ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:鏡筒 > Phoenix

以前の分光器SHG700を使って測定したPSTのエタロンに引き続いて、いよいよフェニックスのエタロンの透過特性を測定します。



解析時のオフセットの見直し

でもその前に、以前、2025年9月23日に測定したPSTのエタロンの透過特性で少し訂正があります。グラフを再掲載しますが、ピークとピークの間の底の部分の実測とモデルが少しズレています。

fit_result_ok

この理由を以前はロスのせいと述べていましたが、これは勘違いということが判明しました。正しい原因は、測定時にカメラの設定でオフセットをつけていたのに。モデル化するときにそのオフセットをきちんと考慮していなかったことです。撮影時のオフセットはADCのカウントにすると16bit換算で2000に相当します。カメラは12bitのG3M678MでSharpCapでの撮影時にオフセットを2000としたのですが、これは(ちょっと不思議なのですが)16bitで換算された時の値になるようです。その際のエタロンの櫛のピークの高さが40000程度なので、5%ほどのずれになり、無視できない範囲です。上の画像もちょうど5%くらいずれています。オフセットの補正をして、改めてフィットしてやると下の画像のようになります。
fit2_result
底の部分が一致するようになったことがわかります。その際のFWHMは0.71Åとなり、前回より少し小さく出ています。

底の部分を合わせることがなぜ重要かというと、そのずれの分ピーク位置の高さが変わるからです。ピークの高さが変わると、当然半分の高さも変わってしまうので、FWHM(Full Width Half Maximum)も「半値全幅」の名の通り、その幅が変わってしまうからです。底位置での高さの式は

(T/(1+R))^2

で表され、上の鏡の反射率と透過率(1-R=0.28)を入れると(0.28/1.72)^2=0.026となります。この高さも使われることで、より正確なフィッティングになります。

PSTのエタロンについては、別の日の2025年10月5日に測定したデータもあります。それを同様にフィッティングしてグラフ化すると以下のようになりました。
fit_result

フィッティングから求めたFWHMは0.98Åとなりました。上記の0.7Å程度と結構違います。まだ原因がはっきりしたわけではないですが、おそらく測定の際にPSTエタロンに入射する光の当たり具合が違うために起きているようです。パラメータは大きく2種類あると考えられ、
  • 面内のどこに、どれくらいの面積で光が当たるか
  • エタロンに対する光の入射角
が問題になるかと思われます。これらのばらつきは、この時点ではまだ解決していないので、今後の課題となります。


Phoenix

PSTは一旦置いておいて、次にPhoenixのエタロンの特性を測定したいと思います。測定は2026年1月4日に行いましたが、LED光源が暗すぎて櫛の底の部分がノイズに埋もれてしまっていたので、再度2月7日に測定しました。

IMG_2524

Phoenixは鏡筒の先端部にエタロンが付いているため、鏡筒を通した光を分光器SHG700に入れます。エタロンの特性を見たいので、上の写真からBFとERFは外しています。

今回、鏡筒という長い筒を使うことで、エタロンへの入射光の角度を一定に近いものにすることができることがわかりました。PSTの測定の時にはエタロン単体に近い状態で測定していたので、LED光源の角度を変えるとピーク位置が変わるような様子が見えましたが、鏡筒込みのPhoenixの場合は画面を見ている限りはそのようなことはないようです。ただし、光がエタロンの面内のどこに当たるか、どれくらいの面積で当たるかはまだ確定していません。LEDライトは、先端に付いているレンズ位置をスライドさせることにより光束を広げたり収束できるもので、今回はとりあえず光束径がエタロン径に合うようにしましたが、LEDとエタロンの距離を一定に取れていないのでまだ不確定性があるはずです。それでもPSTの時よりはかなり安定に測定できいるのは間違いないでしょう。

