ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:鏡筒 > RedCat51

先週から体調がかなり悪くて、週末の小海の星フェスは泣く泣く諦めました。2日とも天気が良かったようで、Xの投稿を見ながら楽しそうでいいなあと思いつつ、体力が持ちそうにないことはわかっていたので、自宅で大人しくしていました。自宅の富山でも天気は良くて、月が出ていない時間も長く透明度も良かったのですが、夜に撮影どころか起きている元気もなくて、かなり悔しい思いをしていました。

時間だけはあったので、やっと彗星画像の処理に取り掛かれました。撮影日はもうだいぶ前の10月20日になります。


3つも機材を展開してパニックに近かったのですが、タイムラプス映像はすでに処理済みです。


彗星画像処理

今回は、3つの機材のうちの2つ目、RedCat51に、最近手に入れた2台目の6Dを取り付けて撮影した画像の処理になります。30秒露光で使えるものは47枚ありました。総露光時間は23分半になって、ネオワイズ彗星の時が80秒8分だったので、そこから見ても長くなっています。

その一方、撮影時間が長い分だけあって、恒星に対する彗星の移動が無視できないため、これまでのように恒星合わせでスタックすると、どうしても彗星がずれてしまいます。試しにWBPPしてみます。画像処理には、ダーク、フラット、フラットダークと後日別途撮影ファイルも使います。

5496x3670_EXPOSURE-30.00s_RGB_cut
核の部分の拡大。星の位置に合わせてスタックすると、彗星はずれていきます。

核を見てみると、彗星が25分程度の間に移動していく様子がよくわかります。でもこれだと彗星の正確な形がわからないので、彗星のみ別途処理する必要があります。でもその前に、とりあえずここで作った画像をStarNetで、恒星画像を分離して保存しておきます。後で彗星画像と合成するために使うことになります。

彗星核の位置を合わせるようにスタックするのは、PixInsightのCometAlignmentで簡単にできます。その代わりに当然ですが、恒星が流れてしまいます。
comet_alignment_integration
こうやってみると、30分クラスの撮影になるとかなりずれるのがよくわかります。

恒星をここから消すのは、ちょっとめんどくさくて、少なくとも上記の星が流れている画像でStarNetは全くうまくいきませんでした。しかたないので、一枚一枚のRAW画像にImageContainerを使ってStarNetを適用します。StarNetは1枚処理するのにもそこそこ時間がかかるので、47枚だと2時間くらいを要しました。

その後は再びCometAlignmentで核の位置を認識して重ね合わせますが、ここからが大変でした。星消し画像を彗星基準で重ねると、星を消した跡が軌跡となって残ってしまうのです。言うなれば一方向に流れた時に出る縞ノイズのようなものなので、途中ディザリングをすればよかったのかもしれません。
integration_ABE4_ABE4_ABE4

その後、ダーク補正なしとか、フラット補正なしとか、フラットダーク補正なしのフラット補正だけとか、色々試しましたがどれも残った軌跡をうまく消すことはできませんでした。少しネットで調べると、niwaさんの記事にIntegration時にCombinationをAverageからMedianに変更するといいとありました。そうするとrejectionで明るいところを弾けるとのことで、いくつかパラメータを試して、今回はhigh側を0.5σまで落としました。

この原理は、以前PixInsightを使い始めた頃にM33を処理して、縞ノイズを回避しようと試みたことに似ています。あの時はクールピクセルをCombinationをMaximumにすることで回避できました。当時は理由がはっきりわからなかったのですが、今ならはっきりと理由がわかります。縞ノイズは一旦発生すると相当厄介なので、Integrataionのオプションで多少は改善できることは、覚えておいてもいいのかと思います。

ただ、今回の0.5σというかなりきついhighリジェクションでも、まだ星の軌跡は少し残るのですが、テイルを除去しないためにはここら辺がもう限界でしょう。

ここでできた背景画像をPhotoshopに渡して、先に作った恒星画像を合成し、画像処理を進めたものが以下になります。淡い尾の構造を見たかったので、背景はABEを使いかなり平坦化しています。淡いところを強調したので、まだ星の軌跡は少し出てきてしまうのですが、上の画像から見たらかなりマシなので、まあよしとします。

integration_ABE4_ABE4_ABE4_comet_star_SPCC_MS_HT3
  • 撮影日: 2024年10月20日18時49分-19時21分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
  • フィルター: UV/IRカット
  • 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)
  • カメラ: Canon EOS 6D(天体改造)
  • ガイド:  なし
  • 撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間30秒 x 47枚 = 23分30秒
  • Dark: ISO1600、露光時間30秒 x 32枚、Flat, FlatDark: ISO1600、1/50秒 x 32枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

