ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:トラバース

2024年9月7日、7月に続いて今年2回目の飛騨コスモス天文台での観望会です。

でもこの日の富山は朝からどん曇り。天気予報は富山はまだ晴れですが、コスモス天文台のある数河高原はほぼ曇りで時々晴れですが、時間と共に予報が悪くなっている様子。「富山でこれだと何も見えないな」と思いながら、「もしちょっと見えたらくらいで、まあ機材も最低限でいいか」とほぼ普段車に積んであるような機材だけにします。あ、子供用に一応スコープテックの6cmの屈折だけは載せました。

ところが、国道41号線を南下するに従って、結構青空が出てきてます。現地に着いた頃には、多少雲がところどころにぷかぷかしてましたが、なんとほぼ一面青空です。「しまった、撮影機材持ってくればよかった」と思いながらも、もうどうしようもありません。

その後まだ壊れていたドームの修理をするのですが、この日は絶不調で元の配線を記録し忘れるという体たらく。途中でかんたろうさんがきて、モーター関連の配線を説明してくれて事なきを得ましが、下手したら開けたドームが閉まらなくなるところでした。でもドームのチェーンが噛みかけていて負荷が大きくて、結局修理に至らず。ちょっと別の方法を考える必要がありそうです。

そんなこんなで、ドームの外に出たらもう結構暗くなりかけていて、細い月がもう沈む少し前くらいになっていました。早速準備を始めます。とりあえずスコープテックの屈折で月をすぐに入れて、少しだけ見てもらいますが、程なくして低空の雲で見えなくなってしまいました。


少しだけ電視観望

その間に、電視観望の準備です。機材は限られていて、いつものFMA135にCBPとUranus-Cをトラバースに乗せます。PCはM1 Macの仮装WindowsでCMOSカメラに繋ぎます。PlayerOneのカメラならもう観望会でお客さんがいたとしても、完全実用レベルです。早くZWOもARM  Windowsに正式対応してくれるといいのですが。Macは画面が大きくて映りがやはり綺麗だし、バッテリーがかなりもつので、電視観望用途で改めてWindows  PCと比べると、かなり使い勝手がいいです。この日の準備はサクサクっと、10分もかからなかったでしょうか、M27を入れて声をかけると人が集まってきました。

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といっても、この日のお客さんの数はそれほど多くはなく、全部で10人程度だったでしょうか。途中天気がいいのでもっと集まるかと思ったのですが、意外に少なかったです。Stellariumを使って、M27がどれくらいの大きさかを実感してもらいます。Stellariumで見える夏の大三角と、実際の空で見える夏の大三角を比べてもらい、M27の位置と大きさをStellarium上で確認してもらいます。Stellariumには今使っている鏡筒の焦点距離とカメラのセンサーの大きさを入力することで 、今見えている画角をStellariumの画面上に赤い四角で示すことができます。その資格の範囲をM27に合わせてStellarium上での見えたものと、実際の電視観望でSharpCap上に見えた形がほぼ一緒なことがわかると、見ている画角の実感が湧いてきます。M27はM57とかに比べたらかなり大きいのですが、夏の大三角の大きさと比べるとそれでも目で見るには小さすぎることもわかります。それを口径わずか3cmの、ミニ三脚とトラバースに乗せた、すぐに蹴飛ばされそうな地面に転がっている小さな望遠鏡で見ているというのが、これまたインパクトがあります。

Stellarium上でちょうど北アメリカ星雲が見えたので、次は北アメリカ星雲に移ります。北アメリカ大陸の形をネットで画像検索すると、皆さんすごく納得していました。でも、なぜが画面に映る北アメリカ星雲がいまいち見栄え良くありません。今環境ならもっとくっきり見えていいはずなのにと思って、改めて空をよく見たら少し雲がかかり始めています。「あー雲が出てきてますね。」とか言っていたのも束の間、雲がどんどん濃くなり、ライブスタックでも星を認識できなくなったようで、画像をドロップし始めました。

かんたろうさんが「ドブでまだM27が見えている」と言っているので、眼視と電視観望と比較してもらおうと思い私の方でもM27を入れたのですが、もうかなり見えにくくなっています。私がM27を入れている間に「眼視の方で確認してきてください」と勧めたお客さんも、結局眼視でも見ることはできなかったみたいで、それ以降は雲が一面を覆ってほとんど何も見ることができなくなってしまいました。


ちょっとだけ土星

かろうじて東の低空がまだひらけていたので、ちょうど出始めていた土星を見てもらうことにしました。2つ穴ファインダーのスコープテックで導入しますが、かんたろうさんの45cmドブの方が導入が早くて「負けたー!」となってしまいました。敗因はちょっと雲がかかっていたので土星もそこまで明るくなく、二つ穴ファインダーだと穴を通して見るには少し辛かったことです。かんたろうさんの星座ビノファインダーは多少なりとも倍率があり明るく見えるのが有利なのだと思います。

土星は口径6cmの屈折でも、小さいながらもまだ綺麗に見えました。輪っかもかなり細いですが、きちんと見えています。その土星も程なくして見えなくなってしまい、もうまったりモードで話し始めます。


ゲストがお二人

この日は飛騨地方のFMラジオ曲のアナウンサーの方が来ていました。事前情報によるとかなり綺麗な方らしいのですが、真っ暗な中なのでほとんど認識できず。まあ、天文あるあるですね。今回は赤道儀の使い方を学びたいということで来てくれたのですが、あいにくの天気で次回以降に持ち越しです。この方、星空案内人の資格を持つほど星好きな方で、近くの近くの道の駅にある「カミオカラボ」にも行って、ラジオで紹介したりしているとのことです。
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というわけで、この日のもう1人のゲストはそのカミオカラボの解説スタッフの方です。ご存知の方も多いかと思いますが、この飛騨地方は山の中に宇宙物理の一大研究施設群があり、このカミオカラボでは展示されている実験装置などを通してその内容を知ることができます。この方、物理出身とのこと。私も物理出身なので、天文界隈での肩身の狭さについて妙に話が合って、ずいぶん盛り上がりました(笑)。


天体写真で盛り上がる

雲がかかってからは、そのゲストお二人と、来てくれていたお客さんも一緒に、かんたろうさんの「何か見せるものないの?」という提案で、天使観望用に使っていたMacをテザリングでネットワークに繋ぎ、私がブログにあげた写真を見ながら、会話を楽しみました。今回見たページはこのブログのトップバーからもリンクが貼ってあるここ「Nebula」になります。


このページは私がこれまで撮影した天体をまとめてあります。

メシエ順、NGC順、IC順とかになっていて、一番最初のM1:カニ星雲はここ飛騨コスモス天文台に以前据え付けてあった口径25cm、焦点距離3000mmのニュートン反射型鏡筒で撮影したものなので、この場で見せると臨場感があります。

M27:亜鈴状星雲はこの日電視観望でも見えていたもので、露光時間を増やすと蝶の羽みたいな模様があることを説明します。かんたろうさんは眼視で見た時にどうやって導入するかを解説してくれました。「や座」の先端の星から90度曲がると導入できるとか、近くに小カシオペアの「W」の字が見えるとかです。ちょっと電視観望がどうなっているか見てみたら、雲が少し薄くなったのか、かろうじてですがM27が映っています。電視観望だとリアルタイムで見ることになるので、実際に見ている方向を望遠鏡が指している方向で確認するなど、こちらも臨場感があります。電視観望の画像では、上の画像にもあるような、小カシオペアのWの上の3つの星が見えているのがわかりました。

