たまっている画像処理に少し取り掛かります。といっても最近撮影した話ではなく、もう何ヶ月も前のものです。
今回はその中で、MACHOさんのご好意でチリのリモート天文台で撮影させて頂いたものを仕上げました。撮影から記事にするまで長らくかかってしまい、申し訳ありませんでした。結果は画像を見て頂ければわかりますが、十分に満足できるものとなりました。
以前、MACHOさんのご好意でチリのリモート天文台の電視観望を試させ得ていただく機会があったのですが、
今回はさらにご好意に甘えて、撮影までさせていただきました。
撮影日はGW中で、その頃に調子を悪くしてしまった私はある意味これがGW中の唯一の天文活動でした。 事前の打ち合わせで4日間割り当てて頂いたので、事前にターゲット天体を色々考えていました。実際には意外に曇りだったり、途中から私の方が入院などで、結局撮影できたのは1日半です。それでも環境といい、機材といい、結果から考えても十分楽しむことができました。
ターゲット天体には優先順位をつけてあったので、半日ごとくらいに3つの天体を撮影しました。今回のターゲットは撮影順に、
「ほぼ」と書いたのには理由があって、星を始めて結構すぐくらいにオートラリアに出張があって、簡単な機材を持って撮影も試みたことがあります。でもその時はあいにくの満月期で、まだ機材的にも自分の技術的にも全然未熟で、随分と悔しい思いをしたものです。
撮影はGWなのでかなり前のことになってしまいますが、記事は当時ある程度書いておいたことと、別途記録が残っているので、なんとかなります。あとはできるだけ記憶を辿ってになります。
機材はFRA300 Pro+ASI2600MC Proです。モノクロのTOA150もあったのですが、最初は簡単なカラーからと思っていたのですが、今回は時間切れだったので、泣く泣くTOA150の方は諦めることになってしまいました。
FRA300には特に光害防止フィルターなどは何も付いていませんでしたが、さすがにかなり暗い空です、かなり迫力ある画像が撮影中からNINAの画面上で見えていました。
撮影に使うソフトは、
撮影までの準備は、前回電視観望の時にあらかじめ接続方法や、リモート接続した後の操作方法を聞いていたので、それほど困ることはありませんでした。唯一迷ったのが赤道儀のパークの解除方法です。電視観望のときはどこかを操作してアンパークしていたと思ったのですが、その場所が分からなくて今回はNINAからアンパークしました。ASCOM関連なども一通り見たのですが結局分からなくて、後から聞いたら、MACHOさんも普段NINAからアンパークしているみたいで、それで良かったみたいです。でも電視観望の時はNINAを使っていないはずなので、もしかしたら別のところにもパークを制御できるスイッチがあるのかもしれません。
撮影に関してはほとんど準備されていたので、特にそこまで迷うこともなく、ほとんど問題なかったでしょうか。あえて言うなら、私は普段NINAのシーケンサーは簡単なレガシータイプを使っているのですが、「レガシータイプをデフォルトでオフにする」というオプションが入っていたのでオフにしました。そのオプションの場所を探すのにちょっと迷ったくらいです。
初日、最初の撮影はNGC3372: イータカリーナ星雲狙いです。少し時系列を追います。
その後、昼頃に再び接続してみると星が見えています。そのまま導入して、すぐに撮影を始めました。ただし、やはり少し曇り気味で、1時間半ほどで終了となってしまいました。
というわけで初日はお試し程度でした。2日目にかけます。
2日目: 最初にドームにアクセスしたのが日本時間で朝の7:44でした。初日のイータカリーナ星雲がまだ1時間半ほどの撮影しかできていないので、午前中は今一度イータカリーナ星雲を撮り溜めます。
この日の時系列のログが残っていたので、コピペしておきます。
撮影が始まるとまず気づいたのが、赤道儀の安定性です。ガイドラインが相当ピターっと0付近にへばりついています。私の手持ちのCGX-Lも結構安定していると思っていましたが、さらに別次元の安定度です。実際撮れた画像を見ても、ほぼどの画像も星が円に近くなっています。