更に、前回記事にした波長のキャリブレーションをしました。
Figure_1
フィットされたデータを見てわかりましたが、短い波長側と長い波長側で5%程違います。Hα中心はほぼ計算通りの0.0905Å/pixelですが、短い側は0.0928Å/pixel、長い側は0.0885Å/pixelです。使っているのはHα線のみなのでこのずれは効いてはこないですが、櫛構造のフィッティングで広い範囲を使う場合は多少効いてくるでしょう。

更に、PSTの再計算で検討したのオフセットもきちんと考慮しながら、エタロンの測定データをフィッティングしてみます。
fit_result_ok

フィッティングは実際にはもっと広い範囲で実行し、グラフでは見やすいように表示する範囲を狭めているため、このフィッティングは櫛構造になるというエタロンの原理そのものの特性を含んでいます。

グラフの横軸の範囲は先に示したPSTと同じなので、直接グラフの形で比べることができます。パッと見だけでもピークの幅が明らかに細くなっていて、Phoenixのエタロンの性能が圧倒的に良くなっているのがわかります。

もう少し詳しく見てみます。まず、Phoenixの場合、PSTに比べてピークとピークの間の幅が広がっているのがわかります。FSRと呼ばれる量ですが、今回は10ÅとPSTの1.5倍程度に広がっています。広ければ広いほど、隣のピークの影響が小さくなるので、これは大きな改善といえます。FSRは「2枚の鏡の間の距離」だけで決まる量で、PSTの0.3mm程度から0.2mm程度に狭くなったことがわかります。ただしFSRが大きくなると、同じ反射率の鏡を使った場合にはピークの幅がより大きくなり不利になります。それにも関わらず、細いピーク幅を実現しているということは、より反射率の高い鏡を使い、フィネスの高い、光の折り返し回数の多い高性能なエタロンを作り出しているというわけです。実際、鏡の強度反射率はPSTの70%程度から、Phoenixでは90%と、かなりアグレッシブな鏡になっていることが実測からわかります。高反射率の鏡を使うとエタロンとしての性能は上がりますが、その一方取り扱いは難しくなり、よりフラジャイルなエタロンとなりますので、くれぐれも荒い扱いは避けるべきです。

そしてFWHMは0.37Åと公称値の0.6Å以下を十分余裕を持って満たしています。今回は得られた画像の真ん中の部分のみを使っていて、これはエタロンの中心部のみを見ていることになるので、良すぎる値が出ている可能性があることは明記しておくべきでしょう。また、LED光源の設置にまだ不確定性が残っているので、絶対値としてFWHMについてはまだ検証の余地があるかもしれません。それでもPSTと相対的に比較することは少なくともできるはずで、共に不確定性はあるにしても結果が大きく変わることはなく、ピークの幅だけを比べても半分以下になっていることは、エタロンの性能として圧倒的に進化しているということは言えるのかと思います。

もう少し比較します。BFでHα線の波長以外をどれだけブロックできるかと、太陽光まで考えた時にどれくらい変わるかです。まずは参照として、以前掲載したPSTの場合です。

sum_eta_BF
sum_eta_BF_spe
1枚目のグラフを見るとわかりますが、Hα線の隣の左右のピークが少しですが残ってしまっています。更に2枚目では、それに太陽光のスペクトルを掛けたものを表しています。太陽光のHα線は吸収線ですが、それ以外では連続光で明るくなっているので、漏れ光としては大きくなり、左右のピークの影響は更に大きくなってしまいます。そもそものHα線のすぐ周りの裾の明るくなっているところも拾ってしまっていますし、左右のピークの高さもそれぞれ15%程度、両方あるのでそれの2倍と、無視できる範囲ではありません。

Phoenixの結果を示します。
all

all_sun_multi


1枚目のグラフでは、左右のピークの影響は全くなくなっているのがわかります。BFの透過幅自体はPSTでもPhoenixでも同じくらいです。PhoenixでFSRが広がっているのが効いていることがよくわかります。2枚目にあるように、太陽のスペクトルを掛けると、やはりHα線以外では明るいので少し影響は見えますが、PSTに比べたらほとんど影響がなくなっていることがわかります。あと、ピークの幅が小さいことが、Hα線すぐ裾の明るくなる部分もきちんとカットしてくれていることもわかります。

