ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:フラット補正

ちょっと前に、XでにゃーとんシュガーさんからR200SSでフラット補正がうまく行かないという投稿がありました。

ちょうど同じ時期にseki-chanさんもR200SSでよく似た問題に直面していて、個人的に直接問い合わせがあったので、個々のRAWファイルにまで見ながら、ある程度の理由を突き止めました。だいこもんさんからその過程を公開してほしいとの要請があったのですが、記事にするのに時間がかかってしまいました。

実際、皆さんフラット補正には相当苦労されてますよね。理由はそれぞれかと思いますが、フラット補正については古くから様々な方法が提案されています。それでもいまだに決め手がないような状態かと思います。光学的フラット補正の「アルゴリズム」自体は、各種画像処理ソフトにおいてある程度確立しているので、問題は「フラット画像の撮影方法と」言ってしまってもいいかもしれません。

ちょうどいい機会なので、最近思っているフラット補正について思うこともあり、記事にしておきます。あくまで光学的なフラット補正についてで、画像処理中に行うソフト的なフラット補正については基本触れず、今回は最後に少しだけ適用するだけにします。


フラット補正は大変

まず、フラット画像の撮影について、私がやっている方法を何通りか書いておきます。ただし、この方法が必ずしも正しいわけではありません。自分の環境に合わせて各自で試されるのがいいのかと思います。

基本的には、私は部屋の中の白い壁を使っています。これは元々、以前見学に行った東京大学木曽観測所の口径1mのシュミット望遠鏡が、ドーム内に吊るした白いスクリーンを使ってフラット画像を撮影していることから、この方法にしたという経緯があります。

白い壁を使う場合ですが、光源は日光の方がよくて、晴れた日か、曇りの場合は全面が曇っていて明るさが時間であまり変化しない日がいいです。窓の近くで、直射日光が当たらない壁で、できるだけ均一に光が当たっている部分を探します。基本的には明るい方がいいですが、窓が大きくて明るすぎる場合などは、薄手のカーテンなどしてもいいでしょう。壁の明るさはなかなか一様にはならず、窓側に近い側がどうしても明るくなりますが、それでもできるだけ均一な場所を選びます。このグラデーションに近い明るさの違いは、PixInsightのABEの1次でほとんど落とすことができます。あと、鏡筒の自らの影が壁に映ったりするので、あまり鏡筒を壁に近づけないことです。

もしくは、障子を利用する手があります。鏡筒の径が収まる面積の障子があれば、直射日光が当たらないところを探して、それでフラット撮影すると簡単です。屈折など、そこまで口径が大きくない場合はいいのですが、大口径の反射型などではそれだけの面積を持つ障子面を探すのが難しくなってくるので、私は最近は障子はあまり使っていません。

もう一つの方法が、晴れた昼間でいいので、鏡筒を空に向けてピントをずらして撮影することです。これは鏡筒やフォーカサー部、カメラ筐体からのセンサー面への光の入り方をかなり再現することになるので、フラットはかなり合います。特に光害地では効果が高いです。その代わり、青くなるのでその補正が必要なのと、視野に虫や鳥が入り込むこんでピントが合ってしまうことがあるので、邪魔なものが入っている画像を目で見て取り除く必要があるのが面倒なところです。

逆に一見良さそうで全然ダメなのが、ライト撮影後に対物側にスーパーの袋などを被せて、まだ暗いうちにフラットを撮影することです。「暗いうち」というのがダメな原因で、できたフラット画像は結局のところ暗いところを写しているだけなのでノイズが大きく、これでフラット化すると縞ノイズの原因になったりします。

あと、壁の場合でも、障子の場合でも、青空の場合でも、フラット撮影をするときは「カメラ側を暗くしない」ことがコツでしょうか。現実的には、天体撮影時にフォーカサー部やカメラからも光が入っていて、特に光害地での撮影だとフラット撮影時にそれを再現できないためにフラットが合わないケースがあります。フラット撮影時にもできるだけ実際の状況を再現してやるという考えです。上の方法は全てその観点から有利になっています。壁の(あまり明るすぎない)光を利用するのも、対物側とカメラ側での光量にあまり差をつけないためです。フラット撮影は短時間で済むので、漏れ光は関係ないのではという反論もあるかもしれませんが、ライト画像の撮影時には1枚あたりの露光時間が長くなるので、漏れ光の影響は入ってくると考える方が自然で、それを漏れ光が入っていないフラット画像で補正しても、原理的に補正できないのは想像できるかと思います。

その一方、フラットダークの撮影時はカメラ側も徹底的に暗くしてやります。昼間にカーテンなどで部屋を暗くするだけでは不十分で、私は部屋を暗くして、なおかつ毛布などをカメラを含めて鏡筒全体にかけて光を遮ります。ただし、毛布などを被せる時にカメラの排気口を塞ぐのは厳禁です。熱がカメラにこもってしまい故障の原因になりかねません。排気口を塞がないように且つ、光が入らないような工夫をすべきです。

IMG_8667

接眼部からの漏れがあるかどうかは、カメラを鏡筒につけたままダークノイズを撮影してみるとわかるかと思います。通常のライト撮影と同じ露光時間、ゲインで、対物側にキャップを被せてダーク画像を撮影します。その際、明るい部屋で撮影するのと、暗い部屋でさらに毛布などを全体に被せて撮影して、それぞれの画像を比較してみてください。画像の比較はオートストレッチをして、必要ならABEの4次などを使い差を見やすくするといいでしょう。ここで差が出るならば、漏れ光が原因でフラット補正がきちんと当たらない可能性が高くなります。また、漏れ光でダーク画像自身が汚されてしまい、ダーク補正がうまく行っていない可能性も出てきます。

ダーク画像、フラットダーク画像、必要ならばバイアス画像も、暗い部屋でさらに毛布などを被せて暗い状況を作り出し撮影し、その一方フラット画像はライト画像の撮影時の状況をできるだけ再現するという、ある意味至極真っ当なやり方というわけです。

これらの観点から考えると、LEDなどのフラットパネルでの撮影は原理的にどうやっても合わないと思われます。フォーカサー部やカメラ筐体からの接眼側光の入り方を無視して、鏡筒側だけ光度を強調しているからです。フォーかサーブからの漏れをものすごく気をつけているとか、ものすごく暗いところで天体を撮影しているのなら、接眼側から入る光が少なくなるのでこの問題が顕在化する可能性は下がるでしょう。フォーカサー部やカメラになんの対策もせず、光害地、特にローカルな街灯や家の明かりなどがある光害地では、この問題は大きくなる可能性が高いです。また、そもそもLEDパネルは対物側にピッタリつけるので、光路的にも現実の光の入り方とは変わってくるはずです。壁撮影も原理的には合わないですが、対物側にすきまがあるのでまだ現実を反映しやすいと考えられます。

ただし、LEDが全く使えないかというかというと、そんなことは全くなく、程度問題なのかと思います。暗い場所で撮影している場合は漏れ光の影響は少ないでしょうし、漏れこう対策をきちんとしている場合も大丈夫でしょう。原理的に光のパスが違うのは仕方ないのですが、これもどこまで合わせるかで問題になるかどうかが決まってくるでしょう。私は淡いところを相当炙り出したい口なので、わずかのフラットのズレが問題になってきますし、結局のところ光学的なフラット補正だけでは完全に合わせるのはほぼ無理なので、ソフト的な補正も駆使してます。あまり淡いところをあぶり出さない場合は、フラット補正は多少ズレがあっても問題にならないでしょう。というわけで、それぞれの環境、目標に応じた程度問題ということになるのかと思います。

