ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:ディザリング

少し間が空いてしまいましたが、SWAgTiで撮影したパックマン星雲について補足です。


実は上の記事にする前に、画像処理ははるか以前に終わっていたんです。でもダーク補正の有り無しで比較した時のノイズの大きさが、理論と全然合わなくて、ずっと検証していました。その結果、かなり面白い考察となったので、その経緯を書いておきます。


ダーク補正ありなしの、数値的な比較

前回示した記事の繰り返しですが見た目ではダーク補正の有り無しは差がわからないようです。

comp_dark

ちなみに左がダーク補正無し、右がダーク補正ありですが、差はあったとしても本当にごくわずかでしょう。でも、ノイズを実際に測定しても同じくらいなのでしょうか?数値で見てみましょう。

ノイズの測定には、いつものようにPixInsightのImageInspectionのStatisticsを使います。各画像で「プレビュー」で
  1. 恒星が入っていない
  2. 背景に近い一番暗い部分
を、小さな領域でいいので選びます。そのプレビュー画面をStatistics上で選択肢、「stdDev」を見ます。stdDevなど、見たい情報の項目が出ていない場合は、スパナマークのアイコンを押して必要な項目を選択してください。その際、左上の単位がきちんとカメラと合っているか確認してください。今回の場合、カメラが14bitなので、「14bit [0,16383]」を選びます。単位は [ct] すなわち、ADCのカウントになります。コンバージョンファクターがわかっていれば、これを電荷の[e]に変換することができます。

上のエリアを選ぶ二つのことは、ノイズを正確に、安定に測定するために必要な条件です。

恒星が入っていると、恒星は飛び抜けて明るいので、バラツキ(=ノイズそのもの)が大きくなり、本来より大きなノイズの値が出てしまいます。

一番暗い部分を選ばないということは、何らかの天体などの明るさを測定していることになります。明るさがあると、そのバラツキからくるショットノイズが大きくなり、本来見たいダークノイズや読み出しノイズが隠れてしまう可能性があります。

これらのことは基本なのですが、その他にも注意すべきことがあります。今回の測定中にやらかした失敗も含めて、反省の意味も込めて今後の測定のために細かく書いておきます。


撮影と画像処理の条件

前の記事の繰り返しになりますが、一応撮影と画像処理の条件も書いておきます。

撮影はRedCat51+DBPでカメラはUranus-C Proで-10℃に冷やしています。架台はSWAgTi (SWAT350 V-SPEC PremiumにAZ-GTiを載せたもの)で、撮影ソフトはNINA。ガイドは無しで、NINAの特殊機能のガイド無しディザーで最初のうちだけ1枚に一回、途中から3枚に1回ディザリングしています。

ライトフレームは露光時間が1枚当たり3分で、カメラのゲインは100、オフセットは40で撮影しています。94枚画像処理に回したので、合計282分 = 4時間42分ぶんです。この間、NINAでも順調に動いて、特にSWAgTiの長時間撮影で縞ノイズを避けるために必須であるディザリングも問題なく動いていました。ライトフレームは10月9日に合計139枚撮影しそのうち94枚を使い、ダーク補正比較のためのダークフレームは後日77枚撮影して使いました。
がそう処理は、SWAgTiの簡単撮影の特徴を活かすために、バイアス補正、フラット補正などは無しです。解像度を上げたいので、drizzle x2を選択しておきます。

というような条件で、この記事ではダーク補正の有り無しを比較します。


測定失敗1

「Bayer配列画像はノイズ測定に用いるべきではない。」

  1. まず正しくスタックされているかどうか確かめるために、ライトフレームのRAW画像1枚のノイズを測定します。結果は12.5 [ct]でした。
  2. 次に、スタック後のダーク補正なしのマスターライト画像のノイズを測定します。予測だと94枚スタックした場合、ノイズが1/√94 = 0.103倍に近い値の12.5 x 0.103 = 1.29程度になるはずです。でも実際測定してみると、1.08 [ct]と予想よりかなり小さい値になってしまいます。
でもこれはすぐに気づきました。1枚画像はBayer配列のままなので、RGGBでそれぞれ平均値が違ってしまっているために、その平均値のばらつきでノイズが大きいと勘違いしてしまっているのです。解決策としては、Debayerしてからノイズを測ります。PIでDebayerして、再度Statisticで恒星のない部分のノイズを測定すると、6.44[ct]となり、これを0.103倍すると0.663[ct]となります。でもまだマスターライトファイルのノイズ1.08[ct]とはかけ離れています。