M31:アンドロメダ銀河の所では「今日晴れていたら肉眼で見えるかアンドロメダ探しができたのに...」とか、M45:プレアデス星団とその拡大図のところでは、スバルのことを知っている人も多くて「青色が綺麗
!」とかの感想が聞こえてきました。

他にも馬頭星雲魔女の横顔など、名前と星雲の形を比べることで皆さん興味を持ってくれるようです。M78星雲のところでは鉄板のウルトラマンの故郷の話をして、元々はM87の設定だったこと、M87がブラックホールでジェットが出ていて、ジェットもかろうじて見えたことなどにつなげます。

おとめ座銀河団のところではアノテーションの画像を見せて、なぜ乙女座の方向に銀河がたくさん見えるのかをクイズとして出しました。お客さんはもちろん、ゲストのお二方にも考えてもらいました。答えは「天の川の方向は星がよく見える」ということですね。逆の言い方をすれば、「天の川のない方向には星があまりないので、『星に邪魔されずに』銀河がよく見える」ということです。物理の人ってあまりこういったこうとに興味がないことも多くて、カミオカラボスタッフの方も答えられませんでした。私も星を始めてから得た知識です。ここからさらにかんたろうさんが、「おとめ座は春の方向ですが、じゃあなぜ秋の星座の方向には銀河があまり見えないのでしょう?」というクイズを出してくれました。これは私も知らなくて聞いてみたら「我々の銀河はおとめ座銀超河団(局部超銀河団ともいうらしいです)に属しているけれどもかなり端の方にあり、よく銀河が見える方向がその銀河団の中心方向、反対側はさらに端の方を見ていることになる」ということでした。さすが天文暦30年以上というだけあって、かんたろうさんは色々知っています。


結局晴れずに撤収

天体写真を見ながらの話が散々続いたのですが、それぞれの写真のところで色々話が盛り上がるので、結局小一時間話していたことになるでしょうか。最後アイリス星雲の写真で「アイリスはあのアヤメのアイリスか?」という質問が出たりで、締めとなりました。最後に「星が見えなくても、こうやって話を聞けると来た甲斐がある」というようなことを言ってくれた人がいました。天体写真だけでこれだけ長く話すことはあまりないのですが、私も意外なほど楽しめました。

21時半頃だったでしょうか、その頃にはうっすらと星が見えている方向もありましたが、結局観望するまでには至りませんでした。一部の人には星座ビノを使ってもらって、雲があっても方向によっては目で見えない星が星座ビノだと見えるということを実感してもらいました。

その後も晴れることはなく、ずっと厚い雲のままで、お客さんも少なくなってきて、22時には撤収となりました。前回の「謎の鳴き声事件」と次の日の昼間の「隣のグランドでの熊目撃事件」のこともあるので、少人数で長居するのはちょっと怖いです。

帰り道、夕飯を食べてないことを思い出し、自宅近くの24時間営業のすき家で「月見すきやき牛丼」の大盛りを食べて満足して自宅に戻り、富山の空も曇っていることを確認してすぐにベッドに潜り寝てしまいました。今年は雨も多く、なかなか晴れてくれませんね。


まとめ

せっかくの観望会でも曇り空でほとんど見えなかったですが、天体写真を用意しておくと、それだけもかなり盛り上がります。その際、画面はできるだけ大き方がいいでしょう。今回はMacBook Proだったので、そこそこ大きな画面でした。Macはバッテリーの持ちが長いので、電視観望していても、それを切り替えて他の目的に使ったとしても、あまり気を使う必要がなく長く使えるのがいいです。


この日は久しぶりの観望会です。でも元々の天気予報では全くダメそうで、当日近くになって夜遅くから晴れると言う予報に変わりました。と言っても、Windyで見る限り上層の雲が広範囲に渡って広がっているようなので、あまり期待はできません。もし夜中に晴れてあわよくば撮影と思って、ε130Dを用意してはいきましたが、結局使えなかったです。


ドームの修理

観望会は別として、ドームが長らく故障てしていて使えないので修理をする必要があるのですが、冬だったり体調を悪くしたりで長らく行けていないので、天気のこととは別にとりあえず現地に行くことにしました。気温が心配でしたが、ドライブ中も現地についてからの作業中もずっと雨が降っていて、そこまで暑くなかったのがラッキーでした。

今回の修理ポイントをメモがわりに書いておきます。
  • 昨年交換したモーター周りの仮配線を、圧着スリーブできちんと接続しました。ただ、Amazonで安いものを買ったので、圧着がいまいちなようで、機会があったら再度交換した方がいいかもしれません。でも少なくとも仮止めよりは全然マシです。
  • もう一つは、電磁開閉器と呼ばれるスイッチで、リレーでスイッチが入れるものです。SC-03という型番で1bと呼ばれるNC(Normal Connected)タイプで、本来は奥下の2つの端子に電圧をかけることによりスイッチが開閉します。その際は左下2つの端子間に100Vがかかってリレースイッチが作動するのですが、どうもここに100Vが出てきません。
結局今回はこのSC-03のリレーの動作不良という判断で、交換することにしました。Amazonにも在庫があったので、次回来たときに交換します。


寂しい観望会

作業をしている最中に、スタッフのSさんが到着しました。その後まも無くしてかんたろうさんも到着です。ただ、空は所々青いところも見えますが、全面に薄い雲がかかっているような状態です。 Sさんによると、他のスタッフは今日は体調不良などで不参加とのことです。

雲越しでも多少なりとも星は見えるかと思い、35mmのF1.4のオールドNIKKORレンズとASI294MCで広域電視観望を試しました。雲もまだまだありましたが、最初にアークトゥルスが見え、次にベガが見え、そのうちに薄雲のところはたくさんの星が見えてきました。広域電視観望だとこと座の形もはっきりわかります。この頃には目で見ても夏の大三角が見えるくらいには雲が薄くなってきました。そこでいつものFMA135+Uranus C+トラバースでミニマム電視観望です。かんたろうさんも45cmのドブソニアンを出します。

ただ、この日は午後は雨で夕方暗くなる直前くらいからだんだん薄雲程度になってきたくらいで、こんな日はお客さんは少ないです。近くの人が多いので、その日の空を見てくるかどうか決めるのかと思います。残念なことに、結局お客さんはゼロでした。まあ、ドームの修理があったのでやることはあったのですが、少し寂しかったです。

その時に見たのがM57とM27、北アメリカ星雲と、網状星雲などです。M57と網状星雲はかんたろうさんのドブソニアンでも見比べることができました。他にもかんたろうさんがまばたき星雲を見せてくれました。なぜ「まばたき」なのかその時はわからなかったのですが、調べてみたらそらし目で見ることができるとか。次回もし見せてもらえたら試してみたいです。

今回見えたものです。薄雲越しなので、星が滲んでしまいますが、それでも十分形が認識できるくらいには見ることができます。

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曇ってましたが、雲さえなければ透明度は良かったようです。

見えなくなる直前に向けたアンタレス付近でM4も下のほうに綺麗に見えています。カラフルタウン狙いでしたが、青いところはもう少し上でした。カメラの向きを変えて縦向きにして入れようとしましたが、その時にはすでに曇っていました。
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熊 !?