2枚目が実測の見え方に相当するので、2枚目で比較すべきだと思いますが、差がより明確に出ているのがわかると思います。実際に目で見たり撮影に影響するのは、全波長で積分した光量になるのですが、コントラストが圧倒的に改善することは容易に想像できるのかと思います。


まとめ

エタロン特性も大分まともに測定できるようになってきました。今回で光源の入射角についてはかなり改善できたのかと思います。測定結果を見る限り、Phoenixのエタロンはかなりすごいことがわかりました。ただ、FWHMが0.37Åと公称値の0.6Å以下というのに比べて良すぎる気もするので、もう少し検証は必要なのかと思います。PSTも鏡筒を付けて入射角の依存性を少なくして改めて測定したいと思っていますが、それで大勢が変わるとは思えず、今回の比較でわかるように太陽望遠鏡としてのエタロンの性能の進化にはもう驚くばかりです。さらに、FWHMの測定結果だけでなく、実際に太陽像を見た時の面内の見え方のばらつきも圧倒的に少なくなっていることから、世代が変わったと言っていいくらいの進化と結論づけていいかと思います。

さて、次はHeliostar100Hαの測定結果です。お楽しみに。


今回はフェニックスでできるだけ高分解能で撮影したという話です。


以前より高分解能カメラで

以前CP+でフェニックスをお借りしていた時
は、手持ちで太陽の全景が入るモノクロカメラでちょうど良さそうなものはApplo-M miniくらいでした。このカメラはグローバルシャッターが付いていて、シーイングなどで素早く動く太陽の模様を撮影するのには向いているのですが、ピクセルサイズが4.5μmとそこそこ大きく、高分解能撮影にはちょっと厳しいです。当時、分解能の比較として手持ちのピクセルサイズ2.9μmのASI290Mで画像比較をしてみました。下の画像はCP+で使ったスライドの1ページです。

スライド76

下の2段は同型のASI294で、カラーとモノクロ(ただし、センサーはIMX294とIMX492で違うものです)で比較したもので、同じピクセルサイズならやはりモノクロの方が分解能的に有利なことがわかります。ピクセルサイズの違いは、上の段の2枚を比べてもらえばわかるように、ピクセルサイズが高々2/3になっただけなのに、小さい方がかなり有利ということがわかると思います。その一方、このASI290MMはセンサー全体のサイズが小さいため、フェニックスでの撮影では太陽の全景が入らないので不便で、その当時のフェニックスには常用使いにはなりませんでした。

その後SHG700での分光撮影のために、センサーサイズが大きくさらにピクセルサイズも2.0μmと小さい、ToupTekのカメラG3M678Mを手に入れました口径8cmの鏡筒にPSTをつけた状態で、ASI290MMとG3M678Mの比較は以前していますが、今回はフェニックスでこのカメラを使って撮影してみます。全景が入るのはもちろん、分解能がどこまで向上しているのか楽しみです。


とりあえず眼視をもう少し

試したのは2025年12月6日のことです。前回フェニックスのファーストライトの続きで、まずは眼視で楽しみます。

ところが、エタロンの様子がちょっとおかしいです。元々回転リングの動く角度は60度程度と大きくないのですが、その範囲でHα線の周りを走査できるようになっているはずです。ですが今回は接眼側から見てエタロン回転リングを反時計方向に回していくと徐々にプロミネンスが濃く大きくなっていき、大きくなりきっているかどうかわからないくらいで回転できる範囲が終わってしまい、それ以上エタロンを調整できないのです。

少なくとも、先々週のファーストライトではこんなことは気づきませんでした。夕方間近で時間がなくて気づかなかっただけかもしれませんが、流石にこれだけ不自然だと気づいていておかしくないレベルです。