測定失敗2

「Drizzle画像はノイズ測定に用いるべきではない。」

Debayer同士で比べているのに、なぜスタック後のノイズが予想より大きすぎるのか?これも少し考えてすぐにわかりました。Drizzleした画像は微妙にずらして重ねたりして解像度を増やしているので、そもそもノイズがどうなっているのかよくわかりません。ここはDrizzle前の画像で評価すべきでしょう。Drizzleはオプションなので、Drizzle前のマスターファイルもきちんと保存されています。Drizzle前のマスターファイルのノイズを測定すると、0.620[ct]で、今度は予測値の0.663[ct]とほぼ一致しました。

これで少なくともダーク補正なしで1枚画像を94枚スタックした場合、ノイズが理論通りの1/√94 = 0.103倍に近い値になることがわかりました。


ダーク補正でノイズは数値でどうなるか

さて、いよいよ別途77枚のダークファイルで作ったマスターダークファイルを使って、各ライトフレームをダーク補正して、WBPPでスタックまでしてマスターライトファイルのノイズを測定します。今回は最初からDrizzleされていない方を選び、Preview機能で恒星がない部分のノイズを測定します。結果は、目で見て比べた時と同様に、ノイズの値はダーク補正がない時の0.620[ct]と比べて、ダーク補正ありだと0.625[ct]となり、ほとんど同じなのでものの見事に一致したと言っていいでしょう。

結論としては、ダーク補正ありでも無しでも、ノイズはほとんど変わらないというのが今回の結果から言えることです。

見た目でダーク有無でほとんど差がないのが、数値でも同様に、ほとんど差がないと示されたわけです。


本当にダーク補正の影響はないの?
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え???
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でも、

なんでここまで同じなの?ダーク補正の影響は全くないの?

ランダムノイズであるダークノイズを持つ画像で補正しているわけです。ランダムなので引こうが足そうが、補正すればノイズは必ず2乗和のルートで「増える」はずでは?何も増えないのは少なくともおかしいのでは?

とここから長い迷走が始まりました。


スカイノイズが大きいのでダーク補正のノイズ増加が無視できる?

パッと考えられることは、明るい環境で撮っているので、スカイノイズが大きすぎてダークノイズが無視でき、たとえダーク補正してもほとんど影響がないというシナリオです。でも今回はサイトロンのDBPを使っているので、光害はかなり軽減されているはずで、スカイショットのいずの影響は少ないはずです。もしかして、DBPを入れていてもスカイノイズが大きすぎるくらい明るい環境なのでしょうか?

こちらも定量的にきちんと比較してみましょう。そのためにはライトフレームの背景領域の全ノイズに比べて、ダークノイズがどれくらい貢献しているかを比較すればわかるはずです。簡単のために、1枚撮影したファイルで比較します。

まずはダークフレームのノイズですが、今回もきちんとDebayerすることを忘れずに、これまでと同様にPreviewで領域を選択して、Statisticで測定します。結果は5.30[ct]でした。ここにはダークノイズと、バイスノイズ(読み出しノイズ)が含まれていることに注意です。

一方、ライトフレームの1枚画像のノイズは上の測定でわかっていて、6.44[ct] 程度です。

5.30[ct] と6.44[ct] なので、少なくともダークノイズと読み出しノイズが含まれたものは、ライトフレームに含まれるスカイノイズ(+ダークノイズ+読み出しノイズ)に比べて、無視できるくらい小さなものではないことがわかります。

