ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:鏡筒 > ε130

ここしばらくずっと太陽に夢中だったのですが、さすがに太陽も少し飽きてきたので、約半年ぶりに夜の撮影を再開しました。


夜の撮影再開

2025年10月17日の金曜日、新月期で8時間も暗い時間があり、晴れていて、空を見たら透明度がかなり良かったので、さすがに何もしないのは気が引けてきました。太陽もやりたいことはかなりできてきています。もう少し試したいことも残っているのですが、太陽の撮影は休日に晴れてくれないとできません。平日に早く起きればいいのですが、仕事に影響がありそうで躊躇しています。

今年は秋でもあまり晴れの印象がありません。平日なら多少晴れるのと、夜の撮影は、開始さえすればあとは寝てしまえばいいので、平日でも可能です。というわけで、やっと夜の撮影の再開です。


機材と撮影準備

手持ちの撮影用機材は大きい順からSCA260、ε130D、RedCat51とあるのですが、再開に際しどれを使うか迷いました。結局、撮影を中断してから何もいじっていないε130Dにしました。SCA260はアップグレードでカメラを外してから、一旦取り付けはしたのですがまだきちんと動くか不明です。RedCat51はSWAgTiとの組み合わせなので楽なのですが、一時期カメラを外した際に埃が入ってしまったままです。ε130Dは確か今年初めの頃にカメラを90度回転させましたが、それ以外は問題ないはずです。あと、ε130Dを載せるCGEM IIは、太陽でもずっと使っていたというのもあります。

星を始めてから、これだけの期間夜の撮影しなかったことはなかったと思うので、ある意味いろんなことが新鮮です。撮影用のPCはこれまで使っていたStickPCなのですが、ソフトはいくつかアップデートしました。ただ、このPCは結構古くて非力で、NINAの3.0以降では重くて画像の転送速度が出ないことがわかっているので、新しいminiPCも用意することにしました。今回の撮影では設定不足で入れ替えとはいきませんでしたが、次回くらいには新PCで撮影くらいはできそうなところまでセットアップは進みました。

ガイド鏡は太陽撮影でも使ってしまっていて、蓋の穴をくり抜いてフィルムのNDフィルターをつけたりしていたので、カバーを外す時は注意が必要なのです。カバーをなくすのが嫌なのでテープで鏡筒に貼り付けておいたら、途中からの強風で飛んでいってしまい、翌朝10mくらい離れた溝の中に落ちているのを発見しました。

一つ忘れてしまったことがありました。撮影時にε130Dにフードをつけることが頭から完全に飛んでしまっていたのです。でもこのことは、後で示すように意外ないい結果につながりました。

撮影開始時に、NINAでEAFのオートフォーカスを走らせたのですが、曲線の形があまりにおかしいので調べてみたら、鏡筒接眼部の焦点調整のネジがしまっていて接眼部が前後にほとんど動かない状態になってました。なぜこうなっているのか全く記憶がないのですが、久しぶりだとこんな些細なことがトラブルになります。

それ以外は問題なく、むしろ思ったより順調に撮影を再開できた感じです。何も変えていなかった鏡筒を選んだのは正解で、かつそれでも多少のトラブルはあるものです。再開時はできるだけ冒険をしなというのが鉄則なのかと思います。また慣れてきたら、他の二つの鏡筒を試せばいいでしょう。

前半のターゲットは夏の天体の残りのサドル付近で、三日月星雲を入れてです。HαとOIIと構成と背景の色だしにRGBを狙いましたが、0時頃には西の空の低いところに沈んでしまい、結局時間切れでAOの撮影ができたのみでした。その後、冬の天体に移り、ターゲットを魔女の横顔星雲としました。RGBを撮影後Lも撮影できたらと思いましたが、途中から月が出てくるのでLは諦めて、その分RGBの枚数を稼ぐことにしました。

次の日は土曜で休みなので、ずっと起きていても良かったのですが、結局午前2時頃には寝てしまいました。撮影途中も気づいていたのですが、どうもこの日は快晴には程遠くて、ガイド用カメラには雲が流れる様子が見え、結構頻繁にガイド星を見失っていました。


画像処理

翌朝、撮影結果を見ましたが、雲の影響が大きくかなりの枚数を捨てなければダメそうです。結局使えたのが、サドル付近ではHαが5分x5枚、OIIが5分x3枚で、トータルわずか40分、魔女の横顔もRが5分4枚、Gが3枚、Bが4枚と、こちらもわずかトータル55分でした。これだけ短いともうテスト撮影レベルです。結果を期待せずに、様子見で画像処理を進めました。

まずRAW画像をそのまま見て思ったのが、特に魔女の横顔のほうですが、かなり淡いのでパッと炙り出してみるとε130D特有の迷光が大きく出てしまっているのがわかりました。下はRの1枚撮り画像にSTFの強度オートストレッチをかけたものです。

Image17_ABE

これはさすがに厳しいかと思いました。最初に処理した時はフラットが全然合わなかった(カメラの回転角が変わった)ので、今ブログを書いている日曜の昼間にフラットを全て取り直しました。いつものように、部屋の中の白い壁を撮影します。

ゲインのみ撮影時の100に合わせて、明るさは露光時間を変えて調整します。温度は下手に冷却すると結露とかして痛い目にあったことがあるので、常温のままです。フラットダークもフラット撮影時と温度を合わせるために必ず一緒に撮影するようにしています。撮影する時はLRGBAOSの全部を撮影するようにして、一度撮影したものを今後使い回します。カメラを外したり、動かしたりしない限り、フラット画像は使い回すことができると思っていいでしょう。

新たに撮影したフラット画像を使って処理したところ、なぜか迷光が全くわからなくなるレベルでうまく補正ができました。下はRをWPPで5枚スタックしてSTFの強度オートストレッチをかけたものです。WBPPでのフラット化で迷光は見事に消えています。

integration_ABE

この迷光には過去に散々悩まされていて、これまではここまでうまく補正できたことはありません。心当たりが一つあるとしたら、今回はフードをつけなかったことでしょうか。撮影場所はこれまでと一緒の自宅の庭。しかも位置までほとんど変わらないので、自宅や街灯の状況も同じだと思っていいでしょう。フィルターやカメラなども変えていないので、こちらも影響がないでしょう。まだ確定ではないですが、フードがフラット化にはむしろ悪影響を起こしていた可能性は否定できません。確定にはもう少し時間をかけたいと思います。

フラット化がここまでうまくいくと、その後の画像処理はかなり楽です。その一方、トータル露光時間がどちらのターゲットも1時間以下と短いので限界もあり、ノイズ処理などが重要になります。


魔女の横顔星雲

処理した順に結果を示します。まずは魔女の横顔星雲です。RGB画像で合成が楽なので、先に処理しました。RGBだとMGCがまともに使えるために、色合わせやフラット化が楽になります。露光時間が短いので多少ノイジーなのは仕方ありません。NXTなどを使いノイズ処理を丁寧にかけると、思ったより淡いところまで炙り出すことができました。

Image17_SPCC_MGC_HS_NXT_back_HT_SCNR2_cut_rotate
  • 撮影日: 2025年10月18日1時5分-2時8分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: ZWO製 R、G、B
  • 赤道儀: Celestron製 CGEM II
  • カメラ: ZWO製 ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、R: 4枚、G: 3枚、B: 4枚の計11枚で総露光時間55分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 R: 0.03秒、G: 0.03秒、B: 0.03秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

この露光時間で、しかも自宅での撮影でこの結果なら、もうあまり不満はありません。よく見ると、左右に横切る赤い構造が見えるので、Hαを別撮りして追加してもいいかもしれません。

追記: 後日、撮り増しと、Hαを新たに撮影しました。




過去画像との比較

以前魔女の横顔を撮影したのは2019年で、もう5年も前のことになります。その際の画像が以下です。

integration_DBE_DBE1_PCC_AS_SNP_mask_all2a_cut

その後、2020年に上の画像をDeNoiseで再処理したものが以下です。
integration_DBE_DBE1_PCC_AS_SNP_DN-denoise_cut

機材はFS-60CBとEOS6Dで、露光時間は1時間27分でした。もっと長く撮影したのかと思ってましたが、高々1時間半なので、5年の間に長時間撮影が普通になってしまったということでしょうか。その一方、今回の45分はもっと短いにも関わらず、より淡いところも細かい構造も圧倒的によく出ています。口径が大きくなったこと、カメラが高感度になったこと、画像処理ソフトが進化したことなどが原因かと思われます。

当時の記事を読み返していると、DeNoiseのインパクトが相当大きかったことがわかります。今はその役割をBXTとNXTが担っていると言っていいでしょうか。特にNXTは今年の2月のアップデートでカラーノイズに対応したので、かなり使える範囲が増え、DeNoiseやPhotoshopのカラーノイズ軽減に頼らなくても良くなったと言えます。


サドルから三日月星雲

サドル付近はHαが支配的なため、AOO撮影が簡単で面白いのですが、ナローバンド撮影ではMGCなどをきちんと使うことができないため、ちょっと面倒です。Hα画像のS/Nは1枚でもかなりよく、全体に迫力が出ます。下は1枚撮りにPIのABEの4次をかけて、STFで強度にオートストレッチした画像ですが、画面全体に複雑な構造が広がっています。

Image01_ABE

AOO合成そもそも2色しかないものを無理やり3色にするので、のっぺり画面になりがちなのです。下は3枚のOIII画像をスタックしたものですが、同じくPIのABEの4次をかけて、STFで強度にオートストレッチしたものです。今回はOIIIにも多少構造は含まれているようなので、多少は色の階調が出そうです。

integration_ABE

AOO合成をして処理したものが以下になります。
Image10_SPCC_MGC_NXT_BXT_GHSx3_HT_NXT_back_LHT_SCNR2
  • 撮影日: 2025年10月17日21時43分-23時51分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader製 Hα 6.5nm、OIII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron製 CGEM II
  • カメラ: ZWO製 ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 5枚、OIII: 3枚の計8枚で総露光時間40分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.5秒、OIII: 0.5秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
Gに割当てたOIIと、Bに割当てたOIIで少し処理に差をつけることで、構造がよりはっきりとして多少面白い画像になります。本来はRGBで撮影した画像を使って色付けをしたいところですが、今回は曇りで露光時間がとれなかったので、できることといってもこれくらいになってしまいます。

この領域は三日月星雲を個別に個別に撮ったりはしていますが、広角で電視観望で見たりはしていますが、広角で撮影までするのは初めてです。

広角で撮ったのは、三日月星雲の少し下にバブル状の惑星星雲があるという話で、それを見たかったのですが、流石にこの露光時間では厳しかったようです。上の画像からその部分を切り出して、少しノイズを落とし、彩度をあげた画像を示します。

Image10_SPCC_MGC_NXT_BXT_GHSx3_HT_NXT_back_LHT_SCNR2_buble_cut

右下の半円の盛り上がっているところのてっぺんに少しだけその片鱗が見えます。もっと露光時間をかけて出すことができればと思います。それよりも、これだけ拡大してもあまり大きく破綻せずに、そこそこ見えてしまう方が驚きです。枚数を稼いでいないのでdrizzleとかもできていません。2倍のdrizzleをかけるとさらに解像度も増すのかと思います。ε130Dおそるべしです。

