ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:ニュートンリング

前回記事の「エタロン良像範囲改善 (その1)」の続きになります。今回は主に新カメラG3M678Mを使ってエタロンの良蔵範囲を調査してみました。




ニュートンリング

7. ニュートンリングをあらわに見てみる

前回の記事は5月4日までにやったことですが、その次の5月5日に、やり残してあったニュートンリングのテストをしました。新カメラG3M678Mが到着したのがちょうどこの日なのですが、このテストはまだASI290MMを使っています。

元々、チルトアダプターの角度をほぼ最大限まで傾けて使っていました。ニュートンリングを完全に消すためにはほぼ最大角度まで傾ける必要があったからです。下の写真を見てもらえばわかりますが、USBケーブルが見えている方向の裏側から出てることからわかるように、センサーの長手方向が傾くようにチルトアダプターに角度をつけています。

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太陽を実際に撮影した画像だと模様がグシャグシャしていてわかりにくいのですが、ピントをずらしてフラットフレームを撮影するとニュートンリングがどれくらい出ているかよくわかります。その状態で比較してみます。まずは傾ける角度を0度にしてニュートンリングが最も出る場合です。かなり目立ちます。
スクリーンショット 2025-05-05 132111

いくつか角度を変えて試したら、センサーの上側方向に角度をつけるとニュートンリングが小さくなりました。上側を傾けて、その角度は最大の半分くらいにした場合です。干渉縞の幅が大きくなって多少ましになっているのがわかります。角度0度だと目立ちすぎるのと、かといって最大角度ではピントずれの場所が出てしまいます。ピントずれが出るか出ないかくらいの、とりあえずこれくらいを基準とします。
スクリーンショット 2025-05-05 133748_tilt_upper_half

多少ましとはいってもこんなに目立つニュートンリングですが、実際の撮影時にはフラット化するとほぼ目立たなくなります。

まず、フラット化をしない画像ですが、撮影中でもすぐにわかるくらいです。特に黒点下など、横に走る縞が多数見えているのがわかります。
スクリーンショット 2025-05-05 133932_tilt_upper_half

次にフラット化した画像です。前回の記事で示したものとほぼ同じですが、ニュートンリングは全く見えないと言っていいでしょう。
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ところが、このまま撮影を長時間続けていくと、フラット補正ががずれてくるのかと思いますが、ニュートンリングが見えてきてしまいます。真ん中上部に明らかに縞模様が見えるのがわかるかと思います。
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フラット補正直後の撮影始めは大丈夫かもしれませんが、これだと長時間撮影するタイムラプス映像は厳しいかと思います。

ちょっと結論が出ないので、とりあえずこの問題はこのままにして、次は新カメラのテストに移りました。


カメラ位置のテスト

8. より広角なG3M678Mでカメラ位置を変えて良像範囲を探る

その後は天気が悪くてじっくりとした時間が取れなかったので、せいぜい8cmの全景のテストだけが進み、再びC8でテストができたのは5月18日になります。ここからは新カメラG3M678Mでのテストになります。
  • 大きな違いは、長辺、短辺ともにセンサーの大きさが1.5倍程度になるので、面積だと2倍くらいになり、より広い範囲を見ながら判断できます。
  • もう一つの重要な違いが、アイピース型なので、センサー面よりPSTの奥まで押し込むことができることと、さらにBFとの距離を縮めることができることです。これは光束の径が最も小さくなるところを、一番径の制限されるBFのより近くに持ってくることができる可能性高くなります。

カメラの差し込み位置を変えるということは、結局のところエタロンとセンサー面の間の距離を変えるということになります。その距離に合わせたピント位置を、C8の主鏡の位置で合わせるということなので、相対的には実質C8とエタロン間の距離を変えていることに他なりません。エタロンカメラ間の距離を保ったまま、C8エタロン間の距離を変えても結局C8主鏡でのピント合わせで補正してしまうので、実質ほとんど状況は変わらないということは、前回記事の「3. C8に対して、どれだけPST本体を押し込むか」で示しました。

ここからカメラ位置を変えた結果を、違いがわかる代表的なところをA-Eまでの5ヶ所で示していきます。

A. まずは、カメラを最も中に入れた位置です。ここを0mmとします。
スクリーンショット 2025-05-18 063445_01_0mm_min

B. カメラをPSTから約15mm引き抜いてねじで固定た場合です。周辺の黒いケラレが減っているのがわかります。
スクリーンショット 2025-05-18 063837_02_15mm_blueallout_noblackpart

C. カメラにフィルターを付けるための延長ノーズアダプターをカメラ側に取り付けて長くし、その分最初の位置から35mm引き出した状態です。明らかに良蔵範囲が広がっています。黒点と白いプラージュ間の距離を比べても、拡大しているだけではなくて、見える範囲が広がっていることがわかります。
スクリーンショット 2025-05-18 064615_04_35mm_oneringoutest

