フェニックス+TSA120の組み合わせは変えずに、確認の意味でいくつか検証できることをしてみました。今回の記事はその中の一つで、カメラのシャッターについてです。


ニュートンリングが出てしまう

大口径化記事の(その4) の先々週末の撮影では、下の画像のようにクロップ前は左下が切れていることから分かるように、TSA120の光軸に対してフェニックスの光軸、特に高さ方向の光軸がかなりずれていました。
09_46_43_lapl3_ap3452_IP_ST

2026年5月16日土曜日の朝から、いろいろと改善をしました。

まず、フェニックスの方が高さ的に低い位置にあったので、フェニックスの下部に一枚板を挟んで、高さを揃えてやりました。

IMG_3141
アルミフレームとフェニックスの間に、一枚板を追加

実際には少し高くなりすぎたのですが、前回よりはかなりマシで、少なくとも画面で見て左右方向のずれはほぼ無くなりました。上の画面の上下のズレは、フェニックスの方向を左右 (水平) に変えることで、ある程度の調整はできます。

これらの調整をすることで、画面で見ても、左右も上下もほぼずれはなくすことができたので、一旦はこれで良しとしました。ところが、光軸が合ってくると今度はニュートンリングが目立つようになってくることに気づきました。
スクリーンショット 2026-05-16 090237

とりあえずの解決策として、Apollo-M MINIの前にチルターを挿入してやりカメラを傾けてやると、一旦はニュートンリングは消えました。

IMG_3146

スクリーンショット 2026-05-16 090453


残る問題は、周辺のリング状の分解能が出ていないところ(原因は収差か、波長ずれか特定できていません)をどうするかです。前回の撮影では、シーイングがいい時は中心部では一本の線が1ピクセルに迫りつつあり、アンダーサンプル気味になっている可能性があるので、解像度を増やすために、2倍のバローレンズを入れてみました。すると、ニュートンリングが再びかなり目立ってきます。F値が大きくなるほど、ニュートンリングが目立つようになるんですよね。

すでにカメラは傾けていて、これでもニュートンリングが出てしまうということで、一旦はバローレンズはあきらめ、Apollo-M MINIよりある程度画角が狭く、ピクセルサイズが2.9μmと小さくなるASI290MMに交換しました。ASI290MMは比較的ニュートンリングが目立つカメラということがこれまでの経験でわかっていて、実際には同じ角度のチルターが入っていても、(Apollo-M MINIでは消すことができていた) ニュートンリングが再び目立ちます。なかなかうまくいきません。


ローリングシャッターのG3M678M

改善策として、これまでの経験でニュートンリングが比較的出にくいとわかっているG3M678Mにしてみました。このカメラだと、ピクセルサイズが2.0μmと小さくなり、4.5μmのApollo-M MINI + 2倍バローより分解能はよくなるので、この場合バローは必要ないです。視野が大きくなりすぎるのは、ROIでいらないところをカットしてしまえばいいかと思い、2400x1500に制限してみました。バローを外したこの時点で、ニュートンリングは確認することができないくらいに見えなくなっていました。下の画像を見るとわかりますが、視野的には、分解能が出ている範囲をほぼ全面でカバーできているので、かなりいいでしょう。

これでいつものように30秒ごとに1ショット200フレームで、全部で120ショット、トータル1時間撮影してみました。1ファイルのサイズも1.4GB程度なので、まあ現実的な範囲です。もう昼にかかったので、そこまでシーイングがいいわけではありません。全120ファイルを画像処理してみると、シーイングの時間変動もよくわかり、その中で一番いいと思われるベスト画像を選びました。

11_34_10_lapl3_ap4452_IP_ST_ref


一番の関心は、グローバルシャッターの有無で写りが変わるかです。パッと見は上の画像もそんなに悪いようには見えません。でも、先週末にグローバルシャッターのApollo-M MINIで撮れたような、滑らかな刷毛で細かく描いたような線は残念ながら出ていません。

収差に関しては先週よりもう少しフェニックスをTSA-120側に近づけたので、おそらく改善の方向のはずです。先週と今週の違いが、グローバルシャッターの有無によるものなのか、シーイングがたまたま先週の方が良かったのか、画像の比較から単純にこれらを判断するのは相当大変です。

ローリングシャッターでピクセルサイズが小さいG3M678Mの方が分解能よく撮れるか、もしくはApollo-M MINIと同等ならば、ローリングシャッターの影響は大きくないか、少なくとも無視できると言えるはずです。でも今のところそうはなっていなくて、グローバルシャッターが有利だという仮説を否定することはできません。


グローバルシャッター再び

もう少し比較検証を増やします。次の日の5月17日の日曜、再びカメラをApollo-M MINIに戻して、更に2倍バローを入れて撮影してみました。

前日に出たニュートンリングの影響を少なくするために、チルターの角度を調節する押し引きネジをより長いものに変更して、更に角度をつけることでニュートンリングはほとんど見えなくすることができました。チルターの角度が大きすぎるために隙間がかなり広がっていて漏れ光があるので、パーマセルテープで遮光しています。

この状態で、これまでのように30秒ごとに200フレーム、合計120ショット撮影し、ベストのものを選びます。

10_08_29_lapl3_ap3478_out_ST2_cut_ref

この画像も十分な写りで、そこまで不満はありません。でも同じグローバルシャッターでも、前週に撮ったみたいな、フワッとするような感じまでは出ていないと思います。


比較

土曜のG3M678Mで撮った画像と、日曜のApollo-M MINIで撮った画像を並べて比較してみるとどうでしょうか?
スクリーンショット 2026-05-19 201449_cut

左が土曜のG3M678M、右が日曜のApollo-M MINIです。大きな画角で見ているとほとんど分かりませんでしたが、拡大して見てみると、どうやらApollo-Mの方が良さそうです。

シーイングに関しては、土日の全ファイルを見ていると、土曜のG3M678Mの時の方が平均的には良かったです。その上で、ベスト同士の比較では日曜のApollo-Mの方がいいという結果なら、グローバルシャッターの効果が出ていると言っていいのかもしれません。

そうは言っても、思ったより顕著な差ではないとも思います。ピクセルサイズと視野角から考えるとG3M678Mの方が有利で、値段差を考えたらG3M678Mの方が圧倒的にコストパフォーマンスがいいです。

でも、今回の結果のように、シーイングの差をひっくり返す可能性がグローバルシャッターにあるのなら、Apollo-Mに舵を切らざるを得ません。


まとめ

今回の段階では、グローバルシャッターの方が良さそうという結果ですが、まだ結論を出し切るには至っていないと思います。原理的にはもちろんグローバルシャッターのほうが有利でしょう。でもそれは、撮影時のシャッター速度と、対象天体が画面上でどのくらいの速度で移動しているかに依存するはずです。いまの太陽撮影の状況でこのグローバルシャッターが活きているかというと、シーイングの時間ごとの変化量が今回比較したベスト2枚の差よりもはるかに大きく、今の比較方法で結論づけるほどの判断をするのはまだ難しそうです。

全く同一の鏡筒で、同時に2つのカメラで撮影し、シーイングが全く同じになる状態で比較するしかない気がします。ある程度拡大して比べる必要があるので、焦点距離と口径も必要で、太陽だと同じ機材を揃えるのは難しそうです。月の方がまだ比較しやすいかもしれません。

この件、いつかきちんと比較して結論づけたいです。