(追記): 後日、撮り増ししました。drizzleもやってみたのですが、分解能がすごいことになりました。




Annotation

恒例のAnnotationです。まずは魔女の横顔から。この領域もすごい数の銀河があります。

Image01_Annotated

続いてサドル付近です。こちらもSh2天体とかが含まれていて、かなり豪華な領域です。
Image01_Annotated


まとめ

やっと夜の撮影に復帰しました。仕事は忙しいし、たまの休みも雨が続いて太陽撮影は全然進まないしで、少しヤキモキしていましたが、久しぶりにストレス解消になりました。半年ぶりの撮影も画像処理も、太陽とはまた違って、懐かしかったです。

雲があったので、実際に使えた枚数は少なかったのですが、露光時間の割には十分細部まで出るのはかなり楽しいです。ε130Dの明るさと、ASI6200MMのbin2での明るい撮影が効いているのだと思います。自宅のような光害地でも十分なS/Nを稼げます。

平日でもいいので晴れが続いてくれるなら、もう少し同じ領域で撮り増しするかもしれません。









手持ちの未処理画像のうち、最後のもの取り掛かりました。昨年9-10月に撮影した勾玉星雲です。


撮影 (記録によると)

撮影日は2024年の9月30日。もうだいぶ前のことなので、ほぼ記憶はゼロです。記録から書き起こします。

この日の前半は、ε130Dで (これも少し前にやっと画像処理を終えた) 網状星雲の撮り増しをしていました。でもこの日、カメラの凍結防止ヒーターを入れ忘れて、途中から画面中心が結露してしまいました。しかもずっと気づかなかったので、かなりの範囲で結露してしまったみたいで、カメラの温度を0度より上に上げるだけでは全然解消しません。一旦常温まで戻して、30分程度放っておいたのですが、まだ結露は完全に取れず。次に、凍結防止ヒーターを入れて、温度をとりあえず5度くらいまで下げて、さらにしばらく待つと、やっと結露が無くなりました。

その間に網状星雲の撮影可能時間も過ぎてしまい、後半になって何を取るか迷ったのですが、カメラを回転させることなくちょうど画角的に入りそうな、勾玉星雲を撮影することに決めました。勾玉星雲は2018年12月に撮影しているので、6年ぶりになります。


前回の撮影は6年前のことなので、機材は鏡筒、カメラ共に進化しました。フィルターは少し迷いましたが、時間も限られているので、まずはRGBとHαにしてみました。以前カモメ星雲でHα領域と、BとかGで色調がうまく出たので、RGBで恒星、RGB背景のRをHαの背景で置き換えるという、同じ手を使う予定でした。ところが、途中から雲が出てしまったようで、R画像とG画像はほとんど使いものになりませんでした。

この日は、ヒータ以外にももう一つ大きなミスをしていて、bin2で撮るつもりがNINA上で設定するのを忘れていてbin1で撮ってしまいました。bin1でファイルサイズが大きくなってしまったこと、ピクセルサイズが小さいということなのでS/Nで考えると露光時間が実質短くなったのと同等なこと、bin1のダーク、フラットファイルが必要になることなどがデメリットです。メリットは分解能が出ることですが、そこまで細かい模様を見たいわけではないので、あまりbin1のメリットは効かないでしょう。

その後、10月11日の夜の後半にチャンスがあったので、初日の撮影と同じく泣く泣くbin1にして、RとGの撮り増しと、あとOIIIも追加で撮影しました。

その後、秋は紫金山アトラス彗星とSWAgTiでの撮影がしばらく続いたので、ε130Dでの撮影はしばらくお蔵入りになっていて、今に至ります。彗星は新鮮度が大事なこと、SWAgTi画像の処理は楽なので先に済ませてしまい、最後に残ったのが今回の勾玉彗星というわけです。残ったというか、残しておいたというか、とにかく北陸の冬場の天気は全く期待できないので、未処理のものを手持ちで置いておきたかったのですが、CP+も終わり落ち着いたのと、どうも今週末くらいからやっと冬場の天気を脱却しそうな予報になっているからです。年が明けて体力も戻ってきたので、また撮影を再開していきたいと思います。


RGB画像へのMGCの適用

さて画像処理ですが、今回はMGCのパラメータを少し探ってみました。その結果、RGBはある程度一意のパラメータに落ち着きました。RGBでやったことの順序と結果を書いておきます。


Gradient scale:
まずは大きな影響のあるGradient scaleを変えてみます。Gradient scaleが小さくなるほど、細かい構造で補正します。
  1. Gradient scale: 1024、Structure separation: 3、Model smoothness: 1
  2. Gradient scale: 512、Structure separation: 3、Model smoothness: 1
  3. Gradient scale: 256、Structure separation: 3、Model smoothness: 1
  4. Gradient scale: 128、Structure separation: 3、Model smoothness: 1
01_RGB
01_grad
画像は1枚目がMGC補正後のRGB画像をBoosted Auto Streatchしたもの、2枚目がMGCでどれだけ補正したかの画像をBoosted Auto Streatchしたものになります。2枚とも、左上からZ字順に比較の1、2、3、4になります。

このパラメータを決定するには2つの要因があります。まずはε130Dを使っていて、迷光の影響 (網状星雲ダイオウイカ星雲スパゲティ星雲おとめ座銀河団)がある (ε130Dだけでなく、強度に炙り出していくと、おそらく反射型一般に同様の迷光があっておかしくないと考えています) こと。この画像の右下の円弧の部分がわかりやすいです。これをきちんと取り除くためには1024と512では不足で、256以下にする必要があるとわかりました。128にすると、補正画像を見ると渦上の構造が出てしまうようで、これは不自然だとして却下しました。これでGradient scaleは256で決定とします。

というか、これでε130Dで散々悩んでいた欠点がとうとう解決するに至ったというわけです。ただし、今のところRGB画像だけ有効で、しかもMARSのデータがある領域が限られているという問題もあります。でもかなり大きな一歩です。


Structure separation:
次に、Structure separationの比較をします。小さい数だと独立した大きな構造内での相対輝度差が小さくなり、大きな数だと構造の相対輝度差を強調するとのことです。直訳ですが、いまいち意味がわかりませんでした。結果を見てパッと理解できたのは、小さな数の方が細かい補正をしていることくらいでしょうか。デフォルトは3です。
  1. Gradient scale: 256、Structure separation: 1、Model smoothness: 1
  2. Gradient scale: 256、Structure separation: 3、Model smoothness: 1
  3. Gradient scale: 256、Structure separation: 5、Model smoothness: 1
11_RGB
11_grad
画像は左上から1、右上が2、左下が3です。

まず、Structure separationが5の場合は、補正画像で渦上の構造が出てしまい却下です。1と3はあまり差はないですが、本来大きな構造で処理するはずの1の方がよく見ると細かいところも補正できていたりします。とりあえず1を採用しましたが、3でもよかったかもしれません。


Model smoothness:
最後、Model smoothnessを変えてみます。数を大きくするとよりスムーズなモデルを使って補正し、小さくするとエッジや不連続なジャンプを描くようです。デフォルトは1です。
  1. Gradient scale: 256、Structure separation: 1、Model smoothness: 1
  2. Gradient scale: 256、Structure separation: 1、Model smoothness: 5
  3. Gradient scale: 256、Structure separation: 1、Model smoothness: 10
21_RGB
21_grad
画像は左上から1、右上が2、左下が3です。

5と10は粗くなって、再び迷光の影響で右下の円弧が出てきたので、却下としました。

結論としては、RGB画像では
  • Gradient scale: 256、Structure separation: 1、Model smoothness: 1
を採用し、理由は必要な細かさの補正をしつつ、やり過ぎないというものです。ただし、必要な細かさは撮影画像によって違うと思いますし、補正のかけ過ぎは避けたいものです。


Hα画像へのMGCの適用

次にアンドロメダ銀河の時にはできないと思っていた、Hα画像でもMGCを試してみました。

まず、Hα単体の画像もMGCで処理できることはわかりました。でもパラメータ設定はRGBに比べてはるかに難しいです。理由ですが、かなりの推測も含みますが、おそらく基準となる画像が基本的にRGBで撮影されていることかと思います。ようするに、Hαで見えるような輝線成分の明るさやコントラストがデータの中に含まれれていないので、下手をするとのっぺりしたり、過分に処理し過ぎて、RWA画像にあった豊かな構造やコントラストが崩されてしまう可能性があります。そのため、適用するとしてもかなり緩やかに適用する必要がありそうです。

元画像はこれです。
integration_A_ABE1_SPFC_f

PIのWBPPでの処理をした直後で、標準的な処理かと思います。表示だけは強度のブーストオートストレッチをかけてますが、まだストレッチ前です。見ている限り、かなり淡いところまで出ていることがわかります。面白いのは、HαやOIIIには明光の影響があまり出ないことでしょうか。これまでもそうだったのですが、RGBではあからさまに見えるリングなどがナローではほとんど目立つことがありません。理由は今のところ不明です。

まずはSPFCを適用しますが、narrow band filter modeを選びます。Gray filterだけHαの656.30nmとし、RGBは効いてない考え、適当にそれぞれ656.30nm、500.70nm、500.70nmとしました。RGBの設定がこれでいいのかはよくわかってません。とりあえずモノクロのHα画像にこれを適用し、次にMGCとします。

まずRGBでいいと結論づけた
  • Gradient scale: 256、Structure separation: 1、Model smoothness: 1
01_integration_A_ABE1_SPFC_MGC256_1_1
としましたが、全くダメです。細かすぎで、あからさまに変になっています。細かく補正し過ぎていると思われますが、これは参照データがRGBなのでHαの情報を含んでいないためだと思われます。


Model smoothness:
細かすぎるので、まずはよりスムーズな補正になるように、Model smoothnessを増やしてみます。
  • Gradient scale: 256、Structure separation: 1、Model smoothness: 10
02_integration_A_ABE1_SPFC_MGC256_1_10

としました。これでもまだ細か過ぎで全然ダメです。


Gradient scale:
埒が開かないので、Gradient scaleを増やします。
  1. Gradient scale: 256、Structure separation: 1、Model smoothness: 10
  2. Gradient scale: 1024、Structure separation: 1、Model smoothness: 10
  3. Gradient scale: 2048、Structure separation: 1、Model smoothness: 10
01_RGB
11_grad
1024だとかなりまともになりますがまだ落ち込みが見え、2048でやっと許容範囲くらいになりました。256でどれくらい補正しているかを改めて見てみると、Hαでうまく出ているところをことごとく打ち消してしまっています。これは元データがHαベースのものではないことを示唆していますが、まだパラメータを探り切ったわけではないので、もしかしたら上手い回避方法があるのかもしれません。


Structure separation
ここで、Structure separationを変えてみます。
  1. Gradient scale: 2048、Structure separation: 1、Model smoothness: 10
  2. Gradient scale: 2048、Structure separation: 5、Model smoothness: 10
12
画像の上2つがRGB、下2つが補正量です。左が1で右が2です。

