ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:カラー化

CP+のセミナーの中で、SharpCapを使うと太陽をリアルタイムでスタックして画像処理ができるので楽だという説明をしましたが、ブログ記事にはしていなかったのでまとめておきます。この記事を書く気になったのは本ブログのコメントで、リュウさんから設定画面を見てみたいというリクエストがあったからです。


太陽の導入

カメラをPCに繋いでSharpCapで太陽を映すまではいいでしょうか?特に昼間の導入は意外に面倒だったりするので、少しだけコツを書いておきます。
  1. まず、赤道儀や経緯台の水平をきちんと取ることは必須です。水平出しは、これ以降の精度全てに効いてきますので、水準器を使ってきちんと水平になっているのを確認します。(補足: 昔の記事で赤道儀の場合は極軸さえ合っていれば水平出しは原理的にどうでもいいと書いていますが、それはあくまで極軸が正確に合わせられる場合です。昼間はほぼ太陽しか出ていなくて、極軸を精度よく合わせることは無理なので、最低限水平をきちんと取ってから始めたほうが遥かに楽です。)
  2. 鏡筒をホームポジションの方向に向けます。ホームポジションは赤道儀や経緯台の機種によるのでマニュアルをきちんと見てもらえばいいのですが、赤道儀の場合は北極星方向、経緯台の場合は北向き水平が多いでしょうか。太陽ファインダーを持っていない場合は、ここはできるだけ精度よく合わせたほうがあとあと楽です。
  3. 経緯台の場合、水平方向は鏡筒に水準器を当てるといいでしょう。
  4. 北向きにするのはなかなか精度が出ません。最近ではスマホにコンパスアプリがついているので、それを使うといいでしょう。その場合、設定で「真北」を選んでください。デフォルトでは「磁北」になっている場合が多いので、これだと6−7度ずれてしまいます。
  5. 次に進む前に、ここで重要な確認です。望遠鏡は太陽を見ることができる状態になっていますか?白色光の場合は太陽用減光フィルター、Hα線の場合はエタロンとブロッキングフィルターなど確実に付いていますか?私は必ず指差し確認をするようにしています。慣れてしまうとどうしても確認が疎かになる可能性が出てくるからです。
  6. 次に、カメラを鏡筒にセットし、カメラをPCに繋ぎます。SharpCapの上部メニューの「カメラ」から接続したカメラと同じ名前のカメラを選択します。
  7. ここまできたら、やっと赤道儀や経緯台の自動導入を使って、太陽を導入します。昼間の太陽導入は安全のために機能的に制限されている赤道着や経緯台が多いので、その制限を解除します。解除方法は機種に依ります。
  8. 必要なら導入前に念のため、赤道儀や経緯台の現在位置の設定と、時刻の設定を見直してください。現在位置や時刻がずれていると、これ以降導入がズレが出る可能性が高いです。緯度と経度を入力する場合は、スマホのコンパスアプリなどで今いる場所の緯度経度を確認できるので、その値を入力するのが楽です。
  9. 太陽を自動導入後、SharpCapで画面を確認しますが、大抵の場合は太陽は画面内に入ってこないと思います。
  10. 太陽ファインダーを持っているなら、太陽光がファインダーの投影板の真ん中に来るように、赤道儀の場合は架台部分の「ネジ」を使って水平方向と垂直方向を合わせます。この時点ではモーターを使わないように注意してください。この時点では、設置時の赤道儀の極軸からのズレを補正するためです。経緯台にはネジがついていないと思いますが、ネジの代わりに三脚をの足を伸ばしたり、水平にずらしたりして、水平方向や垂直をある程度合わせてもいいでしょう。
  11. 太陽ファインダーがない場合は、次のようにSharpCapの画面で確認するしかありません。
  12. 太陽ファインダーの真ん中に来たら、SharpCapの画面に入ってきているか確認してください。露光時間は機材に依りますが、1msとかかなり短くていいはずです。ゲインも0とかせいぜい200(=20dB=10倍)までで大丈夫かと思います。
  13. 太陽が画面内に入りかけているか確認するために、SharpCapの右側パネルのヒストグラムのところにあるオートストレッチボタンを押して、画面を明るくします。端の方が明るかったりしたら太陽が近くまで来ているということなので、ここからはモーターを使って明るいのが真ん中に来るように合わせます。太陽が入ってきて、極端に明るくなったら、今一度オートストレッチボタンを押して明るさを調整します。太陽の一部でも入ればあとはモーターで真ん中に持ってくるだけです。
  14. 最後に、赤道儀もしくは経緯台の追尾設定を、デフォルトの恒星から太陽に変更するのを忘れないでください。

