ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:チリ

たまっている画像処理に少し取り掛かります。といっても最近撮影した話ではなく、もう何ヶ月も前のものです。

今回はその中で、MACHOさんのご好意でチリのリモート天文台で撮影させて頂いたものを仕上げました。撮影から記事にするまで長らくかかってしまい、申し訳ありませんでした。結果は画像を見て頂ければわかりますが、十分に満足できるものとなりました。


南天天体の撮影チャンス

以前、MACHOさんのご好意でチリのリモート天文台の電視観望を試させ得ていただく機会があったのですが、


今回はさらにご好意に甘えて、撮影までさせていただきました。

撮影日はGW中で、その頃に調子を悪くしてしまった私はある意味これがGW中の唯一の天文活動でした。 事前の打ち合わせで4日間割り当てて頂いたので、事前にターゲット天体を色々考えていました。実際には意外に曇りだったり、途中から私の方が入院などで、結局撮影できたのは1日半です。それでも環境といい、機材といい、結果から考えても十分楽しむことができました。

ターゲット天体には優先順位をつけてあったので、半日ごとくらいに3つの天体を撮影しました。今回のターゲットは撮影順に、
  1. NGC3372: イータカリーナ星雲
  2. SMC (小マゼラン星雲)
  3. LMC (大マゼラン星雲)
となります。南天の撮影は「ほぼ」初めてなので、全部メジャー天体です。でも全部念願の天体です。

「ほぼ」と書いたのには理由があって、星を始めて結構すぐくらいにオートラリアに出張があって、簡単な機材を持って撮影も試みたことがあります。でもその時はあいにくの満月期で、まだ機材的にも自分の技術的にも全然未熟で、随分と悔しい思いをしたものです。




撮影環境

撮影はGWなのでかなり前のことになってしまいますが、記事は当時ある程度書いておいたことと、別途記録が残っているので、なんとかなります。あとはできるだけ記憶を辿ってになります。

機材はFRA300 Pro+ASI2600MC Proです。モノクロのTOA150もあったのですが、最初は簡単なカラーからと思っていたのですが、今回は時間切れだったので、泣く泣くTOA150の方は諦めることになってしまいました。

FRA300には特に光害防止フィルターなどは何も付いていませんでしたが、さすがにかなり暗い空です、かなり迫力ある画像が撮影中からNINAの画面上で見えていました。

撮影に使うソフトは、
  • 導入と位置確認: SkyChart(Cartes du Cael)
  • ガイド: PHD2
  • 撮影: NINA
となります。赤道儀のためのASCOMドライバーなどの詳細設定がありますが、ゲストユーザーは特に触ったり、あまり意識しなくていいように、あらかじめ設定てしてくれています。リモート接続にはシン・テレワークシステムのクライアント版を使います。今回はWindows版を使いましたが、Macでは専用クライアントは無いみたいですが、Web版を使うことができるようです。

撮影までの準備は、前回電視観望の時にあらかじめ接続方法や、リモート接続した後の操作方法を聞いていたので、それほど困ることはありませんでした。唯一迷ったのが赤道儀のパークの解除方法です。電視観望のときはどこかを操作してアンパークしていたと思ったのですが、その場所が分からなくて今回はNINAからアンパークしました。ASCOM関連なども一通り見たのですが結局分からなくて、後から聞いたら、MACHOさんも普段NINAからアンパークしているみたいで、それで良かったみたいです。でも電視観望の時はNINAを使っていないはずなので、もしかしたら別のところにもパークを制御できるスイッチがあるのかもしれません。

撮影に関してはほとんど準備されていたので、特にそこまで迷うこともなく、ほとんど問題なかったでしょうか。あえて言うなら、私は普段NINAのシーケンサーは簡単なレガシータイプを使っているのですが、「レガシータイプをデフォルトでオフにする」というオプションが入っていたのでオフにしました。そのオプションの場所を探すのにちょっと迷ったくらいです。