ライトフレームは94枚、ダークノイズは77枚でスタックするので、予測では
  1. ダーク補正無しだと6.44 x1/√94 = 6.44 x 0.103 = 0.663[ct]というノイズと、
  2. ダークフレームの5.30 x 1/√77= 5.30 x 0.114 = 0.60のノイズが2乗和のルートで加わるため、
  3. sqrt(0.663^2 + 0.60^2) = 0.90[ct]
程度になるはずです。でも実測は0.625[ct]と、予想の0.90[ct]1.5分の1くらいで、これは有意に小さすぎます。この矛盾を見つけるのに、相当な時間がかかってしまいました。


なぜダークノイズは増加しない?

1週間以上考えていたでしょうか。答えがわかったあとは、まあ当たり前のことでしたが、これまであまり考えたことはありませんでした。いや、概念としてはおそらく考えていましたが、どう適用するとか、数値で確かめるというようなことは全くしてきませんでした。他に同じようなことを考えた例はないかと思って検索しましたが、定量的な評価はおろか、それに関する記述も見つけることができませんでした。

さてここでクイズです。

今回、なぜダーク補正しても
背景のノイズが増えなかったのでしょうか?

一見不思議ですが、きちんと説明することができます。答えは下の方に書いていますので、自分で考えてみたい方は、ここでスクロールするのを一旦止めてください。答えに必要な条件は上の「撮影と画像処理の条件」のところに全て書いてあります。

答えがまとまった、もしくは答えを見てみたい場合は、下に進んでください。
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と、答えに行く前に、一つヒントを出します。ヒントはディザリングです。これで答えに辿り着きますでしょうか?

答えがまとまったら、さらにスクロールしてみてください。
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はい、もうわかりましたでしょうか?答えは「マスターダークファイルも、ディザリングでノイズが散らされる」からですよね。

まだ、ちょっと言葉足らずかもしれません。そもそも今回はPIのWBPP処理に則っているので、先にマスターダークファイルを作って、それを各1枚1枚のライトフレームにおいてそれぞれダーク補正しています。マスターダークファイルを使っての補正の効果は、個々のライトフレームで補正してから重ね合わせても、ライトフレームを(位置がズレることなく)重ね合わせてからマスターダークファイルで補正しても、数学的には同じことです。証明はここ


「ダーク補正の定量的な扱い」あたりから読んでもらえるとわかるかと思います。

ところが実際の撮影では、それぞれのライトフレームは、ディザーをしてライトフレーム時に画面を少し散らして撮影しているので、画像処理の際に「星の位置が合うように」重ね合わると、当然背景はディザーの分だけ散らして重ね合わせられます。個々に補正したマスターダークファイルが、全く位置をずらさずに重ね合わせられるなら、先ほどいった数学的な証明の通り、マスターダークファイルのノイズが2乗和のルートで増えます。ところが、マスターダークファイルがディザーの効果でずれて重ねあってしまうと、個々のライトフレームで補正されたマスターダークファイルのノイズはコヒーレントに重なることはなく、ランダムに重なってしまうことになります。そのため、個々のライトフレームに対して、マスターダークファイル1枚(元のダークノイズの)のノイズ分増加したものが、ライトフレームの枚数のルート分軽減されてしまうのと同じことにになるので、今回の場合さらに1/√94 = 0.103倍となり、ほぼ無視できてしまうというわけです。

実際に、マスターダークファイルで補正した個々のライトフレームを、星の位置合わせをせずに、重ねただけの画像を示します。
integration

小さな揺れが見えることからディザーはされているのはわかりますが、7時間にわたる長時間露光なので、一方向にドリフトしていっている様子も伺えます。この画像の恒星の無いところの背景ノイズを測定してみると、0.938 [ct]となり、見事に予測値の0.90[ct]とかなり近い値で一致します。


結論

というわけで、「ディザーをしているために、マスターダークファイルを使ったダーク補正では、マスターダークファイルの相関のある部分が散らされすために、補正後のダークノイズが増えることはない」というのが今回の結論です。