ピント合わせ

太陽が導入できたら、次はピントを合わせます。ピント合わせも少しコツがあります。
  1. 赤道儀や経緯台のモーターを利用して、見たい位置に太陽を持ってきます。
  2. SharpCapの画面を見ながら、とりあえずそこそこフォーカサーなどでピントを合わせます。
  3. SharpCap右側パネルのヒストグラムで、オートストレッチをかけます。
  4. ヒストグラムの3本ある線の、左の線を背景光を表す左のピークより少し右側に、右側の線をヒストグラムの盛り上がりの右端くらいに合わせます。
  5. 画面を見ながら、真ん中の線を少し右に寄せ、細かい模様がよく出るところを探ります。グラフが下に凸の形になるはずです。
  6. ピントを微調整します。
スクリーンショット 2025-05-11 105533
ヒストグラムで調整するとこれくらいになるので、
かなりピントが合わせやすくなるはずです。


必要ならフラット化で見やすく

もし画面全体が太陽表面だけを見る場合(太陽の縁より外が画面に入っていない場合)は、常時フラット補正をしておくといいでしょう。これを行うことで、上記ピント合わせも遥かに精度よく見ることができます。
  1. 黒点周りなど、太陽表面の見たいところを赤道儀のモーターを使って導入する。
  2. 鏡筒のフォーカサーでピントをかなりずらす。その際、つまみをどちら向きに何回転くらい回したかを覚えておくといいでしょう。
  3. ボケボケになったところで、SharpCapのメニューの「キャプチャ」の「フラットフレームキャプチャ」を選びます。
  4. 出てきた画面でフラット撮影の設定をします。枚数は16枚とか32枚もあれば十分でしょう。スタートボタンのすぐ下の「撮影後新しいフラットを適用する」とかいうオプションにチェックを入れておくと楽です。
  5. スタートボタンを押します。
  6. フラットが適用されていることを、画面(真っ白になるはず)や下部に出ているヒストグラム(一本の細い山になるはず)で確認します。
  7. 画面下部に出ているヒストグラムを閉じ、ピントを元に戻します。ピントの再調整は、必要なら上の手順に従ってください。今回は太陽表面の輝度差が補正されているので、かなり合わせやすくなっているはずです。

これでセンサーやフィルターのホコリ、太陽表面の輝度の違い、エタロンの中心波長のずれで見えにくくなっていたエリア、ニュートンリングなどが補正され、圧倒的に見やすく、コントラストを上げて撮影できるようになります。この状態では、露光時間やゲインはある程度変更できますが、あまりに違う設定の場合はフラットを取り直してください。また、位置などが大きくズレると補正もずれてしまうので、その場合もまたフラットを取り直してください。


SharpCapの撮影設定

太陽が導入できてピントもあったなら、太陽が見えているはずです。まずはカメラの設定をします。
  1. モードはモノクロカメラならMONO16一択です。カラーカメラの場合はRAW16でしょう。
  2. 明るすぎたり暗すぎたりしないように、露光時間とストレッチ度合いを今一度合わせます。
  3. 露光時間は撮影のことも考え1ms程度、ゲインは0 ( = 0dB = 1倍) とか100( = 10dB = ~3倍) から、せいぜい200( = 20dB = 10倍) くらいまでで、ゲインがその範囲に入らなければ露光時間を長くしたり短くしたりします。適度な明るさとは、ヒストグラムで見て山が右も左も切れていなく、かつ山が全体的に広がっている状態です。
  4. ストレッチは適時オーとストレッチボタンを押します。露光時間やゲインを変えたとき、雲が通過して画面の明るさが変わった時も押すといいでしょう。