前回と大きく違っていることは、ここ最近で気温が急激に下がったので、エタロンの振る舞いが違っている可能性があることです。そういえば、CP+で借りたフェニックスも同じ方向にHα線の中心波長が寄ってしまっていたことを覚えています。季節もちょうど同じ冬だったので、元々暖かい時期に回転中心に調整したものが、気温変化で同方向にずれてしまっていると考えてもおかしくなさそうです。

さて、これで撮影してもつまらないでしょう。せっかくの透過幅の狭いエタロンの能力を引き出すことができません。販売店に相談して送り返してもいいのですが、それだとまた時間がかかってしまいます。

フェニックスのエタロンは、裏にスポンジがついていて、PSTのエタロンと似た構造になっています。下の画像はCP+講演のときのスライドの1ページですが、裏から見たエタロン部のところにオレンジ色のスポンジのようなものが見えるのがわかるかと思います。

スライド32

PSTエタロンの特許が切れたので同型のエタロンを作ることができるようになったとの噂もあり、構造は酷似していると考えられます。PSTのエタロンならエタロン本体(2枚鏡の心臓部)以外は完バラしているので、構造はよく理解しています。手で触れる外側の回転リングの内側にもう一つ回転リングがあり、実際の調整は内側のリングで圧力をかけてエタロンの2枚の鏡の間の距離を変えています。外側のリングと内側のリングは一本のネジで固定されていて、しかも内側のリングには円周上にネジ穴がいくつも開けられているために、ネジをそのうちのどれかに締め込むことによって、内側のリングと外側のリングの相対的な位置が決められています。

もしフェニックスのエタロン部の構造が同じなら、同様のネジがあるはずで、そのネジを緩めて外側の回転リングを独立して回してやり、ネジを別の穴に挿して締めてやることで調整範囲を変えることができるはずです。


Hα中心位置の調整

フェニックスのエタロン部の外観を見ると、ちょうどそれらしいネジがありました。

IMG_2259

これから示す方法は、決して難しい方法ではありませんが、マニュアルなどには記載されていない方法で、あくまで自己責任での調整になります。これで故障などしても販売店の保証は受けられなくなる可能性があります。それを理解した上で、必要な方はお試しください。中心波長が回転範囲内に入っていないと思っても、心配な方は販売店に修理依頼などをお尋ねください。このブログではあくまで調整方法があるということを示すだけで、それによって生じた不具合などを補償することはできません。繰り返しになりますが、あくまで自己責任ということを理解した上で実行するようにしてください


事前準備1: 外側リングをどちら方向にずらした方がいいかをあらかじめ確認しておきます。
  1. 太陽を見ながら、Hα線の中心と思われる位置に外側回転リングを回して合わせます。
  2. 波長中心に持って行ける場合は、そこからリングを回して、回転端までどちらの方向が狭いか、どちらの方向が広いかを確認します。
  3. 回転端まで狭い方向にリングを回しきってしまいます。
  4. もし、Hα線の中心に行く前に回転端に到達してしまった場合はそのままにしてください。こちらも下の調整では回しきった反対側の方向に回転リングを回します。

事前準備2:
  1. 金色の金属の回転リングの対物側の端と、エタロンを上から固定している文字が印刷されている金色の金属円盤との黒い溝状の隙間の長さを確認しておきます。3-4mmくらいかと思います。