D. 別途手持ちのアイピース口の延長等をつけて、カメラを最初の位置から55mm引き出した場合です。良蔵範囲がほぼ全面に広がっています。また、ヒストグラムを見るとわかりますが、明らかに山の位置が左に行っていて、全体に暗くなっているのがわかります。
スクリーンショット 2025-05-18 065033_06_55mm_onering_extender_longest

E. カメラを最大引き出した70mmの状態です。ねじでカメラの伸ばしたアダプターの一部を固定しているだけなので、撮影をするには不安定ですが、テストのために確認してみました。55㎜よりも明らかに左右が改善されているのがわかります。ヒストグラムが示すように、さらに暗くなっています。
スクリーンショット 2025-05-18 065334_07_70mm_onering_exteder_longets

ここまでの結果でいくつかのことが判明しました。
  • カメラを引き出せば引き出すほど、良蔵範囲が広がり、全体が暗くなることがわかりました。
  • それにしても、これだけの違いで良蔵面積が2倍以上になっているのは驚きでした。
  • ただ、暗くなっている理由がまだわかっていません。制限がBFの径からきているのなら暗くなるのはわかりますが、その場合良蔵面積は小さくなるセンスだと思います。
  • 時間経過もあり、ピントがきちんとあっている保証がないので、どこまではっきり言えるかはわからないのですが、カメラを引き出せば引き出すほど分解能も増しているようにも見えます。これはエタロンにより平行光に近い光が入ったということなのでしょうか?
かなり大きな進展です。まだいくつかミステリーはありますが、とにかく引き出した方が面積、分解能がよくなる傾向で、暗くなることだけが不利なので、これはもう引き出す方向のほうがメリットが大きいと言っていいでしょう。


新カメラでのニュートンリング

新カメラG3M678Mに変えて一つ気づいたことがあります。それはニュートンリングが全く目立たなくなったことです。

これまでのASI290MMとの大きな違いは、センサーの前に保護ガラスが無くなったことでしょうか。もしそうだとすると、ZWOカメラでニュートンリングが出てくるのは、保護ガラス単体か、保護ガラスとセンサー面でニュートンリングが出ていた可能性が高いです。いずれにせよ、チルトアダプターをつける必要がなくなって、さらにアイピース口に差し込むタイプのカメラなので、これまでより対物側にかなり押し込めるようになりました。今回のC8での結果では、センサー面をより遠くにする方がいい結果が得られているので、逆センスなのが残念ですが、全景を8cm鏡筒で撮る場合は有利な方向に働きます。


PSTの光軸調整

9. PSTのC8に対するセンタリング(光軸調整)

5月18日にやった最後の検証です。実はここからC8に対してPSTを回転させて、良蔵範囲が変わるかテストしようとしてました。回転する前にPST固定のねじを緩めて、何の気なしにPSTを横に動かしてみると、画面の右手方向にさらに良蔵範囲が広がっていることに気づきました。最良のところは、これまで見ていた位置から画面の横手方向の半分くらいの長さ行ったところにあるようです。

これまでの固定位置です。いいところと悪いところがわかるように、フラット化を外して輝度差をあえて目立つようにしています。フラット化していないと、実質分解能が落ちたようにも見えるため、左側が暗く、ボケたように映ります。
スクリーンショット 2025-05-18 071127_11_70mm_longest_noflat_0deg

次に、最良方向に向けて黒点を画面中心あたりに持って来ました。これもフラット化はなしですが、明るさは均一に近くなっています。左端の分解能は上がっています。その一方、黒点右側の分解能が悪くなっているように見えます。さらにその右側は再びよくなっているようにも見えます。
スクリーンショット 2025-05-18 071557_12_70mm_longest_noflat_0deg_center

なぜこんな風に画面内途中で複雑に良蔵範囲が変化して見えるのかはまだ謎です。

その後、PSTのねじを固定すると「安定に」毎回最良位置から左側の所に固定されることがわかってしまいました。これまでずっと悪い位置で見ていたということです。また、前回の検証でASI290MMでPSTを回転させて良蔵範囲が改善していたのは、最良方向へ位置が少し移動しただけということもわかりました。

