ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:シーイング

シーイングを客観的に評価するのは結構大変です。今回は太陽望遠鏡としてヘリオスター100Hαにモノクロのピクセルサイズ2μmのG3M678Mを用いて撮影した多数の画像を使い、シーイングを計測してみようと思います。

本記事はCP+で話した太陽トークでまだ記事にしてないことの一つで、
の3と4になります。


撮影条件

撮影日は2026年2月14日、ヘリオスター100Hαで太陽を約30秒に1回、約1時間で合計120枚撮影しました。一回あたりの撮影では、露光時間5ms、gain200 (ZWOのカメラでgain60=6dB=2倍に相当) で、200フレームを撮影しています。フレームレートは40fps程度で、一回の撮影で5秒くらいかかります。

ちなみに、1ファイル3GB程度の大きさになるので、120回撮影すると400GBものサイズになります。今回は通常の1倍撮影と、2倍のバローレンズをつけた撮影の、120x2=240回になります。画像処理も入れるSSDを1TB近くを消費したことになります。今回はテストなので全ファイルを残していますが、シーイングの悪い時間帯のserファイルは消すとかしないと、流石にストレージが持ちません。

1回の撮影でできたserファイルの200フレームのうち、AutoStakkert!4で上位80%をスタックします。これを120回分まとめて全て連続処理しますが、できた1枚1枚の画像ファイルのサイズはバラバラになってしまうので、ImPPGで画像サイズを合わせます。必須ではないですが、同じくImPPGで位置合わせまでしてしまうと、後からのタイムラプス映像を作る時の処理が楽になるでしょう。

これ以降シーイング評価の話になりますが、実際にやったのは目で画像を見て分解能別に分別することです。目で画像の分解能を見分けるためにはスタック直後の画像ではボケボケで見分けがつかないのでダメで、それをImPPGのバッチ処理を使い、細部出しをしたもので判別しています。その後、アルゴリズムで画像から分解能を評価するテストに進みましたが、その際はImPPGで細部出しをしたものではシーイングが現実的な値にならずにうまく評価できませんでした。そのため、以下の話はスタック直後の画像で評価しています。


シーイングの評価

画像からシーイングを評価する方法としては何種類かありますが、ここでは5つの方法を試しました。
  1. Tenengrad: 画像のシャープネス(鮮明度)や焦点の合い具合を評価するためによく用いられる勾配ベースの指標
  2. ラプラシアン分散(Laplacian Variance): 画像内のエッジ(輪郭)の強さを表す「ラプラシアン」を計算し、その分散(ばらつき)を算出する。
  3. FFT高周波比(高周波/低周波パワー比): 信号の全パワーに対する特定の高周波帯域(バンド)のパワーの割合を計算する。
  4. エッジ遷移幅: エッジ画像からエッジスプレッド関数 (ESF、画像上の輝度変化)を求め、それを微分してラインスプレッド関数 (LSF)を求める。エッジ法線方向に輝度プロファイルを取り、誤差関数(erf)やロジスティックでフィットして遷移幅を得る。
  5. フレーム間jitter(位相相関で微小シフト): シーイングは「ぼけ」だけでなく「像の揺れ」も大きいので、サブピクセルの微小移動は残る。連続フレームの相互相関からピーク位置のシフト求め、jitter のRMSを計算。
1-5までの評価を120枚に渡り、横軸時系列で、縦軸を粗さ細かさの変化でプロットします。

それぞれの計算結果が正しいかどうかの判断はなかなか難しいです。ここでは120枚の画像を目で見て1枚1枚粗さ別に仕分けして、それを時系列でプロットしてみた場合と比較してみました。

その結果、少なくとも3と5は、見た目で分けた傾向とは全く違いました。3はブレが大きい場合の違いを見分けることが得意でないようです。5は大きく間違えている場合がいくつかあったので却下しました。

1、2、4に関しては、目で見た傾向とは似たものが得られました。相対的な変化は甲乙つけ難いですが、問題はこの粗さ細かさの相対的な時系列変化を、シーイングという秒角の単位の絶対的な評価にしてやる必要があります。この場合、arcsec/pixelの値がわかっていれば、秒角にまで落とし込むことができるはずです。ところが、これがなかなかうまくいくことができずに、結局1のTenengradのみがそれらしい値になりました。2と4はいずれも1秒角以下と現実的な値から乖離していたので、今回はこのTenengradを採用することにしました。


シーイング変化の結果

その際の結果が以下になります。
graph_x1_ok



グラフを見る限り、1時間の間にシーイングがどんどん良くなっているのがわかります。9時頃は4秒書く以上と、典型的か少し悪い程度。それが改善されていって、10時頃からは1秒角程度になっているので、相当良かったことがわかります。この評価ですが、見た目で仕分けたものと比較してみます。見た目の画像は先に書いたように、ImPPGで細部出しをしたもので分別しています。

graph_x1_eye_ok

右軸の目の評価はランク付けしただけの値なので、秒角とは無関係ですが、少なくともTenengradで評価した傾向は目で見て分けた傾向とそこそこ合っているように見えます。その目で仕分けた画像を、分解能別の頻度分布を画像枚数で表してみます。
hist_x1_ok
頻度は正規分布にそこそこ従っているように見えます。全枚数をある程度の順位付けした後、一番いいものと一番悪いもの、ちょうど真ん中のもの、真ん中とベスト、ワーストの中間の5枚を引き出して並べてみたものが下の比較図です。左がワースト、右がベストになります。

five

同じ機材、同じ手法、同じ日でも、1時間内で見た目でわかるほど大きく分解能が変化することがわかります。このばらつきが上記のような分布に従うとすると、何も考えずに適当に撮影すると真ん中ら辺の画像になる確率が一番高くなります。きちんと選ぶと、1時間で120枚撮影したうちのわずか数枚は、ものすごくいいシーイングになりますが、その確率は数%と小さいので、偶然に頼るのはあまり得策でないことがわかります。


2倍バローでどうなるか?

