ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:ドップラーシフト

夕方からですが、久しぶりに休日晴れたので、太陽分光撮影です。しかもやっと少し秋らしくなってきて、全然暑くないのです!

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新兵器で、日が当たらないようにパラソルを装備しました。


今日の太陽像

記録なので順に載せていきます。まずはモノクロです。スタックなどしていない一枚撮りですが、拡大しても十分な解像度が出ています。結構満足です。

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モノクロ反転画像です。
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カラー画像です。こちらはプロミネンスも強調してあります。
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緯度経度と、黒点の番号付き画像です。自転軸 (P軸) がかなり傾いているのがわかります。こういった変化を見ることができるのもJSol’Exの利点です。
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ドップラー画像です。面白いのは、青と赤の境界が傾いていて、太陽自転軸の傾きの影響も見えているようです。
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今日の失敗

実は結構たくさん撮影したのですが、ことごとく失敗でした。HαとCaKと合わせて54ショット撮影したのですが、ほとんどが下の画像のように途中が伸びたりしてしまいました。上に挙げたものは、その中でたまたま唯一生き残ったものです。

0009_16_30_06_autostretch_0_00

伸びている位置はどの画像を見ても大体同じでした。再構築した画像がこのようになる原因は、動画撮影時の赤道儀のスイープのスピードが途中で変わってしまうからです。なぜそうなるのか?まだはっきりとはしていませんが、おそらくバックラッシュが関係しているのではと推測しています。

普段の撮影はほとんど午前の早いうちに済ませてしまいます。でもこの日は午後のしかも夕方近くから日没までのかなり遅い時間です。鏡筒とウェイトの左右バランスに気を使わなかったので、スクリプトでの繰り返しの撮影時に、反転してから録画開始して少ししてちょうどスピードが変わるような状況になってしまっているのかと考えています。次回撮影時に、少し時間を撮って検証してみようと思います。


フィルター特性測定プロジェクト開始

あと、ここしばらく休日で安定に晴れる日が無くて、この日も夕方晴れるのを期待していなくて、とうとう次のステージに進むことにしました。やりたいことはエタロンなどのナローバンドのフィルターの特性を実測することです。とりあえず出だしなので、セットアップの写真だけ載せておきます。

G1ghTC8aoAAOVvC

普通は太陽を光源にすることが多いようなのですが、写真にあるように試しに光源にLEDを使ってみました。LEDは白色光と言われているように、ローカルには波長特性もほとんどなく、かなり平坦でほぼ直接透過光の輝度が測定できそうです。画像にはエタロンフィルター特有のComb (櫛形) 構造がきれいに見えています。別途、太陽の散乱光を使ってフラウンホーファー線を撮影してあるので、回折格子を動かさなければ波長のキャリブレーションができるはずです。今後解析までして、また記事にします。

7月11日の連続波長シフトの記事のコメントでMakiさんから、Hαから波長をずらしてみると「Hαグレイン」というものが見えるかもしれないという情報がありました。今回はそれを発端にいろいろ試した話です。

Hαグレインとは?

Makiさんによると、太陽の下部の彩層にはたくさん『毛穴』みたいな穴があり、時により黒い『ゴマヒゲ』みたいなものが写るはずで、Hαから0.6Åほど短波長側で見え、3分から5分周期くらいで現れるとのことです。



このページの動画の±0.5~0.6Åの画像にもそれらしき『穴』がたくさん写っているとのことです。

興味が出たので、自分でも調べて見ました。天文学辞典によると
太陽の彩層に見られるネットワーク構造の内側にH𝛂線で観測される暗点。この暗点は、H𝛂線の中心波長から0.6Å程度だけ短波長側で観測されることから、音速が10 km s-1程度の彩層内を超音速で上昇する構造である。この暗点は、約3分の周期で強度が変化して現れたり消えたりする。この変化は、カルシウムのHK線で見える輝点の変動と同期している。光球下から発生した音波が彩層に伝播する際に衝撃波化し、この衝撃波によって彩層が加熱された結果としてHK線で輝点が観測されたと解釈されている。H𝛂グレインとカルシウム輝点の関係はまだよくわかっていない。
とのことです。他にもここに研究トピックスの形で、ここに学位論文のまとめの形で少し説明があります。「グレインという現象はまだ統一された定義があるわけではありませんが 、ここでは彩層の Hα 線のフィルターを通して観測した画像の中で、直径1∼2arcsec(1000km)ほどの黒い粒状の構造を指します。」とのことです。

今のFC-76とG3M678Mで空間分解能を計算すると、視直径31.47分(7月)の太陽が2780ピクセルで撮影されているので、シーイングなどを考えないものすごい単純計算で0.68秒/pixelくらいの分解能なので、うまくいくと数ピクセルの大きさの黒い点として見えることになりそうです。

残念ながら学位論文自身は電子化されていないようで、見つけることはできませんでしたが、学位論文の結果と思われるペーパーについては見つけることができました。ここにありますが、フリーアクセスのようなので興味のある方は読んでみるといいかと思います。

今回まずはHαのみで見てみますが、Ca II H線(3968.47Åで、3933.66ÅのCa II K (CaK) 線の近く)などとの相関も見られるということなので、いつか多波長の同時観測も視野に入れて複数台の機材を揃えれたらと思います。


本当に写っているのか?

最初に試したことが、7月11日の記事で示した画像で、0.091Å x 7ピクセル分 = +/-0.637Åずれたの2枚の画像の差分を取ってみることでした。模様はHα中心から対称に出ていて、その中でグレインが-0.6Åのみに出るのなら、それらしい点が写ってもおかしくないと思ったからです。差分画像をさらに輝度の高いところだけを強調してみると、確かにそれらしい点が写っています。
004_07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_autostretch_-7_00

わかりやすいように反転してみます。
004_07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_autostretch_-7_00_inv

わかりにくい場合はクリックして拡大してみると、細かい黒い点がたくさん残っているのがわかります。Hα中心から波長が長い側と短い側に、等間隔ずれたところを比較しているので、ドップラーシフトの差は出るかもしれませんが、基本的に正負の波長ずれに対して対称な模様となっているはずです。もしそこに差があると黒く出てくるということなので、このゴマのように見えるたくさんの黒い点は、少なくとも正負0.6Åずれたところで違いがあるということになります。

差分を見る前の、元の-0.6Å画像を下に示します。同じ黒い点の位置を見比べてみると、確かに黒い点があるのがわかります。
07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_autostretch_-6_00