さて、どうやったらいい位置で固定できるかですが、とりあえず今回は対処療法で、PSTの差し込み部に1枚テープを張り、ねじを締めたときに良蔵方向へ傾いて固定されるようにしてみました。また、C8とPSTの固定部分がおそらくネックになっていて最も弱く、今のセッティングではここが一番揺れる可能性が高いこともわかってきました。固定方法はいずれ、強固にする方向で解決する必要がありそうです。


その後の撮影

ここで長時間撮影に移りました。その結果が、前々回の記事で示したものになります。



まとめ

5月後半はなかなか晴れなくて、太陽関連のやりたいことが溜まってしまっています。しかも最近は休日も忙しかったりするので、さらにチャンスが少なくなっています。今週末の福島も残念ながら参加できません。

ゆっくりですが、エタロン調整は一応進んではいます。そうは言っても、結局のところエタロン関連でここまでで有効だったことって、
  • 2のカメラのチルトをなくしたこと
  • 4、6、8のカメラ位置を遠くにしたこと
  • 9のC8に対するPSTの光軸調整
くらいです。どれもたいして難しいことはしていなくて、ある意味単純なことしかしていないんですよね。その一方、これだけ単純なことでもある程度検証しようとすると、手順は丁寧に、問題を切り分けて、一つ一つ確認していく必要があります。ここまででもいろんな不具合がわかり、ある程度改善もできてきましたが、今後必要ならもっと大変になってくるエタロンそのものにメスを入れることもあるかと思います。

そもそもPSTエタロンで自分が望むものが得られるいのか、もしくはより高性能なエタロンを手に入れる必要があるのか、はたまた自分が望んでいるものとはいったいなんなのか?

まだまだ道は長そうです。







今回は、4月から撮影の合間にずっと続けているエタロンの調整についてです。現段階でまだ結論は出てませんが、かなり溜まってきたので、途中経過を一旦記事にまとめておきます。


はじめに

4月30日に書いた記事の中で書いた目標の最後の9番、C8+PSTでの良像範囲の改善です。今回の記事の範囲ではカメラはASI290MMを使っています。次回以降の記事では新カメラも使っていきます。

エタロンの調整はなかなか難しいので、簡単でわかりやすいところから順番に丁寧にやっていきます。この記事の後に試したことで、答えがわかっていてすでに意味がないこともありますが、それを飛ばして書くと意味がつながらなくなることもあるので、基本はやったことを順に書いておくことにします。

作業に入る前に、前提条件を書いておきます。
  • エタロンの回転角の自由度による不定性をどうするか? -> 画面中央が暗くなる位置で、ほぼ一意に決まると考える。
PSTのエタロンは、調整リングを回転させ、エタロンに圧力を加えることで鏡間の距離を変化させ、透過波長を調整します。現在の手持ちのエタロンは良像範囲は狭いのですが、暗い部分が画面中心にくることで中心波長を判断していて、その位置さえ再現すれば回転角はほぼ一意に決まるので、毎回その角度に持ってくるようにして一連の作業を進めています。もちろんん多少の誤差はありますが、今回の調整範囲程度では十分再現性もあると考えています。

(補足) 以前は入射光に対するエタロンの角度を変えて中心波長を調整すると思っていましたが、それだと計算上十分な角度変化が取れなさそう (今考えるとFSRの10%くらいは変わっていいはずで、当時の計算は2%) なので、ずっと疑問に思っていました。PSTを作ったCoronado社が持っている特許と、実際に実装されている方式を見る限り、圧力式と思って間違いないと思われます。2024年春までに一連の特許が切れたために最近のエタロンに採用されたようです。Phoenixのエタロンも、後部のスポンジの存在など、見ている限りPSTのものに酷似しています。

もう一つ、今回の一連の作業で困難と思われることを書いておきます。
  1. エタロンへの入射光の平行光度と、エタロンがきちんと働いているかの関係がまだよくわかっていない。
  2. 良像かどうか、スタックして細部出しをしないとわからないことがある。
  3. ニュートンリングが撮影時に確認できない。
などです。

1については、前回前々回の記事で、8cmでエタロン位置を0-5cm程度動かして、エタロン内に入射する光を平行光からずれた状態を作ったはずなのですが、結局エタロンの働きに差を見出すことはできませんでした。鏡間距離が短いことと、フィネスが低い( = 光の折り返し回数が少ない)ことが要因だと推測していますが、もっと動かしたら違いがわかるのか、実はすでに影響が出ていて気づいていないだけなのか、もう少し検証が必要です。