撮影初日は少しだけ

初日、最初の撮影はNGC3372: イータカリーナ星雲狙いです。少し時系列を追います。
  1. 午前7時過ぎ、シンテレワークでドームに接続成功。チリはほぼ地球の裏側にあたるので、時差が13時間。5月で日本では日が長いのに比べて、チリはこの時期は夜が長いので撮影時間は十分確保できます。
  2. まだ日が残る明るいうちに、モニター用のASI120MCで見て、望遠鏡がPark位置にあることと、まだドームが閉じていることを確認。
  3. skychatで赤道儀の現在位置を確認して、これでもPark位置にあることを再確認。
  4. 午前8時前くらい、天文薄明に入りSharpCap+ASI120MCでドームが開いていることを確認。ドームの開閉は現地の天気を見て、現地スタッフがやってくれるようです。
  5. skychatで導入成功。NINAの試しのライブ撮影ででFRA300Pro+ASI2600MCでイータカリーナ星雲が見えた。
  6. カメラの冷却を開始し、その後PlateSolveも成功。
  7. PHD2で一度はガイドまでオンになった。
  8. 午前8時過ぎ、上記PHD2の設定中に突然PHD2の画面が見えなくなった。ドームが閉じたのか?その判断がつかない。
結局、午前9時前 SharpCap + ASI120MCで露光時間を60sにしてかなり明るく見ることで、ドームの屋根がしまっていることが確認できました。現地の天気を調べてみると、薄曇りでどうも星は見えているようですが、撮影には向かないとの判断だと思います。

その後、昼頃に再び接続してみると星が見えています。そのまま導入して、すぐに撮影を始めました。ただし、やはり少し曇り気味で、1時間半ほどで終了となってしまいました。

というわけで初日はお試し程度でした。2日目にかけます。


撮影2日目は絶好調

2日目: 最初にドームにアクセスしたのが日本時間で朝の7:44でした。初日のイータカリーナ星雲がまだ1時間半ほどの撮影しかできていないので、午前中は今一度イータカリーナ星雲を撮り溜めます。

この日の時系列のログが残っていたので、コピペしておきます。
  • 7:48 SharpCap+ASI120MCでドームが開いていることを確認。
  • 7:49 NINAからUnPark
  • 7:50 SkyyChartでNGC3372導入
  • 7:56 NINAで画像確認とPlateSolve
  • 7:58 Phd2でキャリブレーション開始。
  • 8:01 キャリブレーション完了、オートガイド開始。
  • 8:19 EAFの「ZWO forcuser (2)」に接続してオートフォーカス開始
  • 8:34 撮影開始
  • 8:40 一枚目確認。大丈夫そう。綺麗。
と当時の記録を見てもかなり順調だったことがわかります。EAFの調整から撮影開始まで少し時間が空いているのは、フィルターホイールに迷っていたからです。カラーカメラでフィルター無しなのでフィルターホイールの設定は意味がないはずなのですが、EFWが接続されているようなので、何か変わるのかと思って確証が持てませんでした。結局このフィルターはTOA150についているEFWだということが後からわかりました。

撮影が始まるとまず気づいたのが、赤道儀の安定性です。ガイドラインが相当ピターっと0付近にへばりついています。私の手持ちのCGX-Lも結構安定していると思っていましたが、さらに別次元の安定度です。実際撮れた画像を見ても、ほぼどの画像も星が円に近くなっています。

その後、記録を読み返すと、9:54に天頂越えのところで少し迷ったようです。撮影開始から2時間後です。一旦、本当に反転しているか、Parkとかしてあえて確かめたりしましたが、撮影された画像を後から見たら、すでに自動で反転されていたことがわかりました。自動反転も安定しているようで、これは楽です。反転を確認したついでに、時間的にも丁度いいのでPlateSolveとAFを今一度実行しました。その後、10:11に撮影再開です。

イータカリーナの高度が低くなってきたので、次の天体のSMC: 小マゼラン星雲に移ります。NINAに自動導入とプレートソルブ込みで指示してあって、後から見たら14:40に自動的にSMCに切り替わっていて、そのまま撮影も開始されていました。結局この日は日本時間の18時近くまで撮影していました。カメラは撮影が終わると自動で昇温するようにNINAでセットできるので、後片付けはParkすることくらいでしょうか。こちらもとても簡単で、ドームがかなり楽なのを思い知らされます。


