ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:鏡筒 > SHG700

以前、SHG700用に新しい10mm長のスリットを手に入れて、TSA120で分光撮影を試みたのですが、カメラのセンサー拡大も必要で、手持ちのASI294M Proを使ってみたところ、ROIの設定が限定されていてい結局使えなかったという記事を書きました。新しいIMX183系のカメラを買えば済む問題なのですが、最近フェニックスを買ってしまったので、しばらくはお預け状態になっています。




ASI294MM Proが使えるかも!

でも捨てる神あれば拾う神ありで、ASI294MM ProのROIを任意に設定する方法があることがわかりました。SharpCapのフォーラムに投稿されていたのですが、やはり悩みは全く同じで、新しいスリットで手持ちのカメラを使えないかというのが発端です。



それによると、Windowsのタスクバーの検索欄に「regedit」などと入れて、出てきた「レジストリエディター」をクリックして立ち上げます。
「\HKEY_CURRENT_USER\Software\AstroSharp Limited\SharpCap\4.1」まで行き、「CustomResolutions」をダブルクリックします。「値のデータ」に例えば「;8000x180」などを加えます。

スクリーンショット 2025-12-06 112732_cut

SharpCapが立ち上がっていた場合は再起動して、ASI294MMProを接続し直すと、設定したROIが選択できるようになっています。


実際の撮影

IMG_2276

最初8000x180で試しましたが、seeファイルの大きさが10数GBと大きくなってしまったので、もう少し攻めて結局5400x150に落ち着きました。一時、縦幅を120まで攻めたのですが、Hα線をうまく読み出せないことがあったので少し余裕を持たせています。頑張れば5000x130くらいでも実用的になるかと思います。でも、撮影時のファイルサイズが大きいのはそんなに問題ではなくて、JSol'Exで処理するときにserファイルを時間、サイズともに同クオリティで小さくするオプションがあるので、それを使うと結局どんなサイズで撮影してもほぼ同じ小さいサイズで保存することができます。今回も小さくしたファイルでもきちんとHα画像を再現することを確かめました。撮影時7GBくらいのファイルが1.5GBくらいの大きさになるので、撮影時にさえディスクが溢れないように気を付けておけば、処理した後はディスク容量などそこまで問題になることはなさそうです。

問題はフレームレートです。8000x180で70fps、5400x150で76fpsでした。fpsは縦幅のみに依存していて、横幅はほとんど関係ないみたいです。縦幅を120にしてももう大きくは上がらず80fps程度で高止まりです。これまでのG3M678Mは縦幅にも依りますが、実測で450-570fps程度は出ていたので、これまでの6分の1以下のスピードと相当遅くになります。

これは1枚あたりの撮影時間に直結します。出来上がる画像の横の空間分解能はserファイルの撮影枚数で決まります。縦幅が5400ピクセルなので、横幅も同じくらいのピクセル数にすると考えると、ざっくり5400枚撮影する必要があります。撮影時間はこれをフレームレートで割った、5400/76=71秒くらいは必要なわけです。実際には太陽が映っている部分はもう少し小さいとしても、これまでFC-76とG3M678Mだと1回16秒くらいで撮影を済ましていたことを考えると、大幅な撮影時間の増大となります。

また、時間をかけて撮影する必要があるということで、赤道儀のスキャンスピードも16倍から4倍程度にまで落とす必要があります。以前、16倍と32倍で試したのですが、赤道儀としてはどうも速いスピードのほうが安定っぽかったので、ここまでスピードを落としてうまく撮影できるかも心配になります。

最初、1回あたり90秒でスキャンしてテスト撮影していました。一応太陽全景は入るには入っていたのですが、連続撮影のための「SHGスクリプト」の初期位置を最初に太陽中央に置くと、撮影時間ギリギリになってやっと太陽の終わりが入るくらいになってしまいます。その一方太陽の写り始めは録画開始時刻のはるか後になってしまいます。できた動画は前半は何も映っていなくて、後半にのみ太陽が入っているという時間的にもファイルサイズ的にも無駄が多い状態になってしまいました。

本来このSHGスクリプトでは、太陽中央を初期位置にするので正しいはずなのですが、赤道儀のスキャンスピードが4倍と遅いのが原因なのか、それともスクリプトにまだ対応しきれていないところがあるのかわかりませんが、とりあえずあらかじめ初期位置をずらすことで回避することにしました。具体的には、太陽の進む方向に先回りしたところ(具体的には赤道儀のWestボタンを押して太陽が見えなくなるところから、16倍速で10回ボタンを押すくらい離れたところ)に初期位置を設定してスクリプトを開始すると、動画の真ん中の時間帯に太陽が入ります。この設定で動画の長さを60秒くらいまで短くすることができ、前後5秒くらい余裕が残る程度になりました。これで撮影動画をJSol'Exで処理すると太陽の縦横比が0.98と出たので、ちょうどいいくらいのスピードでしょう。例えば縦横比が0.5とかだと、赤道儀のスピードが速過ぎて潰れたような太陽になってしまい、それを無理に円形にするので、解像度が出ないというわけです。

結局これらの
  • ROI5400x150
  • フレームレート76fps
  • スキャンスピード4倍速
  • 撮影時間60秒
  • 初期位置が太陽端から16倍速で10回ボタンを押したところ
というパラメータを見つけるのに12月7日(日)と13日(土)とほぼまる2日使ってしまい相当苦労してしまいましたが、とにかく、TSA-120とASI294MM Proで撮影することは可能だということがわかりました。