そんなこんなで、徐々低空からにガスってきて、そのうちほぼ全面見えなくなってきました。感度のいい電視観望でもほぼ全く何も見えなくなったので、まったりモードで3人で話し始めていました。するとドブソニアンの向こうくらいから「ガーッ」という、少なくとも可愛い動物とは思えないような声が聞こえてきました。初めて聞いた声で、多分猪とかではなさそうです。流石に怖くなったのと、せっかくの新月期ですがもう星は全く見えていなかったので、すぐに片付け始めて退散の準備です。私は広域電視観望とミニマム電視観望だけだったので、10分もあれば余裕で片付きます。かんたろうさんも45cmと大きいのに、意外なほど片付けは早いです。私が片付けてから10分か15分後にはすっかり片付いてしまいました。

そこにいても怖いだけなので、3人ともそのまま退散です。時計を見たら22時10分くらいだったでしょうか。自宅に着いたらまだ家族も起きていて、謎の声の話をしたらビックリしていました。


エピローグ

次の日、Sさんから連絡があり、昼に同じ場所で熊が目撃されたそうです。クマはどうやら鳴くことはあまりないとのことなので、昨日の声は違うのかもしれませんが、それでも万が一だとかなり怖いです。退散で正解だったと思います。今思い出しても怖いです。

富山県には「クマっぷ」と言うのがあり、目撃件数や場所などがわかるのですが、今年は同時期の例年よりも多く目撃されているようです。飛騨の方まで山続きなので、そこまで比率は変わらないと考えると、少し注意した方がいいかと思いました。そういえば富山県天文学会の前会長が生前、観望会の時は必ず車のオーディオを大音量で鳴らしていました。特に一人や少人数の時には、それが正解な気がします。

X上で、めだかと暮らすひとさんがACUTERのトラバースを購入され、SynScanに接続できることをこの「ほしぞloveログ」の過去記事で気付いたそうです。



Samからのコメントとして「トラバースってBluetoothでも接続できるから便利ですよね」とか返したのですが、「SynScanも?」と返ってきました。そうです、Bluetoothで接続できるのは専用のAcuter Skyだけなんですよね。以前試した時の記事が以下になります。


上の記事の中にも書いてあるのですが、Bluetoothで接続できると何がいいかっていうと、Wi-Fiが空くのでネット環境に別途接続できるのです。Wi-FiでトラバースとかAZ-GTiに繋いでしまうと同時にネット接続ができなくなるので、調べ物とかするのに別の端末が必要になってしまいます。AZ-GTiはWi-Fiしかないのでこの点不便でしたが、トラバースはBluetoothがあるので、SynScanアプリでもBluetooth経由で接続できるとかなり楽なのです。

めだかと暮らすひとさんに返事を返す前に、せっかくなので何か状況が変わっていないか試してみることにしました。


接続方法

実際に試してみたら、少しクセがありますが一応成功しました。手順を書いておきます。
  1. まずはiPhoneの「設定」->「Bluetooth」から、トラバースにBluetooth接続することを試してみます。でもどうやってもそれらしい機器の名前が出てきません。一筋縄ではいかないようです。
  2. 次に、Acuter skyを立ち上げ、アプリ内の「セットアップウィザード」->「アプリとマウントを接続」から「Bluetooth LE」で接続すると、Mount__ca35という機器名が見え、問題なく接続できてリモートでトラバースを操作できるようになります。(LEって何だと思って調べたら、Low Energeyのことで、「省電力かつ省コストで通信や実装を行うことを意図して設計されている」とのことでした)
  3. この状態でiPhoneの「設定」->「Bluetooth」を見ると、トラバースと思われる機器名(ESP32)が現れていて、接続済みであることがわかります。
  4. 次に、SynScan Proの「設定」->「接続の設定」から「BLE」を選びます。(下の画像1枚目)
  5. 最後は、普通にSynSan Proの上部の「接続する」を選ぶと、そのまま接続され、実際に操作ができるようになるはずです。(下の画像2枚目)
  6. この状態でAcuter skyを閉じても、Bluetooth接続は維持され、SynScan Proでの操作はそのまま継続されます。SynScan Proを落とすと同時に、iPhoneの設定から行くBluetooth設定画面から「ESP32」は消えます。ですが、一旦接続すると覚えているようで、これ以降はAcuter skyを立ち上げなくても、iPhoneの設定から行くBluetooth設定画面からESP32の名前が見えなくても、たとえ一旦トラバースの電源を落としてふたび入れ直しても、SynScan Proを立ち上げて接続しようとするとそのまま接続できるようです。
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その他:
  • 最初はiPhone Xで試しましたが、同様のことは2台のiPadでもできました。ただし「ESP32」という名前は出てきませんでしたが、接続自体はできました。
  • SynScanもSynScan Proも同様の振る舞いでした。
  • SynScanアプリは古いバージョンだとBluetoothをそもそもサポートしていないので、最新版を使うようにしてください。

PCからのBluetoothでの接続

iPhone上のSynScan Proからできたので、普通にPCからもできるかと思ったのですが、よく考えたらPC用のAcuter skyはありません。いろいろ試してみましたが、結論としては今の所PCとトラバースをBluetooth経由で繋ぐ手段はなさそうです。以下、試したことです。
  • Windwos10のSURFACE8だと、Bluetooth画面でMount__ca35という名前が見えますが、接続しようとしてもうまくいきませんでした。
  • Windwos11のSURFACE9だと、Bluetooth画面ではトラバースと思われる機器名は現れません。
  • 次の手として、PC上でAndroidエミュレータを試しました。Acuter skyは立ち上がりますが、ほぼ全てのエミュレータがBluetoothをサポートしていないため、 Bluetooth経由では接続できませんでした。
  • Bluetoothをサポートしているエミュレータも一部にありましたが、10年ほど前の有料のものか、無料だとLinux版のみでWindows版はないようです。 

というわけで、少なくとも私の環境ではWindowsからの接続は無理でしたが、他の環境ではまだ可能性はあるかもしれません。どうも今の所は専用アプリからしか見えないような、ステルス的な扱いのようです。そもそも原理的に接続は難しくないはずなので、SynScanアプリでもBluetooth接続を正式に対応してもらえると、ユーザーとしてはメリットしかないと思うので、とてもありがたいのかと思います。

結論としては、今のところPC上のSynScanアプリはWi-Fi経由でトラバースに直結するしかなく、もしSynScanアプリを使ってトラバースをリモートで操作したい場合は、トラバースをステーションモードで動かして自宅ルータや屋外のモバイルルータなどにWi-Fiでつなぎ、PCも同じLAN内に繋ぐなどの工夫を必要とするところは、これまでと変わらないということです。


まとめ

そもそも、トラバースのBluetooth接続がSynScanアプリで可能というような情報は、日本語と英語で探した限り見つかりませんでした。なので、今回のこの情報自身が初出の可能性大です。もしかしたら、中国語では出回っている情報かもしれませんが、中国語はわからないので私には確かめようがありません。

少なくともiOSではBluetoothでSynScanアプリと接続できてしまうので、できることならPCとも接続できるようになるととても助かります。具体的には、リモート接続時にトラバーサのWi-Fiでステーションモードにする必要がなくなるので、切り替えがよりシンプルになることが期待されます。

今回は短めの記事でしたが、最近のシュミットさんのトラバースの特価攻撃で陥落してポチった人がたくさんいるようなので、少しでも役に立てばと思いまとめました。せっかくなので、トラバースのBluetooth接続の敷居を下げていただいてもっと便利になると、さらにポチる人が増えるのではと勝手に想像しています。


SharpCapのバージョン4.1.11226 (10月30日) 以降から、独自のビルトインのプレートソルブ機能「SharpSolve」が搭載されました。これでもう、外部のプレートソルブソフトをインストールする必要がなくなります。不安定だと思われていたトラバースを使って試してみたので、記事にしておきます。