あと少しだけ一般事項です。フラット画像の撮影は画面が十分明るくなるような露光時間にします。目安はヒストグラムで見てピーク位置が左3分の1から真ん中くらいです。フラット撮影時のカメラのgainはライト撮影時のゲインと必ず同じにしてください。その一方、温度は常温で構わないと思います。フラット撮影時のような短時間露光ではダークノイズはほとんど関係ないですし、バイアスノイズの温度依存性がほとんどないことは以前調べています。それよりも、下手に温度を下げたりして結露してフラット撮影を失敗することの方が多かったです。今のところ常温が原因でフラット補正を失敗したという経験はありません。

その他、基本的なことは当然なのですが、基本的に守るようにようにします。基本ができてないと何をやっても無駄です。例えば、フラットダークは必ず撮影します。フラット化がうまくいかないかなりの原因がフラットダークを使っていないことです。フラットを撮影してからそのまま部屋を暗くして、毛布をかけて、同じゲインと同じ露光時間で撮るだけです。あと、フラットとフラットダークは必ず同じ時間帯に撮影するようにしています。時間が経って温度が違うと振る舞いが変わる可能性があるからです。フラット、フラットダークの温度が合っていれさえすれば良くて、上にも書いたように、ライトフレームの温度とは違っていても構わないので、フラット撮影時に冷却する必要はありません。

いつも気をつけていることは大体これくらいです。ここで書いてるあることも単に経験則で、きちんとした検証はできていませんが、フラットで困ることはあまり無いので、そこまで間違っていないと思います。


問題の画像

seki-chanさんとは結構頻繁に画像処理の検討をしていて、今回撮影したフラット画像も、上のようなことを実行してくれています。その上で、今回はフラット補正が全くうまくいかなかったとのことです。最初に送られてきた画像は以下のようなものでした。

NGC2359_周辺減光が過補正

円のような青い形が周りに出ていて、フラットが合っていないように見えます。状況を聞いて、例えばCBPフィルターを使っているとのことなので、それも疑いました。また、処理ソフトがSirilとのことなので、フラット補正アルゴリズムが間違っている可能性もあると思い、他のソフトでも試してもらいましたが、いずれも状況は変わらずでした。他にも色々試してもらったのですが、なかなか原因が掴めずにいたので、ライト画像、ダーク画像、フラット画像、フラットダーク画像を全枚数をRAWでアップロードしてもらい、手元でそれぞれ確かめることにしました。

実はこの時点である程度原因は予測できていて、seki-chanさんに子午線反転の前後の画像をあらかじめ送ってもらっていました。一見するとあまり差がないように見えるのですが、よくみると暗い部分が反転している様子が見えました。このことを確かめるために、画像をRAWで送ってもらったというわけです。

問題の子午線前後の画像です。
2026-01-09_23-58-39__-10.00_180.00s_0049_d

赤道儀が反転する前後のRAW画像を、debayer、オートストレッチして、SterNetで恒星を消したものをgif化しています。このブログへのアップロードの関係でサイズを小さくしていますが、大まかな傾向を見るのには支障がないでしょう。

繰り返し見て比べてみると、明るいところと暗いところが上下で反転しているのがわかるかと思います。これは、近くにある邪魔な光が、ニュートン反射鏡筒の先端部から入り、先端部近くについている接眼部に非対称に当たるために起こることが原因で、子午線反転でその効果が逆転してしまった様子です。

次に同じ子午線反転前後のライト画像を、フラット補正したものを示します。
2026-01-09_23-58-39__-10.00_180.00s_0049_c_d
RAW画像をフラット補正とダーク補正して、debayer後にオートストレッチしたものです。

フラット補正に利用したマスターフラット画像は以下のようなものです。こちらもdebayerしてオートストレッチして見やすくしています。
integration_RGB_VNG

上のように、フラット補正をした後の画像を2枚を重ねて交互に見比べるとよくわかりますが、迷光の入り方で出来た差を1枚のマスターフラットでは補正しきれていないのがわかります。

次がフラットでは補正しきれていない60枚の画像を位置合わせしてスタックしたものです。
masterLight_BIN-1_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

補正しきれていない部分が重ね合わせのようになり、円状の形になっています。それぞれがうまく補正できていない一枚一枚をスタックしたので、当然かなりひどい影響となってしまっています。これが、最初にseki-Chanさんから送られてきた画像相当のものになります。一番上の画像を比べると、ちょっと補正できていない部分の形が違って見えますが、ストレッチの仕方で見え方は違ってきます。紫っぽい色なんかはよく似ていますね。


なぜこんなことが起こるのか?

結局のところ、ニュートン反射の迷光は、接眼部が鏡筒先端に近いことが原因です。接眼部が鏡筒の片側だけについているので、入ってくる迷光が本質的に対称にならないからです。撮影画面上では左右や上下で非対称になります。左右か上下かは、カメラの回転角によります。このような鏡筒と撮影地の場合、子午線反転で光の当たり具合がかなり変わってしまっています。このことは、接眼部が鏡筒横についている反射型ではかなり一般的に起こる話で、私の使っているε130Dでも起こっています。同じ反射でも、接眼部が対称になっているシュミカセなどでは起きにくいと思われます。


この光のズレは、赤道儀が動くことにより、光害などによる迷光の入り具合が違ってくることが第一に考えられます。光害と言っても、遠くの空が明るいとかというよりは、近くの街頭などの影響の方が効いてくると思われます。周りが明るい市街地での撮影だと顕著だと思います。フラット画像は例えば壁利用なんかだと、安定した状態で撮影した画像をスタックしますが、少なくともこうしてできた「一通り」のフラット画像で、これだけ違う状態を一度にフラット化するのは無理でしょう。反転前と反転後の位置でフラットを撮影して、それぞれ別に処理すると少しマシなのかもしれません。

実際には赤道儀の反転時だけでなく、追尾で動いていく最中にも迷光の状態が変わっていくはずなので、反転前後の2グループに分けるだけだとまだ不十分かもしれません。フラット処理を終えた画像を1枚1枚見ていくと、処理しきれていない誤差が画面上を動いていくのが見えます。これらをスタックすると、補正できないところが円上の形になって出てくるかと思います。

上の、円状にフラット補正がうまくいっていない画像を、無理やりソフト的に解決してみたものになります。
integration1_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_DBE1

これはPixInsightのABEで1次から8次まで8回繰り返し、最後にDBEをかけたものです。これくらいやって、やっと添付画像くらいになりました。完璧ではありませんが、かなりましになったかと思います。

でも、この補正は画面全体が星雲でモクモク状態だと通用しません。PixInsightのMGCだとかなり対応できるのですが、このトールの兜星雲のように、領域のデータがまだないようだMGCも使うことができません。今回は全体がモクモクしているわけではないので、まだなんとか誤魔化せたくらいです。

一番の解決方法はまずはフードだと思います。それでも時としてフードが悪さをする場合もあります。フードはペラペラの薄いものだと形が安定しないので、取り付け方次第で迷光の入り具合が変わります。もしフードを取り付けるなら、頑丈で変形せず、毎回同じ位置に取り付けられるものがいいと思います。

ε130Dもよく似た問題があるのですが、結局フードも結構面倒なのと、フードなしの方がいい場合もあったりするので、私はソフト側でなんとかしてしまっています。

というわけで、光害の影響というのが私の結論です。光害地ではフードは必須でしょう。それでも影響は残ると思うので、ソフト的な処理が必要になるかと思います。


エピローグ

その後のseki-chanさんからの返答です。
ご検討いただき、ありがとうございます。また、迷光の影響と結論づけていただき、ありがとうございます。大変勉強になりました。

今回ご指摘いただき、これまで撮影した画像を落ち着いて見返してみました。

いつも屈折望遠鏡とニュートン反射望遠鏡で撮影しています。
屈折望遠鏡の方はフラット補正後に割と素直な勾配のカブリにとどまっていました。
こちらは結露対策で長めのフードを付けており、迷光対策になっていたのだと思います。

