ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:分光

3連休ですが、富山は3日とも天気は駄目の予報。初日の今日、朝起きても雨が降っていて太陽は駄目そうでした。でも昼近くになってきて徐々に青空の範囲が広がってきました。北と東の方はかなり曇っているのに、南側から天頂向けてかなり晴れてきています。ガストでモーニングを食べてのんびりしていたのですが、天気を見て急遽帰宅して、機材の準備を始めました。


2時間くらいの昼間の晴れ

IMG_2147

前回の撮影が10月12日だったので、3週間ぶりくらいになり、結構久しぶりです。Hαでまずは調子を見ます。コリメーターレンズもカメラレンズも少しずれていたので調整します。鏡筒の焦点はかなりズレていました。SharpCapのバージョンを上げたら、起動時に立ち上がるはずの連続撮影のためのSHGスクリプトが認識されなくなってしまいました。SHGスクリプトの新バージョンも出ていたのでそれも試したのですがダメ、SharpCapのバージョンを戻してもダメで、結局SharpCapもSHGスクリプトも旧バージョンに戻してやっと認識されました。時間が惜しいのでとりあえず撮影を開始しました。スクリプトが認識されない問題は後から検証します。

赤道儀の極軸があまり合っていなかったようで、繰り返し撮影の間に結構な速さで太陽位置が左にずれていきます。確かに赤道儀が少し西向きになっている様子なので、赤道儀の水平回転ねじで合計3回転ほど回して東方向に回転し、その後は10ショット撮るくらいではズレがわからなくなるくらいになりました。

Hαを18ショット撮って安定に撮影できることを確認してから、次の波長に移ったのですが、その後すぐに曇ってきてしまい、機材を片付けた直後に雨が降り出しました。正午を中心に2時間くらい晴れていましたが、撮影にかけることができた時間は1時間弱位だったでしょうか。


Hα画像

今日の撮影結果はHαだけです。いつも通りモノクロ画像から順に、ドップラーシフト画像まで載せておきます。

撮影時間に間が空いてしまうと表面の模様が変わってしまい平均化されて分解能が出にくくなるののは分かっているのですが、今回は短時間のうちに枚数を撮ったので、スタックした方が解像度が出ました。撮影した18枚のうち、雲が流れていないなど使い物になる9枚をスタックしてみました。

今回、画像処理は
  1. JSol'ex1の1枚どりのオートストレッチ
  2. AS!4でスタック、Registax6で解像度出し
  3. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度と炙り出し
  4. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度出し、PixInsightのSolarToolsで炙り出し、
の4つを比較してみました。1枚撮りよりは、スタックした方がいずれも分解能が出ます。2のRegistaxは分解能は出るのですが、ダークフィラメントの階調が消えてしまうようなので諦めました。3と4はどちらも良かったですが、カラー化することも考えるとSolarToolsのカラー化機能が使える4の方が良さそうです。その後、4をPixInsightのMultiscale Linear Transformでノイズを少し落として、今回のモノクロ画像の仕上げとしました。結局カラー画像は使わなかったので、3を使っても良かったのかもしれません。

1枚目のモノクロのみスタックしたものを示します。

IP_aligned_lapl2_ap5296_IP_PI_MLT_LHE2_cut

2枚目以降はスタックなしの1枚画像です。
12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_negative_0_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_autostretch_15_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_card_0_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_mix_0_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_doppler

今回ちょっとだけ面白かったのは、P角が25度近くとかなり大きく、軸が相当傾いていたことです。一般的な太陽観測サイトは、例えばよく参照する「宇宙天気ニュース」でもP角補正をしていないので、黒点の位置がかなりズレて見てしまい、最初間違えて上下フリップをしてしまったのではないかと勘違いしたくらいでした。黒点位置があっているかどうかはJSol’Exの「active regeon」画像を見るとわかります。普段出さない画像ですが、向きなど間違えて撮影していないかの確認に使っています。

