ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:ハロ

CP+連動企画、「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回は撮影方法についていくつか検討しました。


結論としては、
  • 電視観望利用で画像処理が楽になるとしても、やはり撮影時に解決できることは、撮影時にやってしまおう
ということです。
  • 経緯台でも赤道儀でもディザーはあった方がいい、
  • 露光時間を伸ばしたいならオートガイドも必須
といったところでしょうか。

今回は、実際に長時間撮影撮影した画像について議論します。具体的な処理方法はCP+で説明するとして、その直前くらいのところまでです。


その前に一つ、SharpCapのちょっと便利な、多分あまり知られていない機能の説明をします。


「フォルダーモニターカメラ」で撮影した画像の救いだし

これまで撮影中に突然車のヘッドライトが当たるとか、ものすごい明るい人工衛星が通ってせっかく貯めたライブスタック画像がダメになり、最初からライブスタックをやり直したとかいうことはないでしょうか?

そんなときに、もし下部のライブスタック画面の「Controls」の「Raw Frames」で「SAVE all」を選んであると、保存されたRAWファイルから、ライブスタック画像を復元させることができます。
  1. まず、メニューの「カメラ」から「フォルダーモニターカメラ」を選びます。
  2. 次にフォルダを選択しますが、これは復活させたいRAWファイルが保存された場所を選んでください。以前すでにフォルダを選択しているときは、撮影画像が表示された状態になっているかもしれませんが、右パネルの「カメラコントロール」からフォルダを選択し直すことなどもできます。
  3. フォルダの中にあるファイルをどれか1枚選びます。例えば1枚「.fits」ファイルを選びます。
  4. fits形式を選んだ場合は、次に下部に出てくる「All .fits Files」ボタンを選ぶと、フォルダが選択できます。
  5. フォルダにある最初のファイルが画像としてSharpCap上で表示されます。ストレッチなども後掛けすることができます。
  6. 右パネルの「カメラコントロール」をさわることで、ファイルの連続表示を進めたり、途中でスタックが進んでいくのを止めたいとか、進行をコントロールすることができます。
  7. この状態でライブスタックをオンにして、カメラコントロールの三角マークの再生ボタンを押すと、自動的にフォルダ内のファイルを連続して読み込み、ライブ(?)スタックされていきます。ディザー時に保存された短時間露光のファイルは条件が違うせいか、(ラッキーなことに)うまくスタックできないことが多く、たいていはまともに露光したものだけがスタックされていきます。
  8. ここでこれまでほとんど役に立たなかった「フレームレート」が役に立ちます。適当に1秒とか、2秒とかすると、その時間間隔でファイルを更新してくれます。
  9. この時のライブ(?)スタック結果などは、通常のライブスタックのように、実行した時の日付や時間ごとのフォルダが改めて作成され、設定してある形式でファイルが改めて保存されます。

これを応用することで、
  • これまで溜め込んだファイルを全部あるフォルダにコピーして、超長時間で再スタックするなども可能になります。
  • 途中で車のライトや人工衛星の軌跡など、失敗したファイルを除いて再スタックすることも可能です。
  • SharpCapで撮影した画像に限らず読み込めるので、PI、SI、Siril、DSSなどに代わって、簡易スタックアプリとして使うのもいいかもしれません。
いろんな応用方法を考えることができると思うので、各自いろいろ試してみるといいでしょう。


ライブスタックでの長時間撮影

今回のCP+のセミナーに使うために、何度か長時間撮影を試しました。まとめがてら、少し検討してみます。

撮影時の共通項目としては
  • 赤道儀がSA-GTi
  • 三脚はSA-GTiに付属のもの、但しハーフピラーは外しました
  • 鏡筒はEVOLUX 62EDに専用レデューサーをつけて、焦点距離360mm
  • カメラがUranus-C Pro
  • 撮影はSharpCapでライブスタックを使用。
くらいでしょうか。

いくつか変えた撮影条件ですが、
  1. 1分露光、ゲイン220+CBP
  2. 1分露光、ゲイン220+CBP+UV/IRカットフィルター
  3. 1分露光、ゲイン0+QBP III
となります。順に見ていきます。