実作業:
  1. 上の写真で見えている、外側リングに埋め込まれているネジをマイナスドライバーで緩めてネジを引き出します。
  2. ある程度緩めるとそれ以上出てこなくなるので、つまんで少し引っ張ってやります。
  3. ネジが内側リングの穴から抜けると、外側のリングが独立して軽い力で回転方向にも、前後にも動くようになります。その際、ネジが外側リングからスッポリ抜けてしまっても構いませんが、その際は再び外側リングに挿し込んで、尚且つ内側リングからは抜けた状態になるようにネジをもっていってください。
  4. 事前準備2で確認した、黒い溝の隙間の距離を保ちながら、事前準備で確認した、回転端に達したのと反対方向にリングをゆっくり回します。
  5. 黒い溝の隙間の距離を保つことに気をつけつつ、ネジの頭を少し押しながら回していくと、ネジが少し押し込める場所があることがわかります。ここが隣のネジ穴になります。
  6. 一度ネジを数回転回して仮止めしてから、実際の太陽像を見ながら外側回転リングを(内側回転リングと一緒に)回して、Hα線が回転範囲の中心に来たかどうか確認します。
  7. ネジ穴をずらした距離が不十分なら、さらに隣のネジ穴を探して同じことを繰り返します。

私の場合はHα中心が丁度回転端付近にまで達していたので、3つくらいネジ穴をずらしたところで、回転範囲の中心にHα線の中心が来るようになりました。


スマホアダプターでの撮影

上のように調整した後は、眼視で見てもプロミネンスがちょうど回転中心付近でよく見えるようになりました。表面の複雑な模様もよく見えます。大きな黒点が出ていてちょうど真正面にきているので、眼視でも迫力がありました。

付属アイピースは焦点距離を調節できるタイプのものなので、拡大もできて便利です。また、スマホアダプターも付属されているので、使ってみました。うまくスマホを固定するのに少しコツはいりますが、固定さえできればあとは簡単に撮影することができます。普通に写すとかなり明るくなってしまうので、スマホのカメラ機能で輝度を落とすといいのかもしれません。

IMG_2265

jpegで保存されていますが、これでも多少の画像処理をするだけでプロミネンスや表面の模様が見えてきます。
IMG_2265


G3M678の効果

スマホの殺絵だけでも楽しいかもしれませんが、ここからはモノクロCMOSカメラを使った本格的な撮影にうつります。カメラはG3M678Mです。このカメラはピクセルサイズが2μmと天体用カメラとしてはかなり細かい部類で、分解能を上げることができると思われます。その一方、センサーサイズも1/1.8インチとそこそこ大きく、今回のフェニックスの焦点距離400mmだと太陽全景がプロミネンスも含めてちょうど入るくらいの大きさです。

フェニックスの鏡筒の口径は8cmですが、エタロンを取り付けたときはエタロンの開口径の4cmに制限されるため、実効的には口径4cmとなります。その場合の分解能は例えばドーズ限界を考えると11.6秒 / 4cm = 2.9秒となります。

その一方、センサーサイズが7.7x4.3mmなので、焦点距離400mで画角を計算すると1.10 x 0.616度となります。解像度が3840x2160なので、1ピクセル当たりの画角は1.03秒となります。上のドーズ限界と比べると、カメラの分解能の方がすでに十分細かいので、オーバーサンプリングになります。うーん、こうやって改めて比較してみると、すでにオーバースペックのカメラですね。

それでも、ドーズ限界は眼視における2つの星を輝度で見たときの分離限界とも言えるので、撮影の際にはのちの画像処理も考えると輝度差を拡大できるので、分解能はもう少しよくなるはずです。例えば、かなり昔に惑星撮影でドーズ限界をどれくらい超えることができるかを議論したことがあって、ざっくり1.5-2倍程度まで改善できそうだという検討結果でした。

また、カメラのピクセルサイズと分解能について議論したこともあり、ピクセルサイズがレイリー限界やドーズ限界よりも細かい方がより分解能を上げる効果があるのではないかと、当時は結論付けています。

なので、おそらくですがまだこのレベルだとピクセルサイズが小さくなることは効果があって、今回のカメラは分解能に対してまだ貢献できるのかと思います。実際には口径4cmの分解能にかなり近いところを攻めるくらいになっているはずで、言い換えると、フェニックスの性能限界にちょうど迫るくらいになっているのかと思います。

ここら辺の検証は、カメラを例えば手持ちの2.9μm/pixelのASI290MMにわざと分解能を落として比較するとか、バローレンズを入れて分解能が上がるのか上がらないのかを見るなどで実際に確かめることができるのかと思います。余裕があったら試してみたいと思います。


