ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:粒状班

4月26日と27日の土日は太陽三昧でした。特に26日は朝から1日中快晴で、多くの撮影と機材のテストができました。26日の撮り逃し分を27日に撮ったのですが、風が強くて結構大変でした。


足回りの強化

待ちに待った週末の休みです。しかも土曜は快晴の予報。実際、金曜夜の23時頃から晴れてきて、朝までSCA260とRedCat51+SWAgTiで撮影してました。SCA260を出したので、赤道儀はCGX-Lと大型のものになります。いつも太陽でC8を載せて使っているCGEM IIよりも一回り大きいので、安定度が増すはずです。太陽撮影時に細かい揺れがちょっと気になっているので、いい機会だと思い、出しっぱなしのCGX-Lを使うことにしました。

IMG_1214

ついでに、今の構造で一番弱そうだと思われるC8下のVixen規格のアリガタを、Losmandy規格の幅広のものに載せ替えました。それでも鏡筒バンドの下部の接続部が一番細くてそこがネックになりそうなので、以前VISACでやったような、真ん中のネジ加えて2本のイモネジを左右に入れて、押しネジ状態にして強度を増しています。

IMG_1194

実際かなり揺れは収まったようで、PHD2のガイドグラフを見てても明らかに静かになりました。ただし、風の状況などにもよるので、もうしばらく様子を見てから結論を出そうと思います。


この週の目標

今週末にやりたいことは
  1. いつもの口径20cmのC8+ASI290MM+PSTでプロミネンスを1時間撮影し、ベストの静止画を作り、あわよくばタイムラプス映像を作る。
  2. 同セットアップで黒点周りを1時間撮影し、ベストの静止画を作り、あわよくばタイムラプス映像を作る。
  3. 太陽減光フィルムをC8先端に取り付け、PST部分を2倍のバローに置き換え、粒状斑の撮影を1時間程度。
  4. 口径8cmの鏡筒+PST+ASI290MMで、太陽の全景を見ながら、手持ちの2つのPSTを比較。
  5. 同セットアップで、太陽の全景を見ながら、エタロンの位置の違いで分解能が変わるかのテスト。
  6. 同セットアップで、ベストの選択肢で太陽の全景を撮影。
  7. 同セットアップで、SharpCapのリアルタイムスタックで撮影したらどうなるかのテスト。
  8. PST付属の4cmと、口径8cmで分解能は得するかの再検証。
  9. C8+ASI290MM+PSTに戻して、エタロン視野拡大の初期テスト。
と、結構な量があります。


1時間の撮影を3本

午前中のシーイングのいい時を逃さないために、まずは撮影で1と2と3です。この日のシーイングは普通か、それより少しいいくらいでしょうか。朝だからといって、必ずしもものすごくいいというわけではなさそうです。

大きなプロミネンスがいくつも出ていますが、いいシーイングを探すために撮影場所を一箇所に絞って長時間撮影したいので、全部のプロミネンスを撮影することは大変です。とりあえず今回は一番見栄えの良い、リング状に広がっている10時半方向のものを選びました。太陽周辺に沿ってかなり広がっているので、カメラの横手に入るように向きを変えて撮影しました。

露光時間は1.25ms、ゲインは100で、1ショットあたり200フレーム撮影しています。1ショット撮影した後に30秒のインターバルが入って、トータル120枚撮影しました。これまで誤解していたのですが、SharpCapで指定できるのはインターバルタイムなので、例えば何かのトラブルでフレームレートが落ちたりするとその分撮影にかかる時間が増え、1枚1枚の間隔もずれてしまいます。1枚目が7時46分22秒、120枚目が8時54分30秒なので、1枚1分計算より8分8秒余分にかかっています。これを120枚で割ると、1枚あたりの平均撮影時間は4.07秒ということになります。タイムラプス映像のためには、フレーム数で指定するより撮影時間で指定する方がいいのかもしれません。できればキリのいい等間隔で、フレーム枚数も揃えたいのですが、可能なのかどうかまだ調べられていません。

