ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:再処理

2023年に撮影した天体写真のまとめです。2022年のまとめはこちらにあります。

2023-12-30 - miyakawa


SCA260

「M106」
Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT_bg4_cut
  • 撮影日: 2023年3月19日20時48分-20日4時9分、20日19時25分-23時19分、28日19時51分-29日4時38分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGBHα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L:80枚、R:10枚、G:10枚、B:14枚、Hα:44枚の計158枚で総露光時間13時間10分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L:0.001秒、128枚、RGB:0.01秒、128枚、Hα:20秒、17枚(dark flatは32枚)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M27: 亜鈴状星雲」
masterLight_BIN_2_300_AOO_SPCC_BXT_DBE_MS_MS_BG2_cut_X3
  • 撮影日: 2023年10月12日20時59分-22時52分、10月17日20時34分-23時29分、10月18日18時18分-22時35分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260 (f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα, OIII
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα:44枚、OIII:44枚の計88枚で総露光時間7時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、42枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα, OIII:10秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M101での超新星爆発」
masterLight_BIN_1_8288x5644_300_00s_L_integration_ABE1_DBEcrop2
  • 撮影日: 2023年5月17日22時21分-5月18日3時8分(JST)、5月17日13時21分-18時13分(UTC)、2023年5月24日21時58分-23時1分(JST)、5月24日12時58分-14時1分(UTC)
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (0℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間5分x47=235分 =3時間55分(爆発前)、5分x10=50分(爆発後)
  • Dark: 0度、Gain 120で、露光時間5分x44枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 0.01秒x128
  • 画像処理: PixInsight


ε130D

「北アメリカ星雲とペリカン星雲」
Image14_SXT_for_O_AOO_SPCC_ABE1_BXT_NXT_ABE4_MS3_s_cut
  • 撮影日: 2023年5月3日1時22分-2時9分、5月3日23時44分-5月4日3時48分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240、露光時間5分、Hα: 30枚、OIII: 22枚の計28枚で総露光時間4時間50分
  • Dark: Gain 240、露光時間5分、温度-10℃、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain240、露光時間 Hα: 0.2秒、64枚、OIII: 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


 NGC6960, 6979, 6992, 6995: 網状星雲
AOO_crop_SPCC_BXT_HT_HT_NXT_bg_more_s
  • 撮影日: 2023年5月16日2時14分-3時32分、5月17日2時1分-2時42分、5月17日0時12分-1時49分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 21枚、OIII: 19枚の計40枚で総露光時間3時間20分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、118枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、64枚、OIII: 0.2秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「おとめ座銀河団」
final_50

「マルカリアンの鎖」
Markarian_large

「M99とNGC 4298、4302」
M99

「M88とM91
M88_M91
  • 撮影日: 2023年5月15日21時1分-16日0時7分、5月16日21時2分-23時23分、5月17日21時0分-23時6分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: ZWO LRGB
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin1、Gain 100、露光時間5分、L: 55枚、R: 11枚、G: 8枚、B: 11枚の計85枚で総露光時間7時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、37枚
  • Flat, Gain100、L: 0.01秒、128枚、RGB: 0.01秒、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、0.01秒、256枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「Sh2-240: スパゲティ星雲」
Image22_DBE_SPCC_back_BXT_HT1_HT2_NXT_SCNRG6_cut
  • 撮影日: 2023年11月21日0時8分-5時23分、11月21日22時48分-22日2時25分、11月22日22時14分-23日3時14分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 48枚、OIII: 70枚、R: 9枚、G: 9枚、B: 9枚、の計145枚で総露光時間12時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、OIII: 0.2秒、R: 0.01秒、G: 0.01秒、B: 0.01秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「Sh2-157: クワガタ星雲」
Image13_rot_cut

「バブル星雲」
Image13_bubble_cut_small
  • 撮影日: 2023年11月21日19時5分-21時22分、11月22日18時27分-22時5分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm、SII6.5nm、
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 28枚、OIII: 24枚、SII: 23枚の計75枚で総露光時間6時間15分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 1秒、OIII: 1秒、SII: 1秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


再処理

「NGC6888: 三日月星雲」
Image11_SPCC_BXT_HT_HT_CT_SCNR_NXT_maskB_CT_CT_CT_ok2
  • 撮影日: 2022年5月25日1時8分-2時59分、26日0時33分-2時56分、30日0時37分-3時0分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間10分、Hα: 12枚、OIII: 13枚、SII: 13枚の計38枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間10分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「IC4592: 青い馬星雲」
masterLight_180_00s_RGB_integration_ABE_SPCC_ABE3_cut
  • 撮影日: 2022年5月6日0時10分-2時57分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: SharpCap、Gain 150、露光時間3分x55枚で総露光時間2時間45分
  • Dark: Gain 150、露光時間3分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「NGC2359: トールの兜星雲」
Image07_ABE1_DBE_SPCC_BXTbad_NXT_stretch2_cut
  • 撮影日: 2022年1月22日22時2分-23日2時5分、1月27日18時57分-21時00分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα:7nm、OIII:7nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド: オフアクシスガイダー + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、Hα27枚、OIII36枚の計63枚で総露光時間3時間9分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間0.2秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

「M51:子持ち銀河」
masterLight_ABE_crop_BXT_BXT_Lab_conv5_Lab_CT_bg2_cut_tw
  • 撮影日: RGB: 2022年4月2日20時32分-4月3日3時50分、LとHa: 2023年3月29日20時17分-3月30日4時34分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB、Hα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240で露光時間10分がR: 7枚、G: 7枚、B: 10枚、Gain 240で露光時間5分がL: 47枚、Hα: 21枚の計27枚で総露光時間240+340 =580分 =9時間40分
  • Dark: Gain 240で露光時間10分が64枚、Gain 240で露光時間5分が128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 RGB: 0.03秒、L: 0.01秒、Hα: 0.2秒、 RGBがそれぞれ64枚、LとHαがそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


まとめと反省

今年は枚数がそれほど多くなく、再処理も合わせて12枚でした。撮影だけして未処理のものもまだ4枚ほどあるので、実際にはもう少し多いですが、処理に時間がより長くかかったりしていたり、忙しく処理せずに放っておいたらそのままというのもあるので、その意味でも少し反省しています。

これまで撮ったことのない新規天体が「M106」と「クワガタ星雲」2つ、今継続撮影中でまだ未処理の「ダイオウイカ星雲」と「ドルフィン星雲」を入れても4つです。クワガタ星雲ついでの「バブル星雲」を入れても5つです。やはり少ないですね。

過去に撮ったことのある天体のリベンジは「M27亜鈴状星雲」「北アメリカ、ペリカン星雲」「網状星雲」「おとめ座銀河団」「スパゲティ星雲」の5つです。だんだん新規天体より既存天体の取り直しの割合が増えています。もしかしたらこれはダメな方向かもしれません。でもどれも再撮影の甲斐は十分にあって、あからさまに進化しているのがほとんどなので、それはそれで満足です。

「M101」は超新星爆発があったので楽しめましたが、もともとLだけ撮って既存のRGBと合わせての再処理のつもりだったので、もし何も起こらなかったらお蔵入りだったかもしれません。同様の再処理が「M51子持ち銀河」で、こちらも元々RGBのみの撮影で、さらにL画像だけ新たに撮ってLRGB合成しています。

