前回の週末太陽記事 (その1)に引き続いて、(その2) になります。今回の記事は前回のような撮影ではなく、各種テスト関連になります。
前回挙げた週末作業での目標は以下のとおりです。
1から3までが前回記事に相当しますので、今回の記事は4以降についてです。最近の手順は、午前中がシーイングがいい可能性が高いということで撮影を先に済まし、各種テストなどは主に午後にやるようにしています。
簡単なものから済ませます。まずは4の、手持ちの2つのPSTで性能の差はあるか?です。これについてはずっと以前に比較していて、C8で見た時には差があることはわかっています。2023年5月に2台目の使用を開始した時と、その後9月の過去2回で、2台目の方が明らかに良いと結論付けています。今回は、口径8cmでもこの違いがわかるのかを見てみます。
簡単な比較なので結果だけ載せます。まずは1台目の古くからあるPSTを8cm鏡筒に取り付けたものです。1台目はエタロンを中身まで取り出していますし、ボックスの蓋を開けて中身のペンタプリズムの位置もいじっているので、そのせいで性能が変わっている可能性もあるのですが、今のところの印象は多少いじろうが何をしようが、エタロン自身の性能をどうこうすることはできずに、基本このPST固有の性能が依然出ているというものです。今回のエタロン調整は、太陽真ん中にHα波長の中心が来るように合わせました。
これを見る限り、左右に明るい部分が出てしまっているので、Hα波長に合っている範囲にムラがあることがわかります。エタロンのリングを回すことで、波長があっている範囲を右や左に動かしたりできますが、その分反対側に見えない範囲が増えます。初期の頃のC8ではこの中のいい部分を使っていたことになります。
続いて2台目です。こちらは明らかに1台目より良像範囲が広いです。
この違いには結構驚きました。C8で見た時よりも差が大きいです。画像を比較すると、本来写るべきフィラメントが1台目だと写っていないものが多くあります。プロミネンスは1台目も炙り出したので見えてますが、2台目と比べると明らかに薄いです。
できればC8に2台目、8cmに1台目としたかったのですが、ここまで差があると2台目だけを使うことになりそうです。1台目をもう少しいじってどこまで2台目に迫れるかは、いつか試してみてもいいかもしれません。
ちなみに、4月6日の記事で書いた口径10cm、焦点距離1000mmの鏡筒とASI294MM Proで撮影したものは1台目のPST、4月23日の記事で書いた口径8cm、焦点距離400mmの鏡筒とASI290MMで撮影したものは2台目のPSTを使っていたので、公平な比較ではなかったです。でもまあ、8cmの方が取り回しは楽だし、カメラも294を使うのは勿体無いので、今後も全景用に8cmを使うことには変更はありません。
ここからは8cmでの全景撮影の最適化を目指します。
そもそもは、4月23日の記事で8cmで全景を撮影した時の疑問に対してgariさんからのコメントがあったことが発端です。
もう少し戻ると、元々の疑問の一つは、F10用に作られたPSTのエタロンのはずなのに、口径8cmのF5でHαが見えるのは何故か?というものでしたが、これはコメント内の議論で、
「2枚のレンズf1とf2があった時に、合成レンズの公式 1/f = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1 f1) から、平行光(太陽光)が対物レンズに入ってきて、エタロン手前のレンズを通り抜けた時に平行光になる。平行光はf=♾️ということなので左辺が0になるため、1/f1 + 1/f2 = d/(f1 f1) が成り立ち、レンズ間の距離: d = f1 + f2 が最適距離になり、これを満たすような距離を取れば、平行光が得られる。PSTでは実際
と結論づけていています。PSTはF10で動くという話がずっと言われていますが、結局はF値に関係なくレンズ間距離さえ合わせれば平行光が出せるので、PSTの場合「F10」ということだけが一人歩きしているように思えます。
その上で、gariさんの疑問は2つで、要約すると
その一方で、私の方では以前PST標準の口径4cmと今回使った口径8cmを比較した時には分解能明確な違いが見られたという経験があります。
gariさんの疑問1に対しては、同じくコメントの中で議論していて、
口径4cmの時のドーズ限界が2.9秒角くらい、口径8cmの時が1.45秒角くらいなので、上の計算が合っているなら、1.45秒角 x F7.8/F5 = 2.3秒角くらいになるはずす。今使っているASI290MMだと焦点距離400mmで1.4秒角/pixとかなので、まだ手持ちのカメラで十分違いが認識できるはずです。
