ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:三裂星雲

実は福島の星まつりでSWAT350を手に入れました。UNITECさんのところで話していて盛り上がり、後日レポートを書くということで、特価で譲ってもらうことになりました。実際に試してみて、忌憚のない意見が聞きたいということなので、思う存分楽しみます。


SWAT到着

福島の星まつりの後、しばらくしてから自宅にSWATが到着。ご存知の方はご存知かと思いますが、そもそもSWATは1軸での追尾精度を追求したコンパクトなポータブル赤道儀です。

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青いボディーがかっこいいです。

今回手に入れたものは、PEC付きのSWAT-350V-spec Premiumという機種で、SWATの中でもフラッグシップモデルに当たります。ピリオディックエラーの精度はノーマルでも+/-4.5秒前後と相当なもので、PECが効く片側荷重だとなんと+/-2.8秒前後と驚異的な性能を出すそうです。基本的にはその高精度な追尾を利用した、ガチ撮影用のポータブル赤道儀なので、元々考えていた使用法は、
  • 海外での撮影のための軽量機材
  • もしくは本格撮影の横で、簡単に設置しての撮影
とかです。


SWAT超進化

でも今回SWATで試したのは精度を測るとか、そんな高尚なことでは全然ありません。代わりに超面白いアイデアを思いついてしまったのです!!

SWATは1軸のポタ赤なので、赤緯にあたる2軸目をそもそも持っていません。できることは基本的に精度のいい自動追尾のみ。当然自動導入はできませんし、最近流行りのプレートソルブなんかは夢のまた夢です。もちろんそれを納得して手に入れました。でも実際に撮影しようとすると、これまでずっと自動導入とプレートソルブに頼り切っている軟弱な私には、DSOのマニュアル導入はめんどくさすぎることに気づいてしまったのです。天気もあまり良くなく、実際テスト撮影しようとしても画角もなかなか定まらずで、しばらくSWAT君放っておいてしまいました。

ある日、SWATのことを考えながら風呂場でシャワーを浴びていたら、ふと思いついてしまいました。追尾精度は全然無いが超高機能のAZ-GTiを、超シンプル機能だが超高精度のSWATに載っけたらどうなるんだろう?

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「えーっ??」と思った方もいるかもしれませんが、でもこれかなりすごいですよ。


SWATで自動導入とプレートソルブ!?

SWATは普通に三脚にネジ止めします。底面が斜めに傾いているので、日本だと北方向に置くと、ちょうど回転軸が北極星方向を向くようになります。

AZ-GTiはデフォルトでは経緯台ですが、ファームをアップデートすれば(メーカー保証はありませんが)赤道儀モードで動かすことができます。今回はセットアップといっても、赤道儀モードのAZ-GTiを、本当にそのままSWATに載っけるだけです。AZ-GTiを赤道儀モードで使うときに大変なのは、極軸方向に向けるための傾いたアダプターを用意することです。タカハシなどで販売していますが、それでもそこまで頑丈ではなくて揺れてしまうこともあり、気にする人は自作したりしています。今回はこの斜めアダプターもSWAT自身が兼ねてくれます。

鏡筒は北極星方向に向けて取り付けます。天体導入完了まではSWATの電源は入れず、AZ-GTiだけを使います。なんならPC上のSynScan Proと接続して、さらにASCOM経由でSharpCapと繋いでおけば、初期アラインメントの時からプレートソルブすることさえできます。もちろん、自動導入の際もプレートソルブ機能を使えます。

導入が完了したら、駆動をAZ-GTiからSWATに切り替えます。撮影は精度のいいSWATを使うということです。ちなみに、以前測定したAZ-GTiの追尾精度が実測+/-75秒くらいだったので、SWATの精度が+/-4.5秒とすると17倍、+/-2.8秒だとしたら27倍の精度向上になります。なので、こんなことができます。

キャプチャ

え?何がこんなことかって?露光時間をよく見てください。望遠鏡接続パネルでは確かにSynScan Proに接続しているにもかかわらず、何と1枚180秒の3分露光ですよ!もちろんノータッチガイド(死語?)です。