太陽画像のリアルタイムスタック

明るさが適度に調整出来、ピントもあっていたとしても、まだシャキッとした画像にななりません。ここでいよいよライブスタックを開始します。
  1. メニューの「ツール」の「太陽/月/惑星のライブスタッキングと強化」を選択します。
  2. 出てきた画面で「Sharping&Adjunstment」を選んで、下の画面を参考に調整します。
  3. 左側の「Gaussian Wavelet Sharpening」は十分な解像度が出ているなら「Fine」を上げるだけでほとんど大丈夫です。Level1以降は画面を拡大しながら上げてもいいですが、たいていは強すぎるのでほどほどにした方がいいと思います。画面を引いてみる場合と拡大してみる場合は、いいと思われる設定は違うと感じると思います。好みで設定すればいいと思いますが、私は拡大したときに強くなりすぎずに、引いてみたときにあっさりしすぎなくらいでちょうどだと感じています。
  4. 同画面右側の「Image Adjustments」はかなり便利です。でもその前に、オートストレッチをリセットしてヒストグラム画面で出ている曲線をきちんと直線にするのを忘れないでください。ヒストグラムで画像調整してしまうと、画像を保存するときに二重に調整効果がかかってしまって、変なことになる場合が多いです。
  5. 画面が明るすぎたり暗すぎたりするときは「Brightness」を調整します。「Gamma」は見栄えに大きく関係するので、毎回いいところを探してください。
  6. その後は好みで「Solar Colorization」をオンにするとカラー化されます。カラーの度合いはあまりいじることはできないはずです。
  7. 次の「Corona Boost」は、全景の場合はもうデフォルトオンでいいでしょう。ただし雲などが通過するとずれて強調されたりするので、その場合はオフにしてください。「Radius Offset」は適時変えてみて、いいところを選んでください。これも好みかと思います。

スクリーンショット 2025-05-11 113714

次のタブは「Frame Filtering」です。これでラッキーイメージ的なことができます。下の画面では250フレームにわたって画質の良さを評価して、上位85%をスタックするという意味です。
スクリーンショット 2025-05-11 113731
ここに出ているグラフはピント合わせに利用することもできます。主にコントラストを見ているようなので、特に全景の場合は太陽と背景のコントラスト比に比例して数値が出ます。言い換えると、ピントを前後させて、一番値が大きいところがピントが合っているところということです。先に説明した方法でうまくピントが出ない場合は、こちらを利用してみてもいいかもしれません。

最後は「Stabilizatin/Alignment」です。私はガイド鏡を使ってPHD2の太陽バージョンでガイドすることが前提なので、個々の設定はかなりシンプルにしています。こうしないと、PHD2とけんかしたり、正しい状況が見えにくかったりするからです。
スクリーンショット 2025-05-11 091737
全景の場合は「Stabilization Mode」は「Planet/Full Dis」のほうがいいのかもしれませんが、「Surface」でも普通にズレずにスタックできています。「Stacking Mode」も「Single Point」で十分なようです。というよりも、雲が来るとどんな設定でもだめで、雲が来なければどんな設定でもいいと言うような印象です。

その一方、フル設定だと以下のようになると思います。今回の記事のために設定してみただけなので、あまりあてにしない方がいいかもしれません。上で書いたように、ここまでしてもアラインメント精度はあまり違いがない印象です。いい時はいいけど、ダメな時はどう設定してもダメっぽいです。「Stabilize to cente...」はカメラの画角の中に太陽全景が入っていさえすえば、太陽を常に画面中心に持ってきてくれます。タイムラプスなどの時は便利だと思いますが、カメラの画角から太陽が出てしまったときは途端に像が崩れます。問題はこのオプションがオンになっていると、画角の端まであとどれくらい余裕があるのかわかりにくいことです。