というわけで、そもそも口径8cm鏡筒にPSTを取り付けた状態で、エタロンをどれくらい動かせるのか確かめてみました。エタロンはアルカスイスの長いレールのようなプレートに取り付けてあるので、簡単にスライドできます。PSTの箱がエタロンが鏡筒の筒の部分に当たるまで前に出した時にもピントが合うことが確認できました。反対にピントが出る範囲でできるだけエタロンを後ろに下げてみると、33mmまで下げることができました。平行光を出す位置が確定しないのですが、上の考えがあっているかどうかを確認する意味で、エタロン前後で差が見えるかどうかは見てみる価値はありそうです。
結果です。今回はエタロン位置が前後で30mm違う場合にそれぞれ撮影し、中心付近のダークフィラメントを拡大してみてみました。左がエタロン位置が前でレンズ径が相対的に小さく、右がエタロン位置が後ろでレンズ径が相対的に大きく有利なので、右側の方が解像度が出るはずです。
よく見ないと分からないかもしれませんが、それでも有意に右の後ろに下げたほうが細かいところまで出ているので、定性的には上の考えは間違ってはなさそうです。
エタロン前のレンズ径に制限がある場合にレンズ位置が30mm違うと、光径は30/400 = 0.075で約8%小さくなり、解像度は逆に約8%上がるはずです。解像度が2倍変わると劇的に変わり、1.5倍でも見ただけで改善しているのがすぐわかるので、8%ならまあこのくらいではないでしょうか。
本当は目的の8の、「4cmのPST鏡筒と、8cm鏡筒との直接比較」をすれば良かったのですが、ちょっと時間的に交換するまではいかず、今回は試すことはできませんでした。
さて、口径8cmで分解能を最適化することができたとして、これで一旦撮影してみたいと思います。1.25msで500フレーム撮影して、上位75%をスタックしました。
比較のために、目的7のSharpCapでリアルタイムスタックをして、全景に近いものを見てみます。
さらに、SharpCap画面に映って画像をそのままPNGで保存して、太陽の上下2枚の画像をモザイク合成したものです。
もう全景だけなら画像処理ソフトは必要なくて、SharpCapだけで十分な気がします。
一応拡大図を示しておきます。左が1000フレームスタックでマニュアルで上位75%をスタックし時間をかけて画像処理をしたもの、右側がSharpCapでのリアルタイムスタックでこのときは常時100フレームスタックです。
こうやって比べて見ると、SharpCapのリアルタイムスタックの方がノイジーですが、これはフレーム数が100枚と少ないだけなので、もう少しフレーム数を増やしてやりさえすれば、実用上はこれでもう十分かと思います。
この週はかなり時間をかけることができて、色々試したいことが進みました。撮影もある程度コンスタントにこなせるようになってきたので、ここら辺は今後はルーチンワークになっていくのかと思います。
まだ少し課題が残っています。
上のこと以外にも実はまだ試したいことが山積みです。次の週 (今ブログを書いている5月4日のゴールデンウィーク中) は天気はある程度晴れるとの予報なので、もう少し進められたらと思います。
前回挙げた週末作業での目標は以下のとおりです。
- いつもの口径20cmのC8+ASI290MM+PSTでプロミネンスを1時間撮影し、ベストの静止画を作り、あわよくばタイムラプス映像を作る。
- 同セットアップで黒点周りを1時間撮影し、ベストの静止画を作り、あわよくばタイムラプス映像を作る。
- 太陽減光フィルムをC8先端に取り付け、PST部分を2倍のバローに置き換え、粒状斑の撮影を1時間程度。
- 口径8cmの鏡筒+PST+ASI290MMで、太陽の全景を見ながら、手持ちの2つのPSTを比較。
- 同セットアップで、太陽の全景を見ながら、エタロンの位置の違いで分解能が変わるかのテスト。
- 同セットアップで、ベストの選択肢で太陽の全景を撮影。
- 同セットアップで、SharpCapのリアルタイムスタックで撮影したらどうなるかのテスト。
- PST付属の4cmと、口径8cmで分解能は得するかの再検証。
- C8+ASI290MM+PSTに戻して、エタロン視野拡大の初期テスト。
1から3までが前回記事に相当しますので、今回の記事は4以降についてです。最近の手順は、午前中がシーイングがいい可能性が高いということで撮影を先に済まし、各種テストなどは主に午後にやるようにしています。
手持ち2台のPSTの比較
簡単なものから済ませます。まずは4の、手持ちの2つのPSTで性能の差はあるか?です。これについてはずっと以前に比較していて、C8で見た時には差があることはわかっています。2023年5月に2台目の使用を開始した時と、その後9月の過去2回で、2台目の方が明らかに良いと結論付けています。今回は、口径8cmでもこの違いがわかるのかを見てみます。