鏡筒はFMA135で、カメラがUranus-Cと、とりあえず普段の電視観望そのままですが、画角的には撮影対象に困ることはない、ちょうど良いくらいです。これくらいの焦点距離なら、このSWATの性能で3分露光だと、1ピクセルさえも動かないくらいで、ガイドなしで全然余裕です。

SWATの精度とAZ-GTiの機能のいいとこ取りというわけです。


実際の設置

実際に試した手順を書いておきます。まず、組み立ては簡単そのも。三脚とSWATとAZ-GTiと鏡筒とカメラをネジで止めていくだけです。全部組み合わせても、片手で持てるくらいの軽さで、持ち運びも余裕です。

電源はというと、カメラを駆動させるためのPCからのUSB、SWATを駆動させるためのDC12Vだけなので、ケーブルは全部でわずか2本です。ケーブルの数が少ないのも簡単撮影ならではだと思います。ケーブル数が少ないのは、トラブルを起こす率も下がるので、実用上もメリットがあります。

設置ですが、今回はSharpCapの極軸合わせを使いました。ドリフトでズレていく量を抑えたいからです。1分角程度のGoodまで出せばもう十分です。

次にAZ-GTiで初期アラインメントをします。最近は面倒くさいので、本格撮影の時でも極軸は合わせても水平は取っていないです。そのため、一番最初の導入では少し目標とズレてしまうこともありますが、気にせずアラインメント完了にして、そのままプレートソルブしてしまいます。プレートソルブはすごく便利で、これが使いたくてAZ-GTiをくっつけたといっても過言ではありません。同期までうまくいくと、初期アラインメントした天体が画面に出てきます。SWAT使用でこんなことができるとは感無量です。初期アランメント完了後は、目的の天体に自動導入します。今回はM8干潟星雲とM20三裂星雲としました。

天体が画面内に入ってきたら、SWATに切り替えます。きちんと撮影位置まで来なくても、そこそこの位置に見えたら、SWATに切り替えてしまって構いません。この切り替えがまたポイントで、まずSWATの電源を入れますが、その際にAZ-GTiの電源を切るのではなく、恒星追尾をオフにするだけします。そうするとAZ-GTiはこれ以上追尾はしませんが、モーター駆動は2軸ともまだ生きているので、画角の微調整がSynScan ProやSharpCapの望遠鏡制御パネルなどからできてしまうのです。AZ-GTiは追尾さえしなければ精度が悪くなることはなく、構造的にはかなり頑丈です。

AZ-GTiをワイヤレスのリモートコントロールができる強固な微動雲台と考えると、ある意味とんでもなく格安です。AZ-GTiと組み合わせることで、SWATが精度そのままで根本的にアップグレードされたみたいで、便利すぎる使用感となります。


撮影の開始

準備ができたので、実際に撮影までしてみましょう。

撮影ソフトは簡単のためにSharpCapを使います。SWATの精度が期待できるので、ガイドはしません。なので、わざわざガイドにきっちり対応したNINAとかを使う必要もありません。EAFも使わないのでピントはマニュアルです。カメラの冷却さえもしないので、PlayerOneのカメラのDPS(Dead Pixel Suppression)機能でホットピクセル除去を期待します。一応今回はSharpCapの簡易ホットピクセル除去も念のため使いました。できるだけ簡単撮影がモットーで、後でダーク補正をする気など全くありません。

露光時間ですが、とりあえず今回は3分で試します。電視観望を利用した撮影に比べて、1枚あたり十分な露光時間が取れるため、合計撮影枚数を減らすことができるます。このことは二つのメリットがあります。
  1. 1回の露光のたびに入ってくる読み出しノイズの緩和が期待できること。
  2. カメラのアナログゲインを下げることもでき、ダイナミックレンジを十分に残した撮影ができ、飽和を防ぎやすくなります。今回はHGCモードが発動するゲイン200を選びました。
これまでのAZ-GTiを利用した電視観望的な撮影(1回の露光時間が10秒とかの短い撮影のこと)とは一線を画します。

撮影は後の画像処理を簡単にするために、試しに電視観望的な撮影としてライブスタックを使ってみました。一旦撮影が始まったらあとは放っておくだけです。たまにライブスタックされている画面を見てみますが、順調にノイズが軽減さていきます。