その後、記録を読み返すと、9:54に天頂越えのところで少し迷ったようです。撮影開始から2時間後です。一旦、本当に反転しているか、Parkとかしてあえて確かめたりしましたが、撮影された画像を後から見たら、すでに自動で反転されていたことがわかりました。自動反転も安定しているようで、これは楽です。反転を確認したついでに、時間的にも丁度いいのでPlateSolveとAFを今一度実行しました。その後、10:11に撮影再開です。
3日目のターゲットは大マゼラン星雲です。この日は朝から少し用事があり、接続開始時間が遅れてしまいました。時系列のログを見ても、
9:34 接続開始で、すぐにLMCを導入。Unpark, Platesoleve, PHD2, AF問題無し。
と、とても順調で、昼頃にはLMCを終了しました。
実はここからTOA150にしてオメガ星団をモノクロで撮影しようとしていたのですが何か様子がおかしいです。結局13時20分にはモニターカメラでドームがしまっていることが確認できました。どうやら途中から天気が悪くなってきたようで、ドームが閉じられてしまったようです。
というわけで、ずっと天気が良かったわけではなく、その後に体調を悪くしたこともあり、割り振っていただいた4日のうち約1日半ほどしか撮影に使うことができませんでした。惜しむらくはモノクロカメラでの撮影でしたが、天気ばかりはしかたありません。それでもFRA300 ProとASI2600MCで、十分なクオリティーの画像を、十分な枚数撮影することができました。
今回は3つの画像をほぼ並行して処理しました。
撮影後、ダークファイルとフラットファイルはあらかじめ撮影してくれていたものを頂いたので、すぐにPixInsightのWBPPにかけました。ここしばらくはモノクロカメラでのLRGB合成やSHO合成が多かったので、カラーカメラの真面目な画像処理は久しぶりです。自分でカラー合成しなくていいのは、楽でいいですね。特にフラットに関しては、モノクロだとそれぞれの色で最淡のところでどうしても差が出てしまうので、合成の時にいつも苦労しています。
今回のフラット化は、そもそも暗いところの撮影でカブリもあまりないのと、画面全体に星雲や銀河が広がっているので、全体の傾向だけ除去しようとフラット化はABEに留めています。その後、定番のSPCCやBXT、ストレッチは主にGHSを使い、Photoshopに渡すところまでは終えました。
その後は無理をしないようにと少し天文から離れていたこともあり、結局画像処理にはほとんど時間を使うことができていなくて今に至ります。もう少し言うと、Photoshopで少しだけいじってみたのですが、ノンフィルターの画像に慣れていないので、どうしてもあぶり出しに苦労しそうなことがわかって、かなり時間がかかりそうだと思ってしまい、そこからなかなか進まなかったというのが正直な所です。
ここ最近、少し時間的に余裕ができてきたので、Photosopで3枚まとめて画像処理を進めました。
まず全般に関してですが、ノーフィルターで写しているので、かなり暗い空で撮影してるとしてもHαとOIIIに関してはインパクトが弱くなっているようです。特にHαフィルターを使った時と比べると、色がどうしても眠いような感じになってしまいます。というよりも、暗い空でフィルターなしで撮影したことなんてこれまでほとんどなかったので、むしろこちらの方が正しい色に近いと言えるのかもしれません。そもそも本当の色というのが何かという議論もあるので、何が正しいか何が間違っているかの議論自体意味があるかわからないのですが、条件のいい暗い空でノーフィルターで撮影するというの経験は、しないよりはしておいた方がいいと実感しました。今後の色使いに少し影響が出るかもしれません。
個々の画像についての画像処理も踏まえながら結果を示します。
まずはイータカリーナ星雲。ナロー撮影でOIIIフィルターを使うと、赤い星雲をとってもある程度の青い成分が残るのですが(例えば北アメリカ星雲)、今回のイータカリーナを見ると青成分はかなり少ないようです。色彩豊かに見せるために少し青成分を強調しましたが、こちらも本来の色はもっと赤だけに近いのかもしれません。
これだけHαが多い領域で、たとえノーフィルターだとしても赤は出ています。それでも赤のインパクトが今一つ出ません。画像処理でどうこうするというより、やはりこれはノーフィルターの特徴の色のようです。普段ナローバンドフィルターを通してみている色とは結構違うというのが実感です。
