見積もりと、実際にどれくらいずれるかは、少なくともオーダーレベルでは一致しているようなので、今回はもう少し精度良く計算できないかを考えてみます。といっても、自分だけで考えるのはそろそろ限界で、Webで少し検索してみました。すると老猫こてつさんという方が各種軌道計算などされて、その中で求めていた月の視野位置のずれそのものをpythonで計算してくれていることがわかりました。


プログラムのソースを公開してくれているので、そのまま計算することができ、とても助かります。ただし、それら計算式をどう求めているのかの記述はないので、そのプログラムの出典を調べるためにブログの過去記事を読んでいくと、どうやら中野主一さんの昔のBASICのコードをpythonに置き換えてくれているようです。


参考書籍

中野主一さんといえば、最近では小説「星になりたかった君と」で「長野秀一」という名前で出てきた重要な役割を担う老人のモデルとなった方。おそらく昔の天文少年にとっては憧れのアマチュア天文家で、多くの天文雑誌で連載をもち、アマチュアながら元国立天文台長の古在由秀先生から計算を依頼されるなど、軌道計算の大家です。私はその当時マイコン少年でしたが、大人になって天文を始めてから、昔使っていたマイコンで実用的な天体計算をしていたことを知って、とても感動したことを覚えています。実は中野主一さん、星を初めて少しした2018年に一度お会いして、お話しさせていただいたことがあります。私はかなり緊張していたのですが、気さくにお話ししていただきました。講演も聞かせてもらったのですが、当時どう計算を進めていたか、プロから依頼された当時の様子などのお話で、ユーモアたっぷりの講演で今でも心に残っています。

そんなわけで早速、サイトに載っていた参考文献を注文しました。長沢先生の「天体の位置計算」は以前から持っていたもので、まだ普通に販売されているようですが、他の3冊は流石に古本でかろうじて見つかるくらいでした。
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その中で一番古い「マイコン宇宙講座」は昭和55年の初出のもので、月の計算そのものの章があり、式の解説もあったので理解しやすかったです。

「マイコンが解く天体の謎」は昭和57年出版で、使われている言語はなんとF-BASICですよ。内容はプラネタリウムのようなものを実現することが中心ですが、実は私、中1の時にFM-NEW7を中古で買って、しゃぶり尽くした口です。その数年前に出た本のようなので、恐らくFM-7が出た時で、実際にはFM-8で組まれた時代のプログラムですね。

一番新しい「天体の軌道計算」は1992年なので、前の2さつからはかなり経っていて、プログラムも複雑になり、さらに精度を求めているような内容になっています。

とりあえずは、月の視野ズレの計算方法が載っている「マイコン宇宙講座」をもとに、老猫こてつさんのpythonコードを使わせていただいて計算を進めようと思います。

ただしこれはまだ、「月」の視野ズレを追いかけるプログラムで、一番求めたい月食中の「地球の本影」を追うものではありません。でもこれらの計算の延長上に、それもそう遠くないところに地球本影を求めることができるのではと期待しています。


赤道儀の制御

あともう一つ、仮に地球本影の視野ズレも含んだ位置を計算できたとして、それをどう赤道儀に伝えるかですが、彗星を追うメカトーフ法というのが応用できるかもしれません。ただし、地球の本影を追うというようなものは見つからなかったので、実際にどういう方法で赤道儀に伝えるのか、どういうデータ形式なのか、地球本影に応用できるかなど、もう少し調べる必要があります。

ガイドソフトのPHD2にもメカトーフに相当するような機能があるらしいのですが、どうも1次の傾きでガイド信号に補正信号を加えていくようなものらしいです。視野ズレのような複雑な動きはできないかもしれませんが、1次補正だけでも近似的にそこそこ地球の影の形はうまく出るのではと思います。もしくは撮影途中で何度か係数を変えるかとかでしょうか。


今後

視野ズレの計算方法や赤道儀の制御など、まだ直接ではないですが答えにつながりそうな幾つかの見通しは出てきました。次回の日本での地球本影が見える月食は2023年10月23日の部分月食だそうです。1年近くあるので、じっくり準備したいと思います。


 
 
 
 
 
 
 
 