画像処理側での再処理が「三日月星雲」「青い馬星雲」「トールの兜星雲」の3つです。主にBXTでの改善です。三日月とトールの兜は見た目にもあからさまに解像度が増しました。青い馬は収差の改善なので、拡大しないと分かりませんが、BXTの収差補正の可能性を示すことができました。BXTは最近バージョン2のAIバージョン4というアップデートがあり、さらに格段に進化しているので、再々処理をしてもいいのかもしれません。もしくは、BXT1では補正しきれなかったもっと過去の画像を再処理しても、さらに格段に改善されるかもしれません。2023年はBXTで始まり、さらに年末もBXT2で盛り上がったと言えるでしょう。

枚数はそれほど多くはありませんでしたが、それでも十分に楽しめた天体撮影でした。その一方、太陽や月はあまり盛り上がりませんでした。太陽は休日と晴れの日が中々合わないのと、粒状斑が今のところうまく出ていなくて動機がだだ下がり気味です。月も2022年末に皆既月食があり盛り上がりすぎたので、その反動か2023年はほぼ活動ゼロです。

そもそも今年は晴れの日が少なかったのですが、新鏡筒のε130Dはちょうど今かなり楽しめています。とにかく最初から分解能がものすごくて、出だしこそ星像流れでのんびりでしたが、バックフォーカスがきちんとあってからは、今現在も撮影していることを含めてかなりの稼働率です。その分、重いSCA260の稼働率が減ってきていますが、実は焦点距離430mmのε130D+フルサイズくらいの広角の対象はそれほど多いわけではないので、いずれまた1300mmのSCA260+フォーサーズに帰っていくでしょう。

ε130DとSCA260の比較で、取り付けてあるカメラも考えると、画角が一辺で6倍くらい面積だと36倍くらい違うので、その中間くらいがあるといいなと思い始めています。しかも自宅でスカイノイズが大きいので、効率のいいできるだけ明るい鏡筒がいいです。今ある手持ちだと焦点距離800mmでF4のBKP200とかでしょうか。これにあまり大きくない、例えば今と同じASI294MMとか取り付けるか、いっそのこと使っていないカラー冷却のASI294MC Proでもいいかもしれません。コマコレクターは持っているのですが、ε130DやSCA260に比べるとそれでも多少星像は伸びるので、BXT2が前提になると思います。

こんなふうに、来年もまた夢が広がりそうです。

いつも長いブログ記事を読んでいただいてありがとうございます。ネットでの付き合いの方、直接お会いした方、この一年たくさんの方々と関わることができました。一年間本当にお世話になりました。

2024年も、良い年でありますように。また今後とも、よろしくお願いいたします。


一連のBXTによる再画像処理の4例目です。これまで以下のように3つの再処理例を記事にしてきました。





元々BXTで言われていた星雲部分の分解能、あまり話題になってなくて遥かに期待以上だった恒星の収差補正など、劇的な効果があります。

その一方、最近のM106の画像処理で分かったのは

  • BXTで銀河中心部の飽和が起きることがある。
  • BXTの恒星認識に引っかからない微恒星が小さくならなくて、恒星の明るさ位に対する大きさの逆転現象が起きる。
  • 光軸調整が不十分なことから起きる恒星の歪みはBXTで補正できなくてむしろ変な形を強調してしまうことがある。
  • BXTはリニア段階(ストレッチする前)で処理すべき(とBXTのマニュアルにも書いてあります)だが、LRGB合成はノンリニア(ストレッチしてから)処理すべきなので、リニアでできるRGB合成した後の段階ではBXTを使うことができるが、(額面通りに理解すると)LRGB合成した段階でBXTを使うことはできないということになる。
など、弊害や制限も少なからずあるということです。

M106も2度処理しているのである意味再処理なのですが、BXTを使っての「過去画像の」再処理という意味では、銀河を扱うのは今回初めてになります。これまで手をつけなかったことには実は明確な理由がありますが、そこらへんも記事に書いておきました。

そう言ったことも踏まえて、今回のBXTを使った処理では何が分かったのでしょうか?


子持ち銀河

ターゲットのM51: 子持ち銀河ですが、昨年4月に自宅でSCA260を使い、ASI294MM ProのRGB撮影で総露光時間4時間半で撮影したものです。

実はM51の再処理、かなり初期の頃に手掛けています。時期的は最初のBXTでの再処理の最初の記事の三日月星雲よりも前に試しています。銀河はBXTで分解能が上がることをかなり期待していました。でも改善がほとんど見られなかったのです。

BTX導入直後くらいに一度M51の再処理を試み、その後三日月星雲とかを処理してある程度技術的にも確立してきた後に、さらに再処理してみたM51です。
Image199_ABE_ABE_ABE_DBE_NTX_HT_CT_CT_NXT_CT2_cut1

同じ画角の元の画像を下に載せます。
64da897b_cut

再処理ではHαを載せていないので、派手さはないのは無視してください。2つを比較してみると、確かに少し分解能は上がったかもしれません。でも思ったほどの改善ではありませんし、むしろノイジーになるなど、悪くなっているところも見受けられます。なんでか色々考えたのですが、恐らくですが以前の処理はDeNoise AIを利用するなどかなり頑張っていて、すでにそこそこの解像度が出ていたということです。言い換えると、(今のところの結論ですが)いくらAIと言えど、画像に含まれていない情報を引き出すことは(例え処理エンジンは違っても)できないのではということです。逆に情報として含まれていないものを飛び抜けて出したとしたら、それは流石にフェイクということになります。

BTXとDeNoise AIを比べてみると、DeNoise AIの方が(天体に特化していないせいか)大きくパラメータを変えることができるので、おかしくなるように見えると思われがちですが、おかしくならない程度に適用する分には、BXTもDeNoise AIもそこまで差がないように思いました。DeNoise AIはノイズ除去と共にSharpen効果もあるのですが、BXTはノイズについてはいじることはないので、DeNoise AI = NoiseXTerminator + BlurXTerminatorという感じです。

それでは、DeNoise AIではなくBlurXTerminatorを使う利点はどこにあるのでしょうか?最も違うところは、恒星の扱いでしょう。DeNoise AIは恒星ありの画像は確実に恒星を劣化させるので、背景のみにしか適用できないと思っていいでしょう。その一方、BlurXTerminatorはAIと言っても流石にdeconvolutioinがベースなだけあります。星像を小さくする効果、歪みをかなりのレベルで補正してくれる効果は、BlurXTerminatorの独壇場です。恒星を分離した背景のみ、もしくは恒星をマスクした背景のみの構造出しならDeNosie AIでもよく、むしろノイズも同時に除去してくれるので時には便利ですが、やはり恒星をそのままに背景の処理をできるBXTとNXTの方が手間が少なく恒星のダメージも全然少ないため、天体写真の処理に関して言えばもうDeNoise AIを使うことはほとんどなくなるのかと思います。


L画像を追加してLRGBに

さて、上の結果を見るとこのままの状態でBXTを使ってもあまり旨味がありません。根本的なところでは、そもそもの元画像の解像度がをなんとかしない限り何をやってもそれほど結果は変わらないでしょう。

というわけで、RGBでの撮影だったものに、L画像を新たに撮影して、LRGB合成にしてみたいと思います。当時はまだ5枚用のフィルターホイールを使っていて、Lで撮影する準備もできていくてLRGBに挑戦する前でした。この後のまゆ星雲ではじめて8枚用のフィルターホイールを導入し、LRGB合成に挑戦しています。