撮影1日目

まず最初にテストしたのは、ここまでの記事で示していた
  • 1分露光、ゲイン220+CBP
です。下はスタックなしの1枚のみの画像です。

frame_00001_60s

トータルで1分露光の短時間画像となりますが、この時点で構成周りの青ハロが見えています。CBPは青の波長域をかなり通すのですが、
  • 鏡筒が持つ青ハロをCBPではカットしきれない
ということになります。そこで、少し青側をカットしてやる目的で、UV/IRカットフィルターを入れることにしました。UV/IRフィルターは1.25インチのものを使い、下の写真のようにカメラのT2ねじのところに、薄型のT2->Cマウントのアダプターで固定しました。
IMG_8994

固定といっても、ネジをはめ込みすぎるとセンサー側に落ちてしまうので、教頭に固定するまではカタカタ揺れています。またネジの途中で止めるので、教頭にはめるときのねじ込みが浅くなり、落下の危険性も出るので、あくまで自己責任でお願いします。

注) : 「電視撮影 (その1): 機材の準備」編の時に初出で紹介したフィルター取り付け方法ですが、おそらくこのレデューサーと鏡筒の間に48mmのものを取り付ける方が正式だと思います。ただ、訂正記事で書いたように、ネジが緩んで鏡筒側から外れて、その際にレデューサ側にはまりこんでしまうと、取り外すのにかなりの苦労をします。なので、今回の上の写真のように1.25インチサイズを使用する方法を取りましたが、これはきちんとした固定法ではないはずです。48mmで外せなくなった時の大変さと、1.25インチで落下などの危険性を認識した上で、どちらか取り付け方法を選ぶ必要があると思います。もしくは、私が勘違いをしていて、もっと正しい方法がある可能性もあるので、他にいい方法があればコメントなどで教えていただけるとありがたいです。


さて、1日目の撮影は雲が出てきてしまったので、短時間撮影でおしまいです。


撮影2日目

とうわけで、撮影2日目、長時間露光は
  • 1分露光、ゲイン220+CBP+UV/IRフィルター
という構成で開始しました。この状態で60フレーム、合計1時間ライブスタックで撮影したものが以下になります。強目のストレッチにしています。

Stack_60frames_3600s_19_43_27_WithDisplayStretch

撮影は一通り終えて、その後に画像を仕上げる過程で、5つ問題点が見つかりました。
  1. 青ハロが全然改善していないこと
  2. UV/IRカットフィルターによる、緑色の大きなハロが右の明るい恒星周りに、新たに出てしまっている
  3. 明るすぎることによる極度に飽和した恒星周りに白いハロが出ている
  4. 明るすぎることによる一部の恒星中心部の飽和
  5. 明るすぎることによる星雲中心部の飽和

背景の淡いところはそこそこ出ているのですが、恒星部が明るすぎます。恒星の多少の飽和は許容しても、画像処理である程度はなんとかなるのですが、これは許容範囲を超えていました。

Uranus-CでHCGがオンになるの220としたのですが、これだと感度が高すぎるようです。かといって、中途半端にゲインを下げると、ダイナミックレンジで損をします。露光時間を短くしてもいいのですが、読み出しノイズの観点からは、トータル撮影時間が同じならば、1枚あたりの露光時間を伸ばした方が得をしますし、あまり撮影枚数が多くなっても、ディスク容量を食いますし、再処理の時とかに負担になるかもしれません。

これらのことから、次の撮影は以下のようすることにしました。
  • 露光時間は60秒のまま、アナログゲインを220から0とする
  • CBPでは一部青ハロが残ったので、青領域をもう少し制限したQBP IIIとする
  • 余分なハロを防ぐために、UV/IRフィルターも外す

QBP IIIフィルターは1.25インチのものを、上で示したようにカメラ側に取り付けます。

実はこの撮影2日目は珍しく晴れたと思って結構焦っていて、上記のような検討がまだ十分にできていない状態で長時間撮影に臨みました。この設定で実際2時間以上の撮影をしたのですが、上記問題により結局お蔵入りです。2時間は結構長いので、今後は画像処理においては1時間撮影画像をデフォルトとします。


撮影3日目

撮影3日目は、前回の記事に使った、色々な設定での撮影方法を試しました。ブログに載せたのは6+1で7通りですが、実際には17通りの設定を試して、記事として意味のある7通りを選んでいます。