上記の撮影に加えて、連続して2倍のバローレンズをつけて焦点距離を伸ばし、再び同条件で1時間、120枚の撮影をしました。焦点距離を増やしたということは、カメラのピクセルサイズの制限が緩和されるので、うまくいくとより分解能がよくなるはずです。

これも同様に時系列で解析します。

graph_x2_ok

横軸の時間を見てもらうとわかりますが、1倍の撮影の直後の時間帯から始めていて、グラフの値も1倍の最後のところをほぼ踏襲しているように見えるので、評価としては同様のことができていると思われます。

続いて、目で仕分けしたものとの同一プロットです。

graph_x2_eye_ok


まあそこそこ傾向は一致しているように見えます。というより、目で見ていてももう良すぎて差がわからないと言った状況でした。

同様に分布図です。

hist_x2_ok

1倍の時は正規分布に近い形をしていましたが、2倍の場合はどちらかというとピークが左側に寄ってしまっていて分解能が頭打ちのような状況になっているのかと思います。一つの解釈は、もう口径や光学系の制限に近づいてしまい、これ以上シーイングが良くなっても、像は良くならないと考えることができそうです。もしまだシーイングのばらつきが効いているなら、分布はもっと左側に広がってもいいはずだということです。

実際、1倍の時の一番いい画像と、2倍の時の1番いい画像を比べてみます。
x1_x2

確かに微妙に2倍の方がいいように見えますが、そこまで大きな差は無いと言えそうです。いいシーイングを実現してはじめて、やっとヘリオスター100Hαの性能限界に近づくことができるということなのかと思います。逆に言うと、口径100mmの性能を引き出すのは、そう簡単ではないということです。

もし、ヘリオスターの76mmでも100mmでもいいのですが、撮影したらフェニックスとそう結果が変わらなかったと悩んでいる場合は、ぜひともシーイングを選ぶということをやってみてください。方法はいろいろあるかと思いますが、これまでの経験から30秒くらいの単位で大きく変わることもあるので、やはり今回のように長時間、30秒くらいのスパンで間欠的に撮影して選ぶのが確実なのかと思います。


シーイングがこんなにいいのは本当か?

ここで少し疑問が湧きます。上のシーイングの時系列グラフを見てみると、1秒角を切っているところがあります。日本でのシーイングは典型的には2-4秒角、いい時でも1秒角と言われています。今回のように1秒角を平気で切るようなことはあり得るのでしょうか?

少し調べてみると、一般的な天文観測サイトでは
  • 良い観測地(世界標準)-> 中央値 0.6–0.8″
  • 普通の観測地 -> 中央値 0.8–1.5″程度
  • 都市・低地 -> 中央値 2″以上も普通
とのことです。でもこれは世界でのことで、日本ではいろいろ不利な面があり、典型的には
  • 山岳観測所(木曽・岡山など) -> 中央値 1–2″程度が中心
  • 良い夜(山) -> 中央値 0.8–1.0″
  • 非常に良い夜 -> 中央値 0.6–0.8″
  • 平地・都市 -> 中央値 2–4″以上も普通
とのことです。これらの値は全て中央値であることに注意です。今回の撮影は自宅なのですが、時間によって1秒角から5秒角くらいまではブレても良さそうです。今回の測定結果を見ると、6秒角くらいから1秒角を切った時間帯もあります。もう少しきちんと考えてみます。

そもそも、シーイングとは普通はどう測定されるのかというと、一般的にはDIMM(Differential Image Motion Monitor)とも呼ばれ、ミリ秒単位の短い露光で「波面の傾きの揺らぎ」を測定し、その「ばらつき(分散)」を評価します。注意すべきことは、DIMMでは短時間露光が必須ということです。仮に露光時間を長くして平均化すると画面はぼやけるのですが、その一方でばらつきは小さくなってしまうため、もしシーイングとして評価しようとすると、良すぎる値が出てしまいます。要するに、平均化で見た目はボケてもシーイングがいいと判断してしまい、逆センスとなるわけです。これはシーイングという指標が、高次の細かい波形を見ているわけではないことを示しています。

その一方、今回の撮影は惑星のように、ごく短時間露光で撮影して多数枚をスタックしています。具体的には5ms撮影で160枚スタックしたものを1枚の静止画としています。AutoStakkertは特徴点を抽出して画像を歪めて位置合わせするようなアルゴリズムのはずなので、短時間で露光したものは一瞬一瞬のブレの少ない状態を撮影して、その特徴的な位置を認識し、次の画像も特徴的な位置を合わせるように画面を歪ませて画像を重ね合わせています。なので同じトータル時間 (ここでは5秒くらい) で単純に平均化した画像と比較すると、位置合わせして多數枚スタックした画像はシャープさが格段に良くなります。こう考えると、短時間露光で評価したシーイングと、位置合わせ多数枚スタックは同等の露光時間で評価したと言っていいのかと思います。