補正量を見るとStructure separationが5の方がより細かいというか、滑らかというか、スムーズな階調で補正しています。補正された画像を見ると、Structure separationが1の方が少し落ち込みが見え、5の方がその落ち込みが少ないようなので、ここでは5を採用します。


Model smoothness:
念の為、再びModel smoothnessを変えてみます。
  • Gradient scale: 2048、Structure separation: 5、Model smoothness: 1
21_integration_A_ABE1_SPFC_MGC2048_5_1_bad

としましたが、星雲本体の形を補正してしまっていて、落ち込みがひどく、即却下です。

さらに、念の為
  • Gradient scale: 1024、Structure separation: 5、Model smoothness: 10
integration_A_ABE1_SPFC_MGC1024_5_10_bad

も見ますが、こちらも同様に落ち込みがひどく、却下です。


Hαの結論

Hα画像の結論としては
  • Gradient scale: 2048、Structure separation: 5、Model smoothness: 1
を採用したのですが、果たしてMGCを適用した方が良かったのか、元のままでも良かったのかの検証を最後にしてみます。

元画像の方がのっぺりしているのですが、MGC補正後の方は少し落ち込みがあるようにも感じます。でもその落ち込みは、星雲本体をより際出させているとも言える範囲なので、今回はMGCで補正したものを採用とします。


OIII画像へのMGCの適用

OIII画像も試しましたが、Hαと同じ
  • Gradient scale: 2048、Structure separation: 5、Model smoothness: 1
が一番まともでした。Gradient scaleを1024にすると、星雲本体の暗い部分が落ち込んでしまいます。Hαと大きく違ったのは、Model smoothnessを10にするとMGC補正前も補正後もしほぼ変化は見られず、同様にStructure separationを5にしてもほぼ変化は見られなかったことです。これはOIIIの背景には元々構造がほぼなくて、同様に参照データの青成分の背景にも構造がほぼないため、補正しても効果がそもそも出ないためだと思われます。Hαの背景には複雑な構造があり、参照データの赤成分の背景は軽い構造があり、その差が変な補正を生みやすくなっていたことが、OIIIとの違いなのかと推測しています。

でも結論としては、OIIIにはMGCを適用しないものを採用しました。理由は、MGCによって星雲本体の特に淡い部分の一部が薄くなってしまうからです。これはOIIIで見える部分が、参照データに入っていないためで、OIIIでせっかく出た星雲本体の淡い部分を余分なものと捉えてしまい、消そうとする方向に働くからだと思われます。


MGCのまとめと所感

と、ここまでRGBとHαとOIIIについてMGCを議論しましたが、2つの画像で適したパラメータが全く違っていることから分かるように、どのパラメータがいいとすぐに言える状況ではないようです。どのような方針で探っていけばいいかを、ざっくりとだけまとめておきます。
  1. Gradient scaleは違いがわかりやすいので、まずはこれを変えてみるのがいいのでしょう。
  2. Structure separationは結果を見てもそこまで大きな差はないので、デフォルトの3でもいいのかと思います。
  3. あとは、Model smoothnessを1と10で変えてみて大きな差が出ないか、問題ないならデフォルトの1で、違いがあるのなら5も試してみて、いい値を探るとかするのがいいのかと思います。

さて、MGCについて少し個人的な所感を書いておきます。

1. 元々個人的にもかなり期待していた期待していたMARSデータを使った補正で、MGCという名前でやっと実用化されたわけですが、チュートリアルと、最初に使って、「あれ、これ結構まずいのでは?」とも思いました。MGCはMRASの参照画像と自分で撮影した画像の差を見て、その差がないように撮影画像を補正します。端的に言うと、例えば超短時間撮影などで星雲情報をがほとんど得られなかった画像に、同じ領域の星雲情報が入っているMARSデータを使ったら、撮影画像に入っていなかった星雲が浮かび上がるのではないかと思ったのです。

BXTが出た当初、AIの元データにハッブルなどのものを使っているなら、それを適用してしまうのは問題ではないかと言う意見がありました。これは補正した画像がハッブルのものになってしまうのではという杞憂だったと思うのですが、AIは直接それらのデータを利用するのではなく、ある意味普遍的な補正法則を学んでいると考えると、特に問題ではないと考えることができ、最近ではBXTの効果に大きな疑問を呈する意見はあまり聞きません。でもMGCの場合はMARSデータを直接参照して、比較、補正しています。

でも実際にはこの考えは、今の段階では杞憂でしょう。MGCでの補正はあくまで背景に相当する空間波長の低い(粗い)補正のみです。今回の検証でも細かすぎる補正は、逆に見た目でも(今回は渦模様でしたが)変な補正になるようなので、極端なパラメータを使う方がおかしくなるのかと思います。でも原理的には差を見てそれがなくなるよううに補正することはできるはずで、極端な方向に進むと、まずいところは全て補正してしまって、理想とする画像にどれも近づいてしまうという危険は含んでいるのかと思います。

2. MGCがあるから、これで背景補正は完璧だと思ってしまうことは危険です。所詮元データとの比較だけなので、当然ですが補正後の結果は元データに依ります。元データのMARSデータベースが理想的かどうかは誰にもわからず、今わかっているのは35mmと135mmレンズで撮影された、全天とはいかないまでもかなり広い範囲の背景データであるということです。ただしアマチュアレベルではないので、ある程度の基準になっていると思ってもいいはずで、それを共通の財産として広く使えるようにしようとする方向性は相当な評価ができるのかと思います。

特に、ε130Dで突き当たった迷光は、どうやっても解決できなかったもので、それを解決できる手段の一つとして使えるというのは、個人的にはとても助かっています。そもそもこのε130Dの迷光問題、以前検証したページにも書いていますが、
  1. フルサイズセンサーくらいの面積で初めて出てくること
  2. さらに一眼レフカメラなどでは上下の蹴られの影響の方がはるかに大きく、それを回避したフルサイズのCMOSカメラなどを使い
  3. その上でかなり積極的な炙り出しをして初めて出てくること
です。なのでε130Dを使って撮影しても、実際に問題なるケースはそこまで多くはないでしょう。でも突き詰めていくと必ず出てくる問題なので、これを解決できる方法が提唱されたことは、とても嬉しいことです。

3. MGCは、分子雲に満たされた背景を、広い範囲と矛盾なく強力に補正してくれます。これは特にモザイク合成の接続に強力な威力を発揮するでしょう。他人の撮影画像とのモザイク合成も可能にすると思われます。

4. RGBだけでなく、Hα、OIII、SIIなどのメジャーなナローバンドでの参照データベースでの補正もいつか可能にして欲しいです。現段階ではナローバンドはまだ実用的とは全然言い難いという印象です。


その後の画像処理

ここまでMGCについてかいてきましたが、でも結局はRGB画像のMGCはほとんど活かすことはありませんでした。Hαに比べて背景の構造が出ていないので、結局Hαで上書きされてしまうからです。なので一番検証できたRGB画像なのですが、本当にMGCの検証というだけの意味合いになってしまいました。

というのも最初はRGB画像とHαとOIII画像をPhotoshopに送り、RGB画像のRとBに混ぜたりしたのですが、どうもHαの階調がうまく出ずに赤でのっぺりしてしまいました。そこで方針を変えて、PixInsightの段階でAOO画像を作り、それをベースにRGBの恒星と、一部星雲中心のRGBでしか出てこないような構造をくわえることにしました。

bin1のままだとファイルサイズが大きくなりすぎるので、全ての処理が終了して一旦JPEGで出力してか、そのJPG画像の解像度を変えてbin2相当にしています。

「IC405 勾玉星雲とIC41」
Image03_AOO2_s_brighter_cut
  • 撮影日: 2024年10月1日1時1分-3時36分、10月12日1時11分-4時42分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、R、G、B
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin1、Gain 100、露光時間5分、Hα: 17枚、OIII: 8枚、R: 10枚、G: 13枚、B: 12枚の計60枚で総露光時間5時間0分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、37枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 1秒、OIII: 1秒、R: 0.05秒、G: 0.05秒、B: 0.05秒で全て128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
Hαの階調をできるだけ残すことと、赤一色にならないように、GやBを活かしつつ、OIIIも混ぜています。それでもやはり全体に赤っぽくなってしまうのは、まだまだ今後の課題でしょう。でもこの構造がHαにしか含まれれていないことを考えると仕方ないです。最近はHαをRだけに適用するのではなく、GやBに入れ込んでもいいのかと思うようになってきました。

恒例のアノテート画像です。
Image03_AOO2_s_brighter_annotted


過去画像の再撮影です。
light_BINNING_1_integration1_AS_DBE_cut
違いですが、
  • 鏡筒が口径6cmから13cm。
  • カメラがEOS 6DからASI6200MM Proなので、カラーからモノクロになっていて、フルサイズなのは同じですが、解像度は倍近くになっていて、ピクセルサイズも半分近くになっています。
  • フィルターはQBPだったのが、今回は実質AOO合成です。
  • 露光時間は52分から5時間と伸びています。
今回はナローバンドフィルターを使っているので、さらにコントラストは良くなるはずなので、露光時間を含めて、QBPとの直接の比較は意味がないかもしれませんが、ハード的な進化は大きいでしょう。それに加えて、StarNetやBXTなどのソフト的な進化もあります。あ、今回NXTの新バージョンも使いましたが、これはまたそのうちに検証したいと思います。


まとめ

やっと未処理画像が無くなりました。天気が良くなるまでにまだ時間があるなら、過去画像の再処理やボツにした画像の処理、特にボツにしたモザイク撮影の処理などをやってもいいかと思います。

今回はMGCを特にいじってみましたが、なかなか一意の方針を示すことは難しそうなので、このようなやり方で攻めていけばいいという指標くらいでしょうか。

もう少し赤っぽい印象を押さえつつ、階調を確保する方法が欲しいです。多分暗い空に行ってRGBで撮影するのが正解なのかと思います。結局前回の網状星雲と同じような悩みかと思うので、自宅でこれを解消しようとすると、またものすごく苦労しそうなので、もう少し何かいい方法がないか考えてみます。

今後の撮影ですが、少しSCA260を復活させてみたいと思います。SCA260用の、少し面白そうなアイテムを手に入れたので試してみることを考えています。

久しぶりのブログ更新です。前回のノイズ計算で力尽きてしまい、忙しいこともあり、あまり趣味に時間を割くことができなくなっていました。今回の撮影も、1月初めくらいに撮影して、その後CP+関連の撮影などでしばらく間が空いて、3月半ばに撮り増ししたものです。


サボり気味な撮影

撮影は1月に遡ります。ε130D+ASI6200MM Proでの、いつもの自宅での撮影です。もうその時のこと詳しくは覚えていませんが、能登地震から数日後で少し落ち着いてきたことと、対象天体をどうするか迷ってたことが記憶にあります。曇りの間の晴れ間で、長時間は晴れなさそうだったので、比較的短時間で成果が出るものとというので決めた気がします。新規天体よりも、再撮影の方が向いていると判断して、過去画像の中でも結構初期の頃のFS-60CB用のマルチフラットナーのテストで撮った、かもめ星雲にしました。



上のリンクは2019年初めの撮影で、星を初めて2年半が過ぎたくらいでしょうか。すでに画像処理はSIからPIに移っていて、DBEのおかげで少し炙り出せるようになってきた頃だと思います。まだモノクロ撮影に手を出すはるか前で、多分かもめ星雲全体が入るようにとフルサイズの6Dを選んだのだと思います。自宅撮影なのでQBPでHαを出していますが、仕上げを見ても分かるように青いところとかはほとんど出せていなくて、赤でのっぺりしています。StarNetやDeNoise AIなどのAI系のツールはまだ影も形もなく、撮影した画像のクオリティーでの勝負でした。でもこれ、今のツールで処理したらどうなるのでしょうか?時間があったら後でやってみます。

さて今回の撮影ですが、1月の時点で2回望遠鏡を出し、モノクロでRGBの3種を撮影しました。でも画像を見てみるとさすがに光害地での撮影で、しかも曇りの合間でそれぞれ1時間程度の露光時間なので、Rでも本体が淡くてほとんで出ていません。その後CP+などがあったこともあり、しばらくお蔵入りになったのですが、3月中頃にHαを追加撮影しています。4月に入り、重い腰を上げてやっと画像処理です。サボりすぎでダメですね。


フラットが合わない!?