淡い尾が画面いっぱいまで広がってます。この画像の画角は横幅約8度に相当します。それ以上には余裕でありそうなので、まだこの時期だと少なくとも10度程度には広がっていたことがわかります。

10月14日の彗星にはかなり鋭い中心線となっていたネックライン構造ですが、20日のこの画像では鋭さはだいぶなくなっていて、明るいところも中心からずれています。視野方向が軌道面から少しずれてきたということなのでしょうか。

テイル部分は濃いところと薄い所で段になっているのがわかります。濃いところがイオインテイルに相当するのでしょうか?今回は軌道にかなり平行になっているからでしょうか、テイルもまっすぐで、前回見たネオワイズ彗星のように弧を描くようなテイルにはならないみたいです。

この画像は、これまでのネオワイズ彗星の画像に変わって、スマホの背景にしようと思っています。


核の回転

後半の処理は、同じ画像から核の部分を拡大して、ここにLarson-Sekanina フィルターを適用してみました。

これは、3つ目のセットアップのSCA260とASI29MCでの核の部分の拡大撮影の練習になります。ただし、このSCA260の画像、改造でシュミットに送り返してから何も調整せずに、しかも天板のプレートを自分で少し付け替えてしまっていて、現場で見ていると星像がかなり肥大化してしまっていました。もしかしたら解像度があまり出なくて、核の拡大画像としては使い物にならないかもしれません。

さて、上で作った恒星と背景画像をPixInsightの PixelMathで合成し、ここにPixInsightに標準で搭載されているLarson-Sekanina フィルターを適用してみます。Larson-SekaninaフィルターはRotation Gradientという名前でSirilにも搭載されているようなので、無料ソフト環境でも使うことができるようです。興味がある方は試してみるといいかもしれません。今回の画像のように、拡大するとかなり粗い画像でも結構面白い結果が得られます。

Larson-Sekaninaフィルターは彗星の核の周りの角度方向の輝度の違いなどを見やすくするために、以前からよく使われているとのことですが、数学的には特に難しいことをしているわけではありません。簡単にいうと、古文書の画像解析で文字をずらして見やすくするようなイメージでしょうか?ちょうどこの間の探偵ナイトスクープの西田局長の追悼回で、古いハガキのかすれた文書を読むのに使われれたので、見た方も多いかと思いますが、あの文字ずらしを極座標系でやっているようなものです。

具体的には、例えばPixInsightの場合には、中心を核の座標に指定し、距離と回転角でどれだけずらすかを、ピクセル単位と度単位で指定するだけです。Larson-Sekaninaフィルターの元の式を見るとわかりますが、距離はマイナス方向だけに、角度はプラスとマイナスの両方向に変化させています。距離がマイナスだけなのはプラスに動かすと、中心に空いたところに何を埋めればいいのかわからないからでしょう。このフィルターは1984年のかなり昔に提唱されたものなので、今ならアイデア次第でもっと複雑な変換を試してもいいのかもしれません。PythonやMatlabなどで画像を直接解析できるなら、実装もそれほど難しくはないでしょう。

PixInsightに搭載されているLarson-Sekaninaフィルターには、距離と角度の他に、もう一つamountというパラメータがあります。これが何を意味するのかよくわからないのですが、結果にはかなり大きく効きました。今回は距離: 2.5pixel、角度: 5度、amount: 0.05で、意味のありそうな構造が出てきました。

下が結果になります。見えやすいように輝度を反転しています。くるっと回っているような模様が見えると思います。

comet_star_SPCC_MS_25_5_004_035_inv_cut_L_cut

ですが、ここから何か意味を引き出そうとすると、とたんに難しくなります。そもそもLarson-Sekaninaフィルターの意義は「見やすくする」というものなので、そこから意味を引き出すのは別の話になります。意味を引き出すには、彗星がどういうものなのか、もっと知る必要がありそうです。今後の課題とします。


まとめ

彗星の画像処理はあまり慣れていないので、なかなか思うように進みませんが、やっとゴールが見え始めてきました。今回の紫金山アトラス彗星は、ネオワイズ彗星以来の大彗星で、そもそもやっと長時間での撮影ができたくらいです。Larson-Sekaninaフィルターもやっと試すことができたくらいです。

星を始めて8年半になりますが、これまで大彗星と呼ぶにふさわしいものはネオワイズを含めて2つだけです。ということはざっくり4年に1回というペースなのでしょうか。Wikipediaで大彗星で調べてみると、ネオワイズ彗星も紫金山アトラス彗星も大彗星に含めて、ここ50年ではわずか7つなので、実際には4年に1回よりは長そうで、むしろ4年に1度見えているのはラッキーなのかもしれません。