もう少し詳しく書いておきます。今回スタックした画像というものは、厳密にはシーイングそのものは違っていて、実効的にはPSF(Point Spread Function)を評価しています。PSFは点光源がどのように広がるかを表す関数で、これを「秒角/pixel」という画角とカメラセンサーから出てくる値から、PSFのFWHM を秒角単位にしたものです。短時間露光のスタックなので、短時間露光で測定したシーイング相当になるというのは上記で説明したとおりでいいでしょう。ただし、短時間露光スタックの方が一般的にいいFWHM値が出てしまうようです。理由は難しくはなく、位置合わせによって本来シーイングが見るべき傾き成分が取り除かれてしまい低周波成分が減るため、PSFのFWHMが小さくなるとのことです。例えばオフアキでのAO撮影のように、単純に各フレームを平行移動でそろえるだけでも一般的にFWHMは改善しますし、画像を歪ませての位置合わせとなると改善はさらに大きくなります。

さらにですが、今回は200枚中の上位160枚で8割を選んで使っていますが、この割合をもっと減らして1つのserファイル内でラッキーイメージング的なことをもっと進めると、さらに改善幅は大きくなる可能性があります。

というわけで、普通に評価するシーイングよりもスタックした方がある程度良い値になるというのは少なくとも定性的にはおかしくなさそうで、上記のグラフで出した良すぎる値は十分あり得るのかと思います。

このように厳密にいうとスタック撮影から評価した分解能はシーイングとは違うということになりますが、ここではイメージしやすいということで、グラフ内ではシーイングという言葉をあえて残すことにします。


まとめ

撮影した多数の太陽のHα画像から、シーイング相当の時間変化を定量的に評価してみました。1時間でシーイングは大きく変化し、その際の最も分解能の出ている画像と、最もボケた画像では、大きく違うことがわかりました。同じ機材を使って、ここまで大きな差があることは驚き以外のなにものでもありません。いいシーイングを選ぶということは非常に重要で、口径の大きいヘリオスター100Hαはシーイングを選ぶだけの価値がある太陽望遠鏡だということです。その一方で、口径限界まで達するとそれ以上いいシーイングがあったとしても、分解能は頭打ちになってしまいもうそれ以上改善しません。

口径100mmはハイエンドクラスの太陽望遠鏡なのですが、口径200mmや300mmでの太陽画像の分解能はさらに別世界となります。例えばここは、口径300mmの太陽望遠鏡を市販しているメーカーになります。最後は口径が効いてくるのは、惑星の場合と同じなのかと思います。


日記

2月の途中から3月はとにかく忙しかったです。CP+もありましたが、その前後も合わせて出張が多くて、ほとんど自宅にいない日が続きました。たまに自宅にいても1日とか2日で、次の日朝早く出発することを考えるとなかなか夜の撮影もままならない日が続きました。

そんな中で、先日実家の名古屋に行く用事があり、ついでにSCORPIOに寄ってきました。いつもの如く何か買うわけではないので申し訳なかったのですが、店長さんにCP+の黒点振動の動画を見せたりして盛り上がりました。ちょうど来ていたお客さんに、小学4年生の男の子と、さらにその後中学2年生の女の子がいたので、黒点振動や撮影した星雲や銀河の写真をみてもらいました。二人とも天文に興味がある子達で、一人は望遠鏡の受け取りに、もう一人は赤道儀の検討に家族と一緒に来店していました。その間に、ヘリオスター76Hαを覗かせてもらったりして、結局2時間近く滞在してしまいました。店を出た後に、たまたま宙うたさんが来店されたらしくて、つい先日購入されたヘリオスター100Hαを持ち込んで76Hαと並んで太陽を見ていたとのこと。せっかくなので宙うたさんとお会いしたかったです。もう少し長くいればよかったのかもしれません。

更に今週末は天文仲間のお客さんが自宅に来る予定です。少し準備をしたいので、できれば平日のうちに晴れてくれればいいのですが。


これまで何度となく粒状斑の撮影を試みてきましたが、どれも全く満足とはいかずに、撮影手法が正しいのかさえわからないような状態でした。今回、シーイングのいい状態をものにする方法がわかったので、再挑戦してみました。


これまで

これまでのベストは、昨年かなりシーイングがいい日に撮ったもので、それでもこの程度です。
_08_10_59_F0001_1000_lapl3_ap680_IP_0_5_4_5_5_ABE_MLT_cut

かろうじて粒々らしきものが見えていますが、まだ粒状斑と言うにはほど遠いです。それでも画像処理も無理しない範囲でこれだけ出たので、やはりシーイングが重要だということは少し理解できていました。でもシーイングをこれ以上劇的によくする方法は、まだ全然見通しが立っていませんでした。

その後も何度が挑戦はしていますが、上の結果をどうしても超えることができずに、もう今の機材や方針では無理なのではないかと、だんだんあきらめるようになってしまっていました。同時に、太陽全体に対するモチベーションが下がる原因にもなってしまっていて、太陽に関してhPhenixを触るまでずっと盛り上がらない日が続いていました。