3日目の撮影は途中まで

3日目のターゲットは大マゼラン星雲です。この日は朝から少し用事があり、接続開始時間が遅れてしまいました。時系列のログを見ても、

9:34 接続開始で、すぐにLMCを導入。Unpark, Platesoleve, PHD2, AF問題無し。
9:41 撮影開始
13:00 LMC撮影終了

と、とても順調で、昼頃にはLMCを終了しました。

実はここからTOA150にしてオメガ星団をモノクロで撮影しようとしていたのですが何か様子がおかしいです。結局13時20分にはモニターカメラでドームがしまっていることが確認できました。どうやら途中から天気が悪くなってきたようで、ドームが閉じられてしまったようです。

というわけで、ずっと天気が良かったわけではなく、その後に体調を悪くしたこともあり、割り振っていただいた4日のうち約1日半ほどしか撮影に使うことができませんでした。惜しむらくはモノクロカメラでの撮影でしたが、天気ばかりはしかたありません。それでもFRA300 ProとASI2600MCで、十分なクオリティーの画像を、十分な枚数撮影することができました。


画像処理

今回は3つの画像をほぼ並行して処理しました。

撮影後、ダークファイルとフラットファイルはあらかじめ撮影してくれていたものを頂いたので、すぐにPixInsightのWBPPにかけました。ここしばらくはモノクロカメラでのLRGB合成やSHO合成が多かったので、カラーカメラの真面目な画像処理は久しぶりです。自分でカラー合成しなくていいのは、楽でいいですね。特にフラットに関しては、モノクロだとそれぞれの色で最淡のところでどうしても差が出てしまうので、合成の時にいつも苦労しています。

今回のフラット化は、そもそも暗いところの撮影でカブリもあまりないのと、画面全体に星雲や銀河が広がっているので、全体の傾向だけ除去しようとフラット化はABEに留めています。その後、定番のSPCCやBXT、ストレッチは主にGHSを使い、Photoshopに渡すところまでは終えました。

その後は無理をしないようにと少し天文から離れていたこともあり、結局画像処理にはほとんど時間を使うことができていなくて今に至ります。もう少し言うと、Photoshopで少しだけいじってみたのですが、ノンフィルターの画像に慣れていないので、どうしてもあぶり出しに苦労しそうなことがわかって、かなり時間がかかりそうだと思ってしまい、そこからなかなか進まなかったというのが正直な所です。

ここ最近、少し時間的に余裕ができてきたので、Photosopで3枚まとめて画像処理を進めました。

まず全般に関してですが、ノーフィルターで写しているので、かなり暗い空で撮影してるとしてもHαとOIIIに関してはインパクトが弱くなっているようです。特にHαフィルターを使った時と比べると、色がどうしても眠いような感じになってしまいます。というよりも、暗い空でフィルターなしで撮影したことなんてこれまでほとんどなかったので、むしろこちらの方が正しい色に近いと言えるのかもしれません。そもそも本当の色というのが何かという議論もあるので、何が正しいか何が間違っているかの議論自体意味があるかわからないのですが、条件のいい暗い空でノーフィルターで撮影するというの経験は、しないよりはしておいた方がいいと実感しました。今後の色使いに少し影響が出るかもしれません。

個々の画像についての画像処理も踏まえながら結果を示します。


イータカリーナ星雲

まずはイータカリーナ星雲。ナロー撮影でOIIIフィルターを使うと、赤い星雲をとってもある程度の青い成分が残るのですが(例えば北アメリカ星雲)、今回のイータカリーナを見ると青成分はかなり少ないようです。色彩豊かに見せるために少し青成分を強調しましたが、こちらも本来の色はもっと赤だけに近いのかもしれません。

「NGC3372: イータカリーナ星雲」
300_00s_ABE4_BXTc_SPCC_BXT_GHS_back_GHS2_s
  • 撮影日: 2024年5月5日0時4分-1時35分、5月5日19時33分-5月6日0時4分
  • 撮影場所: チリ El Sauce Observatory
  • 鏡筒: Askar FRA300 Pro(焦点距離300mm、口径50mm、F5)
  • フィルター: なし
  • カメラ: ZWO ASI2600MC Pro (-10℃)
  • ガイド: ASI174MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin1、Gain 100、オフセット 50、露光時間5分x63枚=5時間15分
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