設定方法

使い方ですが、 メニューの「ファイル」SharpCapの設定画面を開き、「プレートソルブ」タブを選びます。
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  1. 「プレート解析エンジン」のところで「SharpSolve(SharpCap's built in plate solver)」を選びます。もしこの選択肢が出てこない場合は、SharpCapのバージョンが古いことが考えられますので、今一度バージョンが4.1.11226より新しいかチェックしてみてください。バージョン番号はSharpCap画面の一番上のところに表示されています。
  2. 焦点距離は自分が使っている望遠鏡の値を正しく入れてください。
  3. 解析範囲が視野角で0.5度以上の場合はもうこれでOKですが、もし0.5度以下の視野で解析したい場合は、インターネットに繋いだ状態で「インデックスファイルのダウンロード」を押してください。ネットの速度にもよりますが、1分程度でダウンロードが終わり、その後「0.25度」が選択できるようになります。
設定はせいぜいこれくらいです。実際に試してみましょう。


SharpSolverのテスト

今回架台は経緯台のトラバースで試しました。以前ASTAPやASPSでプレートソルブ試した時に、AZ-GTiに比べてトラバースだと明らかに不安定なことがあり、その後コントローラーソフトのSynScan Proを最新版にしてAZ-GTiもトラバースもかなり安定になったという経緯があります。このトラバースで動くなら、おそらく他の架台だとほぼ問題なく動くでしょう。

適当に初期アラインメントをします。画面に星が表示されますが、最初の導入なのでおそらく方向は正確ではないはずです。今回もベテルギウスを導入したつもりが、全然画面内には来ていません。試しにまずはここでASTAPを実行してみました。

ASTAPでの恒星の認識はうまくいくときはうまくいくのですが、たまに(方角や、星の見え方によって)全くうまくいかない時があります。こんなときは代わりにプレートソルブエンジンをASPSに切り替えてその場を凌いでいたのですが、ASPSは解析するのに時間がかかってじれったいのと、ASPSでもうまくいかないことがあって、そんな場合は見ている方向をわざと変えてやって認識させたりしていました。

このSharpSolveはかなり優秀みたいで、今回たまたまASTAPでうまく認識できなかったのですが、SharpSolveに変えたら全く問題なく認識できました。しかも認識の速度がかなり速いです。ASTAPもそこそこ速いと思っていましたが、SharpSolverはそれ以上の速度です。

うまくいくと以下のような画面になり、何度くらいずれていたがが出てきます。
02_PS_setting_success

今回は2.23度ずれていたとのこです。赤道儀や経緯台をSharpCapに接続しておいて、このずれを架台にフィードバックして課題の向きを補正することで、架台が今向いていると思っている方向と、実際に向いている方向を自動的に一致させます。

ちなみに、「プレートソルブ」という単語の意味は、「今見いている視野の方向を計算して求める」ということに過ぎず、架台の方向を補正するという意味は含まれていませんが、最近では「方向の補正」まで含めてプレートソルブという単語で表すことが多くなってきていますね。


まとめ

今回はSharpCapの新機能「SharpSolve」でプレートソルブを試しましたが、安定性、速度はこれまでのプレートソルブソフトを凌駕しています。トラバースでも全く問題なく動いたので、かなりのものでしょう。これでトラバースでの電視観望が完全に実用レベルになったのかと思います。

まだSharpSolveを試していない方は是非とも試してみてください。


プレートソルブトラブル解決集の続報です。今回はある意味決定版になっています。前回あやふやにし解決できなかったことが、かなり確実に解決できるようになりました。




SynScan Proの最新版

2023/9/2にSynScan Proの最新版(v2.4.5)がリリースされました。リリースノートによると、今回のバージョンアップでプレートソルブ関連で以下のような改善をしています。
  • Re-enabled PAE, where were disabled from 2.3.4 to 2.3.9
  • Replaced "Align with Sync" page with "Sync samples" page.
  • Multi-star alignment, where performing any of the following adds a sync sample:
  • Using one of the alignment methods from the Alignment page
  • Centering on a celestial object at the prompt after any catalog object GOTO
  • Receiving a `SyncTo` command from ASCOM with a plate-solving software
これは2022年9月にバージョン1台からバージョン2台になって以来、初めてのプレートソルブ関連の大きな改善です。バージョン2以降では、上に書いてある2.3.4でPAE(調べるとPointing Accuracy Enhancementとのことです)をオフにしたことが唯一の変更で、それも今回戻してあるということなので、それを含めて初の大きな改善となるということです。

現実に、バージョン1台でそこそこ安定だったプレートソルブ関連は、バージョン2台で不安定になりがちでした。そのため、プレートソルブを試す際は、まずは手持ちのSynScan Proを現段階で最新のv2.4.5以降にすることをお勧めします。実際に、今回かなり安定な状況を実現できています。

また、最新のSynScan ProではPCに接続されたゲームコントローラーでAZ-GTiが動かせるそうです。私はまだ試していませんが、Xbox互換、PS3互換のものが使えるそうなので、興味がある方は一緒に試してみるのもいいかもしれません。

あと、SynScan Proではなく、ただのSynScanもアップデートされていますが、こちらはProを単に機能制限しただけのようなものです。その機能制限の中にはワンスターアラインメントなどあって然るべき機能も含まれて制限されてしまっているので、私は今はProの方しか使っていません。SNS上には、Proでない方でどうしても解決しなかったトラブルが、ショップの方の助言でProにしただけで一発で解決したという例もあるみたいなので、何か理由がない限りPro版を使う方がいいのかと思います。


接続の確認

今回の動作条件は、AZ-GTiを使ったプレートソルブをするために、PCにSynScan ProとSharpCapがインストールされていて、それぞれをASCOM環境で接続するためにASCOMプラットフォームがインストールされていることとします。プレートソルブはASTAPもしくはASPSを使います。最新のSharpCapではPlatesolve3もサポートしているので使えるかもしれません(私はまだ未検証)。

1. SynScan ProとAZ-ZTiの接続

まずはSynScan ProとAZ-ZTiの接続がきちんと確立されているか確認します。接続方法はデフォルトのWiFiを使っても、オプションのケーブルを使った有線でも、どちらでも構いません。プレートソルブをするためには「PC上の」SynScan ProとAZ-GTiを接続することが必要で、最初はスマホやタブレットのSynScan Proでの接続でも構いませんが、プレートソルブ時、より正確にいうとSharpCapと接続する時にはPC上で動いているSynScan Proとの接続が必要になります。

経緯台モードか赤道儀モードかはどちらでも構いません。自分が設置している状態に合わせてください、どちらのモードでも正しくプレートソルブができます。

一つ重要なことが、緯度経度情報が正しく入っているかです。SynScan Pro上で「設定」から「位置情報」を見て、きちんと緯度経度が入力されている確認します。

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PCはGPSを持っていないので、位置情報を自動的には取得できないことが多いです。GPSを持っていなくてもインターネットから位置情報を獲得することもできますが、正しい位置にならない場合もありますので、自分で数値で確認するのが確実です。ここが大きく間違っていると、プレートソルブも初期アラインメントも全然違った方向に行ってしまいます。関連した注意ですが、最初スマホやタブレットのSynScan Proに接続して正しい位置情報が入っていると思っても、PCに切り替えた時にはその情報は引き継がれません。なので、PC上のSynScan Proで位置情報を確かめるようにしてください。