実際の撮影画像

下の画像は、テスト中に撮影した30枚くらいのがぞうのなかから、30分間くらいの間に撮影した10枚をスタックしたものになります。

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残念ながらこの日はかなりの強風で、さらにシーイングも見るも無惨な日でした。特に分光撮影ではスキャン時間の間の風による鏡筒のブレの影響は結構深刻で、画像自体の分解能はまだ議論できるレベルではないと思います。それでも口径がこれまでの76mmから120mmになって分解能が得している様子はある程度伺うことができているように見えます。今回はとりあえず撮影ができることがわかったということで、細かい比較は今後余裕が出た時にしようと思います。


同日のフェニックスで撮影した画像

ちなみに、フェニクスでSharpCapのライブスタックで同じような時間帯に撮影したものが下になります。この画像はライブスタックでの簡易撮影ということと、シーイングが相当悪かったこともあり、分解能は前回より相当落ちてしまっています。

Snapshot of 13_48_07_Sun-Halpha_RA+_4x_00001 13_48_07_PI_cut

先の分光撮影の画像と比較したいのは、波長分解能(波長透過幅)です。白く明るいところはプラージュと呼ばれている領域です。このプラージュ以外にも、先の分光の撮影ではもっと広い領域に白いモヤモヤしたものが写っています。これは波長分解能が相当良くなると見えてくるもので、私的にはこのモヤモヤがどれだけ見えているかで波長透過幅どれくらい狭いかを評価する指標としています。

また、先の分光撮影の方が黒いダークフィラメントがより濃く見えるのも、波長分解能がより細かい証拠で、背景光の影響がより少なくなるためによりコントラストがよくなります。

白いモヤモヤ部分ですが、どのように呼べばいいのか、少なくとも私はまだ名前を知りません。波長分解能がものすごく良くなってから初めてわかるものなので、これまであまり認識されていなかったのかもしれません。どなたかこの名前がわかる方いらっしゃいませんでしょうか?フェニクスはそのモヤモヤが少しですが、実際に見えているところがすごいです。エタロンですが、昔のものよりも性能が確実に上がっているのがよくわかります。

ここら辺の詳しい話は、以前SH700で波長透過幅が分光よりも広いエタロンの写り具合を再現した時の記事で詳しく議論しています。


今回のフェニックスも同程度の写りかと思うので、エタロンの性能としては前回お借りしたフェニックスと大きな差はないものと思われます。フェニクスエタロンの波長透過特性は、そのうちに測定するつもりです。これまでの手持ちのPSTと比べてどれくらい差があるのか、とても楽しみです。


まとめ

とうとう、SHG700+長めの新スリットと、より口径の大きいTSA-120と、手持ちでセンサ面積の広いASI294MM Proで、太陽全景の分光撮影が成功しました。このカメラのフレームレートが遅いのでかなり苦労しましたが、カメラを新規で購入するまでには至らずになんとかなったので、まあよかったでしょう。

これで以前計算した結果によると、空間分解能は2.2 arcsecから1.4 arcsecと大幅に改善されたことになります。その一方、波長分解のは0.091Åから0.105Åと少し悪くなっていますが、そこまで大きな違いではないでしょう。

トータルとしては大きな改善なのですが、今回の撮影では天候のせいでまだその性能を引き出せたとは言えないので、風もなくシーイングがいい日を狙って再度評価してみたいと思います。


分光撮影で、太陽のコロナの構造を一部見ることができます。これはすごい!


コロナは簡単には見えない

太陽のコロナは非常に淡いため、通常の観測では見ることができません。そのため皆既日食で暗くなった時に、周りの放射状に広がっていくコロナが観測されるのはよく知られています。

コロナは太陽の周りだけでなく、光球面にもその複雑な構造が存在しています。コロナは100万度以上の高温で、可視光よりもX線での放射が大きく、その構造はX線で観測することで見ることができます。X線を見るカメラは、研究レベルでは民生品(浜フォトなど)が手に入ります。ですが、太陽からのX線は地球の大気で吸収されてしまうため、たとえX線のカメラを使ったとしても、地上から観測することはできません。そのため、通常は衛星からの撮影に限られてしまうので、どうしてもアマチュュア天文では手が出ない、研究ベースのものになってしまいます。

ですが、可視光の範囲にもコロナの情報を含む波長が存在するのです!今回利用したのは、以前撮影したHe D3線です。



といっても普通にHe D3線を撮影しただけだとノイズに埋もれがちなので、He D3画像を50枚とか100枚とか、枚数を稼いで統計的にノイズを減らして、より淡い構造を見ることでやっと出てくるくらいのもののようです。


なぜHe D3にコロナの情報が含まれるのか?

例えば1975年のこの論文に、太陽表面ではなく縁(へり)についてですが、比較的わかりやすく議論されています。PDF版が右のアイコンをクリックすると無料で読めるので、興味がある方は読んでみてください。

ごく簡単に説明すると、ヘリウムがコロナのXUV 放射(X 線および極端紫外線放射)で励起されるならうまく説明できるだろうと書かれています。その励起のアイデアはなんと1939年に提唱されていて、さらに1971年このアイデアが支持されたということで日本人の論文が参照されています。

論文ではコロナの放射がHe I及びHe IIにどれくらい影響するかを定量的に見積もり、最終的にD3線の輝度で見えるレベルになるのかどうかの評価を数値的に確認し、D3線で十分なコントラストで見えることが示されています。議論は主に縁についてですが、最終的にはコロナホールなどの構造でもうまく適用できるとして、実際にうまく撮影ができている例があると結論づけています。

50年以上も前からこんな議論がされていたことに驚くのですが、それでも研究レベルのことがアマチュア天文の機材で簡単に楽しめる時代になったということは、やはり機材や画像処理のものすごい進歩を感じざるを得ません。