これだけHαが多い領域で、たとえノーフィルターだとしても赤は出ています。それでも赤のインパクトが今一つ出ません。画像処理でどうこうするというより、やはりこれはノーフィルターの特徴の色のようです。普段ナローバンドフィルターを通してみている色とは結構違うというのが実感です。

でも南天のメジャー天体で、初撮りでここまで出るのはかなり満足です。日本からだと見えない天体だと思うと尚更です。


小マゼラン星雲

次は小マゼラン星雲です。スタック直後のあぶり出し前の画像では、赤い部分がほとんど出ていませんでした。ノーフィルターではこれくらいが限界でしょうか。それでも青い星雲本体の中での赤なので、上のイータカリーナとは違い、インパクトはあまり必要なさそうで、バランス的にはいい赤だと思います。

「SMC: 小マゼラン星雲」
300.00s_FILTER-L_RGB_BXTc_SPCC_BXT_GHS_GHS3
  • 撮影日: 2024年5月6日1時40分-6時2分
  • 露光時間5分x50枚=4時間10分
構図としては、画角に球状星団のNGC104が入っていて、SMCとの対比がいいです。実は球状星団の中心部がRAW画像の段階ですでに飽和してしまっていて、画像処理で誤魔化さざるを得なかったです。まだ少し不自然かもしれませんが、中心部以外の解像度はかなりものので、ツブツブ感がたまりません。

小マゼラン本体もそこそこカラフルなことがわかります。下に7年前に撮った小マゼラン星雲を再掲載しましたが、構図、色、分解能など、もう雲泥の差です。


大マゼラン星雲

最後は大マゼラン星雲です。こちらも一枚あたり3分という露光時間は少し長かったかもしれません。恒星が一部飽和しているのは仕方ないですが、特にLMCでは右下の星雲の明るい部分も一部飽和してしまい、恒星と星雲の分離の時点で混ざってしまうところがありました。私は普段恒星と背景の合成をPhotoshopのレイヤーの「覆い焼き(リニア) - 加算」を使いますが、今回は「スクリーン」を使いました。「スクリーン」の方が飽和を多少避けることができたので、こちらの方が正しいのかもしれません。でも「スクリーン」だと恒星が弱くなるので、結局強調しなくてはならなくて、明るい部分が新たに飽和しないように、かなり手間がかかりました。

「LMC: 大マゼラン星雲」
BNCc_SPCC_BNC_s
  • 撮影日: 2024年5月6日20時46分-23時59分
  • 露光時間5分x38枚=3時間10分

大マゼラン星雲の名を冠するのなら、もう少し広い画角で撮影できればよかったです。この大きさだと、腕が回転しているような様子は写すことができません。それでもノーフィルターでよくここまで赤が出たと思います。本体の淡い赤も表現できています。割れるような黄色のヒビをもう少し強調したかったのですが、かなり暗い部分なのでノイジーです。ここを表現したかったらもっと露光時間を伸ばす必要がありそうです。


Annotation

恒例のアノテーションです。3連チャンで行きます。さすがメジャー天体で、アノテーションも豪華です。特にLMCはすごいNGCの数です。

_300_00s_ABE4_BXTc_SPCC_BXT_GHS_back_GHS2_s_Annotated

_300_00s_FILTER_L_RGB_BXTc_SPCC_BXT_GHS_GHS3_Annotated

BNCc_SPCC_BNC_s_Annotated


初期の頃からの比較

7年前にハミルトンアイランドに行って50mmレンズとEOS 60Dで撮った小マゼラン星雲はこんな感じです。総露光時間はなんと、たったの7分20秒です。

New5

まだ星を初めて1年で海外へ持っていく機材もままならない状況、画像処理も未熟と、結果としてほとんど何も出ていないですね。小マゼラン星雲のすぐ上にあるのは大きな星かと思っていたのですが、球状星団だったのですね(笑)。これを初の南天撮影とするなら、7年間経ってやっと自己更新です。