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_activeregions_15_00

他にも普段出していない画像があって、プロミネンス画像と、そのドップラーシフトというのがあります。いい機会なので、今回載せておきます。
12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_protus_0_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_doppler-eclipse

毎回示すカラー画像は、JSol'Exでモノクロ画像を単にカラー化した「colorized」というものではなく、実は「mix」という出力ファイルで、カラー化された太陽表面に、上のあぶりだされたプロミネンスも合成して疑似カラー化したものを載せるようにしています。なので、ブログに載せてあるカラー画像だけはプロミネンスがよく見えています。他の画像はプロミネンスがほとんど見えていません。ただし、今回のようにモノクロをスタックした場合は、その過程でプロミネンスもあぶりだしているので、その場合はプロミネンスもよく見えるようになっています。

うーん、記録の記事だとあまり書くことがないですね。もう少し天気がいい時間が確保できれば、また劇的に進む予定です。それまではおとなしくいい天気になるのをゆっくり待つことにします。


前回、SHG700を使ってPSTエタロンの応答を測定しました。今回は、透過幅6Å程度と言われているBF(Blocking Filter)及び、ERF (Energy Rejection Filter) 相当に普段使っている透過幅7nmのHαフィルターの応答を測定し、PST全体の応答を検証して見ます。


BFの測定

まずはBFです。実はBFについては、前回の測定の時にすでに測定していました。でも中心波長がHα線の6553Åから全然ずれてしまっていて、隣のピーク近くまでいってしまっていたので、測定自身を疑っていました。今回はHα波長と比較しながら測定してみます。

この日の測定もやはり曇りの日です。太陽の散乱光をSHG700を使ってフラウンホーファー線を映し出します。これが波長のキャリブレーションになるので、正確に見えるようにピントや回折格子の回転角を合わせます。特に今回は、Hα中心波長からのズレをすぐに判断したいので、SharpCapの画面上レチクリ機能を利用して、レチクル線に合うように回折格子を調整しました。具体的には下の画面のようになります。上下のちょうど中心の赤線がHαぴったりになるので、これからする測定もすぐに判断できるはずです。
スクリーンショット 2025-10-05 130303

そして一連の測定後に再度フラウンホーファー線を見て、最初の位置からズレていないことを確認すれば、時間的な波長のズレや、測定で間違って回折格子をズラしてしまったとかがないことも担保されるでしょう。

さて、実際のBFを測定してみました。BFは2つ持っているので、前回測定したもの(実はこちらがスペアのもの)と、普段使っているものも(本当は常用しているものはできるだけ崩したくないのですが)新たに外して測定してみました。ところが何と、前回中心から全然ズレていたものが今回かなり中心に来て、普段常用で使っている正しいはずのものが中心波長から全然ズレています。やはりHαの中心にこないんですよね。

流石にこれはおかしいと思い、いろいろ触ってみました。わかったことは入射光に対してものすごい角度依存性があるということです。例えばズレている時の測定状況は以下のような感じ、上下中心の赤い線から中心がズレるどころか、ほとんどBFの透過範囲にさえ入っていません。
スクリーンショット 2025-10-05 131358

今の段階では精度良く角度を調整できるような機構はないので、LEDの角度を手で微調整します。そうすると下の画像のように、あれだけズレていた透過範囲の中心を赤線の上、すなわちHα線の中心に持ってくることができてしまいます。
スクリーンショット 2025-10-05 132001

本来ならこの時点で入射光の角度依存性を丁寧に測定すべきなのですが、そのためには光源と分光器をきちんと固定して、角度を正確にずらすことができるような機構が必要になってきます。今はそのようなものはないのと、ちょっと大変そうなので、もしかしたら次は望遠鏡にSHG700を取り付けて、直接太陽を見て測定するとかにするかもしれません。角度調整はBFは無理ですが、エタロンは波長調整のための回転部を回すと角度が変わるはずなので、その関係を見るのも面白いかと思います。これらは今後の課題としたいと思います。

話を戻して、BFの透過特性をHα線を中心に持って来た状態で測ってみました。Hα線の周りを拡大したものになっています。グラフのオレンジの点線がフラウンフォーファー線から求めたHα線の位置になります。以下のようになります。
BF

