2023年8月12日、長野県大鹿村で星空観望会がありました。志賀高原で望遠鏡操作でお世話になったKさんを中心に、村をあげて盛り上げようとしている観望会です。
8月11日(金)は山の日で休日。前日の木曜のうちに、仕事を終えてから実家の名古屋による移動し、金曜は母を連れて少し早いですがお盆のお墓参りです。その帰り道、そのまま母を連れて名古屋で唯一の天文ショップ「SCORPIO」に行ってきました。天文ショップなど初めての母は、展示されている望遠鏡の数とその値段に圧倒されたようです。店長さんが母にPSTで太陽を見せてくれて、はじめて見たプロミネンスに驚きの声をあげていました。おしゃべり好きの母は、店長さんとも散々話した後に、岡崎から来たというお客さんとも話だし、何でこんな趣味にのめり込むのか色々聞いていました。最後は母と私と、そのお客さんの3人で奥のサイトロンショールームに行って、そこでも機材を見ながら3人で色々話していました。私は最近は天文関連のアイテムはそこそこ揃ってしまっていて、この日もそこまで必要なものもなく買い物せずに帰ってきてしまったので、店長さんには大変申し訳なかったのですが、一番最初に天文機材を購入してとてもお世話になったショップなので、名古屋に帰った際はできる限り顔を出そうと思っています。
次の日の12日の土曜はどうするか迷っていたのですが、せっかく名古屋にいるので、ここからなら大鹿村に行くのもそこまで大変でないと思い、朝10時頃に実家を出て小牧インターから中央道に入り、大鹿村に向かうことにしました。
ここ10年は富山の田舎暮らしで、高速の渋滞というものにあまり慣れていないので、少しの渋滞でも大渋滞に感じてしまいます。お盆だからでしょうか、中津川から恵那あたりまで断続的に渋滞でした。その後は順調に高速も流れて、目的の松川インターを13時頃に降りました。調べた限りコンビニがインター近くの松川町内にしか無いようなので、最初のローソンで念のために晩ごはん(冷やし中華)まで買い込み、クーラーボックスに詰め込みました。昼ごはんはどうしようと調べてみると、大鹿村の道の駅が評判がいいようです。大鹿村はインターを降りてもまだ20km以上奥になります。道の駅のレストランは14時半に閉まってしまうそうなので、道を急ぎます。
14時になる15分位前に大鹿村の道の駅に到着。すぐにレストランに向かいます。
お目当ては1日限定20食という鹿肉のステーキです。まだ残っているようで、1500円とランチとしては少し豪華ですが、早速注文します。
車で走っていても、大鹿村に入ったあたりから景色がとても綺麗なことに気づきます。鹿肉ステーキができるを待っている間に、レストラン内から外を見ると、雄大な景色が広がっています。そこから見える、下の写真の断崖になっているところの下が、今日の観望会が開かれる西山公園になります。
出てきたものがこれです。
なにこれ!めちゃくちゃ美味しいです。鹿の肉というのでクセがあるのかと思っていたのですが、大鹿村名物の塩だけのシンプルな味付けで食べても、全く臭みが感じられません。すごく上質な赤身で十分ボリュームのあるステーキです。付け合わせの豆腐も濃厚な味わいです。道の駅でこんなジビエ料理が食べられるなんて、これだけでもう来た甲斐があったというものです。
この道の駅でもう一つ頼んだのが、これも大鹿村の名物のブルーベリーを使ったジェラートです。
こちらもブルーベリーの味が濃厚で、甘味も控えめ。ものすごく美味しかったです。実はジェラートはもう一種類あって、鹿肉ステーキでも付いてきた大鹿村名物の塩を使ったミルク味のものです。この道の駅のショップは18時まで空いているということらしいので、また後から来て塩ミルクジェラート食べようと思っていたのですが、結局観望会が始まってしまうと時間がなくて来ることができませんでした。無理してでもこの時に食べておけばよかったと後悔しています。
道の駅にも今回の星空観望会のポスターが貼ってありました。これを見てきてくれるお客さんもいるのかと思います。
お腹もいっぱいになったところで、せっかくなので車で5分も行かないくらいの、すぐ近くの中央構造線博物館へ見学に行きます。
会場は着々と準備が進んでいます。ドブソニアン望遠鏡だけでも10台近くあったのではないでしょうか。