振り返ってみて

実質初めてと言っていい南天の空です。しかもメジャー天体を3つもいっぺんに撮ることができました。もう大満足です。貴重な機会を提供していただいたMACHOさんにはとても感謝しています。

リモート天文台はセットアップは大変かもしれませんが、一度できて仕舞えばものすごくパフォーマンスが良さそうです。晴天率も日本より良さそうですし、画像がどんどん溜まっていくのか、1枚にじっくり時間をかけるのか、成果が出るのも納得です。特に今回は上げ膳据え膳で使わせて頂いただけなので、あまりに呆気なくこれだけの画像が得られて、ある意味もうびっくりです。

個人的には機材とかを触っていろいろ改良して、その改良を結果として天体写真で確認したいクチなので、今回のリモート撮影のような恵まれすぎた環境を続けてしまうと、自分の手を入れらなくて物足りなく感じてしまうかもしれません。その分、画像処理に時間をかけて個性を出すこともできると言ったところでしょうか。

この環境を自由に使えることは、羨ましくもあり、ある意味最終形態のようなものなので、ここまでできてしまうと少し寂しくもあると言うのが正直な所です。将来的には同様のサービスがもっと増えて、安価で選択肢も増えていくのかと思います。かと言って、自分でセットアップして撮影するのがなくなることもあり得ないと思います。

最後に、今回は貴重な経験をさせていただいて、本当にありがとうございました。この機会を与えてくれたMACHOさんには改めて感謝いたします。画像処理まで時間がかかってしまい申し訳ありませんでしたが、また何か機会がありましたら、よろしくお願いいたします。



タイトルを見てなんだ?と思われた方もいるかと思います。CP+でお会いしたMACHOさんのお誘いで、チリのリモートで電視観望を経験させて頂きました。地球の反対側なので、日本だと昼間というわけです。


チリのリモートを使っての電視観望のお誘い

そもそものお話は、CP+でセミナーを終えた土曜日の夜、天リフ編集長のお誘いで、あぷらなーとさんと星沼会の方達と横浜駅近くの中華料理店で飲んだ時です。 隣になったMACHOさんが高校生や中学生にちりのリモートを利用して電視観望をしているので、よかったら一緒にやってみませんかとお誘いを受けたのです。

チリのリモート望遠鏡はご存知の通り、Niwaさんが音頭をとって日本で広まっているもので、素晴らしい撮影結果がどんどん出ています。私はまだ経験したことがないので、これは願ってもない機会です。3月16日の土曜日、朝の10時半から、まずはZoomにつないで顔合わせです。その際、そーなのかーさんがヘルプに入ってくれます。そーなのかーさんとは、昨年のCP+2023でお会いした時に、チリ関連の交渉や輸送などに相当活躍されているというお話を聞きしました。今回も実際の操作など、不明なところは簡潔にとてもわかりやすく説明してくれて、そーなのかーさんのサポート体制が素晴らしいです。

ZoomでMACHOさんと、そーなのかーさんと挨拶して、早速すぐに接続してみようということになりました。チリにあるリモートPCへの接続は、シンテレワークというソフトを使うとのことです。私はこのソフトを触るのは初めてですが、シンプルでおそらく歴史のある、とても安定したリモートソフトの印象を受けました。 


実際の操作

私は南天の空は全然詳しくないので、事前に少し調べておきました。といっても、大マゼラン雲などメジャーなものばかりですが、最初なので十分満足するはずです。導入はCarte du Cielを使ってASCOM経由で赤道儀と繋いでいるいるようです。でもソフトも好きなものを使っていいということで、必要ならStellariumなどをインストールして赤道儀と接続してもいいとのことでした。とりあえず今回はお手本で、最初は大マゼラン雲を導入してもらいました。