また、そもそものダーク補正の目的であるホットピクセルですが、
  • Uranus-C ProはDPS (Dead Pixel Suppression)機能のために元々ホットピクセルが緩和されていること
  • PixInsightでCosmeticCorrectionでホット/クールピクセルが緩和されること
と2つの効果で、実際の画像比較でもダーク補正の本来のホットピクセルの緩和の効果がほとんどわからないのかと思われます。


少し見直し

以前の解析で、ライトフレームに対して、ダークフレームは何枚くらい撮影したらいいかを検討していますが、


ディザリングの効果を考慮考えるとこのダークフレームの必要枚数の条件は遥かに緩和されることになります。これを数学的にどう表せばいいのか?ディザリングでどれくらい散らされるかに依るので、統計的な表現が必要になりそうです。かなり複雑になりそうなので、ここではこれ以上の計算はちょっと諦めます。

ただし、このディザリングがあればダークフレームの枚数を減らすことができるというのも、ある程度の制限があるはずで、例えばライトフレームの背景のノイズが、ダークノイズが支配的な場合は、少ない枚数のダークフレームで補正すると、今回考えたようなディザリングによる散らしの効果はあまり聞かなくなるはずです。

極端な例を示します。非常に暗い空で超長時間露光などして、ライトフレームがダークノイズに比べて読み出しノイズも背景のスカイノイズも無視できるとします。ダークフレームは1枚だけ撮影し、それでライトフレームを補正します。個々のライトフレームのダークノイズは√2~1.4倍になります。ライトフレームをスタックする際に、ディザリング効果でどう散らそうが、ダーク補正によって加えられたダークノイズはスタック枚数のルートで軽減されるだけで、ライトフレームに元々あったダークノイズのスタックによる軽減と同じ効果なので、結局のところダーク補正をした場合はダーク補正しない場合に比べて1.4倍程度ノイジーになります。

もしディザーしなかった場合は、ダーク補正によって加えられたダークノイズは、スタックによって軽減されないので、スタック枚数のルート倍大きくまります。例えば、100枚ライトフレームをスタックすると、ダーク補正しない場合に比べて10倍ダークノイズが大きくなります。

極端な場合の比較ですが、ディザーの有り無しで、1.4倍の悪化から10倍の悪化までと、非常に大きな差が出ます。必要ダークフレームの枚数に対して、ディザリングの効果が相当影響すると思っていいでしょう。

ネットを検索すると、ディザリングでホットピクセルが散らされて軽減されるというような記述はたくさん見つかりましたが、調べた限り、ディザリングがマスターダークフレームを散らすので、ダークフレームの枚数を減らすことができるというような記述を見つけることはできませんでした。定性的に考えたら至極当たり前だと直感的にもわかるのですが、定量的な話はおろか、定性的な話もこれまでほとんど言及されてこなかったようです。今後興味があるのは、これをどう定量的に示すかです。言い換えると、ディザリングの効果をどう数学的に記述するかです。また機会があれば考えてみたいと思います。


ダークノイズについて

天文関連の画像処理のページを検索すると、所々に、ダークノイズ = ホットピクセルとか、ダークノイズにはホットピクセルやクールピクセルのような固定ノイズと、ランダムなノイズがあるというような表現を見かけます。私も後者のような表現を使ってきました。でも、ダークノイズというのは本来はダークカレント(暗電流)の揺らぎが起因のノイズのはずです。ダークカレントも、ホットピクセルも、温度の増加とともに増えてくるものですが、ホットピクセル自身がダークノイズというのは、やはり少し強引な気がします。

「ダークフレームを撮影すると、(ランダムに振る舞う) ダークノイズとともに、ホットピクセルも顕著に見えるようになり、そのダークフレームを使うことで固定ノイズであるホットピクセルをライトフレームから除去することができるが、ダークノイズはランダムに揺らぐ(インコヒーレントな、コヒーレントでない、相関の無い) 「ノイズ、揺らぎ」なので、引くことはできずに、必ず2乗和のルートで増える。」

というのがある程度正確な記述かと思います。ホットピクセルはダークカレント起因ではないはずなので、やはりダークノイズとははっきり区別した方がいいのではないでしょうか?