悪条件なのに

最近の太陽の成果でいいシーイングを確実にものにする方法がやっと確立したことになるので、満を持して長年の課題だった粒状斑に再挑戦してみました。

と言ってもこの日は午前がずっと天気が悪く、午後になって少し晴れた程度で、まだまだほんのテストで、そこまで気合入っていません。フィルターもBaaderのOD5の減光フィルムのみで、その他はノーフィルターです。撮影中もずっと薄雲が出ていて、しかも間違えてRAW8で撮影という、普通で考えたらそのまま却下なくらいの状況でした。それでもまあ、休日の晴れ間ということで、セッティング時はしーいんぐもよさそうだったので、撮影を開始してから2時間ほど放っておきました。

30秒間隔で1ショットあたり200フレーム、合計240ショット撮影したのですが、半分くらいの時間は雲で暗くなっていて使い物にならなかったです。残りの半分切るくらいのうち、セッティングして少し経ってくらいの3本だけが分解能よく撮れてました。ベストの1本だけだとノイズがまだ目立ってしまったので、200フレームだと少し足りないのかもしれません。試しに近い時間だった3本を合わせて、600フレームのうちAS4!で上位50%を処理してみると、もう少しマシになりました。その結果です。

all_lapl2_ap3866_IP_cut2

天気や自分の設定ミスなどもありかなりの悪条件だと思うのですが、初めてここまで粒状斑が出て、あっさりベストを更新してしまったと言っていいでしょう。やはりこの、連続して長時間撮影していいシーイング時間を選択するという方法はかなり有効なのかと思います。

今後の課題は、OD5のフィルムだとまだ暗いようなので、同じBaaderのOD3.8フィルムに変えることと、540nm付近のフィルターを入れることでしょうか。


まとめ

粒状斑についても少し見通しがついてきました。とういか、むしろ粒状斑を出したくてシーイングのいい時をみるける方法を探っていたと言ってもいいのかと思います。天気もあまり良くなくて、まだ大した時間は試せていないので、もう少し条件のいい日で試したいと思います。まだまだ改善するはずです。





黒点周りのタイムラプス映像のための画像を処理していてい、とても面白いことに気づきました。これは今後の分解能出しに大きく影響しそうです。


短時間で大きく変わる分解能

全く同じ条件で撮影しているのに、1枚1枚の画像の分解能が全然違うのです。例を示します。

こちらはある時刻10時42分のものです。200フレーム撮影したもののうち、AS4!で上位90%をスタックし、ImPPGで細部出しをしています。かなり解像度が出ているのがわかります。
10_42_19_lapl2_ap3983_out

次はその1分後のものです。全く同じ条件でAS4!でスタックし、ImPPGでこれも全く同じパラメータで細部出しをしています。何も変えていないのに、ボケボケです。
10_43_23_lapl2_ap3860_out

次はさらに1分後です。再び解像度は復元しています。
10_44_28_lapl2_ap3962_out

わずか1分でここまで変わっていいのかというくらいの違いです。これらの例の他にも、解像度が悪いのが3枚ほど続き、復帰しているなどもあります。


2時間の中でベストとワースト

120分の中で、ベストの11時46分5秒のものと、ワーストの11時16分55秒のものです。処理条件は上の3枚と全く同じです。ここまで違っていいのかというくらいの違いです。
11_46_05_lapl2_ap3983_IP2_13

11_16_55_lapl2_ap3756_out


分解能が変わる原因

この突発的な解像度の変化の原因は、いくつかの可能性が考えられます。
  • シンチレーションの悪化
  • 風で揺れた
  • 何かの拍子に地面が揺れた
  • たまたま機材の不調などな
などでしょうか。

これらの分解能の違いはリアルタイムで画面を見ていた時は、あまり違いに気づけませんでした。今回、ImPPGで細部出しをして、そこで比較していいものと悪いものを動画に戻って比べて見てみると、ああなるほどと思ったくらいです。

分解能が悪くなるのは、2時間の撮影中のある時間帯だけに起こっているのではなく、最初から最後までバラバラに発生しています。こう考えると、
  • 地面の突発的な揺れがこんなふうにバラバラの時間で満遍なく発生するとはあまり考えられません。
  • また、風の場合は画面が大きく揺れることがわかっていますが、分解能が悪い時の動画を生で見てみると、どうも細かい揺れが多いように見えます。
  • 機材の揺れだと事故的に単発で起こるか、もしくは何かが原因で周期的に起こるかなどです。短髪にしては頻度が多すぎます。また、ばらついてはいるものの、周期的に起こっているわけではないようです。
なので、とりあえず今の所はシーイングの時間変動と考えるのがもっともらしいと思っていますが、もし仮にそうだとしたら、シーイングが分単位でここまで変化するとは本当に驚きです。シーイングが時間で変わることは知識としては知っていましたが、30分とか、せいぜい早くても10分とかいう単位だと思い込んでいました。今の所時間スケールはまだはっきりとはわかりませんが、分かそれ以下の時間でで大きく変わると考えて良さそうです。