でもこれが本当にグレインなのか、そもそもグレインがどれくらいの分布で広がっているのかよくわからないのと、長波長側の+0.6Åに写っているように見える黒い点もあることから、いまいち確証が持てません。


グレインの時間変動

次に考えたのが、グレインの特徴の3-5分周期で出たり消えたりしているのかどうか、調べてみようと思いました。

そこで試したのが、前回の記事のタイムラプス映像です。

先に記事にはしましたが、このタイムラプス映像は元々はジェットを撮る目的などではなく、グレインの時間変化を見たくて連続撮影を試したというわけです。ジェットがたまたま撮れていたので、特徴的なドップラーシフトでの見え方の違いを動画で見せたのはあくまでおまけでした。

動画化する途中でも、グレインがどう見えるかは気にしていたのですが、まず位置合わせがしっかりしていないとどの点が数分間続いているのかさえよくわかりません。なので位置合わせはかなりの時間を割いて十分合わせられるようにパラメータ調整などの手法を工夫しました。

でも、位置が合ったとしても見分けるのはかなり困難です。3分から5分くらいの周期ということは、今回の動画で5-10コマで出てきて消えるわけです。しかも短波長側だけに出ているということで、長波長側に出ていないことも確認する必要があります。実際はっきり写るのは高々数コマになるので、先の動画の左右2つを見比べるだけでも大変で、繰り返し見ていてもいまいち確証が持てませんでした。行き詰まったところで、一旦グレインについてはストップして、先にジェットの方をまとめることにして、ブログ記事を公開しました。

ところが前回の記事公開後、Xの方でMASAさんから「このジェットのドップラーシフトを色付けして見てみると面白いのでは?」というコメントがありました。これまでドップラーシフトはJSol'Exを使って出していて、serファイルを処理した時のみドップラーシフトを出力できるだけなので、今回のように処理済みの波長のシフト画像から色付きのドップラーシフト画像を作るのはちょっと面倒だと思っていました。

でもMASAさんからさらに「アップした動画に擬似的に色をつけて見たら面白かった」とのコメントが入り、私も興味に勝てずに、結局処理済み画像から色付きのドップラーシフト画像を作るコードを書くことになってしまいました。

アルゴリズムはJSol'ExのImageMathのサンプルコードを見ることができたので、あとはpythonに落とし込むだけでした。+側をred、-側をblueとし、+側画像と-側画像の最小値をgreenとするのが一般的なようです。そうしてできた動画が以下になります。

rgb

噴き上がる時が赤で地球から遠ざかっていき、落ちる時が青で地球側に向かってくるということで、確かにジェットの速度が変わっていく様子が色付きでわかるので、かなりわかりやすくて面白いです。

と、この動画を見ていて思ったのが、あれ?これってグレインの可視化の方法としてはベストに近いのでは?ということでした。一つの画面だけを見ていて、青い点が出て消えるものを探せばいいのです。実際上の動画でもそれらしいものがすでに見えています。


確かにグレインっぽいものが時間変動している!

いくつかの場所を見てみましたが、青い点を目立たるようにして見たいということで、太陽の右側(西側)を見ることにしました。理由は、ドップラーシフトで背景が赤にシフトするので、波長が短い側にある青い点は見やすくなるからです。グレインは数ピクセルくらいのサイズになりそうなので、ある程度拡大しないと見えないのかと思います。上と同じように、右側下部を600x600ピクセルくらいの大きさで切り取ってみました。

rgb

これでもまだ変動が激しく、青が目立つと言っても小さな点なので、かなりわかりにくいです。

もう少しわかりやすくするために、青がある閾値以上で、ある大きさの範囲にあり、点状に近い形のものを自動で検出して、それが同じような位置に連続で出ているものをピックアップするようにしてみました。1画面だけ出ているものが灰色、2画面連続で出ているものが淡い青色、3画面以上出ているものを濃い青丸で囲んでみました。これらの処理はpythonで書きましたが、特に閾値などのパラメータ設定がかなり難しくて、ここまでピックアップするのに100回近くパラメータを調整しています。高画像版はYoutubeにアップしています。

rgb

やっとグレインらしきものが出て消えていく様子がはっきりと分かるようになったのかと思います。

3分周期とのことですが、
  • 一つのグレインが出たり入ったりを連続で繰り返すのが3分ごとなのか?
  • 一つのグレインが出始めて消えるの過程が3分間で、その位置では繰り返して出ることはないのか?
は今の所不明です。同じ位置で繰り返しているように見えるのがあるようにも思えますが、ほとんどは一度出たら消えています。そもそもグレインがどういうものなのかがあまりわかっていないようなので、今回見えたものが本当にグレインなのかどうかはわかりませんが、少なくともHα線から-0.6Åずれとところに3分くらいの周期で出たり消えたりするような点状の模様があるということは言えるのかと思います。


まとめと今後

今回はHαグレインらしきものが見えたというところで終わりとしたいと思います。アマチュアレベルの分光器でこんなものが見える可能性が出てきたということだけも、かなり面白い結果だと思います。

この後発展させていくとしたら、やはり2006年の論文にあるようなCaHとの相関を見ることでしょうか。これだと複数台のSHG700が欲しくなります。もしくは、Hαのグレインの3分周期をグラフ化して、同様にCaHもグラフ化するとかでしょうか。これだと1台でもなんとかなるかもしれません。

HαとCaHのみでなく、他の波長でももしかしたら同様のグレイン現象があるのかもしれません。他の波長ではまだ誰もやっていないようなので、もしかしたら科学的な成果につながっていくかもしれません。こんなことまで視野に入ってくるSHG700はこれからもいろんな可能性を秘めているのかと思います。


日記

お盆期間は忙しくて、天文関連の記事はHαグレインについてだけです。雨だったり、満月だったり、暑かったり、結局あまり休みにはならずに仕事が入ったりで、ほとんど撮影とかはできませんでした。

イベントとしては、8月7日に富山駅近くの環水公園で観望会がありました。雲が多く、夏の大三角とかと最後の方で月を見たくらいですが、多くの人が訪れてくれました。県天メンバーだけでなく、富山大、県立大の天文部も参加してくれていました。