記述しなかったことの一つはシグマクリッピング機能についてですが、先に説明した「フォルダーモニターカメラ」で再ライブスタックすることができるなら、撮影時にオンにしてもオフにしても後からどうとでもなります。実際には長時間撮影で枚数を重ねるので、1枚のみに載った人工衛星の軌跡などは、シグマクリッピング機能がオフでもほとんど目立たなくなります。それでもオンとオフで少し差は出るので、オンにしておいた方が無難でしょう。

もう一つは「Hot and Cold Pixel Remove」機能のオンオフでどう違うかです。このカメラでは結局「Hot and Cold Pixel Remove」も「Hot Pixel Remove」も「なし」もほとんど違いがわかりませんでした。ただしカメラによっては、特にホットピクセルを多く持つカメラを使う場合にはこの機能が効くと思われます。別途RAWファイルを一からスタックするなど、その際にダーク補正をする場合はこの機能はオフの方がいいのですが、ライブスタックで簡単にスタックする場合はこの機能はオンにしておいた方が楽な場合が多いかと思われます。


撮影4日目

天気が悪くて少し間を置いたのですが、運よく晴れた撮影4日目、前述の通り
  • 1分露光、ゲイン0+QBP III
という設定で、60枚ぶん1時間の撮影をします。撮影後のSharpCapのオートストレッチした画像です。ここでのオートストレッチは具体的には以下のようになります。
  1. ライブスタック画面の「Histgram」タブの右下にある「Stretch Mode」を「6」にして
  2. ライブスタック画面のカラーバー下の雷マークのホワイトバランスアイコンを押し
  3. さらに右側パネルのヒストグラムでオートストレッチをして
  4. ライブスタック画面の左側の「Action」の「Save」ボタンで、4つ目の「Save exactly as seen」で画面で見たままの状態を保存しています。
Stack_60frames_3600s_21_00_44_WithDisplayStretch

2日目の撮影時に比べて、1枚当たりの露光時間は同じですが、ゲインが220から0になっているので、220[0.1dB] = 22 [dB] = 20 +2 [dB] = 10x1.26 = 12.6倍と、明るさが1/12.6 ~ 0.08で約8%程と、2日目の画像に比べて結構暗くなっています。

2日目のところで挙げた5つの問題点がどうなったかを見てみます。
  1. 青ハロはほとんど目立たなくなりました。CBPからQBPへの変更が効いているようです。
  2. 緑色の大きなハロも無くなりました。UV/IRカットフィルターを外したことが効いていると思われます。
  3. 恒星の飽和による白ハロはなくなりました。
  4. 恒星の飽和は一見なくなっているかに見えますが、実は明るい星の極中心はまだ飽和しています。ゲインは0なのでもう下げられないです。露光時間を下げることはできますが、後述するように、読み出しノイズが見えてきてしまっているので、これ以上露光時間を短くするのは危険です。
  5. 見た目をかなり明るくしているのでわかりにくいですが、ストレッチした状態でも星雲中心のトラペジウムも十分生き残っています。
trapegium

と、恒星の中心部のわずかな飽和以外はほとんど改善されていることがわかります。


淡い分子雲部分の検討

心配なのは、ゲインを0にして暗くしたことで背景の分子雲がどこまで読み出しノイズに埋もれるかです。最淡の部分を見るために、別途RAWファイルから別ソフト(PixInsight)でさらに強あぶり出しをした画像です。
more_Stack_16bits_60frames_3600s_21_00_44
3日目撮影のアナログゲイン0の画像。

この画像と、2日目に撮ったアナログゲインが220の場合の画像(下)と比べます。
more_Stack_16bits_60frames_3600s_19_43_27
2日目撮影のアナログゲイン220の画像。

2枚の淡い部分を注意して比べてみると、アナログゲインが0の時は読み出しノイズの横縞っぽい模様が見えているのがわかります。最淡の部分は、明らかにアナログゲイン220の時の方がよく出ていることがわかります。画像処理の最後の最後の淡いところのあぶり出しの時に、この差2枚のは効いてくるかもしれません。

