前回の記事では、ノイズだけ考えたら露光時間を短くしてもいいという結論でしたが、一つ重要なことを言い忘れてました。今回の記事につながることなのですが、露光時間を短くしすぎると、天体自身が暗くなりすぎる場合があります。これまで考えてきたノイズNに対して、目的の天体である信号Sが小さすぎて、S/N(Signal to Noise ratio, SN比)が悪くなってしまうということです。
露光時間を伸ばしたり縮めたりすることで、ADC(Analog to Digital Converter)のダイナミックレンジ内に、適した大きさの信号を入れるということです。露光時間を伸ばすと、ダークノイズもスカイノイズも大きくなるので、単に暗いからといって闇雲に長くすればいいというわけでもないです。
露光時間もそうですが、カメラのゲイン(一眼レフカメラならISO)も同じような状況で、こちらも信号をADCのダイナミックレンジ内に持ってくるという重要な役割があります。同時に、ゲインを変えると読み出しノイズの効きも変わってくるので、こちらも単純な話ではありません。
まず簡単なゲインの方から片付けましょう。最近のCMOSカメラのゲインの選択については、天体写真撮影の場合、ほぼ2択のみだと考えています。具体的には、ゲイン0か、HCG (High Conversion Gain)モードが起動するところです。HCGが起動するゲインはカメラによりますが、典型的にはゲイン100とか120とかです。少しピックアップしてみると
高々これくらいの違いなので、淡い天体写真の場合にはゲインを上げて明るく撮ったほうが有利なので、実質的にはゲインはHCGのところ一択だと思っていて、私はゲイン0dBで撮影したことは未だありません。
というわけで、ゲインはHCGのところで固定としましょう。これ以降の明るさ調整は、露光時間のみで行うことにするとします。
ゲインが固定なら、露光時間は目標天体が十分な明るさになるように設定すればいいだけです。でも、この「十分な明るさ」というのが、ものすごく難しいのです。
ある露光時間で撮影した天体の明るさと、前回までで求めたノイズからS/Nが決まります。当然S/Nは高いほどいいので、露光時間を伸ばせば伸ばすほどS/Nは上がり、星雲などの淡い天体はよく見えるでしょう。でも撮影しているのは星雲とかの淡い天体ばかりではなく、恒星など狭い範囲ですが非常に明るくなる天体も含まれています。露光時間を長くすると、当然このような明るい恒星などは飽和してしまいます。そのため、露光時間に上限ができます。それでも画角内に3等星や2等星以上の明るい恒星があると、飽和を避けて淡い天体を写すことは難しくなってきて、その場合は飽和を許容し、明るい恒星のためにあえて露光時間を短くして暗くして別撮りし、HDR(High Dynamic Range)合成などという手を取ることもあり得ます。
露光時間の上限は飽和のみで決まるというわけではなく、赤道儀などの性能でも決まり、星像が流れない範囲で露光時間の上限が決まるということもあるでしょう。突発的な車のライトの映り込みなどもあり得ることを考えると、露光時間を例えば1時間とすることはあまり現実的ではありません。
これまでの検証で、具体例として開田高原で撮影したM81の1枚画像では、背景光の部分は14.9 [e]くらいのノイズがあって、その中でスカイノイズが支配的だということがわかっています。
でも1枚撮りの画像を見ているだけだと、どこが分子雲でどこが背景なのか、なかなかわからないと思います。例え分子雲がある場所だとしても、この1枚画像だけでは分子雲としての信号に相当するSが小さいため、S/Nが相当低くなってしまっていて、おそらく1以下とかになっているということです。
ではここでクイズです。そもそも、S/Nが「1」ということはどういうことなのでしょうか?単純にはノイズNに対して、同じ大きさの信号Sがあるということです。でも、Nと同じ大きさのSというのも、よく考えるとあまり単純なことではありません。例えば、ノイズとして背景光が支配的で、背景光の量が100、そのノイズがルートをとってN=10と仮定します。この時、天体が写っている領域の輝度を測定したとして、一体幾つならば、S/Nが1となるでしょうか?単位は面倒なのでノイズも信号も [ADU] (ADCのカウント数)とします。