撮影

撮影ですが、以前のHe D3の撮影の記事でも説明した通り、D3線は輝線のみなので基本的に明るく、そのまま見ても構造は全く見えません。撮影した画像から、少し波長をずらした連続光を、画像処理においてさっ引く必要があるため、D3線を含みながら近くにある暗線を含めて、多少広い波長範囲で撮影してやる必要があります。

さらに今回は枚数を稼ぐ必要があります。分光での撮影は早くても1回につき30秒から1分程度かかります。50枚とか100枚撮影しようとすると1時間オーダーのそれなりに長時間撮影になるので、太陽方向からずれていかないように赤道儀の極軸合わせの精度が重要になります。昼間の撮影になるため当然北極星は見えず、赤道儀の極軸の精度があまり出ないので、最初のうちは数枚連続撮影するだけで、徐々に見えている太陽が東西方向にずれていってしまいました。

前回の撮影時の経験から、太陽が画面で見ていて左側にずれていった場合、赤道儀を水平方向に(モーターでなく、赤道儀の根本のネジで)東方向(上から見て時計回り)に回転させることで補正できることが分かっていました。今回は画面で見て右にずれていったので赤道儀を西方向に回転させ調整します。でも何故かどんどんズレが大きくなっていく気がするんですよね。何度か回転させた後やっと気づきました。あ、昼ですでに天頂越えして赤道儀が反転してるから、画面で動く方向が逆になっているんだと。単純なことですが、最初からはなかなか気づかないものです。極軸調整後は10枚以上撮影しても全くずれなくなりました。

撮影時間は2025年11月4日の昼前11時から40分くらいです。11時の時点で赤道儀はすでに反転していたので、その後も画像を反転などする必要がなく一定方向で撮影できました。今回は52枚撮影し、その中の51枚を使用しました。もう少し枚数を稼ぎたかったのですが、最後は雲が出てきて終了となりました。


画像処理

撮影した51枚のスタックですが、まずImPPGで位置合わせして、その後PixInsightのFFTRegisgtrationでさらに位置合わせをします。その際は「拡大縮小」に加え、「回転」と「大きな変換」オプションもオンにしましたが、ログでずれを見ている限りImPPGだけでもほとんど位置は合うのかと思います。FFTRegisgtrationはスタックも同時にやってくれるので、今回はそのままこちらのスタック機能を使用しました。まずはスタック直後の画像です。この時点ではコロナの構造などはまだほとんどわかりません。JSol'ExではP角の補正を自動でしてくれるので、一般の画像と比べるためにこの時点でその日の傾きの約24度ぶんを時計回りに回転させています。
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コロナ構造の比較

JSol'Exの出力の時点で十分明るい画像になっているので、極端なストレッチは必要ありません。それよりも、どの程度の輝度の変化を見やすくするかという観点でのストレッチが重要になります。あと、輝度を反転させると構造がわかりやすくなります。He D3線の結果です。波長は5875.62Åになります。

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下は、同日11月4日のX線の比較画像です。残念ながら、いつも見ているSDOが機器の故障で9月13日を最後に更新が止まってしまっています。それでもこれもいつも見ている宇宙天気ニュースが日別に更新てしてくれていますし、SOHOが動画になってしまいますが、各波長で公開してくれています。今回は宇宙天気ニュースの画像を使用しました。元はGOES衛星のSUVI 195カメラとのことなので、195Åになります。X線なので、上のHe D3線の30分の1程度のかなり短い波長になります。

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どうでしょうか?全然波長が違うにもかかわらず、X線で見えるコロナホールと呼ばれる暗い大きな面積部分と、その周りにある黒い筋のような線が、He D3線でもかなりかなり再現されていることがわかります。上下に暗い部分が出てしまうのは機材によるわずかなムラで、どうしても上下が明るく写ってしまいます。それが反転して、ここまであぶり出した結果暗くなってしまいます。白い明るい部分はこの日の活動領域で、コロナではないですがこの部分の形も同じようなものが再現できています。


まとめ

He D3を使ったコロナ構造の観測は古くから行われていますが、Solexの広がりきっかけで、アマチュアレベルでここまで見えるようになってきました。今回、私もやっとSHG700を使って自分で確かめることができました。

今後も機器の発達や、新しいアイデアで日食でなくてもコロナを観測する方法が出てくるのかと思います。例えば、「コロナグラフ」と呼ばれる、円盤などで光球面を覆う遮蔽を使って人工日食を作りコロナを観測するというアイデアは昔からあって、最近ではProba-3が本当の日食で撮影したかのようなコロナ画像を出しています。アマチュア天文の範囲コロナグラフがうまくいったという例は探した限り見つかりませんでしたが、分光を使った方法やさらに全く新しい手法が出てくるかもしれません。将来どこまで見えるようになるのか、とても楽しみです。


3連休ですが、富山は3日とも天気は駄目の予報。初日の今日、朝起きても雨が降っていて太陽は駄目そうでした。でも昼近くになってきて徐々に青空の範囲が広がってきました。北と東の方はかなり曇っているのに、南側から天頂向けてかなり晴れてきています。ガストでモーニングを食べてのんびりしていたのですが、天気を見て急遽帰宅して、機材の準備を始めました。


2時間くらいの昼間の晴れ

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前回の撮影が10月12日だったので、3週間ぶりくらいになり、結構久しぶりです。Hαでまずは調子を見ます。コリメーターレンズもカメラレンズも少しずれていたので調整します。鏡筒の焦点はかなりズレていました。SharpCapのバージョンを上げたら、起動時に立ち上がるはずの連続撮影のためのSHGスクリプトが認識されなくなってしまいました。SHGスクリプトの新バージョンも出ていたのでそれも試したのですがダメ、SharpCapのバージョンを戻してもダメで、結局SharpCapもSHGスクリプトも旧バージョンに戻してやっと認識されました。時間が惜しいのでとりあえず撮影を開始しました。スクリプトが認識されない問題は後から検証します。

