これまで超新星を多数発見している板垣公一さんによって、M101において2023-05-19 17:27:15(UTC)に新たに超新星が発見されました。日本時間では20日2時27分になります。発見時は14.9等級で、現在も増光中のようで、すでに2023ixfという名前がついています。


近い距離での超新星

M101までの距離がWikipediaによると20.9 ± 1.8 x 百万光年 (6.4 ± 0.5 メガパーセク)とのこと(より正確にはここ)で、比較的近い距離での超新星になります。それでもニュートリノが検出された大マゼラン雲の超新星爆発1987aが51.4 キロパーセクで16.8万光年とはるかに近かったのと比べると、今回の2023ixfは1250倍ほど遠い距離で起こったことになります。

詳しい情報は、Latest Supernovaeに集められていています。順に辿っていくと発見後の盛り上がりの雰囲気を感じることができます。例えばAstroNote 2023-124ではその時点で最も早い時間に出現したのがA. V. Filippenkoらによって2023-05-19 06:08:00と確かめられていて、それ以前では2023-05-18 10:17:15にはATLASによって出現が確認されていないことがわかります。

輝度変化はここにまとめられていて、下の方のlight curveを見ると時系列の変化がわかります。


超新星爆発前

私はたまたま5月17日の夜にM101のL画像を撮影していました。去年撮影したM101がRGB撮影だったので、L画像を追加して分解能を出そうと思っていたからです。今回撮影した画像を探ってみると5月17日18時8分(UTC)が最後で、少なくともこの画像では超新星は確認できませんでした。でも結構発見時に近い時間なので、どの程度迫っているのか興味が湧いてきました。

板垣さんが発見した時間には、既に超新星は出現していたわけです。ではいったいつ出現したかというと、これも上記ページから辿ることができるAstroNote 2023-133を見るとわかります。このページの一番下のpdfファイルを見てみると、5月18日19時32分(UTC)にはまだ起こっていなくて、5月18日20時29分(UTC)には存在が確認されているので、57分間にまで絞り込めていることがわかります。

こう見ると、自分で撮影したものは今確認されている一番遅い時間に1日くらいまで迫れているので、かなりラッキーだったのではないでしょうか。実際、爆発後の画像はすごい枚数がネットで確認できますが、爆発前の画像はそこまで多く確認できません。

というわけで、まずは爆発前の画像です。L画像のみの撮影だったのでモノクロです。基本的には、スタックして、ABEを1次でかけてカブリをとり、オートストレッチをかけたのみで、BXTなど出来るかぎり何も加工はしていません。bin1で撮影していてファイルサイズが大きすぎるので、アップ時に解像度を半分に落としています。

masterLight_BIN_1_8288x5644_300_00s_L__ABE_STF_s
  • 撮影日: 2023年5月17日22時21分-5月18日3時8分(JST)、5月17日13時21分-18時13分(UTC)
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (0℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間5分x47=235分 =3時間55分
  • Dark: 0度、Gain 120で、露光時間5分x44枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 0.01秒x128
  • 画像処理: PixInsight

超新星爆発後

超新星爆発のニュースを聞いたのが5月20日で飛騨コスモス天文台の観望会の日の午前中くらいだったと思います。天気予報も良くなさそうなので大した機材は持っていかなかったのですが、観望会中はそこそこ晴れている時もあったので(機材があり、かつお客さんを放っておけば)撮影できたかもしれません。といっても、もし撮影しようとしたらSCA260+CGX-Lと重機材コースになるので、気楽に持っていくのはやはり大変だったのかと思います。

それ以降ずっと晴れませんでしたが、ようやく5月24日に少し晴れて、M101と超新星爆発を撮影することができました。それでも少し曇りがちの日で、使えなかった画像も多いです。

masterLight_BIN_1_8288x5644_300_00s_L_ABE_STF_s
  • 撮影日: 2023年5月24日21時58分-23時1分(JST)、5月24日12時58分-14時1分(UTC)
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (0℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間5分x10=50分
  • Dark: Gain 120で露光時間5分x44枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 0.01秒x128
  • 画像処理: PixInsight
露光時間が短くて少しノイジーですが、左の腕のところに明らかに明るい星が出現しています!


比較

というわけで、これがやりたかったのです。
masterLight_BIN_1_8288x5644_300_00s_L_integration_ABE1_DBEcrop2

上の2枚の画像からGIFアニメを生成しています。

Twitterに上のアニメ投稿したら、100リツイート、400いいね超えとなりました。やはりわかりやすい画像はいいですね。


カラー化

L画像のついでに少しだけRGB画像も撮影したので、カラー化してみました。と言っても露光時間はLRGB全部で5分x24枚=2時間とかなり短いので、かなりノイジーです。

Image47_DBE_bg_cut2_s

背景の銀河に比べても、超新星はかなり青みががかって見えることがわかります。

まとめ

超新星を写すのは初めてのことです。しかも出現1日ちょっと前にたまたま撮影していたので、出現時間に結構迫れたは嬉しかったです。

今回調べていて、超新星の発見がいかに大変なことがよくわかりました。しかも今は機械サーベイが主流です。アマチュアで発見を続ける板垣公一さんには尊敬の念しかありません。