ノイズが10 [ADU]なので、測定された輝度が10 [ADU] となる所がS/Nが1となるのでしょうか?でも、一番暗いはずの背景光自身が100もあるので、(ある領域の輝度を平均した場合)輝度が10の所なんて、そもそも無いですよね。なので、ここでは測定された(平均)輝度から背景光を引いたものと比較するとしましょう。色々考えたのですが、こう考えるのが一番自然かと思います。この場合、輝度が110と測定されたところが110-100=10でSが10となり、S/Nが1となる所です。例えば、輝度が200ならば、200-100=100でS/Nが10になりますね。
でも実はこれだけではまだ不十分で、まず撮影された画像には底上げされたオフセットがある可能性があります。SharpCapやNINAで「輝度」とか「オフセット」とかいう値です。ASI294MM Proではこの値に16をかけたものが画面全部に加わっています。 この値をあらかじめ輝度から引いてやらなければならないことに注意です。私は撮影時はいつも40という値を使っているので、40x16=640を、測定した輝度から引いた値が正しい輝度になります。
さらにややこしいのが、天体部分の明るさからくるショットノイズがノイズとして加わります。分母のノイズ部分に、明るさのルートからくるショットノイズを2乗和のルートを取る形で加えてやり、それがノイズNとなります。淡い天体部分ではあまり効きませんが、明るい天体部分では無視できないでしょう。
さらに忘れてはいけないのは、背景ではスカイノイズが 支配的として考えましたが、ダークノイズや読み出しノイズが支配的な状況では、これらのノイズも2乗和のルートを取る形で加えてやる必要があります。
こうしてNが決まるので、多少ややこしいですが、Sの値としては、測定した輝度値から背景光量とオフセット量を引くということに注意すればいいのかと思います。
一方ノイズですが、同じ場所の実測値を使います。これまで見積もり値を使ってきましたが、実測値とよく一致していることがもうわかっているので、そのまま実測値を使ってしまっていいでしょう。なぜ実測値を使いたいかというと、天体の明るさが起因のショットノイズも含んでいるからです。そのため、より現実的なS/Nを得ることができるからです。ノイズの実測値は、単位を[e]にするところまで求めて、
SとNが単位[e]で出たので、S/Nが計算でき、
S/N=1ということは、背景に比べた明るさの持ち上がり具合が、そこでの輝度のばらつき具合と同じくらいということです。実際、スタックされた画像を見る限り、やはりそれくらいかと思います。
さらに1枚画像で考えると、S/Nはルート28 = 5.3分の1に減るので、1.04 / 5.3 = 0.196となります。やはり1枚画像ではS/Nが1よりかなり下で、分子雲がノイズの中に埋もれてしまい、見分けがつかなかったということに納得できます。
その一方、銀河の部分はかなり明るくS/Nも10以上と高いです。スタックの効果を無くした1枚画像でも、同様の計算で11.0 / 5.3 = 2.08となり、S/Nが2を超えていて十分に大きく、撮影直後でもストレッチさえしてしまえば腕の形も認識できることがわかります。
今回は信号を考えてみて、実際の画像の特に淡いところを見積もってみました。S/Nの具体的な評価方法がかなり見通しよくなったかと思いますし、実際の画像を見た直感的な印象ともかなり一致すると思います。
今回の計算中に、前の記事での細かい計算ミスが見つかり、直しておきました。もしかしたらまだ大きな勘違いがあるかもしれないので、もし何か気づいた方がいましたら、コメントなどお願いします。
露光時間を伸ばしたり縮めたりすることで、ADC(Analog to Digital Converter)のダイナミックレンジ内に、適した大きさの信号を入れるということです。露光時間を伸ばすと、ダークノイズもスカイノイズも大きくなるので、単に暗いからといって闇雲に長くすればいいというわけでもないです。
露光時間もそうですが、カメラのゲイン(一眼レフカメラならISO)も同じような状況で、こちらも信号をADCのダイナミックレンジ内に持ってくるという重要な役割があります。同時に、ゲインを変えると読み出しノイズの効きも変わってくるので、こちらも単純な話ではありません。
ゲインの調整
まず簡単なゲインの方から片付けましょう。最近のCMOSカメラのゲインの選択については、天体写真撮影の場合、ほぼ2択のみだと考えています。具体的には、ゲイン0か、HCG (High Conversion Gain)モードが起動するところです。HCGが起動するゲインはカメラによりますが、典型的にはゲイン100とか120とかです。少しピックアップしてみると
- ZWO ASI294MC, MC Pro, MM Pro (IMX294): gain 120
- Player One Artemis-C Pro (IMX294): gain 120