赤道儀の極軸があまり合っていなかったようで、繰り返し撮影の間に結構な速さで太陽位置が左にずれていきます。確かに赤道儀が少し西向きになっている様子なので、赤道儀の水平回転ねじで合計3回転ほど回して東方向に回転し、その後は10ショット撮るくらいではズレがわからなくなるくらいになりました。

Hαを18ショット撮って安定に撮影できることを確認してから、次の波長に移ったのですが、その後すぐに曇ってきてしまい、機材を片付けた直後に雨が降り出しました。正午を中心に2時間くらい晴れていましたが、撮影にかけることができた時間は1時間弱位だったでしょうか。


Hα画像

今日の撮影結果はHαだけです。いつも通りモノクロ画像から順に、ドップラーシフト画像まで載せておきます。

撮影時間に間が空いてしまうと表面の模様が変わってしまい平均化されて分解能が出にくくなるののは分かっているのですが、今回は短時間のうちに枚数を撮ったので、スタックした方が解像度が出ました。撮影した18枚のうち、雲が流れていないなど使い物になる9枚をスタックしてみました。

今回、画像処理は
  1. JSol'ex1の1枚撮りのオートストレッチ
  2. AS!4でスタック、Registax6で解像度出し
  3. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度と炙り出し
  4. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度出し、PixInsightのSolarToolsで炙り出し、
の4つを比較してみました。1枚撮りよりは、スタックした方がいずれも分解能が出ます。2のRegistaxは分解能は出るのですが、ダークフィラメントの階調が消えてしまうようなので諦めました。3と4はどちらも良かったですが、カラー化することも考えるとSolarToolsのカラー化機能が使える4の方が良さそうです。その後、4をPixInsightのMultiscale Linear Transformでノイズを少し落として、今回のモノクロ画像の仕上げとしました。結局カラー画像は使わなかったので、3を使っても良かったのかもしれません。

1枚目のモノクロのみスタックしたものを示します。

IP_aligned_lapl2_ap5296_IP_PI_MLT_LHE2_cut

2枚目以降はスタックなしの1枚画像です。
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12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_autostretch_15_00

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12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_mix_0_00

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_doppler

今回ちょっとだけ面白かったのは、P角が25度近くとかなり大きく、軸が相当傾いていたことです。一般的な太陽観測サイトは、例えばよく参照する「宇宙天気ニュース」でもP角補正をしていないので、黒点の位置がかなりズレて見てしまい、最初間違えて上下フリップをしてしまったのではないかと勘違いしたくらいでした。黒点位置があっているかどうかはJSol’Exの「active regeon」画像を見るとわかります。普段出さない画像ですが、向きなど間違えて撮影していないかの確認に使っています。

12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_activeregions_15_00

他にも普段出していない画像があって、プロミネンス画像と、そのドップラーシフトというのがあります。いい機会なので、今回載せておきます。
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12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_doppler-eclipse

毎回示すカラー画像は、JSol'Exでモノクロ画像を単にカラー化した「colorized」というものではなく、実は「mix」という出力ファイルで、カラー化された太陽表面に、上のあぶりだされたプロミネンスも合成して疑似カラー化したものを載せるようにしています。なので、ブログに載せてあるカラー画像だけはプロミネンスがよく見えています。他の画像はプロミネンスがほとんど見えていません。ただし、今回のようにモノクロをスタックした場合は、その過程でプロミネンスもあぶりだしているので、その場合はプロミネンスもよく見えるようになっています。

うーん、記録の記事だとあまり書くことがないですね。もう少し天気がいい時間が確保できれば、また劇的に進む予定です。それまではおとなしくいい天気になるのをゆっくり待つことにします。


前回、SHG700を使ってPSTエタロンの応答を測定しました。



今回は、透過幅6Å程度と言われているBF(Blocking Filter)及び、ERF (Energy Rejection Filter) 相当に普段使っている透過幅7nmのHαフィルターの応答を測定し、PST全体の応答を検証して見ます。


BFの測定

まずはBFです。実はBFについては、前回の測定の時にすでに測定していました。でも中心波長がHα線の6553Åから全然ずれてしまっていて、隣のピーク近くまでいってしまっていたので、測定自身を疑っていました。今回はHα波長と比較しながら測定してみます。

この日の測定もやはり曇りの日です。太陽の散乱光をSHG700を使ってフラウンホーファー線を映し出します。これが波長のキャリブレーションになるので、正確に見えるようにピントや回折格子の回転角を合わせます。特に今回は、Hα中心波長からのズレをすぐに判断したいので、SharpCapの画面上レチクリ機能を利用して、レチクル線に合うように回折格子を調整しました。具体的には下の画面のようになります。上下のちょうど中心の赤線がHαぴったりになるので、これからする測定もすぐに判断できるはずです。
スクリーンショット 2025-10-05 130303

そして一連の測定後に再度フラウンホーファー線を見て、最初の位置からズレていないことを確認すれば、時間的な波長のズレや、測定で間違って回折格子をズラしてしまったとかがないことも担保されるでしょう。

さて、実際のBFを測定してみました。BFは2つ持っているので、前回測定したもの(実はこちらがスペアのもの)と、普段使っているものも(本当は常用しているものはできるだけ崩したくないのですが)新たに外して測定してみました。ところが何と、前回中心から全然ズレていたものが今回かなり中心に来て、普段常用で使っている正しいはずのものが中心波長から全然ズレています。やはりHαの中心にこないんですよね。