調子に乗って、3分露光で合計2時間くらいライブスタックしてしまいました。それだけ撮影しても、見ている限り恒星の流れはなく、SWATの精度とAZ-GTiが動いていないことでその精度を壊す様なことはなく、全体として非常に精度良く追尾してくれているようです。

取得できた画像ですが、3種類あります。
  • 全てスタックされて見た目も画面そのままのPNGフォーマットの画像が1枚
  • ストレッチなどしていないRAW画像のFITSフォーマットの画像が1枚
撮影終了時にすでにスタックや、PNGファイルはストレッチまで完了しているので、その後の画像処理もかなり楽になります。

今回は比較のために、
  • 毎回の露光ファイルも全て保存
の計3種類です。

SharpCapで自動的に1枚にスタックされたPNGとRAW、さらに自分でスタックしたものでそれぞれ仕上げて、後で出来を比べることにします。


画像処理しての比較

3種の画像で最後まで処理してみます。

ライブスタックされたものを見たまま:
まずはライブスタックされ、ストレッチまでされたPNGファイルです。あらかたの画像処理はすでに終わっているようなものです。これに5分程度Photoshopで処理しただけのものになります。

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8bitで出力されるので、あまり大したことはできませんが、それでもかなり出ていますね。周りの分子雲がノイジーなことと、恒星が少しうるさいかもしれません。それでも3分x39枚=1時間57分の露光で、星は全くズレていません。これだけでも驚異的かと思います。


ライブスタックされた1枚画像をストレッチなしで:
上のように、これくらいまで出るならもう十分かとも思いますが、ここから次の画像と比較していきます。二つ目はスタックまではされてますが、ストレッチはされていない暗いままで、RAWフォーマットに近いものになります。RAW画像なのでPixInsightでSPCCなどのリニア処理をして、ストレッチした後にPhotoshopに渡します。

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さすがに画像処理も多少凝ったことができるので、PNG画像よりはマシになります。StarNetを使うことで特に恒星がうるさいのを消すことができています。BXTは比較するにはチートすぎるので、今回は使っていません。


ライブスタック時の1枚1枚を個別に保存し、マニュアルでスタック:
最後が一番手間のかかる、3分露光が48枚あるファイルを、自分でスタックするところから始めます。ホットピクセルはほとんど出ていないとして、ダーク補正はなし、公平を期すためにフラット補正も無しとします。

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一から手間をかけただけあって、多少滑らかになってます。でも、輝点が少し目立ってしまっています。やはりここまでやるなら真面目にダーク補正をしてもいいかもしれません。


SWAT+AZ-GTiの威力

今回のアイデアですが、もしかしたらすごい組み合わせかもしれません。ガイド無しで本格的な撮影がかなり楽にできる可能性を秘めています。というかなんか楽しくて、早く次の撮影を試したいです。梅雨で天気待ちなのですが、メイン鏡筒の横で気楽に試せそうなのが良いです。

あまりに楽なので、是非みなさんにこのアイデアをオススメしたいです。
  • SWAT持ってる人はAZ-GTiを買おう!
  • AZ-Gtiを持っていて精度のいい撮影をしたい人はSWATを買おう!
  • SWATとAZ-Gtiの両方を持っている人はすぐにでも試してみてください!

SWATを高いと思うかもしれませんが、1軸に絞っていることもあり、この価格でこの精度を出せるのはむしろ格安というか、多分最安です。一気に長時間露光の本格撮影に手が届きます。


反省点と次回挑戦

今回の撮影の失敗点ですが、ノータッチガイドだけありどうしてもわずかなドリフトが出てしまい、数時間という露光時間のオーダーだとゆっくり画角が一方向に流れていきました。これが結果として、縞ノイズとなって出てしまいました。画像処理である程度誤魔化しましたが、やっぱりガイド必須かなあと思ってしまったのは事実です。それでもやはり「簡単撮影にしたいのになあ」、「ケーブルが増えるのやだなあ」との思いがあります。

そんなことを考えていたのですが、「そういえばSharpCapのライブスタックにディザー機能があったはずで、確かガイドなしでも単独で動いたはずだ」と思い出しました。マニュアルを確認してみたのですが、どうやらうまく動きそうです。次回はこれでリベンジしたいと思います。