撮影日はM106の撮影が終わった3月29日。この日は前半に月が出ているのでその間はナローでHα撮影です。月が沈む0時半頃からL画像の撮影に入ります。L画像だけで合計47枚、約4時間分を撮影することができました。

ポイントはASI294MM Proで普段とは違うbin1で撮影したことでしょうか。RGBの時もbin1で撮影していますが、これはM51本体が小さいために高解像度で撮影したいからです。bin2で2倍バローを用いた時と、bin1でバローなど無しで用いた時の比較は以前M104を撮影した時に議論しています。


解像度としてはどちらも差はあまりなかったが、バローをつける時にカメラを外すことで埃が入る可能性があるので、それならばbin1の方がマシというような結論でした。

以前RGBを撮影した時は1枚あたり10分露光でしたが、今回は5分露光なので、ダーク、フラット、フラットダークは全て撮り直しになります。


画像処理

画像処理は結構時間がかかってしまいました。問題はやはりLとRGBの合成です。前回のM106の撮影とその後の議論で、理屈上は何が正しいかはわかってきましたが、実際上は何が一番いいかはまだわかっていないので、今回も試行錯誤です。今回下記の6つの手順を試しました。Niwaさん蒼月城さんが指摘されているように、LinearでのLRGB合成で恒星の色がおかしくなる可能性があるのですが、今回は際立って明るい恒星がなかったので、LinearでのLRGB合成がダメかどうかきちんと判断することができなかったのが心残りです。
  1. RGBもL画像もLinear状態で、LRGB合成してからBXT
  2. RGBもL画像もLinear状態で、BXTをしてからLRGB合成
  3. RGBもL画像もLinear状態で、だいこもんさんがみつけたLinLRGBを使い、HSI変換のうちIとL画像を交換
  4. RGBとL画像とLinear状態でBXTまでしてから、フルストレッチしてNon Linear状態にしてからLRGB合成。
  5. RGBとL画像とLinear状態でBXTまでしてから、フルストレッチしてNon Linear状態にしてからLab変換して、aとbをconvolutionでStdDev=5でぼかしてからLab合成。
  6. RGBとL画像とLinear状態でBXTまでしてから、少しだけストレッチしてLinearに近いNon Linear状態にしてからLab変換して、aとbをconvolutionでStdDev=5でぼかしてからLab合成。
と試しました。赤は間違ったやり方、紫はまだ検証しきれていないやり方です。

ちなみに
  • BXTはリニアで使うべし。
  • LRGBはノンリニアで使うべし。
というルールがあるので、最も正しいと思われる順番は
  • WBPP -> ABE or DBE -> RGB合成 -> RGB画像にSPCC -> RGB画像、L画像それぞれにBXT -> ストレッチ -> LRGB合成
かと思われます。この手順は4番に相当します。RGBがノイジーな場合には5番もありでしょうか。

それぞれの場合にどうなったか、結果だけ書きます。赤はダメだったこと、青は良かったことです。
  1. 星雲の明るい部分に青飛びが見られた。(極端に明るい恒星はなかったので)恒星などの飛びは見られなかった。LRGB合成した後でBXTをかけるので、本来恒星が小さくなると期待したが、うまく小さくならず、変な形のものが残った
  2. 星雲の明るい部分に青飛びが見られた。(極端に明るい恒星はなかったので)恒星などの飛びは見られなかった。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。
  3. 星雲の明るい部分に青飛びが見られた。(極端に明るい恒星はなかったので)恒星などの飛びは見られなかった。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。ちなみに、LinLRGBはPixInsightに標準で組み込まれているものではなく、Hartmut Bornemann氏が作ったもので、ここにインストールの仕方の説明があります。
  4. 青飛びが少し改善した。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。ただし最初にストレッチしすぎたせいか、解像度があまり出なかった。
  5. 青飛びが無くなった。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。ただし最初にストレッチしすぎたせいか、解像度があまり出なかった。
  6. 青飛びが無くなった。1に比べて恒星が明らかに小さくなった。ストレッチしすぎてなかったせいか、一番解像度が出た

というわけで、正しいと思われる4番は悪くないですが、青飛びを完全に解決できなかったことと、ストレッチの度合いがRGBとLが別だとどこまでやっていいかの判断がつきにくく、結局6番を採用しました。でもストレッチをあまりかけずにLを合成することが正しい方法なのかどうか、いまだによくわかっていません。その一方、Lab変換でabをボカしたことが青飛びを完全に回避しているので、手段としては持っておいてもいいのかもしれません。


仕上げ

その後、Photoshopに渡して仕上げます。分解能を出すのにものすごく苦労しました。AstrtoBinでM51を検索するとわかりますが、形の豪華さの割に、大きさとしては小さい部類のM51の分解能を出すのはなかなか大変そうなのがわかります。物凄く分解能が出ている画像が何枚かあったので「おっ!」と思ったのですが、実際にはほとんどがHubble画像の再処理でした。1枚だけHubble以外でものすごい解像度のものがありましたが、望遠鏡の情報を見たら口径1メートルのものだったのでさすがに納得です。それよりもタカsiさんが最近出したM51の解像度が尋常でないです。口径17インチなので約43cm、これでAstroBinにあった口径1メートルの画像に勝るとも劣りません。43cmでここまででるのなら、自分の口径26cmでももう少し出てもおかしくないのかと思ってしまいます。今回私の拙い技術で出せたのはこれくらいです。クロップしてあります。

「M51:子持ち銀河」
masterLight_ABE_crop_BXT_BXT_Lab_conv5_Lab_CT_bg2_cut_tw

  • 撮影日: RGB: 2022年4月2日20時32分-4月3日3時50分、LとHa: 2023年3月29日20時17分-3月30日4時34分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB、Hα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240で露光時間10分がR: 7枚、G: 7枚、B: 10枚、Gain 240で露光時間5分がL: 47枚、Hα: 21枚の計27枚で総露光時間240+340 =580分 =9時間40分
  • Dark: Gain 240で露光時間10分が64枚、Gain 240で露光時間5分が128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 RGB: 0.03秒、L: 0.01秒、Hα: 0.2秒、 RGBがそれぞれ64枚、LとHαがそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

元の大きさではこうなります。ただしbin1のままだと画素数が多すぎてブログにアップロードできないので、解像度を縦横半分のbin2相当にしてあります。

masterLight_ABE_crop_BXT_BXT_Lab_conv5_Lab_CT_bg2_lowreso

中心部を比較してみます。左が昨年のRGBだけのもの、右がL画像とHα画像を撮り増ししたものです。
comp

見比べると、明らかに今回のL画像が入った方が分解能が増していることがわかります。ただすでに画像処理がキツすぎる気もしています。今の機材でこれ以上の分解能を求めるにはどうしたらいいのでしょうか?