ただし、飽和に関してはゲイン220の時だと(実際に画像処理をしてみた後の感想ですが)画像処理に困るくらいのレベルなので、やはり明るすぎです。こう考えると、アナログゲインを220にして、30秒とか、20秒という露光時間が最適解なのかもしれません。もしくは、今回撮影したアナログゲインが220と0の場合で、HDR合成というのが一つの解なのかもしれません。いずれにせよ、オリオン大星雲は明るい中心部からから暗い分子雲まで、広いダイナミックレンジが必要な対象で、初心者からベテランまで広範囲にわたって楽しめる、天体写真撮影にとって冬の代表的な「大」星雲といえるでしょう。


まとめとセミナー当日に向けて

ブログ記事としての今回のCP+のためのテスト撮影はこんなところです。撮影に際して露光時間とゲインの十分な吟味が必要なことが伝わってくれたのなら、私としてはとても嬉しいです。

実際の画像処理まで進めると、撮影時のパラメータ次第で困難な状況にぶち当たり、次回はこんなパラメータで撮影してみようなどと実感するはずです。最初から最適パラメータを選ぶことができればいいのですが、やってみないとわからないことも多いのでなかなか難しい現実もあり、このような試行錯誤は仕上がり具合にかなり効いてくるはずです。

もう新月期もすぎてしまい、これ以上の撮影も難しくなってきました。今日までにすでになん度も試していますが、あとは画像処理を繰り返し試すのみです。40分という時間内にいかにうまく実演ができるか、まだかなり練習が必要そうです。その結果はセミナー当日の2月24日(土)の13時20分から、実際の画像処理の様子でお見せできればと思います。



後日オンラインでも配信される予定ですので、後から拝見されてもいいのですが、お近くの方はよろしければ当日横浜アリーナまでお越しいただければと思います。その際は、CP+2024の事前登録(無料)をお忘れなく。

会場ではぜひ直接お話などできればと思います。私は金曜午後くらいには会場入りし、土曜は夕方くらいまでいる予定です。サイトロンブース周りでうろうろしていると思います。一応「Sam」と書いたネームプレートを首から下げるようにしますので、もし顔を見たらお気軽にお声かけしていただければと思います。


CP+セミナー事前打ち合わせ

最後にですが、なんでこんなことをしようと思ったのかについて書いておこうと思います。

今回CP+のセミナーを引き受けるにあたって、内容を決める際にサイトロンのスタッフさんとまず話したことは「入門者や初心者で画像処理に困っている人は思った以上に多いのではないか」ということです。

以前小海で開催された「星と自然のフェスタ」サイトロンさんブースでお手伝いしたときの経験が元なのですが、電視観望で撮影して、その場でできるくらいの画像処理をした時のことです。一番最初の本当に簡単な炙り出し(オートストレッチ)の段階で「オォー!」という声があがりました。これは私にとって結構意外なことでした。だって、まだ最初の最初のあぶり出し段階です。もっと後から細かいところが見えてきたりするのが待っているのに、最初からこんなに声が上がったら、あとはどうなるのか??? でもその後は、もっと複雑な画像処理プロセスでも、最初のときほど声が上がることはなかったのです...。

星まつりなので、天体画像の処理なんてことを見たこともない一般の方もいらっしゃったと思います。電視観望に興味がある入門者が多かったこともあるでしょう。ブワッと星雲が出てくる様子は、かなりインパクトがあったのかと思います。それで考えたのが、
  • もしかしたら初心者で画像処理のことを知りたい人はかなり多いのではないか?
  • 電視観望から初めて撮影に手を伸ばしたとしても、撮影した画像処理の敷居もまた高いのではないか?
  • 例としてある程度の画像処理の一連の方向性を示すのは、初心者にとっては指標になるのではないか?
などです。

望遠鏡で星を見始めると、誰もが見たものを記録しておきたいと思うはずです。リストを作るのも、手でスケッチするのもいいでしょうし、本格的に写真撮影でもいいでしょう。せっかく記録するのなら、後から綺麗に見えたほうがいいと思うのも、ごく自然な流れでしょう。これは眼視でも、電視観望でも、本格撮影でも、ごく自然な欲求なのかと思います。それならば、天体写真の敷居を下げるべく、電視観望の技術をうまく使い、天体写真を残す方向を探ってみようと思ったのが、今回のセミナーを引き受ける際に考えたことです。

でもセミナー時間は高々40分です。撮影技術を全部話すことは難しいので、今回は画像処理をメインにしてみようと思います。画像処理は実際のやり取りを動きで見てもらったほうがいいと思ったからです。その代わり、撮影の細かい技術は事前に試して、ブログに書いておこうと。