でも南天のメジャー天体で、初撮りでここまで出るのはかなり満足です。日本からだと見えない天体だと思うと尚更です。
次は小マゼラン星雲です。スタック直後のあぶり出し前の画像では、赤い部分がほとんど出ていませんでした。ノーフィルターではこれくらいが限界でしょうか。それでも青い星雲本体の中での赤なので、上のイータカリーナとは違い、インパクトはあまり必要なさそうで、バランス的にはいい赤だと思います。
小マゼラン本体もそこそこカラフルなことがわかります。下に7年前に撮った小マゼラン星雲を再掲載しましたが、構図、色、分解能など、もう雲泥の差です。
最後は大マゼラン星雲です。こちらも一枚あたり3分という露光時間は少し長かったかもしれません。恒星が一部飽和しているのは仕方ないですが、特にLMCでは右下の星雲の明るい部分も一部飽和してしまい、恒星と星雲の分離の時点で混ざってしまうところがありました。私は普段恒星と背景の合成をPhotoshopのレイヤーの「覆い焼き(リニア) - 加算」を使いますが、今回は「スクリーン」を使いました。「スクリーン」の方が飽和を多少避けることができたので、こちらの方が正しいのかもしれません。でも「スクリーン」だと恒星が弱くなるので、結局強調しなくてはならなくて、明るい部分が新たに飽和しないように、かなり手間がかかりました。
大マゼラン星雲の名を冠するのなら、もう少し広い画角で撮影できればよかったです。この大きさだと、腕が回転しているような様子は写すことができません。それでもノーフィルターでよくここまで赤が出たと思います。本体の淡い赤も表現できています。割れるような黄色のヒビをもう少し強調したかったのですが、かなり暗い部分なのでノイジーです。ここを表現したかったらもっと露光時間を伸ばす必要がありそうです。
恒例のアノテーションです。3連チャンで行きます。さすがメジャー天体で、アノテーションも豪華です。特にLMCはすごいNGCの数です。
7年前にハミルトンアイランドに行って50mmレンズとEOS 60Dで撮った小マゼラン星雲はこんな感じです。総露光時間はなんと、たったの7分20秒です。
まだ星を初めて1年で海外へ持っていく機材もままならない状況、画像処理も未熟と、結果としてほとんど何も出ていないですね。小マゼラン星雲のすぐ上にあるのは大きな星かと思っていたのですが、球状星団だったのですね(笑)。これを初の南天撮影とするなら、7年間経ってやっと自己更新です。
実質初めてと言っていい南天の空です。しかもメジャー天体を3つもいっぺんに撮ることができました。もう大満足です。貴重な機会を提供していただいたMACHOさんにはとても感謝しています。
リモート天文台はセットアップは大変かもしれませんが、一度できて仕舞えばものすごくパフォーマンスが良さそうです。晴天率も日本より良さそうですし、画像がどんどん溜まっていくのか、1枚にじっくり時間をかけるのか、成果が出るのも納得です。特に今回は上げ膳据え膳で使わせて頂いただけなので、あまりに呆気なくこれだけの画像が得られて、ある意味もうびっくりです。
個人的には機材とかを触っていろいろ改良して、その改良を結果として天体写真で確認したいクチなので、今回のリモート撮影のような恵まれすぎた環境を続けてしまうと、自分の手を入れらなくて物足りなく感じてしまうかもしれません。その分、画像処理に時間をかけて個性を出すこともできると言ったところでしょうか。
この環境を自由に使えることは、羨ましくもあり、ある意味最終形態のようなものなので、ここまでできてしまうと少し寂しくもあると言うのが正直な所です。将来的には同様のサービスがもっと増えて、安価で選択肢も増えていくのかと思います。かと言って、自分でセットアップして撮影するのがなくなることもあり得ないと思います。
最後に、今回は貴重な経験をさせていただいて、本当にありがとうございました。この機会を与えてくれたMACHOさんには改めて感謝いたします。画像処理まで時間がかかってしまい申し訳ありませんでしたが、また何か機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