考えられる改良点は、
  • シーイングのいい時に撮影する。
  • Lがフィルター無しなので、UV/IRカットフィルターを入れて赤外のハロなどをなくす。
  • 振動が問題になる可能性があるので、三脚の足に防震シートなどを入れる。
  • 読み出しノイズに制限されているわけではなさそうなので、揺れ対策で1枚あたりの露光時間を3分ほどにしてみる。
  • Lの総露光時間をもっと増やす。
  • 暗い空で撮影する。
  • バローを入れて焦点距離を伸ばし、かつbin1で撮影する。
などでしょうか。小さな天体を撮影する際の今後の課題としたいと思います。


まとめ

BXTという観点からはあまり大したことは言えていません。分解能という観点からはDeNoise AIとそこまで能力は差がなさそうなことがわかりますが、恒星の収差補正などに利点があり、今後DeNoise AIを使うことはほぼなくなるでしょう。リニアなステージで使うことが正しそうで、RGBとLで別々に処理して合成しても問題なさそうなことがわかりました。BXTなしとありでは分解能に圧倒的に差が出て、今回もM51としてはそこそこの分解能になっていますが、まだ鏡筒の性能を引き出し切っているとは言い難いのかと思います。

RGBだけの場合と、Lがある場合では分解能にあからさまに差が出ることが改めてわかりました。でもなぜそこまで差が出るのか、自分自身本質的にはあまりよくわかっていません。単にLの露光時間が長いからなのか? R、G、Bとフィルターで光量が減るので、それに比べて全部の光子を拾うLが得なのか? それとも他に何か理由があるのか? 一度、R、G、B、Lを全て同じ時間撮影して、RGB合成したものからLを引き出して比較してみるのがいいのかもしれません。

とまあ色々議論したいことはありますが、庭撮りで着実に進歩はしてきていて、M51がここまで出たこと自身はある程度満足しています。でももう少し出るかと淡い期待を抱いていたことも事実です(笑)。


先日、M106の記事をアップしましたが、記事を書き終えてから画像処理にアラがかなりあることに気づき、改めて再処理をしました。



でもこの再処理過程、苦労の連続で思ったより時間がかかりました。以下にまとめましたが、実際にはこんなにすんなりとはいっていなくて、いろんな回り道をしてある程度見通しがついたものだけを列挙しています。


問題点

問題点は以下の通りです。問題の大きさの順に、
  1. 周辺部のディスクの淡いところがノイジーで、解像度がイマイチです。改めて完成画像とマスターL画像と比べてみると、淡いところ、特に微恒星が相当欠落していることが判明しました。
  2. 明るい恒星がひしゃげていることに気づきました。
  3. 銀河中心が飛んでしまっていることに気づきました。
  4. 光条線が全然キリッとしていません。もしかしたら、微妙な画像の回転が影響しているのでしょうか?
などです。

色々調べていくと、ある程度原因と解決策が見えてきました。とりあえず簡単なところから順に行きます。


3. 銀河中心の飛び

問題3はBXTの弊害と結論づけました。

原因は、リニア画像の段階でBXTをかけていたため、銀河中心を強度に強調してしまい、その結果中心部のみ飛んでしまっていたようです。

解決策は、ストレッチ後の画像にBXTを適用することで解決しました。左がBXT->MaskedStrerchの順で、右がMaskedStrerch->BXTの順です。

comp

なんでこんなことに気づかなかったかというと、下がBXT適用後にPI上でSTFで見かけ上のオートストレッチをした画像なんですが、これだと周りも飽和気味で中心部だけ飛んでしまっているのは判別できないからです。
02_BXT_STF_Image05_ABE_DBE_SPCC_DBE_clone_Preview031

ちなみにオートストレッチしないとこんなふうです。左がBXTする前で、右がBXTをかけたあとです。これならすぐにわかるんですが、普段はSTFをかけた画像しか見ないので、気づくことができませんでした。
comp2


4. 光条線のシャープさ

問題4は撮影中にカメラが開店してしまった可能性があるので、L画像をプレートソルブにかけて調べてみました。プレートソルブは回転角まで出るので、ずれがあった場合に比較することでわかります。

L画像は1日目と4日目にのみ撮影しています。結果は、1日目のL画像がが90.50度で、4日目のL画像が86.13度と、なんと4度以上回転していました。1日目は29枚、4日目は51枚撮影していて、4日目の方が撮影枚数は多いので、少し惜しいですが1日目の分を丸々捨てるとことにしました。さらに4日目の人工衛星の軌跡がひどいものを5枚省いて、46枚でスタックしました。

まずは光条線の評価です。左が1日目と4日目を合わせた80枚、右が4日目だけの46枚です。そこまで大きくは変わりませんが、よく見ると確かに46枚だけの方が光条線は多少鋭くなっているように見えます。でも、正直もう少し鋭くなることを期待していました。-> (追記): 最後まで仕上げたら、明らかな違いになりました。1日目を捨てて正解でした。

comp_original

SCA260の分解能を少し疑ったのですが、例えばこの記事の画像を見る限り
  • 明るい星の光条線は十分に鋭く出ていていること、
  • 中途半端な明るさの星の光条線はそこまで鋭くないこと
などがわかるため、とりあえずは今回撮影した程度の鋭さが標準だと思うことにします。


もう少しL画像を評価

このL画像の枚数の違いですが、問題2に関しても議論することができそうなので、もう少し検証します。上の左右の画像をよく見比べると、微恒星に関してはやはり枚数の多い左側の方が明らかに暗い星まで写っていることがわかります。

ではこの画像にそれぞれBXTをかけてみます。同じく、左が1日目と4日目を合わせた80枚、右が4日目だけの46枚です。

comp_BXT


2つのことがわかります。
  1. 1日目に撮影した画像が加わると、明るい恒星の場合、中心部分が右に寄ってしまい、左にハロのようなものが残る結果になってしまいます。
  2. BXTによる恒星の縮小ですが、(微恒星がより出ていないはずの)右の方の画像の方が、左の画像と比べて、より多くの恒星に適用されていることがわかります。
まず1の原因ですが、元の1枚1枚の撮影画像を見てみると、明らかに星像が縦長になっていることに気づきました。1日目から4日目を全部比べてみると、日が変わっても出ていること、画像の中の位置によらず、常に縦が長くなるような方向に出ています。上の右の画像は問題ないように見えても所詮程度問題で、彩度を出すとかしていくと結局目立つようになります。撮影時の問題であることは明らかで、鏡筒の光軸ずれ、カメラ側のスケアリングのずれ、赤道儀での縦揺れなどが考えられます。前回撮影のM81の時の画像を見直してみても、こんな現象は出ていないようなので、おそらく1月から3月の間に光軸のずれが起こった可能性が高いのかと思います。ただし、波長によって出る出ないが違い、縦長がひどい順にG>L>R>B>>Aとなっているのは、まだ少し解せないところです。とりあえず今回はこの縦長星像、画像処理でなんとかごまかしますが、まずは次回鏡筒の光軸を見直すことにします。

次の2ですが、これは結構面白いです。BXTで恒星をdeconvolutionするためには、恒星をきちんと恒星として認識してもらわなくてはダメなのですが、左の画像は恒星であるのに恒星と認識されていないものが多いのです。何故かは元画像を見比べてみるとよくわかりました。 おそらくシンチレーションの違いで、1日目の画像は星像が大きく、4日目の画像は星像が明らかに小さいのです。動きの多い1日目の画像が混ざったことで点像とは見なされなくなってしまい、恒星と認識されなくなったのではと思われます。日が変わった場合の撮影では、このような違いにも気をつける必要があることがよくわかります。

いずれにせよ、BXTはかなり暗い最微恒星については恒星と認識するのは困難で、deconvolutionも適用できないようです。そうすると逆転現象が起きてしまうことも考えられ、より暗い星の方がそれより明るい星よりも(暗いけれど)大きくなってしまうなどの弊害も考えられます。