こうなると今後の撮影方針はかなり変わってきます。これまではいいシーイングを探して、3-4時間の中で数十分おきに撮影したりしたことはありました。その時は明確な差は判らなかったので、それ以降いいシーイングを探すのはあきらめてしまっていました。今回の結果から考えると、数十分おきとかではいいところを探しきることはできなかったのでしょう。


分解能の時間のばらつき具合

120枚の分解能の内訳ですが、
  1. ベストに近いもの: 5枚
  2. ベストクラスからは劣るけれども、そこそこいいもの: 15枚
  3. 特別いいわけではないけれど、普通にいいもの: 39枚
  4. それより分解能があからさまに劣るもの: 39枚(前々々回のブログ記事で示した、最初の時間の撮影で1000フレームで仕上げたものはこのランクの中の悪い方か、次の5のランクの中のいい方くらいでした)
  5. 仕上げには絶対使いたくないもの: 17枚
  6. ワーストクラス: 5枚
といったところでしょうか。

ベストの5枚の時間はそれぞれ: 
  • 11時5分1秒
  • 11時43分54秒
  • 11時46分5秒
  • 11時55分48秒
  • 12時26分3秒

ワーストの5枚の時間はそれぞれ: 
  • 10時43分23秒
  • 11時16分55秒
  • 11時19分5\4秒
  • 12時27分8秒
  • 12時28分13秒
となっているので、少し近い時間帯もありますが、そこまで偏っているわけではなくて、結構散らばっているのがわかるかと思います。

せっかくなので、典型的な画像も載せておきましょう。順に上の順位の1から6の中で、それぞれ真ん中らへんのものを選んでいます。

1_10_45_33_lapl2_ap3969_out
2_11_11_30_lapl2_ap3983_out
3_12_10_54_lapl2_ap3858_out
4_12_20_38_lapl2_ap3952_out
5_12_08_44_lapl2_ap3915_out
6_11_19_04_lapl2_ap3906_out

ある程度正規分布に従いそうなので、数多く撮影して一番いいものを選ぶというので、これまで適当な時間を一本だけ撮影するよりは、大幅な改善が期待できそうです。


ベストの200フレームの中で

あともう一つ、ベストと思われる11時46分5秒の200フレーム撮影のうち、ベストと思われるものとワーストと思われるものを示しておきます。一本のserファイルを200枚のTIFF形式に分解し、個々の画像にImPPGで細部出しをしてみました。

11_46_05_102_out

11_46_05_182_out

わずか数秒の撮影中にも、分解能のいいもの、悪いものが存在するようです。この200フレームを、いいと思うものと、悪いと思うものの2種類に分けてみたのですが、いい時も悪い時も10枚くらい続くことが多かったです。ということはいい時と悪い時が0.3-0.4秒おきくらいのタイムスケールで替わっていると考えることができます。まだ今回だけの話なので、これがどこまで一般的かはわかりませんが、もしこのタイムスケールが本当だとすると、想像していたよりもはるかに速く入れ替わっているという印象ですです。


4月5日の評価

その後の別の日の連続撮影などから分かったのですが、4月3日は(朝ということもあるでしょうが)基本的に平均してかなり分解能よく撮れた日だったのかと思います。分解能が悪かった日も、機材や画像処理の条件は4月3日と同じで、さらに特に風が強いとかでもなかったので、少なくともシーイングが大きく変わったと考えてよさそうです。このような日の場合は、ほとんどの時間帯の分解能が悪くて、ごくごく稀に分解能がいい時があるというような感じです。これまでたくさん撮影してきましたが、実はほとんどの日は、このようなシーイングがあまりよくない状態だったと思われます。たまによく撮れた日は、平均してシーイングがよかったのでしょう。でもベストでは全然はなかったはずです。

「太陽撮影はシーイングがいい時間帯を見つけて撮影すればいい」というようなことは聞いていたのですが、この意味が実は全くわかっていなかったことが、今回よくわかりました。シーイングが特別いい日でなくても、本当にシーイングがいいかなり短時間の瞬間があるということがやっと理解できました。これまでこんな短い時間で比較して選んだことはなかったので、いい瞬間に巡り会えたことはほぼなかったと思っていいと思います。

4月5日の結果から、シーイングは、1分あればいい状態から悪い状態へとポンポン変化して、さらに突き詰めると、0.1秒とかいうスケールでいい悪いが入れ替わっても全くおかしくないということがわかりました。もう少しサンプル数は増やしたいですが、だいぶん正体が見えてきたので、実際の撮影間隔をどれくらい取ればいいかがある程度決定できそうです。


いいシーイングの威力

2時間の撮影の中でベストを選ぶのと、適当な時間にたまたま撮ったものを比べてみましょう。まず、タイムラプスで撮影した120枚の中で分解能がベストと思える、11時26分5秒のものを処理したものです。露光時間1.25msで、200フレーム撮影したものです。60FPSくらいは出ているので、3-4秒間にわたり撮影したことになります。200フレームのうち、さらに(AS4!の選別がまだ信用できないので)目で91枚を選別したものをスタックしています。
11_46_05_lapl2_ap3963_IP_ST
  • 撮影日: 2025年4月5日11時46分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Celestron C8 (f2000mm、F10)  + Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestrn CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI290MM
  • 撮影: SharpCap Gain 100、露光時間1.25ms、10時40分から12時48分まで、30秒ごとに200フレームを120回撮影して、そのうちのベストの91/200をスタック
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、PixInsight SolarTools、Photoshop CC