やっとのことで画像処理を進めるのですが、なぜか以前に撮ったフラットが合いません。私は基本、フラットは一度撮ると、鏡筒やカメラの構成を変えない限り、マスターフラット化したフラットファイルを使い回しています。これまでSCA260+ASI294MM Proでもε130D+ASI6200MM Proでも、使い回しでほとんど困ることはありませんでした。今回も過去に撮影したフラットで補正したのですが、なぜか全然空いません。ここしばらくε130Dで撮影はしていませんでしたが、それでも構成は何もいじっていなくて、これまでの経験からいったらフラットが合わない理由はありません。

ちなみに下がフラットが合わなかった画像です。RGBを合成した後、ABEの1次をかけています。フラット画像は昼間の明るい部屋の白い壁を写しています。壁の左側にある窓からの光が支配的なので、1次的な傾きがあるのはわかっています。なのでABEの1次をかけるのですが、普通はこれでOKなはずです。それでもこんなに右側に残るのは何かおかしいです。

Image130_ABE

実際ここまでひどいと画像処理でどうやってもダメで、諦めてフラットを再撮影した方が良さそうです。フラットは昼間の撮影なので次の休日まで待つ必要があり、これだけで1週間程度余分に時間がかかってしまいました。

再フラット撮影ですが、フードの有り無しが影響することもあるので、フード有り無しの両方で撮影しました。比較してみると、フードの有無で差はほとんどありませんでした、過去に撮影したフラットファイルと明らかに見た目で違いがありました。

こちらが過去、クワガタ星雲の際に撮影したフラット画像で、少なともその後のイルカ星雲の画像処理の際にはずれたような兆候はありませんでした。代表してR画像を示しますが、比較しやすいようにABEの1次をかけ、オートストレッチしています。
masterFlat_BIN_2_4784x3194_FILTER_R_mono_integration_ABE

次が今回撮影したフラット画像で、同じくR画像で、ABEの1次をかけ、オートストレッチしています。
masterFlat_BIN_2_4784x3194_FILTER_R_mono_integration1_ABE

どうやら過去のものは左右バランスが取れいてなくて、今回のものは取れているようです。過去画像でのフラット後に右側に大きなずれが出たのも納得です。クワガタ星雲の撮影から鏡筒やカメラをいじった覚えはないので、なぜフラットがこんなに変わったのかの理由は今のところ不明です。何か触ってそれを忘れているか、季節が変わったとかか、どこかで光の漏れ具合や散乱光が変わったのでしょうか?

その後、新しく撮影したフラット画像でWBPPを再度走らせ、スタックしました。あまり細部を出す必要もないので、Drizzleのx1だけかけておきました。出来上がった個々のRGB画像を合成し、SPCCでカラーバランスを整え、BXTをかけます。ここからStarNetで背景と恒星を分離し、恒星はそのまま使いますが、背景はRを次のHα画像の背景と置き換えることにします。


かもめの頭上の明るさ

インテグレーション直後のHαを見てみてみます。オートストレッチの強い方をかけています。

masterLight_BIN-2_4784x3194_EXPOSURE-300.00s_FILTER-A_mono

これを見ると明らかに左が暗く、右が明るいです。すなわち、カモメの上部は暗いということがまずあります。でもこれをABEでもDBEでも新機能のGC(GradientCollection)でも、とにかく補正してしまうと、左が明るくなりすぎて右の暗いところの明るさを超えてしまいます。

補正の目的は、画面全体の輝度差をなくして、細部の構造の濃淡をより出したいというものなのですが、このような(カブリとかではなく)実際の空に大きな輝度差があり、あるところを境にパツンと変わるような場合は、大元の傾向を壊してしまうという弊害があるということがわかります。最近の私の画像処理では、背景全体が明るくなってしまう傾向があるのですが、おそらく根は同じようなことなのかと思います。要するに細部を出したいがあまり、大傾向を軽視してしまっているというものです。

今の所、どうしたら完璧かというような解はまだ持っていません。淡い部分の階調のわずかな違いを表現するためには、やはり強力なフラット化の手法は必要かと思いますし、背景が明るくなり過ぎるもの避けたいと思っています。特に背景は光害地で撮影している限り、階調の違いがナローでしか出てこないので、背景にどんな色がついているのかよくわからないのが大きな問題です。もしかしたら、Hα画像で撮影される背景は、実際には赤っぽくはならずに、もっと黒っぽかったり、茶色に近いとかかもしれません。

今回の撮影ですが、RGBはGC(GradientCorrection)を使って星雲本体以外はかなりフラットにしました。HαもGCを使って、こちらは結構注意深く、少なくとも逆転現象があまり出ないようにかけてみました。
masterLight_BIN-2_4784x3194_EXPOSURE-300.00s_FILTER-A_mono_GC

その時に使ったGCのパラメータです。
GC_cut

GCについては書き出すと長くなりそうなので、機会があれば別途記事にします。


仕上げ

Hα画像にもBXTをかけて、背景と恒星を分離します。先に作ったRGBの背景画像のR成分を、このHα画像の背景で置き換えます。合成したAGB背景画像と、RGBの恒星画像を、別途適当にストレッチして、Photoshopに受け渡します。Photoshopでてきじ重ね合わせ、最終調整をして仕上げです。結果は以下のようになりました。

「IC2177: かもめ星雲」
Image109_back_HT_NXT2_cut
  • 撮影日: 2024年1月4日22時59分-5日0時9分、1月14日1時48分-3時8分、3月14日20時59分-22時37分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、R、G、B
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 17枚、R: 8枚、G: 8枚、B: 12枚、の計45枚で総露光時間3時間45分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.1秒、R: 0.01秒、G: 0.01秒、B: 0.01秒で全て128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
赤の淡いところもそこそこ出ています。これはナローのHα画像が効いています。Rだけでは淡いところは全然出なかったでしょう。青もそこそこ出ているので、B画像も効いていることがわかります。これはOIIIにしても良かったのでしょうか?でもそれだとAOOにしてしまうかもしれません。ここら辺の塩梅が、まだあまりよくわかっていません。ただし、BもGもフラット化の過程で星雲本体以外はかなり消えてしまったので、星雲本体以外の赤がHαのみになってしまい、赤色だけののっぺりとしたものになっています。

フラットを再度撮影したのですが、ε130D(実際にはおそらく左右非対称からくる)のフラットの誤差がどうしても残るというのは依然問題として残っていて、今回GCで強引にフラット化してしまった弊害とも言えるかと思います。理想は左右対称な(明るい)鏡筒で、暗い場所に行ってRGBを撮影するというものですが、そんな鏡筒はなかなか無いのと、遠征になかなか行けない今の私にとっては、どちらも無い物ねだりというものでしょう。

アノテーションです。
Image109_back_HT_NXT2_cut_Annotated2

かもめ星雲はIC2177が一般的で、NGC2373と言われることも多いようです。NGCは他に3つ写っています。画面内には (シャープレス) sh2-292から297が入っているようですが、途中の294は見当たりません。調べたら画面右下をもう少し下側に行ったところにあるようです。PGCは分解能的に厳しいようで、ほとんど見えてないですね。


過去画像との比較

2019年初めに撮影したカモメ星雲を改めて載せておきます。
light_PCC_stretched_morfing_satiration_DBE_morph_ps2a

当時は赤いところも結構出るようになったと喜んでいた覚えがありますが、今見るとまだ全然ですね。しかも青成分なんかほぼゼロで、星雲本体が赤一色になっています。

露光時間は3時間越えなのでまあ同じくらいとして、鏡筒の口径は大きくなったこと、カメラはともにフルサイズですが、一眼レフのカラーカメラから、今回はモノクロのCMOSカメラでナローのHαを別撮りしているのが大きな違いでしょうか。いずれにせよ、大きく自己更新かと思います。さすがに5年という期間は、機材、ソフト、技術と、どれも進化が大きいかと思います。

さらにこの5年前に撮影したものを、RAWファイルから今のWBPPでスタックし直し、画像処理までしてみました。その結果がこれです。

masterLight-300.20s_combined_RGB_drizzle_1x_back_HT_cut

元ファイルは同じでも、別物のように違いますね。青い部分も情報としてはあったことがわかりますし、星の色もきちんと残っていました。淡いところもまだ引き出す余地があったようです。どうも撮影中に流れていたようで、縞ノイズの痕跡が見え始めています。

こうやってみると、5年間でソフトや技術が上がっていることがわかります。

ここまで出るなら、今回わざわざ撮影し直さなくても良かったかというとそうでもなくて、淡いところはより出ていますし、右翼に点在する青い部分はさらにはっきりしています。ここら辺の違いが機材の違いに起因するところでしょうか。こうやって進歩を部分部分で見るものとても楽しいです。


まとめ

イルカ星雲以来の久しぶりの本格的な撮影でした。露光時間があまり伸ばせなかったのですが、天気があまり良くなかったので仕方ないでしょう。でも久しぶりの画像処理で、結構楽しくて、結果もまあ満足です。

しばらく画像処理をサボっていた間に、GraXpertに加えて、GradientCorrenctiontという新しい機能も出てきました。ここら辺はMARSにつながる布石なのでしょうか?関連して、背景の正しい色を知りたい欲求が高まっています。もう暗いところに行くしか無いのか、それともアイリス星雲ゴースト星雲みたいに、明る自宅でもRGB撮影でまだ活路を見出すことができるのか、そろそろ次の手をどうするか本格的に考える必要がありそうです。

実は4月の新月期は結構頑張っていて、M104ソンブレロ銀河の撮影も終えていますし、ヘルクレス座銀河団の撮影ももう終えています。ここら辺の画像処理も時間を見つけて進めたいと思います。