2は結構厄介です。はっきりとした悪い像はリアルタイム見てもわかるのですが、中にはリアルタイムで(まだボケた状態で)見て問題無いと思っていても、スタックした後で(これもまだボケた状態で)見て問題無いと思っていても、ImPPGで細部を出すと、なんかボケ気味だという場所が画面の中の部分的に存在することがあります。撮影時に確かめられるといいのですが、かなり最後の方まで画像処理して出てくるので、すぐに判断ができなくて調査が進みません。この一部がボケる原因そのものも、まだよくわかっていません。

3は、今回以降の一連の検証作業の途中で、カメラの角度が問題だということがわかってくるのですが、カメラの角度を変えるとニュートンリングが出てくることがあります。ニュートンリングを避けたいのですが、軽いものだと太陽表面の模様などに隠れて、撮影中はよくわからないのです。これも画像処理を進めていく過程、特にタイムラプス映像まで作ると、リング上の模様が動いているのがわかることがあります。撮影時に判断ができないので、困りものです。


PSTを回転

最初にやったのはかなり簡単なことです。

1. PSTとC8の取り付け相対角度を変える

まずいつもの通りC8+PST+ASI290MMで太陽表面のHα画像を撮影します。上に書いた通り、エタロンリングの調整は画面中央付近が一番暗くなるところを選ぶので、ほぼ一意に決まります。少しわかりやすいところを選びましたが、いつものように画面右側が明らかに模様が出ていないのがわかります。

スクリーンショット 2025-04-26 141939

次に順次PSTをC8に対して90度づつ回転していきます。その際、同時にCOMSカメラも順次90度回転させていき、視野の角度が回転しないように補正するようにします。PSTを90度や180度回転させただけではそこまで違いがわからなかったのですが、270度回転させた時には明らかに改善が見られました。

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その時の画像です。見ている場所が違うので少し比較しにくいですが、明らかに右側が改善しているのがわかると思います。

スクリーンショット 2025-04-26 141435_270

この状態で、500フレーム撮影し、改善するかどうか比較してみました。
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うーん、右側は思ったより改善してません。この日(4月26日)はここでおしまいとなりました。


もしかしてエタロンのではない?

2. チルト角度調整

4月30日の記事で書いたように、上のテストの次の日 (4月27日) に粒状斑を撮影しています。そこでふと気づいたのですが、ここでも同じように右側がボケボケなんですよね。クロップしていない画像を改めて載せておきます。

13_34_29_lapl2_ap3983_out

PSTで右側がボケていたのはエタロンの透過中心波長がHαからズレていたと思い込んでいたのですが、粒状斑の撮影では白光なのでエタロンは全然関係ないはずです。ということは、これはC8かカメラから来ているでは?と考えたわけです。

ここで怪しいのは、カメラの手前に入れてあるチルトアダプターです。もともとの目的は、焦点距離が長くなりF値が大きくなると、直線的に入ってくる光が多くなるためにニュートンリングが発生しやすくなるので、それを回避する目的でカメラを傾けて取り付けるために入れています。ただ、その傾き角をかなり大きく取ってしまっているので、もしかしたらそれで焦点が合っていないだけなのではないかと思ったわけです。

IMG_1336

しかも、午前と午後では赤道儀が反転するので、画面で見て上側を北に保つためにCMOSカメラを午前と午後で180度回転するのですが、たまにこの180度回転を忘れてしまう時があって、その忘れた時はボケが右から左に移動してるのを思い出しました。もしこのボケがエタロンからきているなら、ここでボケの左右反転は起きないはずですが、もしこのボケがチルトアダプターからきているとしたら、カメラとチルトアダプターの取り付けはねじ込み式なので相対角度は常に保たれているので、左右反転が起きるはずで、今ある現象を説明することができます。

この推測を確かめるために、ゴールデンウィークの5月4日の午後の曇りの中の晴れ間を利用して、実際にチルトアダプターを変更してみました。

結果は上から順に、チルトアダプターが 1. これまで通りほぼ最大角、2. 半分の角度、3. 傾きなしとなります。
スクリーンショット 2025-05-04 152454_01_original
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スクリーンショット 2025-05-04 153912_03_0degree