撮影を開始て少し落ち着ついたので、1時間後にアラームかけて、ここで自宅に入り朝食をとりながら少しのんびりします。1時間後、アラームが鳴って続いて黒点の撮影です。この時点で午前9時くらいです。条件はプロミネンスの時と同じで、30秒インターバル毎に200フレームでトータル120枚です。

こちらも撮影を開始すると時間ができるので、早速先ほどのプロミネンスの画像処理を並行で進めます。とりえあえず選別のために、全部を上位90%をスタックします。AutoStakkert4!でのスタックは結構時間がかかり、120枚をバッチ処理すると1時間では収まりません。待っているのも時間がもったいないので、処理ができた端からImPPGにかけてチェックしていきます。

見たいのはシーイングの度合いです。やはりそこまでいいわけではありませんでしたが、中には飛び抜けて分解能が出ている画像が何枚が見つかりました。なので、この時点で少なくとも静止画用の画像は確保できたと思って良さそうです。

そうこうしているうちに黒点の撮影時間が終わり、続いて粒状斑の撮影に移ります。減光フィルターを鏡筒先端に取り付け、PSTを外して、2倍のPowerMATEを付けて午前10時20分くらいから撮影開始です。この撮影中も画像処理を続けました。

その後、黒点周りと粒状斑撮影分も画像をチェックしましたが、この日の粒状斑ぶんは画像処理をする価値がないほどのシーイングになってしまっていました。明らかにプロミネンスや黒点を撮影していたときよりは悪化しています。やはり午前の早いうちの方がシーイングがいいことが多いようです。


静止画

この日の粒状斑撮影ぶんは諦めて、プロミネンスと黒点周りのみ画像処理を進めます。この時点で私としては珍しく粒状斑を撮影した動画ファイルはすべて削除しました。流石に使うことはもうないという判断ですが、それでもまだ少し心配なのは性格ですね。

まずはプロミネンス、黒点共にベストのものを選びます。それぞれ120本のserファイルから、上位90%をスタックし、ImPPGで細かいところを出したものを見比べます。

やはりシーイングは4月5日には程遠かったですが、何枚かは突如分解能がいいものがありそうです。分解能がいいのは10分から20分に1回くらい出てきて、そのいい時は2-3枚続くこともあるいった状況でしょうか。一番いいものでも、4月5日の6つのレベルのうち、せいぜい上から2番目の内の悪い方くらいでしょうか。全体的には4月12日よりは幾分いいのかと思います。


プロミネンス:
静止画のために選んだプロミネンス画像は、8時0分9秒と8時1分15秒。一つ飛ばしの比較的近い2つの画像で、その二つの元の動画のserファイルをTIFFに分解し、再びAS4!で上位75%をスタックしたものを使いました。チェックの最中で、プロミネンスの方には途中で大きな吹き上がりがありそうなことがわかり、タイムラプス映像も楽しみになってきました。

プロミネンスの静止画を仕上げたものですが以下になります。シーイングはそこまで良くはなかったですが、そこそこ細部も出ているので、まあ十分な仕上がりかと思います。

TIFF_lapl3_ap2603_IP_ST_color_inv_cut


黒点周り:
一方、黒点周りの画像はあまり時間的な変化が大きくないので、少し飛ばして9時31分41秒と9時36分38秒のserファイルをTIFFに分解し、AS4!で上位75%をスタックしました。

2つのseeファイルを使った理由は、200フレームだとどうしてもノイズが目立つというのが主です。75%を使ったので結局合計300フレームですが、これでもまだ少しノイジーで、画像処理でノイズ軽減ツールが必須です。ノイズレスにするためには少なくとも500フレームは必要そうですが、1ショットにこれだけ撮影するとディスク容量を食いすぎます。実際今回は、1時間の撮影でserファイルだけで100GB近くになります。3種撮影で300GBで画像処理も含めるともっと大きくなります。現在1TBのSSDを使っていますが、でこれが2倍とか3倍になると考えると今のセットアップではもう無理で、さらに外部の速い接続でのディスクなどが必要になってしまいます。それに付随して、電源やケーブル、ファイルの転送速度などまで考えると、どんどん大変になってくるので、今の所はこの複数のファイルを使うという方法になっています。

