ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:赤ポチ

気づいたらもう2024年も年の瀬です。最近なかなか忙しかったのですが、やっと年末の休暇に入って少し時間が取れそうなので、ずっとほったらかしていた画像処理を少し進めます。まずはM31の続きです。


目的

今回の目的は、少し前の記事で書いたM31: アンドロメダ銀河加えて、ε130D+ASI6200MM Pro+CGEM IIでHα画像を撮影することで、前回のカラー画像に赤ポチを加えることと、できるならM31周りの背景の構造を出せればと思います。

カラー画像が焦点距離250mmに19x13mmのフォーサーズセンサー、今回のHα画像が焦点距離430mmに36x24mmのフルサイズセンサーなので、そこそこ似たような画角になります。違う鏡筒とカメラを使った場合に、画像をうまく合成できるのか?これまであまりやったことがないので、うまくいくかのテストも兼ねています。



そもそもなのですが、銀河の赤ポチ自体あまりやったことがなく、これまでは2021年11月撮影のM33と、2023年3月撮影のM106



あと、申し訳程度で2022年4月に撮影して、2023年4月に再処理したM51くらいでしょうか。


Hα画像をどうやって赤っぽい色に持っていくか、銀河のRGB画像に対して赤ポチをどうやって自然に合成するかなど、まだまだ試行錯誤の段階です。今回は背景の淡い所も出そうと思っているので、明るい赤ポチと淡い背景の輝度バランスを崩さないようにマスク処理も必要になるのかと思います。

Hαで撮影できる背景の淡い構造は、M31で近年撮影され始めたもので、例えば100時間越えの撮影などで詳細な構造が出てきています。OIIIにも構造があることもわかってきていて、例えばこちらはFSQ106で3nmのフィルターで、OIII単体で45時間越えの撮影でOIIIの放射を新たに発見したとあります。こういった比較的広視野での背景の構造は、機器を個人で占有しての長時間露光ができるアマチュア天文で、今後も成果が出てくる分野なのかと思います。

今回は自宅でのHαの、高々5時間程度の撮影なのですが、それでも何か構造が見えるかどうかという挑戦になります。


撮影

カラー画像の撮影についてはすでに前の記事で書いているので、ここではε130Dでのナローの方のセットアップを少し書いておきます。

最初のHα画像の撮影日は10月12日の夜です。前日までの勾玉星雲からM31に切り替えるにあたり、横幅でちょうど銀河が収まるように、鏡筒とカメラを最初にセットして以来今回初めてカメラの回転角を90度変えました。カメラの回転については、ε130Dの接眼部に回転機構が標準で組み込まれているので、それを利用しました。スケアリングとか少し心配ですが、今回は恒星に関してはカラーで撮ったものを使うので、背景のみならあまり目立たないでしょう。今後L画像とか撮影したら問題になるかもしれませんが、BXTがあるのでまあなんとかなるでしょう。

赤道儀は前日からセットしてあったので、架台側をいじる必要はなかったのですが、上記のように鏡筒の方を色々いじっていたら結構時間が経っていて、月が沈む0時過ぎをとっくに超えてしまい、撮影開始は午前1時過ぎになってしまいました。

撮影後の朝になって気づいたのですが、ミスってASI620MM Proのbin1で撮影していたことに気づきました。ダーク画像は以前同設定で撮影したものを持っていたのですが、フラット画像は当然撮り直しになります。bin1だとすごいHDD喰いになるので枚数は50枚と控えて撮影、その後画像処理を進めます。

出来上がった画像を見ると何かおかしいです。撮影されたRAW画像を1枚1枚よく見ると、なんと中心が結露していることが判明しました。40枚撮影したのに、使えそうなのは最初の1-2枚だけでした。どうやらカメラのヒーターを入れ忘れていて、撮影後すぐに結露したみたいです。この結露に気づいたのが11月17日に画像処理をした時で(すでにこの時点で1ヶ月以上経っているのでずいぶんのんびりなのですが)、1-2枚だと全く意味がないので結局全部ボツにして、改めてHα画像を撮影することにしました。

2回目の撮影は11月25日で、今回は忘れないようにいつものbin2に設定します。もう冬に近くなってくるので、アンドロメダも早い時間からそこそこの高度に昇っています。夕方から撮影を開始し、月が出てくる午前2時くらいまで撮影を続けましたが、朝確認してみると天気予報の通り午前0時を回ったくらいで雲が出てきて、それ位この画像は全てボツとなりました。使えたのは5時間分の画像で、もちろん本当はもっと長時間撮影して淡いところを攻めたいのですが、北陸の冬は天気は全く期待できないので、この日撮影できただけでも貴重でした。これ以降撮影できたのは前回記事のM45の12月2日のみで、その後も年末まで全く撮影できていません。