一方、ニュートン反射の方は今回ほどひどくはないものの、ほとんどの写真で複雑な背景勾配になっていることが分かりました。
程度が軽く、一回のBGE処理で目立たなくなっていたので、気づいていないだけでした。
とのことでした。多かれ少なかれ、ニュートンで光害地での撮影では同様の問題が存在するのかと思います。


まとめ

フラット補正については私も紆余曲折してきていて、過去様々な方法を試しました。障子撮影でかなり落ち着いてきて、大口径も含めて白壁撮影で今はほとんど問題がないです。撮影したフラット画像は、鏡筒とカメラを外したり回転しなければ、使い回しができるので、できるだけ同じセッティングを保ちながら撮影するようにしています。それでも最近ε130Dの子午線反転でまだ問題があることがわかったので、こちらはもう少し対策を進める必要がありそうです。

今回、フラット画像撮影においてフォーカサー部などからの光の漏れの影響について言及しましたが、もう少し定量的な評価が必要かと思っています。ただ、これまでこういったことがこれまで議論されたことはほとんどなかったで、フラットパネルの有効性も含めて、今後議論が進めばいいのかと思っています。


久しぶりのブログ更新です。前回のノイズ計算で力尽きてしまい、忙しいこともあり、あまり趣味に時間を割くことができなくなっていました。今回の撮影も、1月初めくらいに撮影して、その後CP+関連の撮影などでしばらく間が空いて、3月半ばに撮り増ししたものです。


サボり気味な撮影

撮影は1月に遡ります。ε130D+ASI6200MM Proでの、いつもの自宅での撮影です。もうその時のこと詳しくは覚えていませんが、能登地震から数日後で少し落ち着いてきたことと、対象天体をどうするか迷ってたことが記憶にあります。曇りの間の晴れ間で、長時間は晴れなさそうだったので、比較的短時間で成果が出るものとというので決めた気がします。新規天体よりも、再撮影の方が向いていると判断して、過去画像の中でも結構初期の頃のFS-60CB用のマルチフラットナーのテストで撮った、かもめ星雲にしました。



上のリンクは2019年初めの撮影で、星を初めて2年半が過ぎたくらいでしょうか。すでに画像処理はSIからPIに移っていて、DBEのおかげで少し炙り出せるようになってきた頃だと思います。まだモノクロ撮影に手を出すはるか前で、多分かもめ星雲全体が入るようにとフルサイズの6Dを選んだのだと思います。自宅撮影なのでQBPでHαを出していますが、仕上げを見ても分かるように青いところとかはほとんど出せていなくて、赤でのっぺりしています。StarNetやDeNoise AIなどのAI系のツールはまだ影も形もなく、撮影した画像のクオリティーでの勝負でした。でもこれ、今のツールで処理したらどうなるのでしょうか?時間があったら後でやってみます。

さて今回の撮影ですが、1月の時点で2回望遠鏡を出し、モノクロでRGBの3種を撮影しました。でも画像を見てみるとさすがに光害地での撮影で、しかも曇りの合間でそれぞれ1時間程度の露光時間なので、Rでも本体が淡くてほとんで出ていません。その後CP+などがあったこともあり、しばらくお蔵入りになったのですが、3月中頃にHαを追加撮影しています。4月に入り、重い腰を上げてやっと画像処理です。サボりすぎでダメですね。


フラットが合わない!?

やっとのことで画像処理を進めるのですが、なぜか以前に撮ったフラットが合いません。私は基本、フラットは一度撮ると、鏡筒やカメラの構成を変えない限り、マスターフラット化したフラットファイルを使い回しています。これまでSCA260+ASI294MM Proでもε130D+ASI6200MM Proでも、使い回しでほとんど困ることはありませんでした。今回も過去に撮影したフラットで補正したのですが、なぜか全然空いません。ここしばらくε130Dで撮影はしていませんでしたが、それでも構成は何もいじっていなくて、これまでの経験からいったらフラットが合わない理由はありません。

ちなみに下がフラットが合わなかった画像です。RGBを合成した後、ABEの1次をかけています。フラット画像は昼間の明るい部屋の白い壁を写しています。壁の左側にある窓からの光が支配的なので、1次的な傾きがあるのはわかっています。なのでABEの1次をかけるのですが、普通はこれでOKなはずです。それでもこんなに右側に残るのは何かおかしいです。

Image130_ABE

実際ここまでひどいと画像処理でどうやってもダメで、諦めてフラットを再撮影した方が良さそうです。フラットは昼間の撮影なので次の休日まで待つ必要があり、これだけで1週間程度余分に時間がかかってしまいました。

再フラット撮影ですが、フードの有り無しが影響することもあるので、フード有り無しの両方で撮影しました。比較してみると、フードの有無で差はほとんどありませんでした、過去に撮影したフラットファイルと明らかに見た目で違いがありました。

こちらが過去、クワガタ星雲の際に撮影したフラット画像で、少なともその後のイルカ星雲の画像処理の際にはずれたような兆候はありませんでした。代表してR画像を示しますが、比較しやすいようにABEの1次をかけ、オートストレッチしています。
masterFlat_BIN_2_4784x3194_FILTER_R_mono_integration_ABE

次が今回撮影したフラット画像で、同じくR画像で、ABEの1次をかけ、オートストレッチしています。
masterFlat_BIN_2_4784x3194_FILTER_R_mono_integration1_ABE

どうやら過去のものは左右バランスが取れいてなくて、今回のものは取れているようです。過去画像でのフラット後に右側に大きなずれが出たのも納得です。クワガタ星雲の撮影から鏡筒やカメラをいじった覚えはないので、なぜフラットがこんなに変わったのかの理由は今のところ不明です。何か触ってそれを忘れているか、季節が変わったとかか、どこかで光の漏れ具合や散乱光が変わったのでしょうか?

その後、新しく撮影したフラット画像でWBPPを再度走らせ、スタックしました。あまり細部を出す必要もないので、Drizzleのx1だけかけておきました。出来上がった個々のRGB画像を合成し、SPCCでカラーバランスを整え、BXTをかけます。ここからStarNetで背景と恒星を分離し、恒星はそのまま使いますが、背景はRを次のHα画像の背景と置き換えることにします。


かもめの頭上の明るさ

インテグレーション直後のHαを見てみてみます。オートストレッチの強い方をかけています。

masterLight_BIN-2_4784x3194_EXPOSURE-300.00s_FILTER-A_mono

これを見ると明らかに左が暗く、右が明るいです。すなわち、カモメの上部は暗いということがまずあります。でもこれをABEでもDBEでも新機能のGC(GradientCollection)でも、とにかく補正してしまうと、左が明るくなりすぎて右の暗いところの明るさを超えてしまいます。

補正の目的は、画面全体の輝度差をなくして、細部の構造の濃淡をより出したいというものなのですが、このような(カブリとかではなく)実際の空に大きな輝度差があり、あるところを境にパツンと変わるような場合は、大元の傾向を壊してしまうという弊害があるということがわかります。最近の私の画像処理では、背景全体が明るくなってしまう傾向があるのですが、おそらく根は同じようなことなのかと思います。要するに細部を出したいがあまり、大傾向を軽視してしまっているというものです。

今の所、どうしたら完璧かというような解はまだ持っていません。淡い部分の階調のわずかな違いを表現するためには、やはり強力なフラット化の手法は必要かと思いますし、背景が明るくなり過ぎるもの避けたいと思っています。特に背景は光害地で撮影している限り、階調の違いがナローでしか出てこないので、背景にどんな色がついているのかよくわからないのが大きな問題です。もしかしたら、Hα画像で撮影される背景は、実際には赤っぽくはならずに、もっと黒っぽかったり、茶色に近いとかかもしれません。

今回の撮影ですが、RGBはGC(GradientCorrection)を使って星雲本体以外はかなりフラットにしました。HαもGCを使って、こちらは結構注意深く、少なくとも逆転現象があまり出ないようにかけてみました。
masterLight_BIN-2_4784x3194_EXPOSURE-300.00s_FILTER-A_mono_GC