- ZWO ASI533 MC Pro, MM Pro (IMX533): gain 100
- Player One Saturn-C (IMX533): gain ~125
- ZWO ASI2600 MC Pro, MM Pro (IMX571): gain ~100
- Player One Poseidon-C Pro, M Pro (IMX571): gain ~120
- ZWO ASI2400 MC Pro (IMX410): gain ~140
と、100から140、典型的には120ですかね。センサーが同じでもHCG発動ゲインはメーカーによって違うので、これはセンサー自身で決まるのではなく、カメラメーカーの組み込みの際のアナログ回路のゲイン調整で決まるものかと推測されます。
どのカメラも、グラフを見てもらうとわかりますが、ゲインが0かHCGのところでダイナミックレンジが大きいです。このダイナミックレンジが大きいというのが有利なところになるので、ゲインは2択となるわけです。明るい対象ならゲイン0、暗い対象ならHCGということです。
ラッキーイメージや電視観望など、露光時間が極端に短く、ダイナミックレンジを犠牲にしても明るく撮りたい場合は、ゲインをもっと上げて信号をADCの適正範囲内に持ってくるということは、戦略として正しいかと思います。私はラッキーイメージはあまりやりませんが、電視観望の場合はゲインを400とかそれ以上にします。
さて、典型的なHCGのゲイン120ですが、ゲイン0とどれくらい明るさが違うのでしょうか?ゲインの単位は0.1dBなので、12dBの違いがあることになります。では12dBとはどれくらいの倍率なのでしょうか?
定義式は20 x log10(gain)なので、0dBで1倍、20dBで10倍、40dBで100倍、−20dBで0.1倍、-40dBで0.01倍、6dBで2倍、−6dbで1/2倍、10dBで約3倍、−10dbで約1/3倍とかなるので、12dbだと6+6dBで、2x2=4倍になります。実測でもほぼ4倍になります。そう、高々4倍なのですよね。
どのカメラも、グラフを見てもらうとわかりますが、ゲインが0かHCGのところでダイナミックレンジが大きいです。このダイナミックレンジが大きいというのが有利なところになるので、ゲインは2択となるわけです。明るい対象ならゲイン0、暗い対象ならHCGということです。
ラッキーイメージや電視観望など、露光時間が極端に短く、ダイナミックレンジを犠牲にしても明るく撮りたい場合は、ゲインをもっと上げて信号をADCの適正範囲内に持ってくるということは、戦略として正しいかと思います。私はラッキーイメージはあまりやりませんが、電視観望の場合はゲインを400とかそれ以上にします。
さて、典型的なHCGのゲイン120ですが、ゲイン0とどれくらい明るさが違うのでしょうか?ゲインの単位は0.1dBなので、12dBの違いがあることになります。では12dBとはどれくらいの倍率なのでしょうか?
定義式は20 x log10(gain)なので、0dBで1倍、20dBで10倍、40dBで100倍、−20dBで0.1倍、-40dBで0.01倍、6dBで2倍、−6dbで1/2倍、10dBで約3倍、−10dbで約1/3倍とかなるので、12dbだと6+6dBで、2x2=4倍になります。実測でもほぼ4倍になります。そう、高々4倍なのですよね。
高々これくらいの違いなので、淡い天体写真の場合にはゲインを上げて明るく撮ったほうが有利なので、実質的にはゲインはHCGのところ一択だと思っていて、私はゲイン0dBで撮影したことは未だありません。
というわけで、ゲインはHCGのところで固定としましょう。これ以降の明るさ調整は、露光時間のみで行うことにするとします。
露光時間の調整
ゲインが固定なら、露光時間は目標天体が十分な明るさになるように設定すればいいだけです。でも、この「十分な明るさ」というのが、ものすごく難しいのです。
ある露光時間で撮影した天体の明るさと、前回までで求めたノイズからS/Nが決まります。当然S/Nは高いほどいいので、露光時間を伸ばせば伸ばすほどS/Nは上がり、星雲などの淡い天体はよく見えるでしょう。でも撮影しているのは星雲とかの淡い天体ばかりではなく、恒星など狭い範囲ですが非常に明るくなる天体も含まれています。露光時間を長くすると、当然このような明るい恒星などは飽和してしまいます。そのため、露光時間に上限ができます。それでも画角内に3等星や2等星以上の明るい恒星があると、飽和を避けて淡い天体を写すことは難しくなってきて、その場合は飽和を許容し、明るい恒星のためにあえて露光時間を短くして暗くして別撮りし、HDR(High Dynamic Range)合成などという手を取ることもあり得ます。