下にフラット補正時のヒストグラムが残ってしまっているので少し比較しにくいですが、右側が明らかに改善されていきます。傾きをなくした時にもニュートンリングはパッと見は確認できません。傾きなしが一番いいので、とりあえずこれ以降は傾きなしでさらに調整を進めます。(その後、別の黒点画像を連続撮影し、タイムラプス映像にしたところで、明らかにニュートンリングの存在がわかりました。なので、傾きをなくす場合は、何らかの対策が必要です。)


C8に対するエタロン位置調整

3. C8に対して、どれだけPST本体を押し込むか

次に試したかったことは、鏡筒に対するPST固定位置の変更でした。でもその前に、カメラ位置の自由度を高めるために、ここでいったんチルトアダプターを外してカメラをより押し込む方向に動かしました。その結果を載せます。

スクリーンショット 2025-05-04 154255_04_notilter

右側の見え方が有意に悪くなっていますが、理由はまだよくわからないので、一旦は放っておきます。ここでのテストは上の画像がスタートになります。

鏡筒に対して、レンズ込みのエタロン位置を相対的に変えるために、手持ちの2インチの延長アダプターをC8とPSTの間に挟み込みます。これでエタロン位置も含めてPST全体が3cmほど後ろに下がったことになります。ここから更にPSTの入れ込み度合いを調整することで、もう少し位置を変化させることができ、最大で6cmくらい下げることができます。その際のピントは、C8側で合わせます。C8の主鏡の位置をずらすということですが、この調整範囲がかなり広くて、以降のテストで様々な個所の位置を変えていますが、すべてピントを出すことができます。この調整範囲の広さはC8を選んだ利点の一つです。

結果になります。上から順に 1. 2インチ延長アダプター挿入後で初期位置から3cm下がった状態、2. さらにアダプターに浅くPSTを入れることでさらに3cmほど、合計で6cmほど後ろに下げた後となります。
スクリーンショット 2025-05-04 154649_05_2inch_adapter

スクリーンショット 2025-05-04 155148_07_2inch_adpter_faresr

上3枚を比較してみると、最初の位置からエタロンを変化させても、予想に反して右側の映り具合はほとんど変化しません。これは8cm鏡筒でのコメントの議論がヒントになって謎が解決しました。gariさんが「PSTの黒箱を望遠鏡に挿してピントを合わせられる場合、対物がいずれの場合でも焦点位置からだいたい200mm手前の位置に-200mmのレンズが配置されることになるので、いずれの対物でもほぼ平行光になります」と言っていて、その後、私から「PSTの場合、レンズ位置とカメラの位置が固定だから、ここをいじれない限り大きく状況は変わらないということですね」と返しています。今回はPSTのピント調整を使わずに、この段階ではカメラ位置も調整していなくて、手前のC8のみでピントを合わせていることになります。結局エタロン以降でのセンサー面までの光の状態に(ほぼ)違いはないので、コメントでの議論が実証されたような形になるのかと思い、納得できました。


カメラ位置の調整

面白いのはここからです。

4. カメラの位置を変えて、エタロンとカメラセンサー面の間の距離を変える

上の最後の状態から、カメラをPSTに対して浅く差し込むようにして、エタロンから遠くで固定するようにしてみました。右側に明らかな改善が見られ、細かい模様が出ています。
スクリーンショット 2025-05-04 155839_09_2inch_adapter_faethest_tilter_far

ここに載せている状況以外でもいろいろ試してみましたが、やはりカメラを遠くに付ける方が右側のボケが少なくなるのは確実なようです。なので結局、C8とPSTの間の2インチ延長アダプターは外して、チルトアダプターを再度取り付けました。その時の画像が以下です。

スクリーンショット 2025-05-04 160149_10_no2inchadapter_tilter_camera_far

ただしこれがベストかというと、たぶんまだ結論を出すのは早そうです。まず画面右側はいいのですが、逆に左側の分解能が出ていない気がします。また、画面上にニュートンリングっぽい回転状の模様が出ているようにも見えます。でも見分けはかなり微妙で難しくて、明らかな差が出るような状況にない限りは自信をもってこれがいいというのは難しいです。


再度PSTを回転

5. PSTをC8に対して、再び回転させてみる

上の状態をもう少し改善できないかと思い、ここから、再度前週に試したPSTの取り付け角度を探ることにしました。書き忘れてましたが、この日のテストは再びPSTを0度で取り付けていて、前週の270度ではなくなっています。正直に言うと、単に270度のことを完全に忘れていただけで、何の疑いもなく最初からいつも通りに0度に取り付けてしまっていました。