その時に使ったGCのパラメータです。
GC_cut

GCについては書き出すと長くなりそうなので、機会があれば別途記事にします。


仕上げ

Hα画像にもBXTをかけて、背景と恒星を分離します。先に作ったRGBの背景画像のR成分を、このHα画像の背景で置き換えます。合成したAGB背景画像と、RGBの恒星画像を、別途適当にストレッチして、Photoshopに受け渡します。Photoshopでてきじ重ね合わせ、最終調整をして仕上げです。結果は以下のようになりました。

「IC2177: かもめ星雲」
Image109_back_HT_NXT2_cut
  • 撮影日: 2024年1月4日22時59分-5日0時9分、1月14日1時48分-3時8分、3月14日20時59分-22時37分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、R、G、B
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 17枚、R: 8枚、G: 8枚、B: 12枚、の計45枚で総露光時間3時間45分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.1秒、R: 0.01秒、G: 0.01秒、B: 0.01秒で全て128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
赤の淡いところもそこそこ出ています。これはナローのHα画像が効いています。Rだけでは淡いところは全然出なかったでしょう。青もそこそこ出ているので、B画像も効いていることがわかります。これはOIIIにしても良かったのでしょうか?でもそれだとAOOにしてしまうかもしれません。ここら辺の塩梅が、まだあまりよくわかっていません。ただし、BもGもフラット化の過程で星雲本体以外はかなり消えてしまったので、星雲本体以外の赤がHαのみになってしまい、赤色だけののっぺりとしたものになっています。

フラットを再度撮影したのですが、ε130D(実際にはおそらく左右非対称からくる)のフラットの誤差がどうしても残るというのは依然問題として残っていて、今回GCで強引にフラット化してしまった弊害とも言えるかと思います。理想は左右対称な(明るい)鏡筒で、暗い場所に行ってRGBを撮影するというものですが、そんな鏡筒はなかなか無いのと、遠征になかなか行けない今の私にとっては、どちらも無い物ねだりというものでしょう。

アノテーションです。
Image109_back_HT_NXT2_cut_Annotated2

かもめ星雲はIC2177が一般的で、NGC2373と言われることも多いようです。NGCは他に3つ写っています。画面内には (シャープレス) sh2-292から297が入っているようですが、途中の294は見当たりません。調べたら画面右下をもう少し下側に行ったところにあるようです。PGCは分解能的に厳しいようで、ほとんど見えてないですね。


過去画像との比較

2019年初めに撮影したカモメ星雲を改めて載せておきます。
light_PCC_stretched_morfing_satiration_DBE_morph_ps2a

当時は赤いところも結構出るようになったと喜んでいた覚えがありますが、今見るとまだ全然ですね。しかも青成分なんかほぼゼロで、星雲本体が赤一色になっています。

露光時間は3時間越えなのでまあ同じくらいとして、鏡筒の口径は大きくなったこと、カメラはともにフルサイズですが、一眼レフのカラーカメラから、今回はモノクロのCMOSカメラでナローのHαを別撮りしているのが大きな違いでしょうか。いずれにせよ、大きく自己更新かと思います。さすがに5年という期間は、機材、ソフト、技術と、どれも進化が大きいかと思います。

さらにこの5年前に撮影したものを、RAWファイルから今のWBPPでスタックし直し、画像処理までしてみました。その結果がこれです。

masterLight-300.20s_combined_RGB_drizzle_1x_back_HT_cut

元ファイルは同じでも、別物のように違いますね。青い部分も情報としてはあったことがわかりますし、星の色もきちんと残っていました。淡いところもまだ引き出す余地があったようです。どうも撮影中に流れていたようで、縞ノイズの痕跡が見え始めています。

こうやってみると、5年間でソフトや技術が上がっていることがわかります。

ここまで出るなら、今回わざわざ撮影し直さなくても良かったかというとそうでもなくて、淡いところはより出ていますし、右翼に点在する青い部分はさらにはっきりしています。ここら辺の違いが機材の違いに起因するところでしょうか。こうやって進歩を部分部分で見るものとても楽しいです。


まとめ

イルカ星雲以来の久しぶりの本格的な撮影でした。露光時間があまり伸ばせなかったのですが、天気があまり良くなかったので仕方ないでしょう。でも久しぶりの画像処理で、結構楽しくて、結果もまあ満足です。

しばらく画像処理をサボっていた間に、GraXpertに加えて、GradientCorrenctiontという新しい機能も出てきました。ここら辺はMARSにつながる布石なのでしょうか?関連して、背景の正しい色を知りたい欲求が高まっています。もう暗いところに行くしか無いのか、それともアイリス星雲ゴースト星雲みたいに、明る自宅でもRGB撮影でまだ活路を見出すことができるのか、そろそろ次の手をどうするか本格的に考える必要がありそうです。

実は4月の新月期は結構頑張っていて、M104ソンブレロ銀河の撮影も終えていますし、ヘルクレス座銀河団の撮影ももう終えています。ここら辺の画像処理も時間を見つけて進めたいと思います。


前前々回の記事でクワガタ星雲のSAO合成をしました。



せっかくなのでいつものようにAOO合成もするのですが、普通にAOO合成をするとHαの淡い構造とかが一切出てきません。これが不満で、色々試してみました。


Hαの情報量

AOO合成をして、オートストレッチすると大体これくらいです。
Image21s

きちんとクワガタの形が出ています。でも、Hαだけの画像を見るとまだまだ模様がいっぱい残っているんです。

Hα画像を強オートストレッチしてみます。
FILTER_A_mono_drizzle_2x_integration_ABE1_ABE2_ABE4s
すごい模様が出てきます。一番暗いところが背景だとしたら、多少なりとも明るいところはなんらかのHα成分が存在していると考えていいでしょう。普通にAOO合成した画像に、このHαの模様が活かされ切っているとはさすがに言い難いのかと思います。今回はこれをどこまで表現できるかやってみたいと思います。


まずはどこまで出そうか、テスト

まずAOO合成させたものを、強オートストレッチして、さらに微調整します。
Image21_strongs
ここらへんまで出せたらHαを使い切っていると言えそうですが、いくつか問題点があります。
  1. 右真ん中に大きな黒い窪みがある。
  2. 赤がサチりかけているところがある。
  3. 星がうるさい。
くらいでしょうか。一つづつ片付けます。


1. フラット化の大切さ

まず1の黒い窪みですが、普通にAOO合成したら対して問題にならないのですが、淡いところを頑張って出そうとすると目立ってしまいます。これはOIII画像に残っていた、ε130Dの迷光の残りのようです。今回は撮影時に鏡筒にフードもつけていますし、もちろんフラット補正もしています。それでも強あぶりで、これくらいのフラットの誤差が出てくるようです。ここまででもHα、OIII共にABEの1次と2次と4次をかけていますが、さらにOIIIにDBEをかけて窪みをとることにしました。その結果が以下になります。
Image24_strongs
窪みは目立たなくなり、さらにもう少し炙り出すことができるようになりました。

しかしながら窪みが目立たなくなったことで、今度は右上に注目すると、赤が構造なしでのっぺりしている気がします。本当にHα成分があるのか、カブリなのか見極めが難しいところです。仮にカブリだとすると、ここだけをうまく取り除くのは結構難しそうです。

今回は、ABEの2次を再度かけ、右上と、左下の赤も少し緩和するようにしました。もっとはっきり除いてもいいのですが、そもそもここら辺の領域を強度に炙り出しいる参考画像がほとんどなく、何が正解かよくわかりません。これ以上やると恣意的な操作になると判断し、今回はそのままで残しました。
Image24_ABE1s
こういったカブリ問題は、将来PixInsightのMARSプロジェクトがうまくいったら解決するのかもしれません。