ブログには今回を含めて5回の記事で、天体写真に興味を持った人が始めるところから、実際に撮影が終わるくらいまでをまとめることができました。あとはセミナー本番、うまくいくといいのですが...。

セミナー終了後、画像処理についてまとめました。










前回立山に登ったのが2019年の9月なので、2年近くぶりになります。前回は標高2000mの弥陀ヶ原に行きましたがが、あまりの天気の悪さで星が全く見えず、ブログの記事にもしていません。ブログの記事になっているのは2018年10月10日。この時も弥陀ヶ原です。突風と雲間の中少しだけ天の川を撮影したのを覚えています。

今回の行き先は弥陀ヶ原よりも少し上の標高2300mの天狗平。しかし、今回も天気が悪くてほとんど星の写真がありません。最近忙しくてブログ更新できていないので、日記がわりに気軽に書いておきたいと思います。


いざ立山へ

立山は規制が厳しく、マイカーで入山することは基本的にできません。一般の人が立山に登るのは大きく2通りの方法あります。一つは旅行会社が企画するツアーバスに乗って行く方法。富山県民はたいていはふもとの「立山あるぺん村」まで車できて、そこで観光バスに乗り込みます。富山駅から出ている観光バスも一部あるみたいです。勝手に連れて行ってくれるので簡単ですが、旅の楽しみは次の立山駅経由の方が楽しいかもしれません。

もう一つは地鉄(富山地方鉄道)で立山駅まで来て、そこからケーブルカーとバスで登る方法です。地鉄は富山駅から乗れるので、遠方から来る方はこちらの方が一般的かもしれません。

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立山駅です。

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ここ立山駅から美女平までケーブルカーに乗ります。

立山駅には「立山カルデラ砂防博物館」があります。かなりの部分が無料で見学できるので、時間があったら立ち寄るといいかもしれません。

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立山カルデラ砂防博物館入口。駅から徒歩1分くらいでしょうか。

美女平からはバスに乗り換えて、それぞれの目的地まで行きます。木々の間から称名滝が見えます。
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バスの最終地は標高2400mの室堂ですが、今回はその手前の標高2300m地点の天狗平にある立山高原ホテルが目的地です。

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この日泊まる宿「立山高原ホテル」です。

到着時には少し青空が見えていました。遠方に剣岳を見ることができました。

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中央奥に雲間から剣岳、通称「つるぎ」が見えています。
見えている建物は立山高原ホテルです。


散歩の途中に雷鳥をペアで見ることができました。つがいで見ることができたのは初めてです。

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もう雪の時の白い羽はかなり消えていて、夏に向けた茶色になってきています。赤いトサカがある方がオスだそうです。人を怖がる様子は全くなく、近づいて行っても逃げることはありません。これは雷鳥を驚かすようなことをしないからだそうです。立山に来ている人たちは、マナーが良いということの表れでしょうね。

夕方近くになると雲海が見えてきました。
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雄大な雲海の風景。小さく見える影が人です。


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眼下は雲海、太陽にはハロがかかっています。幻想的な景色でした。

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夕暮れの風景。山端に太陽が沈んでいきます。


立山高原ホテルでのスターウォッチング

今回泊まるホテルです。標高2300mとは思えないリゾートで、とても雰囲気のいいホテルです。奥が食堂になっています。

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夕食は豪華でとても美味しかったです。

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美味しそうな食事。実際とても美味しかったです。

夕食後、スターウォッチングがあります。スターウォッチングがあるのは大抵が週末です。開催日は限られていますので、興味がある方は宿泊日に開催されるかどうか、予めホテルの方にお問い合わせください。

この日は夕方こそ少しだけ青空が見えましたが、スターウォッチングが始まる19時半からはほとんど曇り。ごく稀に天頂付近のアークトゥルスが見えたりもしましたが、天の川が見えるようなレベルではありませんでした。そのため1時間くらいの星についてのお話をした後、お客さんと少しだけ外に出てみましたが、ほとんど星は見えず。用意しておいた超コンパクト電視観望機材もほとんど役目を果たすことはできず、ほとんどのお客さんはすぐに部屋に戻ってしまいました。