0度から順に変えていきます。上から0度、90度、180度、270度です。
スクリーンショット 2025-05-04 162401_01_0deg_original_tilter0deg
スクリーンショット 2025-05-04 162931_03_90deg
スクリーンショット 2025-05-04 163133_05_180deg
スクリーンショット 2025-05-04 162709_01_270deg

これら4枚を比べると、特に画面左側が、有意に180度 > 90 or 270度 > 0度となっていると言えそうです。前週の270度がよかったというのは、やはりチルトアダプターでの右側のピンボケの効果が含まれた複合原因だったといってよさそうで、今回の180度の方がより独立した正しい判断だと言うことができそうです。


更にカメラを遠く

6. カメラを最大限遠くに固定

この日の最後に、カメラ位置をもっと遠くにしたらどうかということで、カメラのところに1インチの延長アダプターを挟み込んでみました。下が結果になります。

スクリーンショット 2025-05-04 164049_06_180deg_externder_best_but_darker

大きく変わったことが2つあります。まず、明らかに全体が暗くなりました。画面での見かけ上はストレッチを駆使して同じくらいになるように調整していますが、ヒストグラムの山の位置を比べて見ると明らかに左に移動しているので、実際は暗くなっているのがわかります。この暗くなるのが、BFの径が小さいことによる制限からきているのか、エタロンの働きが変わってよりHαに合ったので暗くなったのか、もしくは全く別の理由なのかは今のところ不明です。ただ、全体的に分解能はよくなったようにも見えますが、これは時間にも依るものなのかもしれないのでまだ結論は出ていません。

まとめ

と、今回の記事はここまでとしたいと思います。

ここ最近ずっとこのエタロン調整のことを考えています。週末の天気が悪くて、何の検証もできなかったのが不満なのか、昨晩はとうとう夢の中にエタロンが出てきて、全く訳のわからない調整を延々としていました。もうちょっとした末期症状です。

この後、より画角の広いG3M678Mが来て、さらにいろんなことがわかるのですが、これまた長くなるので、次回以降に書くことにします。







前回の週末太陽記事 (その1)に引き続いて、(その2) になります。今回の記事は前回のような撮影ではなく、各種テスト関連になります。



前回挙げた週末作業での目標は以下のとおりです。
  1. いつもの口径20cmのC8+ASI290MM+PSTでプロミネンスを1時間撮影し、ベストの静止画を作り、あわよくばタイムラプス映像を作る。
  2. 同セットアップで黒点周りを1時間撮影し、ベストの静止画を作り、あわよくばタイムラプス映像を作る。
  3. 太陽減光フィルムをC8先端に取り付け、PST部分を2倍のバローに置き換え、粒状斑の撮影を1時間程度。
  4. 口径8cmの鏡筒+PST+ASI290MMで、太陽の全景を見ながら、手持ちの2つのPSTを比較。
  5. 同セットアップで、太陽の全景を見ながら、エタロンの位置の違いで分解能が変わるかのテスト。
  6. 同セットアップで、ベストの選択肢で太陽の全景を撮影。
  7. 同セットアップで、SharpCapのリアルタイムスタックで撮影したらどうなるかのテスト。
  8. PST付属の4cmと、口径8cmで分解能は得するかの再検証。
  9. C8+ASI290MM+PSTに戻して、エタロン視野拡大の初期テスト。

1から3までが前回記事に相当しますので、今回の記事は4以降についてです。最近の手順は、午前中がシーイングがいい可能性が高いということで撮影を先に済まし、各種テストなどは主に午後にやるようにしています。


手持ち2台のPSTの比較

簡単なものから済ませます。まずは4の、手持ちの2つのPSTで性能の差はあるか?です。これについてはずっと以前に比較していて、C8で見た時には差があることはわかっています。2023年5月に2台目の使用を開始した時と、その後9月の過去2回で、2台目の方が明らかに良いと結論付けています。今回は、口径8cmでもこの違いがわかるのかを見てみます。

簡単な比較なので結果だけ載せます。まずは1台目の古くからあるPSTを8cm鏡筒に取り付けたものです。1台目はエタロンを中身まで取り出していますし、ボックスの蓋を開けて中身のペンタプリズムの位置もいじっているので、そのせいで性能が変わっている可能性もあるのですが、今のところの印象は多少いじろうが何をしようが、エタロン自身の性能をどうこうすることはできずに、基本このPST固有の性能が依然出ているというものです。今回のエタロン調整は、太陽真ん中にHα波長の中心が来るように合わせました。