簡単な比較なので結果だけ載せます。まずは1台目の古くからあるPSTを8cm鏡筒に取り付けたものです。1台目はエタロンを中身まで取り出していますし、ボックスの蓋を開けて中身のペンタプリズムの位置もいじっているので、そのせいで性能が変わっている可能性もあるのですが、今のところの印象は多少いじろうが何をしようが、エタロン自身の性能をどうこうすることはできずに、基本このPST固有の性能が依然出ているというものです。今回のエタロン調整は、太陽真ん中にHα波長の中心が来るように合わせました。
これを見る限り、左右に明るい部分が出てしまっているので、Hα波長に合っている範囲にムラがあることがわかります。エタロンのリングを回すことで、波長があっている範囲を右や左に動かしたりできますが、その分反対側に見えない範囲が増えます。初期の頃のC8ではこの中のいい部分を使っていたことになります。
続いて2台目です。こちらは明らかに1台目より良像範囲が広いです。
この違いには結構驚きました。C8で見た時よりも差が大きいです。画像を比較すると、本来写るべきフィラメントが1台目だと写っていないものが多くあります。プロミネンスは1台目も炙り出したので見えてますが、2台目と比べると明らかに薄いです。
できればC8に2台目、8cmに1台目としたかったのですが、ここまで差があると2台目だけを使うことになりそうです。1台目をもう少しいじってどこまで2台目に迫れるかは、いつか試してみてもいいかもしれません。
ちなみに、4月6日の記事で書いた口径10cm、焦点距離1000mmの鏡筒とASI294MM Proで撮影したものは1台目のPST、4月23日の記事で書いた口径8cm、焦点距離400mmの鏡筒とASI290MMで撮影したものは2台目のPSTを使っていたので、公平な比較ではなかったです。でもまあ、8cmの方が取り回しは楽だし、カメラも294を使うのは勿体無いので、今後も全景用に8cmを使うことには変更はありません。
エタロン位置の最適化
ここからは8cmでの全景撮影の最適化を目指します。
そもそもは、4月23日の記事で8cmで全景を撮影した時の疑問に対してgariさんからのコメントがあったことが発端です。
もう少し戻ると、元々の疑問の一つは、F10用に作られたPSTのエタロンのはずなのに、口径8cmのF5でHαが見えるのは何故か?というものでしたが、これはコメント内の議論で、
「2枚のレンズf1とf2があった時に、合成レンズの公式 1/f = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1 f1) から、平行光(太陽光)が対物レンズに入ってきて、エタロン手前のレンズを通り抜けた時に平行光になる。平行光はf=♾️ということなので左辺が0になるため、1/f1 + 1/f2 = d/(f1 f1) が成り立ち、レンズ間の距離: d = f1 + f2 が最適距離になり、これを満たすような距離を取れば、平行光が得られる。PSTでは実際
400mmレンズ-> 距離200mm-> -200mmレンズ-> 平行光-> 距離200mm-> 焦点
となっているので、上の合成レンズの式を満たす。この議論には口径が入ってこないので、この条件は口径8cmでも成り立ち、F5とかF10というのは意味をなさない。」
と結論づけていています。PSTはF10で動くという話がずっと言われていますが、結局はF値に関係なくレンズ間距離さえ合わせれば平行光が出せるので、PSTの場合「F10」ということだけが一人歩きしているように思えます。
その上で、gariさんの疑問は2つで、要約すると
- 口径8cmでF5にしたとしても、エタロン前のレンズ径が2cmなのでここでF10にリミットされるはずで、焦点距離が同じ400mmなら口径を大きくしても分解能が上がるのは不思議。
- エタロンは完全に平行光を入れなくてもそこそこ機能するのでは?少なくと数cm移動しても見え方に変化はなかった。
その一方で、私の方では以前PST標準の口径4cmと今回使った口径8cmを比較した時には分解能明確な違いが見られたという経験があります。
gariさんの疑問1に対しては、同じくコメントの中で議論していて、
- レンズ径は実測で23mm程度なのでF5にした場合光はまだ蹴られますが、15%ほど得するはず。
- gariさんの疑問2を事実とすると、エタロンが平行光をそこまで要求しないのでレンズ間距離は多少適当でも大丈夫で、レンズを含めたエタロン全体を、(エタロンが働く範囲で)できるだけビーム径が小さくなる後ろに置いた方が得する。