他にも、8月12日には母校の高校の天文部の合宿に参加させてもらいました。こちらも天気が悪くて、見えた星はおそらくデネブだと思いますが、1個だけでした。ちょうどペルセウス座流星群が極大期で、部のメンバーが電波観測で流星群を捉えようとしていました。これまで学校でテストはしてたとのことですが、実際の観測は初めてみたいで、いくつか検出できていたようです。私はあまり詳しくなかったので、原理を少し調べてみましたが、結構面白そうです。機材も含めてそこまで大変ではなさそうです。天気に関わらず、雨の日でも検出できるというのはちょっと面白いかもしれません。ちょっと手を出してみてもいいかとも思いますが、観測というのが続くと思えないので、今回みたいな流星群の時にイベント的にやってみるのは、天気が悪い時の補足手段としてもいいのかもしれません。

分光は一度にたくさんのデータがとれて、いろいろ解析することがあります。お盆期間も結局はこの記事のための処理でほとんど費やしてしまいました。さらに、他にも撮影した大量のデータで未処理のものがあり、時間を結構かけていますが結果に結びついていません。しかも、今後機材の方にもう少し進歩がありそうな感じです。とにかく分光はこれまで手を出してこなかった分野で、とてつもなく奥が深いので、今後ももう少し踏み込んでいきたいと思います。




前回示したように、画像の一部でドップラーシフトの連続変化が見えるなら、頑張れば画像全体でも見えるはずです。


今回は、全画面でのドップラーシフトをアニメ化する方法を探ってみたいと思います。いい機会なので、JSol'Exの強力なスクリプト言語のImage Mathを使ってみようと思います。


1. 自動画像生成+マニュアルでアニメ化

まずは連続波長ずれ画像(静止画)を出力する一番簡単な方法です。

とりあえず、JSol'Exでserファイルを開いて、「Custum prosess」を選んで「Mode」を「Simple」にして、下の「Select all」ボタンを押し、右上の数字が並んでいるところに「-10;-9;-8;-7;-6;-5;-4;-3;-2;-1;0;1;2;3;4;5;6;7;8;9;10」などと入れてやって、-10pixelから+10pixlelまでシフトした画像を生成してくれます。
redshift_cut

autostrerchフォルダなどに出力された21枚の画像を、適当なツールを使ってアニメ化するというのが、まずは一つ目の簡単な方法になります。例えば、PixInsightのBlinkで動画化することができます。

実際に作って見ました。ブログに載せるために縮小してgif化してますが、これだけでも迫力があります。
Blink_10_blog

一旦はこれで作ったのですが、でもまだまだ不満が残ります。


Image Math

まず、どれだけ波長がシフトしているかの数字を画面内に入れたいのですが、なかなかいいツールが見つかりません。高々20枚ほどなのでPhotoshopなどでマニュアルで入れるのでも構いませんが、JSol'ExのImageMath機能を使うと、さらに細かいことが色々できるみたいです。せっかくなので、ここで使い方を一通り把握しておきたいと思います。

まず、マニュアルや解説に相当するページですが、以下の4つくらいでしょうか。

https://melix.github.io/astro4j/3.3.1/en/jsolex.html
https://melix.github.io/astro4j/3.3.1/en/imagemath.html
https://youtu.be/l6tb-UFC6Zs?si=oyHAQhvETiXK3iJe
https://youtu.be/8XKzFcmvqfI?si=GXIArv_YOCPATGgI

上の2つはバージョンごとにページがあるので、今使っているバージョンのものを見るといいでしょう。アドレス内の数値を自分のバージョンに合わせてください。いっそのこと最新バージョンの3.3.1を落とすのもいいでしょう。このJSol'Exですが、まだ開発絶頂期の範囲なのか、バージョンアップの頻度がものすごいです。私が使い始めたわずか2週間の間に、3.2.1から3.2.2、3.3.0、3.3.1と、3回もアップデートしています。

下の2つは動画ですが、1つ目は基礎からImageMathまでわかりやすく英語で解説してくれています。え?日本語でないからわかりにくい?いやいや、2つ目の動画はImageMath専用の解説ですが、フランス語です。私は大学でフランス語を選択してましたが、今では全くわかりません。作者が解説してくれているJSol’Ex関連のビデオは結構たくさんあります。

https://melix.github.io/blog/jsolex.html

でも見てみるとわかりますが、21本中英語版はわずか3本、他は全部フランス語です。なので英語にしてくれているものは大きな情報源になり、かなり助かります。でもフランス語でも画面を見ているとわかるところもあり、特にImageMathについてはソースコードを見るとわかることも多いので、多少は役に立つと思います。というか、他の方のものなども散々探しましたが、どうもこれくらいしか解説はないようです。


Image Mathを使ってみる

実際にImageMathを触るときは、まずはサンプルコードを見るといいでしょう。JSol'Exのメニューの「Tools」から「Image Math editor」を選びます。出てきた画面で「Sample scripts」を押すと、いくつかの例が出てきます。

IM_card

この中で一番わかりやすいのは「Technical card」でしょうか。Full modeで緯度とか経度が書き込まれるcardという画像が出ていますが、それと同じ画像を作るスクリプトです。中身はこんな感じです。

#
# Generates a technical card similar to the built-in one
#

[params]
gamma=1.5
cropFactor=1.2

[tmp]
contrast=sharpen(auto_contrast(img(0);gamma))
cropped=autocrop2(contrast;cropFactor)
globe=draw_globe(cropped)

[outputs]
techcard=draw_solar_params(draw_obs_details(globe))

まずはこのスクリプトを、そのままSaveボタンを押して適当な名前をつけてどこかに保存してみてください。

次にserファイルを開いて、「Custum process」に進んで、出てきた画面の右上の「Mode」を「ImageMath」にします。右横の「Open ImageMath」ボタンを押してエディタを開き、「Load」ボタンを押して先ほど保存したファイルを開きます。

もし先ほどのスクリプトを保存していない場合は、ここであらためて「Technical card」を選択してもいいですが、SaveしてLoadせずに進めると何も読み込まれない状態になってImageMathの処理がされないので注意です。それから、ここで開いたサンプルファイル一覧では、「Tools」から「Image Math editor」から開いた場合で見たサンプルファイル一覧に出てくるものより少ないものしか出てこないので、これも注意です。なので、サンプルファイルは基本的にはメニューの「Tools」から辿って開くようにした方がいいいです。

Image Math editorの「Ok」ボタンを押し元の画面に戻って、「Unselect all」を押します。これでImage Mathの処理のみが行われるので時間の節約になります。JSol'Ex上に処理された緯度経度情報が入った画面が表示されると思います。その後のスクリプトの改造ですが、この画面の右下にImageMath scriptという場所があって、そこに先ほどのソースコードの内容が表示されていると思います。ここをいじっていきます。