考えるべきは、この問題を許容するかどうかです。

この逆転現象とかはかなり拡大してみないとわからないこと、収差の補正や星雲部の分解出しや明るい恒星のシャープ化など現段階ではBXTを使う方のメリットがかなり大きいことから、今のところは私はこの問題を許容して、BXTを使う方向で進めたいと思います。シンチレーションの良い日を選ぶなどでもっとシャープに撮影できるならこの問題は緩和されるはずであること、将来はこういった問題もソフト的に解決される可能性があることなども含んでの判断です。


1. 淡い部分、特に微恒星が全然出ていない

問題1が1番の難問です。そもそも何故LRGB合成なのに、L画像相当の解像度が出ないのかという問題です。

これが撮影してスタックしたL画像: 
L

一方、これがRGB画像から引き出したL画像:
RGB_Lab_L

2枚を比較すると、当然撮影したL画像の方が圧倒的に情報量が多いわけです。

で、これが前回記事でアップした画像のPhotoshopに引き渡す前くらいの画像です。これが上の2枚のどちらに近かったというと、あからさまに後者のRGBから引き出したL画像の方に近いのです。
Image05_ABE_DBE_SPCC_DBE_BXT_MS

なんでこんなことが起きてしまったか、よく考えます。まず今回の撮影はRGBの撮影枚数がそれぞれ10枚程度と、L画像の(1日目、4日目合わせた)76枚と比べてかなり少ないです。こんな場合は、PixInsightでLRGB合成をする際に、LとRGBををどのような比率で合成するかをよく考えなくてはダメだったのです。

前回のLRGB合成でやったことは、L:R:G:Bを1:1:1:1の割合で混ぜたことでした。いや、これさえも本当に実現できているのかよく判りません。実施際にはLRGB合成の際に、L、R、G、Bそれぞれの画像を一度にチャンネルウェイトを0.25:0.25:0.25:0.25で合計1になるように合成しています。合計1にするのはサチるのを避けるためですが、どうもこのチャンネルウェイトは比だけを見るみたいで、絶対的な明るさは変わらないようです。例えば、R、G、Bを0.025:0.025:0.025として一桁落として合成しても、暗くなったりしません。絶対的な明るさは下のLightnessで決まるようです。1より小さくすると合成後が明るくなります。

さて、今回撮影したL画像のS/NはRGBに比べて遥かに高いので、Lの比率を大きくした方が得なはずです。試しにL:R:G:B=0.5:0.25:0.25:0.25で合成すると細部が表現され始め、L:R:G:B=1:0.25:0.25:0.25とするとさらに分解能が上がることがわかりました。その一方、Lの比率が大きくなるので、当然合成直後の画像は色がほとんど出ていなくて、かなりモノクロに近い画像になっていきます。それでも、その後に画像処理を進めていくと彩度を出すことはできるので、色情報がなくなっているわけではないようです。ただしRGBのS/Nが悪いので、色を出していくとどうしもノイジーになってしまうようです。

問題は数値の調整はできるものの、どのような比率でLとRGBを混ぜればいいのか結局のところよくわからないということです。そもそも、RGB画像をLab空間で考えると、単にLを取り替えることをすればいいはずです。それで彩度は保たれ、シャープさは良くなるはずなんです。

それならばいっそのこと、本当にRGBをLabに変換して、Lのみを入れ替えるという操作をしてやった方がいいのではと考えました。その結果が以下になります。
Image141_2

この方向は結構正しいようで、少なくとも細部は十分に出ています。また、Lab合成を使うという考えに基づくと、SPCCは合成前のRGBの時点でやった方がいいという考えに行き着きます。Lの明るさは調整可能なので、元のRGBとは彩度がずれる可能性があるからです。

さてこのLab分解とLab合成でLだけ変える方法、一見うまくいっているようですがまだ問題があって、試しに明るい恒星を見てやると以下のように緑や青が目立つようになってしまいます。

Image141_clone_Preview01_autostretch

これを回避するために色々試してみたのですが、どうやらL画像の明るさがab画像より暗い場合に起こるようです。そのためLab合成の時にL画像を少し明るくして合成します。すると以下のように、変な色が飛び出るようなこともなくなります。

Image230

一見モノクロに見えますが、色はきちんと隠れていて、試しにCurvesTransformationなどで彩度を上げると以下のように色が出てきます。
Image230_CTx5

ところが、ここでまた問題です。このように彩度を出していくと、再び緑飛びが出てきてしまうのです。
Image230_CTx5_cut

結局のところ、Lab合成でどうあがこうとしても、元の画像が悪い状態で彩度を出したら同じことの繰り返しで、変な色飛びはどうしても出てしまうということがやっと理解できました。

それで結局何をやったかというと、Lab合成する際に色情報であるaとbをぼかしてから合成することです。ここら辺はそーなのかーさんのこのページを参考にさせていただきました。


今回はConvolutionでStdDevを5として3回かけ、明るい恒星の色バランスの崩れがなくなるくらいまで、かなりぼかしました。少なくともこれで緑の形がおかしくなるようなことは避けることができました。ただし、ぼかしのバランスがaとbでどうしてもずれてしまい、恒星周りに均等にリング状の緑の輪がかかってしまったので、SCNRでProtction MethodをMinimumNeutralに、Amountを0.5にしてかけて緑を除きました。この時点でやっとBXTをかけます。結果は以下のようになりました。

Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT

色情報を相当ぼかしたわけですが、人間の目の色情報の分解能はかなり弱いと指摘されていて、実際に色が出ていないように見えることはほとんどありません。

これでやっと満足です。この後はPhotoshopに引き渡しますが、Hαジェットを除き、もうすでにかなり仕上がり状態に近いです。


やっと仕上げまできたー!

Photoshopはもうノンリニア編集なので、好きなように仕上げます。主には彩度出しでしょうか。Hα合成も2度目なので、少し余裕が出てきました。結果が下の画像になります。まずはジェットがよく見えるように銀河をアップで。

Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT_bg4_cut_s

次に全体像です。


「M106」
Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT_bg4_cut

  • 撮影日: 2023年3月19日20時48分-20日4時9分、20日19時25分-23時19分、28日19時51分-29日4時38分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGBHα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L:80枚、R:10枚、G:10枚、B:14枚、Hα:44枚の計158枚で総露光時間13時間10分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L:0.001秒、128枚、RGB:0.01秒、128枚、Hα:20秒、17枚(dark flatは32枚)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


最初に挙げた問題点順に評価していくと、
  1. 銀河の淡いディスク部分の分解能はかなり出ました。
  2. 恒星のおかしな形もほぼ無くなっています。
  3. 銀河中心部の不自然さももうありません。
  4. 光条線も明らかに鋭くなりました。
と、こちらもほぼ満足です。

加えて、ジェットをもう少し派手にしてみました。自宅でここまで出れば上出来かと思います。というか、すでにちょっと炙り出し気味で、今の手持ちのHαだとこれくらいが限界かと思います。

最後は恒例のAnnotationです。
Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT_bg2_cut_A

 

まとめ

時間はかかりましたが、再処理を突き詰めていってよかったです。あからさまに良くなったことと、じっくり付き合ったことで次回以降にどうすればいいか、かなり得るものがありました。自宅撮影の結果としては、ある程度情報を引き出しきれた気はしていて、かなり満足しています。