その中で一組だけ、お父様と二十歳くらいの息子さん二人の親子3人組がしばらく残っていてくれたので、少しだけ星の案内をしました。といっても夏の大三角と、北斗七星の尾っぽがかろうじて見えたくらいで、立山の星を満喫というには程遠かったです。その中で、彼らと富山市天文台について少しだけ話しました。

富山市天文台が今年3月に廃止になってしまったのですが、彼らも富山市民で子供の頃に何度も天文台に行っていたそうです。いろいろ思い出があるようで、今回廃止されたことを知ってとても残念そうでした。子供の頃に星を見たことは心に残っていて、その機会がなくなるのは寂しいというようなことを言っていました。こんな話を聞いてしまうと、やはり今回の天文台の廃止はとても残念で、子供たちの星に対する興味の受け皿という意味で、今後かなりの損失になるのではないかと思われます。今のところ代替施設ができているわけでもないので、地道に天文台の再開または代わりになる施設を市の方に求めていきたいと思います。


夜の撮影

天気が天気なので、スターウォッチングは早々に切り上げ、のんびりと温泉に入りあきらめモードだったのですが、温泉から出て部屋に戻る前に外に出てみると少しですが星が見えます。もしかしたらと思い、機材を持って撮影準備に取り掛かります。

ところが雲は晴れてくるどころか、時間と共にだんだん濃くなってきました。かろうじて撮れたのが夏の大三角方向にワンショット。少しだけ白鳥座付近に天の川らしきものが見えています。

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立山高原ホテルの上に夏の大三角が見えます。
雲越しに天の川の赤いところが一部見えています。

もう一つは南の方向。

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雲越しの南の空。さすがに天の川もほとんど見えません。
下に写っているブルドーザー、あだ名を聞いたのですがどうしても思い出せません。

右のさそり座の形がよく分かります。天の川の一番濃いところを見てるはずですが、雲越しでほとんどわかりません。

一方眼下を見ると、この時間帯には雲海もすっかり無くなり、富山の市街地の明かりがよく見えました。
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ブルーファイア現象 ?

今回の目玉は星ではなく、間違いなくこの写真でしょう。夜に地獄谷と呼ばれる方向を撮影したものです。
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真ん中に青白く光っている部分が見えるのが分かりますでしょうか?右に見える建物はこの日泊まった立山高原ホテルですが、これはずっと手前にあって、地獄谷はずっと上の室堂まで行って、そこから山を奥の方に下ってアクセスできる場所にあり、ここから見るとかなり遠くの下の方です。

今回は露光時間をかけての明るさですが、この光は実際に目で直接見ても周りからわずかに明るくなってるのが分かります。拡大してみます。

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闇夜に青白く輝く地獄谷。 

明らかに雲とは違う煙のようなものも確認できます。明るいところも均一な明るさではなく、広範囲にわたって強弱があるのが分かります。また、左の方にも暗いですが光が見えます。人工的な光だとこうはならないと思います。夜に地獄谷に行ったわけではないのでホントのところはわからないですが、やはり何か闇夜に光っているのかと思われます。

地元の富山県天文学会の方の意見では、こんなところに人工的な光はなく、おそらく硫黄のガスが燃えるブルーファイア現象なのだのことです。硫黄は低温で発火するとのことで、例えばジャワ島の火山が有名とのことです。

いつか夜にもっと地獄谷近くに行って撮影してみたいです。


プロのカメラマンの方と

実は今回、プロの写真家の方と一緒でした。ポートレートが専門ということですが、星を撮ってみたくなったとのことで今回友人にくっついてきたそうです。私はもっぱら天体写真のみで、普通で言う写真に関しては全くの素人なので、いろいろ聞きたかったことがありました。特に技術と感性に関してです。

夕食の時話す時間があったので、少しですがいろいろ興味深い話が聞けました。まず、技術に関しては昔ほど差がなくなっているとのことです。デジカメになって、どんどん高機能化してきて、昔必要だった技術、例えばフィルム巻きをいかに速くするかとかはもう今となってはもう必要なくなってしまった。こんなことがたくさんあるとのことです。だから逆にプロと言うからには、技術だけでない、その根拠が必要というような話を聞くことができました。