年末の12月初めくらいから撮り続けていたSh2-308 ミルクポット星雲がやっと仕上がりました。

海外ではDolphin Head Nebulaと呼ばれているようで、日本でも「イルカ星雲」とか「イルカの頭星雲」とも呼ばれているようです。その一方、Milk Pot Nebulaとかで検索しても全く引っかからないので、どうもミルクポットと言っているのは日本だけのようです。

本当にイルカの口に似たような特徴的な形と、OIIIで写すと青く目立ってとても綺麗で、星を始めた当初からいつか詳細な形と共に撮影したいと思っていた星雲の一つです。最高高度が31度程度と比較的低い空なので、撮影可能期間もあまり長くなく、やっと実現できたというわけです。


撮影

実際の撮影開始は結構前で、12月4日の夜中過ぎからです。自宅なので平日も撮影可能で、同じ日の前半に北西方向のダイオウイカ星雲、後半に東から昇ってきているイルカ星雲を撮影しています。

一般に淡いと言われているイルカさんですが、同日に撮影していたダイオウイカ星雲がとんでもない淡さなので、イルカ星雲はずいぶん濃く感じました。下の写真の左は6時間40分のOIIIのダイオウイカで、ABEにDBEもかけて強あぶり出ししてやっとこれくらい。一方右は3時間10分でABEをかけただけでこんなにはっきり出ます。
comp

今回のイルカ星雲は、5分露光でOIIIが59枚、Hαが39枚でAOO合成の予定です。さらに恒星用にR、G、Bでそれぞれ8枚ほど撮影しています。OIIIとHαは比較的早くに撮り終えていたのですが、RGBが曇っている日が多くてなかなか撮り溜めできず、撮影は最終的に1月14日まで食い込んでしまいました。

R、G、B画像もそれぞれ同じ5分露光なのですが、明るい星はサチってしまっています。今後はRGBの各フィルターでの撮影は露光時間を短くするか、ゲインを落とした方がいいようです。

blue_BXT_Image36_DBE_DBE_Preview02_3dplot
RGB合成した画像の左側真ん中に写っている一番明るい星を、
PIの3Dプロットで表示。


画像処理

画像処理を進めていてすぐに、今回はイルカ星雲本体の青よりも、背景の赤がポイントではないかと思うようになりました。
  1. まず、イルカさんの中にも赤い部分が存在しているようで、今回程度のHαの露光時間では全然分解して表現できていないように思います。
  2. 背景の左側の赤い部分は、周辺減光か分子雲かの見分けがつきにくかったのです。特に左下の暗くなっている部分は暗くなっていますが、これは周辺減光なのか迷いました。他の方の画像を見ると確かに暗くなっているので正しいようです。
  3. 右側と上部には、かなり濃い波のような分子雲があり、こちらはHαだけでなくOIII成分も持っているようで、左下の赤とは明らかに違った色合いになり面白いです。
  4. 画面真ん中の星雲本体の周りに、下から右上方向に進むかなり淡い筋のような模様が見えますが、これも迷光などではなく本当に存在するもののようです。この筋はHαだけでなくOIIIにも存在するので、ここでも色の変化が見られとても興味深いです。

背景の淡い部分を出すには、フラット化がどこまでできるかがとても重要です。通常のフラットフレームを撮影してのフラット補正は当然として、それだけでは取りきれない
  • 輝度勾配
  • 周辺減光の差の残り
  • ライトフレーム撮影時とフラットフレーム撮影時の迷光の入り具合の差
など、大局的な低周波成分の輝度差が、淡い部分のあぶり出しを阻害してしまいます。

私はフラットフレームは晴れた昼間の部屋の中の白い壁を写しているので、どうしても窓側と部屋中心側で輝度差が出てしまいます。これはABEの1次で簡単に補正できるので、まずはHαもOIIIもインテグレーション後にすぐにABEの1次をかけます。ABE1次の後は出てきた画像を見て、毎回それぞれ方針を考えます。


GraXpert

実は今回、フラット化のために最近人気のフリーのフラット化ツールGraXpertを使ってみました。以前からインストールはしていたのですが、ほとんど使ったことはありませんでした。

今回GraXpertをPixInsightから呼び出せるようにしようと思って、この動画にあるように

https://www.ideviceapps.de/PixInsight/Utilities/

をレポジトリに登録して、ScriptのToolboxの中のメニューにも出てきたのですが、いざPixInsightからGraXpertを呼び出すと「GraXpertの最新版が必要」と言われました。アップデートしようとして最新版をインストールしたわけですが、アップデート後PIから呼び出しても、どうも動いている様子が全くありません。確認のために、まずは単独でGraXpertを立ち上げてみましたが、セキュリティーの問題を回避した後もうまく起動しません。ちなみにMacのM1です。

それでどうしたかというと、アプリケーションフォルダのGraXpertをフォルダから右クリックして「パッケージの内容を表示」でコンテンツの中身を見てみます。ContentsのMacOSの中にあるGraXpertがターミナルから起動できる実行ファイルで、これをダブルクリックすることでエラーメッセージを確認することができます。今回はいくつかpyhthonのライブラリが足りないとか出ていたので、手動でインストールしたのですが、結局解決せず。

そもそもメインPCのpython関連はそんなに変なことをしていないので、おかしいと思い調べたら、最新版はMac OS 13.6以上が必要とのこと。私はアップデート後のトラブルが嫌であまり最新のOSには手を出していなかったのですが、自分のバージョンを見たら12.4とか2世代も古いです。仕方ないので久しぶりにOSをアップデートし、一気に14.2.1のSonomaになって、無事にGraXoertが立ち上がりました。

ちょっと蛇足になってしまいましたが、
  • うまくいかないときはターミナルから立ち上げてエラーメッセージが確認できること
  • OSのアップデートが必要なこともある
というのが教訓でしょうか。

さてGraXpertの結果ですが、背景の星雲の形が大きく変わってしまい、残念ながら撃沈でした。比較してみます。最初がABEのみでフラット化したもの、
Image19_ABE4

次がGraXpertで今回は見送ったものになります。AIとKrigingで試しましたが、大きな傾向は変わりませんでした。画像はKrigingのものです。
Image13_SPCC_GX_K

違いは左下の濃い赤の部分で、GraXpertではムラと判断され、取り除かれてしまっています。また、イルカ星雲本体があるあたりの背景のHαも同様に取り除かれてしまっています。

このように、背景全体に分子雲が広がっているような場合は非常に難しく、DBEでもあまりいい結果にならないことがわかっているので、今回は再びHαとOIIIに戻って、今一度注意深くABEのみで処理することにしました。 GraXpertの方が良い結果を出す場合もあると報告されているので、実際のフラット化処理の際には一意の決まり手は存在せず、毎回臨機応変に対応すべきなのでしょう。


ABEのみでのフラット化

さて、今回最終的に使ったABEの具体的な手順を書いておきます。これも今回限りそこそこ上手くいったと思われる、あくまで一例です。
  • Hα: ABE1次、ABE2次
  • OIII: ABE1次、ABE2次、ABE3次、ABE3次 
として、ここでAOO合成。その後さらに
  • AOO: ABE4次
として、やっと落ち着きました。繰り返しになりますが、どれも決まった手順とかはなく、その場その場で画像を見ての判断です。

ポイントは
  1. 過去に他の人が撮影した画像などを参考にして、自分の背景がおかしすぎることがないこと
  2. オートストレッチで十分に炙り出せる範囲にフラット化を進めること
の2点でしょうか。それでも特に2にあるように、あぶり出しやすくするためにというのを主目的でフラット化しているので、正しい背景からずれてしまう可能性は否定できません。さらに1も、淡いところをどんどん出していくと、参考にできる他の画像自体も数が限られてしまうようになるという問題もあります。

こうやって考えると、PixInsightのMARSプロジェクトにかなり期待したいです。何が正しい背景で、何がカブリなどのフェイクかの指標を示してもらえるのは、とてもありがたいです。もちろん、誰も到達していないような淡さなどは当然データベースに登録されないと思うので、限界はあるはずです。でも私みたいな庭撮りでやっている範囲では、十分な助けとなってくれると思います。


とりあえずの画像処理

1月19日の金曜の夜、SLIMの月面着陸の様子をネットで追いながら、画像処理をしていました。着陸後、結果発表までかなり時間があったので、寝るのは諦めてのんびり進めます。その時に一旦仕上げて、Xに投稿したのが以下の画像です。

Image19_ABE4_SPCC_BXT_back3_cut

イルカ星雲本体はかなりはっきり出ています。イルカなのでOIIIの青がよく似合っています。また、背景の赤もかなり出ているのではないでしょうか。ナローバンドと言えど、自宅で背景がここまで出るのなら、結構満足です。周りの赤いところまで出してある画像はそこまでないのでしょう、結構な反響がありました。

イルカ星雲本体に含まれる赤はもっと解像度が欲しいところですし、全体に霞みがかったようになってしまっています。淡いOIIIを無理して強調した弊害です。OIIIフィルターにバーダーの眼視用のものを使っていることが原因かと思われます。IR/UVカットができないために、青ハロが目立ち、その弊害で霞みがかったようになってしまっています。


Drizzle+BXTが流行!?

土曜の朝起きて、いつものコメダ珈琲に行き、画像処理の続きです。改めて昨晩処理したものを見てみると、ノイズ処理がのっぺりしていて、恒星の色も含めて全然ダメだと反省しました。特に、拡大するとアラが目立ちます。

そもそもε130Dの焦点距離が430mmとあまり長いものではないので、画角的にイルカ星雲本体が少し小さくなってしまいます。後から拡大しても耐え得るように、WBPP時にDrizzleの2倍をかけておいて、Drizzle+BXT法で、イルカさん本体の解像度を上げてみます。



下の画像は、左がDrizzle x1で右がDrizzle x2、上段がBXT無しで下段がBXTありです。差が分かりにくい場合は画面をクリックして、拡大するなどして比べてみてください。

comp2
  1. まず上段で左右を比べると、Drizzleを2倍にすることで、恒星の分解能が上がっていることがわかります。
  2. 次に左側で上下を比べると、(Drizzleは1倍のままで) BXTの有無で、恒星が小さくなり、背景の細かい模様もより出るのがわかります。ただし、画像の解像度そのもので分解能は制限されていて、1ピクセル単位のガタガタも見えてしまっています。
  3. さらに下段のみ注目して左右を比べると、右のDrizzle2倍にさらにBXTをかけたものでは、恒星のガタガタも解消され、かつ背景もピクセル単位のガタガタが解消されさらに細かい模様が見えています。
このように、Drizzle+BXTで、恒星も背景も分解能が上がるため、圧倒的に効果ありです。

ところでこのDrizzle+BXT法ですが、2023年5月に検証して、その後何度がこのブログ内でも実際に適用してきたのですが (1, 2, 3) 、最近のXでの天リフ編集長の「効果があるのかないのか実はよくわからなかった」という発言にあるように、当時は余り信用されなかったようです(笑)。


ところが上のリンク先にもあるように、ここ最近だいこもんさんや他の何人かの方が同様の方法を試してくださっていて、いずれも劇的な効果を上げているようです。とうとう流行期がきたようです!