露光時間の上限は飽和のみで決まるというわけではなく、赤道儀などの性能でも決まり、星像が流れない範囲で露光時間の上限が決まるということもあるでしょう。突発的な車のライトの映り込みなどもあり得ることを考えると、露光時間を例えば1時間とすることはあまり現実的ではありません。
S/Nの見積もりかた
これまでの検証で、具体例として開田高原で撮影したM81の1枚画像では、背景光の部分は14.9 [e]くらいのノイズがあって、その中でスカイノイズが支配的だということがわかっています。
でも1枚撮りの画像を見ているだけだと、どこが分子雲でどこが背景なのか、なかなかわからないと思います。例え分子雲がある場所だとしても、この1枚画像だけでは分子雲としての信号に相当するSが小さいため、S/Nが相当低くなってしまっていて、おそらく1以下とかになっているということです。
ではここでクイズです。そもそも、S/Nが「1」ということはどういうことなのでしょうか?単純にはノイズNに対して、同じ大きさの信号Sがあるということです。でも、Nと同じ大きさのSというのも、よく考えるとあまり単純なことではありません。例えば、ノイズとして背景光が支配的で、背景光の量が100、そのノイズがルートをとってN=10と仮定します。この時、天体が写っている領域の輝度を測定したとして、一体幾つならば、S/Nが1となるでしょうか?単位は面倒なのでノイズも信号も [ADU] (ADCのカウント数)とします。
ノイズが10 [ADU]なので、測定された輝度が10 [ADU] となる所がS/Nが1となるのでしょうか?でも、一番暗いはずの背景光自身が100もあるので、(ある領域の輝度を平均した場合)輝度が10の所なんて、そもそも無いですよね。なので、ここでは測定された(平均)輝度から背景光を引いたものと比較するとしましょう。色々考えたのですが、こう考えるのが一番自然かと思います。この場合、輝度が110と測定されたところが110-100=10でSが10となり、S/Nが1となる所です。例えば、輝度が200ならば、200-100=100でS/Nが10になりますね。
でも実はこれだけではまだ不十分で、まず撮影された画像には底上げされたオフセットがある可能性があります。SharpCapやNINAで「輝度」とか「オフセット」とかいう値です。ASI294MM Proではこの値に16をかけたものが画面全部に加わっています。 この値をあらかじめ輝度から引いてやらなければならないことに注意です。私は撮影時はいつも40という値を使っているので、40x16=640を、測定した輝度から引いた値が正しい輝度になります。
さらにややこしいのが、天体部分の明るさからくるショットノイズがノイズとして加わります。分母のノイズ部分に、明るさのルートからくるショットノイズを2乗和のルートを取る形で加えてやり、それがノイズNとなります。淡い天体部分ではあまり効きませんが、明るい天体部分では無視できないでしょう。
さらに忘れてはいけないのは、背景ではスカイノイズが 支配的として考えましたが、ダークノイズや読み出しノイズが支配的な状況では、これらのノイズも2乗和のルートを取る形で加えてやる必要があります。
こうしてNが決まるので、多少ややこしいですが、Sの値としては、測定した輝度値から背景光量とオフセット量を引くということに注意すればいいのかと思います。
実際の画像でのS/Nの見積もり
では、実際の撮影画像でどれくらい信号があるのか見積もってみましょう。評価したいのはこれまでと同じ、開田高原で撮影したM81のL画像の1枚撮りです。1枚撮りのRAW画像をストレッチしたものが下になります。
今回は背景と分子雲のところの違いを見たいのですが、1枚撮り画像だと背景と分子雲の見分けがつきません。そのためまずはスタック済みでS/Nを上げたものを使います。
ただし、通常のWBPPなどのプロセスでスタックしたものは、ダーク補正やフラット補正、さらにIntegration時に背景の規格化などをしていて、背景の値が変わってしまうため、今回はこれらの補正や規格化を一切しないでスタックした画像を、別途用意しました。スタック済み画像で評価して、スタックの効果を取り除いて1枚画像でのS/Nを評価しようという算段です。
下が、スタック済み未処理画像をjpegにしたものです。リニア画像なので、実際の見た目は真っ暗で、所々に恒星が見えるだけです。