私が悩んでいるのは特に天の川を含む星景写真です。手順通りにやっていけばアマチュア天文家がいいと思うような写真にはなるのでしょうが、個人的にはそこまでいかずに、撮ったそのままの方が好みになることが多いです。例えば天の川を中央に持ってくるときは周辺減光がむしろ天の川を引き立たせてくれます。光害も私の好きな黄色から黄緑、青へのグラデーションを醸し出してくれたりします。

こんなことを聞いてみたら、やはり写真家としては写真に自分の考えを込めることが大切だとのアドバイスをいただけました。例えばポートレートでも、写真によってまるで別物のように結果が違ってくるそうです。

でも面白かったのはここからで、写真を見たときに良い悪いの基準はあるのか、例えばコンクールで良い悪いの評価は個人によるのかとかいう話になりました。そこで聞けたのは、やはり良い悪いを「言葉にする必要がある」ということでした。感覚、感情、思いなどはもちろん大事でしょうが、プロとしていいと評価する根拠みたいなのが必要だという意味なのかと思います。「もしかしたら将来AIが客観的な基準を示すような時代が来るかもしれませんね。」と無謀なことを聞いてみたのですが、笑いながら「そうかもしれません。」と少し神妙そうに答えてくれたのが印象深かったです。時間がそこまでなくて深いところまでは話せなかったですが、プロの方の意見はやはり大きいです。多分全く違う視線を持っているのかと思います。とてもいい経験になりました。


まとめ

今回のメインは星関連ではなくブルーファイアになってしまった感があります。ちなみにこの記事のタイトル「地獄谷の神秘の光ブルーファイア」は妻がつけたものです。私のオリジナルのタイトルはシンプルに「立山」でした。「そんなのだからいつもダメなんだ」と怒られました(笑)。

妻がいろいろアイデアを出してきました。ブルーファイア君とかゆるキャラを作って観光化すればいいとか、ブルーファイアソフトクリームを作ったらいいとか、市街地にテーマパークを作って3DのVRで見えるようにしたらいいとか、訳のわからないことを言っています。でも本当に実際の光を見てみたいようです。

確かに普通に立山に泊まる人も、夜に星を見ること位まではあってもわざわざ歩いて地獄谷が見えるところまでは行かないので、あまり知られていないというのも納得かもしれません。少なくともネットで立山の地獄谷でブルーファイア現象というのを検索しても何も出てきませんでした。でも裸眼でも光っているのが見えるので、地元の人は意外に普通に知っていることなのかもしれません。

でも結局妻は、あの画像は露光時間を延ばした故のものだということを理解してから、あまり興味を示さなくなりました。最後「期待して見に行ったらショボかった観光地の典型的なやつみたいだ」というようなひどいことを言っていました(笑)。淡い光ですが、目で見ても十分インパクトはあると思うので、きちんと説明しようとしたのですが、もう無駄でした。妻さえ説得できないようなら観光化は難しそうです(笑)。

そういえば、立山を旅行記のように書くのは初めてかもしれません。残念ながら星はあまり見えませんでしたが、コロナで昨年は立山に登れなかったので、本当に久しぶりに宿に泊まった気がします。ホテルの方から、やはりなかなかお客さんが戻ってきてくれなくて大変だとのことを聞きました。早く収束して観望会なども普通にできるようになって欲しいものです。


P.S.

最近、忙しいのでブログが全然更新できていませんでした。梅雨時で星が出ないのでネタがないということもありますが、実は余っている時間のほとんどを使って、来週6月27日28日に配信がある天リフの超会議拡大版「ガチ天2021」に使うトークの資料を作っていました。

今回は太陽について話すつもりです。まだプログラムは発表されていないようですが、太陽のHα生中継を考えているので、明るい早い時間帯になると思います。太陽について話すのは初めてなので、資料も一からで大変でしたが8割方完成しました。よろしければぜひ配信をご覧ください。

実は今日の午後から晴れる予定で、太陽撮影をしようと思っていたのですが、結局曇りで撮影できず。今書いてるブログ記事は写真を貼り付けるだけのシンプルなものにしようとしてたのに、意に反してどんどん長くなってしまいました。しかもTwitterでブルーファイアの写真だけ宣伝にでもと思って流したら、わずか4時間でいいねが既に200超え、リツイートも今見たら60超えです。こんなのは初めてでちょっとびっくりしてます。


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