Hα画像が淡すぎ

RedCat51でのカラー画像の画像処理があらかた終わっていたのが11月27日で、その後Hαも交えて画像処理をしたのが11月30日。この時点でカラー画像は決定として、カラー画像完成のブログ記事を書いたのが12月5日です。Hαと合わせた画像処理は主に12月1日に終えていたのですが、まだ出来上がりに迷いがあり、少し置いておいたら結局今回の記事になってしまいました。

その間にPixInsightが1.8.9から1.9.0になり、Multiscale Gradient Correction (MGC)でとうとうMARSデータを一部ですが使うことができるようになりました。うまく使えればカブリ除去に劇的な効果があると思われます。

特に今回のHα画像の背景の淡さには辟易していて、高々5時間の露光では背景の構造があることはわかるのですが、それと同じくらいの輝度でε130Dのリング状の残差光が目立ってしまい、このMGCが使って上手く補正できたらとか思っていました。でも残念ながらどうやらMGCはカラー画像にしか使えないようで、今回はとりあえずHα画像で使うことはあきらめました。

4784x3194_EXPOSURE_300_00s_FILTER_A_ABE_HT_center

それでもこのリングを取り除かないことには背景はほとんど出てこないので、MGCの代わりにフラット画像を利用してリングを手作業で丁寧に除きました。具体的にはPhotoshopに移り、かなり輝度を落としたフラット画像を別レイヤーで表示し、差の絶対値で重ね合わせています。フラット画像の輝度を微調整することで、リング状の模様をできる限り消しています。

カラー画像とHα画像は鏡筒もカメラも違うので、画角が違うのですが、合成するためには画角を一致させなければいけません。実際にはカラー画像の方が画角が小さく、Hα画像の方が少し画角が広いので、Hα画像をカラー画像に合わせることになります。これはPixInsightの StarAlignmentを使うことで特に問題なく解決しました。PixInsightの1.9.0からImage Synchronizationという新機能ができたらしいので、今後はそれを使ってもいいかのかもしれません。

下の画像は、RedCat51のカラー画像と合わせる直前のHα画像に相当します。リングを補正したHαから、さらにカラー画像の銀河をモノクロにしたものを引いています。その後、赤ポチ部分にマスクをかけ、背景をさらに炙り出しています。上の画像と比べると相当マシになり、背景の構造が見えてきているかと思います。まだリング構造は少し残っているように見えるのですが、元のカラー画像に対してこの画像を比較(明)で重ねるため、相対的に暗いリング構造は、最終画像にはほとんど出てこなくなるくらいになります。
4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_HA


結果

最終画像です。

「M31: アンドロメダ銀河」
4144x2822_180_00s_RGB_integration_ABE4_SPCC_BXT5_red_cut
  • 撮影日: 2024年10月13日0時46分-4時33分 (カラー)、2024年11月25日18時24分-23時39分 (Hα)
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)  (カラー) 、ε130D (430mm、F3.3)  (Hα)
  • フィルター: UV/IR cut  (カラー)、Baader 6.5nm  (Hα)
  • 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)  (カラー)、CGEM II  (Hα)
  • カメラ: ZWO ASI294MC Pro (-10℃) 、ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)  (Hα)
  • ガイド: なし (カラー)、f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング (Hα)
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分 x 64枚 = 192分 = 3時間12分 (カラー)、Gain 100、露光時間5分 x 60枚 = 300分 = 5時間00分 (Hα) 
  • Dark, Flat: なし (カラー)、Gain 100、露光時間5分 x 117枚 = 585分 = 9時間45分 (Hα)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

前回のカラー画像ではあまり色を出さなかったのですが、これは今回のHαの赤とのコントラストを出すことを見越してです。モノクロに近い銀河に、Hαの赤という組み合わせを狙ってみました。赤ポチは十分明るく撮影できているので、まあ問題ないでしょう。そこそこ派手にしましたが、海外の例を見ているともっと派手なものもあるので、まあこれくらいしておきます。