ネオワイズ彗星の時から考えてみても、今回は色々な進化がありました。次の大彗星ではどんな手法で撮影や画像処理を進めることができるのか、かなり楽しみです。


前回記事でSWAgTiのディザー撮影ができたことを書きましたが、書ききれなかったこともあるので、少し補足します。


機材

鏡筒ですが、最近手に入れた新機材でRedCat51です。と言っても新品ではなく、譲り受けたもので、IIでもIIIでもなく初代です。

富山県天文学会のK会長が4月に逝去されました。2016年の5月、星を始めたときに牛岳で誘われて入会して以来、折につけお世話になっていました。会内では最もアクティブな方で、とにかく天気さえ良ければいろんなところに顔を出して星を見てた方です。星や宇宙の解説が大好きで、普通に来てた一般の人にも、いつも分かりやすく説明されていました。昨年末くらいからでしょうか、急に痩せられて、体調を悪くされているようでしたが、3月の役員会には顔を出されていたのに、まだ60代半ばで、あまりに早すぎるお別れでした。熱心な方だったので、当然大量の天文機器があるのですが、遺族の方のご好意で、できれば皆さんで使ってくれないかということで、私はRedCat51とEOS 6Dを格安で譲っていただくことになりました。ちなみにK会長、6Dがよほど気に入っていたのか、3−4台もあって、私はその中であえて1台だけあった無改造機を選びました。私が持っている一眼レフカメラは全て天体改造をしてあるもので、ノーマル機を一台も持っていなくて、普通の景色も少しは撮ってみたいと思っていたので、実はとてもありがたかったのです。

IMG_9796

撮影用のコンパクト鏡筒としてはこれまで主にFS-60CBを使っていましたが、赤ハロ青ハロ問題を避けたいというのがありました。これはFS-60CB特有の問題で、ピント位置が赤と青で微妙にずれていて、赤か青のどちらかのハロがどうしても出てしまうというものです。ジャスピンが難しく、赤と青を均等になるように合わせたりしてきました。また、FS-60CBにレデューサをつけると焦点距離が250mm程度になるのですが、周辺星像がすこし流れるのも気になっていたこともあり、250mm程度の短焦点で性能の良い鏡筒を狙っていました。実は最近はBXTがあるので、これらのFS-60CBの欠点はソフト的にかなり解決できますが、やはり撮影時に解決したいという思いがあります。

RedCat51を使ってみて驚いたのは、周辺減光の少なさです。今回使ったカメラがUranus-C Proでセンサーサイズが1/1.2インチと決して大きくはないのですが、オートストレッチで強あぶり出ししてもほとんど周辺減光が確認できませんでした。なので、簡単撮影という目的も考えて、今回あえてフラット補正をしませんでした。さらにいうと、PixInsight上でもなんのフラット化もしていません。普通は周辺減光とかあると、輝度差で淡い部分のあぶり出しがうまくいかないはずです。でも今回はフラット補正も、ABEも、DBEも、GCも、本当に何もしていないのですが、きちんとM27の羽まで見えるくらい問題なく炙り出しができています。これは今までにない経験で、RedCat51の性能の高さの一端を見た気がしました。

前回記事でも見せましたが、改めて何のフラット補正もしていない、WBPP直後の画像を載せておきます。M27の周りを広い範囲で撮っているのってあまり見当たらないので、本当は背景の構造を出したかったのですが、今回の2時間では全然ノイジーです。でももうSWAgTiで長時間露光も楽にできるので、天気がいい時に放置で10時間とか露光しても面白いと思います。
masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

カメラですが、M27は結構小さいので、センサー面積が小さく、夏場なので冷却ができるものというので、PlayerOneのUranus-C Proを使いました。CP+で使わせてもらったカメラです。PlayerOne社のカメラの特徴の一つ「DPS」も魅力で、これでホットピクセルはかなり軽減されるはずです。実は今回、ダーク補正を全くしていません。PixInsightのCosmetic Correctionのみ使いました。それでホットピクセルやクールピクセルは全く問題にならないレベルになったので、お気楽撮影にふさわしいカメラだと思います。

IMG_8960


iHDRがすごい!