「Track Planet with Camera ROI」は普段ROIを使うことがないので、私の場合は意味がないです。ROIで画角を制限したときに、fpsが上がればいいのですが、実用的なROIの範囲ではfpsは変わらないので、フルで撮影するようにしています。動画ファイルが大きくなりすぎるなら、ROIを設定するのもありだと思います。

さらにチェックしていない「Re-align...」と「Overlay...」は試してみましたが、何が変わるのかいまいちよくわかりませんでした。モノクロ撮影だからなのかもしれませんが、よくわかりません。

スクリーンショット 2025-05-11 113509

最後、「Time Lapse」タブですが、これもまだあまり試してはいません。できるだけ階調良く保存したいのでフォーマットはSERかTIFFです。でもSERではバグなのか、いまだにうまく保存できないようなので、今がにTIFF一択です。

「Apply Display Histgram...」はここではオンになっていますが、オフの方がいいでしょう。これがオンになっている、もしくはヒストグラムでリセット状態のまっすぐな線になっている場合以外は、たとえTIFFフォーマットだとしても8bitで保存されると下部のノートに書かれています。

「Create short animated GIF...」がオンになっていますが、いまだにうまくGIFファイルが生成されたことがありません。オフでいいかと思います。

あとは何秒ごとに画面を保存するか設定してスタートボタンを押せばいいのかと思います。動画よりもはるかにファイルサイズが小さくなるので、多少間隔を短くしても大したファイル量にはならないでしょう。「Reset stack after...」は経緯台の場合には画面の回転を防いで枠が回っていくのを防ぐことができるので、うまくフレーム数を設定してみるといいでしょう。ただ、タイムラプス撮影をするなら、あえて回転を見たいとかでなければ太陽の場合は素直に赤道着を使った方がいいかと思います。

スクリーンショット 2025-05-11 120116

いくつかはうまく動かない機能があるので、私の環境が悪いのか、バグなのか不明ですが、タイムラプスに関してはまだそこまで期待しない方がいいのかもしれません。

右から二つ目のタブで設定が3通りまで保存、再現できます。設定を変えた時の比較などに使えるので随時使うといいでしょう。


まとめ

以前は惑星も太陽も画面センターにキープできる機能が便利で、FireCaptureで撮影することが多かったのですが、SharpCapの機能が圧倒的に進んでしまい、少なくとも私は太陽用にはもうSharpCapオンリーです。今回はかなり基本的な太陽の導入の仕方から解説したので、よかったら参考にしてください。私なりのテクニックも随所に入れ込んでいます。







今回はPixInsight上で動く、太陽画像処理用のSolar Toolboxを紹介します。すでに使っている人も多いかと思いますが、日本語の解説はいまだにどこにも見当たらないようです。


PixInsightの太陽画像処理ツール

PixInsight上で動作するSolar Toolboxというスクリプトが、今から1年ほど前の2024年2月にリリースされました。当初から使ってみたいとは思っていたのですが、今のImPPGからPhotshopという流れでそこまで不満ではなかったので、そのままになっていました。

転機になったのは、Astrobinの2025年4月1日のImage of the dayです。恐ろしく精細なプロミネンスのタイムラプスにびっくりしました。とてもじゃないですが、自分ではここまで出せる自信はありません。使っているツールの中にSolar Toolboxという名前を見つけたので、「あ、やっぱりいいんだ」と思ったのがきっかけです。

Solar Toolboxのインストールは

https://www.cosmicphotons.com/pi-modules/solartoolbox/

をPixInsightのレポジトリーに追加し、アップデートをチェックし、その後PIを再起動します。すると、メニューの「Process」の中に「Solar」という項目が作られていて、その中に「SolarToolbox」が追加されています。