この観望会はポスターの下の方をよく見ると書いてあるのですが、「気ままに星空観望仲間」の方達が中心メンバーとなっています。Kさんもその中のメンバーだそうです。眼視に力を入れている方が多いとのことで、このドブソニアン望遠鏡の充実ぶりも納得です。
途中様々な方から、ミニトマト、枝豆、天ぷら饅頭、鹿肉焼き、オレンジジュースなどたくさんの差し入れがありました。差し入れをつまみながら、天文仲間と話して過ごす時間はとても貴重なものでした。
私の方の機材はというと、電視観望が2台、星座ビノが8台体制です。
電視観望はどうしてもモニターが明るくなるので、眼視の邪魔になることがあり、車を影にメインの場所とは少し離れた場所に設置しました。といっても入り口から一番近い場所になるので、お客さんには目につきやすかったと思います。
暑かった太陽も西に見える断崖の下に沈み、やっと涼しくなってきました。
その後、徐々に空も暗くなってくると、お客さんらしき方たちの姿がポチポチと見え始めます。まだ雲が多かったのですが、星座ビノを使うと一番星で西の断崖の少し上の雲の合間にアークトゥスルが見えました。
「星が見えますよー!」
と声を上げると、続々とお客さんが集まってきます。すかさず、35mmレンズとASI294MCで広角の電視観望でも星を映し出します。電視観望は星はもちろんですが、雲もはっきり見えるので、画面を見てもらって雲の形を確認してもらって、実際の空でその雲の位置を確認してもらって、星座ビノで見てもらうと
「見えたー!!」
という声が随所で上がります。そのうちに肉眼でも見える人が出てきます。
その頃にはベガも見え始め、電視観望ではベガだけではなく三角形と平行四辺形を映し出し、こと座の形を認識してもらいます。この時間帯は星座ビノがとても楽しいです。「星座ビノだとこと座の形がわかりますよー!誰が一番早く見えるでしょうか?」とかいうと、皆さん競争で見ようとしてくれます。しかもこの日は曇りがちの空なので、星座ビノの威力がさらに増します。薄い雲越しなら目では見えない星も正座ビノだと見えることがあります。
さらに時間が立つと、電視観望で雲の間や雲ごしにものすごい数の星が見えてきました。目で見るだけだとほとんど何も見えない状況でも、高感度カメラの力を借りるとちょっと想像できないくらいの星が隠れているのに皆さん驚かれます。それでもこの日はあいにく天気で、唯一まともに見せることができたのが、南の空がいっとき雲が薄くなった時にライブスタックしながら放っておいた天の川です。
雲が出ていましたがさすが大鹿村の空、天の川の濃淡がすごいことになっていて、しかもアンタレスのカラフルタウンの色まで出始めています。左の方にはM8とM20もはっきり写っています。6.4秒で86フレームのスタックなので約10分ですが、その一方でスタックに使われなかったものが157フレームあるというので、途中から雲がひどくなってきたのかと思います。ライブスタックは悪い状況だとスタックするのをやめる(星がみえないので位置合わせができないと言った方がいいかも)ので、こんな状況でも適度にいい画面を作ってくれて便利です。
その後、星雲用の電視観望も準備しましたが、とにかく星が出ていないので初期アラインメントに苦労しました。アライメントには持てる限りの手段を駆使したのですが、少し時間を食ってしまい、星が見えている時間を逃してしまってもったいなかったです。
それでもこの手法は、かなり曇り空でホントに極一部だけ星が見えている場合にもかなり有効で、せっかくなので手段を書いておきます。以下のような手順になります。
この方法で、今回は唯一M16だけ入れることができ、一部のお客さんに見せることができましたが、再ライブスタックではM16は雲で見えなくなってしまいました。その後も晴れることはなく、何も導入することはできなくて、最後21時半頃には雨が降ってきてしまいました。
流石に雨ではどうしようもないので、機材はすぐに撤収です。片付けながら、トランクのドアを屋根がわりにお客さんと話していたりしたのですが、ちょうどお隣に車を泊めていたギルモアさんと雨の中かなり長話してしまいました。観望会の最初の頃お客さんがたくさんいた時に、色々会話しながら、ときにはクイズ形式で天の川は何かとか、なぜ星が集まっているのかとか、夏の天の川と冬の天の川と我々がいる銀河との位置関係とか、特に子供達に考えてもらっていたことが話題になりました。私は観望会では電視観望で周りに人が囲むように集まってくるので、こういったお話でお客さんと互いにやりとりしながら、進めていく形式をよくとります。でもこの方式は望遠鏡を見るために一列に並ぶような形式だとちょっと難しいので、ギルモアさんの目には珍しいやり方だと写ったのかもしれません。こんな観望会のやり方だとか、来年はどうなるかとか、雨の中ずっと話していて、とても感慨深いものになりました。