SharpCapの画面常にすぐに大マゼラン雲の中心のが出てきます。今回は普段私が電視観望をどのようなパラメータでやっているか見てみたいとのことでしたので、私自身でSharpCapをいじらせてもらいました。このリモート接続用のシンテレワークはかなり優秀で、複数の人がリモート先のPCをコントロールすることができます。本当に同時に操作とかしなければ、実用で十分に複数人で話しながらいじることができました。私の今回の環境は、Windowsからシンテレワークで接続して、 MacではZoomでつないで、同じ画面を供してもらっていたので、2画面で同時に確認できて一見無駄に思えても、動作に確証が持てて意外に便利でした。一つ不満を言うと、SharpCapのヒストグラムの黄色の点線を移動するときに、その点線を選択することがちょっと大変だったことくらいでしょうか。どうもシンテレワークから見ると、線の上にマウスカーソルを持っていってもマウスポインタが変化しないので、ここら辺だったらOKだろうと見込みをつけて左ボタンを押して線を選ぶ必要があります。

今回電視観望用に使う機材はFRA300ProにASI2600MC Proをつけたものです。これは亀の子状態でTOA150の上に乗っているそうです。こちらは撮影用でカメラはASI6200MMとのことです。機材は別カメラでモニターできるそうです。下の画面の位置がホームポジションで、パークされた状態とのことです。
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電視観望はカラーカメラなので、すぐに色がついた大マゼラン雲が出てきます。パラメータは好きにいじっていいとのことなので、私がいつも設定するように、露光時間は6.4秒、ゲインは500くらいです。露光時間がこれより短いと、読み出しノイズのような横縞が目立ってきてしまうようで、これはASI2600MCがそこまで感度が高くないからではないかとのことでした。露光6.4秒でライブスタックすると、どんどんはっきりと、色鮮やかな大マゼラン雲になっていきます。この時点ではまだ操作に夢中で画面をキャプチャーするのを忘れてしまっています。

実際、大マゼラン雲をこのように自分で操作して見たりするのは初めてです。画面いっぱいに広がるので大迫力です。次に小マゼラン雲も見たかったのですが、こちらはまだ高度がかなり低いようなので諦めます。天文を始めたから結構すぐにオーストラリアに行ったことがあって、この時は大マゼラン雲はみいていなくて、小マゼラン雲だけ撮影したことがあります。でもその時はまだ技術的にも未熟で、しかも満月近くだったこともあり、記念撮影のレベルでした。今回は短時間の電視観望ですが、大マゼランになったこともあり、はるかに満足度が高いです。


SharpCapでのキャプチャ画像

小マゼラン雲の代わりに、りゅうこつ座にあるNGC3372: イータカリーナ星雲に行きました。ここでやっと忘れずにキャプチャできました。光害防止フィルターとか無しの電視観望で、こんなに見事に見えます。これで合計わずか2分半のライブスタックです。
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操作していて気づいたのですが、SharpCapのバージョンが4.0台と少し古くて、いくつかの重要な機能が使えなかったので、途中から最新版の4.1台にアップデートしました。こんなふうに気軽にアップデートができるのも、個人で全てを操作しているからで、公共の天文台の利用とかだとある程度使うソフトには制限があり、なかなかこうはいかないと思います。

4.1で使いたかった機能は、
  • ライブスタック時のカラーバランスの自動設定の際の、鮮やかさの調整機能。1−8段階で選ぶことができ、見かけがかなり変わるので、まだ試していない方は是非試して見てください。
  • 背景のノンリニアなフラット化機能。実際試したら少しだけ炙り出しが改善しましたが、もともとカブリなどほとんどない場所だと思いますので、あまり必要ないかもしれません。
  • ホットピクセルとコールドピクセルの簡易除去。カメラによると思いますが、ASI2600MCだと、今回特に冷却とかしていませんが、元々目立つようなホットピクセルとかないように見えるので、この機能もほとんど必要ないかと思われます。
あと、新機能ではないですが、ライブスタックのカラーバランスバーの右の彩度調整バーは今回いろいろ変更しながら使いました。やはり星雲など色がついているものは、ここを少し上げてやるとかなり見栄えが良くなります。

ライブスタックのヒストグラムでまず雷ボタンで一段階オートストレッチして、その結果が右パネルのヒストグラムに伝わるので、さらに右パネルの雷ボタンでオートストレッチすると、かなり見栄えが良くなります。その際、オートストレッチを使ってもいいですが、派手すぎたり、もっと炙り出したいとかもあったりするので、必要な時はマニュアルで黄色の点線を移動するようにしました。