まずここからわかることは、全然左右対称でないこと、ピーク位置は裾野に比べて中心には位置していないことです。。

ピーク位置での測定された最大透過光を1として、左右の光量が0.5になるところの波長を読み取り、その差から波長幅を読み取ったものがFWHM (Full WIdth Half Maximum) になります。今回は6.2Å程度でした。これは一般的に言われている6Å程度というのにかなり近い値です。


ERF

次は、ERF代わりに使っている7nmの天体撮影用のHαフィルターです。

本来はPSTには、BFで取りこぼして透過してしまう、短波長側と長波長側 (実際にはBFは短波長には漏れていないみたいなので、主に長波長側のみ) をカットするフィルターがあります。直接中を見ると枠にITF (Induced Transmission Filter) と書かれているものです。ところがこのフィルターの透過範囲が広すぎて(ここCoronado Blockfilter BF15 , Filter zum ObjektivによるとFWHMで100nm程度)、今のSHG700では一度に測定することができません。今の私のシステム(SHG700+G3M678M)だと測定範囲は18nm程度なので、端の方まで測ろうとすると10回くらい移動しなくてはいけません。面倒なことと、今回はHαの基準を真ん中に合わせたのを崩したくないこと、実際にもうERFとしてITFは使っていなくて、代わりに天体撮影用のHαフィルターを使っているので、今回はITFは諦めることにしてHαフィルターの方を測定します。

測定したHαフィルターは、手元にあるサイトロン製の透過幅7nmのアメリカンサイズのものです。サイトロンジャパンオリジナルと謳っていて、日本で作っていて、合成石英ガラスを採用しているとのことです。ただ、シュミットの販売ページを見ると現在は「在庫なし」となっているようです。これをPSTのアイピース側に入れて実際に使っています。

測定結果です。
HA

左右対称にはなっていませんが、BFに比べて大きな透過幅なので大きな問題ではないでしょう。こちらも一番透過する値の半分の所の左右の波長を読んで、その差をとってやると6.45nmと出ました。公称の7nmを満たしています。


PST全体の性能評価

今回測定したBFとERF(の代わり)を、さらにこちらも改めて実測したエタロンも合わせて表示してみます。エタロンもBFもHαフィルターも真ん中がちょうどHα線になるように、それぞれLEDライトの光の入射角を調整しています。なので、ここでは中心波長からどれだけずれているかなどの議論はできません。
all_wide

特に、興味のあるHα周りを拡大してみます。
all_narrow

BFの透過の端のところが左右の隣のエタロンのピークに少しかかっていることがわかります。狭い範囲なので、Hαフィルターはほぼフラットになります。

これ以降は平らなHαフィルターは省きます。まず、エタロンとBFのを合わせた透過率がどれくらいになるのか、その積を見てみましょう。
sum_eta_BF

確かにエタロンの隣のピークのところの透過率が少し盛り上がっていますが、5%以下なので大した問題ではなさそうです。

でもここで、さらに実測した太陽のスペクトルをかけたものを示します。
sum_eta_BF_spe

元々太陽の吸収線であるHαの暗いところを見ようとしているのですが、それ以外の波長のところは全然明るいわけです。エタロンの隣のピークのところもHα線からはるかに離れているので、当然明るいです。

それを考慮するとHαの中心波長位置に比べて、隣のピーク位置でそれぞれ15%程度の「明るさ」のピークになります。両側にあるので、合わせて30%程度になるでしょうか。実際の明るさは波長で積分したものになるので、Hα線周りの裾野も大きく、そこまで影響はないかもしれませんが、太陽スペクトルと一緒に考えると、そもそもそのHα周りの裾野の影響も相当大きいということを認識しておくべきでしょう。これらの影響はコントラスト低下につながります。そのため、
  • よりフィネスが高い、狭帯域のエタロン
  • 鏡の間の距離がより長い、FSRの大きいエタロン
  • 狭帯域のBF
などが求められるわけです。