今回はその中で、MACHOさんのご好意でチリのリモート天文台で撮影させて頂いたものを仕上げました。撮影から記事にするまで長らくかかってしまい、申し訳ありませんでした。結果は画像を見て頂ければわかりますが、十分に満足できるものとなりました。
南天天体の撮影チャンス
以前、MACHOさんのご好意でチリのリモート天文台の電視観望を試させ得ていただく機会があったのですが、
今回はさらにご好意に甘えて、撮影までさせていただきました。
撮影日はGW中で、その頃に調子を悪くしてしまった私はある意味これがGW中の唯一の天文活動でした。 事前の打ち合わせで4日間割り当てて頂いたので、事前にターゲット天体を色々考えていました。実際には意外に曇りだったり、途中から私の方が入院などで、結局撮影できたのは1日半です。それでも環境といい、機材といい、結果から考えても十分楽しむことができました。
ターゲット天体には優先順位をつけてあったので、半日ごとくらいに3つの天体を撮影しました。今回のターゲットは撮影順に、
- NGC3372: イータカリーナ星雲
- SMC (小マゼラン星雲)
- LMC (大マゼラン星雲)
「ほぼ」と書いたのには理由があって、星を始めて結構すぐくらいにオートラリアに出張があって、簡単な機材を持って撮影も試みたことがあります。でもその時はあいにくの満月期で、まだ機材的にも自分の技術的にも全然未熟で、随分と悔しい思いをしたものです。
撮影環境
撮影はGWなのでかなり前のことになってしまいますが、記事は当時ある程度書いておいたことと、別途記録が残っているので、なんとかなります。あとはできるだけ記憶を辿ってになります。
機材はFRA300 Pro+ASI2600MC Proです。モノクロのTOA150もあったのですが、最初は簡単なカラーからと思っていたのですが、今回は時間切れだったので、泣く泣くTOA150の方は諦めることになってしまいました。
FRA300には特に光害防止フィルターなどは何も付いていませんでしたが、さすがにかなり暗い空です、かなり迫力ある画像が撮影中からNINAの画面上で見えていました。
撮影に使うソフトは、
- 導入と位置確認: SkyChart(Cartes du Cael)
- ガイド: PHD2
- 撮影: NINA
撮影までの準備は、前回電視観望の時にあらかじめ接続方法や、リモート接続した後の操作方法を聞いていたので、それほど困ることはありませんでした。唯一迷ったのが赤道儀のパークの解除方法です。電視観望のときはどこかを操作してアンパークしていたと思ったのですが、その場所が分からなくて今回はNINAからアンパークしました。ASCOM関連なども一通り見たのですが結局分からなくて、後から聞いたら、MACHOさんも普段NINAからアンパークしているみたいで、それで良かったみたいです。でも電視観望の時はNINAを使っていないはずなので、もしかしたら別のところにもパークを制御できるスイッチがあるのかもしれません。
撮影に関してはほとんど準備されていたので、特にそこまで迷うこともなく、ほとんど問題なかったでしょうか。あえて言うなら、私は普段NINAのシーケンサーは簡単なレガシータイプを使っているのですが、「レガシータイプをデフォルトでオフにする」というオプションが入っていたのでオフにしました。そのオプションの場所を探すのにちょっと迷ったくらいです。
撮影初日は少しだけ
初日、最初の撮影はNGC3372: イータカリーナ星雲狙いです。少し時系列を追います。
- 午前7時過ぎ、シンテレワークでドームに接続成功。チリはほぼ地球の裏側にあたるので、時差が13時間。5月で日本では日が長いのに比べて、チリはこの時期は夜が長いので撮影時間は十分確保できます。
- まだ日が残る明るいうちに、モニター用のASI120MCで見て、望遠鏡がPark位置にあることと、まだドームが閉じていることを確認。
- skychatで赤道儀の現在位置を確認して、これでもPark位置にあることを再確認。
- 午前8時前くらい、天文薄明に入りSharpCap+ASI120MCでドームが開いていることを確認。ドームの開閉は現地の天気を見て、現地スタッフがやってくれるようです。