今回はテストで135mmと短い焦点距離にしましたが、まだまだ全然大丈夫そうなので、今度はもう少し長焦点で試して、SWATの性能に迫りたいと思います。当然ガイドなしです。

他にも次回以降、検証、挑戦したいことを書いておきます。
  • 焦点距離と、カメラのピクセルと、追尾精度の関係の確認
  • ギヤの大きさと精度の関係の確認
  • 精度の実測
  • SWAT各機種との比較と、それぞれどこまでガイドなしでできるか計算
などです。たくさんやりたいことありますが、無理のない範囲で進めていきたいと思います。


 
 
 








みなさんこんにちは、ほしぞloveログのSamです。最近「ほしぞloveさん」とか呼ばれたりしますが、ハンドルネームは「Sam」です。「ほしぞloveログ」と書いて星空ブログ(ほしぞらぶろぐ)と読みます。

前回
前々々回の記事で、先週金曜日にペルセウス座流星群と天の川の撮影をしてたと書きましたが、本当は今回書く記事が一番試したいことでした。少し時間がかかってしまいましたが、やっと画像処理も終わったのでまとめておきます。

QBPのこれまでのまとめ

これまで好んで使っていた、サイトロンのQBP(Quad Band Pass)はHα、SII、Hβ、OIIIの4つ(Quad)の基線を通すためこの名前がついています。このフィルターかなり便利で、自宅のような光害地でも、多少の月明かりがあっても、星雲を相当炙り出すことができます。

QBPの作例については以下をご覧ください。

















さらになんと、私がTwitterで電視観望でも使いたいと呟いたリクエストで、QBPのアメリカンサイズまで作ってくれ、もうサイトロンさんには感謝しても仕切れないくらいです。



私にとって、QBPは撮影にも電視観望にも、すでに無くてはならないフィルターになっています。


QBPの不満

このQBP、ものすごく便利なのですが、実は2つ不満があります。
  1. 一つは、最初の方の作例を見てもらうとわかるのですが、普通に赤を出そうとするとどうしても朱色がかった赤になってしまうのです。他の方の作例を見ても同様の傾向が多いので、これはQBPの特徴の一つなのかと思います。でもこれは何度か画像処理をしていて、青を少し強調してやると赤の色バランスがよくなることに気づきました。QBPの特性として、どうも相対的に青色が弱く写ってしまうようです。最後の方のバラ星雲なんかは適度に補正してあるので、初期の頃とだいぶ色合いが違うのがわかるかと思います。
  2. もう一つは記事の中で時々書いているのですが、恒星の色、特にオレンジとか緑とかが出ないのです。これは結局解決に至らず、適当に色が抜けたような状態でごまかしています。なので、どうしても色を出したい場合はQBPをあえて使わない時もありました。
そもそもQBPは青が強いM45プレアデス星団や、恒星の色に近い銀河はあまりきちんとした色が出ないようで、今のところ主にHαを出したい時にQBPをよく使っています。

そうは言っても、QBPはこの手のフィルターにしては比較的波長帯の制限をゆるくしてあるために、色バランスが崩れにくいというのが大方の評判で、私もその意見に賛成です。ただ、上記のような不満もあるのも事実なので、これをなんとか改善できないかとずっと思っていました。


CBPの検証開始

今回やったことはサイトロンから少し前に発売されたCBP(Comet Band Pass)フィルターの検証です。

 

一方、今回使ってみたCBPは彗星用に開発されたフィルターということもあり、青や緑の波長帯を通すとのことで、QBPの弱点であった、赤以外の色が意外にバランスよくでるのではという期待があります。ただ、星雲用に開発されたわけではないので、これは自分で試してみないとよくわからないでしょう。

というわけで、毎度のこと前置きが長かったですが、やっと検証の開始です。

今回のターゲット天体は青色を適度に含むM20、三裂星雲です。機材はTSA-120に35フラットナーをつけ、ASI294MC Proで撮影をします。もう8月後半なので、M20は宵のうちから高い位置にあり、しかもこの日はちょうど下弦の月のころなので、M20が沈むくらいまでは月は出てきません。さらに前回の記事でも書いたとおり、この場所は天の川が結構はっきり見える(2つに分かれているのは十分に分かります)場所なので、光害の影響があまりないところです。条件としてはいいのですが、光害のカットという意味での検証にはならないということは注意が必要です。