手始めに、このモノクロのcard画像をカラー化してみましょう。

まず[param]、[tmp]、[output]の3つのパートに分かれているのがわかります。[param]は変数 (数値) の定義、[tmp]は内部的な画像処理で、[outputs]で指定されたもののみが実際の画像として出力保存されます。

改造のための情報を得るために、関数リファレンスページでコントロールキーとFキーを押すなどして「color」などとページ内検索します。どんなコマンドを使えばいいかはこの関数リファレンスページの関数一覧を一通り読むか、他のサンプルファイルを読み込んでみるといいでしょう。検索すると「COLORIZE」という関数が出てきます。使用例には

colorize(img: img(0), profile: "H-alpha")
colorize(range(-1, 1), "Calcium (K)")

などと書かれていますが、これを参考にします。例えば今処理しているcardスクリプトでは[tmp]の最後にglobeという画像が出来上がっているので、同じ[tmp]のところに

colorized=colorize(globe;"H-alpha")

という1行を追加して、colorizedという変数に画像を入れてみましょう。上の使用例と結構違っているので注意が必要です。それぞれの引数の間は「, (カンマ)」ではなくて、「; (セミコロン)」が標準みたいです。カンマでもいいみたいなのですが、サンプルコードでは全てセミコロンになっているので、私もセミコロンで統一することにしました。あと、引数のところの「img」とか「profile」は入れても入れなくてもいいみたいですが、入れるなら全て入れて、入れないなら全て入れないようにしないとダメみたいです。他のサンプルコードを見ると、入れない方が標準みたいです。

あとは、[output]の中の1行を

techcard=draw_solar_params(draw_obs_details(colorized))

のように書き換えて、先ほど作ったcolorizedを引き継ぎます。これでもう一度JSol'Ex画面右下のImage Math Scriptの「Run」ボタンを押して走らせるとカラー化された緯度軽度情報が入った画像が出来上がる位はずです。ただし、ここで書き換えたスクリプトはあらわにセーブしないと、再度立ち上げた時には元のモノクロの状態のスクリプトしか残ってないので、気をつけてください。

ちなみに、ここで出来たカラー画像ですが、フルモードなどで自動で作ったカラー画像とは色使いが違います。自動処理の方のカラー化はもう少し凝ったことをしているようです。


2. Image Mathで全画面ドップラーシフトをアニメ化

ここまででImage Mathの使い方のきっかけくらいは掴めたのかと思います。次は目的の全景のドップラーシフトアニメーションを作ってみましょう。といっても、これもサンプルファイルがあります。同様にImage Math editorで見えるサンプルリストの中から「Continuum animation」を選びます。以下のような内容です。

#
# Creates an animation of the continuum
#

[params]
# the animation will be created with images from [-shift;+shift]
shift=5
# autocrop factor
cropFactor=1.1
# contrast adjustment
gamma=1.2
# interpolation steps
steps=5
# delay between frames
delay=20

[tmp]
continuum=transition(range(-shift,shift);steps)
cropped=autocrop2(continuum;cropFactor)
contrast_adjusted=auto_contrast(cropped;gamma)

[outputs]
continuum_anim = anim(contrast_adjusted;delay)

このコードをそのまま使ってもいいのですが、前回のアニメであったような波長などの書き込みはありません。ここでは練習として、動画の各画像にテキストで波長を書き込んでみましょう。

使うコマンドはdraw_textです。[tmp]の最後に1行

text_added=draw_text(contrast_adjusted; 200; 2900; "Shift from Hα: %SHIFT%Å", 72; "FFFFFF")

を付け加えます。200とか2900は位置なので、自分の画像の大きさに合わせて適当に数字を変えてください。%SHIFT%はリファレンスマニュアルのdraw_textのところに書いてありますが、あらかじめ予約されている変数で、単位がÅに換算されたそれぞれの画像の波長のずれを表します。72はフォントの大きさです。こちらも適当に変えてください。FFFFFFは色で、RGBを各2バイトで表していて、この場合はRもGもBも255で一番明るくしてあるので白色になります。

[outputs]内では、最後の行を以下のようにtext_added変数を引き継いだ形に変更します。

continuum_anim = anim(text_added;delay)

基本的にはこれで走るはずですが、[params]内にある数値に少し触れておきます。
  • まず、shiftですが、これは[tmp]内のrange関数の引数に使われます。単位はピクセルなので、serファイルのHαの中心線から上下5ピクセルを処理します。ここは10くらいにしておくと楽しいでしょう。
  • stepですが、transition関数引数で使われていて、1ピクセルと1ピクセルの間を何枚補完するかになります。5の場合はかなり滑らかになります。ただし、先ほど表示したテキストの波長は間が補完されず、元画像の飛び飛びの波長しか出せないみたいなので、私はここは1にしました。
  • 最後delayですが、[output]のanim関数の引数で使われていて、フレームとフレームの間の時間で、単位はmsです。これはshiftとstepの数に合わせて調整しますが、私は1波長1枚としたので、ここでは200としました。

出来たスクリプトは以下のようになります。

#
# Creates an animation of the continuum
#

[params]
# the animation will be created with images from [-shift;+shift]
shift=10
# autocrop factor
cropFactor=1.1
# contrast adjustment
gamma=1.2
# interpolation steps
steps=1
# delay between frames
delay=200

[tmp]
continuum=transition(range(-shift,shift);steps)
cropped=autocrop2(continuum;cropFactor)
contrast_adjusted=auto_contrast(cropped;gamma)
text_added=draw_text(contrast_adjusted; 200; 2900; "Shift from Hα: %SHIFT%Å", 72; "FFFFFF")

[outputs]
continuum_anim = anim(text_added;delay)

走らせた結果ですが、以下のようになります。ブログにアップロードできるように、元々出力された3040x3040のmp4ファイルを600x600のgifに落としています。無事に数値が入って、わかりやすくなりました。

step
  • 撮影日: 2025年6月18日7時13分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FC-76(f600mm、F7.9) 
  • 分光器: SHG700
  • 赤道儀: Celestrn CGEM II
  • カメラ: ToupTek G3M678M
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間1ms、ROI: 3840x100、平均381fps
  • 画像処理: JSol'Ex

これでももう結構十分で、ここでフルサイズの画像をアップしてもいいのですが、追加でもう一つ手法を紹介します。


3. もっと簡単な全画面ドップラーシフトのアニメ化の方法

Image Mathをある程度見てみて、上の動画まで完成させた後に、もっとはるかに簡単に全景画像を作る方法があることを知りました。悔しいですが、紹介しておきます。