今回初めて使いましたが、PixInsightのストレッチの中でも比較的新しい「iHDR」がすごいです。M27の星雲本体とその周りの淡い羽の部分には相当な輝度差があり、普通のストレッチでは両方を同時にうまく出すことができません。そのため、一般的にはマスク処理が必要となるのですが、今回は部分的なマスクを使うことなく、ほぼ自動で輝度差が出ないようにストレッチすることができました。

iHDRの説明についてはこちらをご覧ください。
 

インストールは

https://uridarom.com/pixinsight/scripts/iHDR/

をレポジトリに登録して、アップデートをチェックするだけです。インストールされたiHDRはメニューの「Scripts」の「Sketchpad」の中に入っています。

パラメータですが、iHDRでMaskStrengthを倍の2.5にしてより明るい部分を抑え、Iterationを3にしだけで、あとはデフォルトにしました。中心の明るい部分を十分に抑えることができました。
  1. まず、背景が何回くらいIterationすれば適した明るさになるか、何度か繰り返して試してから確定します。
  2. 星雲本体の輝度差がまだ残るようならMaskStrengthの値を増やして、これも何度か調整してみます。
一度試すたびに、Undoで元に戻してから再度パラメータを変えて試し、値を確定していくと楽かと思います。その際、Undoは一度で元に戻らないことがあるので、Undoアイコンのところにカーソルを持っていって、ちょっと待って、何の作業を戻すのか表示されるのを確認すると良いと思います。これがPixelMathと表示されるうちは、まだUndoしきれていないです。

iHDRの後は、NXTでノイズを軽く落として、StarNet++で恒星と背景を分離して、最後Photoshopに渡して仕上げますが、ストレッチまでかなり仕上がりに近い形で済んでいるので、Photoshopでは軽く好みに処理するだけで済みました。


SPCC

もう一つ、PixInsightでの色合わせツールのSPCCを少し使い込んでみました。実際にはWBPPでスタック後にすぐに試したことです。

今回は光害防止フィルターとして、サイトロンのDual Band Pass (DBP) フィルターを使いました。これまではSPCCのナローバンドモードを使って適当な波長幅を指定していましたが、いい機会なのでフィルターをきちんと設定することにしました。参考にさせて頂いたのはだいこもんさんのこのページです。
 

同ページにだいこもんさん自身が作ってくれたフィルター用ファイルが紹介されていて、その中にDBPのファイルもあったので、それを使わせて頂きました。フィルターを設定して公開してくれているだいこもんさんと、さらにオリジナルのJason Coonさんに感謝です。

だいこもんさんによると、カメラがASI294MCの場合はSonyのCMOSの標準フィルターでいいとのことでしたが、Uranus-Cで使っているIMX585は特に赤外の感度が高く、標準の応答とは少し違っています。いい経験になると思い、ついでにIMX585用のカラーフィルターを作ってみました。

実際自分でフィルターデータを作ってみるとわかりますが、cvsファイルの1箇所に波長情報を全て入れるとか、透過率も1箇所にいれるとか、結構面倒です。また、メーカーのグラフから値を読み取るのですが、読み取りソフトはだいこもんさんお勧めのPlotDigitizerを使いました。面倒だったのは、赤外の領域ではRGBの線が重なっていて、グラフで一番上の色(この場合青でした)しか読み取ることができず、後から赤と緑に同じ波長の青の線を近似的に追加するなど、少し加工が必要だったことです。

IMX585_R
IMX585のR曲線ですが、長波長側は青線と重なっていて直接読めないので、
青線から起こしています。


自分で作ってIMX585とDBPの応答を合わせて、今回の撮影に合わせた応答を作りましたが、結局2つのグラフを合わせると、ただの一本線になってしまうので、IMX585のデータを作った意味があるかどうかはちょっと疑問です。でも面白いのは、例えば下のBグラフでは、長波長の赤の領域にも線があるんですよね。
DBP_IMX585_B2

これはIMX585がRGBともに長波長に感度があるからです。だからBもGも実は赤を少し含みます。どれくらいの割合かというと、B曲線ではBが0.44に対してRが0.07と16%程度、G曲線ではGが0.78に対してRが0.17と22%程度と、無視できないくらいの結構な割合で含まれることになります。カラーカメラとDBPはモノクロカメラで撮ったAOO相当になると思うのですが、DBPでは赤と青でのっぺりせずに多少なりとも色調が豊かに見えるのは、この余分な色の成分のせいなのかもしれません。ちなみに、R曲線にもGがすこしまざりますが、Rが0.96に対してGが0.03とごく僅かなので、こちらはあまり効いてこないでしょう。