今回はM20を
  1. フィルター無し
  2. 48mmのCBPを取り付ける
  3. 48mmのQBPを取り付ける
という3つのケースで撮影して比較したいと思います。時間的にはこの順番で、それぞれ上から17枚、9枚、6枚撮影しました。枚数が違うのは、だんだん時間が無くなってきて焦ってきたからです。同じ日で撮った方が公平になると思ったので時間が限られてしまいました。ここら辺はご容赦ください。

高度から考えると、時間と共に位置が下がってくるので、1のフィルター無しが一番有利で、順にCBP、QBPとなるはずで、QBPの7枚目以降はまだそこそこ高度はあったのですが、背の高い木が少し入ってしまったので、そういったうまく撮れていないのは省いた枚数になります。


結果の比較

今回非常に面白い結果が得られたので、早速撮影された画像を見て見てみましょう。画像はどの場合も、1枚のRAWファイル(fits形式)をPixInsightでDebayerして、STFでオートストレッチをかけただけです。画角が同じなので、オートストレッチが公平に働いて、画像の質によって星雲などのコントラストがそのまま表されてきます。

1. フィルター無し

まずはフィルター無しのノーマルです。
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フィルターなしの場合。

特に色をあぶり出したりしているわけではないので、のっぺりした色合いになっています。それでも暗いところなのでM20の赤と青はそこそこ出ています。


2. QBP

先にQBPを見せます。
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QBPフィルターを適用。

QBPの実力通り、フィルター無しに比べて赤が相当強調されています。実際に画像をスタックして画像処理までして比較してもみたのですが、一枚でこれだけ差が出ていると、スタックしても結果に大きな違いが出ます。フィルターなしの方が枚数が多いので当然ノイズは少ないですが、淡いところの赤を出そうと思っても最初から色が出ていないものは後から処理してもなかなか出てきません。枚数が少ないQBPの方が遥かに簡単に色が出ます。


3. CBP

ではお待ちかね、最後はCBPです。

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CBPフィルターを適用。

明らかに青がノーマルの時よりはもちろん、QBPの時よりも強調されています。赤はフィルターなしの場合より濃くなっていますが、QBPよりは若干薄いでしょうか。


分かりやすいように並べてみます。

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左から、フィルターなし、QBP、CBPの順です。CBPで青が明らかによく出ているのがわかるかと思います。赤い三裂(4裂?)の周り、特に上部や下部の青なんかは違いが顕著です。

赤はやはりQBPが一番出ていますが、ノーマルと比べるとすでに朱色がかっているのがわかるかと思います。CBPは赤に関してはある意味ノーマルとQBPの中間で、まだそこまで朱色がかっていないです。

これは期待通りというか、期待以上の結果です。


光害に対する効果

QBPよりもCBPの方が波長の透過域が増えるので、光害に対しての効果は減ると推測されます。今回は光害の影響があまりない場所での撮影だったので効果が分かりにくいため、あくまで暫定的ですが少しだけ評価してみます。

PixInsightのSTFのオートストレッチは、画像の持っている明るさによってストレッチ(あぶり出し)のパラメータを決めます。撮影したRAWファイルを何倍くらい明るくするかは、(同じ画角で撮った場合)光害に依るという意味です。光外の少ない暗い画像ほど大きな倍率をとって明るくするはずですし、光害が多く明るく写った画像ほど倍率は小さくなるはずです。出来上がった画像の(背景の)明るさはあまり変わらなくなります。

そのため、撮影した画像の背景の明るさと天体(淡い星雲)の明るさに差があるほど、背景を同じ明るさにした場合には天体がよりコントラスト良く浮き上がってくるはずです。この時のオートストレッチの倍率を比較することで、光害がどれだけ軽減されるか、言い換えると光害防止フィルターがどれくらい働いているか推測することができるはずです。

オートストレッチの値から、フィルターなしを1としたときにQBP、CBPでそれぞれ何倍明るくしたかを表にしました。色によって倍率が違うのでRed、Green、Blueで別々に計算しています。具体的にはSTFのスパナマークを押すと表が出ます。最初なかなか意味がわからなかったのですが、いろいろ試して、結局真ん中の列の逆数が元の画像から何倍ストレッチしたかに相当することがわかりました。結果は以下のようになります。