その一方、コントラストの影響は眼視には直結しますが、撮影では一定の明るさの光はオフセットとして差し引くことができるので、影響は眼視ほど大きくはありません。もちろん、明るいということはショットノイズも大きいということなので、ノイズとしての影響は当然でます。

さらに、これは明るさだけの問題ではなくて、以前調べたように波長ごとに像そのものが大きく変わるので、コントラストの問題というよりは、どの波長を見るかという波長域の問題になります。



以前検討してみたメーカーの違うエタロンのダブルスタックは眼視という観点では主にコントラストに効き、撮影という観点では主に波長域に効くと考えると、いずれにせよかなり効果的なのかと思います。


まとめと今後

エタロン、BF、ERFと、やっとPSTの性能の実測ができました。ただし、入射光の角度依存性があることは分かりましたが、きちんとした検証は今後の課題です。

このPSTの透過曲線に、太陽スペクルを掛け合わせると、さらにいろいろ検討できることもわかりました。これまで考えてきたことが少しづつつながって、どんどん謎解きが進みます。アマチュア天文の醍醐味ですね。

さてとりあえずの次の目標ですが、手持ちのナローバンドフィルターをそれぞれ測定してみたいと思っています。せっかく手に入れた測定手段なので、まだまだ続きます。


昨日の撮影に引き続いて、日曜の今日も朝から晴れていたので記録撮影です。

IMG_1986

でも、特に新しいことをするわけでもないので、だんだん飽きてきています。この日は、昨日のセッティングが残っていたCaKを最初に撮影し、その後Hαで撮影しました。午前8時半くらいから始めたのですが、Hα撮影の途中で雲が徐々に濃くなってきたので、午前9時15分くらいには早々と撤収しました。暑くないので晴れたらまた再開しようと思いますが、どうなるでしょうか?

IMG_1987


Hα線

いつものようにHα線です。15ショット撮影して、その中で一番きれいなものを選びました。

09_01_29-trimmed_0000_09_01_29-trimmed_autostretch_0_00

09_01_29-trimmed_0000_09_01_29-trimmed_negative_0_00

09_01_29-trimmed_0000_09_01_29-trimmed_autostretch_15_00

09_01_29-trimmed_0000_09_01_29-trimmed_card_0_00

09_01_29-trimmed_0000_09_01_29-trimmed_mix_0_00

height

09_01_29-trimmed_0000_09_01_29-trimmed_doppler


CaK線

CaKですが、少し色を変えました。ちょっと見やすくなったと思います。こちらは12ショット撮影して、午前8時40分の1ショットを選んでいます。

08_40_23-trimmed_0000_08_40_23-trimmed_autostretch_0_00

08_40_23-trimmed_0000_08_40_23-trimmed_colorized_0_00



土曜日の朝からそこそこ晴れていたので、太陽分光撮影です。今日の目的は、前回動画撮影で速度が一定でなかったのか、おかしな太陽画像になってしまったことの検証です。

IMG_1977
これは午後一で撮った撮影風景です。赤道儀が反転した後です。

この日気を付けたことが、赤道儀の赤経の左右バランスでした。定説通り、回転方向に多少荷重がかかるようにします。そうするとテスト撮影でも全く問題なく、きれいな太陽画像が再構築できました。途中曇ったりしたので、晴れ間を狙いながらHαを26ショット、テストも入れたら30ショットくらい撮影しました。

その後、12時を回って、CaK線を撮影します。赤道儀を反転したのですがウェイト位置は触らなかったので、今度は回転方向と逆に荷重が少しかかった状態になってしまっています。この状態で撮影すると、前回見たような、一部スピードが変わったような画像が再現できました。その後、ウェイト位置を少し外側に移動し、回転方向に荷重をかけると、今度はきちんと撮影きます。どうやら赤道儀の赤経体の回転方向と逆に荷重をかけてしまったことで起こったバックラッシュで原因は確定のようです。CaKの時も曇りが多く、晴れ間待ちで何度かに分けての撮影でしたが、13ショットを撮影しました。