さて肝心の背景の構造ですが、そもそも正しいのか?他の画像と比較しても、そこまで間違っているわけではなさそうで、かなり明るい部分だけですが何か撮れているのは間違いなさそうです。だからと言って十分とはとても言い難く、ε130Dの比較的明るい鏡筒だとしても撮影時間が絶対的に足りていないでしょう。これ以上の本当に淡いところは全く見えませんでした。自宅での撮影なので光害が問題の可能性もあり、ここら辺は暗いところでの撮影と比較して今後定量的に検証していきたいと思います。改善点としては、一つは暗い場所に行くことですが、もう一つはHαフィルターを3nmのものに変更する手があるかと思います。

なかなか遠征で時間を稼ぐのは今の体力では現実的に難しそうなので、ナローバンドフィルターですでにスカイノイズが無視できて、ダークノイズかリードノイズに支配されているなら、本格的に3nmフィルター導入というのは、アリかもしれません。本当に得するかどうか、こちらも定量的に検討してみたいと思います。


まとめ

秋の代表アンドロメダ銀河も、のんびり処理していたらいつの間にか年末の冬です。残りの未処理画像は夏の網状星雲と、勾玉星雲です。相変わらず天気は悪いので、まだしばらく撮影はお預けになりそうなことを考えると、焦って処理を進めても勿体無いので、ゆっくり進めようと思います。

今年の記事は多分これでおしまいです。すでに実家の名古屋に帰省してこの記事を書いています。みなさん、どうか良いお年を。

先日、M106の記事をアップしましたが、記事を書き終えてから画像処理にアラがかなりあることに気づき、改めて再処理をしました。



でもこの再処理過程、苦労の連続で思ったより時間がかかりました。以下にまとめましたが、実際にはこんなにすんなりとはいっていなくて、いろんな回り道をしてある程度見通しがついたものだけを列挙しています。


問題点

問題点は以下の通りです。問題の大きさの順に、
  1. 周辺部のディスクの淡いところがノイジーで、解像度がイマイチです。改めて完成画像とマスターL画像と比べてみると、淡いところ、特に微恒星が相当欠落していることが判明しました。
  2. 明るい恒星がひしゃげていることに気づきました。
  3. 銀河中心が飛んでしまっていることに気づきました。
  4. 光条線が全然キリッとしていません。もしかしたら、微妙な画像の回転が影響しているのでしょうか?
などです。

色々調べていくと、ある程度原因と解決策が見えてきました。とりあえず簡単なところから順に行きます。


3. 銀河中心の飛び

問題3はBXTの弊害と結論づけました。

原因は、リニア画像の段階でBXTをかけていたため、銀河中心を強度に強調してしまい、その結果中心部のみ飛んでしまっていたようです。

解決策は、ストレッチ後の画像にBXTを適用することで解決しました。左がBXT->MaskedStrerchの順で、右がMaskedStrerch->BXTの順です。

comp

なんでこんなことに気づかなかったかというと、下がBXT適用後にPI上でSTFで見かけ上のオートストレッチをした画像なんですが、これだと周りも飽和気味で中心部だけ飛んでしまっているのは判別できないからです。
02_BXT_STF_Image05_ABE_DBE_SPCC_DBE_clone_Preview031

ちなみにオートストレッチしないとこんなふうです。左がBXTする前で、右がBXTをかけたあとです。これならすぐにわかるんですが、普段はSTFをかけた画像しか見ないので、気づくことができませんでした。
comp2


4. 光条線のシャープさ

問題4は撮影中にカメラが開店してしまった可能性があるので、L画像をプレートソルブにかけて調べてみました。プレートソルブは回転角まで出るので、ずれがあった場合に比較することでわかります。

L画像は1日目と4日目にのみ撮影しています。結果は、1日目のL画像がが90.50度で、4日目のL画像が86.13度と、なんと4度以上回転していました。1日目は29枚、4日目は51枚撮影していて、4日目の方が撮影枚数は多いので、少し惜しいですが1日目の分を丸々捨てるとことにしました。さらに4日目の人工衛星の軌跡がひどいものを5枚省いて、46枚でスタックしました。

まずは光条線の評価です。左が1日目と4日目を合わせた80枚、右が4日目だけの46枚です。そこまで大きくは変わりませんが、よく見ると確かに46枚だけの方が光条線は多少鋭くなっているように見えます。でも、正直もう少し鋭くなることを期待していました。-> (追記): 最後まで仕上げたら、明らかな違いになりました。1日目を捨てて正解でした。

comp_original

SCA260の分解能を少し疑ったのですが、例えばこの記事の画像を見る限り
  • 明るい星の光条線は十分に鋭く出ていていること、
  • 中途半端な明るさの星の光条線はそこまで鋭くないこと
などがわかるため、とりあえずは今回撮影した程度の鋭さが標準だと思うことにします。