2. SharpCapとSynScan Proの接続

次にSharpCapとSynScan ProをASCOM経由で接続します。ASCOMプラットフォームはASCOMのページから、SynScanアプリ用のASCOMドライバー(2023/9/11現在、2023/9/3のv1.4.0が最新)はSkyWatcherのページからダウンロードしてインストールしてあるとします。

SharpCapの「設定」の「ハードウェア」から「SynScan App driver」を選び、メイン画面右の「望遠鏡制御」の「接続済み」をオンにします。正しく接続されると、AZ-GTiが向いている方向などの数値が出てきます。一つ確認しておくといいのは、その数値が時間と共に動いているか、PC上のSynScan  Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、その数値と合っているかを見ることで、きちんと接続されているかがわかります。実際、以前のバージョンでは数値が動かなかったり、全部0だったりして、接続できたように見えてもうまく接続できていないことが何度かありました。今のところ、最新バージョンのSynScan Proでは接続に失敗したことはありません。


SharpCapのプレートソルブの設定

接続がきちんとできていたら、次はプレートソルブの設定の確認です。まず、SharpCapの「設定」「プレートソルブ」画面を見ます。

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ASTAPもしくはASPS、もしくはその両方がインストールされているでしょうか?インストールされている場倍は、上の画面のように下の方にFoundとかでますが、まだインストールされていない場合は、どちらか、もしくは両方ともインストールしてください。「プレートソルブアプリケーションの選択」で選択することも忘れないでください。お勧めはASTAPですが、たまにASTAPだと解決できなくて、ASPSだと解決できることがあります。でもASPSは遅いので私は普段使いはASTAP、どうしてもダメな時はASPSとしています。

重要なことの一つ目は、焦点距離がきちんとあっているかです。これが実際の鏡筒と大きく間違っていると、どうやってもプレートソルブで位置解決ができません。

重要なことの二つ目は、下の画像のようにSynScanとの同期方法を4つ目の「マウント位置をオフセットして、天体位置を中央に配置する」を選ぶことです。これまでは2つ目の「マウントを同期し、天体を中央に再配置する」にしてたのですが、SysScan Proが反応せずAZ-GTiが動かないことがありました。4つ目のオプションは今のところほとんどの場合AZ-GTiをきちんと動かせています。

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初期アラインメント

準備ができたら、初期アランメントの最中にプレートソルブを試してみましょう。まずはSynScan Proから「アラインメント」を選びます。1スターアラインメントで十分でしょう。出てきたリストの中から、今見えているわかりやすい星を選び、そのまま導入します。今回は木星を選びました。

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SynScan Proがターゲット天体に向くまでに、ターゲットまでの差が角度で表示され、数字がどんどん小さくなっていきます。SynScan Proがターゲットの方向に向いたと思い込んだ時に下のような画面になります。

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ここで、SharpCapの画面にターゲットの星が出て来ればいいですが、出てこない場合はプレートソルブの出番です。上の画面で書いてある「マニュアルで中心に」というのの代わりに、「プレートソルブで中心に」持って行ってやるという意味です。なのでこの時点ではまだ、完了をSynScan Proに知らせる真ん中の「星印の横長ボタン」を押してはいけません


プレートソルブの実行

プレートソルブはSharpCapのメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。

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うまくプレートソルブが下位を見つけると、どれだけずれていたかの表示が角度で緑色のバーのところに表示され、自動的にターゲット天体が真ん中に来るようにAZ-GTi下に信号が送られて、下の画面のように実際にターゲット天体が導入されます。

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問題はこうならない時です。いろんなケースがあります。まず、以下のようにNo solution foundと出る場合です。2つの原因が考えられます。もし下の画面のように望遠鏡接続のところの数値が明らかにおかしい場合は、SharpCapとSynScan Proとの接続がうまくいっていません。再度接続しなおしてください。再接続でエラーなど出る場合は、SynScan Proをいったん閉じて再度開いてから、SharpCapから接続してみてください。

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接続がうまくいっているはずなのにこのエラー場出る場合は、あまり追求せずにターゲット天体を変えてみてください。一度この状態でできる限りのことをやったことがあるのですが、結局どの試みも失敗し、最後あきらめがてらターゲット天体を変えたら、今までの苦労は何だったのかというくらい、一発でプレートソルブが成功しました。なので最近はこのエラーが出たら無駄なことはせずに、素直にターゲット天体を変えるようにしています。

上の問題が解決した時に、次によく出るエラーが、下の画面のような星が「多すぎる」とか「少なすぎる」とかいうものです。でもこのエラー、SynScan Proを最新版にしてから「多すぎる」というのは見なくなりました。今のところだけかもしれませんが、改善されたのかもしれません。星が「少なすぎる」というのは、プレートソルブをうまくやろうとしているが、取得した画像のクオリティが悪い場合に出てきます。雲が多い、空が明るすぎて星がよく見えないなどです。この場合は露光時間を延ばすとうまくいくケースが多いです。

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ただし逆に、露光時間を延ばしすぎてうまくいかないこともあります。例えば星が流れてしまう場合です。私は5秒程度が最もうまくいっています。どれだけ星が流れるかは、AZ-GTiの水平出しの精度、見ている方向などによりますので、取得した画面で星が明らかに流れていないか確認してみてください。星が流れない限りは、露光時間は長いほうが有利です。

このエラーが回避されれば、あとはうまくいくでしょう。自動的にAZ-GTiが動き出し、ターゲット天体が画面真ん中近くに来るはずです。


初期アラインメントの完了と、次の天体の自動導入

プレートソルブがうまくいったら、初期アラインメントのマニュアルで中心へもっていくことが完了したことになります。SynScan Proに残っていた初期アラインメント画面の真ん中の星印バーを押すのを忘れないでください。これでプレートソルブを利用した初期アラインメントは完了です。実際に見てみたい天体をSynScan Proから自動導入してみてください。

さて、初期アラインメントで導入したターゲット天体の近くの天体を自動導入する場合は、特に問題なく画面真ん中らへんに来るかと思います。

ところが、遠くの天体を自動導入する場合は画面内に入らないこともあるかと思いますが、その場合もプレートソルブをしてみてください。設定などはうまくいっているはずなので、今度は特に問題なく真ん中に導入されるはずです。ただし自動導入でプレートソルブをしたとしても、AZ-GTiが認識している(遠くに移動した誤差のために間違って認識されている)位置がアップデートされるわけではないです。そのため、次の天体がもし今導入したものの近くにあったとしても、同じような誤差のために画面内に入ってこなくて、再度プレートソルブをする必要があるかと思います。そんな場合はSynScan Proでアラインメントを選んで、今見ている方向の近くにある星でアラインメントを取り直してみてください。同じように「マニュアルで中心に」と出たところで再びプレートソルブをして、うまく導入されたら初期アランメントを完了して、SynScan Proが認識している位置をアップデートしてみてください。こうすることで、その付近の天体の自動導入できちんと画面内に入るようになるはずです。


トラバースの場合

今回AZ-GTiだけでなく、少し前に発表されたSynScan仲間のトラバースもじっくり試してみました。



上の記事でも少し書いていますが、この記事で試した次の日の観望会でも接続やプレートソルブにトラブルがありました。その後自宅などでも何度か試していたのですが、うまくいく時とうまくいかない時の差がかなりあり、観望会本番で使うのは少し怖いという印象でした。少なくともAZ-GTiと比べると安定度の差はあったかと思います。

ところが、今回SynScan Proのバージョンを最新のものにアップデートしてからは、トラバースで以前経験したようなトラブルは今のところ一切なくなっています。少なくとも、もうAZ-GTiとの差は感じられないレベルの安定度です。