流石にこれはおかしいと思い、いろいろ触ってみました。わかったことは入射光に対してものすごい角度依存性があるということです。例えばズレている時の測定状況は以下のような感じ、上下中心の赤い線から中心がズレるどころか、ほとんどBFの透過範囲にさえ入っていません。
スクリーンショット 2025-10-05 131358

今の段階では精度良く角度を調整できるような機構はないので、LEDの角度を手で微調整します。そうすると下の画像のように、あれだけズレていた透過範囲の中心を赤線の上、すなわちHα線の中心に持ってくることができてしまいます。
スクリーンショット 2025-10-05 132001

本来ならこの時点で入射光の角度依存性を丁寧に測定すべきなのですが、そのためには光源と分光器をきちんと固定して、角度を正確にずらすことができるような機構が必要になってきます。今はそのようなものはないのと、ちょっと大変そうなので、もしかしたら次は望遠鏡にSHG700を取り付けて、直接太陽を見て測定するとかにするかもしれません。角度調整はBFは無理ですが、エタロンは波長調整のための回転部を回すと角度が変わるはずなので、その関係を見るのも面白いかと思います。これらは今後の課題としたいと思います。

話を戻して、BFの透過特性をHα線を中心に持って来た状態で測ってみました。Hα線の周りを拡大したものになっています。グラフのオレンジの点線がフラウンフォーファー線から求めたHα線の位置になります。以下のようになります。
BF

まずここからわかることは、全然左右対称でないこと、ピーク位置は裾野に比べて中心には位置していないことです。。

ピーク位置での測定された最大透過光を1として、左右の光量が0.5になるところの波長を読み取り、その差から波長幅を読み取ったものがFWHM (Full WIdth Half Maximum) になります。今回は6.2Å程度でした。これは一般的に言われている6Å程度というのにかなり近い値です。


ERF

次は、ERF代わりに使っている7nmの天体撮影用のHαフィルターです。

本来はPSTには、BFで取りこぼして透過してしまう、短波長側と長波長側 (実際にはBFは短波長には漏れていないみたいなので、主に長波長側のみ) をカットするフィルターがあります。直接中を見ると枠にITF (Induced Transmission Filter) と書かれているものです。ところがこのフィルターの透過範囲が広すぎて(ここCoronado Blockfilter BF15 , Filter zum ObjektivによるとFWHMで100nm程度)、今のSHG700では一度に測定することができません。今の私のシステム(SHG700+G3M678M)だと測定範囲は18nm程度なので、端の方まで測ろうとすると10回くらい移動しなくてはいけません。面倒なことと、今回はHαの基準を真ん中に合わせたのを崩したくないこと、実際にもうERFとしてITFは使っていなくて、代わりに天体撮影用のHαフィルターを使っているので、今回はITFは諦めることにしてHαフィルターの方を測定します。

測定したHαフィルターは、手元にあるサイトロン製の透過幅7nmのアメリカンサイズのものです。サイトロンジャパンオリジナルと謳っていて、日本で作っていて、合成石英ガラスを採用しているとのことです。ただ、シュミットの販売ページを見ると現在は「在庫なし」となっているようです。これをPSTのアイピース側に入れて実際に使っています。

測定結果です。
HA

左右対称にはなっていませんが、BFに比べて大きな透過幅なので大きな問題ではないでしょう。こちらも一番透過する値の半分の所の左右の波長を読んで、その差をとってやると6.45nmと出ました。公称の7nmを満たしています。


PST全体の性能評価

今回測定したBFとERF(の代わり)を、さらにこちらも改めて実測したエタロンも合わせて表示してみます。エタロンもBFもHαフィルターも真ん中がちょうどHα線になるように、それぞれLEDライトの光の入射角を調整しています。なので、ここでは中心波長からどれだけずれているかなどの議論はできません。
all_wide

特に、興味のあるHα周りを拡大してみます。
all_narrow

BFの透過の端のところが左右の隣のエタロンのピークに少しかかっていることがわかります。狭い範囲なので、Hαフィルターはほぼフラットになります。

これ以降は平らなHαフィルターは省きます。まず、エタロンとBFのを合わせた透過率がどれくらいになるのか、その積を見てみましょう。
sum_eta_BF

確かにエタロンの隣のピークのところの透過率が少し盛り上がっていますが、5%以下なので大した問題ではなさそうです。

でもここで、さらに実測した太陽のスペクトルをかけたものを示します。
sum_eta_BF_spe

元々太陽の吸収線であるHαの暗いところを見ようとしているのですが、それ以外の波長のところは全然明るいわけです。エタロンの隣のピークのところもHα線からはるかに離れているので、当然明るいです。

それを考慮するとHαの中心波長位置に比べて、隣のピーク位置でそれぞれ15%程度の「明るさ」のピークになります。両側にあるので、合わせて30%程度になるでしょうか。実際の明るさは波長で積分したものになるので、Hα線周りの裾野も大きく、そこまで影響はないかもしれませんが、太陽スペクトルと一緒に考えると、そもそもそのHα周りの裾野の影響も相当大きいということを認識しておくべきでしょう。これらの影響はコントラスト低下につながります。そのため、
  • よりフィネスが高い、狭帯域のエタロン
  • 鏡の間の距離がより長い、FSRの大きいエタロン
  • 狭帯域のBF
などが求められるわけです。

その一方、コントラストの影響は眼視には直結しますが、撮影では一定の明るさの光はオフセットとして差し引くことができるので、影響は眼視ほど大きくはありません。もちろん、明るいということはショットノイズも大きいということなので、ノイズとしての影響は当然でます。