この手法を科学的な画像としてそのまま使うことはさすがにできませんが、鑑賞目的ならば、本物のさらに細かい構造が見えてきている可能性があると思うと、夢が大きく膨らむのかと思います。多少の手間と、(一から揃えるとPixInsightとBXTでそこそこの値段になるので) あまり多少ではないコストになりますが、それでも対する効果としては十分なものがあるのかと思います。

土曜日はこんなことをやっていて、力尽きました。


Drizzle x2

日曜日もほぼ丸一日かけて、Drizzle x2の画像の処理を進めます。なかなか上手くいかなくて、バージョン10まで進めてやっとそこそこ納得しました。あとから10段階を連続で見てみると、徐々に問題点が改善されていく過程がわかります。

金曜夜中に処理したDrizzle x1と、日曜夜遅くにDrizzle x2で最終的に仕上げた後の画像の比較してみます。ともにBXTをかけたものです。

まずはDrizzle x1
x1

次にDrizzle x2です。
x2

画像処理にかけた気合と時間が大きく違うこともありますが、それにしても結果が全然違います。では一体何をしたかというと、大きくはノイズ処理の見直しと、恒星の処理の見直しです。


Drizzle後のノイズ処理

特にノイズ処理は結構大変で、少し油断するとすぐにモワモワしてしまったり、分解能が悪くなったりで、全然上手くいかなかったです。でも筋道立てて丁寧にやっていくと、なんとか解は存在するといった感じでしょうか。

まず、ノイズ処理で気づいたことが一つあります。Drizzleで解像度2倍にした画像にはノイズ処理が効かないことがあるようです。興味があったので少し調べてみました。

今回試してみたノイズ処理ソフトは
  • Nik CollectionのDfine 2
  • PhotoshopのCamera RAWフィルターのディテールのノイズ軽減
  • DeNoise AI
  • NoiseXterminator
です。この中で効果があったのはDfine 2とNoiseXterminatorでした。他の2つは元々大きな構造のノイズが苦手な傾向があることは気になっていましたが、今回Drizzleで2倍の画素数にしたため、同じノイズでもより細かい画素数で表現されるようになり、相対的に大きな構造のノイズを扱っているような状態になったのかと推測します。まだ少し試しただけなので検証というレベルではなく、他のノイズ処理ソフト、例えばTGVDenoiseなどのPIのノイズ処理関連なども含めて、もう少し調べる必要があると思います。それぞれ得意な空間周波数があるような気がしています。

結局今回使ったのは、PI上でNXT、Photoshop上でDfine 2でした。これでモコモコしたノイズが残るとかを避けることができました。またNXTはカラーノイズ対策はできないので、カラーノイズはDfine2に任せました。


結果

結果です。拡大しないと一見、金曜夜中の画像とそこまで変わらないと思えるかもしれません。でも、少し細部を見ると全く違います。

「Sh2-308: イルカ星雲」
Image17_ABE4_SPCC_BXTx3_HT_HT_back7_cut_low
  • 撮影日: 2023年12月5日0時3分-3時9分、12月9日0時2分-1時5分、12月29日22時3分-30日4時20分、2024年1月4日20時50分-22時43分、その他2夜
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm、R、G、B
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 39枚、OIII: 59枚、R: 8枚、G: 9枚、B: 8枚、の計123枚で総露光時間10時間15分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、OIII: 0.2秒、R: 0.01秒、G: 0.01秒、B: 0.01秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

私的にはかなり満足なのですが、子供に上の画像を見せたら「霞んで見えるのが惜しい」と言われました。ナローバンドフィルターは星まつりで安いB級品をちょくちょく集めてきたのですが、パッと手に入れることができた眼視用OIIIフィルターだと多分もう厳しいので、新品で購入してしまった方がいいのかもしれません。でも新品でも在庫がないみたいです。いっそのことUV/IRカットフィルターを重ねてしまうのも手かもしれません。

上の画像は拡大すると真価を発揮します。イルカに見えるように画像を90度左回転し、左に明るい赤の壁を置くような構図にしてみました。

Image17_ABE4_SPCC_BXTx3_HT_HT_back7_rot_half2_wall
恒星の色もでているかと思います。大きくクロップしたとは思えないくらいです。

さらにイルカ星雲本体のみにしてみますが、ここまで拡大してもまだ大丈夫かと思います。
up2

この画像も子供に見せたら、「イルカの中の赤いところがまだ出ていない。頭のところにある脳みそみたいなところはまだマシだが、下の心臓の形はもっと出るはずだ」とか言われて、どこからか検索してきたもっと細部が出ている画像を見せられました。でもその画像の説明を見たらそもそも大口径の350mmでf/3、撮影時間がなんと45時間...、さすがに太刀打ちできるはずもないです。

超辛口な息子の意見に少したじろぎましたが、ナローバンドだとしても自宅撮影でここまで出るなら、もうかなり満足です。あとは毎回コンスタントにこれくらいまで出すことができるかでしょうか。もう少し練習が必要な気がしています。


まとめ

金曜夜から土日のほとんどを画像処理にかけてしまいました。やり直しを含めて、今回は丁寧な処理の画大切さを実感しました。淡いところを出すときは、特に慎重に手順を考えて処理しないとすぐに破綻してしまいます。

結局これ1枚に32時間くらい画像処理にかけたので、ちょっとスキルが上がったはずです。1枚に集中してできる限りのめり込むことは、かなり効果があるのかと思います。

でも次のダイオウイカとまともに戦えるとはまだ思えません。今のところ全然ノイジーです。ダイオウイカ星雲はそれくらい手強いです。


2年近く前に自宅から撮影したSh2-240、かなり淡く、当時はFS-60CB+CBP+EOS 6Dで12時間越えとかなり頑張ってみたのですが、画像処理で相当無理して出していたのがわかります。

 

結果を見ても明らかですが、これは敗退だったと言えるでしょう。

今年の春にε130Dを購入した最大の理由が、このリベンジです。無理ナントだった、超新星レムナントを自宅でどこまで出すことができるのか?特に前回は全く出なかったOIIIの青が、自宅でも本当に出るのかがポイントです。


Sh2-240の下調べ

今回のターゲット、皆さんなんて呼びますか?Sh2-240という呼び名が多分一番メジャーでしょうか?一方、Sim147(シメイズ147, Simeis 147)という名前も持っています。通称はスパゲティ星雲 (Spaghetti Nebula) と呼ばれていて、これは最初日本語で誰かがつけたと思っていたら、英語のWikidiaとかにも普通に載っているので、どうも世界的に一般にこの通称で呼ばれているようです。

星雲としてはかなり大きくて、見かけの直径は約3度もあります。月が0.5度くらいなので、一辺で6個分、面積だと36倍の大きさです。おうし座からぎょしゃ座にかけて広がるレムナント(超新星残骸)です。約3000光年先にあるとのことで、10万年ほど前に現れてこの大きさにまで広がったようです。一つの超新星爆発がこんな複雑な形を作るのは、まさに宇宙の神秘かと思います。

ちょっと脱線ですが、Sh2はシャープレスカタログ(Sharpless catalog)と呼ばれていて、淡い天体を撮影しようとするとすぐに候補として出てきます。




アメリカの天文学者スチュワート・シャープレスが、パロマー天文台のスカイサーベイからの画像を使用して銀河系のHII領域を調査し、1953年にSh1として142天体をカタログに登録、その後1959年に第2版とのSh2として313の天体を登録しているとのことです。

シャープレスカタログはまだいいのですが、シメイズカタログは調べてもあまりよくわかりませんでした。日本語だとHIROPONさんのページくらいしか引っ掛からなくて、

「クリミアにあるシメイズ天文台で、ソ連の天文学者ヴェラ・ガゼ(Vera Fedorovna Gaze, 1899~1954)とグリゴーリ・シャイン(Grigory Abramovich Shajn, 1892~1956)によって1955年に編集された散光星雲のカタログです。カタログはクリミア天体物理天文台の会報に掲載されており、主に北半球にある306個の散光星雲を一覧にしています。有名な天体としては、おうし座~ぎょしゃ座にかけて存在する超新星残骸Simeis 147(=Sh2-240)があります。」

とあります。「シメイズ」と検索しても、ほぼシメイズ147しか結果が出てこなくて、色々調べてやっとSimbadの中のカタログまで辿り着きました。232個が登録されているようです。


久しぶりのε130D

ε130Dですが、5月にアメペリ星雲網状星雲おとめ座銀河団を撮って以来になります。これまではテスト撮影のようなもので、
  • bin2と分解能とBXTの関係
  • 淡いOIIIがどこまで出るか
  • bin1で系外銀河の描写がどこまで可能か
など、かなり実験的です。いずれも、ε130Dの分解能と口径の大きさを遺憾なく発揮した結果となりました。

その一方で
などが問題点として浮かんできました。今回の撮影の前に、上記二つの問題に対してもある程度解決の目処をつけようとしています。


星像の改善

まず最初の問題、星像についてですが、コリメートアイピースを利用しての光軸調整自身は何度かしてみました。でも、何度調整しても結果として毎回同じようなズレになるので、通常の光軸調整とは別のシステマティックなずれがあるような気がします。

具体的な問題としては、
  • 鏡筒に付いている回転装置を回すと、像が変わる。
  • 四隅の星像が流れる。特に、縦方向に像の上下でピントの内外が違うのがはっきりわかる。
などがあります。これらのことから、光軸というよりはスケアリングがずれているのではないかと考え、K-ASTECのスケアリング調整が可能なテーパーリング接続キットを購入しました。



IMG_8512

オフアキは使わないので、上の写真の右のように12.5mmの延長リングも合わせて購入したのですが、これはカメラ付属の5mm幅のセンサーチルトアダプターを「付けたまま」接続します。最初勘違いしていて、このセンサーチルトアダプターを外して組んでしまい、星像が改善しないと悩んでいました。一度スターベースに遊びに行った時に星像が合わないと相談して、スタッフの方の指摘で気づきました。どうもありがとうございました。

その後、スケアリング調整です。接眼部の鏡筒側の回転装置を回転させて、縦にしても横にしても、きちんと遠方の景色のカメラ中心がずれないように、合わせました。このこともスターベースで話したのですが、カメラ中心基準だとテーパー部のネジの締め具合で中心位置がずれてしまうので、回転させた時に中心が基準にならないかもという指摘をうけました。そのため、ネジの締め具合が毎回均等になるようにして中心の再現性がある程度あることを確認してから、回転させても遠方景色の中心がずれないようにスケアリングを調整しています。

IMG_8659
こんな風に回転装置でフィルターホイールごと回転させて、
遠方を見ながら、カメラ中心がずれないようにスケアリングを調整しました。

今回の撮影での四隅の様子です。
2023_11_21_03_22_49_ASI6200MM_2x2_A_300s_g100_9_80C_mosaic
まだ左下と左真ん中が縦に伸びていて、右上が右斜め方向に伸びています。

それでも調整前の北アメリカ星雲の時などは下のようで、真ん中以外全方向が伸びていたので、かなり改善されています。
_2023_05_04_00_51_54_A_9_90_300_00s_0001_mosaic