- skychatで導入成功。NINAの試しのライブ撮影ででFRA300Pro+ASI2600MCでイータカリーナ星雲が見えた。
- カメラの冷却を開始し、その後PlateSolveも成功。
- PHD2で一度はガイドまでオンになった。
- 午前8時過ぎ、上記PHD2の設定中に突然PHD2の画面が見えなくなった。ドームが閉じたのか?その判断がつかない。
その後、昼頃に再び接続してみると星が見えています。そのまま導入して、すぐに撮影を始めました。ただし、やはり少し曇り気味で、1時間半ほどで終了となってしまいました。
というわけで初日はお試し程度でした。2日目にかけます。
撮影2日目は絶好調
2日目: 最初にドームにアクセスしたのが日本時間で朝の7:44でした。初日のイータカリーナ星雲がまだ1時間半ほどの撮影しかできていないので、午前中は今一度イータカリーナ星雲を撮り溜めます。
この日の時系列のログが残っていたので、コピペしておきます。
- 7:48 SharpCap+ASI120MCでドームが開いていることを確認。
- 7:49 NINAからUnPark
- 7:50 SkyyChartでNGC3372導入
- 7:56 NINAで画像確認とPlateSolve
- 7:58 Phd2でキャリブレーション開始。
- 8:01 キャリブレーション完了、オートガイド開始。
- 8:19 EAFの「ZWO forcuser (2)」に接続してオートフォーカス開始
- 8:34 撮影開始
- 8:40 一枚目確認。大丈夫そう。綺麗。
と当時の記録を見てもかなり順調だったことがわかります。EAFの調整から撮影開始まで少し時間が空いているのは、フィルターホイールに迷っていたからです。カラーカメラでフィルター無しなのでフィルターホイールの設定は意味がないはずなのですが、EFWが接続されているようなので、何か変わるのかと思って確証が持てませんでした。結局このフィルターはTOA150についているEFWだということが後からわかりました。
撮影が始まるとまず気づいたのが、赤道儀の安定性です。ガイドラインが相当ピターっと0付近にへばりついています。私の手持ちのCGX-Lも結構安定していると思っていましたが、さらに別次元の安定度です。実際撮れた画像を見ても、ほぼどの画像も星が円に近くなっています。
その後、記録を読み返すと、9:54に天頂越えのところで少し迷ったようです。撮影開始から2時間後です。一旦、本当に反転しているか、Parkとかしてあえて確かめたりしましたが、撮影された画像を後から見たら、すでに自動で反転されていたことがわかりました。自動反転も安定しているようで、これは楽です。反転を確認したついでに、時間的にも丁度いいのでPlateSolveとAFを今一度実行しました。その後、10:11に撮影再開です。
イータカリーナの高度が低くなってきたので、次の天体のSMC: 小マゼラン星雲に移ります。NINAに自動導入とプレートソルブ込みで指示してあって、後から見たら14:40に自動的にSMCに切り替わっていて、そのまま撮影も開始されていました。結局この日は日本時間の18時近くまで撮影していました。カメラは撮影が終わると自動で昇温するようにNINAでセットできるので、後片付けはParkすることくらいでしょうか。こちらもとても簡単で、ドームがかなり楽なのを思い知らされます。
3日目の撮影は途中まで
3日目のターゲットは大マゼラン星雲です。この日は朝から少し用事があり、接続開始時間が遅れてしまいました。時系列のログを見ても、
9:34 接続開始で、すぐにLMCを導入。Unpark, Platesoleve, PHD2, AF問題無し。
9:41 撮影開始
13:00 LMC撮影終了
と、とても順調で、昼頃にはLMCを終了しました。
実はここからTOA150にしてオメガ星団をモノクロで撮影しようとしていたのですが何か様子がおかしいです。結局13時20分にはモニターカメラでドームがしまっていることが確認できました。どうやら途中から天気が悪くなってきたようで、ドームが閉じられてしまったようです。