上の重ねたグラフを使い、SPCCで測定した結果を見ると見事に直線に載ったので、ちょっと嬉しかったです。

SPCC

でもSPCCのフィルター制作は完全に蛇足で、SWAgTiの簡単撮影のためにはこんなことまでやる必要は全くないと思います。


SWAgTiについて

SWAgTiを改めて振り返ってみます。

高精度追尾で1軸単機能のSWATに、低精度でも2軸で高機能のAZ-GTiを組み合わせることで、SWATがまるで高精度高機能赤道儀のように生まれ変わります。実際、SWAT350のピリオディックエラーはPremium仕様で+/-2.8秒を実測して出荷しているそうです。これだけの精度を有している赤道儀はポータブル型ではほぼ皆無で、大型の高級機と比較しても何ら遜色ない素晴らしい値なので、ガイドなしでの簡単撮影が生きてきます。

AZ-GTiを赤道儀化される方も多いかと思いますが、その際の極軸を北極星方向に向ける35度の角度をつける台座に苦労します。揺れてしまわないためにも、台座の強度も重要になります。SWATには底面に角度がつけてある、SWAT自身が強固な35度の台座を兼ねることができます。

AZ-GTiは、自動導入、プレートソルブ、エンコーダー内蔵など、値段から考えたら非常に高機能で汎用性が高く、ユーザーも多いため情報に困ることはまずないと思います。プレートソルブだけは今回ディザーと併用できませんでしたが、元々できていたことなので単なるバグの可能性が高く、いずれ解決するものと思っています。AZ-GTiは精度があまりないと言っても、モーターさえ動かさなければその強固な筐体と合わせて、極めて安定しています。追尾中はSWATのみが動き、AZ-GTiのモーターは動かないので、撮影時の精度はSWATのみで決まります。AZ-GTiのモーターが動くのは、導入時や、撮影の合間のディザーの時のみです。

PCとAZ-GTiとの接続はワイヤレスなので、ケーブルの数も一本減らせています。それでも少なくとも今回の2時間は全く接続が落ちることなどなく、安定でした。なのでケーブルの数は、PCとCMOSカメラを繋ぐUSB3.0ケーブル、CMOSカメラの冷却電源ケーブル、SWATの電源ケーブルの3本です。PCは内臓バッテリー駆動です。ダーク補正しないなら、特に冬場なら、冷却カメラでなくてもいい気もするので、冷却用の電源ケーブルは減らせるかもしれません。SWATも乾電池駆動が可能なので、SWATの背中側に電池をおいてしまえばさらに長いケーブルの数を減らせます。AZ-GTiも私は電池駆動にしています。こう考えると、最小構成ではPCとカメラを繋ぐUSBケーブル一本で稼働可能かもしれません。あ、StickPCを使えばさらにUSBケーブルも短くできるので、超シンプルになるかもしれません。こうなってくるとASIAirみたいですね。どこまでシンプル化ができるか、ちょっとやってみたくなってきました。

重量に関しても少しコメントを書いておきます。SWATもAZ-GTiもそこそこの重さはあるので、二つ合わせると決して軽量とは言い難くなります。一般的な小型赤道儀程度の重量と言っていいでしょうか。それでも十分に軽くてコンパクトなので、私は鏡筒を取り付けたまま運んでいます。玄関においてあるのですが、そのままなんの組み外しも組み立てもなしで運べるのはかなり便利です。超高精度と考えると、最軽量クラスの赤道儀と言ってもいいのかと思います。

逆に、今のところの欠点ですが、SharpCapでの極軸調整を三脚をずらすことでやっているので、ちょっとテクが必要です。微動雲台を使ったほうがいいのかもしれません。ただ、微動雲台は双刃の剣で、揺れを導入するかのうせいがあるので、以前テストさせていただいた迷人会の微動雲台クラスのものが欲しいレベルかと思います。

プレートソルブが使えなかったのはかなり痛いです。でもこれはソフト的な問題のはずなので、いずれ解決するでしょう。短期的にも、何か回避策がないか少し試したいと思います。


まとめ

アイデアが出たのが去年の6月、星まつりでデモなどしましたが、今回ディザーができ縞ノイズが解決して、ある程度のキリがついたと思います。1年以上にわたるテストでしたが、(プレートソルブを除いて)何とか形になりましたでしょうか。今後は鏡筒やカメラを変えて、実用で使っていきたいと思っています。

そうそう、Unitecさんにディザーが成功したことを伝えたら「諦めないところがすごいです」と言われてしまいました。結構嬉しかったです。その経緯でUnitecさんのページでもSWAgTiがまた紹介されてます。

今週末の胎内はちょっと時間的に厳しそうなので、参加は見送ることになりそうですが、9月15日の京都の「星をもとめて」でUnitecさんのブースでまたSWAgTiをお披露目できるかと思います。その際は、お気軽にお声掛けください。


このページのトップヘ