ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:レイリー限界

4月25日(土)、朝から晴れていて時間が少しあったので、久しぶりに粒状斑を見てみることにしました。

前回粒状斑を見たのは2025年11月のことで、2021年からずっと挑戦していて、長年の苦労でやっと見えたと報告したのが以下の記事です、



撮影セットアップ

今回のセットアップも、カメラ以外は前回と同じになります。

TSA120に2インチのUV/IRカットフィルターと、眼視用の2インチのOIIIフィルターを取り付け、カメラに1.25インチのHβフィルターをつけています。1インチのアイピース口をつけて、そこにExplor Scienteticの5倍のバローを取り付けています。

カメラは前回はピクセルサイズが2.9μmのASI290MMを使いましたが、今回はピクセルサイズ2.0μmのG3M678Mを使ったので、分解能的に少し有利になるかもしれません。

ただしTSA120の口径は120mmなので、口径からくるレイリー限界がOIIIだと1.05秒角になります。焦点距離が4500mmの場合、ピクセルサイズ2.9μmだと、1ピクセルあたりの画角は0.13秒角、2μmだと、画角は0.091秒角と、いずれにせよ十分すぎるくらい細かいので、実際の改善はほぼないと思われるかもしれません。

でも、粒状斑の大きさが1000km程度で、視野角としては1秒角程度にしかならないので、そもそもがレイリー限界程度です。1秒角のものを、ASI290MMの0.15秒角程度の分解能で見るか、G3M678Mの0.1秒を切る分解能で見るかという違いです。言い換えると、粒状斑を一辺6ピクセルくらいで見るか、10ピクセルで見るかという違いになります。

レイリー限界を信じるなら、そもそも粒状斑は全然見えないのでしょうし、ピクセルサイズの違いで改善はないでしょう。レイリー限界を超える何かがあるなら、ピクセルサイズで多少の効果はあってもおかしくないかもしれません。果たして、どちらが正しいのでしょうか?


撮影時のシーイング

この日はそこそこ大きな黒点群が出ていて、G3M678Mの画角にちょうど合うくらいなので、そこを狙いました。ただ、時間的に午前の少し遅い時間帯なので、そこまでシーイングは期待できなさそうです。30秒程度ごとに1ショット、合計1時間程度で120ショットを撮影しました。

撮影を開始してからはそのまま放っておいて、朝昼ご飯を食べにいきます。この日は近所のガストでした。モーニングギリギリに入って、クーポンで少し安くなったトンん汁定食を食べました。

午後12時ころに帰ってきて、今度はもう少し小さな黒点を、ROIで縦横半分にして撮影しました。こちらも1時間程度で120ショット撮影しました。

撮影終了後、AutoStakkertt!4のバッチ処理で一気にスタックし、ImPPGで細部を出して比較しますが、どうやらこの日はシーイングは全然ダメだったようです。基本的には粒状斑が全く出て来ない画像がほとんどでした。午前中の画像は、粒状斑が画面の1部にある程度写っていたものが16枚、画面全体に粒状斑が写っていたものはわずか4枚でした。午後はもっとひどくて、粒状斑らしきものがある程度見えるのがわずか4枚で、全体が写っているものはそのうち1枚だけでした。

実は、前回の粒状斑の撮影後に、試しにC8でも同じような手法で120ショット撮影したのですが、全然うまくいかず、粒状斑の画像としては全滅でした。その後はC8という機材が悪いと思い込んでいたのですが、TSA120でもシーイングで写り方が全然違うので、もしかしたらC8のときはやはり撮影時間帯の間中シーイングが悪かった可能性も捨てきれなくなりました。口径の差は効くと思うので、いつかC8とTSA120で撮影して比較できればと思います。

ちなみに、次の日曜の午前にも同じTSA120のセットアップで粒状斑を120枚撮影しましたが、この日のシーイングはもっと酷くて、全面に粒状斑が映っているものは1枚もなく、全ボツでした。シーイングの影響はものすごく大きいです。