というわけで、ずっと天気が良かったわけではなく、その後に体調を悪くしたこともあり、割り振っていただいた4日のうち約1日半ほどしか撮影に使うことができませんでした。惜しむらくはモノクロカメラでの撮影でしたが、天気ばかりはしかたありません。それでもFRA300 ProとASI2600MCで、十分なクオリティーの画像を、十分な枚数撮影することができました。
画像処理
今回は3つの画像をほぼ並行して処理しました。
撮影後、ダークファイルとフラットファイルはあらかじめ撮影してくれていたものを頂いたので、すぐにPixInsightのWBPPにかけました。ここしばらくはモノクロカメラでのLRGB合成やSHO合成が多かったので、カラーカメラの真面目な画像処理は久しぶりです。自分でカラー合成しなくていいのは、楽でいいですね。特にフラットに関しては、モノクロだとそれぞれの色で最淡のところでどうしても差が出てしまうので、合成の時にいつも苦労しています。
今回のフラット化は、そもそも暗いところの撮影でカブリもあまりないのと、画面全体に星雲や銀河が広がっているので、全体の傾向だけ除去しようとフラット化はABEに留めています。その後、定番のSPCCやBXT、ストレッチは主にGHSを使い、Photoshopに渡すところまでは終えました。
その後は無理をしないようにと少し天文から離れていたこともあり、結局画像処理にはほとんど時間を使うことができていなくて今に至ります。もう少し言うと、Photoshopで少しだけいじってみたのですが、ノンフィルターの画像に慣れていないので、どうしてもあぶり出しに苦労しそうなことがわかって、かなり時間がかかりそうだと思ってしまい、そこからなかなか進まなかったというのが正直な所です。
ここ最近、少し時間的に余裕ができてきたので、Photosopで3枚まとめて画像処理を進めました。
まず全般に関してですが、ノーフィルターで写しているので、かなり暗い空で撮影してるとしてもHαとOIIIに関してはインパクトが弱くなっているようです。特にHαフィルターを使った時と比べると、色がどうしても眠いような感じになってしまいます。というよりも、暗い空でフィルターなしで撮影したことなんてこれまでほとんどなかったので、むしろこちらの方が正しい色に近いと言えるのかもしれません。そもそも本当の色というのが何かという議論もあるので、何が正しいか何が間違っているかの議論自体意味があるかわからないのですが、条件のいい暗い空でノーフィルターで撮影するというの経験は、しないよりはしておいた方がいいと実感しました。今後の色使いに少し影響が出るかもしれません。
個々の画像についての画像処理も踏まえながら結果を示します。
イータカリーナ星雲
まずはイータカリーナ星雲。ナロー撮影でOIIIフィルターを使うと、赤い星雲をとってもある程度の青い成分が残るのですが(例えば北アメリカ星雲)、今回のイータカリーナを見ると青成分はかなり少ないようです。色彩豊かに見せるために少し青成分を強調しましたが、こちらも本来の色はもっと赤だけに近いのかもしれません。
「NGC3372: イータカリーナ星雲」
- 撮影日: 2024年5月5日0時4分-1時35分、5月5日19時33分-5月6日0時4分
- 撮影場所: チリ El Sauce Observatory
- 鏡筒: Askar FRA300 Pro(焦点距離300mm、口径50mm、F5)
- フィルター: なし
- カメラ: ZWO ASI2600MC Pro (-10℃)
- ガイド: ASI174MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
- 撮影: NINA、bin1、Gain 100、オフセット 50、露光時間5分x63枚=5時間15分
- 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
これだけHαが多い領域で、たとえノーフィルターだとしても赤は出ています。それでも赤のインパクトが今一つ出ません。画像処理でどうこうするというより、やはりこれはノーフィルターの特徴の色のようです。普段ナローバンドフィルターを通してみている色とは結構違うというのが実感です。
でも南天のメジャー天体で、初撮りでここまで出るのはかなり満足です。日本からだと見えない天体だと思うと尚更です。
小マゼラン星雲