結果です。通常のカラーと、反転したもの2枚を載せておきます。

TIFF_lapl2_ap3951_IP_ST_color_2_mod

TIFF_lapl2_ap3951_IP_ST_color_inv

こちらも最良のシーイングからは劣りますが、自分的には十分満足な結果です。


タイムラプス映像

プロミネンス:
続いてタイムラプス映像です。今回は4月5日の分に続き2度目ということもあり、処理手法に関しても大分こなれてきました。前回はいろんなテストも兼ねていたので、1週間ほどかかってしまいましたが、今回はプロミネンスの方は2日後の月曜には動画になるまでに完成し、一旦Xに投稿しています。

手法はこなれたので、仕上げのためのなめらか具合とかも出るようになってきましたが、やはり良シーイングには勝てなくて、分解能に関しては前回の方が上かと思います。プロミネンスは途中で大きな速い噴出があったので、結構なインパクトがあります。こんな面白さがあるのは太陽ならではですね。夜の天体でここまで激しいのは余程のイベントとかでない限り、なかなか無いです。


このタイムラプス動画ができたときに、噴出のところを得意げに妻に見せました。

私: 「見て見て! これすごくない?飛び出てるよ!」
妻: 「うーん、要するに炎でしょ? たき火やるとこんなのよく見るよ。」
私: 「え?... 違う... これ...太陽の...」

残念ながらすごさは全く伝わりませんでした。


黒点周り:
プロミネンスが面白かった一方で、黒点周りはほとんど動きがなく、途中まで処理してやる気を無くしました。このままお蔵入りにしようと思っていたのですが、1時間程度ではこれくらいの動きだということで、カラー化も仕上げもしてないですが、参考程度に公開しておきます。左側のダークフィラメント以外、ホントに動かないのでつまらないです。むしろ、動かないこと自体に価値があるのかもしれません。


やはり動画は、動かない黒点周りよりも、動きがダイナミックなプロミネンスの方が面白いです。

今後は1本あたりを撮影時間をトータル30分くらいにして、プロミネンスの本数を増やし、黒点は静止画だけにするのも手かと思います。動きの少ない黒点の動きを見ようとしたら、最低2時間くらいの撮影時間が欲しいです。


粒状班の再現性

ちょっと時間は前後しますが、先に粒状斑のことを書いておきます。4月26日は10時半頃からの撮影でしたが、この時点でシーイングはボロボロで、処理は諦めました。その晩も晴れていたので、夜はSCA260
に載せ替えてM101を撮影。そのまま27日の日曜の朝も晴れだったので、昨晩は午前3時頃に寝たにもかかわらず、午前6時半ころから起きて、気になっていた粒状斑の撮影のみ再開しました。

ただし、風が部屋の中にいてもビュービュー音が聞こえるくらいだったので、細かい分解能が必要な粒状斑の撮影は厳しそうでした。午前は何度かに分けて30分程度の撮影を繰り返しましたが、結局全部使い物にはならず、もう諦めて撮影を開始して放っておいて外にモーニングを食べに行ったりしてました。自宅に帰ってからは少し雲も出始めたので、もう半分以上諦めていたのですが、風も収まってきた午後1時過ぎに雲の合間に撮影したものが意外なほど分解能がよく出ました。なので必ずしも午前だけがシーイングがいいのではなく、午後にもチャンスはあるということがわかりました。

粒状斑はまだタイムラプスにできる見込みは全くないので、途中曇って暗くなっても構わないですし、ダメだと判断した動画ファイルはすぐに捨てることができます。なのでディスク容量が許す限り撮影して、判断した端から捨てていけば、かなりの時間撮影することができそうです。