まとめと日記

ここしばらく悩んでいたことが、やっと解決して、ブログ記事にまでまとめることができました。つうじょうに撮影していて、ディザリングもしていて、ダーク補正されている方は、ダークフレームの枚数がより少なくてもいいという話なので、これまで特に問題がないようならば、今回の話は特に気にする必要はないです。でもこういった解析はやはりしておくべきだと思います。しかも、できるだけ定量的に評価できるようにというのが重要だと思います。こういった積み重ねが、どんなノイズが支配的で、どこを改善すればより良くなるかなどに、効率的につながっていくのかと思います。ディザリングの数学的な表現をどうすればいいのか、今後の課題です。

ついでに日記です。今日11月8日(金)から小海において星フェスが開催されています。例年だと諸手を挙げて参加なのですが、今年は体調があまり良くなく、全然予定が立っていませんでした。ここしばらく調子は良かったのですが、先週の長野の泊まりで少し疲れてしまって、今週はあまり調子が良くありません。明日の朝起きて、調子が良ければあまり長居しない程度で行こうと思っています。天気はすごくいいみたいなので、できれば行きたいのですが...。


ここしばらく彗星にかかりきりでしたが、明日の日曜の夜が、短時間ですが月の出ない時間に彗星が残るので、最後の大きなチャンスでしょうか。徐々にいつもの天文ライフに戻りそうなので、ブログ記事としてはSWAgTi関連に戻りたいと思います。

10月初めに少し晴れ間があり、前々回記事でSynScan Proでのプレートソルブによるアラインメント、前回記事で微動極軸ユニットをテストしてみました。今回の記事は、いよいよこれらの機能を実践で使用しての撮影です。




今回はさらに、SWAgTiの撮影ソフトとしてSharpCapの代わりにNINAを使ってみました。これまで縞ノイズを避けるためにディザリングをかなり苦労をしてきたのですが、NINAでも同様にうまく動くのでしょうか?NINAまで使えると、SWAgTi撮影での選択肢の幅が大きく広がるので、かなり嬉しいです。

ここでのポイントは
  • NINAでガイドなしのディザリングができるのか
  • NINAのプレートソルブは動くのか、またSharpCapの時のように不安定にならないか
です。


撮影準備

IMG_0100

まず、新アイテムの微動極軸ユニットを使って、前回に引き続き再度SharpCapで極軸をとってみます。直接RedCat51とUranus-C Proで見ている画像を使いました。その際にピントもきちんと出しておきます(ピント固定リングに初めて気づいてたので、いい位置で固定しました。これまでは片付けで鏡筒に蓋をするときに押し込んでしまい、毎回ずらしてしまっていました。)。

前回の記事にあるように、ネジの安定性もあり、今回も非常にスムーズに極軸を調整することができ、1度目は0.3分角程度に合わせました。もちろんSharpCapの評価はExcellentです。その後、折り返しで2度目の極軸調整を行いましたが、その時の誤差も1分角を切るくらいで、十分に実用レベルの精度です。その後の撮影された画像をチェックしましたが、ガイド無しで焦点距離250mm、180秒露光で星像の流れは見ている限り全く気になりません。歩留まりも雲とかで除いたもの以外は100%です。少なくとも、微動極軸ユニットを使う前の精度は出ていると言っていいと思いますので、実用レベルで十分使うことができるとの判断です。

次に、SynScan Proのプレートソルブ機能を使ってみました。今回のターゲットはRedCat51とUranus-C Proの画角からと、これまで撮影したことがない新規天体ということで、「NGC281:パックマン星雲」と決めました。ワンスターアラインメントでの初期アラインメントを終えて、すぐにSynMarix Alignに移ります。