こんなふうにかなり広い地域から集まるアマチュア天文家同士で交流できる大鹿村の観望会は、地域の観望会としては非常に珍しいものかと思います。とても雰囲気がいいので、今後もKさんを中心に続いていけばいいなあと実感しました。
22時過ぎでしょうか、雨も止まないので一旦車の中に入りやっと夕食です。といっても来る途中のコンビニで買ってきた冷やし中華ですが、お腹が空いていたのでおいしかったです。観望会の時は暗くなる途中も楽しい時間なので、早めに食事をとっておくか、終わってから遅めの夕食にするかのどちらかですね。この日は雨だったのでまだましで、晴れていたら夢中で、多分夜中過ぎの夕食になっていたかと思います。
食事を終えて少しのんびりしてから外に出てみると、雨は上がっていて一部に星も見えていました。一番見えた時で、天頂付近に天の川「らしき」ものが確認できたのが最後で、また曇ってしまい、最後は会場全体が雲の中に入ったような状態になってしまいました。
23時40分くらいだったでしょうか、ここで会場を後に、富山への帰路につきました。そのまま中央道に入り、松本インターで出てから安房峠越えのルートを撮りました。自宅に着いたのは午前4時前くらいで、やはり名古屋から大鹿村に行くよりは少し遠いです。自宅到着後は、流石にそのまますぐに寝てしまいました。
Kさんはじめ、会場にいらした皆様、とても雰囲気の良い観望会で、初参加にもかかわらず私もすごく楽しむことができました。富山からだと少し遠いのですが、時間が許すならまた来年以降も参加したいと思います。本当にありがとうございました。
今回の大鹿村観望会は天気が良ければペルセウス流星群が見えたはずです。極大日は次の日の13日で、一旦富山の自宅に戻り、昼から飛騨コスモス天文台に行きました。
ドームのスリットドアが動かなくて故障していたので、交換モーターを持っていきました。無事に交換でスリットが動くことが分かったのですが、まだ開閉スイッチがうまく動かないという問題が残っているので、これは次回以降に直すことに。肝心の天気が全くダメで、星一つ見えませんでした。光っているのは雷ばかりで、飛騨市で開催れている花火大会の光がちらほらくらいでした。途中雨も降ったり止んだりして20時半ごろまでいましたが、雨も本降りになってきて流石に諦めて解散となりました。
帰り道もずっと雨で、富山だったらまだ見えるかと思いましたが、自宅も雨でこの日は諦めました。よく考えたら、飛騨コスモスで星も何も見えなかったのは初めてのことで、とうとう晴れ男の名も地に落ちてしまいました。
台風も近づいてくるようです。今夜は自宅でもしかしてとも思っていましたが富山は厳しそうです。今年はペルセウス座流星群は厳しそうです。
名古屋から大鹿村へ
8月11日(金)は山の日で休日。前日の木曜のうちに、仕事を終えてから実家の名古屋による移動し、金曜は母を連れて少し早いですがお盆のお墓参りです。その帰り道、そのまま母を連れて名古屋で唯一の天文ショップ「SCORPIO」に行ってきました。天文ショップなど初めての母は、展示されている望遠鏡の数とその値段に圧倒されたようです。店長さんが母にPSTで太陽を見せてくれて、はじめて見たプロミネンスに驚きの声をあげていました。おしゃべり好きの母は、店長さんとも散々話した後に、岡崎から来たというお客さんとも話だし、何でこんな趣味にのめり込むのか色々聞いていました。最後は母と私と、そのお客さんの3人で奥のサイトロンショールームに行って、そこでも機材を見ながら3人で色々話していました。私は最近は天文関連のアイテムはそこそこ揃ってしまっていて、この日もそこまで必要なものもなく買い物せずに帰ってきてしまったので、店長さんには大変申し訳なかったのですが、一番最初に天文機材を購入してとてもお世話になったショップなので、名古屋に帰った際はできる限り顔を出そうと思っています。
次の日の12日の土曜はどうするか迷っていたのですが、せっかく名古屋にいるので、ここからなら大鹿村に行くのもそこまで大変でないと思い、朝10時頃に実家を出て小牧インターから中央道に入り、大鹿村に向かうことにしました。