そもそも撮影に問題はありましたが、いつも完全ということは当然ないので、画像処理でのリカバリも含めていつもこれくらい時間をかけないとダメなんだということが、今回とても実感できました。実を言うと、特に恒星ですが、もう諦めようと何度思ったことか。

今回の方法は真っ当なものではないのは重々自覚していますが、撮影はいつもうまくいくとは限らなくて、せっかく時間をかけた画像をできるだけ使ってあげたいので、手持ちの手法としては持っておいてもいいかと思いました。というより、画像処理は一辺倒にはなかなかいかないもので、撮影画像に応じて臨機応変に対応することが大切なのではないかと、改めて感じました。


自宅でのDSO撮影はいつ以来でしょうか?と思ってブログ記事を確認すると、10月25日とあるのでなんと5ヶ月ぶりです。その間に開田高原で撮影したり、月食で大量に撮影したりとかはしてましたし、富山の冬場は天気が悪いとか色々言い訳はあるのですが、これはいかんですね。しかももう春で、銀河の季節です。西の空の冬の星雲を撮るか迷いましたが、長時間露光はもう無理と諦め、今回はりょうけん座にあるM106です。


M106

M106は渦巻銀河の分類で、中心に明るい核を持つセイファート銀河にも分類されます。ハッブル分類では渦巻銀河はSb型と言われているようですが、Wikipediaを見るとSAB(s)bcという型だそうです。日本のWikipediaのハッブル分類のページではここまで説明がなかったので、英語版のWikipediaまで見てみるともう少し詳しい説明が載っていました。


SABは渦巻銀河と棒状銀河の中間、(s)はリングがないこと、最後のabcで巻き込み具合を表しaが最も強く巻き込み、b、cとなるにつれ弱くなっていきます。

まとめると、M106は渦巻きと棒状銀河の真ん中くらいで、巻き込みは少なく、リングもない銀河となるので、確かに撮影した形を見るとその通りになります。


撮影準備

3月19日の日曜、月齢27日の新月期で快晴です。その前の数日も結構晴れていたのですが、実際には風がかなり吹いていて望遠鏡を出すのを躊躇していました。この日はほぼ無風に近くて、久しぶりに望遠鏡を出します。ターゲットはSCA260で写しやすいもの。本当はすばるとかでモザイク撮影をねらってたりもしていたのですが、ちょっと季節的に遅くなってしまったので、春ということで銀河。しかもSCA260の焦点距離1300mmでも見栄えのする、そこそこ大きいM106です。

最近のM106の撮影ポイントは、いかに中心部から噴き出るジェットが見えるかということみたいです。このジェット、X線領域がメインで、Hαでも写るのですがかなり淡くなるようです。自宅の明るい北の空でも銀河本体はそこそこ写ることはわかってきましたが、M81で味わったようにまだまだ淡いところは厳しいことがわかっています。ただ、今回のジェットはナローバンドになるので、そこまで光害の影響は受けないはずです。光害地でのナローバンドの淡いところがうまく出てくれるかどうか、ここが勝負どころでしょうか。

夜少し用事が残っていたので、撮影準備は19時半頃からでした。撮影を開始できたのが20時半くらいです。この季節天文薄明終了が19時半頃なので、1時間遅れでの撮影開始です。


トラブル

久しぶりのセッティングですが、実は冬の間にも何度か撮影しようとしてセッティングはしている(天気はすぐに悪くなるのでフル撮影は毎回諦めました)ので大きなトラブルないと思っていたのですが、4日に渡って撮影を続けると細かいことがいくつかありました。

まず初日、Ankerのリン酸鉄バッテリーの残量が0になっていたことです。いつも使ったあとは必ず満充電するので、本来はまだ残量が十分残っているはずです。開田高原でも極低温だといち早く動かなくなるとか、保護回路がしっかりしているのか、その分待機電力が大きいのか、他に使っているほぼノーブランドのバッテリーに比べて使い勝手がイマイチな印象です。さらに撮影3日目、撮影中かなり早くに残量が0%になってしまったのですが、充電を開始するとすぐに70%くらいに復帰しました。そこまで低音ではなかったので電圧降下のようなことはあまりないと思うのですが、電圧読み取り回路がイマイチなのかもしれません。少なくとも他に同時に使ったバッテリーではこんな症状は出なかったですし、これまでも出たことがありません。Ankerはちょっと割高で期待していたのですが、自分の中で少しづつ評価が下がってきています。今はまだ印象だけの状態ですが、一度自分でバッテリーテストベンチをやるべきかもしれません。

撮影2日目になぜか突然カメラが撮影用のStick PCで認識されなくなりました。USBケーブルを抜き差ししても、交換しても、PCの電源を入れ直してもダメでした。USB端子は2つあり、一つはUSB3でカメラなど、もう一つの端子はUSB2で赤道儀のハンドコントローラに繋がっています。結局どうやって解決したかというと、このUSB3とUSB2を入れ替えたところでやっと全て認識されました。初めてのことで、原因も解決策がこれで正しいのかもよくわかりませんが、いつか再発するかもしれないのでメモがわりにここに書いておきます。

撮影3日目、赤道儀反転時にウェイトがガクンとバーの端まで落ちてしまいました。ウェイトのネジをきちんと固く閉めていなかったことが原因です。もともとバーの端近くで止まっていたので、移動距離は5cmほどですがそこそこのショックがあり、カメラなどずれていないか心配でチェックに時間がかかってしまいました。実は同様のトラブルは過去も含めると2度目なので、ネジ止めは毎回再チェックするくらいきちんと止めるべきだと反省しました。


撮影1日目

撮影自身は極めて順調。RGBを5分x10枚づつ撮影し、あとはLとHαに全てをかけます。0時半頃に天頂越えで赤道儀を反転します。これまでの何度かの自動反転でのケーブル引っ張り事件の経験から、反転はその場で見ながらやることにしています。次の日は月曜で平日なので、このまま放っておいて朝まで寝ることにしました。

あ、もう一つトラブルを思い出しました。朝まだ寝ているときに、妻から「車のドア開きっぱなしだよ!」と叩き起こされました。どうやらウェイトを取り出しすときにドアを開けた後、閉め忘れてしまったようです。車には大したものは入っていないのでそんなに心配はないのですが、虫が住みつくとかは避けたいので今後は注意です。

月曜も晴れそうなので、セットアップはそのまま残して夜に備えることにしました。


撮影2日目

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3月20日、2日目の月曜夜は前日のセットアップが残っていて時間的にも余裕があり、薄明終了を待って19時25分に撮影開始したのですが、雲が少し残っていてガイドもすぐに見失ってしまうくらいでした。一旦撮影は諦めて仮眠を取ることにします。23時頃に起きてもまだ少し雲は残ってましたが、SCWによると0時頃から晴れる予報。少し待っていると予報から少し遅れて0時半頃から完全に晴れてきました。

実は待っている間に1日目の撮影画像を少し処理していました。RGBは各50分程度ですが、色はまあまあ出そうです。Lは1時間半ですが、そこそこの分解能も出ます。問題はHαで、5分露光gain120だとかなり暗くてノイジーです。そのためでしょうか、PixInsightのregistrationで3分の1くらいはねられてしまいました。sensitivity設定を0.5から0.25にすることで3枚以外は救うことができましたが、やはり横シマのバンディングノイズのようなものが見えるので、もう少し明るくしたいです。gainを増やしてもいいのですが、ゲインを変えてしまうとフラット画像を使いまわせなくなります。フラット画像は同じゲインが大原則で、フラット撮影時の露光時間を変えて明るさ調整をするので、ライトフレームはゲインさえあっていれば同じフラット画像を使うことができます。一方ダークは露光時間10分のものは以前撮影しているのでそれを使うことができるはずです。

というわけで、Hαのみ10分露光にすることにしました。リードノイズ的には得しますが、ダークノイズ的には時間と比例のはずなので損も得もしないはずです。この決断が正しかったかどうかは処理してからの判断でしょう。


5分露光?10分露光?