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これを見る限り、左右に明るい部分が出てしまっているので、Hα波長に合っている範囲にムラがあることがわかります。エタロンのリングを回すことで、波長があっている範囲を右や左に動かしたりできますが、その分反対側に見えない範囲が増えます。初期の頃のC8ではこの中のいい部分を使っていたことになります。

続いて2台目です。こちらは明らかに1台目より良像範囲が広いです。
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この違いには結構驚きました。C8で見た時よりも差が大きいです。画像を比較すると、本来写るべきフィラメントが1台目だと写っていないものが多くあります。プロミネンスは1台目も炙り出したので見えてますが、2台目と比べると明らかに薄いです。

できればC8に2台目、8cmに1台目としたかったのですが、ここまで差があると2台目だけを使うことになりそうです。1台目をもう少しいじってどこまで2台目に迫れるかは、いつか試してみてもいいかもしれません。


ちなみに、4月6日の記事で書いた口径10cm、焦点距離1000mmの鏡筒とASI294MM Proで撮影したものは1台目のPST、4月23日の記事で書いた口径8cm、焦点距離400mmの鏡筒とASI290MMで撮影したものは2台目のPSTを使っていたので、公平な比較ではなかったです。でもまあ、8cmの方が取り回しは楽だし、カメラも294を使うのは勿体無いので、今後も全景用に8cmを使うことには変更はありません。


エタロン位置の最適化

ここからは8cmでの全景撮影の最適化を目指します。

そもそもは、4月23日の記事で8cmで全景を撮影した時の疑問に対してgariさんからのコメントがあったことが発端です。

もう少し戻ると、元々の疑問の一つは、F10用に作られたPSTのエタロンのはずなのに、口径8cmのF5でHαが見えるのは何故か?というものでしたが、これはコメント内の議論で、

「2枚のレンズf1とf2があった時に、合成レンズの公式 1/f = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1 f1) から、平行光(太陽光)が対物レンズに入ってきて、エタロン手前のレンズを通り抜けた時に平行光になる。平行光はf=♾️ということなので左辺が0になるため、1/f1 + 1/f2 = d/(f1 f1) が成り立ち、レンズ間の距離: d = f1 + f2 が最適距離になり、これを満たすような距離を取れば、平行光が得られる。PSTでは実際
400mmレンズ-> 距離200mm-> -200mmレンズ-> 平行光-> 距離200mm-> 焦点
となっているので、上の合成レンズの式を満たす。この議論には口径が入ってこないので、この条件は口径8cmでも成り立ち、F5とかF10というのは意味をなさない。」

と結論づけていています。PSTはF10で動くという話がずっと言われていますが、結局はF値に関係なくレンズ間距離さえ合わせれば平行光が出せるので、PSTの場合「F10」ということだけが一人歩きしているように思えます。

その上で、gariさんの疑問は2つで、要約すると
  1. 口径8cmでF5にしたとしても、エタロン前のレンズ径が2cmなのでここでF10にリミットされるはずで、焦点距離が同じ400mmなら口径を大きくしても分解能が上がるのは不思議。
  2. エタロンは完全に平行光を入れなくてもそこそこ機能するのでは?少なくと数cm移動しても見え方に変化はなかった。
というものです。

その一方で、私の方では以前PST標準の口径4cmと今回使った口径8cmを比較した時には分解能明確な違いが見られたという経験があります。

gariさんの疑問1に対しては、同じくコメントの中で議論していて、
  1. レンズ径は実測で23mm程度なのでF5にした場合光はまだ蹴られますが、15%ほど得するはず。
  2. gariさんの疑問2を事実とすると、エタロンが平行光をそこまで要求しないのでレンズ間距離は多少適当でも大丈夫で、レンズを含めたエタロン全体を、(エタロンが働く範囲で)できるだけビーム径が小さくなる後ろに置いた方が得する。
という推測ができます。例えばエタロン2cm後ろに下げたとします。対物レンズは口径8cmで焦点距離が400mmmなので、エタロン前のレンズが200mmの位置に置いてあるとすると、ビーム径は半分の40mmになります。エタロンを2cm下げるとレンズ間距離も2cm伸び、エタロン前のレンズでのビーム径は36mmになります。なので実効的なF値は5から大きくなって、F5 x 36/23 = F7.8となるので、元のPSTのF10と比べると得するはずです。

口径4cmの時のドーズ限界が2.9秒角くらい、口径8cmの時が1.45秒角くらいなので、上の計算が合っているなら、1.45秒角 x F7.8/F5 = 2.3秒角くらいになるはずす。今使っているASI290MMだと焦点距離400mmで1.4秒角/pixとかなので、まだ手持ちのカメラで十分違いが認識できるはずです。