もう少しL画像を評価

このL画像の枚数の違いですが、問題2に関しても議論することができそうなので、もう少し検証します。上の左右の画像をよく見比べると、微恒星に関してはやはり枚数の多い左側の方が明らかに暗い星まで写っていることがわかります。

ではこの画像にそれぞれBXTをかけてみます。同じく、左が1日目と4日目を合わせた80枚、右が4日目だけの46枚です。

comp_BXT


2つのことがわかります。
  1. 1日目に撮影した画像が加わると、明るい恒星の場合、中心部分が右に寄ってしまい、左にハロのようなものが残る結果になってしまいます。
  2. BXTによる恒星の縮小ですが、(微恒星がより出ていないはずの)右の方の画像の方が、左の画像と比べて、より多くの恒星に適用されていることがわかります。
まず1の原因ですが、元の1枚1枚の撮影画像を見てみると、明らかに星像が縦長になっていることに気づきました。1日目から4日目を全部比べてみると、日が変わっても出ていること、画像の中の位置によらず、常に縦が長くなるような方向に出ています。上の右の画像は問題ないように見えても所詮程度問題で、彩度を出すとかしていくと結局目立つようになります。撮影時の問題であることは明らかで、鏡筒の光軸ずれ、カメラ側のスケアリングのずれ、赤道儀での縦揺れなどが考えられます。前回撮影のM81の時の画像を見直してみても、こんな現象は出ていないようなので、おそらく1月から3月の間に光軸のずれが起こった可能性が高いのかと思います。ただし、波長によって出る出ないが違い、縦長がひどい順にG>L>R>B>>Aとなっているのは、まだ少し解せないところです。とりあえず今回はこの縦長星像、画像処理でなんとかごまかしますが、まずは次回鏡筒の光軸を見直すことにします。

次の2ですが、これは結構面白いです。BXTで恒星をdeconvolutionするためには、恒星をきちんと恒星として認識してもらわなくてはダメなのですが、左の画像は恒星であるのに恒星と認識されていないものが多いのです。何故かは元画像を見比べてみるとよくわかりました。 おそらくシンチレーションの違いで、1日目の画像は星像が大きく、4日目の画像は星像が明らかに小さいのです。動きの多い1日目の画像が混ざったことで点像とは見なされなくなってしまい、恒星と認識されなくなったのではと思われます。日が変わった場合の撮影では、このような違いにも気をつける必要があることがよくわかります。

いずれにせよ、BXTはかなり暗い最微恒星については恒星と認識するのは困難で、deconvolutionも適用できないようです。そうすると逆転現象が起きてしまうことも考えられ、より暗い星の方がそれより明るい星よりも(暗いけれど)大きくなってしまうなどの弊害も考えられます。

考えるべきは、この問題を許容するかどうかです。

この逆転現象とかはかなり拡大してみないとわからないこと、収差の補正や星雲部の分解出しや明るい恒星のシャープ化など現段階ではBXTを使う方のメリットがかなり大きいことから、今のところは私はこの問題を許容して、BXTを使う方向で進めたいと思います。シンチレーションの良い日を選ぶなどでもっとシャープに撮影できるならこの問題は緩和されるはずであること、将来はこういった問題もソフト的に解決される可能性があることなども含んでの判断です。


1. 淡い部分、特に微恒星が全然出ていない

問題1が1番の難問です。そもそも何故LRGB合成なのに、L画像相当の解像度が出ないのかという問題です。

これが撮影してスタックしたL画像: 
L

一方、これがRGB画像から引き出したL画像:
RGB_Lab_L

2枚を比較すると、当然撮影したL画像の方が圧倒的に情報量が多いわけです。

で、これが前回記事でアップした画像のPhotoshopに引き渡す前くらいの画像です。これが上の2枚のどちらに近かったというと、あからさまに後者のRGBから引き出したL画像の方に近いのです。
Image05_ABE_DBE_SPCC_DBE_BXT_MS

なんでこんなことが起きてしまったか、よく考えます。まず今回の撮影はRGBの撮影枚数がそれぞれ10枚程度と、L画像の(1日目、4日目合わせた)76枚と比べてかなり少ないです。こんな場合は、PixInsightでLRGB合成をする際に、LとRGBををどのような比率で合成するかをよく考えなくてはダメだったのです。