前回の記事で皆既月食の作戦立てとリハーサル、当日の撮影の様子まで書きました。今回はその続きです。



皆既月食とその前後

まずは一番オーソドックスで解像度も出る
  • TSA120+ASI294MC Pro(常温)+CGEM II
で撮影したものからいくつか処理します。このセットアップもSharpCapのシーケンサーを使い2種類の明るさで撮影しています。シーケンサは以下のような設定になります。1分間のうちにgain120で1ms、gain240で25msの撮影を4時間分240回繰り返しているだけです。

seqencer_TSA120

赤道儀の追尾レートは月時に合わせていますが、撮影中は月が画面の中でどんどん上に上がっていくので、適時ハンドコントローラーで月の位置を真ん中に移動しながらになります。全部で277ファイルが保存されていました。途中の天王星食などにはシーケンサーを止めて好きな設定で撮影していますので、連続撮影にはなっていませんが、保存された.serファイルからいくつか見栄えがいいものを画像処理をしました。

まずは皆既に入る前です。
ZWO ASI294MC Pro_25ms_240_2022_11_08_19_09_33__lapl5_ap2594_RS2
ターコイズフリンジが出てくるような画像処理としました。

次は皆既月食中で、天王星の食に入る少し前です。
ZWO ASI294MC Pro_50ms__2022_11_08_20_29_59__lapl5_ap689_IP
天王星が月の左側の真ん中ら辺に見えています。繋がって見えるのは動画で撮っていたからで、60秒間さつえいしたので、60秒で天王星が移動している分だけ繋がって見えているというわけです。

もう一つは皆既月食終了直後です。こちらもターコイズフリンジが見えるように処理しました。
ZWO ASI294MC Pro_25ms_340_2022_11_08_20_46_29__lapl2_ap1098_RS3


月時レートでも月が画角内を移動!?

今回使ったCelestronの赤道儀では、追尾レートを「恒星時」「太陽時」「月時」の3つから選べます。

実はリハーサル時に、「月時」に設定してしばらく追尾を試したんです。でも長時間追尾すると画面内で月が動いていくんですよね。極軸はそこそこきちんと合わせたつもりだったのですが、ずれていたのかと思い、再び極軸を合わせます。この時にまず大気収差の補正をするのを忘れていたことに気づきました。新しいPCを使ったので、設定し忘れていたのです。気を取り直して再度極軸合わせ。今度は大丈夫なはずです。でもでもやっぱり月は動いていってしまいます。見ていると、どうやら必ず上に向かうようです。

ここでじっくり考えました。そもそも月は28日かけて全天を一周します。ざっくり30日で360度とすると、1日12度もずれていくわけです。1時間あたり0.5度、月食の間の4時間では約2度もずれていきます。その一方、恒星は1年かけて360度全天を一周するので、ざっくり1日1度、1時間では約0.04度、4時間でも0.16度程度しか進みません。

この角速度の差は、月食観測中も恒星に対して月が移動していくことを示していて、しかもその動きは赤道儀の追尾の動きに対して水平に動くだけでなく、上下に動く成分もあることにやっと気づきました。地球に対する月の公転軌道は、地球の自転軸に対して水平ではないからです。ここにたどり着いてから、たとえ赤道儀の月時で月を追尾しても、画面内で上下に動いていくことにやっと納得できました。

でもそうすると大変です。上下に十分な余裕があれば別ですが、画角一杯に月を入れたい場合にはすぐに上下に逃げて行ってしまいます。それをマニュアルで適時上下に追い続けなければダメです。

これを回避するために、ガイド鏡を用いて、月をターゲットにして動かないようにすることも考えました。太陽撮影の時はこのようなガイドをすることがあります。でも今回は月食で、形が劇的に変わるような過程です。こちらもどうも難しそうで、本番一発で成功させるのは流石に自信がありません。

本当は月が画面内にピタッと動かずにずっと連続で撮影したかったのですが、それが無理だとわかったので、今回は「TSA-120は自由に好きなタイミングで撮影する機材とすると決めた」という経緯があります。

この考察は、この後の記事で書くつもりのFS60CBで画角を一切変えずに、太陽時で追っていくことにつながっていきます。


さらなる画像
 
TSA-120で撮影したものだけでも、まだまだ未処理の画像が大量にあります。特に、天王星食は別ページでまとめます。

またTSA-120で撮った画像の処理が進んだら、随時ここに追加していくかもしれません。


 
 
 
 
 
 
 
 


 

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