次に、前々回のブログに載せた、この日の最初の方でに1000フレームで撮影したものを下に再掲載して、比較してみます。露光時間は同じですが、60FPSとすると20秒くらいに渡って撮影しています。そのうちAS4!で上位75%を採用しているので、750枚のスタックになります。
07_52_22_lapl2_ap3839_c

比較すると、上の方がわずか91フレームながら、圧倒的に高解像度なのがわかるかと思います。下の方は塗り絵みたいで気持ち悪いです。でも最初の記事を書いたときはこれでも分解能はいい方だとしんじていました。

もちろんノイズ的には少数フレームの方が不利なので、軽めのノイズ処理をしていますが、仕上がりは比べるまでもないと思います。ベスト画像を選ぶことが、いかに大事かがわかるかと思います。

いい時間を選ぶことでかなりきれいに出たので楽しくなってしまい、91フレームのものを、色反転したもの、さらにモノクロとその反転も作ってみました。
11_46_05_lapl2_ap3963_IP_ST_inv
11_46_05_lapl2_ap3963_IP_ST_mono
11_46_05_lapl2_ap3963_IP_ST_inv_mono

ここまで出ると、こうやっていろんなパターンを作る甲斐もあるというものです。ただ、こうやって見て改めて思うのは、PSTのエタロンの限界です。どの画像もそうなのですが、上の方とか右の方は、やはり波長がずれていて、分解能も落ちてしまっています。分解能が良くなってくると、その差も目立つようです。ここら辺の改善が次の課題でしょうか。でもそんなに簡単ではなさそうです。

同じく、プロミネンスです。こちらは1分おきに200フレームで30分間撮影したものの中から、ベストなものを選び、AS4!で上位90%を選んでスタックしたものです。

08_44_10_lapl3_ap3959_newIP_ST

次が前々々回示したもので、1000フレームを75%スタックしたものです。
08_00_23_lapl2_ap1030_nodot_c_2

プロミネンスだけでなく、太陽表面が全然違います。分解能がいいと、表面に結晶の花が咲いたような模様になります。上の方の画像の画面の右はやはりエタロンのせいで波長がずれてしまっていて、分解能が全く出ていません。ここまで違うと、うまく出ていない所はもうクロップしてしまった方がいいのかと思います。実際、下の画像は目立たないようにクロップしていました。


まとめ

これまで仕上げ用には最低500フレーム、場合によっては2000フレームとか撮影していましたが、大事なのはフレーム数ではなくて、シーイングがいい時間帯をいかに選ぶかということでした。いい時間帯を選んだ上で、仕上げるのには100フレームもあれば十分だということもわかりました。

これまでなかなかいいシーイングの見つけ方がわからなかったのですが、この4月5日は平均してシーイングがいい日だったので、色々検証することができました。今回は、口径20cmで焦点距離2000mmという機材の分解能に制限されない状態だったので、シーイングがいい状況にきちんと対応でき、その違いを知ることができたと考えてもいいと思います。言い換えると、口径20㎝とかを生かそうとしたら、シーイングを相当選ばないと意味がないということです。

そして、シーイングがいい瞬間は確率的に少ないですが、確実に存在はするので、それを取りこぼさないように長時間で何ショットも取り続けて、その中でベストのものを選ぶのがいいのかと思います。こうすることで、これまで本当に運頼みだった良シーイングを、ある程度確実にものにする方法を得たということになります。その代償として失うものは、余分に使う撮影時間とディスク容量といったところでしょうか(笑)。

ただし、静止画の場合はこれでいいのを選べるのですが、タイムラプスだとベストを選び続けるのは不可能です。これは仕方ないのですが、静止画と動画は画像処理も違う手法が取れるので、そこらへんに解があるのかと思っています。





前回の記事のM104撮影に際し、少し検討したことがあるので、メモがてら書いておきます。大したことではなく、ホントに補足程度です。



恒星の飽和

今回のM104の撮影では、2023年5月と2024年4月で、機材や設定はほぼ同じで、露光時間だけ5分から1分に縮めました。5分露光では多くの星が飽和していて、1分間にしてもそこそこの数の恒星が飽和していることを前回示しました。

いい機会なので恒星の飽和について少し考えてみました。これは恒星周りを3次元でプロットしてみるとよくわかります。1分露光のL画像のストレッチ前のリニアの時のものを一部を拡大しています。

Image28_Preview05_3dplot
全角画像の左下の端にかかっている3つの明るい星。

3つ並んだ星はどれも豪快にてっぺんが平らになっていて飽和していますが、階調がどれくらい足りていないのかはこれだけだと良くわかりません。そこで、画面の中でちょうどギリギリ飽和するくらいのある星をStellariumで調べてみると12.5等級とのことでした。次に、画面の中で最も明るい星の等級を同じくStellariumで調べてみると「HD109875」で7.65等級とのことでした。12.5 - 7.65 = 4.75等級 = 87.1倍となりました。ということは、今回の画像ではまだ明るさを100分の1近くにしなければ、全ての星の飽和を無くすことができないのがわかります。ここではASI294MM Proのbin1設定で見積もっているのでダイナミックレンジは12bitと狭いですが、たとえ16bitのカメラを持ってきても4bit = 16倍稼げるだけで、100分の1という差は賄いきれません。