処理したいserファイルを、Quick modeで一度処理します。出てきた画像の上で、コントロールキーを押しながら左クリックで処理したい部分を選択します。そして右クリックして「Create animation or panel」を選択します。

anime_select

すると次のような設定画面が出るので適当に設定して「Generate」ボタンを押します。
anime_setting

時間がかかりますが、処理が終わると以下のような画像と動画ができます。
07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_custom-panel_cut

out

上の動画はブログ用に縮小しています。フルサイズの動画はここにおいておきました。どうもショート動画になってしまうようですが、かなりの解像度なのでぜひ全画面化や、さらに拡大して見てみてください。

この領域選択はどこでもできます。最初からこんな大きな全景範囲で処理すると大変なので、まずは小さなサイズで試してみるといいと思います。例えばプロミネンスなどです。

out

この便利な機能、マニュアルにも記述がないみたいです。


まとめ

今回は3通りの全画面の連続波長ずらしのアニメ化の方法を示しました。本当は2つ目までだったのですが、一旦2つ目までの記事をほとんど書き終えてから3つ目の画像の一部選択の方法があることを知りました。まさか全画面ではできないかと思っていたら、あまりに簡単にできてしまったので、悔しかったですが紹介することにしました。でもまあ、Image Mathの使い方がわかったからよしとしましょう。

次の記事はこのドップラーシフトの全景画像を使って、色々議論したいと思っています。


前回から始めたSHG700の応用編


第1回目は波長を大きくずらし太陽表面をさまざまな輝線で見てみました。今回はHα周りで波長をずらしたらどうなるかを見てみます。といっても、これもJSol’Exの標準機能なので、応用というにはまだ物足りないかもしれませんが、それでもこれまであまり見たことのないものかと思います。


ドップラーシフトを連続で見る

まず処理したいserファイルを改めて開きます。バッチモードでなく、単体のファイルを開きます。今回はフルモード、もしくはカスタムモードで全選択して処理を進めます。処理が済んだら、次に画面右の横向きになっているタブのうち「Doppler shift」を押すと次のような画面になります。

redshift_cut

「Box size」は見たい領域で、デフォルトが256x256ですが、出来上がり画像としてはちょっと狭いので512x512くらいがいいかと思います。

ここで選ぶレッドシフトのAからEの領域ですが、これは解析した画像の「redshift」フォルダの中に入っている画像を見ると、ドップラーシフトがあった場所に四角いマーカーが追加されていて、AからEくらいまでのアルファベットで区別されているのがわかります。
07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_redshift_0_00_brighter
全部選ぶとかなりの処理量になるので、今回は形が面白そうな真ん中近くのBを選んでみました。

ちなみに、最初全部選んで16GBメモリのWindows Surface8で処理したら、メモリ不足で止まってしまい最後まで辿り着けませんでした。そのため、Bを一つだけ選んで、しかもJSol‘ExのARM Mac版をダウンロードし、32GBのメモリを積んでいるM1 Macで処理することにしました。普段太陽用に使っているWindowsのSurface 8より、普通の処理でさえも相当速いことがわかったので、今後重い処理はMacの方が楽そうです。

「Pixex shift margin」は余分にどれだけ見るかみたいですが、とりあえずデフォルトの2でいいでしょう。あとは「Type」で静止画と動画の両方を選び、「Annotate animations」をチェックし数字を波長などの画像内に埋め込みます。「Use full range in panels」もオンでいいでしょう。オフだとプラス側だけの波長になりますが、オンにするとプラスとマイナス両側の波長が処理され、速度が正と負でどう画像に違いが出るかがよくわかります。これで画面下の「Generate」ボタンを押して処理を進めます。かなりの時間がかかるので放っておきましょう。

全部の処理が済むと、今回ずらした全ての波長をパネル城に並べた1枚の画像と、連続表示した動画ができます。静止画の中の各画像に数値が入っていますが、これがどれくらい波長をずらしたかと、それに対応した速度差になります。
07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_redshift-B

「Profile」タブで見ると、私の機材だとHα線周りでは0.091Å/pixelになることがわかっていて、 このことから1枚1枚が、1ピクセルずらした処理に相当していることがわかります。
スクリーンショット 2025-07-05 101928

同時に出力される動画はmp4形式です。ここではブログに載せやすいように、以下のようにffmpegでgif形式に変換しました。

ffmpeg -i sample_redshift-B.mp4 -filter_complex "[0:v] fps=10,scale=480:-1,split [a][b];[a] palettegen [p];[b][p] paletteuse" output.gif

動画はすごいですよ。

output-palette

波長がズレると見える模様と見えない模様があることがわかります。これは地球から見た時のHαからの速度ずれが起こっていて、ドップラーシフトを起こした結果だと考えているわけです。

ところでこの動画、どうやらその上で示した静止画の1枚1枚をそのまま繋げているだけではなくて、滑らかに見せるために、隣同士の画像の間の画像を補完して動画化しているようです。その証拠に、中心波長の次が0.02Åとかのあり得ないくらい細かい値になっています。近くの2枚の画像の比率を変えてブレンドしたりしているのかと推測します。中間的な波長は真の波長シフトとは違うかもしれませんが、波長の間をシフトさせて見たい時にはこの手法は使えるのかもしれません。


一つの疑問

ここで一つ疑問が湧きます。そもそも、例えばこのgifアニメに写っている、前半と後半で見え方かが変わってくる例えば真ん中の黒い模様は、元々はHαの波長のみで存在しているものなのでしょうか?それとも、Hαの吸収線で周りの波長からの光が暗くなるから、Hα吸収線の底の部分が見えてくるだけで、そこで見えているものは他の波長も暗くできるなら他の波長でも見えるものなのでしょうか?