ここ10年は富山の田舎暮らしで、高速の渋滞というものにあまり慣れていないので、少しの渋滞でも大渋滞に感じてしまいます。お盆だからでしょうか、中津川から恵那あたりまで断続的に渋滞でした。その後は順調に高速も流れて、目的の松川インターを13時頃に降りました。調べた限りコンビニがインター近くの松川町内にしか無いようなので、最初のローソンで念のために晩ごはん(冷やし中華)まで買い込み、クーラーボックスに詰め込みました。昼ごはんはどうしようと調べてみると、大鹿村の道の駅が評判がいいようです。大鹿村はインターを降りてもまだ20km以上奥になります。道の駅のレストランは14時半に閉まってしまうそうなので、道を急ぎます。
大鹿村で観光
14時になる15分位前に大鹿村の道の駅に到着。すぐにレストランに向かいます。
お目当ては1日限定20食という鹿肉のステーキです。まだ残っているようで、1500円とランチとしては少し豪華ですが、早速注文します。
車で走っていても、大鹿村に入ったあたりから景色がとても綺麗なことに気づきます。鹿肉ステーキができるを待っている間に、レストラン内から外を見ると、雄大な景色が広がっています。そこから見える、下の写真の断崖になっているところの下が、今日の観望会が開かれる西山公園になります。
出てきたものがこれです。
なにこれ!めちゃくちゃ美味しいです。鹿の肉というのでクセがあるのかと思っていたのですが、大鹿村名物の塩だけのシンプルな味付けで食べても、全く臭みが感じられません。すごく上質な赤身で十分ボリュームのあるステーキです。付け合わせの豆腐も濃厚な味わいです。道の駅でこんなジビエ料理が食べられるなんて、これだけでもう来た甲斐があったというものです。
この道の駅でもう一つ頼んだのが、これも大鹿村の名物のブルーベリーを使ったジェラートです。
こちらもブルーベリーの味が濃厚で、甘味も控えめ。ものすごく美味しかったです。実はジェラートはもう一種類あって、鹿肉ステーキでも付いてきた大鹿村名物の塩を使ったミルク味のものです。この道の駅のショップは18時まで空いているということらしいので、また後から来て塩ミルクジェラート食べようと思っていたのですが、結局観望会が始まってしまうと時間がなくて来ることができませんでした。無理してでもこの時に食べておけばよかったと後悔しています。
道の駅にも今回の星空観望会のポスターが貼ってありました。これを見てきてくれるお客さんもいるのかと思います。
お腹もいっぱいになったところで、せっかくなので車で5分も行かないくらいの、すぐ近くの中央構造線博物館へ見学に行きます。
庭も建物の中も石で一杯です。ここでは中央構造線とは何か?この博物館が中央構造線の上に立っていることなどがわかります。そして今日の観望会会場の上の、大きな断崖ができた訳などを知ることができます。私は地学系はあまり詳しくないのですが、地学好きなひとにはたまらない博物館なのかと思います。
一通りの観光も終えて15時前、そろそろ集合時間に近くなってきたので、観望会会場の西山公園に移動します。と言っても、これも車で5分くらいなので、すぐ近くです。坂を上がって公園に到着。ちょうど開会式が始まろうとしているところでした。主催者のKさんがすぐに私のことに気づいてくれましたが、開会式に水をさしてしまったようで申し訳なかったです。
私もそのまま開会式に合流、Kさんはじめ、村長さんでしたでしょうか、何人かの方の挨拶があったのですが、実はKさんは仕事を退職してからの移住組で、村会議員さんになられたとのこと。外から来て議員さんになるというのはよほど信頼されないとダメなはずです。そのKさんが中心となってやられている星空観望会は、村を挙げて力を入れている行事なのかと思います。
そもそもこの観望界の目的が、大鹿村の人たち、特におっしゃっていたのは60人くらいる子供達に見てほしいということでした。その熱意に応えて、全国からアマチュア天文家が集まってくるのかと思います。そのため、お客さんが来るまでは、久しぶりに顔を合わせたアマチュア天文家同士の同窓会のような雰囲気です。私も知っている方が何人もいましたので、すぐに溶け込むことができました。
そんな中、久しぶりにお会いしたマリーチさんと長話しをしてしまいました。なんでもマリーチさんは
「理論武装してからでないと、なかなか機材を触ることができない」
そうです。私なんかは全く逆で、