露光時間で考えてみます。今回は1分露光なので、同じカメラで同じgainだとすると60s / 90 = 0.67秒程度の短い露光時間にする必要があります。今回の撮影時のカメラのgainが120なので、たとえgainを0にしたとしても-12dB = 0.25倍程度です。この場合は露光時間を2.7秒程度まで伸ばせますが、それでも全く現実的でないほど短い露光時間です。これだと淡いところは読み出しノイズに埋もれてしまう可能性が高いです。

画像に写る星の明るさは、星がどれだけ鋭く写るかにも依るので、鏡筒の口径、スポットダイアグラム、シンチレーション、風や地面振動による鏡筒の揺れ具合、それらを積分する露光時間にも依ります。もちろん性能が良くなればより星像は鋭くなるので条件は厳しくなり、要求されるダイナミックレンジは大きく、露光時間はより短くなります。

より一般的には、飽和しないための露光時間は画角に写った星のうち「一番明るい星」に依ります。Stellariumで調べてみましたが、今回撮影したものと同じ画角だと10等星は撮影位置を選べば避けることができそうですが、11等星を画角の中に一つも含まないというのはかなり難しそうです。さらに対象天体は中心に持ってくることが多いので、任意の場所を選べるわけでもありません。10等星は画角内に入ってくる確率がそこそこあるとすると、計算すると6.9秒程度まで露光時間を短くしなければならなくなり、やはり現実的でなくなってきます。

ものすごいラフな見積もりですが、恒星の飽和を完全に避け、かつ淡い天体を写すというのはかなり難しいということがわかるかと思います。こうなってくると、どうしても飽和を避けたい場合は、明るい恒星のみを写す超短時間露光を別撮りして、画像処理時にHDR合成することでしょうか。

というわけで、今後も恒星の飽和はあまり気にすることをせずに、撮影を続けたいと思います。


シンチレーションについて

今回L画像は2024年の4月1日と4月10日の夜に撮影しています。1枚撮りのRAW画像を切り取って、オートストレッチしたものを両日比べてみます。高度が同じ(31度)になるように時間を選んでいます。

1: 202/4/2 00:05:
01_good_1min_2024-04-02_00-05-46_M 104_L_-10.00C_60.00s_0059

2: 202/4/11 01:25 00:05:
02_bad_1min_2024-04-11_01-25-11_M 104_L_-10.50C_60.00s_0000

パッと見で、明らかに4/2の方がシンチレーションがいいことがわかります。

3: もう一つ、2023年5月11日に5分露光で撮影したものです。露光時間が長いので微恒星まで写り込んでいて、一見こちらの方が良さそうに見えますが、星像の大きさだけをよく見比べると今年の4/2の方が小さくてよく見えます。
03_middle_5min__2023_05_11_23_35_26_LIGHT_L_10_00C_300s_G120

実際にPIのFWHMEccentrisityツール(gausiaan, 0.5)で径を測定すると
  1. 12.51px
  2. 23.22px
  3. 13.64px
となり、画像を見た印象とほぼ一致しているのかと思います。

でも、いくらbin1での撮影といえ、そもそも12.5pxでもかなり大きい気がします。SCA260のスポットダイアグラムを見てみます。

sca260_2

いくつか数字があるのでわかりにくいのですが、図はどれも一辺200μmです。右下の一番大きなスポットの長辺が30umくらいでしょうか?これに相当する数値はField 4のGEO radius 15.53umのようです。radiusで半径なので2倍して31.06umでほぼ一致しています。

ではRMS radiusとは何かというと、光の強度分布をガウシアンだと仮定すると、標準偏差σがRMS radiusと一致します。σとFWHMの関係は、計算するとFWHM = 2.36σとなるので、例えばField 1のFWHMは1.916 x 2.36 = 4.50umとなります。

今回はASI294MM Proでセンサーの長辺が19.2mm、短辺が13.1mmなので、四隅までの距離は中心からsqrt(19.2^2+13.1^2) / 2 = 11.6mmとなり、Field 1と2の真ん中くらいでしょうか。2.51umと1.92umの真ん中を取り、RMS radiusを2.25umとしましょう。FWHMは2.25 x 2.36= 5.23umです。

今回のセンサーはASI294MM Proをbin1で使っているので、1pxあたり2.31umです。

ここまでの見積もりが正しいとすると、FWHMをピクセルで表すと、SCA260の中心付近では5.23[um] / 2.31[um/px] = 2.26[px]となりかなり小さい値が見込まれます。これとシンチレーションが良かった4月2日の12.51pxと比べると、実測は5倍以上大きいことになります。スポットダイアグラムなんて全然意味がないくらいに大きな星像になっているというわけです。

では今回撮影したM104の星像が、他のよく撮れている方の画像と比べて大きすぎるかというと、そんなことはなくて、ある意味一般的な恒星の大きさと言えるかと思います。そもそも他と比べてそこまで星像が肥大するようなら、M104本体の分解能もそこまで出ないはずです。

では、何がおかしいのでしょうか?