もしこのドップラーシフト画像が正しいなら、元々はHα線を中心にHα線のみに存在する輝線で、その上や下の波長では見え方が違っていて、地球から見た速度に差があるからHαからズレた波長でも見えているということになります。

その一方、例えばプロミネンスはこれまでHα線のみで見えると思い込んでいましたが、CaKで見た時も同様の形が見えることを今回初めて知りました。Hαで見えてCaKでも見えるのなら、他の波長にも存在していると考えて不思議はなさそうです。そうするとドップラーシフトで見え方が変わるということと矛盾してしまう気がします。

暗線なのか輝線なのかという問題になるのかと思います。まだ自分の中で結論が出ていないので、今後もう少し検討したいと思います。


まとめ

ドップラーシフトがある領域を、波長をずらして見てみました。かなり面白いのですが、これでもJSol'Exの標準機能の一つにすぎません。さらにImage Mathと呼ばれるスクリプトを使うと、もっと色々なことができるようで、どんどん応用になっていきます。これらの件、今後もう少し突っ込んで進めてみたいと思います。

前回の「太陽分光SHG700始動(その3): 連続分光撮影」に引き続き、太陽分光撮影シリーズの4回目です。


今回は撮影したserファイルを処理する太陽全景画像再構築ソフトの説明をします。


JSol'Ex

撮影した.serファイルから太陽全景画像を再構築するソフトはIntispecINTISpectroheliograph reconstruction softwareJSol'Exなどがあるようですが、MLastroではJSol'Exが勧められているので、ここではJSol'Exを使ってみます。


JSol'Exの日本語での解説記事はほとんどないみたいなので、いろいろと試してみました。

ダウンロードしたらインストールしますが、インストール先がデフォルトでは自分のユーザーディレクトリの中の隠しフォルダのAppsData以下になるようなので、実行ファイルがどこにあるかなど戸惑うことがあるかもしれません。私は天文関連のアプリはショートカットをデスクトップに置いているので、実行ファイルを探すのにちょっと苦労しました。ちなみにショートカットは、エクスプローラー上で実行ファイルを選択して、シフトキーとコントロールキーを同時に押しながら、デスクトップに放り込めばできますね。


serファイルからの簡易画像生成

JSol'Exを立ち上げて、まずは手持ち機器の登録をしましょう。メニューの「Equipment」の「Spectrograph editor」で分光器を登録します。Sol'ExやSHGはバージョンごとにわかれてあらかじめ登録されているので、通常は特に変更の必要はないです。もしカスタムなどしている場合はここで設定するといいでしょう。

もう一つ、メニューの「Equipment」の「Setup editor」で鏡筒とカメラを登録します。「Latitude」と「Longitude」は設定しなくていいみたいなので、私は空白にしています。
スクリーンショット 2025-06-24 215035


処理を開始するために、serファイルを読み込みます。メニューの「file」から単体のserファイルなら「Ooen ser file」、複数のserファイルをまとめて処理したいなら「Batch mode」になります。

スクリーンショット 2025-06-24 145332

簡単には出てきた画面で、下の「Quick mode」ボタンを押せば簡易処理になり、全景を再構築した画像と、それをオートストレッチした画像のみが保存されます。
スクリーンショット 2025-06-24 205206


カスタム出力設定

高機能なJSol’Exを活用するために、きちんと設定して出力画像の種類を増やしましょう。

まずは先ほど設定した、自分の機器を選択します。上記画面の「Observatoin details」を選択し、Instrumentで「MLAstro SHG700」を、Telescopeで自分の機器、ここでは先ほど設定した自分の「FC-76」を選択します。
スクリーンショット 2025-06-24 215918


保存する画像のフォーマットは「Miscellaneous 」で必要なフォーマットにチェックを入れます。あとでスタックとかする場合はfitsやtifなどのRAWフォーマットにしておいたほうがいいかと思います。画像アップ用でJPEGやPNGを一緒に選択しておいてもいいかもしれません。

保存フォルダの形式を、同じく「Miscellaneous 」で「Batch」にしておくといいでしょう。あとでスタックする場合には、複数serファイルからできた同じ種類の画像がまとまって一つのフォルダに入ります。

スクリーンショット 2025-06-24 145715

ここからがJSol'Exの真骨頂になります。serファイルを開いて設定などした後に、まずは右下の「Full process」を押してみましょう。時間は余分にかかりますが、いろんな種類の画像が生成されます。

でもこの「Full」だと一部されない画像もあるので、「Custum process」を押して、さらに「Select all」にしたほうがいいかもしれません。これにすると、波長を少しずらした(デフォルトだと-3,0,3,15pixel)画像も合わせて生成されます。
スクリーンショット 2025-06-24 205325

波長の違いは見てるだけでも楽しいので、ぜひ試してみてください。波長をどれだけずらすかは、自分で設定できます。画面内の数値を適当に変えたり、増やしたりしてみてください。


出力される画像例

どんなファイルが生成されるのか見ていきましょう。以下に示す保存される場所は、File name patternを「Batch mode」で保存した場合になります。

まず基本はdiskフォルダとautostretchフォルダの中にある、再構築された全景です。diskの中は単に再構築しただけのRAWに近いもの、autostretchはそれをストレッチしたものです。ここではストレッチされたものを示します。
07_13_53_0000_07_13_53_autostretch_0_00

これらのフォルダには上記のHαの中心波長のみでなく、そこからずれた波長の画像も保存されています。例えば+/-3pixelずれたものです。波長への換算はざっくり0.1Å/pixelなので、それぞれ-0.3Åと+0.3Å程度ずれた画像になります。
07_13_53_0000_07_13_53_autostretch_3_00

07_13_53_0000_07_13_53_autostretch_-3_00

高々0.3Åのずれですが、中心波長画像と比べると見た目でかなり変わっていることがわかります。まず、中心波長の方が全体的に渦のような縞々が少ないように見えます。わたしはこれまでこの縞々がHα線で見る時の真骨頂かもしれないとずっと思っていたのですが、どうも本当の中心はもっとのっぺりしているのかもしれません。その代わりに、中心はちょうでは白いもやみたいなものが全体に見えます。これがなんなのか?ちょと興味があります。

他にも15pixel = 1.5Åだけ中心波長から離れた画像も保存されます。これだけズレるとほとんど白色光に近い画像になり、黒点がよく見えるようになります。
07_13_53_0000_07_13_53_autostretch_-15_00

どれだけずらすかは自分で設定することができます。先ほどのCustum processで数字で指定してある部分です。

cardフォルダの中には黒点番号、緯度経度と自転軸の傾きが書き込また画像が保存されています。太陽の自転軸は、地球の公転面に対して約7度傾いています。この画像にある自転軸は地球から見たときの見かけの自転軸です。地球は太陽の周りをまわっているので、太陽の自転軸の「地球から見たときの見かけの」傾き角は、季節によって変化します。
07_13_53_0000_07_13_53_card_0_00