2日目の撮影を終えた時点で再度画像処理をします。Hαの比較ですが、10分露光の方が5分露光よりも明らかに解像度が悪いことがわかりました。露光時間が長いために揺れをより積分してしまったか、そもそもシーイングが良くなかったかだと思います。そのため、2日目の画像は、何枚か撮ったB画像以外全て使わないことにしました。


撮影3日目

3月22日の3日目は45枚x5分=3時間45分撮ったのですが、途中で雲が出て中断したりしながら朝まで撮影を続けました。でも結局、他の日に比べてあまりに透明度が悪く、S/Nが悪そうだったので、全て使わないことにしました。


撮影4日目

少し空いて3月28日、月齢6.7日で上弦の月近くなってしまっているので、この日はかなり遅くまで月が出ています。月が出ている間はHα画像を、月が沈んでからはL画像を撮影します。でも平日であまり遅くまで続けると次の日に影響があるので、月が沈む少し前に早めの0時前に赤道儀を反転し、その後はL画像撮影にしました。


画像処理

4日間の撮影でしたが、中二日の画像はほぼ全滅なので、実質は2日間の撮影です。全部で約22時間5分撮影して、そのうち15時間10分を画像処理に回すことができました。

画像処理はいつもの通りPiInsightでWBPPです。LRGBAとマスターライト画像がそろうので、まずは重みを全てのチャンネルで0.25にしてLRGB合成をします。その後も基本通り、ABE、DBE、SPCCなどを施し、BXTの後にMaskedStretchをかけました。

RGBは枚数はそれぞれ10枚程度とたいしたことないですが、色は出そうです。処理の途中で思ったのですが、周辺部の淡いところの解像度が全然足りません。

Hα画像もLRGBと同様にストレッチまで終えます。Hα画像は恒星と分離して背景のみ使います。Hαは5時間45分ぶんあるので、そこそこの長さです。でもこの露光時間の長さが本当に最終画像にどこまで効いてくるかはちょっと疑問です。そもそもHαをLRGBにどう加算すればいいのか、まだ自分の中でうまく確立できていません。今回はHαから恒星を取り除き、もしかしたら今回は撮影したHαの情報を全然使い切れていないかもしれません。

あとはLRGB画像とHα画像をPhotoshopに渡して仕上げです。合成方法はHα画像をRGBモードに変換して、レベル補正で緑成分と青成分を少なくなるようにします。赤成分のみになったものをLRGB画像に比較(明)で合成しています。こうすることでHαの度合いを、様子を見ながら自由に調整することができるようになります。


結果

結果は以下のようになりました。まずは中心部がよく見えるように、クロップしたものです。ジェット狙いだと考えると、ある意味これが完成画像でしょうか。

Image05_ABE_DBE_SPCC_DBE_BXT_MS4_cut_crop_small

    クロップしていない全体像です。下にNGC4248も入っているので、こちらも見応えがあります。
    Image05_ABE_DBE_SPCC_DBE_BXT_MS4_cut
    • 撮影日: 2023年3月19日20時48分-20日4時46分、20日19時25分-23時19分、28日19時51分-29日4時38分、
    • 撮影場所: 富山県富山市自宅
    • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
    • フィルター: Baader RGBHα
    • 赤道儀: Celestron CGX-L
    • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
    • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
    • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L:80枚、R:10枚、G:10枚、B:14枚、Hα:69枚の計183枚で総露光時間15時間15分
    • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
    • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L:0.001秒、128枚、RGB:0.01秒、128枚、Hα:20秒、17枚(dark flatは32枚)
    • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

    反省です。
    • 狙いのジェットは一応は出たのかと思います。
    • BXTの威力もあり、中心部の解像度はそこそこ満足です。
    • 周辺部のディスクの淡いところがノイジーで、解像度がイマイチです。
    • Lをもっと撮った方がいいかもしれませんが、ここらへんが明るい庭撮りの限界なのかもしれません。
    • 光条線が全然キリッとしていません。これまで光条線が出た方が珍しいくらいで、まだ全然方法を確立できていません。もしかしたら、微妙な画像の回転が影響しているのでしょうか?

    追記: 昨晩このブログの記事をほぼ書き終えてから、改めて完成画像とマスターL画像と比べてみると、完成画像では淡いところが相当欠落していることが判明しました。明るい恒星もひしゃげていることに気づきました。さらには銀河中心が飛んでしまっていることも気づいてしまいました。原因がわかってきたので、再度画像処理をやり直すことにします。


    まとめ

    おそらく自宅撮影で、ジェットも含めてこのレベルまで見えるなら十分なのかと思います。一旦画像処理まで完成と思っても、細かくみていくと全然満足できなくなります。しかもやっと記事を書き終えたと思って、落ち着いて見てみるとアラがどんどん見え始めます。キリがないです。

    というわけで、再度画像処理を一に近いところからやり直しています。今回の記事と合わせると長すぎてまとめ切れないので、一旦ここで止めて再処理については次の記事で書きたいと思います。




    BlurXTerminator (BXT)を使った、過去画像の再処理の第3弾です。

    第1弾は三日月星雲、第2弾は青い馬星雲でした。



    三日月星雲は主に星雲本体、青い馬星雲は主に恒星の収差の改善でしたが、今回もすごいです。


    トールの兜星雲

    今回のターゲットは、NGC2359: トールの兜星雲です。昨年1月に撮影しているので、1年ちょっと前になります。


    SCA260で撮影していますが、この時はまだ、今使っている大型赤道儀のCGX-Lではなくて、もう一つ小さいCGEM IIに重いSCA260を載せています。そのため、今見ると3分露光でも揺れの影響が残ってしまっているようで、恒星像が今一ピシッとしていません。これがBXTでどこまで改善できるかがまずはポイントになります。


    再処理の途中で

    処理をしている途中で、BXTで明るい恒星が崩れる現象が見られました。
    Image07_ABE1_DBE_SPCC_BXTbad_NXT_stretch_cut

    原因は、元画像の恒星自身が何か歪んでいたことで、よく見ると以前の画像でもその兆候が見られますが、気づいていませんでした。BXTでその歪みが助長されて気づくことができました。BXTといえど全然万能ではなく、元画像がダメな時はどうしようもないです。

    ではその恒星の乱れはなんだったかというと、Integrationの時に起こっていて今回はrejectionにWinsorized Sgma Clippingを選んでいたことが原因でした。High側で恒星中心付近がいくつかrejectされていて、非連続になっていたというわけです。今まで気づいたことがなかったので、恒星がおかしい時はrejectionにちょっと気をつけた方がいいかもしれません。

    masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-HA_mono_cut
    明るい恒星の右側がrejectionで不連続になってしまっています。