G3M678での撮影

実際にG3M678Mで見てみます。まずはSharpCapで簡易的にライブスタック機能を使います。この時点で黒点周りのHαの模様もかなりの分解能で見えることがわかります。

スクリーンショット 2025-12-06 095839

この時にそのままPNGで保存したファイルになります。
Snapshot of 09_56_57_Stack_00001 09_56_56

どうでしょうか?画面にWaveletの設定が出ていますが、ほぼオート設定です。500枚のライブスタックで、簡単にここまで見ることができますが、これは楽でいいです。実際ここまで出るのはかなり楽しいと言わざるを得ません。

せっかくなので、serフォーマットで動画で撮影し、マニュアルでスタックして、画像処理までしてみました
10_32_12_lapl2_ap3783_IP

直接比較してみるとどうでしょうか?左がSharpCapのライブスタック、右がserファイルからのマニュアル処理です。
comp

さすがにライブスタックそのままだと差が大きいので、別途画像処理してみましょう。左がSharpCapのライブスタックを画像処理したものです。右は上と同じでserファイルからのマニュアル処理です。
comp2

どうでしょうか?両方とも画像処理することが前提なら、ライブスタック画像もマニュアル処理にかなり迫ることができます。それでもやはり差はあって、特に明るいところと暗いところの階調の滑らかさや分解能など、きちんと出すならやはり動画からマニュアルで処理した方が多少いいようです。

今回のフェニックスとG3M678Mは、太陽全景を一度に写しつつ、口径4cmのフェニックスの限界近くに達しているものと思わ、ある意味ベストに近い組み合わせなのかと思います。これ以上分解能を上げるには大きな口径の鏡筒を使うのが正しい方向です。口径を増やして、さらに拡大して撮影して分解能を上げるのが、次に考えることになるのかと思います。


まとめ

今回の組み合わせは、フェニックスが15万円強、G3M678Mが4万円強で、合計20万円程度です。決して安い価格ではありませんが、一昔前の太陽望遠鏡ではこの値段ではここまでの性能を出すのはかなり難しかったと思います。太陽望遠鏡としてはまだ入門機なのですが、それでもフェニックスの透過波長幅は0.6Å以下とかなり優秀で、ここまで太陽Hα画像が出るのなら、しかも簡単なライブスタックでもこれくらいは出るのなら相当なコストパフォーマンスです。

上の全景画像のように簡単に全面がムラなくほぼ一様にHα中心に見えるというのは、実は驚異的なことだと思います。例えば手持ちのPSTエタロンでは、均一範囲は3-4割と言われています。フェニックスエタロンは製品ごとのばらつきもほとんどないと聞いているので、安心して手に入れることができる入門用の太陽望遠鏡なのかと思います。いい時代になったものです。フェニックスエタロンの詳しい性能については、CP+での講演動画をご覧いただければと思います。




その後、お客さんが

この日は天気は良かったのですが、思ったより風が強かったので、フェニックスでの撮影を終えてからは少し気が抜けてしまって、自宅でのんびりしていました。そんな折、お客さんがきてくました。以前、太陽を見に来てくれたMさんの所の中3のお嬢さんです。私が朝からXでつぶやいていたのを見てお母さんと一緒に訪れてくれました。

まだフェニックスのセットアップは残っていたので、アイピースに戻して実際に太陽を見てもらいました。と言ってももう夕方近くで、太陽が隣の家の高い木にかかってしまっていたので、わざわざ赤道儀をずらして太陽が見える位置に移動しての観察になります。星座ビノに太陽フィルムを付けたもので、太陽黒点も直接見てもらいました。

満月の次の日でちょうど月の話が出たので、望遠鏡を一本持って帰ってもらいました。ビクセンのポルタで、昔星まつりで中古で特価で手に入れたものです。振動比較で使ったくらいでほとんど使っていなかったので、長期貸し出しということで自由に使ってもらいたいです。うまく月が見えたかどうか、今度会ったときに感想を聞いてみたいです。