結果

さて、今回の撮影結果です。まずは土曜午前の分のG3M678Mのフル視野角で、巨大黒点群AR4420周りです。

10_15_41_lapl2_ap2096_out_cut_cut
  • 撮影日: 2026年4月25日10時15分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120(f900mm、F7.5) + Explore Scientific x5バローレンズ
  • フィルター: UV/IR cut、Baader 7nm OIII、7nm Hβ
  • 赤道儀: Celestrn CGEM II
  • カメラ: ToupTek G3M678M
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2 solar
  • 撮影: SharpCap Gain 100 (= 0 for ZWO camera = 0 dB = 1倍)、平均23fps、露光時間0.8ms (10時11分から11時15分まで、約30秒ごとに200フレームを120回撮影して、そのうちベストショットの20/200フレームをスタック)
  • Dark、Flat補正: 無し
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、Photoshop CC

次が、午後の撮影で、少し離れた単独黒点のAR4421をROIで縦横半分のサイズにして撮影したものです。
13_31_16_lapl2_ap492_out_cut
  • 撮影日: 2026年4月25日13時31分
  • 撮影: SharpCap Gain 100 (= 0 for ZWO camera = 0 dB = 1倍)、平均23fps、露光時間0.6ms (13時31分から14時36分まで、約30秒ごとに200フレームを120回撮影して、そのうちベストショットの20/200フレームをスタック)
  • Dark補正: 無し、Flat補正: Gain 100、露光時間0.6ms x 32枚
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、Photoshop CC

惜しむらくは、上の両画像とも画面内で分解能が出ているところと、分解能が出ていないところがシミのような形で分かれていることです。これは元の動画の1コマ1コマを見るとわかるのですが、シーイングがいいところと悪いところが画面内で分かれているからです。その中でもシーイングがいい時の画像を瞬間的に持ってきているのですが、画面内でいいところだけを選ぶという技術はまだないので、このように時間平均して悪いところが残ってしまうようです。

とにかくシーイングは全然良くなくて、それにもかかわらず、1時間にわずか1-2ショットだけですが、かろうじていい瞬間があるというのは、統計的に見ても非常に面白いと思います。


前回ベストと比較

前回のベストをいま一度比較のために下に掲載しておきます。
11_00_34_l2_ap3983_IP_cut

シーイングは前回のほうがよかった印象にもかかわらず、今回の方が分解能が出ているので、やはりピクセルサイズの小さいカメラの効果はあったのかと思います。ただし、シーイングの良かったせいもあると思いますが、画面内の安定度は前回の方が上なのかと思います。


デジタル時代のレイリー限界の意味

こうやって見てみると、レイリー限界の意味がだんだん薄れてくる気がします。レイリー限界は、眼視時代に定義された、人間の目で2つの星を見分けることができる一つの目安です。具体的には、2つの星のエアリーディスクの重なりが大きくなると中心の間に明確な輝度の落ち込みがなくなるような状態で、 片方の星の明るい中心が、もう片方の星の最初の暗い輪に重なるのが限界になります。

レイリー限界は鏡筒の口径とターゲットの波長のみで決まって、今回のTSA120の場合はOIIIで1.05秒角となります。これが本当に限界だとしたら、そもそも1秒角程度の大きさでしかない粒状斑はほとんど何も見えないことになります。でも、実際にはよく見えてるんですよね。

今回は焦点距離を伸ばすことで、この1秒角程度の粒状斑を10ピクセルくらいを使って見ています。レイリー限界を信じるなら、より細かいピクセルを持ってきてもオーバーサンプリングになってしまい分解能は上がらないはずなのですが、目で見る場合と違いカメラで撮影した画像データでは、例えば少しの輝度差も、輝度のオフセットを除き、輝度さを画像処理で拡大などすることで、S/Nよく明るい部分と暗い部分が区別できるので、レイリー限界で考えるよりももっと分解能は上がってもおかしくありません。