前回のLRGB合成でやったことは、L:R:G:Bを1:1:1:1の割合で混ぜたことでした。いや、これさえも本当に実現できているのかよく判りません。実施際にはLRGB合成の際に、L、R、G、Bそれぞれの画像を一度にチャンネルウェイトを0.25:0.25:0.25:0.25で合計1になるように合成しています。合計1にするのはサチるのを避けるためですが、どうもこのチャンネルウェイトは比だけを見るみたいで、絶対的な明るさは変わらないようです。例えば、R、G、Bを0.025:0.025:0.025として一桁落として合成しても、暗くなったりしません。絶対的な明るさは下のLightnessで決まるようです。1より小さくすると合成後が明るくなります。

さて、今回撮影したL画像のS/NはRGBに比べて遥かに高いので、Lの比率を大きくした方が得なはずです。試しにL:R:G:B=0.5:0.25:0.25:0.25で合成すると細部が表現され始め、L:R:G:B=1:0.25:0.25:0.25とするとさらに分解能が上がることがわかりました。その一方、Lの比率が大きくなるので、当然合成直後の画像は色がほとんど出ていなくて、かなりモノクロに近い画像になっていきます。それでも、その後に画像処理を進めていくと彩度を出すことはできるので、色情報がなくなっているわけではないようです。ただしRGBのS/Nが悪いので、色を出していくとどうしもノイジーになってしまうようです。

問題は数値の調整はできるものの、どのような比率でLとRGBを混ぜればいいのか結局のところよくわからないということです。そもそも、RGB画像をLab空間で考えると、単にLを取り替えることをすればいいはずです。それで彩度は保たれ、シャープさは良くなるはずなんです。

それならばいっそのこと、本当にRGBをLabに変換して、Lのみを入れ替えるという操作をしてやった方がいいのではと考えました。その結果が以下になります。
Image141_2

この方向は結構正しいようで、少なくとも細部は十分に出ています。また、Lab合成を使うという考えに基づくと、SPCCは合成前のRGBの時点でやった方がいいという考えに行き着きます。Lの明るさは調整可能なので、元のRGBとは彩度がずれる可能性があるからです。

さてこのLab分解とLab合成でLだけ変える方法、一見うまくいっているようですがまだ問題があって、試しに明るい恒星を見てやると以下のように緑や青が目立つようになってしまいます。

Image141_clone_Preview01_autostretch

これを回避するために色々試してみたのですが、どうやらL画像の明るさがab画像より暗い場合に起こるようです。そのためLab合成の時にL画像を少し明るくして合成します。すると以下のように、変な色が飛び出るようなこともなくなります。

Image230

一見モノクロに見えますが、色はきちんと隠れていて、試しにCurvesTransformationなどで彩度を上げると以下のように色が出てきます。
Image230_CTx5

ところが、ここでまた問題です。このように彩度を出していくと、再び緑飛びが出てきてしまうのです。
Image230_CTx5_cut

結局のところ、Lab合成でどうあがこうとしても、元の画像が悪い状態で彩度を出したら同じことの繰り返しで、変な色飛びはどうしても出てしまうということがやっと理解できました。

それで結局何をやったかというと、Lab合成する際に色情報であるaとbをぼかしてから合成することです。ここら辺はそーなのかーさんのこのページを参考にさせていただきました。


今回はConvolutionでStdDevを5として3回かけ、明るい恒星の色バランスの崩れがなくなるくらいまで、かなりぼかしました。少なくともこれで緑の形がおかしくなるようなことは避けることができました。ただし、ぼかしのバランスがaとbでどうしてもずれてしまい、恒星周りに均等にリング状の緑の輪がかかってしまったので、SCNRでProtction MethodをMinimumNeutralに、Amountを0.5にしてかけて緑を除きました。この時点でやっとBXTをかけます。結果は以下のようになりました。

Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT

色情報を相当ぼかしたわけですが、人間の目の色情報の分解能はかなり弱いと指摘されていて、実際に色が出ていないように見えることはほとんどありません。

これでやっと満足です。この後はPhotoshopに引き渡しますが、Hαジェットを除き、もうすでにかなり仕上がり状態に近いです。


やっと仕上げまできたー!