久しぶりの新鏡筒です。ACUTER OPTICSの太陽望遠鏡「フェニックス」です。

ちなみに5月にSHG700を購入していますが、あれはあくまで分光器で、厳密には鏡筒ではないので、やはり久しぶりの新鏡筒です。多分。


フェニックス購入に至った理由

新鏡筒とは言っても、フェニックス自身は以前、CP+の講演のために昨年12月末にサイトロンさんからお借りして、CP+前の2月頭くらまで使っていたので、新体験というわけではありません。それでもその期間に使えたのは、晴れの日の休日でたった3日間だけでしたので、思う存分使えたというわけではありませんでした。

CP+後、太陽熱が出てしまってから、フェニックスにするかSHG700にするか、当時散々迷ってたんです。できれば両方欲しかったのですが、値段的に同じくらいで、そんなものを2ついっぺんに買うと、色々な諸問題が発生します。

結局SHG700にした理由は主に2つあって、一つは単純に分光という新しい体験で、Hα以外も見たいことと。もう一つは、こちらが結構メインだったのですが、PSTエタロンでも白色光の成分をきちんと落としてやれば(天体写真の画像処理で言う、ストレッチのようなこと)、半値幅が小さいエタロンに迫ることができるのではという淡い期待があったからです。これを確かめるためにも、分光での撮影が必要だったので、まずはSHG700ということになりました。結論としては、実際に試してもうはっきりしてしまっていて、「Hα周りの波長ごとに出てくる構造がちがうので、波長透過幅が大きいエタロンは波長透過幅の小さいエタロンの結果を再現することはできない」というものでした。


この時の記事にも「次はフェニックスに走るのでは」と書いていますが、今回やっと購入に至ったということになります。


3連休の間に到着

3連休の間になんとか到着したので、その場で見ることができました。
IMG_2204

まず開封の儀で、箱を開けた時です。
IMG_2205

その日はもう夕方近くで、パッと外に出していた赤道儀に載せ、付属のアイピースでファーストライトとなりました。
IMG_2209

とりあえず見た目ではおかしなところは無さそうでした。製品ごとのエタロンのばらつきが少ないというのも、安心して購入できる指標となります。

スマホで太陽の写真を撮りましたが、すでに太陽が隣の家の木にかかってしまっていて、この日はこれで狩猟となりました。本格的な撮影はまだこれからになります。
IMG_2214


フェニックスで何をするのか?

では、このフェニックスで何をしたいかですが、ちょっと魔ニアックな大きな目的が2つあります。

もしかしたら壊してしまうかもしれないので、その前にごく普通の使い方も堪能しておきたいです。以前フェニックスを使ったときはカメラがASI290MMでしたが、その後手に入れた、センサー面先が広く且つピクセルサイズが小さいという、ある意味太陽全景撮影用最強とも言えるG3M678Mという新カメラがあるのでどこまで分解能が出るのかは試してみたいです。口径4cmの限界に迫ることができるかどうかです。

普通の使い方の次の、まず一つ目の目的は、エタロンの特性測定です。PSTのエタロンの特性は測定しましたが、それに比べてどれくらいいいのか?定量的に示してみたいと思います。

もう一つは、大口径化でしょう。PSTでやったように、接眼側の途中にエタロンを持ってくることで4cmという口径の制限を超えて解像度が出るのか試してみたいです。問題は、
  • レンズが必要なこと
  • 接続がうまくいくか
  • 中央遮蔽があるエタロンでPSTのような中央遮蔽のないエタロンの代わりになるかどうか
などです。エタロンを壊しさえしなければ、最悪失敗しても普通にフェニックスとして使えばいいので、まあできる範囲でやろうかと思います。


(追記) 後日、改めてきちんと撮影までしてみました。


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