というわけで、そもそも口径8cm鏡筒にPSTを取り付けた状態で、エタロンをどれくらい動かせるのか確かめてみました。エタロンはアルカスイスの長いレールのようなプレートに取り付けてあるので、簡単にスライドできます。PSTの箱がエタロンが鏡筒の筒の部分に当たるまで前に出した時にもピントが合うことが確認できました。反対にピントが出る範囲でできるだけエタロンを後ろに下げてみると、33mmまで下げることができました。平行光を出す位置が確定しないのですが、上の考えがあっているかどうかを確認する意味で、エタロン前後で差が見えるかどうかは見てみる価値はありそうです。

IMG_1197

結果です。今回はエタロン位置が前後で30mm違う場合にそれぞれ撮影し、中心付近のダークフィラメントを拡大してみてみました。左がエタロン位置が前でレンズ径が相対的に小さく、右がエタロン位置が後ろでレンズ径が相対的に大きく有利なので、右側の方が解像度が出るはずです。

スクリーンショット 2025-04-30 111413_cut

よく見ないと分からないかもしれませんが、それでも有意に右の後ろに下げたほうが細かいところまで出ているので、定性的には上の考えは間違ってはなさそうです。

エタロン前のレンズ径に制限がある場合にレンズ位置が30mm違うと、光径は30/400 = 0.075で約8%小さくなり、解像度は逆に約8%上がるはずです。解像度が2倍変わると劇的に変わり、1.5倍でも見ただけで改善しているのがすぐわかるので、8%ならまあこのくらいではないでしょうか。

本当は目的の8の、「4cmのPST鏡筒と、8cm鏡筒との直接比較」をすれば良かったのですが、ちょっと時間的に交換するまではいかず、今回は試すことはできませんでした。


全景画像

さて、口径8cmで分解能を最適化することができたとして、これで一旦撮影してみたいと思います。1.25msで500フレーム撮影して、上位75%をスタックしました。

13_27_54_2ndPST_lower_30mm_out_cut

全景としてはかなりの分解能になっています。これならそこそこ満足です。中央部に比べて、周辺の分解能は落ちていますが、エタロンの精度に限界があるので、PSTエタロンを使っている限りここら辺が限界でしょう。それでもプロミネンスもきちんと見えているので、まあ良しとします。これ以上を求めるなら、半値全幅を減らす方向の方がいいので、エタロンそのものの性能から考え直さないとだめなのかと思います。

比較のために、目的7のSharpCapでリアルタイムスタックをして、全景に近いものを見てみます。
スクリーンショット 2025-04-26 134504

さらに、SharpCap画面に映って画像をそのままPNGで保存して、太陽の上下2枚の画像をモザイク合成したものです。
Snapshot of 13_45_15_Stack_00001 13_45_15_WithDisplayStretch_cut

もう全景だけなら画像処理ソフトは必要なくて、SharpCapだけで十分な気がします。

一応拡大図を示しておきます。左が1000フレームスタックでマニュアルで上位75%をスタックし時間をかけて画像処理をしたもの、右側がSharpCapでのリアルタイムスタックでこのときは常時100フレームスタックです。

スクリーンショット 2025-05-04 104036_cut

こうやって比べて見ると、SharpCapのリアルタイムスタックの方がノイジーですが、これはフレーム数が100枚と少ないだけなので、もう少しフレーム数を増やしてやりさえすれば、実用上はこれでもう十分かと思います。


まとめと次回以降の課題

この週はかなり時間をかけることができて、色々試したいことが進みました。撮影もある程度コンスタントにこなせるようになってきたので、ここら辺は今後はルーチンワークになっていくのかと思います。

まだ少し課題が残っています。
  • 目標の8番の「PST付属の4cmと、口径8cmで分解能は得するかの再検証」はまだやってませんが、そこまで興味がないので、もしできたらくらいで次回以降の課題とします。
  • 目標に挙げた最後の9番の「C8+ASI290MM+PSTに戻して、エタロン視野拡大の初期テスト」は、色々試しているのですが、まだ結論が出る前でもう少し試したいことがあるので、もう少し進展してからまとめます。

上のこと以外にも実はまだ試したいことが山積みです。次の週 (今ブログを書いている5月4日のゴールデンウィーク中) は天気はある程度晴れるとの予報なので、もう少し進められたらと思います。




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