「とりあえず一通り触ってみてから、そこからマニュアルを読んだりします」
とか話しました。
「そうするとどこがわかっていなかったか、あと、マニュアルといえど完璧じゃないとわかって、マニュアルに書いていない機能があることもよく気づいたりするんですよ」
と続けて話しました。実際にその後マニュアルで気づかされたことや、調べたことをもとにさらに機材を使い込むのですが、やはりこの繰り返しのプロセスが大事なのかと思います。マリーチさんは
「昔CADで設計とかやっていた」とのことですが、「今はPCが苦手で計算機工学を勉強してからPCを触ろうと思っている」
ということでしたが、話をした後は
「帰ってからすぐにPCも今まで触っていなかったカメラとかも、試してみる」
と仰っていました。よく考えたらいままでマリーチさんとは何度も会っているのですが、長く話したことはなかったと思います。今回はとてもいい機会でした。
観望会会場の西山公園へ
一通りの観光も終えて15時前、そろそろ集合時間に近くなってきたので、観望会会場の西山公園に移動します。と言っても、これも車で5分くらいなので、すぐ近くです。坂を上がって公園に到着。ちょうど開会式が始まろうとしているところでした。主催者のKさんがすぐに私のことに気づいてくれましたが、開会式に水をさしてしまったようで申し訳なかったです。
私もそのまま開会式に合流、Kさんはじめ、村長さんでしたでしょうか、何人かの方の挨拶があったのですが、実はKさんは仕事を退職してからの移住組で、村会議員さんになられたとのこと。外から来て議員さんになるというのはよほど信頼されないとダメなはずです。そのKさんが中心となってやられている星空観望会は、村を挙げて力を入れている行事なのかと思います。
そもそもこの観望界の目的が、大鹿村の人たち、特におっしゃっていたのは60人くらいる子供達に見てほしいということでした。その熱意に応えて、全国からアマチュア天文家が集まってくるのかと思います。そのため、お客さんが来るまでは、久しぶりに顔を合わせたアマチュア天文家同士の同窓会のような雰囲気です。私も知っている方が何人もいましたので、すぐに溶け込むことができました。
そんな中、久しぶりにお会いしたマリーチさんと長話しをしてしまいました。なんでもマリーチさんは
「理論武装してからでないと、なかなか機材を触ることができない」
そうです。私なんかは全く逆で、
「とりあえず一通り触ってみてから、そこからマニュアルを読んだりします」
とか話しました。
「そうするとどこがわかっていなかったか、あと、マニュアルといえど完璧じゃないとわかって、マニュアルに書いていない機能があることもよく気づいたりするんですよ」
と続けて話しました。実際にその後マニュアルで気づかされたことや、調べたことをもとにさらに機材を使い込むのですが、やはりこの繰り返しのプロセスが大事なのかと思います。マリーチさんは
「昔CADで設計とかやっていた」とのことですが、「今はPCが苦手で計算機工学を勉強してからPCを触ろうと思っている」
ということでしたが、話をした後は
「帰ってからすぐにPCも今まで触っていなかったカメラとかも、試してみる」
と仰っていました。よく考えたらいままでマリーチさんとは何度も会っているのですが、長く話したことはなかったと思います。今回はとてもいい機会でした。
会場は着々と準備が進んでいます。ドブソニアン望遠鏡だけでも10台近くあったのではないでしょうか。
この観望会はポスターの下の方をよく見ると書いてあるのですが、「気ままに星空観望仲間」の方達が中心メンバーとなっています。Kさんもその中のメンバーだそうです。眼視に力を入れている方が多いとのことで、このドブソニアン望遠鏡の充実ぶりも納得です。
途中様々な方から、ミニトマト、枝豆、天ぷら饅頭、鹿肉焼き、オレンジジュースなどたくさんの差し入れがありました。差し入れをつまみながら、天文仲間と話して過ごす時間はとても貴重なものでした。
私の方の機材はというと、電視観望が2台、星座ビノが8台体制です。
電視観望はどうしてもモニターが明るくなるので、眼視の邪魔になることがあり、車を影にメインの場所とは少し離れた場所に設置しました。といっても入り口から一番近い場所になるので、お客さんには目につきやすかったと思います。
暑かった太陽も西に見える断崖の下に沈み、やっと涼しくなってきました。
星空観望会開始!