さらに、これは明るさだけの問題ではなくて、以前調べたように波長ごとに像そのものが大きく変わるので、コントラストの問題というよりは、どの波長を見るかという波長域の問題になります。



以前検討してみたメーカーの違うエタロンのダブルスタックは眼視という観点では主にコントラストに効き、撮影という観点では主に波長域に効くと考えると、いずれにせよかなり効果的なのかと思います。


まとめと今後

エタロン、BF、ERFと、やっとPSTの性能の実測ができました。ただし、入射光の角度依存性があることは分かりましたが、きちんとした検証は今後の課題です。

このPSTの透過曲線に、太陽スペクルを掛け合わせると、さらにいろいろ検討できることもわかりました。これまで考えてきたことが少しづつつながって、どんどん謎解きが進みます。アマチュア天文の醍醐味ですね。

さてとりあえずの次の目標ですが、手持ちのナローバンドフィルターをそれぞれ測定してみたいと思っています。せっかく手に入れた測定手段なので、まだまだ続きます。


最近は休日に全然晴れません。この日は久しぶりの晴れの予報でした。でも結局、朝は曇りで、昼頃に少し晴れただけでした。その晴れ間に撮ったHα画像です。


スリット部を改造

SHG700のスリットは、その台座のところで斜めになって取り付けられています。反射光を光軸から逃すためだと思いますが、その斜めになっていることが理由で、一部の測定で太陽像のゴーストが出てしまうことがわかっています。その斜めになっている台座の固定ネジの下側に、ワッシャーを挟むことで台座を斜めに傾けて、スリットを水平に近づけるようにしてみました。今日の午前中はその作業に時間を費やしました。

IMG_2054

その作業の効果や、どんな用途で使うかはまたそのうちに説明するとして、作業後の撮影復帰が大変だったというのが今日の話です。そもそも、スリットを触ったのはこの日が初めてです。その結果、問題点が二つ起きてました。

一つは作業でスリット表面にホコリのようなものがついてしまい、撮影時に黒い固定線が入り込んでしまったことです。これは、MLastroで推奨されていないブロアーでしつこく吹き飛ばすことで何とか解決しました。ブロアーはまだましかもしれませんが、少なくともスリットを何かで拭くようなことは絶対にしない方がいいとのことです。

もう一つの問題は、スリット位置をそこそこ正確に取り付け直さないと撮影範囲がずれてしまい、スリットの端がカメラの画角内に入らなくなってしまうことです。最初は鏡筒からSHG700を外して調整し、取り付けて太陽で画角を確認して、また外して調整というのを繰り返していました。これは結構な手間です。でもよく考えたら、散乱光でもスリットの端が見えるということに気づき、鏡筒から外して画面を見ながら調整することでうまく合わせることができました。位置合わせについては今回の調整で様子がわかったのですが、スリットの回転角が撮像にどう影響するかがまだよくわかっていません。

実はちょっと前に、長さが7mmから10mmになった新しいスリットがMLastroからリリースされて、リリース後すぐに発注していのがやっと最近届いたので、今回はその交換練習も兼ねていたのですが、本番の交換前にもう少し理解を深めておいた方が良さそうです。

さて、スリットをうまく付け直して、やっと撮影です。ピントはいつものようにコリメートレンズとカメラレンズと鏡筒の焦点の3自由度を合わせることで、うまくいきました。撮影している途中でちょうど正午くらいになり、連続撮影のSHGで毎回初期位置に戻すように設定していたのが原因で赤道儀が勝手に反転したのにはちょっとびっくりしました。反転後は、ウェイトバランスが悪さをして、また像が伸びてしまいました。ウェイトの位置を調整して、やっときちんと取れるようになったかと思ったら曇り出してしまいました。結局この日取れたのは5ショットのみ。その結果です。


Hα画像

まずモノクロ画像ですが、これは5ショットをスタックしました。1枚1枚の解像度がイマイチだったからです。
0_lapl2_ap4282_IP

条件がいい時の1枚画像のほうがいいのか、スタックした方がいいのかはまだ迷っています。少なくとも、30分とかの長時間で撮影した多数枚のスタックでは、逆に像が甘くなってしまうようです。それでも今回は5枚スタックでもはっきりしません。基本的には午前撮影の方がいいみたいです。

モノクロ以外は、一枚画像です。

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CaKなど、もう少し撮影したくて夕方まで待っていましたが、結局晴れず。この日は諦めました。


何日か前の記事で少しだけ書きましたが、分光器のSHG700を使って、太陽望遠鏡のHαエタロンの性能を表すFWHM(Full Width Half Maximum, 半値全幅)を実測してみました。これは太陽望遠鏡のフィルターがFabry-Perot cavityを利用したものだと知った2017年頃からやってみたかったことで、一時は中古の研究用の分光測定器を買うことを本気で考えていました。長年の夢の一つが叶ったことになります。


測定方法

今回SHG700で測定したものは、
  1. 太陽光の散乱光
  2. エタロンの透過光
の2種類です。ここからFWHMまで持っていきます。

1の散乱光は、SHG700を鏡筒から外して単体にして。部屋の中の(直射日光ではない)白い壁に向けます。白く明るい壁ですが、所詮背景光なので光量は大したことはなくて、露光時間を12.8秒でG3M678Mのゲインを400とし、さらにライブスタックで10枚重ねて、十分フラウンホーファー線の構造が見えるようにしました。