午後に撮影したものの中から、分解能が良さそうな4本の動画ファイルを選び、今回は一旦全てTIFF画像に分解するのではなく、PIPPでゲインとガンマ補正をした後に、一つのserファイルに結合しました。合計800フレーム分になります。これをAS4!で上位10%、20%、50%、80%とスタックして、細部出しは同じ条件にしたImPPGを使い、それぞれの画像を比較してみました。

上位画像を絞った方が分解能が出ると思ったのですが、見た限り有意な違いは認識できませんでした。それよりも、ノイズが残るかどうかの差の方がはるかに大きく、10%や20%ではImPPGの炙り出しの時点で粒状のノイズが目立ってしまい、ノイズ軽減処理が必須になりそうです。50%や80%ではノイズ感はかなり軽減され、ノイズ軽減処理なしでもなんとかなりそうです。

これに関連して、最近はImPPGの「Lucy-Richardson deconvolution」の「Sigma」の値をいつも最低の0.5にして使っています。これを少しでも上げると、つぶ状のノイズが一気に目立つようになるからです。このことは結構以前から気づいていて、大きな値はシーイングが悪く分解能が出ていない時には有効のですが、最近のようにシーイングいい時を選べるようになると、デフォルトの1.3でも仕上がりの分解能が劣ってしまいます。さらに最近の撮影のようにフレーム数が少ないとつぶ状のノイズがどうしても目立ってしまいます。シーイングを選んで撮影したときは結局0.5一択になってしまい、ImPPGを使う意味が薄れてきてしまいました。

そのため今回はPixInsightのMultiscaleLinearTransformでwavelet変換をしてみました。Registaxでも良かったのですが、もう流石に古すぎるのと、PIのMLTの方がもう少し細かいパラメータ設定ができること、将来的にContainerを使ってバッチ処理もできることなどが理由です。

MLTで画像処理してみると、先週の4月19日に撮影したものよりも少し劣る程度で、一応は粒が見えるくらいの画像が得られました。

13_34_29_pipp_lapl3_ap3858_PI_cut._modjpg

粒状斑については、結局二日かけてもベスト更新はなりませんでしたが、これである程度の再現性もある程度あることがわかったので、次はもう少し条件を変えてみる予定です。


まとめ

今回の記事は目標の1から3までです。残りの4以降もまだまだ盛り沢山なので、一旦区切って今回の記事はここまでにしておきます。

とにかく、プロミネンス画像と黒点画像はコンスタントに撮れるようになってきました。タイムラプス映像も工程がこなれてきたので、処理にかかる時間は大幅に減っています。次の記事の分はすでに大体のテスト結果が出たのですが、その結果を元にまたやりたいことが出てきてしまいました。連休中に進められるといいのですが。





先週の土曜、この日は梅雨の合間の珍しく晴れ間が見える日でした。この天気も夕方くらいまで、夜からはまた曇りで次の日からは2週間予報でずっと雨です。せっかくの休日なので、朝から起きて太陽撮影を開始しました。


朝のシーイング

機材はいつものC8+PST+ASI290MMをCGEM IIに載せています。前回の5月18日の撮影も、朝でまあまあのシーイングでしたが、今回も解像度がそこそこ出たので、やはり朝の方がシーイングがいいことが多いようです。何枚か見栄えがいいものを撮影したので結果だけ示します。

まずは一番大きな黒点のAR3727です。黒点の番号はここ「宇宙天気ニュース」で確認しています。黒点の南にあるダークフィラメントも結構大きくて見栄えがします。
08_19_45_lapl3_ap2554_IP_2_5_3