    結局、WBPPでのIntegrationのRejection algorithmをAutoにして解決したのですが、マニュアルでのPreprocdessing からのIntegrationとWBPPのIntegrationでは少し振る舞いが違うようです。マニュアル操作ではそもそもWinsorized Sgma Clippingでも(WBPPのときと同じパラメータにしても)rejectonの度合いはもっと緩やかで、問題が露呈しないレベルで抑えられます。WBPPのWinsorized Sgma Clippingのパラメータをどういじっても解決はできなかったので、諦めてAutoにしたらあっさり解決しました。

    それ以外はBXT、NXT合わせて特に困ったことはありませんでした。しかも青い馬星雲の背景出しで相当な時間をかけたので、それがいい練習になっていて、今回の再処理は短時間で終わりました。


    結果の比較

    結果ですが、以前のものと比べます。まずは以前のもの。背景が暗いので、今回の再処理でもう少し淡いところが出るかもしれないという目論見です。あとはやはりSCA2660とCGEM IIの組み合わせでの揺れのせいでしょう、今見ると恒星の締まりがないのが気になります。
    Image07_DBE_PCC_DBE_AS_HTx3_reducestar2_3_crop_mod

    次に、今回再処理した結果の画像です。一皮どころか、二皮も三皮もむけた感じです。ちょっとやり過ぎの感もあります。
    Image07_ABE1_DBE_SPCC_BXTbad_NXT_stretch2_cut

    まず、兜本体の分解能が尋常でないです。これはひとえにBXTのおかげです。また、恒星の大きさですが、不自然でない程度にとどめておきましたが、かなりシャープに絞ることができています。微恒星もより暗いものまではっきりと出ています。

    comp1

    あと、背景も積極的に炙り出せました。前回の青い馬星雲で練習した成果になるでしょうか。ただ、背景についてはは自宅の明るい場所での撮影なのでこれくらいが限界です。すでにノイズの荒々しさが残ってしまっています。本当はもっと広い範囲で淡い青いところが広がっているはずなのですが、これ以上出したかったら、露光時間をさらに増やすか、もしくはもっと暗い所へ行くべきです。それでもまあ、今回の再処理でとりあえずここまで出たのでよしとしましょう。


    まとめ

    これまで何度か試したBlurXTerminatorですが、これは天体写真の解像度向上に革命を起こすくらいのツールと言えそうです。その一方、今のAI技術はまだまだ発展途中、もしくは遠い将来から見たら出始めのかなりあやふやな技術だと評価されるかもしれないので、疑似的な画像を作り上げる可能性も否定はできません。中身がほとんどブラックボックスという心配もあります。

    そうは言ってもこの素晴らしいツール、手間の軽減、時間の短縮、星像のシャープさ、分解能の向上などメリットの方が遥かに遥かに大きいです。私個人としては新しいツールにかなり寛容なので、DeNoise AIの時もそうでしたが、趣味の範囲では見た目でよさそうなら積極的に使っていきたいと思っています。DeNoiseの時もフェイクになる可能性があるという批判はありましたが、大きな目で見れば今回のBXTはそのアップグレードと考えることもでき、順当な進化なのかと思います。

    AIと画像処理は研究ベースでも親和性がとてもいいようなので、今後もアマチュア天文を対象にAIを利用したソフトがさらに出てくることと思います。個人的には拒否反応など示すことなく、冷静にいいところを見つけて、積極的に使っていきたいと思っています。

    BlurXTerminator (BXT) が面白いです。前回までで、ゴースト星雲でのBXTの試用と、BXTをカラー画像に適用した場合などを記事にしてきました。





    その後、BXTのバージョンが上がり1.1.1になりました。初期バージョンでは恒星の色ずれがPIのForumで指摘されていたようですが、新バージョンではそれも解決されているとのことです。

    BXTの効果がかなりすごいので、過去画像にもいくつか適用してみました。今回の再処理は全て新バージョンで試しています。


    三日月星雲

    まずは、はくちょう座にあるNGC6888: 三日月星雲で比較です。下の画像は昨年5月にSCA260で撮影し処理したもので、AOO合成になります。当時はそこそこ分解能もでていると満足していました。
    Image11_ABE1_PCC_ABE4_cropped2_mod
    この時の反省点は、星雲本体はよく出たのですが、背景がかなり淡くて出にくかったのを覚えていて、結構無理をしてノイズ処理をしました。背景の細かい構造はほとんど飛んでしまっています。ここら辺がBXTとNXTが入ったらどうなるかも気にしたいと思います。


    BXTとNXTの適用

    元のファイルは前回WBPPまで終了して、AOO合成までしたものを使います。まずはSPCCをかけ、すぐにBTXです。この時点ですごい分解能となり、ちょっとびっくりしました。

    ストレッチはHistgramTransformationです。ArcsinhStretchとMaskedStretchも試しましたが、星雲本体の赤の部分が差散り気味になってしまったのであきらめました。あとはCurveTransformationのSaturationで彩度を出します。その後NXTでノイズ処理をしています。

    これまでマスク処理は、マスクをPIで作ってからPhotoshopにマスクを渡して処理をすることがほとんどでした。今回はマスク処理自身もPIでやってみることにします。今回のマスクはB画像から作り、星雲本体の青いところを強調しました。最後にPhotoshopに一応手渡してほんの少しだけ色を好みのものにしましたが、今回は自分的には98%くらいがPIでPhotoshopで触ったのは本当にごくわずかです。

    結果です。一見しただけでBXTを適用したものは三日月本体の分解能が圧倒的に上がっています。

    Image11_SPCC_BXT_HT_HT_CT_SCNR_NXT_maskB_CT_CT_CT_ok2

    青いところもよりはっきりと出すことができました。背景もそこそこの階調で出ていて、ノイズ処理もより自然になっているように見えます。以前の処理と、今回の処理の違いを一言で言うと、以前のものは画像の中にある情報を引き出し切れていなかったと言うところでしょうか。BXTの底力を見せつけてくれる結果と言えます。

    あと、微恒星の数が圧倒的に増えています。私は元々恒星の処理が下手くそなのですが、BXTとNXTのおかげかかなり楽になりました。作業がPIで閉じていて、恒星と背景を分離したり合成したりする必要がなくなってきたことが大きいです。分離は使うとしても軽い星マスク程度です。言い換えると、分離というある意味特異な処理をする必要がなくなりつつあり、より自然に手間をかけずに恒星を出すことができるようになってきています。


    驚異的な分解能

    こうして見るとBXTの威力がいかに凄いかわかるのですが、いささか分解能が出過ぎのような気もします。そこで、さらに高解像度の画像、例えばこのページにある三日月星雲と比べてみます。試しにPhotoshopで各レイヤーに自分の画像とリンク先の画像をはって、拡大縮小回転などして位置合わせをして、レイヤーの表示/非表示でかなり詳細に比較してみました。

    少なくとも私がみた限りでは、BXTのAIによってあからさまに変な線が出ているようなことはないようです。勝手に上記の画像をこのブログに貼るわけにはいかないのですが、結論としては、おかしくないパラメータの範囲でBXTを使う限りは変な構造を加えるようなことはなく、画像の中に情報として残されている構造をかなりのレベルで引き出しているのかと思います。また、引き出す構造に限界もあり、これも詳細画像と比較するとわかりますが、撮影画像の中に無い構造はやはり出てこないこともわかるので、少なくともAIだからと言って、そこまで変なことをしているわけではないのかと思います。

    BXT、今回もかなりの手応えなので、今後もう少し過去画像の再処理を続けたいと思います。


    (追記) 第二弾は青い馬星雲です。

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