これまでこんなことはあまり定量的に見積もってこなかったので、冷静に考えてみました。まず気づいたのは、焦点距離に関わらず高性能な鏡筒のスポットダイアグラムも中心像ってそこまで大きく変わらないことです。例えば焦点距離300mmのFRA300 Proのスポットダイアグラムの数値を見ると、RMS radiusで中心では1.961umとSCAとほとんど同じ大きさです。これだけを信じると写る恒星の大きさは同じになるはずです。じゃあ焦点距離が長い鏡筒で写した恒星がそこまで小さくなるかというと、小さい系外銀河の画像などを見てもすぐにわかりますが、現実にはそんなことはなく、一つ一つの恒星の大きさは大きくなってしまい、星の密度も全然小さくなります。スポットダイアグラムでは同じ径なのに、焦点距離が違うと、なぜ撮影した画像ではこんなに違うのかという疑問に置き換えられたということです。

ここまで考えると答えはすぐに出てきて、焦点距離が長いので、同じ大きさの素子のカメラだとするとより拡大して見ていることになり、揺れなどの影響がより効いてくるということです。

揺れを見積もってみます。PHD2の出力を見てみると、角度揺れはRMSで概ね2秒角以内には収まっているようです。焦点距離1300mmとセンサーサイズ19.2mm x 13.1mmから、このサイトで計算すると画角は0.85x0.578度とわかるので、ピクセル数(1binであることに注意して)8288x5644でそれぞれの辺で割ると、1ピクセルあたり0.36秒角とわかります。そのため、PHD2から見積もった角度揺れで5ピクセルくらいは揺れていることになるので、スポットダイアグラムから見積もった2.26ピクセルの倍くらいにはなっています。実際にはこの2倍の揺れの周りに、元のスポットダイアグラムで表されるガウス分布が散らばるとすると、周りに片側0.5倍、両側で1倍程度の広がりを持ってもおかしくはないでしょう。これで3.3倍程度で、実像の5倍までまだ少し足りませんが、ある程度の説明はできそうで、少なくとも角度揺れだけでスポットダイアグラムで期待される径は、全然出るわけがないことがわかります。

ここで、オートフォーカス時の短時間のHFRを見てみます。2023年5月11日のL画像の撮影途中で合わせた時の画像が残っていました。
キャプチャ

この時のフォーカス位置でのHFRは7を少し切るくらいです。HFRはHalf Flux Radiusの略で半径、HFD(Half Flux Diameter)と呼ばれるものもあって、こちらは直径です。FWHMはFull Widthで直径なので、HFDと比較すべきなので、HFRの2倍と比較するとしましょう。でもFWHMとHFDは定義が違っていて、FWHMは最大値の「ある一点」を元に半分の値を径とするもの、FHDは定義によると「統計的に」中心を求めていることが大きな違いです。HFDの方が実測のような崩れた星像にも強いことがわかります。でも理想的なガウシアン分布に対してはいずれも2.36σになることがわかっているので、ここでは簡単のため同じものとして扱います。

2023年5月11日のL画像の撮影ではほぼFWHM =~ 2倍の HFR = 14を切るくらいになるので、測定自身はFWHMもHFRも、共にうまくできているようです。でもここでAF時のグラフを見てみると、フォーカスポイントの真ん中あたりにおいては、フィッティング曲線が実測値よりもかなり下に来ていることがわかります。そうです、なんらかの理由で径が一定値以下に下がることはないということを示しているのです。

この「なんらかの理由」が何なのかは、今のところ不明です。鏡筒の光学性能そのものの可能性もありますし、シーイングの可能性もありますし、シーイングや筒内対流を含むシンチレーションの可能性もありますし、地面の揺れ、風の影響などもあるかと思います。でも確実に2つのことが言えます。まず一つは、日によってFWHMが違っているので、シンチレーションに制限されている可能性が高いということ。もう一つは、短時間測定のHFRでもほぼ同様の結果なので、長時間積分の影響やガイドの影響はほとんど効いていないことです。

いずれにせよ、AF測定でここまではっきり制限が見えているので、逆に言い換えると、ここを見ながら底がフィッティング曲線に近づくような改善を目指していけばいいことになります。

ちなみに、ε130DのAF時の結果が以下になります。実測とフィッティング曲線がほとんど一致しています。でもこれは必ずしもε130Dの性能がいいというわけではなくて、単純に焦点距離が短いから、シンチレーションなどの揺れが効きにくいというだけだと思われます。
AF_good

SCA260でもこれくらい一致が見られるようなら、もっと星像は改善するはずです。日によって変わるシンチレーションや風の影響が小さい日を選んで撮影すること、赤道儀に弱いところがないか見直す、赤道儀をさらに強固なものにするなどでしょうか。性能のいいレデューサやバローを使って焦点距離を変えることで、鏡筒の性能か周りの環境かを切り分けることができるかもしれません。


まとめ

M104の撮影で気づいたことをまとめました。細かいことでしたが、自分的にはこれまであまり考えてこなかったことなので、面白かったです。

実は入院中で結構時間はあって、多少細かいことまで考える余裕がありました。このようにじっくり考えるのは結構楽しいのですが、実際にはなかなか時間が取れてこれませんでした。今後も焦って進めるのではなく、少し余裕を持って考える時間を確保するのが大事かなと今回改めて思いました。

このページのトップヘ