クリックして拡大してもある程度耐えられるくらいの解像度になっているので、シーイングは良かったことがわかります。

私はスタック後の細部出しにImPPGをよく使うのですが、シーイングがいい時の撮影ほど画像処理に負担がないです。今回のImPPGのパラメータはLR deconvolutionのsigmaが2.0、Unsharp Maskingのsigmaが5.0、Amountが3.0とかなり小さい値で十分でした。特にLRの値は大きくするとせっかく撮れた細かい模様が荒く潰れてしまいます。

課題はPSTのHαの良像範囲が限られていることと、ピントが出る範囲が限られていることです。そのため今回の画像は端部をある程度クロップしています。良像範囲に関してはちょうどこの日にgariさんがPSTのペンタプリズムの光軸を合わせてかなり改善したという報告がされていたので、近いうちに私も試してみたいと思います。

続いて東の方のAR3729です。上の黒点よりは迫力は落ちますが、小さいものが3つ並んで賑やかです。
08_18_58_lapl3_ap2568._IP_1.5_5_4tif

黒点最後は西端のもう間も無く裏に回ってしまうAR3719です。こちらはダークフィラメントが端までかかっていて、プロミネンスが飛び出している様子がわかります。スピキュールを見る限りそこそこ解像度は出ていると思うのですが、光球面の解像度が少し落ちてしまったようです。
08_23_38_lapl3_ap2533_IP_2.5_6_6

あとはプロミネンス2つです。上の黒点のすぐ下に大きく出ていたものです。
08_25_57_lapl3_ap2556_IP1.5_4_6

もう一つは東側にでていたものです。少しジェットのようなものが見えています。
08_34_01_lapl3_ap1332_IP_2_5_7

ところで、今回もドップラーシフトしたサージ(ジェット)が見えないか、PSTのエタロンの角度を大きく回して太陽全面を見てみましたが、それらしいものはありませんでした。やはり前回はかなりラッキーだっのかもしれません。今思ったのですが、ドップラーシフトを見るだけなら波長は多少Hαからズレていいので、もっとセンサー面積の大きなフォーサーズのASI294MCとかで全面を一度に見た方がいいのかもしれません。もしくはモノクロがいいなら1/1.2インチと294よりは少し小さいですが、Apollo-M MAXでもいいかもしれません。


粒状斑

撮影した時間は前後するのですが、Hαの前にC8にBaaderのAstroSolar Safety film(ただしOD5の眼視用)をつけ、PlayerOneのApollo-M MINIで白色光を見てみました。

フィルターは、これまではBaaderの青緑色とかを使ってましたが、今回新たに緑色のフィルターを使ってみました。一枚やっと余ったからです。青緑だと波長粒状班の波長から少しずれるはずで、多分緑の方があっているのかと思います。

画像を保存し忘れましたが、全体を見渡すと黒点がたくさん出ています。小さいものまで合わせると結構な数です。Appolo-M MINIはグローバルシャッターで速い撮影に向いているのですが、ピクセルサイズが4.5μmといつも使っているASI290MMの2.9μmより少し大きいので、4倍のPowerMATEを使って拡大して分解能を出します。そのまま普通にAS!4でスタックしてからImPPGで細部出しをします。
08_10_59_lapl3_ap1_IP._0.5_4.5_5_gamma0.55
それでもやはり、何か少し見えるものの、粒状班らしき形には全然なりません。シーイングが十分でない可能性もあるのですが、ここでふと気づきました。Hα画像の細部に全然敵わないことです。

同じ時間帯、同じ鏡筒で撮影した場合、シンチレーションはそこそこ同じなので、分解能はそれほど変わらないはずです。今回は朝の撮影ということもあり、シーイングはそこそこよさそうなので、Hαは結構細部が出ています。それに比べて白色光はより細部があからさまに出ていない気がします。なぜそうなるのか?可能性はパッと思いつくだけで
  1. 見ている波長域が広いため、色収差などの影響でシャープさに欠けること
  2. 背景が明るいために模様のコントラストが出なくて、スタック段階でうまく位置合わせができていないのでは
の2つあります。