まだ何度か検証する必要はあるかと思いますが、観望会での実戦投入も含めて、実際に使っていけるレベルかと思いますので、今後どんどん活用していきたいと思います。


これ以降は、古いバージョンのSynScan Proで試したことも含めた補足記事です。ほとんど役に立たないと思いますが、参考がてら載せておきます。

Device Hubは関係なさそう

(古いSynScan Proで)AZ-GTiとトラバースを交互に使用するなど、複数台からの接続がうまくいかない場合、ASCOMのDevice Hubを使うといいという情報を得ました。Device Hubは複数の各機器のASCOMドライバーを管理し、接続を制御するという中間的なハブの役割をするものです。ダウンロード場所が分かりにくかったのですがここになります。



前回不安定だった状況を再現し、それがDevice Hubで解決するか試しましたが、残念ながらSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appに直接つなぐ方法と、Device Hubを通してSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appにつなぐ場合では、明確な違いを見ることはできませんでした。


SynScan Proのバージョン

PC上のSynScan Proですが、最新より少し前の2.3.9と(私が持っている古い)1.9.20では明確な違いがありました。今回のSynScan Proの最新版で再びオンにしたというちょっと謎のPAEに関連するかもしれません。 SharpCapから接続してAZ-GTiを動かすことまでは両方とも問題なくできます。ですが、プレートソルブになると2.3.9でAZ-GTiにフィードバックしようとするところまでは行きますが、どうやってもAZ-GTiが反応しないことがありました。それを1.9.20にしたところ、何の問題もなく動くことが何度かありました。1.9.20の方がどうも安定に動くのは確かなようです。

このことは、私だけでなくほかの方も同様の指摘をされていたので、偶然とかではないと思います。最新のSynScan Proのリリースノートにあったように、PAEをバージョン2台のどこかでオフにして再び最新版でオンにしているというので、もしかしたらこれがバージョン1台とバージョン2台の安定性の違いに関係していたのかもしれません


プレートソルブトラブルの振る舞い

もう一つ気づいたことがあります。プレートソルブの最初の段階ですぐに「星が多すぎるのでは」とかのエラーが出て全く動かないときですが、どうも探索範囲が毎回15度程度で止まってしまいこのエラーが出ます。うまくいかない時は、SharpCap上で認識されている鏡筒の向きと、撮影した画像が実際に向いている向きとで大きな違いがあるときに、このエラーが出るようです。問題は、実際にはSynScan Pro上では目標天体の近くを向いていると認識されていても、SharpCapがSynScan Proとうまく接続できていなくて、SharpCap上では全然違う方向を向いていると認識された場合は、このエラーが出るようです。

このエラー、SharpCapのメニューからプレートソルブ実行時に選択できる2つのうちの2つめの「同期までしようとする」とすぐに出るのに、一つ目の「同期せずにプレートソルブだけ試す」と出ないこともあるので、どうも同期までしようとすると15度までの探索とかの制限がかかっているからのかもしれません。

その時やらかしたのですが、SynScan Proの緯度軽度情報を間違っていたり、前回の情報が残っていたりで鏡筒のホームポジションがずれていた場合など、そもそもSynScan Proの方が実際の向きと大きく乖離していると、同じ状況に陥ります。色々触っていると、意外に何度かSynScan Proの段階で間違っていることがありました。この場合、SharpCapといくらうまく接続できていてもダメみたいです。このことの自戒も含めて、今回の記事では注意事項にそのようなことを入れています。


まとめ

今回のSynScan Proのアップデートは、AZ-GTiのプレートソルブに関してかなりの改善がなされたように思います。実際、セレストロン系の赤道儀でこれまでプレートソルブで不安定だったことは一度もなかったので、やはりこれはSynScan系のソフト的な問題だった可能性が高いと思っています。

あと、ASCOMドライバーに関してはアップデートに気づかなくて一つ前の1.3.1を使い続けていましたが、特に不具合は感じませんでした。更新日がSynScan Proとも近いので、もしかしたらアップデートした方がより安定になる可能性もあるかと思います。

あと、これまでのプレートソルブに関するトラブルは、SkyWatcherの代理店であるシュミットさんの方にも何度か報告させていただいていて、今回SynScanおよびSynScan Proがアップデートされた際には、いち早くプレートソルブ関連が改善された可能性があるので試してみて欲しいとの連絡を受けました。私からの報告が実際にフィードバックされたかどうかはわからないのですが、現実にアプリが改善され、連絡までしてもらえたのはとてもうれしく、ショップとしての真摯な対応に感謝したいと思います。また、実際に最新バージョンを試してから記事にするまでに、少し時間がかかってしまったことをお詫びします。

さて、これでAZ-GTiだけでなく、トラバースでのプレートソルブまで実用レベルに達したようなので、カバンの中に余裕で入るミニマムセットでの電視観望をどんどんやっていきたいと思います。

カバンからおもむろに取り出して「実はこれ望遠鏡なんですよ」とか言いたいわけです。小ささにびっくりして欲しいわけです。星雲を見て感動してもらいたいのです。そう、たとえ変な人とか、マニアだと思われようとも。

今回はそんな切なる思い(?)を実現してくれる機器「トラバース」の詳細レビュー記事です。

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見よこの極小組み合わせセット!


祝!トラバース正式発売

サイトロンからとうとう発表されましたACUTERの「トラバース」!!! 2023年7月4日に日本で発売開始、

発売記念キャンペーン価格で7月31日(月)23:59まで27,182円 (税込 29,900円)

とのことです。最小、最安の自動導入経緯台。これまで最小だったAZ-GTiよりもさらに小さいです。

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一昨年前、2021年の小海の星フェスでトラバースのサンプルを見て、そのときから惚れ込んでいました。2022年の小海の星フェスでフリマスペースのブラックパンダさんのところでとうとうサンプルを手に入れ、周参見で初お披露目。まだ正式版になる前のもので少し不安定でしたが、先日とうとう正式版ができたので是非テストしてみてくださいと連絡が入りました。すでにこれまでにテストで何度か使っていて、ブログにも少し登場してきましたが、今回は満を辞しての詳細レポートです。

箱の中身ですが、以下の様なものが入っています。特にバッグが以前の試用版から大きく変わっていて、以前はペラペラのものだったのですが、クッション性のある素材になり、しかもトップが膨らんだ形なので、上に大きなものがくるのにピッタリ合ってます。トラバースは三脚を変更してちいさくしてつかいたいので、このバッグはSWAT+AZ-GTi+Gitzo三脚の方を入れるのに使おうと思ってます。バッグに肩掛けベルトをつけるフックがついていますが、ベルトは入っていませんでした。もしかしたら福島で箱を開けた時とかに落としてしまったのかもしれません。

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箱の中にはトラバース本体が三脚に取り付けられていて、
付属品とマニュアル、専用のバッグが入っていました。


トラバースを選ぶ理由

そもそも、なんでそこまでトラバースに惚れ込んているかです。

これまでずっと電視観望を試してきました。その中で、小口径鏡筒でも電視観望を十分に楽しむことができるとわかってきて、最近は口径わずか3cmのFMA135が主力機となっています。これを最小最軽量「だった」 AZ-GTiに載せて運用していました。最軽量のはずのAZ-GTiですが、370gのFMA135と比べると圧倒的に重いんですよね。今使っているノートPCでさえ900gです。カメラがUranus-Cで180g、三脚も250gくらいの小型のものが使えるので、カバンの中に入れるともう1.3kgのAZ-GTiの重量が目立って重くなってしまい、しかもそこそこの体積なのでカバンの中で大きなスペースをとってしまうのです。