次は小マゼラン星雲です。スタック直後のあぶり出し前の画像では、赤い部分がほとんど出ていませんでした。ノーフィルターではこれくらいが限界でしょうか。それでも青い星雲本体の中での赤なので、上のイータカリーナとは違い、インパクトはあまり必要なさそうで、バランス的にはいい赤だと思います。
「SMC: 小マゼラン星雲」
- 撮影日: 2024年5月6日1時40分-6時2分
- 露光時間5分x50枚=4時間10分
小マゼラン本体もそこそこカラフルなことがわかります。下に7年前に撮った小マゼラン星雲を再掲載しましたが、構図、色、分解能など、もう雲泥の差です。
大マゼラン星雲
最後は大マゼラン星雲です。こちらも一枚あたり3分という露光時間は少し長かったかもしれません。恒星が一部飽和しているのは仕方ないですが、特にLMCでは右下の星雲の明るい部分も一部飽和してしまい、恒星と星雲の分離の時点で混ざってしまうところがありました。私は普段恒星と背景の合成をPhotoshopのレイヤーの「覆い焼き(リニア) - 加算」を使いますが、今回は「スクリーン」を使いました。「スクリーン」の方が飽和を多少避けることができたので、こちらの方が正しいのかもしれません。でも「スクリーン」だと恒星が弱くなるので、結局強調しなくてはならなくて、明るい部分が新たに飽和しないように、かなり手間がかかりました。
「LMC: 大マゼラン星雲」
- 撮影日: 2024年5月6日20時46分-23時59分
- 露光時間5分x38枚=3時間10分
大マゼラン星雲の名を冠するのなら、もう少し広い画角で撮影できればよかったです。この大きさだと、腕が回転しているような様子は写すことができません。それでもノーフィルターでよくここまで赤が出たと思います。本体の淡い赤も表現できています。割れるような黄色のヒビをもう少し強調したかったのですが、かなり暗い部分なのでノイジーです。ここを表現したかったらもっと露光時間を伸ばす必要がありそうです。
Annotation
恒例のアノテーションです。3連チャンで行きます。さすがメジャー天体で、アノテーションも豪華です。特にLMCはすごいNGCの数です。
初期の頃からの比較
7年前にハミルトンアイランドに行って50mmレンズとEOS 60Dで撮った小マゼラン星雲はこんな感じです。総露光時間はなんと、たったの7分20秒です。
まだ星を初めて1年で海外へ持っていく機材もままならない状況、画像処理も未熟と、結果としてほとんど何も出ていないですね。小マゼラン星雲のすぐ上にあるのは大きな星かと思っていたのですが、球状星団だったのですね(笑)。これを初の南天撮影とするなら、7年間経ってやっと自己更新です。
振り返ってみて
実質初めてと言っていい南天の空です。しかもメジャー天体を3つもいっぺんに撮ることができました。もう大満足です。貴重な機会を提供していただいたMACHOさんにはとても感謝しています。
リモート天文台はセットアップは大変かもしれませんが、一度できて仕舞えばものすごくパフォーマンスが良さそうです。晴天率も日本より良さそうですし、画像がどんどん溜まっていくのか、1枚にじっくり時間をかけるのか、成果が出るのも納得です。特に今回は上げ膳据え膳で使わせて頂いただけなので、あまりに呆気なくこれだけの画像が得られて、ある意味もうびっくりです。
個人的には機材とかを触っていろいろ改良して、その改良を結果として天体写真で確認したいクチなので、今回のリモート撮影のような恵まれすぎた環境を続けてしまうと、自分の手を入れらなくて物足りなく感じてしまうかもしれません。その分、画像処理に時間をかけて個性を出すこともできると言ったところでしょうか。
この環境を自由に使えることは、羨ましくもあり、ある意味最終形態のようなものなので、ここまでできてしまうと少し寂しくもあると言うのが正直な所です。将来的には同様のサービスがもっと増えて、安価で選択肢も増えていくのかと思います。かと言って、自分でセットアップして撮影するのがなくなることもあり得ないと思います。
最後に、今回は貴重な経験をさせていただいて、本当にありがとうございました。この機会を与えてくれたMACHOさんには改めて感謝いたします。画像処理まで時間がかかってしまい申し訳ありませんでしたが、また何か機会がありましたら、よろしくお願いいたします。