わかりやすくするためにマニュアルでストレッチしたものを下に載せておきますが、測定はあくまで上の真っ暗な画像を使います。フラット補正や、ABE、DBEなどをしていないため、周辺減光もそのまま残ってしまっています。それでも銀河本体の周りに分子雲があるところなどがわかると思います。
その中で、右下部分で、下の画像のように三点を抜き出して評価します。
これらの値から、オフセット分の40x16 = 640を引くと
さらに、天体部分の後ろ2つから、背景光分の輝度300.8を引くと
ただし、通常のWBPPなどのプロセスでスタックしたものは、ダーク補正やフラット補正、さらにIntegration時に背景の規格化などをしていて、背景の値が変わってしまうため、今回はこれらの補正や規格化を一切しないでスタックした画像を、別途用意しました。スタック済み画像で評価して、スタックの効果を取り除いて1枚画像でのS/Nを評価しようという算段です。
下が、スタック済み未処理画像をjpegにしたものです。リニア画像なので、実際の見た目は真っ暗で、所々に恒星が見えるだけです。
わかりやすくするためにマニュアルでストレッチしたものを下に載せておきますが、測定はあくまで上の真っ暗な画像を使います。フラット補正や、ABE、DBEなどをしていないため、周辺減光もそのまま残ってしまっています。それでも銀河本体の周りに分子雲があるところなどがわかると思います。
その中で、右下部分で、下の画像のように三点を抜き出して評価します。
- Preview01が「背景」に近いかなり暗いところ
- Preview02が少なくとも「分子雲」とはっきりわかるところ
- Preview03が「銀河の腕」の部分
- 背景: 940.8 [ADU]
- 分子雲: 943.2 [ADU]
- 銀河の腕: 974.9 [ADU]
これらの値から、オフセット分の40x16 = 640を引くと
- 背景: 300.8 [ADU]
- 分子雲: 303.2 [ADU]
- 銀河の腕: 334.9 [ADU]
さらに、天体部分の後ろ2つから、背景光分の輝度300.8を引くと
- 分子雲: 3.2 [ADU]
- 銀河の腕: 34.9 [ADU]
- 分子雲: 2.9 [e]
- 銀河の腕: 31.4 [e]
一方ノイズですが、同じ場所の実測値を使います。これまで見積もり値を使ってきましたが、実測値とよく一致していることがもうわかっているので、そのまま実測値を使ってしまっていいでしょう。なぜ実測値を使いたいかというと、天体の明るさが起因のショットノイズも含んでいるからです。そのため、より現実的なS/Nを得ることができるからです。ノイズの実測値は、単位を[e]にするところまで求めて、
- 背景: 3.07 [ADU] -> 2.76 [e]
- 分子雲: 3.16 [ADU] -> 2.84 [e]
- 銀河の腕: 3.73 [ADU] -> 3.36 [e]
SとNが単位[e]で出たので、S/Nが計算でき、
- 分子雲部分のS/N: 2.9/2.76 = 1.04
- 銀河の腕部分のS/N: 31.4/3.36 = 11.0
ヒョエー!?
分子雲のところ、何とS/Nがわずか1程度です!
しかもこれ28枚の画像をスタックした後の値ですよ...。
分子雲のところ、何とS/Nがわずか1程度です!
しかもこれ28枚の画像をスタックした後の値ですよ...。
S/N=1ということは、背景に比べた明るさの持ち上がり具合が、そこでの輝度のばらつき具合と同じくらいということです。実際、スタックされた画像を見る限り、やはりそれくらいかと思います。
さらに1枚画像で考えると、S/Nはルート28 = 5.3分の1に減るので、1.04 / 5.3 = 0.196となります。やはり1枚画像ではS/Nが1よりかなり下で、分子雲がノイズの中に埋もれてしまい、見分けがつかなかったということに納得できます。
その一方、銀河の部分はかなり明るくS/Nも10以上と高いです。スタックの効果を無くした1枚画像でも、同様の計算で11.0 / 5.3 = 2.08となり、S/Nが2を超えていて十分に大きく、撮影直後でもストレッチさえしてしまえば腕の形も認識できることがわかります。
まとめ
今回は信号を考えてみて、実際の画像の特に淡いところを見積もってみました。S/Nの具体的な評価方法がかなり見通しよくなったかと思いますし、実際の画像を見た直感的な印象ともかなり一致すると思います。
今回の計算中に、前の記事での細かい計算ミスが見つかり、直しておきました。もしかしたらまだ大きな勘違いがあるかもしれないので、もし何か気づいた方がいましたら、コメントなどお願いします。