Photoshopはもうノンリニア編集なので、好きなように仕上げます。主には彩度出しでしょうか。Hα合成も2度目なので、少し余裕が出てきました。結果が下の画像になります。まずはジェットがよく見えるように銀河をアップで。

Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT_bg4_cut_s

次に全体像です。


「M106」
Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT_bg4_cut

  • 撮影日: 2023年3月19日20時48分-20日4時9分、20日19時25分-23時19分、28日19時51分-29日4時38分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGBHα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L:80枚、R:10枚、G:10枚、B:14枚、Hα:44枚の計158枚で総露光時間13時間10分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L:0.001秒、128枚、RGB:0.01秒、128枚、Hα:20秒、17枚(dark flatは32枚)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


最初に挙げた問題点順に評価していくと、
  1. 銀河の淡いディスク部分の分解能はかなり出ました。
  2. 恒星のおかしな形もほぼ無くなっています。
  3. 銀河中心部の不自然さももうありません。
  4. 光条線も明らかに鋭くなりました。
と、こちらもほぼ満足です。

加えて、ジェットをもう少し派手にしてみました。自宅でここまで出れば上出来かと思います。というか、すでにちょっと炙り出し気味で、今の手持ちのHαだとこれくらいが限界かと思います。

最後は恒例のAnnotationです。
Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT_bg2_cut_A

 

まとめ

時間はかかりましたが、再処理を突き詰めていってよかったです。あからさまに良くなったことと、じっくり付き合ったことで次回以降にどうすればいいか、かなり得るものがありました。自宅撮影の結果としては、ある程度情報を引き出しきれた気はしていて、かなり満足しています。

そもそも撮影に問題はありましたが、いつも完全ということは当然ないので、画像処理でのリカバリも含めていつもこれくらい時間をかけないとダメなんだということが、今回とても実感できました。実を言うと、特に恒星ですが、もう諦めようと何度思ったことか。

今回の方法は真っ当なものではないのは重々自覚していますが、撮影はいつもうまくいくとは限らなくて、せっかく時間をかけた画像をできるだけ使ってあげたいので、手持ちの手法としては持っておいてもいいかと思いました。というより、画像処理は一辺倒にはなかなかいかないもので、撮影画像に応じて臨機応変に対応することが大切なのではないかと、改めて感じました。


前回の記事で、SCA260の揺れの対策のことを書きました。



今回はその成果を見てみようと、1作例目でLRGBで撮ったM33にHαで追加撮影して、赤ポチを入れてみようと思います。赤ポチを入れる事自体初めてなので、どうなるかとても楽しみです。


赤ポチとHαバブル

今回はいきなり結果から見せることにします。赤ポチが入ると相当派手になります。
Image111_DBE_PCC_ASx2_PCC3_bright4

今回注目したのが銀河の周辺部にある泡のようなHαの丸いかたまりです。バブルみたいに見えますね。これはどう言う過程で生まれるものなのでしょうか?一個一個が超新星爆発?とにかくここを出したくて、かなり盛ってみたというわけです。

そもそもHαで見ると、なんで銀河内にこんなに明るいところが点在しているのでしょうか?「赤ポチ」という言葉が使用されるのはアマチュア天文に限られているようですが、それぞれの場所で何かHαで光る物理的な過程があるはずです。我々の銀河も、天の川を撮影するとよくわかるように、断面で見るとHαで光っていることがよくわかります。わからないのは、このような領域が点在している理由です。

少し調べればわかるのですが、Hαで光るのは水素原子のバルマー系列線のエネルギー準位がn=3からn=2へ電子が遷移するときに出てくる時に出てくる光です。星間密度が高いところではHαでよく光っていて、その領域では星が盛んに形成されているとのことです。

とすると、今回撮影した赤いところは銀河形成の過程で物質が密になっているような場所なのか?もしそうだとすると、銀河の周りにあるバブルのようなHαはどう説明できるのか?全く違う過程なのか?興味は尽きません。


赤ポチの出具合

今回の画像、少し派手すぎるかもしれませんが、まあ嬉しかったと言う事で盛り込んでみました。日本だと派手すぎでもっと控えめなのが好みな方のほうが多いのかと思います。少し落としたものですがこれくらいでしょうか?
Image111_DBE_PCC_ASx2_PCC3_bright4_modest
でもここまで落とすとバブルがほとんど見えなくなってしまうので痛し痒しです。

その一方、海外に目を向けると上のが地味に見えるくらい盛っている画像もあるようです。もっと派手にしたバージョンです。海外だとこれくらい派手なのも珍しくありません。
Image111_DBE_PCC_ASx2_PCC3_bright4
ここら辺は文化や好みも多分に関係しているのかと思いますが、ここまで盛るとバブルも相当はっきりしてきます。うまくバブルが見えて派手にならない方向を探るのもいいのかもしれません。