いつものように撮影結果です。Hα線からです。今回は15ピクセル (0.13Å) 離れた画像を連続光として載せておきます。

09_26_07-trimmed_0000_09_26_07-trimmed_autostretch_0_00

09_26_07-trimmed_0000_09_26_07-trimmed_negative_0_00

09_26_07-trimmed_0000_09_26_07-trimmed_mix_0_00

09_26_07-trimmed_0000_09_26_07-trimmed_autostretch_-15_00

09_26_07-trimmed_0000_09_26_07-trimmed_card_0_00

09_26_07-trimmed_0000_09_26_07-trimmed_doppler

続いてCaK線です。モノクロとカラーを載せておきます。カラーはJSol’Exの色遣いはちょっとどぎついかもしれません。

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12_59_02-trimmed_0000_12_59_02-trimmed_mix_0_00

この日は午後から某天文台のリモート講習会に参加しました。再来週に試験があります。受かると晴れてリモートで望遠鏡を操作して撮影することができるようになります。


夕方からですが、久しぶりに休日晴れたので、太陽分光撮影です。しかもやっと少し秋らしくなってきて、全然暑くないのです!

G1g8do2aoAUHmIC

新兵器で、日が当たらないようにパラソルを装備しました。


今日の太陽像

記録なので順に載せていきます。まずはモノクロです。スタックなどしていない一枚撮りですが、拡大しても十分な解像度が出ています。結構満足です。

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モノクロ反転画像です。
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カラー画像です。こちらはプロミネンスも強調してあります。
16_26_13-trimmed_0000_16_26_13-trimmed_mix_0_00

緯度経度と、黒点の番号付き画像です。自転軸 (P軸) がかなり傾いているのがわかります。こういった変化を見ることができるのもJSol’Exの利点です。
16_26_13-trimmed_0000_16_26_13-trimmed_card_0_00

ドップラー画像です。面白いのは、青と赤の境界が傾いていて、太陽自転軸の傾きの影響も見えているようです。
16_26_13-trimmed_0000_16_26_13-trimmed_doppler


今日の失敗

実は結構たくさん撮影したのですが、ことごとく失敗でした。HαとCaKと合わせて54ショット撮影したのですが、ほとんどが下の画像のように途中が伸びたりしてしまいました。上に挙げたものは、その中でたまたま唯一生き残ったものです。

0009_16_30_06_autostretch_0_00

伸びている位置はどの画像を見ても大体同じでした。再構築した画像がこのようになる原因は、動画撮影時の赤道儀のスイープのスピードが途中で変わってしまうからです。なぜそうなるのか?まだはっきりとはしていませんが、おそらくバックラッシュが関係しているのではと推測しています。

普段の撮影はほとんど午前の早いうちに済ませてしまいます。でもこの日は午後のしかも夕方近くから日没までのかなり遅い時間です。鏡筒とウェイトの左右バランスに気を使わなかったので、スクリプトでの繰り返しの撮影時に、反転してから録画開始して少ししてちょうどスピードが変わるような状況になってしまっているのかと考えています。次回撮影時に、少し時間を撮って検証してみようと思います。


フィルター特性測定プロジェクト開始

あと、ここしばらく休日で安定に晴れる日が無くて、この日も夕方晴れるのを期待していなくて、とうとう次のステージに進むことにしました。やりたいことはエタロンなどのナローバンドのフィルターの特性を実測することです。とりあえず出だしなので、セットアップの写真だけ載せておきます。

G1ghTC8aoAAOVvC

普通は太陽を光源にすることが多いようなのですが、写真にあるように試しに光源にLEDを使ってみました。LEDは白色光と言われているように、ローカルには波長特性もほとんどなく、かなり平坦でほぼ直接透過光の輝度が測定できそうです。画像にはエタロンフィルター特有のComb (櫛形) 構造がきれいに見えています。別途、太陽の散乱光を使ってフラウンホーファー線を撮影してあるので、回折格子を動かさなければ波長のキャリブレーションができるはずです。今後解析までして、また記事にします。