Solar Toolboxは、機能的にはストレッチ、プロミネンスの切り分け、プロミネンスのブースト、コントラスト調整、カラー化と、カラー化に際しての色バランスとコントラスト調整、細部出し、デノイズなどがあります。カラーかと細部出しについては、マスク処理もできるようです。これだけ高機能なところをみると、一見他のツールが必要ないようにも思えるかもしれません。一通り試したのですが、決して万能のツールというわけではなく、得意、不得意があるようです。

モードは3つあり、「太陽表面のみ」と「プロミネンスのみ」と「太陽表面とプロミネンス」になります。自分が撮影した画像に応じて選びます。


事前理解と準備

これ以降はできるだけ機能を説明するために「太陽表面とプロミネンス」を前提に話します。他のモードだと、いくつかの機能が使えなくなります。

スクリーンショット 2025-04-15 010102_dialog

ダイアログの右下のDonumentationボタンを押すと、ヘルプファイルが出てきますが、あまり大した説明はないようです。作者によるインストラクション的な動画がアップロードされていて、それを見るのがいいのかもしれませんが、私はあまり動画を見るのが好きでないので、自分で一通り試してみてから、わかりにくいところだけを動画で見てみました。動画は英語なので、英語が苦手な場合は説明を聞くより実際自分でパラメータをいじって何が変わるかを見た方が早いと思います。その上で、今回は私が試した限りで、どの機能が有益で、どの機能はもう少しとかの説明や感想を書いておきます。

そもそも撮影後の、どこまで処理が進んだファイルを読み込ませるかですが、
  • 少なくともAutoStakkert4!などでスタックした後のファイルを使うことになるでしょう。
  • 細部を事前にどこまで出しておくか、プロミネンスの強調やコントラストをどこまでやっておくかは、Solar Toolboxでどれだけ処理をするかに依ります。このSolar Toolboxですが、特に細部出しはあまり強力ではないようなので、少なくとも細部出しはImPPGなどである程度あらかじめすませておいた方がいいのかと思います。
  • プロミネンスとコントラストはSolar Toolboxが結構得意なので、事前に何も弄らなくてもいいでしょう。
  • また、ImPPGなどでヒストグラムの形をいじって暗いところをあらかじめ炙り出しておくのは、やめておいた方が良さそうです。下で説明するプロミネンスのブーストが、事前に炙り出されていないことを前提にしているみたいで、あらかじめ炙り出してあると、明るくなり過ぎたり、特にImPPGで処理するとドット状のノイズが目立ってしまいます。
  • その一方、ヒストグラムの左右を切り詰めておくことは、あらかじめやっておくと楽です。例えばImPPGだとヒストグラムを「見ながら」切り詰めができる一方、Solar Toolbox上だと、切り詰めパラメータを一回入れる毎に、画像の変化をいちいち時間をかけて見なければならないです。効果としては全く同じですが、時間がかかる上に、見通しがとても悪いです。

Solar Toolboxでは、何をするにしてもリアルタイムプレビュー画面を見ながら各機能のパラメータの値をいじるのですが、一つパラメータを変えるたびに結構な時間をかけてプレビュー画面を更新します。全然リアルタイムではないので、できるだけ速いPCを使った方がいいです。


プロミネンスの切り分け機能

まず、一番上のプロミネンスの切り分け機能です。パラメータの微調整がシビアですが、うまく設定すると太陽表面と周辺のプロミネンスを綺麗に分けることができます。デフォルトの0.5を一度大きく変えると何が変わるか見えるので、どんな機能かがわかるかと思います。わかりにくい場合はすぐ下の「Invert」オプションをオンにしてみてください。傾向がわかったら、0.05単位くらいで微調整していけば、好みの切り分けにできるでしょう。