ちなみに、今回Hαで加えた部分を外すと以下のようになります。上の画像を見てからだとかなり寂しく感じてしまいます。
Image111_DBE_PCC_ASx2_PCC3_bright4_noHa
Hαで盛れるので、Hα以外の部分は前回の画像より少しだけ控えめの処理にしてあります。

さてさて、今回のHαの撮影、実は失敗続きで撮り直し撮り直しで、3回目の撮影でやっと使える画像なったものです。アホなミスばかりですが、反省がてらきちんと書いておこうと思います。いつものように長くなって申し訳ないのですが、もし興味があればこれ以降お付き合いください。


撮影時の揺れ

まず、揺れについて少しまとめておきます。結論だけ言うと、上部プレートとガイド鏡を外す事で、劇的に改善されました。その日のシンチレーションの大きさによりますが、改善前はかなりの確率で
  • 赤道儀の揺れ > シンチレーション > 風 > 地面振動
だったのが、
  • シンチレーション > 赤道儀の揺れ > 風 > 地面振動
が典型的となりました。

改良前は1分の露光では以前はかなり甘めに判断して半分程度の救出率だったのが、改良後は1分露光では普通の判断基準でほぼ全て救い上げることができるようになりました。3分露光も少し試しましたが、少し揺れてしまいました。ただし揺れの方向が一方向ではなくランダムだったので、おそらく(地面振動を防ぐために柔らかい振動吸収パッド三脚の足の下に置いていたので)風強くて揺れていて
  • 風 > シンチレーション > 赤道儀の揺れ > 地面振動
と言うような状況になっていたと思われます。これは再度確認したいと思います。

いずれにせよ、かなり状況は改善されてきているため、露光時間10秒とか1分とかのラッキーイメージに頼るような手法では既にOK、これ以降さらなる長時間露光での撮影に進みたいと思います。


撮影1回目: オフアキうまくいかず、ガイド鏡を使う

SCA260の改良後の11月28日、Hα画像の撮影を試みました。でもこの日はトラブル続きです。

まずフィルターがホイール内部で引っかかりエラーが出ていました。これはホイールに取り付けるアダプターリングを入れ込みすぎたためでした。これまで取り付けていた厚さ1mmほどのスペーサーリングを挟むのを忘れてしまっていたことが原因です。これだけでも原因がわかるまで30分ほどかかっています。

次に、今回ガイド鏡を使わずにオフアキに切り替えようとしたのですが、そのオフアキ用に用意したカメラASI290MMで星が全く見えまえん。プリズムの向きを間違えたかとか思ったのですが、確認してみても問題なさそう。ピントが合わないだけかと思って、一度主鏡で合わせたピントを崩して、フォーかサー位置を短くしたり長くしたり、オフアキに差し込んでいるカメラアダプターを出し入れしたりしましたが、やはり何も見えず。

結局、時間がもったいないのでガイド無しで撮影を始めることにしました。極軸はそこそこ合わせてあるので、1分露光くらいならピリオディックモーションも目立たず何とかなるでしょうと、この時は思っていました。ところが、肝心の揺れはというと全然収らなかったのです。

でも揺れをよく見ると、これまでの揺れと全然違います。これまでの揺れは赤経が動く方向に長く伸びるのですが、今回は丸が大きくなったり、揺れの方向が定まらずランダムです。ははぁ、と思いました。星像が丸く大きくなるのはおそらくシンチレーションが原因です。あと風が強かったので、星像が方向が定まらずに伸びるのはおそらく風のせいです。ガイドは数秒以上の揺れなら抑えることができるので、風の方向を抑えるのには結構効くのではと推測し、急遽ガイド鏡を復活させ、下部プレートに小判鮫状態で取り付けたというわけです。

効果はかなりあり、少なくともこれまで困っていた星像が一方向に長くなるのはほぼ抑えることができました。赤道儀の揺れはかなり収まったとは思うのですが、シンチレーションで星像がかなり大きくなっていて細部が全然出ていません。赤道儀の揺れがシンチレーションに隠れてしまい影響が少し見えにくくなっている可能性は否定できません。シンチレーションのいい日に再度撮影して、きちんと評価してみたいです。