その後、徐々に空も暗くなってくると、お客さんらしき方たちの姿がポチポチと見え始めます。まだ雲が多かったのですが、星座ビノを使うと一番星で西の断崖の少し上の雲の合間にアークトゥスルが見えました。
「星が見えますよー!」
と声を上げると、続々とお客さんが集まってきます。すかさず、35mmレンズとASI294MCで広角の電視観望でも星を映し出します。電視観望は星はもちろんですが、雲もはっきり見えるので、画面を見てもらって雲の形を確認してもらって、実際の空でその雲の位置を確認してもらって、星座ビノで見てもらうと
「見えたー!!」
という声が随所で上がります。そのうちに肉眼でも見える人が出てきます。
その頃にはベガも見え始め、電視観望ではベガだけではなく三角形と平行四辺形を映し出し、こと座の形を認識してもらいます。この時間帯は星座ビノがとても楽しいです。「星座ビノだとこと座の形がわかりますよー!誰が一番早く見えるでしょうか?」とかいうと、皆さん競争で見ようとしてくれます。しかもこの日は曇りがちの空なので、星座ビノの威力がさらに増します。薄い雲越しなら目では見えない星も正座ビノだと見えることがあります。
さらに時間が立つと、電視観望で雲の間や雲ごしにものすごい数の星が見えてきました。目で見るだけだとほとんど何も見えない状況でも、高感度カメラの力を借りるとちょっと想像できないくらいの星が隠れているのに皆さん驚かれます。それでもこの日はあいにく天気で、唯一まともに見せることができたのが、南の空がいっとき雲が薄くなった時にライブスタックしながら放っておいた天の川です。
雲が出ていましたがさすが大鹿村の空、天の川の濃淡がすごいことになっていて、しかもアンタレスのカラフルタウンの色まで出始めています。左の方にはM8とM20もはっきり写っています。6.4秒で86フレームのスタックなので約10分ですが、その一方でスタックに使われなかったものが157フレームあるというので、途中から雲がひどくなってきたのかと思います。ライブスタックは悪い状況だとスタックするのをやめる(星がみえないので位置合わせができないと言った方がいいかも)ので、こんな状況でも適度にいい画面を作ってくれて便利です。
その後、星雲用の電視観望も準備しましたが、とにかく星が出ていないので初期アラインメントに苦労しました。アライメントには持てる限りの手段を駆使したのですが、少し時間を食ってしまい、星が見えている時間を逃してしまってもったいなかったです。
それでもこの手法は、かなり曇り空でホントに極一部だけ星が見えている場合にもかなり有効で、せっかくなので手段を書いておきます。以下のような手順になります。
- 初期アラインメントで、適当な見えない星を導入。
- 初期アランメントを終了せずにマニュアルでどこか少しでも星が見えるエリアに適当に移動。
- SharpCapのプレートソルブの4つのオプションの一番下の「オフセットだけを合わせる」で正しい位置に持ってくる。
- 星は見えなくても正しいと思いそこで初期アラインメントを完了する。
この方法で、今回は唯一M16だけ入れることができ、一部のお客さんに見せることができましたが、再ライブスタックではM16は雲で見えなくなってしまいました。その後も晴れることはなく、何も導入することはできなくて、最後21時半頃には雨が降ってきてしまいました。
泣く泣く撤収