2のエタロンの透過光ですが、最初1と同様に太陽の散乱光を使って測定しようと思いました。でも光量が十分でなく、エタロンが共振しない暗いところは十分に見ることができません。太陽光を直接入れて測定するのがいいのですが、あいにくこの日は曇りです。というか、晴れないので痺れを切らしてこの測定を開始したので、太陽が出てないです。代わりに下の写真のようにLEDの小さなライトを使いました。
G1ghTC8aoAAOVvC

PCの画面にも出ていますが、うまくエタロンのComb (櫛形) 構造が見えるようになりました。

ただし測定は結構難しくて、ライトの光の絞り具合とか、ライトと分光器の間の距離だとか、ライトの位置や角度など、うまく合わせないとなかなか綺麗な線が出ません。とりあえず今回は机の上に適当に置いてやりましたが、できるなら光学定盤などを使い安定した測定にしたいです。特に、エタロンは入射光に角度依存性があって、いつかそれも含めて測定したいので、光の角度をきちんと調整できる機構が欲しくなります。


撮影画像

測定した画像は以下のようになります。

まず1の背景光です。
Capture_00001_WithDisplayStretch
太陽光のスペクトルが綺麗に出ているので、この画像から波長のキャリブレーションをすることができそうです。でもこれだけだと、Hα線は目立つのでまだしも、どの線がどの波長なのかよくわかりません。JSol'Exの「Spectrum browser」で見る参照スペクトルと比べてみても、なんか違うように見えます。

下の画像を見るとわかると思いますが、左が今回撮った散乱光、真ん中の細長いSharpCapの画像が以前撮った太陽を直接見たもの、右がJSol'Exの参照画面です。
Fraun_comp_cut

左と真ん中は同じような構造になっているので、まずは背景光がきちんと取れていると判断します。でも右の参照画面の線はかなり実測と違うことがわかります。なので下の画像のように、Hα線と目立って一致しているもう一本の線の波長を調べて、それを基準として他は波長が線形に変化していると仮定して、縦方向の波長を1次の直線でフィットすることにしました。

wavelength_select_cut


2のエタロンですが、本当は透過「率」を知りたいのですが、これは結構難しいとわかりました。まず、エタロンがある場合とない場合の画像を2枚撮影します。まずはエタロンありの画像をLEDライトの位置や角度を変えうまく撮れる状況を作ります。
Capture_00001

その撮影したままの状態をキープしながら、エタロンだけを動かして取り除きます。こうすることで同じ状況で基準光を撮影することができます。
Capture_00001

基準光は一見一定に見えますが、画像の上から下までで緩やかに暗くなっていくことがわかりました。エタロンの透過光のピーク位置もやはり同様に緩やかに暗くなっていくので、基準光で割ることにより、エタロンの透過光のピーク位置が平らに近くなります。

それでも、エタロンがないときにはSHG700の入射口径全体から光が入り、エタロンがあるときにはエタロン前後のレンズ径などに制限された光しか入らないので、透過率が低く出過ぎてしまいます。そのため透過「率」とすることは諦めて、ピーク位置を1とするようように規格化しました。

波長は画像の縦方向で変化しますが、スリットに長さがあるために画像の横方向にもフラウンホーファー線は広がっていて、しかも線が直線にはならずに曲線になっています。(どういった仕組みで曲線になるのか、どう調整したら直線にできるのかの方法は私はまだわかっていないので、こちらもいずれ解決したいです。おそらくスリット位置と回折格子の相対位置で決まるのではと推測しています。)しかも、エタロンの透過光の明るいところと暗いところの幅は横位置によって多少変わります。

今回は1の画像も2の画像も、真ん中あたりの斜めになっていない場所の10ライン程度の縦線を抜き出して、横方向に平均値をとりました。エタロンについては真ん中ら辺が明るい線が一番細いようなので、こちらも真ん中ら辺を選ぶのが一番良さそうです。

背景光のフラウンホーファー線を見ている限り、SHG700の回折格子を触りさえしなければ、撮影ごとの波長のズレのようなものはなさそうなこともわかりました。


波長のキャリブレーション

1の背景光画像のフラウンホーファー線では、波長がリニアに変化すると仮定して、上で決めた基準の2点Hαの6562.81Åと6643.63Åを元に1次の直線でフィットします。この時のあるところの数値と次の数値との差が、1ピクセルあたりに変化する波長となり、今回は0.089Å/pixelとなりました。しかしながら、SIMSPEC SHGで求めた0.091Å/pixelや普段撮影動画をJSol'Exで再構築した際にはこれまで0.091Å/pixelと出ていて、2%ほど結果が異なることがわかりました。

この違いの原因は2点だけを基準として波長が1次的に変化すると仮定したことかと思いますが、今のところはっきりとした原因は不明です。まあ今回は基準点のHα周りのFWHMを求めるのが最大の目的で、そこまで影響はないはずなので、とりあえずこのズレは無視することにします。


エタロンフィッティング

エタロンの透過光ですが、透過光を数値化したものを、基準光で割ったものをグラフにします。
etalon_ok

ここからHα周りのピークを抜き出して、フィッティングします。ピークの高さは右に行くに従って上がっていくようですが、基準光でのノーマライズがうまくいっていないのか、それともこうなるのが正しいのかよくわかりませんでした。Hα周りだけに絞ってしまえば、局所的にはほぼ同じ高さとしてしまっていいでしょう。

フィッティングはFitykというソフトでローレンツ関数やVoigtを使う例がいくつか示されているので、私も同様に試してみましたが、いくつか問題がありそうです。

下の画像は実際にFitykでフィットしてみたものです。
Voigt_cut

一つ目の問題は、これらの関数は基本的にピークの両側は0になることを想定していることです。ところが、エタロンの応答を表す関数は繰り返し構造になるため、ピークとピークの間の透過率が0になりません。ピークとピークの真ん中のちょうど反共振の位置では、エタロンの透過率は、同じ特性の鏡を2枚使うと仮定して、鏡の強度反射率Rと強度透過率Tを使って