このサイトで見かけの自転軸の傾き角を計算することができます。2025/6/17 22:13:53(UTC)だと-8.44度と計算されるので、画像に表示されている角度と同じですね。ちなみに、地球の自転軸の傾きもあるので、見かけの傾きは7度以上になることがあるので、今回の-8.44度は間違ってないです。

diskフォルダの中にあった、+/-3ピクセルずらした画像から、ドップラーシフト画像を生成することができます。dopplerフォルダの中に入っています。
07_13_53_0000_07_13_53_doppler

上記のような画像は任意のずれから画像を生成することもできるので、色々試してみると面白いでしょう。

実はドップラーシフト画像で気づいたのですが、最初に試した時に赤と青が反転してしまいました。本来は上の画像のように、左側が奥から手前に回転し、右側が手前から奥に回転するので、左は波長が縮んで青の短い側にに、右は波長が伸びて赤の長い側なるような色を付けるのが正しいです。なぜ色が反転したのか、探っていくとJSol'Exでserファイルを開いた時の「Process parameters」で色を入れ替えたり、上下や左右のフリップを指定できることがわかりました。
スクリーンショット 2025-06-24 205206
スクリーンショット 2025-06-24 145523

でも色を入れ替えるだけだとなぜか画像も左右反転してしまったので、左右フリップもオンにしてやっと正しいと思われる色と向きになりました。ちょっとややこしいので、一度自分で試すといいでしょう。画像の上下左右は、黒点が出ているならcardフォルダの緯度経度が書いてある画像に黒点番号も書き込まれているので、この番号の位置が黒点の位置とあっているかどうかも確かめることができます。

doppler-eclipseフォルダには、プロミネンス部分を強調してドップラーシフトでどちら向きに進んでいるかわかる画像も含まれています。
07_13_53_0000_07_13_53_doppler-eclipse

太陽表面及びプロミネンスのドップラーシフトはいつか求めてみたいとずっと思っていました。というか、このドップラーシフトを試したくて今回のSHG700に手を出したと言っても過言ではありません。以前Phoenixで波長をシフトさせて自転のドップラーシフトが見えないか考えたのですが、波長分解の敵にちょっと厳しいと判断しました。今回のような波長分解能のいい分光撮影で、やっと実現したことになります。でも0.3Åの波長シフトで十分見えるのなら、今考えるとPhoenixでも見える気がします。画像は残っているので、今度見直してみようと思います。

他にも、colorizedフォルダには自動的にカラー化された画像も保存されたりしています。
07_13_53_0000_07_13_53_colorized_0_00


さらなる画像生成

上の画像はほぼデフォルトで出力されるものの一部です。ほかにも紹介しきれないマイナーが画像もありますし、設定を変更できるのでさらにパラメーター違いの画像を各種出力できます。

でもそれでもここまでは「Simple」というモードに過ぎず、serファイル選択後に「Custom process」を押し、「Mode」で「ImageMath」を選ぶと、スクリプト形式でどんな出力にするかを指定して、画像を演算などすることで一連の画像を出力することもできます。

説明はここにありますが、さすがにこのページの説明の範囲を超えてくるので、興味がある方は各自で試してみてください。

マニュアルは簡易版がここ


詳しいものがここにあります。


他にも波長を変えた際の画像のアニメ化ができるみたいです。serファイルを処理終了後、右上画面の横タブの「Redshift」を選びます。
スクリーンショット 2025-06-24 213843

でも、一度試したのですがメモリ不足で止まってしまいました。そのうち、もう少し余裕のあるPCで試してみようと思います。ちなみに、serファイル処理後は上記のように画像が表示されていて、画像上のボタンやスライドなどでこの状態で設定を変えることができます。変えた設定は保存画像を変更するので、次の処理をするまではあらわに保存せずとも自動的に更新が保存されます。


画像以外の解析など

JSol'Exには.serファイルからの画像出力だけでなく、他にも便利な機能がいくつかあります。一つはフラウンホーファー線のリファレンス機能です。これまでHαで撮影してますが、それでも一番最初はどの輝線がどの波長を表しているのか、画像からだけだと全くよくわかりません。それでもHα線はメジャーなので、他の人が撮影した画像と比較とかして特定できるかもしれませんが、他の画像、例えば太陽撮影で次にメジャーなCaK線は一気に比較画像を探すのが難しくなります。そんな時に「Spectrograph editor」を使うと、自分で撮影した画像と比較することができます。メニューの「Tools」->「Spectrograph editor」を選んで、出てきた画面で見たい輝線を選択します。自分で撮影した画像を並べて、画面内の+/-で幅を揃えて同じような模様を探します。今回自分のセットアップで撮影した場合、上下幅が18nmに相当することも、輝線を探すときの手がかりになりました。

ちなみに、画像をロードしてJSol'Ex内で比較することもできるようなのですが、まだ実験レベルの実装らしくていまだにやり方がわからず、私は下のように画面を横並べにして比較しています。
スクリーンショット 2025-06-18 151746

吸収線をグラフ化してリファレンスと比較する機能もあります。serファイルを処理終了後、右上画面の横タブの「Profile」を選びます。
スクリーンショット 2025-06-24 204301_cut


このグラフを見ると、1点がスキャン1回ぶんになっているようで、グラフから読み取ると0.118Å/pixelのようです。光学的な波長分解能は0.18Å/pixelと計算できているのですが、実効的にはどの程度かはもう少し考えて判断したいと思います。


さらなる情報

JSol'Exは相当高機能なソフトです。今回紹介した機能はわかりやすいものばかりで、まだ複雑な機能は私も全然使い切れていません。ImageMathの所でも紹介しましたが、マニュアルは詳しいものが用意されているので、とりあえずはそれを読むことかと思います。

簡易版


詳細版



このページにチュートリアルビデオがたくさんありますが、問題は言語で、英語のものがわずか3本、あとは全部フランス語です。私はフランス語はよくわからないので見るだけですが、それでもいくつかのファイルは参考になります。




まとめ

JSol'Exはすごい高機能ですね。とにかく、ドップラーシフトがこうも簡単に出てくるのは期待以上でした。元々は自分でソフトを書かなくてはと思っていたくらいなので、ちょっと拍子抜けしたくらいです。いつかみたジェットを、今度は分光撮影してみたいです。多分波長のシフトとなって出てくると思っています。