情報を余すところなく引き出して炙り出す場合、上の操作のように「正しい背景にするというよりは、あぶり出しやすいように、できる限りあらかじめフラット化させておく」方向になるのかと思い思います。そのため、フィルターやセンサー面についているゴミはうまくフラット補正で除けないと、強あぶり出しの際にとんでもなく目立ってしまったり、周辺減光や迷光もフラット処理がうまくいかないと、そこの輝度差で制限されてしまって炙り出しが十分できないなど、致命的になる可能性があります。

先日の記事のように
最近はソフトの力でかなりの補正が効くようになってきていますが、BXTは分解能は出せても淡いものを出すことにはほとんど助けになりません。ソフトで補正が効かないこともたくさんあり、今回のように淡い構造を引き出し切ろうとすると、光学機器の段階での丁寧な汚れの除去や迷光処理、確実なフラット補正がとても大切だと言うことも肝に銘じておきたいものです。

次に、SPCCでナローバンドを選び、AOOの正しい波長と、手持ちのフィルターの波長幅を入力します。重要なことは、ニュートラルバックグラウンドをどこにするかです。プレビューで一番暗いところを選択して「Region of interest」に設定しておいた方がいいでしょう。これをしないと、赤が再び出にくくなったり、暗いところが緑がかったりしてしまいます。RGB画像を別撮りなどしていない場合は「Oprimize for stars」にチェックを入れておくと、星の色を優先的に最適化するとなっていますが、試したところ少なくとも今回は大きな違いはわかりませんでした。SPCCがうまくいくと、赤がかなり残った状態で色バランスが取れるようになります。


2. 恒星にはBXT

次に2の星がうるさいことですが、やり方は色々あると思います。今回は簡単にBXTを使ってしまいましょう。恒星も併せて十分にあぶり出しても、恒星自身が小さければ、全体を見た時のうるささは緩和されるはずです。今回はHαの淡いところを画面全体で見せたいので、トリミングやバブル星雲のところのみを拡大することなどは考えていないです。そのためSAO合成の時よりもBXTの効果は緩和させて
  • Sharpen Stars: 0.25, Adjust Star Halos: -0.30, Automatic PSF: on, Sharpen Nonsteller: 1.00
としました。


3. ストレッチは迷うところ

最後に3のサチり気味(=飽和気味)の赤をどう扱うかです。ストレッチをいかにうまくするかと言う問題です。

既に赤は色が十分出ているので、ArcsinhStretchは色が濃くなりで使えませんでした。意外なのがMaskedStretchが本来マスクで、本来はきちんとサチるのを保護してくれるはずなのに、赤のサチりを強調してしまい使えなかったことです。結局ここでは、HistgramTransformationで恒星が飽和しない範囲で軽くストレッチして、ここでStarNet2で恒星と背景を分離し、その後背景のみ必要なところまで強調しました。その後、私の場合はPhotoshopに引き渡して最終調整します。


仕上げ

最後のPhotoshopは個人の好みによるところも大きいでしょう。今回は赤の淡いところを残します。OIIIの青を少し持ち上げて色調を少しでも豊かに見せるのは、いつもの手段です。赤ももう少しいじって、強弱をつけたりします。それでも色相(RGBをそれぞれどれだけストレッチするかと、各色のブラックポイント)自体はSPCCで決めたので、それ以上は触っていません。

結果です。
Image24_ABE1_SPCC_BXTSS025_HT2_s_cut

元がHαとOIIIの高々2色なので、前回のSAOと比べてもどうしても赤でのっぺりしてしまうのは避けられません。実はAOOにする前に、なんとかSIIを使えないか、いろいろ比率を変えて試しました。複雑な比率にして、そこそこよさそうな候補はいくつかあったのですが、結局AOOのシンプルさを崩すほどいい配色は見つからず、結局今回はSIIは使わずじまいです。いつかHαとOIIIとSIIまで使った擬似RGB配色で自然に見える組み合わせが見つかるといいですが、少なくともAOOを凌駕するものでないとダメだと思うので、そんなに簡単ではないと思います。

今回のHαを余すことなく引き出すAOOですが、懸念事項の一つは画面全体が赤に寄ってしまう印象を受けることです。でも赤にのみ構造がある限り、そこを出そうとすると赤を底上げする以外に今の所いい方法を思いつきません。アメペリも同じように処理をしていて、こちらも背景が赤いですが、それでも暗いところは存在していて、それ以上明るいHαが全面近くに渡り散らばっています。

今回、やっとこのAOO手法を言語化して記事にしたことになります。他に、全体をもう少しニュートラルに寄せて、Hαにふくまれる淡い構造もきちんと強調できる方法を探していきたいと思います。


まとめ

前回の記事で年末の挨拶をしてしまったのですが、今回の記事が本当の2023年最後の記事になります。 年が明けてからのんびりまとめようと思ったのですが、大晦日に少し時間があったので、まとめてしまいました。

クワガタ星雲をとおしてSAOとAOOの議論を少ししたことになります。でもまだ十分かというとそうでもなく、SAOの色がまだハッブルパレットと違う気もしますし、AOOは全画面真っ赤問題をなんとかしたいです。所詮人工的な色付けになるので、多少色相とかいじってもいい気もするのですが、今のところはまだ躊躇しています。理由は再現性がなさそうなところです。複雑になりすぎないというのも重要かと思います。何かいい方法はないのか?今後も探していくことになるでしょう。またいい方法があったら記事にします。


日記

最近はブログ記事を休日のガストのモーニングで書くことが多いです。以前はコメダのモーニングのみでしたが、最近はガストと半々か、ガストの方が多いくらいです。ガストのドリンクバーが飲み放題でいいのと、最近はマヨコーンピザが安くて美味しいからです。多分田舎のガストなので、朝はガラ空きで、混んでくるランチタイムくらいまでは長居も可能なので、とても居心地がいいです。同じようにPCを広げている常連さんも何人かいます。この記事も最後の仕上げを大晦日にガストで書いています。

これから実家の名古屋に向かいます。元旦は実家で、おせちをつまみながらのんびり過ごす予定です。残念ながら新年2日の北陸スタバ密会は中止になってしまいました。時間が少しできるので、またノイズ計算の方を進めたいと思っています。


前回までの記事で、SWATにAZ-GTiを取り付けて(SWAgTiと命名)、SWATで自動導入機能を実現して快適な簡単撮影を試してきました。しかしながら、数時間にわたる長時間撮影では縞ノイズがどうしても出てしまい、それをディザーで散らしてやることを考えましたが、今の環境では難しいであろうことがわかってきました。今回は画像処理でどこまで縞ノイズを改善できるか検証してみます。


方針転換

ディザー撮影とは、露光と露光の合間に少し(数ピクセルから多くても数十ピクセル)画角の位置をずらしてやることで、縞ノイズを避ける最も効果的な方法です。縞ノイズとは、長時間における機材のたわみなどで画角が一方向に流れてしまい、ホットピクセルやコールドピクセルなどの固定ノイズが縞状になって表れることです。ですが前回の検証でどうやら、今の機材、今の制御ソフトの範囲ではSWAgTiではディザーができないであろうということが判明しました。

そこで今回は方針転換をします。そもそもディザー撮影も複雑なので、撮影はシンプルそのものに、ガイドやディザーなどなしにして、その分画像処理を多少複雑にしてどこまで縞ノイズを回避できるかを検証したいと思います。


ライブスタックでの縞ノイズ

まずは、SharpCapでライブスタックをしただけだと、どれくらいの縞ノイズが出るのか見てみます。

3分露光で29フレーム、トータルで約1時間半撮影し、そのうち29フレーム中21枚がライブスタックされた画像です。SharpCapに出てくる画像(ストレッチなども含めて)そのものです。