もう一つ気づいたのが、長時間ガイドでのドリフトがほとんど出ないことです。ガイド鏡を下に移動したことで回転軸に対してより近くなり、実質的にたわみが少なくなったのではと推測しています。上部に置くとガイド鏡が鏡筒の上でふわふわ浮いたような状態にあったのではと思います。これは一般的に当てはまる可能性が高く、特に大型鏡筒ではガイド鏡は鏡筒の上部に取り付けるより、下部に小判鮫状態にして取り付けた方が有利だと思われます。それでもカメラの近くに取り付けるオフアキには勝てないとは思います。

この日の撮影、シンチレーションが悪かったこともありますが、そんなことは関係なしに結局全て無駄になります。


撮影2回目: ビニング間違いに気づき再撮影

先日のHαの撮影後、画像処理するときになって何とHα画像を1x1のビニングで撮影したことに気づきました。バイアスやダーク、新たに撮影したフラットもフラットダークも普通に2x2ビニングで撮影しているので全て使えません。結局12月5日に2x2ビニングでHα画像を丸々撮り直すことにしました。

さらに前回全く像が見えなかったオフアキを見直しました。カメラは独立にピント調整と回転角が調整できるように、T2->アイピース口アダプターを使って、カメラをASI120MM miniに変更して差し込み式にしました。このセットアップで、そもそも明るいところで何か見えるか試してみました。プリズムの差し込み位置で像が見えたり、差し込みすぎると撮影画像にプリズムでできる影が見えることが分かったので、プリズム位置をある程度固定し、カメラのアイピース口への差し込み具合でピントを調整するようにしました。

ところが、実際に撮影を始めるとオフアキで見える星の数があまりに少ないことがわかりました。相当拡大した状態になっているからですが、シンチレーションでの揺れもあってか、ほとんど認識できないか、認識してもすぐに見失ってしまいます。少しでもマシにしようと、PHD2側で2x2でビニングし、「3x3 median」というノイズ低減をして、やっと少なくとも1個そこそこ安定に認識する様になりました。

この状態で90枚撮影しました。しかしこれも無駄になるのです。


撮影3回目: やっと成功

12月10日、再度前回2回目の撮影の大きな間違いに気づきました。

フィルターが汚いことには気づいていたので掃除をしようとホイールの蓋を開けてみたのですが、なんとHαフィルターが入っていると思っていたら実際にはUV/IRフィルターが入っていたのです!

確かにこれまでHαにしては妙に明るかったのですが、ずっと間違ったフィルターで撮影していたことにになります。いつHαから取り替えたんだろうと思い出してみても全く記憶がありません。肝心のHαフィルターを探してみたら、フィルターケースの中にきちんと入っていました。よく考えると太陽撮影の時に使った気がするので、夏の頃でもう相当前になります。改めてHαに交換し、再度撮り直すことにしました。

あと、なぜこれまでBフィルターだけムラが出ていたのかの原因もわかりました。何か変なもので拭いたのか、Bだけものすごく汚くなっています。そういえばM57の撮影の時に曇って暗い中で青だけ拭いたりした覚えがあります。これも初夏の頃なので、もう完全に忘却の彼方でした。

IMG_4149

綺麗に清掃したので、今後はBでもRGと同様に撮影できると思います。他のフィルターも埃を吹き飛ばし、再度ホイールに蓋をします。

この日はシンチレーションもそこそこいいみたいです。さっそくHαを取り直します。一応データも載せておきます。
  • 撮影日: Hα: 2021年12月10日22時48分-12月11日0時31分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド: ASI120MM miniによるオフアキ、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 200、露光時間1分、80枚、dark: Gain 200、露光時間1分、64枚、flatとflatdark: Gain 200、露光時間0.002秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight

これを元に、前回LRGB合成で仕上げた画像にPhotoshop上で合成します。合成方法はHα画像をRGBモードに変換して、レベル補正で緑成分と青成分を無くします。ここら辺は太陽画像処理の応用ですね。赤成分のみになったものをLRGB画像に比較(明)で合成してみました。こうすることでHαの度合いを自由に調整することができるようになります。

こうして出来上がった画像が最初に示した画像になります。


まとめ

Hα画像を利用した赤ポチですが、単に赤ポチというだけでなく、Hαバブルみたいなものが見えるなど、M33の別の様相が見えて面白かったです。失敗ばかりで途中かなり凹みましたが、なんとか形になりました。

揺れに関しては、順調に改善されてきていると思います。風が吹いていようが1分露光はかなり余裕で撮影できるようになった言えそうです。次回撮影ではもう少し露光時間を伸ばしてみようと思います。

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