こういったソフトが出てくるのも、Sol‘Exで文化を切り開いてくれたおかげでしょう。今後もありがたく使わせていただきたいと思います。













今回の記事は座学です。太陽撮影でよく見ているプロミネンスですが、ほとんど何も知らないことがよくわかりました。関連する事柄を調べたので、メモがてら書いておきます。

そもそもの疑問は、黒点から出ていた2本の線ですが、Hαからズレたところで見えていて、Hαだと見えないと謎だったのですが、ドップラーシフトで青側に寄ったガスの噴出だということです。


でも、ズレたということは元々はHαのみで見えるということになりますが、太陽内部から出てくるときにHαで吸収されていると思っていたので、なぜHα以外の波長で輝度がないのかが疑問でした。要するに、このガス噴出と思われるものは、Hαの吸収線なのかHαの輝線なのかという疑問です。

このガスの前に、もっと身近で毎回撮影しているプロミネンスも同じ疑問が出てきます。縁(へり、リム)のところに出ているプロミネンスはご存知の通り、PSTなどの太陽望遠鏡でHαからズレると途端に見えなくなり、背景の黒だけが見えるようになります。この現象から推測すると、Hαでよく見え、周りの波長の輝度ははるかに小さい、輝線ということがわかります。

一方、プロミネンスが光球面上に存在すると、今度はダークフィラメントと呼ばれて、周りより温度が低いので暗く見えます。この場合はHαを見たときに、光球面の明るい周りの波長がカットされて残ったHαのみが見えるというわけです。この場合は二通り考えることができ、光球面の特徴的な模様とともにダークフィラメントも見えてくるような吸収線と考えることもできますし、そもそもHαのみに輝度を持っている輝線と考えることもできます。

では、そもそもプロミネンスってなんなのでしょうか?少し調べるとわかりますが、プロミネンスとは低密度で百万度以上の高温プラズマ中に浮かぶ、高密度の1万度程度の低温プラズマとのことです。ここでいう、高温プラズマとはコロナのことです。高度百万キロ程度の希薄なコロナの中に、プロミネンスが雲のように濃く存在しているということです。そしてその低温プラズマは採光面からの水素に照らされて吸収と放射を繰り返し、Hαで輝く輝線となるとのことです。太陽の縁のあたりに見えるプロミネンスの場合、背景は希薄なコロナで何も見えず(Hαやその周りの波長では輝いていない)、Hαで見るとプロミネンスのみが見えるということです。

ダークフィラメントも基本的には同じものですが、背景が光球面ということだけが違います。吸収と放射でHαに明るさを持つことは同じですが、背景が明るいためにHα以外では真っ白になってしまい、Hαのみを見ると温度の低いダークフィラメントが暗く写るということです。

プロミネンスがプラズマだったなんて全然知りませんでした。また、なんでHαのみで見えるのかの理由も深く考えたことはなかったのですが、輝線で輝いているということもはっきりわかりました。

このプロミネンスですが教科書レベルの本で調べると、大きく分けて静穏型プロミネンスと活動型プロミネンスの2種類に分けられるそうです。
  • 静穏型は数週間大体同じ形を保つもので、全体の構造はほぼ静止状態、ただし内部のガスは数km/秒くらいでゆっくり流れ落ちている。
  • 活動型は運動状態にあり数分から数時間で形を変えるもの。
我々が普段撮影するのはほとんどが静穏型なのかと思います。活動型は変化が相当速くて大規模な変化が多く、フレアとも大きく関係するため、その名の通り相当活発なもののようです。活動型はタイムラプスなどでは変化がよく見え、迫力ある映像になるのかと思います。

活動型はさらに以下のようにいくつかの種類に分けられるということです。
  • 噴出型プロミネンス
  • スプレイ
  • サージ(ジェット型プロミネンス)
  • ループプロミネンス(ポストフレアループ)
最初の噴出型プロミネンスは静穏型プロミネンスが突然不安定になり上昇や消失してしまう現象で、上昇速度は数百km/秒でかなり速いです。フレアとも関係があり、噴出型プロミネンスが発生するとフレア現象が起こることも多いそうです。

スプレイはフレアからガスがバラバラに飛び散りながら噴出する現象で、速度がさらに速く500-1200km/秒。噴出型プロミネンスとの違いは、噴出型プロミネンスは元々プロミネンスやフィラメントが存在しているのに対して、スプレイはフレア前にはプロミネンスもフィラメントもなかった(見えなかった)ということなので、明確な違いがあることになります。

さて、今回見た2本の線は、この分類からいくと「サージ」になりそうです。ジェット型プロミネンスとも呼ばれているようです。速度は数十から数百km/秒とのことなので、前ページで見積もった速度とも大方一致します。面白いのはこのサージも、噴出前にプロミネンスもフィラメントも存在しないことです。このことも、今回数分後に撮影したHαには少なくともフィラメントのようなものは見えなかったので、これも一致しているといっていいのかと思います。

さらに、プロミネンスとドップラーシフトで検索してみると、さまざまなページが見つかります。特に、天文台などの大型望遠鏡で撮影したデータから、ドップラーシフトで解析したというような高校の天文部などの記事も見つかります。この場合、Hαからの波長のズレがどれくらいかはっきりと分かっているので、逆に画像からプロミネンスの速度を求めようというような方向が多いです。

今回わかったことをまとめます。
  • 今回見た黒点からの2本の線は、サージもしくはジェット型と呼ばれる活動型プロミネンスの一種。
  • プロミネンスとは高温プラズマであるコロナに浮かぶ低温プラズマで、採光面からの水素に照らされてHαで輝く輝線であること。
  • サージは速度が数10km/sから数100km/sと速く、ドップラーシフトが起こり、地球から見た方向によって波長がHαから短い青側もしくは長い赤側にズレる。
  • PSTなどの太陽望遠鏡ではHαからわざとズラしてやることで観測できる。
これでかなりスッキリしました。

うーん、これまでプロミネンスとか黒点とか写っているだけで喜んでましたが、やはりその背景を知るとさらに楽しくなってきますね。もっと勉強すべきですが、こういった自分で撮影したものがきっかけでさらに調べていくというのは、とてもいい機会になるのかと思います。

今回撮影した不思議な現象の謎もほとんど解けたので、今回でサージ関連の記事は一応終わりです。次回もし書くとしたら、再びHαからズラしてみることを気にかけておいて、何か見えたときに再び記事にしようと思います。その際は、時間変動や波長依存性などを撮影することがきたらと思いますが、一度に両方は無理でしょう。今回のように、ここまであからさまなドップラーシフトしたサージをはっきり見た画像あまり数がないようで、そこそこ珍しい現象のようです。チャンスがあったらその機会を大切に撮影したいと思います。






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