この1.3kgのAZ-GTiがトラバースの650gまで小さくなるのは、カバン(リュクタイプ)に入れて持ち運ぶのに劇的な違いが生じます。というか、これでやっとリュックタイプのカバンに入れようとする気になります。冒頭のようにおもむろにカバンから出す!これがトラバースを待ち望んでいた理由です。

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バラすとカバンの中にコンパクトに収まります。


三脚の交換

さて、トラーバースセットを順に見ていきましょう。まず、今回発売のセットには三脚が標準で付いてきます。あとは望遠鏡を載せるだけでつかうことができるので便利です。でもここは、トラバース本体の小ささを生かすために、三脚を取り替ることにします。付属三脚とトラバース本体は、1本のネジで固定されています。

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「あれ?3本のネジが見える」と思う人もいるかもしれません。本体下面に見えている3本のネジは、どうも水平調整ネジに相当するようで、イモネジタイプで本体に当たって止まっているだけです。3本とも少しだけ緩めて、あとは本体を回転させると三脚から外すことができます。

今回使用した三脚は、Amazonで何年か前に買ったものですが、80kgの荷重まで耐えられるという「本当か」と突っ込みたくなるものです。実際かなりの荷重をかけることができるのは確かですが、上に重いものを載せると先にバランスの方が崩れてくるので、倒れないかが心配になります。転倒防止として、使うときは赤いリングを回して足が180度開くようにします。リングが固いので、どう回るのかがちょっと分かりにくいのですが、力を入れるときちんと回ります。

この三脚ですが、今でも現行であるみたいです。でもよく見ると2種類合って、違いは上部の接続ネジのところです。私が持っているのは、1/4インチと3/8のどちらでも使える便利なもので、外側の3/8インチのネジはバネじかけになっていて、押し込めることができ、中の1/4インチネジでも固定できる仕様です。

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もう一種類のは普通に1/4インチネジがあって、外側にアダプター的に3/8インチをつけるよくあるやつです。バネ式の方が実用上は圧倒的に便利なので、もしこの三脚に興味がある場合はバネ式のものをおススメします。




私のオリジナルアイデアなのですが、この三脚、足にインチネジ用の穴がいくつか空けてあって、端の穴にちょっと長めのネジをはめると、水平出しの微調ができるようになります。TRAVERSEに水準器がついているので、それを見ながらネジを締めたり緩めたりして水平を合わせることができます。ネジは3本つけてもいいですが、2本でも十分実用的です。

一見M6ネジが合うように見えますが、途中ですぐに入って行かなくなります。インチネジが必要なことにだけ注意です。

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トラバース本体

トラバース本体は、単3電池4本で動きます。AZ-GTiでは単3が8本必要だったので、ここだけでも軽量化になりますし、8本用意するのはちょっと大変だったので、4本だと大分楽になります。みなさん興味があるのが、充電式の電池で使えるかどうかなのですが、エネループで試したところ、特に問題なく使えています。どのくらいの時間持つかなどはもう少し検証が必要ですが、2−3時間の使用ではまだまだ全然余裕でした。

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裏側にも電池を入れるところがあり、合計4本で稼働します。

さらに、電池横の電源確認用LEDのすぐ上にUSB-C端子があり、ここを利用してモバイルバッテリーなどから電源を取ることもできます。

積載可能重量は2.5kgということで、AZ-GTiの半分になります。そのため大きな鏡筒は載せることはできません。自分の手持ちだと、FMA135、EVOGUIDE 50ED、FS-60CBくらいでしょうか。FS-60Qだと2.4kgなのでギリギリで、カメラなどをつけると厳しくなってくるかもしれません。しかもバランスウェイトをつけることができないので、重い鏡筒になってくると倒れないように注意が必要になってきます。付属の三脚を一番短く使ったとしても、倒れてしまうとダメージは避けられないので、積載重量には従分な余裕を持って運用した方が良さそうです。

Vixen規格のアリガタを固定するネジと、すぐ横にもう一つネジがついています。こちらは垂直方向の回転を固定するためのネジです。その一方、水平方向の回転はネジなどはなく固定されていてフリーで動かすことはできず、モーターを動かして回転するしかないようです。

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垂直回転台の下に、黒い大きめのギヤが見えます。2021年の小海で初めて見たときはこのギヤが付いていたのですが、2022年のテストモデルではこのギヤの部分は外されていました。製品版では復活したようです。これはタイムラプス用のアダプターを取り付けるときに使うギヤで、平行移動のために使われるのかと思われます。日本では夏に発売されるとのことです。


SynScan系アプリでの接続

操作するためのアプリはSynScan系のものが使えます。SynScan、SynScan Pro、SynScan用ASCOMドライバーなどです。SynScanは動作に制限も多いので、最初からSynScan Proの方を使うこととお勧めします。電視観望で使う際は、SharpCapを使うことが多く、ASCOMでSynScan Proに接続して、プレートソルブなどを使用することが可能になります。



上のリンクのように、SynScan Proを使っての操作などはこれまで何度もこのブログで書いてきたので、ここでは詳しくは書きませんが、一つだけ注意です。

今回SynScan ProとASCOMを使い電視観望を試しましたが、最初は何の問題もなく動きました。しかし次の日、観望会で使おうとしたらプレートソルブまで全然辿り着きませんでした。最初トラバースのトラブルかと思ったのですが、これまで安定に動いていたAZ-GTiに戻してもうまく動きません。どうやらASCOMとSynScan Proの間の接続の不安定性からきていたようで、複数台をつなぐとトリガー的に不安定になるようです。

何度か接続をし直したり、ASCOMドライバーやSynScan Proのバージョンを変えることで最終的にはトラバースでもAZ-GTiでもうまく動いたのですが、どうもSynScan Proの方が複数からの接続にうまく対応できるように設計されていないという情報を聞きました。私自身はまだ未確認なのですが、ASCOMのDeviceHubを使うことで複数台にうまく対応できるという話を聞きましたので、もし新たにトラバースを接続して不安定になるような現象に見舞われた時は、DeviceHubを使うといいかもしれません。私の方でも、梅雨が明けて天気が回復したら試してみたいと思います。


新アプリ「Acuter SKY」

トラバース専用で、Acuter SKYというアプリが開発されています。iOS用Android用があるようです。眼視が前提のアプリのようなのですが、なかなか面白いです。

まず、Wi-FiだけでなくBluetoothでもつながります。これは何を意味するかというと、スマホの場合インターネットに繋ぎながら操作ができることになります。SynScan ProのようにWi-Fiで繋いでしまうと、スマホで携帯電波につながっていたとしてもインターネットはWi-Fiが優先されてしまうために、実際にはインターネットにつなげなくなります。これが改善されているのは大きいです。

その一方、SynScan Proでインターネット接続と併用させるには、別途ルーターなどが必要で、「ステーションモード」で接続するなどの工夫が必要になります。詳しくはここを見てもらうとして、少なくともAcuter SKYでBluetoothで接続できる様になったために、単独でインターネット接続までできる様になることは大きいです。

また、Acuter SKYでは接続までのヘルプが充実していることも特徴でしょう。以下のような項目があり、それぞれ選ぶと、絵のみで一切文字のないヘルプ画面が現れます。

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例えば一例が以下の画像です。これは「望遠鏡の取り付け」を選ぶと出てくる絵の一部で、取付だけで10枚の絵で説明されています。三脚の設置から望遠鏡の取り付けまで、一切の文章なく絵だけで説明しているのはとても分かりやすいです。

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本体に添付されている紙のマニュアルにも同じような絵が掲載されているので、まずはマニュアルを見てみるのも良いでしょう。ただし、アプリは日本語対応ですが、添付されていたマニュアルは英語版でした。

ヘルプの後にある、特に最後の「素調整又はやり直し」はかなり特徴ある調整方法になっています。スマホを鏡筒に載せて、スマホの上側が鏡筒が向いている方向と同じようにします。この時にスマホの角度センサーを使って、今どちらの方角とどの位の高度を望遠鏡が向いているかを測定し、その情報をトラバース本体に送って初期アラインメントをするのです。精度はせいぜい数度程度と思われますが、これまでにない新しい試みで、面白いアイデアだと思います。


簡易StarSense Explorer?