以前繋いだカメラがあると、自動的に最初からカメラ接続までされるようなので、特に何か設定するでもなく、ただ「Run」ボタンを押すだけでした。ポイント数は今回も2点です。一番少ない数を選んでいるのは短時間に終わらせたいということもありますが、すでに極軸をきちんと合わせてあるので、位置さえ決まればあとは変に高度な追尾をする必要がないという意図もあります。

最初の1点目はやはり鏡筒が動かずに単に画像を撮り、プレートソルブも問題なく終わります。2点目は鏡筒が30-40度くらい適当な方向に動いてから撮像し、プレートソルブします。完了後はそこの位置から動かないので、この時点ではどこか適当なあさっての方向を向いています。でも、もし2点目で適当な方向に向いたときに星がある方向でなかったらどうなるのでしょうか?今のところはまだそんなケースには遭遇してませんが、当然エラーか何かになるのかと思います。その際、どうやり直すのかは少し興味があります。


撮影ソフトにNINAを使う

プレートソルブによるアラインメントが終わったら、SynScan Proでパックマン星雲を導入します。導入後、NINAを立ち上げて「撮像」タブでライブモードで循環撮影をオンにして確認しますが、ものの見事にど真ん中に入っていました。

本当は、この後にNINAでプレートソルブをして、SynScan Proとの接続の安定性を見るべきだったのですが、今回は撮影の方を優先させたかったので、この時は試しませんでした。でもその後、別の日の馬頭星雲の撮影の際、NINAのプレートソルブをやってみましたが、SharpCapのようにSynSca Proとの接続が不安定になるようなことはなかったので、NINA上ならプレートソルブも自由に使えそうだということがわかりました。

これでSWAgTiで使えるプレートソルブに関してはSynScan ProとNINAの2つの選択肢があることになります。
  • SynScan Proの方は、プレートソルブで精度を出してから自動導入で、自動導入後の補正はしない
  • NINAの方は、自動導入時の精度はあまりないが、自動導入してからプレートソルブで補正して天体を真ん中に入れる
という違いがあるので、使用目的も少し違ってきますが、(心持ちちょっとだけ特殊な使用方法である)SWAgTiにとっては、選択肢が増えることは非常にありがたいことです。

すでにターゲット天体がかなり真ん中に入っているので、この時点で自動追尾をSynScan ProからSWATに切り替えてしまいます。ここでチェックすべきことは、SynScan Proの自動追尾を切っても、NINAからAZ-GTiをコントロールができるかどうか?です。まず「架台」のところで赤道儀として「SynScan Apps」を選択し接続します。10秒ほどするとASCOM仕様の十字ボタンが画面に出てくるので、NINAの「撮像」タブでカメラの画像を見ながら方向ボタンを押してみます。すると、自動追尾なしでも星が見事に動くので、まずは第一関門突破です。


NINAでガイド無しディザーができるのか?

次に一番肝心な、NINAでオートガイド無しのディザーができるかどうか?です。少し前に調べたことによると、「Direct Guider」という機能を使うことで、ビルトインディザリングというのができるらしくて、今回の目的にあっていそうです。



実際に、
Built-in Dithering#
There are some cases where guiding equipment isn't needed or available, but you still want to dither. This can happen if you have a very high end mount with encoders or with small portable setups. N.I.N.A. can perform dithers directly via its Direct Guider which manually slews the telescope very small distances.
とか書いてあります。特に「ガイドがない場合や使えない場合で、ディザーしたいときのための機能で、例えばエンコーダー付きの高精度の赤道儀や、ポタ赤など小さくてかつ高精度な赤道儀の場合に、必要になる機能かもしれない」というようなことが書いてあるので、今回のSWAgTiそのものだと思ったわけです。この機能は、2024年の4月くらいのバージョンで搭載されたようなのですが、9月にこの記述を見てNINAをSWAgTiで使ってみようと思ったわけです。

「Direct Guider」を使うためには、左の「機材」タブの中の「ガイド」で「Direct Guider」を選択します。普段PHD2とかを選ぶところです。設定する箇所はほとんどなく、何ピクセルディザーするかくらいでしょうか。デフォルトは5ピクセルですが、効果をはっきり見たいために今回は20ピクセルとしました。