これに相当する機能は、ImPPGでヒストグラムの曲線をいじって、プロミネンス部分と太陽表面部分を切り分けて輝度調整するとかですが、それよりもSolar Toolboxの方がうまく分離できるようです。普通は輝度の違いだけで判断するとあまりうまく分離できないのですが、Solar Toolboxではかなりうまく分離できるので、見ているのは輝度だけはないのかもしれません。一般的には、うまく分離しようとしたらマスク処理が必須となるのですが、マスク無しでうまく分離できるのでかなり便利です。

Solar Toolboxのストレッチは、ブラックポイントとホワイトポイントの切り詰めだけです。この切り詰めはあらかじめImPPGでやっておいた方が、デフォルトのブラックが「0.000」とホワイトが「1.000」をそのまま使えるので楽です。プロミネンスの背景が明るすぎる場合、ブラックポイントを0.01とか、0.02とかに上げて微調整します。プラージュとかの白いところの階調があまり取れていな場合は、ホワイトの値を1.1とか1.2まで上げると、多少階調を改善すことができます。

ImPPGならヒストグラムを見ながら、ガンマ補正や、曲線そのものを任意にいじることができるので、あらかじめいじっておいてもいいですが、今のところSolar Toolboxの使用が前提なら、事前にあまりいじらない方が楽っぽいです。ImPPGでいじって、さらmにSolar Toolboxでいじると、パラメータが多すぎてよくわからなくなることが多いので、私はImPPGでは細部出しと、ブラックとホワイトのと切り詰めをするだけにしています。


プロミネンスのブースト

プロミネンスのブーストは必要十分な機能です。ImPPGの方がヒストグラムで調整できるので、一見高機能に思えますが、再現性や安定度という意味ではSolar Toolboxのシンプルな操作の方が上かと思います。ImPPGでプロミネンスをあぶり出ししていなければ、0.7とか0.8とかの大きな値にしてもいいかと思います。

3D機能は開発者の動画解説によると、周辺のブーストと太陽表面の球のような輝度分布を重ねるような効果だそうです。3D機能を使わないと、太陽全体が見えている時なんかは太陽表面の輝度がフラット化されて、ノペーっとして、3D機能の値を上げると、立体感が増します。太陽表面の印象が印象が変わるので、いろんな値を試して好みを探るといいでしょう。


コントラスト

コントラスト設定はかなりわかりにくいです。まずは左タブの「Histgram equalizatin」で説明します。「Contrast limit」の数字を上げると明るくなって、下げると暗くなるのが基本操作です。「Kernel radius」でどれくらいの粗さかを決めますが、値が100とか小さ過ぎると輝度が大きな範囲で凸凹するようです。私は普段は200以上の大きな値を使っています。

マスク処理は、チェックボックスをオンにしてマスクを表示させながら調整するといいでしょう。「Surface Only」で基本的に太陽表面のみにするか、「None」で全体にするかを分けるものです。「Surface and prom」で好きなところを選べますが、こちらはマスクの状態をよく見ながら、輝度を「Shadow」で合わせる必要があるので、ちょっと面倒です。

結局、「Histgram equalizatin」はかなり扱いにくかったので、隣の「Local contrast」を使った方が楽かと思います。左の「Histgram equalizatin」と右の「Local contrast」は完全に独立な設定で、どちらかを選ぶと、もう一方の設定は全部無視されます。「Local contrast」は数値を大きくすると、特に太陽表面の模様の明るいところと暗いところの差がうまく強調されます。

次のカラー化のところのコントラスト調整と合わせて、この「うまく」コントラストを出すというのが今回のSolar Toolboxを使うことの一番のメリットなのかと思っています。というのも、例えばHα画像をPhotoshopに持っていって、ありとあらゆる調整を試しても、コントラストを素直にうまく改善する機能がほとんど見当たりません。私は普段はImPPGでコントラストを強調してから、Photoshopではほんの微調整くらいしかしませんが、もっと簡単にコントラストを調整できたらとずっと思っていました。そういったい意味で、このSolar Toolboxは非常に優れていると思います。