SHG700での太陽分光撮影ですが、安定に運用できることはほぼわかってきたので、もう少し性能アップを図りたいと思います。そのための下計算をしてみます。


改善パラメータ

太陽の分光撮影で、結果として改善ていきたいのは
  • より細かい波長分解能
  • より細かい空間分解能
の2点です。これらを改善するために分光撮影の構成機器である、1. 鏡筒、2. カメラ、3. 分光器の性能を考えていきます。

1. 望遠鏡に関しては
  • 口径
  • 焦点距離
がパラメータになります。望遠鏡によって収差も当然ありますが、簡単のためここでは考えないこととします。

2. カメラに関しては
  • ピクセルサイズ
が一番効くパラメータです。実際にはセンサーサイズやフレームレートなども関係してきますが、分解脳にはやはりどれだけ細かく写せるかというピクセル自身のサイズが重要です。

3. 分光器に関しては
  • スリット幅
  • 回折格子の溝の数の密度
  • コリメートレンズの焦点距離
  • カメラレンズの焦点距離
が大きく効いてくるでしょうか。

波長分解能についての計算はastrosurfのSol'ExのTheoryのページがわかりやすいでしょう。それでも空間分解能まで含めて自分で計算するのは結構大変なので、Ken Harrison氏が作ったエクセルファイル「SIMSPEC SHG」を使うといいでしょう。最新は2023年6月のversion V1.5bのようです。下の画像は、自分の環境用にSHG700、FC-76、G3M678Mを適用して計算したものです。
SimSpec SHG V1_5b_20250913_SHG700_FC76_G3M678M_cut

ここで注目すべき値は、
  • 波長分解能: Dispersion (r): 0.091 Å/pixel
  • 空間分解能: Spatial (best) resolution: 2.2 arcsec
で、各種パラメータをいじって、これら2つの値を改善することを目標にします。


波長分解能の改善の難しさ

表の値で波長分解能に関するところを見ていくと、よく似た値としてナイキスト周波数も考えたEstimated (best) bandwidthというのがあります。ただし、Hα回りの輝度グラフを書くと、ピクセルごとに輝度に有意な差が見えたために、Dispersionの方で考えることにしました。ここで計算された0.091 Å/pixelは、実際のHα線の撮影動画をJSol'Exで実測した値と一致しています。
スクリーンショット 2025-07-05 101928


でも現実的には、この波長分解能のを改善しようとするのは結構大変で、分光器のカメラレンズの焦点距離を長くするか、回折格子の密度を増やすか、CMOSカメラのピクセルサイズを細かくするくらいしか手がありません。前者2つはSHG700を大幅にてこ入れする必要がありますし、ピクセルサイズはすでに最小に近い部類のG3M678Mを使っているため、これも難しいです。

もしやろうとするなら、SHG700の秀逸なアセンブル(コンパクトさ)を諦めてカメラレンズの焦点距離を伸ばすのが最も簡単かと思いますが、大幅改造になるので波長分解能の改善に関しては今回は諦めることとして、将来の課題としておきたいと思います。実際には撮影して楽しむレベルでは0.091 Å/pixelという値はもう十分すぎる性能なので、ここを改善する場合何か明確な動機を持っておいた方がいいでしょう。


空間分解能の改善の可能性

一方、空間分解脳に関してはまだまだ改善の余地がありそうです。例えば、上記設定の鏡筒の口径を76mmから120mmに変えると、
  • 空間分解能は2.2 arcsecから1.4 arcsecに改善
されます。手持ちの鏡筒だとTSA120を使うことができます。ですが、その場合焦点距離が900mmになるので、太陽像が大きくなってしまいます。ここで浮上する問題点は
  • スリットの長さが短すぎて太陽像がはみ出してしまう
  • CMOSカメラのセンサーサイズが小さすぎて太陽像がはみ出してしまう
ということです。実際計算すると、太陽サイズの84.8%しか撮影できないため、このままだとモザイク撮影の必要が出てきます。もちろんモザイク画像でも、太陽の縁がある程度映っている限り可能ですが、何枚かスタックすることも考えるとかなり面倒です。