Stack_16bits_21frames_3780s

かなりひどい縞ノイズが出ていることがわかります。ライブスタックだとひどい時にはこれくらい出てしまいます。


RAWファイルでも縞ノイズ

次に、同じ撮影時に保存してあったRAWファイルを使って、上の縞ノイズを再現してみます。PixInsightを使いましたが、ステライメージなどでも同じです。

方法は簡単で、ダーク補正やフラット補正をせずに、位置合わせだけしてスタックするだけです。こうしてできたものが以下になります。

masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

PixInsigtで途中雲で十分な露光ができていな画像を弾いたりしていますが、それらは同様にライブスタック時でも弾かれているはずです。多少(数枚)採用/不採用の違いはありますが、縞ノイズに関してはほぼ再現できていると思います。ようするに、ダーク補正などせずに単にスタックするだけでは、ライブスタック/後からのスタックにかかわらず、縞ノイズに関してはかなり厳しいということです。


ダーク補正とフラット補正

上と同じRAWファイルを、今度はダーク補正とフラット補正をしてスタックしてみます。

masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_dark_flatjpg

劇的に改善されているのがわかるかと思います。

わかりやすいように3枚を拡大して並べてみます。左からライブスタック、PIでダーク補正フラット補正なし、PIでダーク補正フラット補正ありです。

comp

これだけ見ると、やはり簡単撮影といえど、ダーク補正とフラット補正はした方が明らかにいいという結論になるかと思います。


クールピクセル除去

ただ、ダーク補正とフラット補正したとしても縞ノイズはわずかに残ってるんですよね。ここでさらに、あぷらなーとさんが言うクールピクセルの影響の可能性があると考え、クールピクセル除去を試しました。実際にはだいこもんさんがPixInsightでスクリプト化の足がかりを作られだぼさんが実装したコードを使用させていただきました。あぷらなーとさん、だいこもんさん、だぼさんには感謝です。

結果を示します。まだごくわずか縞ノイズらしきものは見えますが、もうほとんど気にするレベルではなく、画像処理でなんとかなるレベルと思います。
masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_cold

わかりやすいように、クルーピクセル除去の効果がわかりやすいところを切り出して拡大してみます。場所は下の真ん中より少し左のあたりです。左がクールピクセル除去なしで、右がクールピクセル除去ありです。

comp

画面の一部ですが、右は明らかにクールピクセル起因の縞ノイズがあって、それが左だと除去されていることがわかります。

でも実はこれ、最初ほとんど効果が見られなくて、Cold Sigmaの値をいくつか変えてみて、やっと違いがわかるくらいになりました。今回の場合0.1が一番良かったです。0でも0.5でも縞ノイズが結構残ってしまいました。0.2よりは0.1の方が少し良かったです。もしかしたら、もう少し調整できるのかもしれません。

縞ノイズが撮り切れていない原因の一つですが、今のところ冷却でないカメラを使っています。ダーク補正も温度をきちんと管理し切れていないので、ダーク補正によるホットピクセルの補正がまだうまくやり切れていない可能性があります。なので、冷却カメラに向かうというのが一つの方向性かと思います。

もう一つの方向性は、一眼レフカメラに向かうことです。SWATを使っている方は一眼レフカメラで撮影している方も多いかと思われます。基本シャッターを切るだけというお手軽な方向は、SWATを使う上での一つの正しい方向だと思います。これでも、今回のように画像処理をきちんとすれば、十分なクオリティーの撮影画像になるかと思います。ただ、お気軽撮影からは少し拡大していきますが...。


まとめと今後

今回見た画像は、1時間半ほどで本当に一方向にのみ進むものなので、縞ノイズ的には相当不利なものです。前回画像処理して最後まで仕上げたものは、トータルでもっと長時間露光で、しかも何方向かに進むものを合わせているので、クールピクセル除去とかしなくても、あまり縞ノイズが目立たなくなっています。

というわけで、前回のようにある程度マニュアルディザー状態になるように、撮影中に何度か位置を変えてやるか、今回のようにクールピクセル処理までしてしまえば、かなりのレベルで縞ノイズを無視できるくらいになるのかと思います。


おまけ: 胎内星まつりで「SWAgTi」展示

今週末に行われる「胎内星まつり」で、ユニテックさんから声がかかり、ユニテックブースにおいて

SWAT + AZ-GTi = 「SWAgTi」 を展示

させて頂けることになりました。

星まつりの期間は8月18日(金)午後から20日(日)昼となっていますが、

展示は19日の土曜となる予定

です(もしかしたら18日の夜には展示できるかも)。私自身はずっとユニテックさんのところにいるとは限りませんが、少なくとも土曜はほぼ一日じゅう会場内にいると思います。名札をかけていますので、もし見かけたらお気軽にお声掛けください。


さらにおまけ: 一眼レフカメラでのプレートソルブに挑戦

展示だけでもいいのですが、せっかくの星まつりなので、夜にはもう少し何かしようと思っています。

今ちょっと考えているのは、一眼レフカメラ(今回は手持ちのEOS 6D、EOS 60Dなど)でプレートソルブができないかです。ユニテックの方と話したところ、SWATに一眼レフカメラをつけて撮影している方が多いそうです。CMOSカメラではなくて、一眼レフカメラで自動導入やプレートソルブができた方が、SWATユーザーにとっては実用的ではないかとのことでした。

でも、見ていただきたいのは6Dでのプレートソルブそのものではありません。そもそもまだ、一眼レフカメラでプレートソルブを試したことがないので、うまくいくかどうかもよくわかっていません。星まつり会場のその場で初めて挑戦しようと思っています。

見てほしいのは、新しいことを試す時に、私Samがいつもどうやって取り組んでいるのか、問題にぶち当たった時にどうやって解決するのかなど、いろいろ試す過程を見ていただきたいと思っています。今回はその場で試してみてのことなので、実際にうまくいくかという保証はありません。でもこういった泥臭いところを見せることで、何かを感じていただければと思っています。

多分独り言をぶつぶついいながらの作業になるかと思いますが、もし興味があると言う方はぜひご参加ください。もちろんその場での質問とかもOKです。

暗くなってきてからのほうがいいと思うので、開始時間は19時過ぎくらいからになると思います。PCの画面が対面で見えるように、外部モニターを持っていこうかと思っています。

胎内星まつりでみなさんとお会いして、いろいろお話しできるのを楽しみにしています。

(2024/8/18追記: 1年越しでディザー撮影に成功し、縞ノイズを撮影時から無くすことができました。)





SWAgTi記事のまとめ
 
 
 








ここまでε130Dで3例のテスト撮影(1, 2, 3)をしてきましたが、2つの大きな問題があることがわかってきました。
  1. 光軸が合っていないこと、特に、カメラを回転させると像が変わる
  2. 迷光がありそう
などです。

この二つの問題について、福島の星まつりでHBさんから重要な情報を聞くことができました。ε130Dには特有の問題があり、
  1. 回転装置がアイピース口の光軸に対して垂直な面で回っていない可能性があること。
  2. ε130D固有の特徴的な迷光があること。
ということです。実際のテスト撮影でいずれも経験していることに近いです。今回は特に、迷光について少し検証してみました。


迷光をリアルタイムで見る

迷光が存在していることはテスト撮影からある程度わかっています。問題は何が原因なのか、改善する手段はあるかです。

まず、何も設定を変えずにフラットを撮影して再現性があるか見てみます。SharpCapで明暗が見やすいように、ヒストグラムで適当にストレッチしています。

キャプチャ3_with_hood

中心が明るくて、右にシャープな円弧状の段差があり、左になだらかな円孤状の減光があります。

前回のおとめ座銀河団の時に示したフラット画像は以下のようでした。ABEの4次をかけたストレッチしたものです。
2023_05_17_14_07_54_1x1_L_0_01s_g100_29_60C_0000_ABE