流石に雨ではどうしようもないので、機材はすぐに撤収です。片付けながら、トランクのドアを屋根がわりにお客さんと話していたりしたのですが、ちょうどお隣に車を泊めていたギルモアさんと雨の中かなり長話してしまいました。観望会の最初の頃お客さんがたくさんいた時に、色々会話しながら、ときにはクイズ形式で天の川は何かとか、なぜ星が集まっているのかとか、夏の天の川と冬の天の川と我々がいる銀河との位置関係とか、特に子供達に考えてもらっていたことが話題になりました。私は観望会では電視観望で周りに人が囲むように集まってくるので、こういったお話でお客さんと互いにやりとりしながら、進めていく形式をよくとります。でもこの方式は望遠鏡を見るために一列に並ぶような形式だとちょっと難しいので、ギルモアさんの目には珍しいやり方だと写ったのかもしれません。こんな観望会のやり方だとか、来年はどうなるかとか、雨の中ずっと話していて、とても感慨深いものになりました。
こんなふうにかなり広い地域から集まるアマチュア天文家同士で交流できる大鹿村の観望会は、地域の観望会としては非常に珍しいものかと思います。とても雰囲気がいいので、今後もKさんを中心に続いていけばいいなあと実感しました。
22時過ぎでしょうか、雨も止まないので一旦車の中に入りやっと夕食です。といっても来る途中のコンビニで買ってきた冷やし中華ですが、お腹が空いていたのでおいしかったです。観望会の時は暗くなる途中も楽しい時間なので、早めに食事をとっておくか、終わってから遅めの夕食にするかのどちらかですね。この日は雨だったのでまだましで、晴れていたら夢中で、多分夜中過ぎの夕食になっていたかと思います。
食事を終えて少しのんびりしてから外に出てみると、雨は上がっていて一部に星も見えていました。一番見えた時で、天頂付近に天の川「らしき」ものが確認できたのが最後で、また曇ってしまい、最後は会場全体が雲の中に入ったような状態になってしまいました。
23時40分くらいだったでしょうか、ここで会場を後に、富山への帰路につきました。そのまま中央道に入り、松本インターで出てから安房峠越えのルートを撮りました。自宅に着いたのは午前4時前くらいで、やはり名古屋から大鹿村に行くよりは少し遠いです。自宅到着後は、流石にそのまますぐに寝てしまいました。
Kさんはじめ、会場にいらした皆様、とても雰囲気の良い観望会で、初参加にもかかわらず私もすごく楽しむことができました。富山からだと少し遠いのですが、時間が許すならまた来年以降も参加したいと思います。本当にありがとうございました。
エピローグ
今回の大鹿村観望会は天気が良ければペルセウス流星群が見えたはずです。極大日は次の日の13日で、一旦富山の自宅に戻り、昼から飛騨コスモス天文台に行きました。
ドームのスリットドアが動かなくて故障していたので、交換モーターを持っていきました。無事に交換でスリットが動くことが分かったのですが、まだ開閉スイッチがうまく動かないという問題が残っているので、これは次回以降に直すことに。肝心の天気が全くダメで、星一つ見えませんでした。光っているのは雷ばかりで、飛騨市で開催れている花火大会の光がちらほらくらいでした。途中雨も降ったり止んだりして20時半ごろまでいましたが、雨も本降りになってきて流石に諦めて解散となりました。
帰り道もずっと雨で、富山だったらまだ見えるかと思いましたが、自宅も雨でこの日は諦めました。よく考えたら、飛騨コスモスで星も何も見えなかったのは初めてのことで、とうとう晴れ男の名も地に落ちてしまいました。
台風も近づいてくるようです。今夜は自宅でもしかしてとも思っていましたが富山は厳しそうです。今年はペルセウス座流星群は厳しそうです。