このサイズ拡大問題はそんなに単純ではなくて、スリットサイズやカメラセンサーサイズの拡大を含めて、トータル設計で改善する必要があります。

これに関して、最近MLastroから10mm長のスリットの発表がありました。標準の7mmが700mmの焦点距離まで対応しているので、ざっくりですが焦点距離を1000mm程度まで増やすことができます。これはすでに発注してあるので、そのうち自宅に届くでしょう。

たとえスリット長だけを伸ばしても、カメラセンサーサイズの制限から、それでも太陽像の93.0%までしか一度に入らない計算になります。実際は余裕を見て太陽サイズの120%程度の広さを撮影したいので、カメラセンサーサイズを大きくする必要があります。

焦点距離1000mm程度までなら、IMX183が小さなピクセルサイズと適したセンサーサイズを兼ね備えた候補なのですが、値段的にカメラをぱっと買うのは大変なので、とりあえずは手持ちのASI294MM Proのbin1を試してみようと思っています。ただし、bin1撮影はこれまでの経験でジャジャ馬っぽいことがわかっているのと、フレームレートが出にくい可能性があるので、どうしようもなければ新規にカメラを購入することになるのかと思います。

スリットとセンサーサイズは計算上に出てきてすぐにわかることなのですが、実際にこれらを改善しようとすると、実は問題はこれだけにとどまりません。例えば口径が76mmから120mmに増えると、光量が約2.5倍に増えます。ちょうど焦点位置に置かれるスリットがその光量増加に耐えられるのか、必要なら別途フィルターを追加するなどの処置が必要になるかもしれません。

それでも空間分解能で1.5倍の改善というのは、目に見えてわかる劇的な改善なので、ぜひ試してみたいと思っています。TSA-120とASI294MM Proを適用した改善後の計算結果を示しておきます。

SimSpec SHG V1_5b_20250913_SHG700_TSA120_ASI294MM_cut

カメラを変えたことによりピクセルサイズが若干大きくなって、波長分解能が少し悪くなってしまっています。それでも0.105Å/pixel程度はあるので、十分でしょう。


Sol'Exとの比較

ここで少し、SHG700とSol'Exの違いについて考えてみたいと思います。数値的に光学性能だけ見れば、SHG700よりもSol'Exの方が優れていることが多いのがわかります。例えば、SHG700はコリメートレンズ、カメラレンズともに焦点距離72mmですが、Sol'Exはコリメートレンズが80mm、カメラレンズが125mmと長いものになっています。例えば今の自分のFC-76とG3M678MにSol'Exを取り付けてみます。

SimSpec SHG V1_5b_Solex_FC76_G3M678M_cut


計算結果から分かりますが、
  • 波長分解能は0.091 Å/pixelから0.052 Å/pixel
と劇的に改善することがわかります。これだけみると、Sol'Exの方が得な気がします。SHG700はなぜ一見改悪とも取れる、焦点距離を短くする方向に向ったのでしょうか?

これを考察する前に、まずはネットに上がっているSol'ExとSHG700の太陽画像の平均らしきところを比べてみましょう。明らかにわかるのですが、SHG700の方が綺麗に出ていることは誰もが思うことでしょう。もちろん例外はありますが、傾向としては明らかだと思います。

ではなぜここまで差が出るのか?少し検証してみます。といっても私自身はSol'Exは持っていないので、かなり推測の部分も多くなると思いますが、そこら辺はご容赦ください。