今回はまずは後者を疑ってみました。実際撮影したserファイルを見ても、黒点以外の背景はフワッとした淡いモヤモヤが見えるだけです。AS!4は画面上に打ったたくさんのポイントが合うように画面を歪ませながらスタックしていくのかと想像します。でも、模様がはっきり見えないと位置合わせのしようがないのではないかということです。

serファイルの動画の中に情報としては何か模様は残っているはずなので、その模様を参照して位置合わせをした方がいいはずです。そこで、ser playerのPreprocessingでガンマ値とゲインをいじって動画の段階で模様を見えるようにしてみました。その状態で、一旦別のserファイルに書き出し、それをAS!4でスタックしてみました。

結果は、同様にImPPGでいじるだけでかなり粒状斑らしきものが出てきます。それも、LR deconvolutionのsigmaを上げると粗い点々のようになってしまうので今回は0.5として、ほぼ何も効果を出さずに抑えます。Unsharp Maskingのsigmaが4.5、Amountが5.0とこちらも抑え気味でも十分粒状斑らしき形になりました。どうやら明らかに効果があるようです。
08_10_59_F0001-1000_lapl3_ap680_IP_0.5_4.5_5
一つ上の画像と全く同じパラメータで処理しています。明らかに構造が出ています。

よく考えると、模様が出ない可能性の1も密接に関連しているはずです。粒状斑が見える波長域は限られています。今回はGreenフィルターを使いましたが、まだ波長域が広すぎか、このフィルターは特価で買ったものなので、もしかしたら眼視用でUV/IRに透過領域がある可能性もあるので、動画の背景が明る過ぎる可能性があります。以前使っていたPlayerOneのPhotosphireフィルターは透過波長幅が10nmとかなり暗かったので使わなくなってしまったのですが、減光フィルターを眼視用のOD5から撮影用のOD3.8のものに変えるとかなり明るくなるはずなので、撮影時からコントラストをよくすることができるかもしれません。

ImPPG後にPixInsightのABEの2次をかけフラット化し、MultiscaleLinearTransformをかけさらに細部出しをし、最後にPhotoshopで仕上げたのが以下のものになります。
_08_10_59_F0001_1000_lapl3_ap680_IP_0_5_4_5_5_ABE_MLT_cut
以前はかなり無理な画像処理で無理やり何か出していましたが、今回は無理な画像処理はしなくても、粒状斑に見えるようなものが出始めています。とりあえずの、ポイントはスタック前の処理だったわけです。

少なくとも少し手がかりは見えたので、今後はもう少し方針立てて改善できそうです。改善ポイントは
  • OD3.8フィルターに交換
  • Green+UV/IRカットにするか、Photosphireフィルター
  • 地面の揺れをカットするために三脚の足にゴムを挟む
などでしょうか。まだシンチレーションが悪い可能性もあるので、いい時間帯を狙うことも続けていきたいと思います。


休日が晴れた時は太陽撮影をできるだけしようと思っています。やっと秋らしくなり、昼間の撮影でも暑くなくて快適です。

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最初準備している時は曇りがちだったので、C8の補正板の清掃をしたり、カメラのチルターを新しいものに交換したりなど、少し機材メンテナンスをしました。補正版はここしばらく触ってなかったのでほこりだらけでした。

あと、新しいPCで太陽撮影ができるようにアプリをいくつかインストールしました。といってもすでに電視観望で使っているPCなので、新たにインストールしたものはCelestronのASCOMドライバーとImPPGだけです。あとはSharpCapを最新版にしたくらいでしょうか。

まずはPSTでのHα画像です。鏡筒はC8でカメラはASI290MMなので、そこそこ拡大しています。曇りの間を狙っての撮影となりましたが、シーイングも良くないので、ボケボケです。大きな黒点は見当たらず、細かいものがいくつか出ていました。下の画像は一つ一つは小さいですが、少し密になっている黒点で、上半分がAR3451群で、下半分がAR3452群になります。