途中で、「保存するときのファイル形式はどうしてますか?」という質問がありました。まず、RAW16になっていることを確認して、形式は普段はfitsにしています。TIFFでもいいのですが、後で画像処理をするときにはたいていPixInsightになることと、ASI FitsViewerで簡易的にストレッチして見るのが楽だからです。保存は、ライブスタックパネルの左の方の「SAVE」から、16bitか、3つ目のストレッチ込み(これはライブスタックのヒストグラムでストレッチしたところまで)、もしくは4つ目の見たまま(これはライブスタックのヒストグラムのストレッチと、右パネルのヒストグラムのストレッチがかけ合わさったもの)で保存します。後者2つは8bitのPNG形式に強制的になってしまいますが、十分ストレッチされていれば8bitでも大丈夫でしょう。


次々に大迫力の画面が!

次に見たのが、同じりゅうこつ座にあるIC2944 で、「走るにわとり星雲(Running Chicken Nebula)」と海外では呼ばれていますが、 日本では「バット星雲(コウモリ星雲)」と呼ばれているものです。いまいちニワトリに見えない気がするのですが、もう少し淡いところも出すとニワトリに見えてくるようです。
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途中、天体を辿っていくのに、アノテーション機能を使いました。アノテーション自身は単に天体の名前を示すものですが、上の画像のリストを見るとわかるように、画面内に写っている天体の名前がリスト化されていて、その中の天体を選択して中心に持ってくることができます。さらにリストの次のタブの「Objects Nearby」では画面外の近くの天体リストを出すことができて、その中の名前を選んで中心に持ってくることもできます。要するに、次々に近辺の天体に移動しながら、天体巡りができるというわけです。あと、別機能で画面内をクリックしてそこを中心に持ってくるとかもできるようになっていました。SharpCapも確実に進化しているようです。

もう一つ確認したかったのが南十字星でしたが、画角的にちょっと入らなさそうだったので、南十字座にあるNGC4755を見てみました。結構小さいのですが、少し拡大するだけで構成の色も含めて十分に見ることができました。真ん中に見えているNGC4755の右上に見えている明るい星が、南十字の一つのミモザになります。
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驚いたのは下の方に写っているコールサック(石炭袋)と呼ばれる暗黒隊が余裕で写っていることです。電視観望でこんな暗黒体が見えるのは、やはり空がいいからなのだと思います。

次に見たオメガ星団は見事でした。少し拡大していますが、まだまだつぶつぶ感満載です。かなり拡大しても大丈夫そうでした。日本からも見えますが、光度が低く、撮影するのもなかなか大変です。
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南半球特有の最後はケンタウルス座のAです。こちらも日本からも見えますが、例えば私が住んでいる富山では南天時でも高度10度くらいとかなり低く、実際ここまで見るのは難しいでしょう。今回は中心部の構造も見えています。
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最後は、比較のために北半球でも普通に見えるかもめ星雲を導入しました。最初結構淡いと思いましたが、これまで見ていた大マゼラン雲とかが鮮やかすぎるのです。しかも聞いてみたらノーフィルターだそうです。フィルターとかのことを話していたらそこそこ時間が経ったみたいで、ライブスタックが進みHαも鮮やかになっていました。これで約9分のライブスタックです。しかもOIIIでしょうか、青い部分も綺麗に見えてきています。

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ノーフィルターでこれだけ見えるのだから、やはりチリの空はすごいです。多分低いところですが月がまだ出ていたと思いますので、それでもこれだけでます!


まとめ

うーん、チリのこのセットアップ、羨ましくなってしまいました。元々は自宅の庭でそこそこ撮れればいいくらいが目標でした。目標の中には、自分でいろいろ機材をいじって改善して、その成果が撮影した画像になって現れるようなことも入っています。なので、あらかじめセットアップされたものは避けていたのですが、短時間の電視観望さえここまで違うと、一度撮影とかまでじっくり時間をかけてみたくなってしまいます。それくらいに魅力的な空でした。

今回はとても貴重な経験をさせて頂きました。初めての南天巡りということもあり、私自身は相当楽しめました。MACHOさんとそーなのかーさん、本当にありがとうございました。今後、中高生と電視観望会など開くときは、是非ともまた参加させていただければと思います。


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