カラー化

もう一つのSolar Toolboxの利点は、カラー化です。カラー化自身はPhotoshopのレベル補正でなどでもできますが、なかなかいいパラメーターが決まらず、毎回違った設定になって結果も安定な色になりません。

Solar Toolboxのデフォルトの色バランスの設定はかなりうまく選んであって、少し変えてみて結局元のデフォルトの色方が良かったりしたので、ほとんどの場合はデフォルトで処理してしまっています。デフォルトを使うと決めてしまうと、たとえ他の画像を処理しても、かなり安定な色になることが期待できます。もちろんコントラストなどの設定が色味を変えることがあるので、色の微調整はするかもしれませんが、今後画像によって大きくブレるかとは無くなるのかと思っています。

カラー化する場合、その中で2種のコントラスト設定をいじることができます。これらもとてもうまくコントラストを上げてくれるので、下手にPhotoshopなどで自分でやるよりも、簡単に安定して処理してくれるでしょう。ハイライトの方は効果がすぐにわかります。高くすると見栄えが良くなります。通常のコントラストブーストは効果がわかりにくいです。ものすごく大きくしてやるとやっと違いがわかると思います。

ストレッチは0.5から下げると明るくなり、上げると暗くなります。全体の明るさをいじるのはここがメインになります。カラー化する場合はこのストレッチ機能が使えるからいいのですが、モノクロのままだと全体の輝度調整をするのが結構面倒だったりします。モノクロの場合は素直にHistgramTransformationとか使った方が楽かもしれません。

Solar Toolboxダイアログの一番上の「Image type」で「Prominence only」を選ぶと、プロミネンスのマスクが使えるようですが、ここでいうProminence only用の画像とは開発者の解説動画によると、太陽表面が完全に飽和したような画像のことのようです。今回そんな画像は試していないので、ここのマスク機能はまだ使えていません。


細部出し

最後のSharpningは結構微妙です。もちろんシャープにしてくるのですが、こちらはそこまで強力ではなく、ImPPGなどの方がはるかに簡単に強力に処理してくれます。

私が思うImPPGの唯一の欠点は、デノイズ機能がないことです。そのため、ちょっと強力な炙り出し処理をすると、途端に背景とかにツブツブが載ることです。これは月をImPPGで処理すると良くわかります。太陽だとモジャモジャしているところも多いので、背景以外はあまり目立たないのですが、月は表面で滑らかなところがありツブツブが目立ちます。なので、月にはImPPGを使うのを諦めた過去があります。

例えばRegistaxのWaveletや、PIのMultiscaleLinearTransformなどは、細部出しと共にデノイズ機能があるので、ツブツブ感が軽減できるのですが、細部出しそのものについては手軽さまで考えるとImPPGの方が上だと思っています。なので、ImPPGでストレッチと細部出し、少しのプロミネンス強調までして、PIに持っていきMultiscaleLinearTransformでデノイズ処理、その後Solar Toolboxでプロミネンス強調、コントラスト調整、必要ならカラー化とカラー化に伴うコントラスト調整、さらに必要なら細部出しとデノイズを僅かにといったところでしょうか。


タイムラプスへの応用

Solar ToolboxがPixInsightをベースにして動くことで便利なのは、コンテナを使って複数ファイルに自動で同じ処理を適用できることです。今のSolar Toolboxは細部出しが苦手っぽいので、ImPPGを使わざるをえない状況かと思いますが、ImPPGもバッチ処理機能があるので、複数画像に同じ処理を適用できます。連続処理できるツールのみを使うことで、タイムラプスで多数の画像を楽に扱うことができるようになります。


まとめ

Solar Toolboxを一通り試してみましたが、かなり使えます。特にカラー化の安定性と、コントラストを出しやすい点は気に入りました。ただ、Solar Toolbox単体で十分かというと、そういうわけでもないので、他ツールとの併用がいいのかと思います。もう少し使い込んでみようと思います。






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