中心が暗くて、今回の画像と少し形が違うように見えて迷ったのですが、形が良く見えるようにSharpCap上でマニュアルでストレッチしているためと判明しました。RAW画像を撮影して、PixInsightで同様にABEを4次でかけオートストレッチしたら以下のようになったので、そこそこ再現性はあると考えていいでしょう。

_08_22_13_Capture_00001_08_22_13_ABE

以前の画像と一致したので、これ以降はリアルタイム性を優先し、SharpCapの画像で検証するようにします。

ちなみに、SharpCap状でもヒストグラムをいじることである程度再現はでき、
キャプチャ2

さらに、これは重要なのですが、何もストレッチしないと以下の様になり、
08_22_13_Capture_00001 08_22_13s
一見少し周辺減光があるだけの、特に何も問題ないようなフラット画像に見えてしまいます。


問題箇所の特定

さてSharpCapで左右非対称な迷光が見えている状態から、鏡筒の回転装置を180度回してみます。その結果が以下になります。

キャプチャ5_without_hood_rotete180deg

像が反転して、今度は左側がシャープに明暗が分かれます。カメラ側を回転させると像も回転するということは、原因は少なくとも回転装置よりカメラ側ではなく、鏡筒側にあることになります。

次に、フードを被せてみます。福島で特価で買ったプラスチック製のものです。きちんと真っ直ぐ取り付けることに気をつけます。

キャプチャ4_with_hood_rotete180deg
少し光量は減るので、フードがないと多少入り込む光はあるようです。でも微々たるもので、フードの有り無しで変な形を作る迷光は変わりないようです。

ここまでの結果から、回転装置より鏡筒側が原因で、フードを取り付けた鏡筒入射光側からの迷光も関係ないとすると、結論としては鏡筒の内部そのものに迷光を発生する原因があると言わざるを得ません。

この結果が正しいとすると、外部から何か改善することは期待できず、鏡筒を分解するなどして内部にアクセスして、反射する部分などを見つけて反射防止塗料などで防ぐことになるのかと思います。

例えば、フォーカサーの筒、副鏡、補正レンズなど、外からは見にくいですが、もしかしたら光を反射する明るい部分があるのかもしれません。補正レンズは取り外しができるので、(撮影では使わざるをえませんが)一度取り外して影響があるかどうか見ることは可能だと思います。もしレンズのARコート面からの反射とかだと致命的ですね。


この迷光はε130D一般のこと?

ところでですが、こんな迷光の話ネットを検索しても全然出てきません。少し気になったので、ε130Dのフラット画像がどこかにないか探してみました。少なくともすぐに2つ見つかって、
  1. 一つは本家のスターベースさんのもの、
  2. もう一つはYosshidaさんの「天体写真の世界」
で共にかなり信頼のおけるサイトです。ところが、掲載されているフラット画像を見ると、上のような円状の迷光はほとんど見られません。私の場合と全然状況が違うので、これは何かがおかしいと思い、もう少し検証してみました。

まず、両サイトともフルサイズの一眼レフカメラ(CanonのEOS 6DとNikonの810A)での撮影です。特徴的なのは上下のケラレです。

まずはこれを確認するために、私も6Dでフラットを撮影してみました。
キャプチャ8_6D_nostretch_mono
ぱっと見は上下のケラレも含めて、そこそこ再現できているようで、上記サイトの画像をかなり似ています。この場合の撮影条件は、見た目のDebayerをオフにしてモノクロにしたことと、「ストレッチをかけていない」ことです。

この画像だけ見ると特に問題はないように思えてしまいます。でも実際にはここからが問題です。上の状態から、先の検証でも試したようにSharpCap上で適当にストレッチをかけます。
キャプチャ9_6D_stretch_mono
ストレッチで炙り出すことで、見事にリング状の迷光が現れました。しかも上下のケラレの境の明暗さの方が大きいので、リング状の迷光はケラレに隠されてしまっていたということが言えると思います。

確かによく見るとスターベースの画像も、天体写真の世界の画像も、うっすらですがリング状の明暗さがあることに気が付きます。その証拠に、例えばスターベースのフラット画像をPixInsightでABEの4次をかけ適当にストレッチすると、同様のリング状の形がはっきりと出てきます。ここでは画像は掲載しませんが、興味がある方は各自試してみてください。


ちょっと迷光について検討

おそらくですが、実際にはスターベースのブログに書いてあるとおり、これまでフラット補正についてはあまり問題になっていなかったのかもしれません。そもそも、フルサイズクラスで問題になってくるリングの大きさですし、例えフルサイズでも一眼レフカメラで撮影している限りはケラレの方が大きいので、問題はそこまで露呈しないと思います。フルサイズのCMOSカメラになって初めて顕著になる問題かと思います。

もう一つは、近年画像処理の技術が発達してきて、相当淡いところまで炙り出すことができるようになってきたことも関係するかと思います。私はギリギリまで情報を引き出す傾向があるので、特に問題と感じてしまったのかもしれません。

その一方、前節で検証したようにフードを被せると入射光量は確かに変わるようなので、フラット補正後の残差はフードを使うことで軽減できる可能性はあります。まずは内部をいじるとかよりは、ちゃんとしたフードを作ることですね。これで上手く補正でき問題にならなければ、単なる程度問題なのかと思います。


まとめ

ここまでの検証で、やはりε130Dには残念ながら一般的にリング状の迷光が存在すると結論づけて良さそうです。でもフードでフラット補正の度合いが改善する可能性はありますし、画像処理をもう少し工夫するなどの手もあるかと思います。次回撮影で検証したいと思います。

言うまでもありませんが、ε130Dの明るさと分解能は特筆すべきものがあるので、いい点を上手く利用して今後も撮影していきたいと思います。撮影したいものもまだまだたくさんあり、今後どう改善していくのか、楽しみでなりません。


一連のε130Dテスト撮影で、北アメリカ星雲とペリカン星雲網状星雲と撮ってきました。




今回は3例目で、光軸調整前にもう一つ撮っておいたものです。といっても網状星雲が昇ってくる前の夜の前半で撮るものがないので、春の残りのおとめ座銀河団をお遊びで撮ったというだけです。でも結果だけ見たら流石にすごいことになってたので、記事にまとめておきます。

おとめ座銀河団に関しては、2年前の2021年3月にFS-60CBとEOS 6Dで結構な広角で撮影しています。


さて今回は、2年前の結果をどこまで超えられるでしょうか?


撮影

今回の撮影でのポイントの一つは、カメラがASI6200MMで高解像度になったこと。頑張ってbin1で撮影したので、ピクセルサイズは3.74μmとなり、前回の6Dのピクセルサイズは6.5μmで、6.5/3.75=1.75倍。さらにカラーからモノクロになっているので単純に2倍をかけると一辺3.5倍の解像度になります。面積で見ると14倍なので、ピクセルを14ピクセルで表すことになります。もちろん光学性能の限界やシンチレーションなどから、ここまで差がつくことはないかと思いますが、どこまで光分解のに迫れるのか、少し楽しみです。

撮影画角ですが、前回のFS-60CBの焦点距離370mmに比べて、今回のε130Dは430mmなので、少し画角が小さくなります。前回は南北はM100からM87まで、東西はM90からNGC4216まで入れたのですが、今回はそこまで欲張れません。少し迷ったのですが、今回はM100とNGC4216は諦めました。その代わりにマルカリアンの鎖が画面真ん中に近くなるように、M87のさらに南側を少し入れています。

あ、そういえば初のε130DでのLRGB撮影になります。LRGBフィルターはZWOのものです。高くなく、性能もいいという評判でしたが、実際はどうでしょうか?