下の画像は、RGBを5分9枚づつインテグレートしたものですが、方向が多少散らされるのか、さらに目立たなくなります。
Image04_ABE_DBE1_mosaic01
それでも強拡大すると、完全に伸びがなくなっていないのがわかりますが、私的には許容範囲です。それよりも青が少しずれているのが気になるくらいなので、ここまで調整できればよしとします。

ちなみに、上のものにBXTをかけるとさらに星像は引き締まり、青のずれもなくなり、真円に近づきます。それでもまだ左下は少し縦に伸びています。
Image04_ABE_DBE1_mosaic

これくらなら歪みと言っても微々たるものなので、私的には結構満足です。今後ε130Dでもどんどん撮影していこうと思います。

ところで今回の星像の改善に一番効いたと思われるのは、実はスケアリングではなく、バックフォーカスでした。もともとε130Dにタカハシ純正のCanon用の変換アダプターを付けて、カメラ側にZWOのCanonマウントアダプターを使っていたのですが、これだと指定のバックフォーカス長の56.2mmぴったりで、フィルターの厚みなどを光量すると、微妙に長さが足りないのです。K-ASTECのテーバー接続リングは、あらかじめ1mmほど長く設定して出荷され57.2mm -0.2,+0.8の範囲で調整できます。実際にはもう少し伸ばしましたが、以前より1.5mmほど伸ばしたことが星像の改善に一番貢献したものと思われます。


フードの影響

今回簡易的に鏡筒先端にフードを付けてみました。

IMG_8784

ε130Dでこれまでフラット補正がうまくいかなかった原因の一つが「フードを取り付けていなくて周辺の光が入り込み、その光の入り込み具合が赤道儀の回転とともに変わっていって、単一のマスターフラットファイルでは補正しきれないのでは」と考えたからです。フード自身はまだ仮のもので、福島の星まつりで特価で手に入れたものを使いました。

今回はRGBAOと5種類撮影しましたが、その中でB画像の迷光が一番ひどく見えました。スタック後のBにABEの4次をかけて、オートストレッチの強い方をかけたものです。
masterLight_BIN_2_EXPOSURE_300_00s_FILTER_B_ABE

まだかなり残っていますが、HαやOIIIはこれより大分マシだったので、これがMaxだと思ってください。

下は以前おとめ座銀河団を撮影した際に、フードなしで撮ったスタック後のL画像にABEの4次をかけて、オートストレッチの強い方をかけたものです。

masterLight_BIN_1_EXPOSURE_300_00s_FILTER_L_ABE

L画像とB画像なので直接比較は不公平かもしれませんが、フードで少しマシになったようにも見えます。それでもフードが解というには厳しくて、やはりε130Dと付き合っていくには非対称的な迷光を許容していく必要がありそうです。

というより、この非対称性って接眼部が横についていることからきている可能性が高いと思っていて、ε130Dだけの問題ではなく、そのような形の反射型全般の構造的な問題かと思っています。

「そんなの出てないよ」という方も、フラット画像にABEの4次をかけて、オートストレッチの強い方をかけてみてください。できれば中心だけを見るのではなく、CMOSカメラのAPSCとかフルサイズクラスで見ると外の方に見えるのかと思います。「CMOSカメラ」とあえて書いたのは、一眼レフカメラだとカメラ本体のミラー部のケラレが上下に出てしまう可能性があるからです。そのケラレでの光の落ち方の大きさが、今議論している迷光の模様よりも大きい場合があって、ストレッチで炙り出してもケラレの方で制限されてしまい、迷光の微妙な違いがわからないことがあります。画像処理によっては問題にならないレベルかもしれませんが、今回のように淡いところを強度にあぶり出していく場合は、どうしても問題になってきます。

あ、ブログを書いていて最後に見直した時に思ったのですが、よく考えたら今回のフラット、以前のものを使い回しています。フードのない時に撮ったフラットということです。フードをつけて取り直したらもう少しマシになるかもしれません。休日で、天気のいい昼間に撮り直してみます。
 

撮影時

撮影は11月20日から22日の3日間に渡りました。上弦の月を過ぎた頃で、前半は月も明るくSh2-240自体の高度も低いので、どの日も後半がメインとなります。初日の前半は準備と星像確認に費やし、0時頃から撮影開始でした。

フィルターですが、前回はCBPでした。今回はカメラもモノクロなので、HαもOIIIも個別のです。どちらもBaaderのものになり、バンド幅もかなり小さくなるのでコントラスも向上するはずでが、OIIIが眼視用で青ハロが出ることがわかっているので、少し気になるところです。

2日目と3日目は、前半まだSh2-240の高度が低いので、その間クワガタ星雲を撮影しました。半月越えの月が出ていますが、ナローバンド撮影なのでなんとかなるかどうかのテストも兼ねています。この話はまた別の記事で書こうと思います。

2日目の後半は順調に枚数を稼いだのですが、途中でPCに繋げてあるバッテリーが落ちたようで、残されたファイルを見ると午前3時過ぎのものが最後でした。

3日目前半のクワガタ星雲の撮影後に、急遽Sh2-240のRGBを個別に撮ることにしました。以前の北アメリカ星雲のAOO撮影で赤の淡いところを出すのに無理をして、恒星の色がおかしくなり、恒星の周りに赤ハロのようなものが目立ってしまったからです。短時間ながらもRGBで別撮りしておけば、恒星の色もある程度残るのではとの期待です。各色5分で9枚、45分づつ撮影しました。3日目の後半は途中から風がすごいことになってきたので、午前3次頃に中断して片付けました。

そうそう、Xではつぶやいたのですが、最近自宅の近辺でクマの被害がかなり出ています。歩いて行ける距離の所で一人亡くなっていて、さすがにそのクマは駆除されたのですが、その後も車で5分くらいのところでも二人襲われています。さらに、これも自宅から5分くらいのところですが、いつも仕事に行く時に使う道を横切るクマの映像がニュースで流れていました。

実際の撮影は冗談抜きでクマに怯えながらでした。できる限り外に出ている時間を短縮して、セットしたらあとはプレートソルブやEAFを駆使してリモート撮影に徹底します。それでも反転の時だけは心配で、その場に行ってケーブルとかが引っかからないか見ながら、マニュアルで反転してました。


ビニングについて

元々今回の記事の中でビニングについて書こうとしていましたが、結構な分量になってしまったので、独立した記事としました。詳しくは前回の記事を見てください。

少しだけ書いておくと、富山の自宅でスカイノイズが大きいことを緩和するために、bin2でソフトウェアビニングをかけて撮影し、輝度を上げショットノイズのS/Nを上げようとしました。

 

bin1に比べて4倍の露光時間をかけたことに相当しますが、それでも露光時間がまだ足りないか、もっと暗いところに行くべきなのかと思います。ちなみに、今回の撮影時間がトータル12時間なので、bin1で撮影していたらショットノイズに関しては、48時間撮影したのと同等のS/Nとなります。


画像処理

まず、OIIIの一枚画像を見てみます。ABEの4次をかけ、強い方のオートストレッチをかけます。何か模様は出ているようです。これならスタックさえすればなんとかなりそうです。

2023_11_21_00_34_08_2x2_O_300_00s_g100_10_00C_0005_ABE

次にPixInsightのWBPPが終わった段階のマスターOIII画像を改めて見てみます。ABEの4次をかけ、強い方のオートストレッチをかけます。淡いながらも(この時点では)十分に出ていると思いました。

masterLight_BIN_2_300_00s_FILTER_O_integration_ABE

Hαも同様に見てみますが、OIIIがでているので、Hαは余裕と思っていました。

masterLight_BIN_2_300_00s_FILTER_A_mono_drizzle_1x_ABE

でも、その後の画像処理は困難を極めました。やはり淡い青がつらいのです。青が出てると言っても、そもそも青単独のところは一部で、多くは赤と重なっていて仕上がりで明るい紫になります。単独の青は、もっと淡いところにまだ隠れいているようです。今回の条件ではそこまで届きませんでした。

青は他にも問題があって、そもそも今回使っているOIIIフィルターが眼視用で、どうもUV/IR領域がカットされていないようなのです。そのため、青ハロができてしまったりして強度の炙り出しが難しくなります。無理に出そうとすると、その青ハロが霞を増加しているように見えてしまい、処理を難しくしています。青ハロだけでなく、淡い天体部分と背景の輝度がかなり近い(背景ノイズが大きい)ので、淡いところを出そうとすると無理が出ます。


drizzle x1の効果

Niwaさんが、SPCCをする際は1倍でもいいのでdrizzleをするといいとの記事を書いてくれています。ノイズが少し軽減され、背景が緑化されるのを防ぐこともできるそうです。私は緑化で困ったことはないのですが、1倍なら特にファイルサイズが増えることもないので、ノイズが軽減されるならと試してみました。

drizzleされたマスターライトとものと、されていないマスターライトができあがるので、PixInsightのスクリプトからSNRを比較してみました。結果はdrizzleしたものがSNR = 7.475e+04 、してないものがSNR = 4.222e+04とのことで、2倍近くの向上がみられました。

comp1

上の画像は、左がdrizzleなしの通常の処理、右が1倍のdrizzleです。drizzleをかけると、背景のクールピクセルっぽい黒い穴が少なくなっていることがわかります。SN比の向上と一致していますね。その代わりに、少し星像が肥大しているでしょうか?シャープさがなくなったようにも見えます。

多少の不利さもありそうですが、2倍近くのS/Nの向上はかなり魅力的なので、今後も使っていくことになりそうです。


結果

やっと画像処理の結果です。
Image22_DBE_SPCC_back_BXT_HT1_HT2_NXT_SCNRG6_cut
  • 撮影日: 2023年11月21日0時8分-5時23分、11月21日22時48分-22日2時25分、11月22日22時14分-23日3時14分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 48枚、OIII: 70枚、R: 9枚、G: 9枚、B: 9枚、の計145枚で総露光時間12時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、OIII: 0.2秒、R: 0.01秒、G: 0.01秒、B: 0.01秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

結果を見るに、かなり出たのではないでしょうか!いろいろ苦労はありましたが、今回のレムナント、明らかにリベンジは果たせたと思います。

まず2年前に全く出なかった青は明らかに出ています。赤も無理して出していたものは、かなり複雑な模様まで詳細に出るようになりました。鏡筒だけでなく、ナローバンドフィルター、モノクロ冷却カメラと、機材も総取っ替えで挑んだ甲斐がありました。自宅からでも無理ナントではなかったと言っていいでしょう。

その一方、これで終わりかというと、画像を見てもまだ無理をしている感があるのも事実です。
  • まず、青に関してですが、やはりOIIIフィルターが眼視用のせいか、どうも恒星周りに青ハロっぽいのが出てしまっています。この青ハロの明るさが、淡いところの明るさと同程度になるために、淡いところをこれ以上炙り出すのが難しくなっています。星もとで48mmのOIIIフィルターを特価で見つけた時に、パッと買っておけばと、今でも悔やまれます。
  • 一方、Hαの赤も、よく見るといくつかの大きなリングの中に、ノイズに埋もれそうな淡い構造が明らかに見え始めています。これだけ見てもまだHαの方も露光時間を増やした方がいいいのかと思います。
  • 焦点距離が430mmとまだ微妙に長くて、全景が入っていません。モザイク撮影で周りも少し入れてみたいです。
こうやってみるとまだ不満な点もあるので、できるならもう一度リベンジしたいです。