口径4cmの時のドーズ限界が2.9秒角くらい、口径8cmの時が1.45秒角くらいなので、上の計算が合っているなら、1.45秒角 x F7.8/F5 = 2.3秒角くらいになるはずす。今使っているASI290MMだと焦点距離400mmで1.4秒角/pixとかなので、まだ手持ちのカメラで十分違いが認識できるはずです。
というわけで、そもそも口径8cm鏡筒にPSTを取り付けた状態で、エタロンをどれくらい動かせるのか確かめてみました。エタロンはアルカスイスの長いレールのようなプレートに取り付けてあるので、簡単にスライドできます。PSTの箱がエタロンが鏡筒の筒の部分に当たるまで前に出した時にもピントが合うことが確認できました。反対にピントが出る範囲でできるだけエタロンを後ろに下げてみると、33mmまで下げることができました。平行光を出す位置が確定しないのですが、上の考えがあっているかどうかを確認する意味で、エタロン前後で差が見えるかどうかは見てみる価値はありそうです。
結果です。今回はエタロン位置が前後で30mm違う場合にそれぞれ撮影し、中心付近のダークフィラメントを拡大してみてみました。左がエタロン位置が前でレンズ径が相対的に小さく、右がエタロン位置が後ろでレンズ径が相対的に大きく有利なので、右側の方が解像度が出るはずです。
よく見ないと分からないかもしれませんが、それでも有意に右の後ろに下げたほうが細かいところまで出ているので、定性的には上の考えは間違ってはなさそうです。
エタロン前のレンズ径に制限がある場合にレンズ位置が30mm違うと、光径は30/400 = 0.075で約8%小さくなり、解像度は逆に約8%上がるはずです。解像度が2倍変わると劇的に変わり、1.5倍でも見ただけで改善しているのがすぐわかるので、8%ならまあこのくらいではないでしょうか。
本当は目的の8の、「4cmのPST鏡筒と、8cm鏡筒との直接比較」をすれば良かったのですが、ちょっと時間的に交換するまではいかず、今回は試すことはできませんでした。
全景画像
さて、口径8cmで分解能を最適化することができたとして、これで一旦撮影してみたいと思います。1.25msで500フレーム撮影して、上位75%をスタックしました。
- 撮影日: 2025年4月26日13時27分
- 撮影場所: 富山県富山市自宅
- 鏡筒: iOpton R80 (f400mm、F5) + Coronado P.S.T.
- 赤道儀: Celestrn CGEM II
- カメラ: ZWO ASI290MM
- 撮影: SharpCap Gain 100、露光時間0.5ms、450/500 frames
- 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、PixInsight SolarTools、Photoshop CC
比較のために、目的7のSharpCapでリアルタイムスタックをして、全景に近いものを見てみます。
さらに、SharpCap画面に映って画像をそのままPNGで保存して、太陽の上下2枚の画像をモザイク合成したものです。
もう全景だけなら画像処理ソフトは必要なくて、SharpCapだけで十分な気がします。
一応拡大図を示しておきます。左が1000フレームスタックでマニュアルで上位75%をスタックし時間をかけて画像処理をしたもの、右側がSharpCapでのリアルタイムスタックでこのときは常時100フレームスタックです。
こうやって比べて見ると、SharpCapのリアルタイムスタックの方がノイジーですが、これはフレーム数が100枚と少ないだけなので、もう少しフレーム数を増やしてやりさえすれば、実用上はこれでもう十分かと思います。
まとめと次回以降の課題
この週はかなり時間をかけることができて、色々試したいことが進みました。撮影もある程度コンスタントにこなせるようになってきたので、ここら辺は今後はルーチンワークになっていくのかと思います。
まだ少し課題が残っています。
- 目標の8番の「PST付属の4cmと、口径8cmで分解能は得するかの再検証」はまだやってませんが、そこまで興味がないので、もしできたらくらいで次回以降の課題とします。
- 目標に挙げた最後の9番の「C8+ASI290MM+PSTに戻して、エタロン視野拡大の初期テスト」は、色々試しているのですが、まだ結論が出る前でもう少し試したいことがあるので、もう少し進展してからまとめます。
上のこと以外にも実はまだ試したいことが山積みです。次の週 (今ブログを書いている5月4日のゴールデンウィーク中) は天気はある程度晴れるとの予報なので、もう少し進められたらと思います。