これまでの問題点

ε130Dの撮影に関しては、これまで問題点として
  • 北アメリカ星雲では四隅の星像が流れること、BlurXTerminator(BXT)でかなり補正できること
  • 網状星雲で迷光による明暗が残ってしまうこと
などがありました。今回特に、後者を今一度確認してみます。


背景ムラの確認

迷光についてですが、L画像の1枚撮りを見てみます。ABEの4次をかけて、その後オートストレッチをかけたものです。

_2023_05_15_21_01_13_L_10_00_300_00s_0001_ABE

背景が何もない銀河団の撮影なのでよく分かりますが、かなりひどい変なムラがあります。

試しに、今回の処理のために撮影したフラットフレームの1枚撮りの画像を、同様にABEの4次をかけ、オートストレッチをしたものがこれです。

2023_05_17_14_07_54_1x1_L_0_01s_g100_29_60C_0000_ABE

はい、ものの見事に再現できています。フラットは明るい部屋の中で壁に向かって撮影したものです。

最初は撮影時の自宅部屋の電気の明るさがカメラに漏れていったのかと思っていましたが、時間も状況も違うのに出るということは、鏡筒由来でしょうか?これは次の記事で検証しようと思います。


画像処理: 背景ムラ対策

上の画像の背景ムラは共に1枚撮りです。画像処理の際に、多少の背景ムラはフラット補正で消えてくれるのですが、ここまでひどいと完全には消えてくれないようです。例えば、WBPPの後にスタックされたmaster L画像にABEの4次をかけ、オートストレッチしてみてみると、以下のようにどうしても補正しきれない残差成分が残ってしまいます。

master_9576x6388_EXPOSURE_300_00s_FILTER_L_mono_integration_ABE

この取りきれない背景のムラを誤魔化すのに、かなり苦労をしました。今回は小さな銀河がメインで、背景に星雲に相当するようなものは(たとえあったとしても)無視するので、DBEをしつこく適用することにします。

一例ですが、以下のようなパラメータで自動でサンプルポイントを割り振り、さらに手動で銀河付近や恒星付近にかかっているものを削除又は移動して除きます。ポイントはsmoothing factorでデフォルトの0.25を0.05にしています。これは2次元のスプライン補完をどこまでスムーズにするかというパラメータで、0にすると最もスムーズに補完してくれるようです。
DBE
実際の打点がこれくらいです。
sample_cut

例えばRGB画像はスタックしてRGB合成した直後は以下のような画像でした。
ABE1_Image10_RGB_crop

補正された背景はこのようになります。かなりスムーズな除去になっているのがわかると思います。
ABE1_Image10_RGB_crop_backgroundのコピー

出来上がった画像ですが、これくらいまで補正することができました。
ABE1_Image10_RGB_crop_DBE_s
まだ少しリング状のムラが残っていますが、今回は銀河の画像なので後の画像処理で背景を暗くすることで、目立たなくすることができます。

でも分子雲が背景にもくもくしているような画像ではそう簡単にはいかず、前回の網状星雲では同様の形が残ってしまっているのが分かります。
AOO_crop_SPCC_BXT_HT_HT_NXT_bg_more_s


BXTによる星像ひずみの改善

まだ光軸調整をしていない状態で撮影しているので、今回もこれまで同様に四隅で星像が歪んでしまっています。

ABE1_Image10_RGB_crop_DBE_ok_SPCC_ABE4_DBE_SPCC_mosaic

下方向、もしくは右下方向に伸びてしまっています。これまでと同様な伸びなので、再現性はあるようです。

これらの歪みはBlurXTerminator(BXT)のおかげでかなりのレベルで改善されますが、残念ながら一部の伸びてしまった星は二重星のようになってしまいます。

ABE1_Image10_RGB_crop_DBE_ok_SPCC_ABE4_DBE_SPCC_BXT_mosaic

これは流石に許容範囲外なので、やはり光軸をきちんと直す必要があります。

bin1画像だからでしょうか、BXTによる恒星の縮小がちょっと効きすぎてしまい、星が全体に小さくなりすぎるので、今回は0.05と軽くだけかけました。一部を拡大して見た時に自然な大きさになる程度の大きさです。星雲部の細部出しも効きすぎるので、PSFはオート(数値を大きくするより機器が小さくなる)として、「Sharpen Nonsteller」も0.7と少し抑えました。これで十分な効果がありました。

最後にNoiseXTerminatorをかけ、背景のノイズを落としました。


画像処理結果

テスト撮影ですが、せっかくなので仕上げてみます。bin1のままだと画像サイズが大きすぎてアップロードできないので、一辺を50%に縮小してbin2相当にしています。

「おとめ座銀河団」
final_50
  • 撮影日: 2023年5月15日21時1分-16日0時7分、5月16日21時2分-23時23分、5月17日21時0分-23時6分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: ZWO LRGB
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin1、Gain 100、露光時間5分、L: 55枚、R: 11枚、G: 8枚、B: 11枚の計85枚で総露光時間7時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、37枚
  • Flat, Gain100、L: 0.01秒、128枚、RGB: 0.01秒、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、0.01秒、256枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

ただし、仕上げたというには問題があることもわかっています。一つは、既に上で説明しましたが、一部の星がBXTで二重星のようになってしまうことです。もう一つは上下でピントにずれがあるため、明るい恒星の光条線が二重になってしまっていることです。

doubleline

これもみっともないので許容範囲外です。どう光軸調整するか、最優先事項でやらないと、今後撮影が進まなくなりそうです。

LRGBフィルターに関しては、特にハロなども出なくて、今のところ特に不満は感じません。2インチフィルターは根が張るので、安価なものが使えると助かります。ZWOのLRGBフィルターは見ている限り十分な性能を持っているようです。


Annotation画像

恒例のアノテーションですが、やはり銀河団はこれをやらないと気が済まないですね。すごいことになります。

ABE1_Image10_RGB_NXT_Annotated_s

一体幾つの銀河があるのか...。宇宙はすごいですね。

でもこれだと流石にちょっと分かりにくいので、PCGを除いたものです。メシエ、NGC、ICまでなのでずいぶんシンプルになるとはいえ、それでも結構な数の銀河です。
ABE1_Image10_NXT_Annotated2_s


マルカリアンの鎖

このままの大きさで見るだけだと細かすぎて面白くないので、ここから拡大していきます。まずはマルカリアンの鎖。

Markarian_large

Markarian_large_Annotated

過去画像と比較します。上から2017年3月: FS-60Q+EOS 60D2021年3月: FS-60CB+EOS 6D、同画角で切り出した今回のものとなります。

MARKARIAN_edit2

01_Markarian_comp

Markarian

こうやってみると、分解能、恒星、色など格段に進歩しているのがわかると思います。


更なる拡大

もっと変わりやすい比較をしてみます。2021年の時には完全にアラが見えていた、拡大しすぎた画像になります。まずはM99付近です。上が2021年、下が今回です。
07_M99_small

M99


流石に雲泥の差ですね。銀河の分解能もそうですが、特に肥大していない恒星、恒星の色など、前回の拡大画像はは出すのを憚られましたが、今回は十分に見ることができます。ここまで拡大しても破綻しないのはε130DとASI6200MM Proの分解の、さらにBXTの効果もあるかと思います。というか、ここまで出ていいのでしょうか?すごいです。

ついでにですが、前回はどうしてもできなかったAnnotationが今回は素直に通りました。恒星の写りが良くなったからでしょうか?これだけ見てても楽しいです。
M99_Annotated

最後、M88とM91回りの拡大です。同じく上が2021年で、下が今回です。こちらも分解能が格段に上がっているのがよく分かります。
10_M91_M88

M88_M91

Annotationです。
M88_M91_Annotated


まとめ

まだまだ光軸調整など問題も残っていますが、ε130Dのポテンシャルを十分に感じることのできる結果でした。BXTの効果もありますが、それでもここまで拡大しても恒星が十分鋭く写っているのはすごいと思います。

とりあえず、今回でテスト撮影は終わりです。とにかく早く光軸問題と、背景ムラ問題をなんとかして、早く本番撮影を迎えたいです。

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