今回の成果の一つは、ε130Dの星像がしっかりしてきたことです。今後は躊躇せずに、この鏡筒で撮影をどんどんしていきたいと思います。その一方、フードはフラット補正に少しは貢献しましたが、まだ完全な解決までは遠いです。でも他にアイデアもないので、これはもうあるものとして付き合っていくしかないと思います。


ナローバンド撮影と光害の関係

ナローバンドで、明るい月夜や明るい場所と、暗い場所でどれくらいスカイノイズに差が出るのか、今後きちんと実測と計算をしてみたいと思います。もしかしたらナローバンドフィルターの影響が強くて、意外なほど周りの明るさがあっても撮影結果に差が無いのではとも少し思っています。ナローで淡いところを出す場合、光害はあまり関係なく、いかに天体を明るく撮るかにかかっていて、口径、F値、露光時間、ピクセルサイズなどで決まってしまうのではないかという推測です。

もしこれが数値的に示されたとすると、自宅で撮るのは環境的には決して難しいことではなく、あとは機材と露光時間の根性という話になります。あ、ビニングなどの工夫もありますか。

暗いところにいって、ナローバンド撮影をしてみればすぐに判明するので、いつかまた遠征した時にナローで撮影して差を見てみたいと思います。


ビニング x drizzle x BXT

もう一つのアイデアです。

今回bin2で撮影しましたが、いわゆるソフトウェアビニングなので、bin1で撮影してから、画像処理の段階でPC上でbin2にしても同じことになります。しかも、16bitカメラなので後からビニングして32bitファイルに書き込めば、4倍の明るさになるのでダイナミックレンジは2bit得するはずです。

今回は後からのビニングができるのかわからなかったので撮影時にビニングしていますが、元のbin1の解像度が高すぎるので、bin2でもまだ十分な解像度があります。いっそのことここから更にビニングしてbin4相当にして更に4倍の明るさにして、でも流石にそれだと解像度がしょぼくなりすぎるので、drizzleで2倍にするというのもありだと思います。

もちろんそれだけだとS/Nは得しても、解像度に関してはあまり得しないので、この状態でBXTをかけるというアイデアです。drizzleとBXTは相乗効果が非常に高い可能性があることはすでに検証しているので、
 
解像度がほぼ今のままで、更に淡いところを出せるかもしれません。bin4だとすると今回のbin2に比べたら4倍、元のbin1に比べると16倍の露光時間になります。今回トタールで12時間半の撮影時間なので、16倍ならちょうど200時間の撮影時間と同等ということになります。自宅撮影の可能性をさらに広げてくれるかもしれません。分解能がどこまで犠牲になるかも注意しながら、余裕があったら試してみたいと思います。


まとめ

長い記事になってしまいましたが、半年くらいの細々とやっていたε130Dの調整も入っているので、実際にはまだまだ書き足りないくらいです。念願だった自宅レムナントがやっと出てくれたので、かなり満足している一方、まだ十分でないこともわかったので、いつかまたリベンジしたいと思います。

これでε130Dも多少安定して撮影できそうです。今後、どんどん活用していきたいと思います。

次はイカ釣りかな?


日記

コロナの後遺症か、熱がひいてからも数週間体力がなくて、今回やっと望遠鏡を出す気になりました。それでもこのブログを書いている現在もまだ咳が続いていたりします。

この間にも、どんどん試したいことが増えています。SharpCapの惑星ライブスタックとか、SharpCapでガイドなしのdhitherとかです。でももう既に冬型の気圧配置になってしまったのでしょうか、天気が全然ダメです。天気が悪くても、まだノイズ解析は進めたいですし、小海でお借りしたInteractiveの読み込みとかもしたいです。これらもまた、いずれ記事にしたいと思います。時間が全然足りません。


ここまでε130Dで3例のテスト撮影(1, 2, 3)をしてきましたが、2つの大きな問題があることがわかってきました。
  1. 光軸が合っていないこと、特に、カメラを回転させると像が変わる
  2. 迷光がありそう
などです。

この二つの問題について、福島の星まつりでHBさんから重要な情報を聞くことができました。ε130Dには特有の問題があり、
  1. 回転装置がアイピース口の光軸に対して垂直な面で回っていない可能性があること。
  2. ε130D固有の特徴的な迷光があること。
ということです。実際のテスト撮影でいずれも経験していることに近いです。今回は特に、迷光について少し検証してみました。


迷光をリアルタイムで見る

迷光が存在していることはテスト撮影からある程度わかっています。問題は何が原因なのか、改善する手段はあるかです。

まず、何も設定を変えずにフラットを撮影して再現性があるか見てみます。SharpCapで明暗が見やすいように、ヒストグラムで適当にストレッチしています。

キャプチャ3_with_hood

中心が明るくて、右にシャープな円弧状の段差があり、左になだらかな円孤状の減光があります。

前回のおとめ座銀河団の時に示したフラット画像は以下のようでした。ABEの4次をかけたストレッチしたものです。
2023_05_17_14_07_54_1x1_L_0_01s_g100_29_60C_0000_ABE

中心が暗くて、今回の画像と少し形が違うように見えて迷ったのですが、形が良く見えるようにSharpCap上でマニュアルでストレッチしているためと判明しました。RAW画像を撮影して、PixInsightで同様にABEを4次でかけオートストレッチしたら以下のようになったので、そこそこ再現性はあると考えていいでしょう。

_08_22_13_Capture_00001_08_22_13_ABE

以前の画像と一致したので、これ以降はリアルタイム性を優先し、SharpCapの画像で検証するようにします。

ちなみに、SharpCap状でもヒストグラムをいじることである程度再現はでき、
キャプチャ2

さらに、これは重要なのですが、何もストレッチしないと以下の様になり、
08_22_13_Capture_00001 08_22_13s
一見少し周辺減光があるだけの、特に何も問題ないようなフラット画像に見えてしまいます。


問題箇所の特定

さてSharpCapで左右非対称な迷光が見えている状態から、鏡筒の回転装置を180度回してみます。その結果が以下になります。

キャプチャ5_without_hood_rotete180deg

像が反転して、今度は左側がシャープに明暗が分かれます。カメラ側を回転させると像も回転するということは、原因は少なくとも回転装置よりカメラ側ではなく、鏡筒側にあることになります。

次に、フードを被せてみます。福島で特価で買ったプラスチック製のものです。きちんと真っ直ぐ取り付けることに気をつけます。

キャプチャ4_with_hood_rotete180deg
少し光量は減るので、フードがないと多少入り込む光はあるようです。でも微々たるもので、フードの有り無しで変な形を作る迷光は変わりないようです。

ここまでの結果から、回転装置より鏡筒側が原因で、フードを取り付けた鏡筒入射光側からの迷光も関係ないとすると、結論としては鏡筒の内部そのものに迷光を発生する原因があると言わざるを得ません。

この結果が正しいとすると、外部から何か改善することは期待できず、鏡筒を分解するなどして内部にアクセスして、反射する部分などを見つけて反射防止塗料などで防ぐことになるのかと思います。

例えば、フォーカサーの筒、副鏡、補正レンズなど、外からは見にくいですが、もしかしたら光を反射する明るい部分があるのかもしれません。補正レンズは取り外しができるので、(撮影では使わざるをえませんが)一度取り外して影響があるかどうか見ることは可能だと思います。もしレンズのARコート面からの反射とかだと致命的ですね。


この迷光はε130D一般のこと?

ところでですが、こんな迷光の話ネットを検索しても全然出てきません。少し気になったので、ε130Dのフラット画像がどこかにないか探してみました。少なくともすぐに2つ見つかって、
  1. 一つは本家のスターベースさんのもの、
  2. もう一つはYosshidaさんの「天体写真の世界」
で共にかなり信頼のおけるサイトです。ところが、掲載されているフラット画像を見ると、上のような円状の迷光はほとんど見られません。私の場合と全然状況が違うので、これは何かがおかしいと思い、もう少し検証してみました。

まず、両サイトともフルサイズの一眼レフカメラ(CanonのEOS 6DとNikonの810A)での撮影です。特徴的なのは上下のケラレです。

まずはこれを確認するために、私も6Dでフラットを撮影してみました。
キャプチャ8_6D_nostretch_mono
ぱっと見は上下のケラレも含めて、そこそこ再現できているようで、上記サイトの画像をかなり似ています。この場合の撮影条件は、見た目のDebayerをオフにしてモノクロにしたことと、「ストレッチをかけていない」ことです。

この画像だけ見ると特に問題はないように思えてしまいます。でも実際にはここからが問題です。上の状態から、先の検証でも試したようにSharpCap上で適当にストレッチをかけます。
キャプチャ9_6D_stretch_mono
ストレッチで炙り出すことで、見事にリング状の迷光が現れました。しかも上下のケラレの境の明暗さの方が大きいので、リング状の迷光はケラレに隠されてしまっていたということが言えると思います。

確かによく見るとスターベースの画像も、天体写真の世界の画像も、うっすらですがリング状の明暗さがあることに気が付きます。その証拠に、例えばスターベースのフラット画像をPixInsightでABEの4次をかけ適当にストレッチすると、同様のリング状の形がはっきりと出てきます。ここでは画像は掲載しませんが、興味がある方は各自試してみてください。


ちょっと迷光について検討

おそらくですが、実際にはスターベースのブログに書いてあるとおり、これまでフラット補正についてはあまり問題になっていなかったのかもしれません。そもそも、フルサイズクラスで問題になってくるリングの大きさですし、例えフルサイズでも一眼レフカメラで撮影している限りはケラレの方が大きいので、問題はそこまで露呈しないと思います。フルサイズのCMOSカメラになって初めて顕著になる問題かと思います。

もう一つは、近年画像処理の技術が発達してきて、相当淡いところまで炙り出すことができるようになってきたことも関係するかと思います。私はギリギリまで情報を引き出す傾向があるので、特に問題と感じてしまったのかもしれません。

その一方、前節で検証したようにフードを被せると入射光量は確かに変わるようなので、フラット補正後の残差はフードを使うことで軽減できる可能性はあります。まずは内部をいじるとかよりは、ちゃんとしたフードを作ることですね。これで上手く補正でき問題にならなければ、単なる程度問題なのかと思います。


まとめ

ここまでの検証で、やはりε130Dには残念ながら一般的にリング状の迷光が存在すると結論づけて良さそうです。でもフードでフラット補正の度合いが改善する可能性はありますし、画像処理をもう少し工夫するなどの手もあるかと思います。次回撮影で検証したいと思います。

言うまでもありませんが、ε130Dの明るさと分解能は特筆すべきものがあるので、いい点を上手く利用して今後も撮影していきたいと思います。撮影したいものもまだまだたくさんあり、今後どう改善していくのか、楽しみでなりません。


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