01_direct_guider


以前のSharpCapでのディザーは、SynScan Proの自動追尾がオフになった時点でディザー信号がAZ-ZTiのモーターに伝わらなくなるという問題がありました。方向ボタンの信号はきちんと伝わるのに、ディザー信号だけは伝わらないのです。SharpCapの時はバージョンアップで解決されたみたいなのですが、NINAでも同様の問題がないとも限りません。とりあえず撮影の準備だけして、といってもレガシーシーケンサーでLIGHTフレームを露光時間を180秒にして、必要枚数を指定して、ディザーをオンに指定するだけです。実際にはガイドはなくて、フォーカサーも、フィルターホイールもないので、設定はとても簡単です。

そうそう、今回NINAにUranus-C Proを接続するのは初めてだったのですが、SharpCapでのゲインとオフセットの設定がレジストリなどに記録されているようで、最初から同じ値になっていました。ソフト缶を移動して同じカメラを使う場合は、設定が残っていたりするので、これは一方では便利だったりするのですが、変な設定が残ることもあり得るので、注意が必要です。

NINAは撮影に特化されているだけあって、デフォルトでの各種値が撮影用にあらかじめ設定されているのがありがたいです。例えばファイル形式はfitsが最初から選ばれているとかです。もちろん変更することもできるのですが、撮影時のドタバタでミスが少なくなるような設計方針にとても好感が持てます。他にも、カメラのゲインやオフセットはカメラ機器のところで1箇所指定すれば、あとはここの撮影で同じ設定になるのでミスしにくいとか、センサー温度が十分下がっていないと警告が出るとか、撮影のことを第一に考えてくれています。これがSharpCapは撮影もできるし電視観望もできますが、撮影だけを考えるとNINAを使いたくなります。

さて、実際に画像を1枚撮影し終わって、いよいよディザリングが開始されるはずです。まずはNINAの下部のメッセージのところにはディザリングされていると表示されているので、何か動こうとはしているようです。でもまだ実際にうまくいっているかわかりません。実際の確認は、ディザリングが終わって、次の1枚の撮影を3分待って、プレビューが出た時にきちんと位置がずれているかを見てからです。

さて、結果を見てみると
03_dithring
ライブドアブログの問題でプレビューがうまくいかないみたいなので、
クリックしてみてください。うまくズレているのがわかるはずです。


ものの見事にディザー分ずれていました!!!これで、NINAもSWAgTiで使えることが判明しました。バンザーイ!


安定した撮影

その後の撮影は順調そのもので、21時過ぎから午前4時頃まで、約7時間の露光を安定に済ますことができました。途中の子午線反転はマニュアルで行う必要がありますが、SWATに自動追尾を引き渡したためにAZ-GTiの位置情報は既にずれてしまっているので、一度ホームポジションに戻して、一からSynScan Proでアラインメントをしました。でもSynScan  Proでのプレートソルブアラインメントもすぐにすますことができるので、反転もほとんど苦にならなく短時間で済ませて、そのまま撮影を実行しました。

朝になってファイルをチェックしましたが、途中から雲が出てきて、それでも4時間半くらいの画像を使うことができました。その時の一番最後の画像です。一晩このクオリティーで撮れているので、天体写真として十分使えるレベルの画像を撮影することができていると思います。

2024-10-10_02-45-38_NGC 281_LIGHT__180.00s_g100_-10.00c_0043_low

画像処理に関しては、また長くなるので次の記事に回します。


まとめ

今回、NINAでの撮影が選択肢に加わり、SWAgTiの可能性がかなり広がってきました。極軸微動ユニット、SynMarix Alignの導入も安定した撮影体制につながっています。

まだまだ進化過程のSWAgTiですが、実用かどうかでいうならもう完全に実用レベルです。手軽で稼働率が高いので、今後の可能性を求めて、まだまだいろんなことを試していこうと思っています。


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