13_14_38_lapl4_ap493_IP_cut


プロミネンスもでていますが、その中で一番大きいものを。
13_17_29_lapl4_ap194_IP

次に、白色画像です。あ、カメラをASI290MMそのまま使ってしまったので、いつも入れているPlayer OneのPhotosphereフィルター入れるの忘れてました。なので、白色光です。上で見せた黒点AR3451群とAR3452群になります。シンチレーションは良くないのに、さらにPhotosphereフィルター入れてないのに、意外に粒状班が見えています。前回のApollo-M MINIからカメラのピクセルサイズが半分程度になったのが効いているのかと思います。

13_26_53_lapl4_ap504_IP_cut

その後、4倍のPowerMATEを入れて、シーイングが良くならないか少し期待して30分ほど粒状班撮影をしてましたが、全然ダメでした。上の等倍のと解像度がほとんど変わらないくらいです。カメラの分解能は上がっているので、逆に倍率が高すぎたのでしょうか?明日と明後日、昼間晴れたらもう少し試してみます。

いずれにせよ、シーイングはとにかく見てみないと分からないので、今後もうしばらくは続けたいと思います。でももう秋だから北陸だとそもそもシーイングはダメなのかもしれません。

休日で晴れているので太陽撮影です。大きな目的は粒状班ですが、まずはHα画像から。


セットアップ

取り掛かったのは、がストのモーニングでのんびりして帰ってきてからの、ちょうど正午12時くらいからでしょうか。

まずはいつものC8とPSTです。まずPCの画面に写した段階で、そこまでシンチレーションは酷くはないですが、前回の9月10日の時よりも明らかに揺れています。もうこの時点で粒状班は諦めました。Hα画像も処理をしてみると分解能が明らかに劣っています。なのでこの日の画像は記録程度の意味しかありません。


Hα画像

結果だけ示します。真ん中ら辺に目立つ黒点が2つ出ていました。宇宙天気ニュースによると、大きい方からAR3435とAR3440だそうです。番号が小さいほうが先に出ていたもので、先に裏側に回り込みます。

AR3435
12_44_01_lapl4_ap485_IP


AR3440
12_31_29_lapl4_ap530_IP

シンチレーションがいいとImPPGのSigmaが小さい値でかなり細かい模様が残り、分解のがいいことがよくわかります。9月10日の画像は1.5とかせいぜい2でした。シンチレーションが悪くなると、Sigmaの値を大きくしてごまかすような形になります。今回は3とか4でしたので、やはり分解能がでないです。

プロミネンスもいくつか出ていましたが、一つだけ撮影しました。

12_15_48_lapl4_ap530_IP

撮影データです。
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2023年9月24日12時15分-12時44分
  • 鏡筒: Celestron C8、口径203mm、焦点距離2032mm、F10
  • エタロン: Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI290MM
  • 撮影ソフト: SharpCap 4.1 (64bit)
  • 画像処理: AS3にてスタック、ImPPGで細部出し、PhotoshopCCで後処理


VISACでの粒状班撮影

シンチレーションが悪いので多分ダメなのはわかっているのですが、一応粒状班を撮影してみました。前回PowerMATEの2倍では拡大率が不十分だったので、今回はPowerMATEの4倍を使いました。

今回はC8だけでなく、VISACでも撮ってみました。もしかしたらC8に固有の問題があるかもしれないとも思ったからです。でも見た限りだと、C8もVISACもどちらも同様で劇的な違いはなく、どちらも全然ダメでした。

IMG_8604

撮影したものですが、結局画像処理をするとC8でとったものの方が少しだけよかったので、こちらを載せておきます。

13_12_03_lapl4_ap667_PI_cut

でもまだ分解能が全然足りていません。また休日に晴れていたら撮影してみます。


太陽粒状斑撮影にフィルターワークで新兵器投入です。今回はサイトロンから新発売のPlayer One社のPhotosphere filter。540nm付近を10nmの幅で透過するようなフィルターです。