(T/(1+R))^2

のような形に書けます。例えばここで、強度透過率T=0.3、強度反射率R=0.7とすると、ピークの真ん中でも(0.3/1.7)^2=0.0311と、3%ほど光を通してしまいます。

Fitykでは、別途定数を用いてフィッティングさせるような手法が取られているようですが、これだと個別の赤い2本の線のうち曲線の方を見てもらえばわかりますが、明らかに実測のピークより細い線でフィッティングされてしまっています。これは結果として、FWHMが小さく出過ぎてしまい、実際よりも性能がいいという間違った結果を出してしまいます。

今回の上の結果では、グラフ右にあるFWHMの数値を見ると、0.65ÅとPSTとしてはにわかに信じられないくらいのいい値が出てしまっています。例えばこのページでも同様の間違いをしていて、HeliostarのエタロンのFWHMがなんと0.3Åと、これも良すぎる値を出してしまっています。ピークの高さの半分のところの幅を見るだけでも、少なくとも0.4Åはあることがパッと見るだけでわかるので、明らかな間違いです。このグラフが出た時に何でこんな良すぎる値になるのかおかしいと思ったのですが、実際に自分でFitykを使ってみることでなぜこんな間違いに陥ったのかがよくわかりました。

二つ目の問題点は、ローレンツ関数やVoigt関数だと、一つのピークのみしかフィットすることができないことです。原理的に、エタロンの透過光の応答のような周期的なものを表すことはできません。このため、周期構造から求めることができる、FSR(Free Spectral Range)をきちんとフィッティングして求めることができません。

FSRはFinesse、FWHMとともにとても重要なパラメーターで、

Finesse = FSR / FWHM

というとてもシンプルな関係があります。Finesseはπで割って2をかけると、エタロン内での光の折り返し回数をすぐに計算できる、非常に重要な指標となります。FSRはエタロンの2枚の鏡の間の距離と反比例関係にあるので、FSRがわかるとエタロン間の距離を直接求めることができます。このように、複数のピークを含めてフィッティングしてFSRを求めることはかなり意義があると言えます。

では、なぜこれまであまり周期的な関数でフィットされてこなかったのでしょうか?これは推測なんですが、単に関数が結構複雑になるためにあまり挑戦してこなかっただけなのかと思います。少なくともFItykのような既存のソフトでフィットするのはかなり大変になりそうです。

今回は周期的な関数を書き下して、自分でpythonでコードを書いて、いくつかのピークをまとめてフィッティングしてみました。結果は以下のようになります。
fit_result_ok

フィッティング曲線がきちんと周期的に出ること、ピークとピークの間が0にならないことがわかるかと思います。ただし、ピークとピークの間の暗い部分が実測とフィッティング曲線でずれてしまっています。これは鏡のロスを考えないで、R+T=1という理想的な鏡を考えてしまったことに由来します。ロスを考えるとさらに複雑になるので、今回は諦めました。それでもFWHMの推定は、ピークの高さをきちんと0を基準に考えているので現実により近い値になっているはずです。


パラメータなど

実際の計算手順としては、フィッティングパラメータとして使った鏡の反射率と透過率、鏡間の距離がまずわかります。鏡の反射率からFinesseが計算でき、鏡間の距離からFSRがけいさんできます。FinesseとFSRがわかると、FWHMがわかるというわけです。下に少しだけ式を書いておきました。

代表的なパラメータはグラフの中に書き込んでおきましたが、今回分かったエタロンの特性を表すパラメーターは以下の通りです。
  • 鏡の振幅反射率、振幅透過率: r, t
  • 鏡の強度反射率、強度透過率: R = r^2 = 0.70, T = t^2 = 0.30
  • キャビティーの鋭さを表すFinesse = π r/(1-R) = 8.75
  • エタロンを構成する鏡と鏡の間の距離 = 0.313 [mm]
  • 周期の幅を表すFSR (Free Spectrul Range) = 6.88 [Å]
  • エタロンの性能を表すFWHM = FSR/Finesse=0.787 [Å]
  • 光の折り返し回数: Finesse *2/π = 5.6 [回 (片道)]
目的のFWHMは0.787 [Å] と出ましたが、公称1 [Å] 以下という値と比べてもそこそこ信頼性のある数字になったのかと思います。FWHMだけでなく、他の重要なパラメータもかなりの精度でわかり、PSTエタロンの特性がかなり特定できたと言っていいかと思います。長年の疑問にやっと答えが出たと言えそうで、かなり嬉しいです。
逆に、今回の測定でまだわからないことは
  • 光の入射角度の依存性
  • Hαからのピークの中心波長のずれ (入射光の角度と、エタロン回転調整をいじっていないため)
  • 個々の鏡の反射率と透過率がどれくらい違うか (2枚の鏡の反射率と透過率を同じと仮定したため)
  • 鏡のロス
などになります。今後の課題としたいと思います。


まとめと今後

手に入れたSHG700で、手持ちのPSTエタロンの透過特性を、うまく測定することができました。角度依存性などの課題はまだ残されていますが、目的のFWHMが測定でき、これまでわからなかった鏡の反射率、ミラー間の距離やFSR、フィネスまで確定できたのはかなり満足感が高いです。

今後やりたいことが、エタロン以外にも太陽望遠鏡でに必須の、BFの測定とかERFの測定です。他にも、ナローバンドフィルターやワンショットナローバンドフィルターも、メーカーが謳っている半値幅が本当に出ているのか、実測してみたいと思っています。




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