 RGB
No filer111
QBP3.983566944.486127173.40584795
CBP3.537339063.440159572.7432878

さて、結果をじっくりみていきましょう。


QBP:


この結果を見ると、まずQBPはフィルターなしに比べて4倍くらい明るくできるので、言い換えると余分な光を4分の1くらいにしているということがわかります。以前、波長帯の広がりからざっくり4倍くらい得すると推測していましたが、実測もかなりこの推測に従っているようです。




CBP:

次にCBPです。まず第一に、結果の数値だけを見るとそこまでQBPとは大きく違わないというのが印象です。CBPの方がかなり(下手したら何倍も)明るく出るのではと思っていたのですが、平均だと1.2倍程度です。

R関しては除去比は少しQBP劣りますが、ほとんど違いがありません。GとBに関してはCBPの方が光害を除去しないことになります。と言っても高々1.3倍とか1.2倍です。これはCBPが彗星の核や尾のCN, C2, C3らの基線を透過させるように、主に紫外から青を新たに通すように設計してあるため、この波長での光害に対する除去効果は軽減されるので納得です。ただ、青よりも緑の方が違いが大きいというのが少し疑問ですが、Gセンサーも青の帯域に感度はあるので、これはあり得るのかもしれません。

ここでパッと疑問に思ったのは、青に対する明るさの倍率が低いCBPがなぜQBPよりもより青色を出すか?です。これは当然、これまでカットしてしまっていた青い光をより通すようになったからと考えることができます。倍率が低くても、捨てていた青い光を拾った方が得だったということです。


結論

というわけで、ここでの結論は「CBPはQBPよりも光害に対する効果は多少低いが、違いは全然大きくはなく、むしろ青を通すことでより強調する効果がある。これは青い成分を持つ星雲に有効である。」と言っていいのかと思います。もちろんこの値は光源に依ります。繰り返しになりますが、今回は光外の影響があまりないところで試したので、街明かりの場合や月明かりの場合は結果が違ってくる可能性もあるかと思います。

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さらなるCBPの効果

でもでも、実は面白いのはここからだったのです。この検証の過程で3つの画面を見比べていて、一つ気付いたことがあります。もしかしたら勘のいい人はもう気付いているかもしれません。

上で出した3つの比較画像のそれぞれの左上の明るい星に注目してください。その左横に2つの星があると思います。これを3つで見比べてみてください。わかりやすいように拡大して並べて比較します。左からフィルターなし、QBP、CBPです。

com2


わかりますでしょうか?

なんと、CBPの星像が一番小さくて、しかも色がきちんと出ているのです。ピントの違いの可能性もありますが、他の星の大きさが大きくは変わっていないので、おそらくピントは関係なく、フィルターの違いから来ていると思われます。これは最初の方で書いた2つ目の不満「恒星の色が出ない」を解決する可能性があります。特にオレンジに近い色が出なかったので、期待できます。


なぜこんなことが起きるかというと、ここからはまだ推測なのではっきりとは言えませんが、QBPは実は赤外を通すのではという推測があります。シベットさんがここらへんの話に詳しくて



に記述があります。また、あぷらなーとさんの最近の実験でもその推測を推す結果となったようです。

QBPは赤外を素通しで、赤外の方では収差を補正しきれていない鏡筒ではハロとなって出るが、それに比べて、CBPはきちんと赤外の波長が透過しないように処理もしてあるのではという推測です。このハロを除去したい場合、QBPでは別途フィルターを入れる必要があるが、CBPでは1枚で済んで、恒星の色の再現性も高いということが考えられます。

これまでQBPで恒星の色が出なかったという方は試してみてもいいかもしれません。


まとめ

というわけで長かったですが、CBPの検証はこれで終わりです。赤はもちろん青も出て、色バランスも良く、恒星の色もきちんと出て、光害にも効果がありそうというので、私的にはある意味理想的なフィルターになりそうです。CBPはQBPであった不満をほとんど解決してくれそうです。かなり期待できそうなので、今後CBPの作例を増やしてもう少し検証していきたいと思います。


次の記事で今回撮影した三裂星雲を画像処理して仕上げています。



 

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