今回の結果だけ見ると、粒状班の形や、更には粒状班の中の様子まで見えつつあります。レイリー限界だけで考えると勿体無くて、例えばこの結果からレイリー限界の10分の1くらいのサイズのピクセルで見ることには、十分に意味があるということが言えそうです。


まとめ

口径120mmで見る分解能としてはかなり限界に迫っているのかと思います。ここまで迫るためには、シーイングの極めていい瞬間を狙うことがかなり重要になります。1時間撮影して、シーイングが良くなるあるある時間帯のうちの、その中でも一番いい16ミリ秒ぶんを使ったということになります。確率で言うと、20/(200*120) = 0.083%です。いい分解能を得るのは、このくらいの確率を考えなければならないということもなんとなくわかってきました。

ただ、日としては悪いシーイングだったので、シーイングのいい日を狙うとまだ改善する余地があるのかと思います。あとは、やはりもう少し大きな口径で同様なことを試してみたいです。


月曜でしたが、在宅勤務。せっかく明るいうちから自宅にいるので、夕方の月を見ます。


夕方の月と地球照

この日は月齢4日、まだそれほど太くはありません。明るい夕方だと白い月です。最大光度に近い金星も近くにいるはずですが、肉眼だとまだよくわかりません。せっかくなので3倍の星座ビノを使ってみました。これならさすがに青い空の中の金星も一発で見つけることができました。位置さえわかれば簡単です。肉眼でもすんなりと見つけることができました。 

そうだ、地球照でも撮影しようと思い、さっそくTSA-120をセットします。まだ北極もあまり見えていないので、極軸も適当です。

夕方と食後の暗くなってから、何ショットか撮影しました。

18_59_37_lapl2_ap231_RS2_cut
  • 富山県富山市下大久, 2020年4月27日19時6分、月齢4.3
  • タカハシ TSA-120 + 35フラットナー + ZWO ASI294MC Pro (常温17.6℃) + Celestron CGEM II
  • SharpCapで撮影、露光時間 25ms, gain 50, RAW16で記録、800/1000フレームを使用
  • AS3でスタック, Registax6でWavelet, PhotoshopCCで画像処理 、月が画面に広がるようにトリミング
右下に赤い収差が見えているのは大気分散だと思われます。収差の方向と月の向き、高度からのずれの量も計算値とほぼ一致します。

ついでに、目で見た明るさに(感覚で適当に)近づけてみました。こちらはトリミング無しです。でもこういったのってどうやって客観的な明るさにすればいいのでしょう?難しいです。

18_59_37_lapl2_ap231_RS2_evening

さらに地球照です。これもどんな色が正しいかよくわからないですが、夕方感を出してみました。

19_02_07_lapl2_ap3065_evening


PowerMATEを用いての分解能比較

さて、今日の課題はここからです。TSA-120に35フラットナーを付けた状態で、宮路泉さんにまだそのままお借りしている4倍のPowerMATEでどうなるかを見てみます。焦点は出るのか、分解能はどうなるか、変な収差は出ないかなどです。

接続は特に困ることもなく、35フラットナーの後ろにそのままPowerMATEを取り付けて、特に延長塔などつける必要もなく、そのまま少しフォーカス位置をずらすだけでピントが出ました。同様に月の一部を撮影しました。結果には影響ないと思いますが、ミスでRAW8で保存してしまいました。まあ、分解能をみたいだけなので多分問題ないでしょう。

とりあえずその結果です。

20_53_02_lapl2_ap723_RS
  • 富山県富山市下大久, 2020年4月27日20時53分、月齢4.3
  • タカハシ TSA-120 + 35フラットナー + PowerMATE x4 + ZWO ASI294MC Pro (常温16.9℃) + Celestron CGEM II
  • SharpCapで撮影、露光時間 25ms, gain 300, RW8で記録、800/1000フレームを使用
  • AS3でスタック, Registax6でWavelet, PhotoshopCCで画像処理 