まず大きく違うのが、SHG700でコリメートレンズとカメラレンズのピント合わせにマイクロメータを採用していることでしょうか。これまでの実際の撮影で、両レンズの位置をマイクロメーターの値を見ずにベストの位置を探って決定し、その後に確認でマイクロメーターを見ると、ほぼ毎回マイクロメーターの1目盛以内に収まります。付属のマイクロメーターの1目盛は、1回転で50目盛で0.5mm移動なので、10ミクロンの移動量に相当します。結局これくらいの精度での位置合わせが必要になるということなのですが、Sol'Exの標準の手動での移動ではどう足掻いてもこの精度を出すのは厳しいのかと思います。XでJia Cangさんがレンズの移動をネジ式に変えて、かなり綺麗に撮影できるようになっているので、やはりここは大きく効いているのかと思います。もう一つの、3つ目の波長選択のためのマイクロメーターは、あると便利ですが、実際にはある程度の波長幅を持って撮影するので、精度という意味では撮影画像のクオリティーにはそこまで効いていないのかと思います。

もう一つの違いがスリットです。Sol’Exのスリット幅も初期の10μmから現在は7μmと進化していますが、スリット幅自身が問題というわけではありません。ポイントはSHG700のスリットは合成石英製で、熱に強いものになっているところです。そのため、多少口径の大きい鏡筒でも問題なく使えることになります。MLastroのページによると口径100mm程度まではERFなどのフィルターなしで使用することができるとのことです。口径は空間分解能に直結するので、Sol’Exで大口径を使いにくというのは、やはり差が出るのかと思います。

結局ブログ記事にはしていませんが、今年も胎内の星まつりに少し参加していて、そこで太陽分光機材を出しているブースがありました。Sol'Exと、なんとSHG700も置いてあったのですが、聞いてみるとまだSHG700は届いたばかりで使っていないとのこと。でも話を聞いている限り、Sol'Exを使う限りはコリメートレンズとカメラレンズの精度に関してはあまり気を使っていないようでした。というよりも、Sol'Exだけを使っているとレンズ位置にそこまで精度がいるという認識にならないような印象を受けました。よく「Sol'Exは面白いけど難しい」とか「再現性よく撮影することができない」とか聞くのですが、機構的にレンズの位置合わせの精度が出ないことが最大の理由なのかと推測してます。でも簡単に改造できるのもSol'Exの利点の一つなので、Jia Cangさんのように、ネジ式にするだけでも相当改善するのかと思います。


日記

久しぶりのブログ記事です。お盆からずっとほぼ休みがないレベルで忙しくて、ここ一ヶ月で天文にかけることができたのは、胎内の星まつりにかなり無理して行ったことと、8月末の友人主催の観望会のお手伝いをしたことくらいです。休日もあるにはあったのですが、ほとんど書類書きに追われていて、ブログを書く時間さえ確保できませんでした。やっと懸念事項も解決しつつあり、この連休くらいから趣味に割ける時間が戻ってきました。

ブログ記事にできなかった胎内での話を少しだけ書いておきます。

今回の参加はあまり無理をせず、土曜の朝、比較的ゆっくり自宅を出て、昼頃に会場近くに到着しました。とりあえず胎内ロイヤルパークホテルのちょっと豪華なランチを食べ、その後のんびりと会場に向かいました。最近は太陽ばっかりで、そこまで欲しいものはないので、何か買うというよりはブースをゆっくり見て回りながら、店員さんや、知り合いの人たちと会話を楽しむのがメインでした。夜も少し星を見て、また次の日も忙しいので、あまり遅くならないうちに帰宅してしまいました。

星まつり会場では、太陽に関する講演があったので、たまたまお会いした仙台の木人さんと一緒にチケットを取って聞くことができました。透過波長幅を測る手段として分光について少しだけ講演内で話があり、SHG700にも触れられていました。講演者が直接使ったというよりは、知り合いが手に入れて試してみたとのことなのですが、今後日本でも様々な結果が出てくることでしょう。今後もっと分光に関しては盛り上がってもいいのかと思っていますが、ブースで何人かのショップ関係者に聞いたところの感触はあまり良くなくて、やはり撮影と撮影後の処理の大変さがあまり好まれないようで、ちょっと残念でした。

明日の日曜は京都の「星をもとめて」に参加します。今回はユニテックさんのブースにいる予定ですので、お気軽にお声かけください。


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