初期アラインメント機能と同じような原理なのですが、もう一つ「スカイビュー」という機能が一番面白かったです。眼視の導入補助としてスマホの方向センサーを利用して、ターゲット天体までの方向のずれを示してくれます。言ってみればStarSense Explorerの簡易版みたいなものでしょうか?

Acuter SKYを立ち上げてから「空の探索」を押して、次に何か天体を選び、その後「確認」を押すとその「スカイビュー」モードになります。矢印の長さと方向で、天体までどれくらいずれているかが分かります。天体の方向に向くと画面に大きな丸がでます。

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実際使ってみての精度は、これもせいぜい数度くらいかと思うので、ファインダー導入支援といったレベルくらいかもしれません。重要なことは、ACUTER製品に接続とかしなくてもこの機能は使うことができるようなので、任意の赤道儀や経緯台に載った望遠鏡にくっつけたり上手く固定すれば、画面の矢印に従ってラフな天体導入ができるのかと思います。興味がある方はぜひ試して見てください。

このACUTER SKY、惜しむらくはスマホだけのアプリで、PC用ではないので、当然ASCOMには対応していないために、SharpCapからプレートソルブして同期などはできないところでしょうか。
 

トラバースを使った電視観望

今回の目的、実際に電視観望で稼働してみた様子をレポートします。既に福島星まつりでも試していますが、改めて自宅で試したのが2023年6月16日で半月ほど前になります。

設置ですが、三脚もトラバース自身も小さいことから、置き場所に困ることがあります。小さすぎて暗いところでは目立たないので、間違えて蹴飛ばしてしまう可能性があるからです。

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机の下に置くとか、ライトを横に置いて目立つようにするなどの工夫が必要でした。テーブルの上に置いてもいいのですが、PCを操作するたびに揺れてしまい、星像がブレてしまいます。石やブロックの上など、これ位されたものの上におく方がいいでしょう。

まず、SynScan  Proとは何の問題もなく接続できました。ただし、接続後ネットワーク設定の画面にたどり着けなかったので、ネットワーク設定はデフォルトのままです。観望会などで複数台で使うと混乱する可能性があるので、今後の改善を待ちたいと思います。今のところはネットワーク設定はAcuter SKYを使うことで可能になるようです。

SynScan Proから初期アラインメントをすると、トラバース本体が回転し出しますが、AZ-GTiに比べると全然静かで、これならば夜中にマンションのベランダなどで駆動してもほとんど迷惑にならないレベルかと思います。

初期アラインメントでの最初の導入の位置合わせがすでに面倒だったので、ここですでにSharpCapから ASCOM経由で、PC上で立ち上げたSynScan Proに接続し、プレートソルブを実行しました。

一つ注意は、PCで立ち上げたSynScan Proでトラバースに接続するためには、当然PCをトラバースのWi-Fiに繋げる必要があることと、もう一つこれは忘れがちなのですが、初めてPC上のSynScan Proでトラバースに繋いだときには緯度経度情報が正しく設定されていません。デフォルトでは「位置情報を使用する」がオンになっていてGPSからの緯度経度を自動的に取得するようになっていますが、ほとんどのPCにはGPSユニットが付いていないので、そのままでは緯度経度情報が何も入っていないことになります。これをオフにして、きちんとマニュアルで入力するようにしてください。その際の自分のいる位置の緯度経度ですが、スマホのコンパスアプリなどを利用すると、値を知ることができます。

プレートソルブがうまくいくと、画面中心近くに指定した天体が入ってきます。もちろん、プレートソルブなどしなくても、SynScan Proの方向ボタンを押して指定天体を真ん中に持ってきても構いません。

初期アラインメントがうまくいったら、次は見てみたい目標天体を自動導入します。最初はM27: 亜鈴状星雲です。

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全く問題なく導入できます。もしうまく導入されない場合は、トラバースの水平度が出ていない可能性があります。その場合でも再度プレートソルブを実行すれば導入されると思いますが、水平度が大きくずれていると毎回プレートソルブをする必要があるかもしれません。その際は、水平度を見直した方が効率が良いかと思います。

次は北アメリカ星雲です。
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続いて、少し離れたところのM8: 干潟星雲です。
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さて、トラバースの導入精度はどれくらいかというと、電視観望程度ならもう十分で、AZ-GTiとほとんど変わらないような実感です。

少し気になったのは、トラバース本体の水平方向を力を入れて揺らすと少しガタがありました。それでも稼働中にずれるようなゆるいガタではないので、実用上問題になることはないでしょう。基本的には精度は十分満足です。

最後、三日月星雲です。
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電視観望2台体制

さてこの後、長時間露光でどこまで点像が保てるか試してみました。上と同じ三日月星雲ですが、30秒露光で以下の画像のようになってしまい、既に星が流れてしまっているのがわかります。
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経緯台モードとはいえ、わずか30秒で流れてしまうとすると、流石に本格撮影とはいかず、電視観望的な短時間露光で枚数を稼ぐ撮影しかできないのがわかります。トラバースではなくAZ-GTiを使い、赤道儀モードにすればもう少し状況は改善されるかと思いますが、実はこのことがSWATとAZ-GTiを使っての長時間露光のアイデアにつながっていきました。



SWAT+AZ-GTiでもFMA135とUranus-Cを使いましたが、もう少し長焦点でもノータッチガイドで点像が保てそうなので、こちらはFS-60などを使った撮影になるかと思います。もちろん電視観望でも使えますので、
  1. トラバースでFM135
  2. SWAT+AZ-GTiでFS-60
など、電視観望で2台体制、そのうち一台は撮影も兼ねてという体制になるのかなと思っています。


まとめ

福島の星まつりで今話題のZWOのSeestarを見てきました。かなり積極的な値段設定なので、特に電視観望入門機として相当売れるのではないかと思います。それでも意外に大きいなとも思ったのも事実で、流石にリュックに入れて簡単に持ち運びというほどではなかったです。コンパクトさだけでいうなら今回のトラバース+FMA135に軍配が上がると思いました。値段は太刀打ちできませんが...。

それでもこのトラバースは、自動導入できる架台としては最安値で、実際かなりのコストパフォーマンスだと思います。

今回のトラバース、積載荷重、値段、なによりコンパクトさが必要かどうかが購入の決め手になるかと思います。電車やバスを使って移動しての街中での電視観望、車を使わないキャンプでの電視観望など、荷物量に制限がある場合は相当大きなメリットになるかと思います。

さて、この最小電視観望セットをカバンの中に入れて出かけ、夜におもむろに取り出して、見ている人に驚いてもらうことにしましょうか(笑)。


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