でもまあこれはどうでもよくて、見たいのはPowerMATEありなしの比較です。両方の画像を拡大して比較します。

comp2

左が4倍のPowerMATEあり、右がPowerMATE無しです。左はQBPを入れてしまったで色が違うとかは気にしないでください。

PowerMATE無しもかなり検討していますが、やはりジャギーが目立ってしまっています。わかりにくい場合は画面をクリックして拡大してみてください。また、以前の結果と同じくPowerMATEによる変な像の乱れは私が見る限り確認できません。結論としては、今のTSA-120とASI294MCの組み合わせでは、4倍のPowerMATEを入れた方が有意に解像度が高いと言うことが言えます。

ここで少し比較のための情報を。
  • レイリー限界が1秒角くらい1ピクセルが1秒角くらい。なので、1ピクセルがレイリー限界と等価くらい。
  • でもカラーCMOSカメラなので、モノクロCMOSカメラに比べて解像度は4分の1程度のはず。 
レイリー限界を超えて見える可能性についてです。
  • 他数枚をスタックしているのでレイリー限界以上に(多少)解像度が上がってもおかしくはないはず。
  • RegistaxのWavelet変換でシャープになっている
  • 強度の画像処理はしていないので、擬似的に解像度を上げるようなことにはなっていないはず
これらの条件はPowerMATEのある無しに関わらず同じです。また、今回はカラーCMOSカメラなので、PowreMATE無しだとレイリー限界に全然到達していない可能性が高いです。PowerMATEで分解能が上がりましたが、レイリー限界が見えているかどうかは、今回の結果だけでは良くわかりません。PowerMATEで4倍にしているので、一応カラーCMOSであることも考えると、1ピクセルがちょうどレイリー限界と計算上はコンパラなくらいです。

と思って、最後の最後でPowerMATEありの方を1ピクセルが見えるくらいに強拡大してみました。
PowerMATE_Extended
まずは大気分散リミットのようです。どうやら、PowerMATEのおかげで大気分散が姿をあらわにしてきました。一応ちょっと検証します。

赤から青まで約20ピクセル。4倍なので、もともと5ピクセル。ということは画面からの概算は、1.08秒/ピクセルをかけて約5.5秒角。この時の月の高度は14度で、計算によると大気分散は6.2度。読み取り誤差を考えると大気分散で確定でしょう。

どうやら次に進む前に本格的にADCが必要か。


まとめと今後の方針

さて、これらの結果をものすごく単純にまとめると、ASI294MC ProだけではまだTSA-120の分解能を引き出し切れていないということだけは確実に言えます。
  • エクステンダーやバローレンズ
  • よりピクセルピッチの小さいカメラ
  • モノクロのカメラ
などが必要になります。もちろんこれらには欠点もあり、
  • エクステンダーやバローレンズは暗くなりますし、像を歪める可能性もあるので、高性能のものが必要となります。
  • センサーの感度は1ピクセルの大きさに大体比例するので、ピクセルピッチが小さくなると当然感度が落ちます。
  • モノクロカメラはカラーにしたい場合はRGBで撮る必要があるなど、手間も時間もかかります。
など、トレードオフになります。このような対策をして、次は大気分散のことを考えてやる必要が出てきます。


さて、今回の結果をどう活用するか。もともとは焦点距離900mmで撮影できる系外銀河を考えていたのですが、系外銀河って意外に、と言うか当たり前ですが小さくて、900mmで撮影できるものは少ないのです。口径からくる分解能に達しているかどうかを見極めたかったのですが、今のシステムではまだバローとかで焦点距離を伸ばしても得しそうということはわかったわけです。でも拡大すると暗くなるんですよね。4倍のPowerMATEだと焦点距離3600mmですが、明るさ16分の1です。
  1. 2倍くらいの性能の良いバローにして、今のカラーのASI294MC Proで撮り続けるか
  2. 口径の大きいVISACに移すか
  3. それともモノクロのカメラを買うか
うーん、迷いますが、やっぱり2かなあ?夏も近いので一度M57でVISACの再テストですかね。TSA-120では小さい銀河は諦めて、もう少し広い領域を目指すことになりそうです。


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