IMG_6148

元々Barrderで「Solar Continuum Filter」という名前で同様のフィルターが古くから販売されていたようなのですが、国際光器のページを除いても在庫なし、本国のページを覗いても今も2インチしか残っていないようです。

最近Player Oneから同等のフィルターが発売されたことを本国のページから知ったのですが、PayPalでは自宅住所の県の情報が入らないという、おそらくシステムのエラーのようで、うまく購入することができませんでした。その足で少し前にシュミットさんに問い合わせてみたら、いずれ日本でも発売するとのこと。期待して待っていると、早速6月24日に発売開始のアナウンスがあり、早々と使ってみたというわけです。

さて、このフィルターで何が見えるかというと、太陽の光球面のベナール対流起因の粒状斑と呼ばれるものです。下層から上がってくる斑の中心の明るい部分と、下層に下がっていく周りの暗い部分の境界の温度が6000K程度になっていて、波長で言うとちょうど540nm程度でその明るさの差が見やすくなるため、粒状班模様としてよく見えるようです。

明暗がはっきりと

前回の撮影ではこのフィルターの代わりにBaaderのYellowフィルターを使っていましたが、模様の明暗部分のあぶり出しにかなり苦労していました。

今回はその明暗のあぶり出しは相当楽になりました。結果はというと、

final

くらいで、分解能に関しては今回は前回の結果には達しませんでした。今回導入したフィルターと画像処理方法がある程度確立してきたため、この程度のものはコンスタントに出るようにはなってきました。ただし前回も今回も強画像処理の影響が大きく、もう少し画像処理をしなくても自然に粒状斑が出るよう、まだ撮影に改善の余地がありそうです。


何が効いているのか?

うまく見えるかかどうかは
  • シーイング
  • シンチレーション
  • ピント
  • 波長
  • 焦点距離 
  • カメラの分解能
  • 口径
に依存します。上に行くほど運で、下に行くほど装備といったところでしょうか。何が足りていて、何が足りないのか、少しだけ検討します。
  • 口径はC8で20cmでそこそこ十分なはずです。まだ惑星撮影の典型的な分解能に達していないので、口径制限とはなっていないはずです。
  • ピントは合ったと思った前後を何ショットか撮っておけばいいでしょう。
  • シーイングは今日はそこまで良くなかったようですが、冬よりは遥かにマシになっているようです。これは日に依るので、地道に繰り返していい日を待つしかありませんが、基本的に休日しか撮影できないので、つらいところです。朝早く起きるか?多分無理です。
  • シンチレーション等意味では、外気温40度近い状態での撮影なので、多分鏡筒などの温度が物凄いことになっています。筒内気流がどうなっているか?まだ全然考えていないので、ここら辺がキーになるのかもしれません。
  • 波長に関しては、今回のPhotosphereフィルターを使うことができるようになったので、これ以降は解決のはずです。
  • 今回はPowerMATEの2倍を入れてC8の焦点距離2000mmを4000mm換算で撮影しました。ピクセルサイズから考えるとまだ全然アンダーサンプルです。なので焦点距離を伸ばす方向が正しい気がしています。手持ちのScience Exploereの5倍のバローを次回導入してみようと思います。もしかしたら以前使ったことのあるPowerMATEの4倍を購入するかもです。

今後

とにかく、もう少し焦点距離を伸ばして、十分なオーバーサンプル状態のカメラで、シーイングのいい日を狙って撮影ということになりそうです。筒内気流はどうするか?もう少し考えます。

Baaderの減光フィルム、Televueの2倍のPowerMATE、Player OneのPhotosohereフィルターときて、状況は徐々にですが、着実に改善されてきています。もう少しでしょうか。

最近すごく忙しくて、太陽なんかやっている暇ないはずなのに、せっかくの休日の晴れだとどうしても試したくなってしまいます。ゴールデンウィークの頃に撮影した溜まっている画像の処理も全然進んでいません。うーん、大丈夫か?


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